(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883054
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ダイカスト金型及びダイカスト法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20160225BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
B22D17/22 C
B22D17/22 A
B22C9/06 G
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-67900(P2014-67900)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-188909(P2015-188909A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 正次
(72)【発明者】
【氏名】藤井 道義
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−21553(JP,A)
【文献】
特開2009−45651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/22
B22C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ダイスと固定ホルダからなる固定型と、可動ダイスと可動ホルダからなる可動型と
、を有し、該固定ダイス又は該可動ダイスの少なくとも一方には凹部が形成されており、該凹部にはキャビティを画成する埋子が設置されるダイカスト金型において、
該埋子の後端に設けられた連結部に油圧シリンダが接続されており、
該油圧シリンダは該固定ホルダ又は該可動ホルダに固定されており、
該埋子は、該埋子の後端面が該凹部の底面と当接する埋子固定位置と、該埋子の全体が該凹部内から離脱する埋子交換位置との間を該油圧シリンダの駆動により移動するように構成されていることを特徴とするダイカスト金型。
【請求項2】
請求項1に記載のダイカスト金型を用いてダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金型及びダイカスト法に関し、より詳細には埋子の固定構造を改良したダイカスト金型及び当該ダイカスト金型を用いて行うダイカスト法に関する。
【背景技術】
【0002】
固定ダイス又は可動ダイスに設置されている埋子を交換するには、ダイカスト金型全体を鋳造機から取り外して機外へ搬出した後にダイカスト金型を分解する必要があるので、埋子の交換作業には多大な労力と時間を要することになる。したがって、ダイカスト金型を分解することなく機上において埋子を交換することができるようにすることが下記特許文献1により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−190531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は埋子をキャビティ側からボルトで固定する構成であるので、ダイカスト品にはボルトの頭部の痕跡が残ってしまうことになる。したがって、ボルトの頭部の痕跡が残ることが許されないダイカスト品を製造する場合には適用できないという問題を有している。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋳造機の機上で埋子を交換可能に構成した場合であってもダイカスト品にボルト等の痕跡を残すことがないダイカスト金型及び該ダイカスト金型を用いるダイカスト法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダイカスト金型1は、固定ダイスと固定ホルダからなる固定型と、可動ダイス12と可動ホルダ11からなる可動型10と、を有し、該固定ダイス又は該可動ダイス12の少なくとも一方には凹部12Aが形成されており、該凹部12Aにはキャビティを画成する埋子13が設置されるダイカスト金型1において、該埋子13の後端に設けられた連結部14に油圧シリンダ15が接続されており、
該油圧シリンダ15は該固定ホルダ又は該可動ホルダ11に固定されており、該埋子13は、該埋子13の後端面13Aが該凹部12Aの底面12Bと当接する埋子固定位置と、該埋子13の全体が該凹部12A内から離脱する埋子交換位置との間を該油圧シリンダ15の駆動により移動するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明に係るダイカスト法は、上述したダイカスト金型1を用いてダイカストを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鋳造機の機上で埋子を交換可能に構成した場合であってもボルト等の痕跡を残すことなくダイカスト品を製造することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態におけるダイカスト金型の要部断面図であり、埋子が埋子固定位置にある状態を示す。
【
図2】同実施形態のダイカスト金型の要部断面図であり、埋子が埋子交換位置にある状態を示す。
【
図3】同実施形態のダイカスト金型の要部断面図であり、埋子が取り外された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るダイカスト用金型について
図1〜
図3に基づき説明する。
図1に示されるように、ダイカスト金型1は、可動型10と不図示の固定型とを備えている。可動型10は、可動ホルダ11と、該可動ホルダ11に形成された凹部11Aに嵌合収容された可動ダイス12とにより構成されている。不図示の固定型も同様に固定ホルダと固定ダイスとにより構成されている。可動型10は矢印A←→A´で示される可動型10の移動方向に移動可能であり、固定型と当接することによりダイカスト金型1の内部にキャビティを画成する。可動ダイス12には凹部12Aが形成されており、この凹部12A内にはキャビティを画成する箇所を有する埋子13が収容されている。
【0012】
可動ホルダ11の後面側には油圧シリンダ15が設けられており、油圧シリンダ15の出力軸16がジョイント17により延長軸18と連結されている。延長軸18はジョイント部材17に連結される棒状の長軸部18Aと、この長軸部18Aよりも径が小さい小径部18Bと、長軸部18Aよりも径が大きい大径部18Cとを有している。油圧シリンダ15が駆動することにより延長軸18は可動型10の移動方向に進退できるようになっている。油圧シリンダ15を支持する支持板19の中央位置には孔19Aが形成されており、
図1に示すように延長軸18が油圧シリンダ15により後退させられる埋子固定状態においては、油圧シリンダ15の出力軸16とジョイント17は支持板19の孔19A内に位置するようになっている。支持板19の孔19Aの周りには複数の孔19Bが形成されており、孔19Bと円筒状の支持部材20を挿通するボルト21が可動ホルダ11のネジ穴11Bに螺合されることにより、支持板19は可動ホルダ11に固定されている。延長軸18は、可動ホルダ11に形成された孔部11Cと、可動ダイス12に形成された孔部12Cとを貫通している。埋子13の後端には延長軸18を連結するための連結部14が設けられている。連結部14は埋子13の側面と後面13Aに開口する溝であり、
図1の紙面の表と裏を結ぶ方向の幅が狭い幅狭溝14Aと、この幅狭溝14Aよりも同方向の幅が大きくされ、埋子13の側面からの溝深さが幅狭溝14Aよりも深く形成されている幅広溝14Bとを有している。幅狭溝14Aには上述した延長軸18の小径部18Bが挿入され、幅広溝14Bには上述した延長軸18の大径部18Cが挿入されている。
図1に示すように延長軸18が油圧シリンダ15により後退させられる埋子固定状態においては、埋子13の連結部14が延長軸18の大径部18Cにより
図1の矢印Aの方向に引かれた状態が維持され、埋子13は可動ダイス12に固定されることになる。この埋子固定状態においては、埋子13の後端面13Aは可動ダイス12の凹部12Aの底面12Bと当接している。
【0013】
埋子13を交換する場合には、油圧シリンダ15を駆動して延長軸18を
図1の矢印A‘の方向に前進させる。延長軸18が前進すると埋子13は延長軸18の大径部18Cにより保持されて、
図2に示すように埋子13の全体が可動ダイス12の凹部12A内から離脱する埋子交換位置まで前進する。
図3に示されるように、埋子交換位置まで前進させられた埋子13は、連結部14に挿入されている延長軸17の大径部17Cと小径部17Bを連結部14から抜くことで交換される。
【0014】
次に、本実施形態のダイカスト金型1を用いて行うダイカスト法について説明する。本実施形態によるダイカスト法では、先ず、可動型10を固定型に当接させてダイカスト金型1の型締めを行い、油圧シリンダ15により可動ダイス12に固定されている埋子13を用いてキャビティを画成する。次に、固定型に設けられるスリーブ内にアルミニウム合金等の溶湯を供給し、プランジャチップにより溶湯をキャビティに充填する。そして、キャビティの溶湯が冷却されて凝固した後に可動型10を移動させて型開きを行い、ダイカスト品をダイカスト金型1から取り出す。以上がダイカスト法である。
【0015】
本実施形態のダイカスト金型1及び同ダイカスト金型を用いて行うダイカスト法においては、埋子13の後端部に設けられた連結部14に油圧シリンダ15が接続されており、埋子13は、埋子13の後端面13Aが可動ダイス12の凹部12Aの底面12Bと当接する埋子固定位置と、埋子13の全体が可動ダイス12の凹部12A内から離脱する埋子交換位置との間を油圧シリンダ15の駆動により移動するように構成されている。可動型10を固定型から離間させてダイカスト金型1の型開きを行い、油圧シリンダ15を駆動して埋子13を埋子交換位置まで移動すれば埋子13の交換を行うことができるので、埋子13の交換に際してダイカスト金型1を鋳造機の機外へ搬出する必要がない。また、埋子13の後端13Aに設けられた連結部14に接続されている油圧シリンダ15により埋子13を埋子固定位置に移動させて可動ダイス12に固定するようにしているので、埋子13のキャビティ面には埋子13を固定するためのボルト等は存在せず、ダイカスト品に不要な痕跡が残ることがない。
【0016】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施形態では可動ダイス12に形成された凹部12Aに埋子13が固定されていたが、固定ホルダに油圧シリンダを固定し、固定ダイスに形成された凹部に埋子が固定されるようにしてもよい。
【0017】
また、埋子13はダイカスト品に孔を形成する鋳抜きピンであってもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 ダイカスト金型
10 可動型
11 可動ホルダ
11A 凹部
11B ネジ穴
11C 孔部
12 可動ダイス
12A 凹部
12B 底面
12C 孔部
13 埋子
13A 後端面
14 連結部
14A 幅狭溝
14B 幅広溝
15 油圧シリンダ
16 出力軸
17 ジョイント
18 延長軸
18A 長軸部
18B 小径部
18C 大径部
19 支持板
19A 孔
19B 孔
20 支持部材
21 ボルト