特許第5883061号(P5883061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5883061-軸受部品の飛散防止部材を備える電動機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883061
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】軸受部品の飛散防止部材を備える電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20160225BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20160225BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H02K5/10 A
   F16C19/54
   F16C33/76 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-88124(P2014-88124)
(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-208154(P2015-208154A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100182660
【弁理士】
【氏名又は名称】三塚 武宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】滝本 芳太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−074052(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/054098(WO,A1)
【文献】 特開2004−092768(JP,A)
【文献】 特開2003−074491(JP,A)
【文献】 特開2011−250668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
F16C 19/54
F16C 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに固定される固定子と、
前記固定子の内側に配置される回転子と、
転動体及び保持器を備え、前記ハウジングに取り付けられ前記回転子の回転軸を支持する軸受と、
前記軸受に取り付けられ、前記軸受の内部の潤滑剤が飛散することを防止するシールド部材と、
前記軸受と前記回転子の鉄心との間に位置するように前記ハウジングから延在し、前記シールド部材、前記転動体、及び前記保持器の少なくとも1つが前記ハウジングの内側に飛散することを防止する飛散防止部材と、を備える電動機。
【請求項2】
前記飛散防止部材が、前記回転軸の延在方向と平行な方向において、前記軸受のアキシャル隙間の1/2よりも大きい距離だけ前記軸受から離間している、請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記飛散防止部材は、前記回転軸が挿通される中心穴を有し、
前記軸受は、複数の転動体を有する転がり軸受であり、
前記中心穴の直径が、前記回転軸の直径に、前記転動体の直径を2倍した値を加えた和よりも小さい、請求項1または2に記載の電動機。
【請求項4】
前記飛散防止部材が金属製の材料から形成される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項5】
前記飛散防止部材が前記ハウジングと一体に形成される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の構成部品がハウジングの内側に飛散するのを防止する飛散防止部材を備える電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電動機において、回転子に取り付けられた駆動軸は、ハウジングの出力側の端部及び反出力側の端部に取り付けられた軸受によって支持される。これら軸受は、筒状のハウジングの内周面に形成された円周溝に嵌入されて固定される。通常、軸受の内輪はアキシャル隙間の範囲内で外輪に対して移動可能であるので、内輪が円周溝の側壁と干渉することのないように、円周溝の深さは外輪の半径方向の厚さと同程度にされる。このような軸受の取付構造を有する電動機が、特許文献1〜3に例示されている。
【0003】
近年、最大出力及び最大トルク等が大きく、かつコンパクトである電動機に対するニーズが高まっている。ところが、電動機側の駆動軸と負荷装置側の被駆動軸がベルトで結合される場合には、電動機の最大トルクが大きくなるにつれて、駆動軸に加わるラジアル荷重も増大する。そして、駆動軸に過度のラジアル荷重が加わると、軸受の損傷及び早期破壊等を引き起こすことがある。その状態で電動機の運転が継続されると、軸受が分解され、それによりシールド板、保持器、及び転動体等の軸受部品が飛散する虞がある。この際、軸受部品がハウジングの内側に飛散すると、固定子巻線及び回転子鉄心等を含むハウジングの内側の構造部が損傷されるという深刻な二次被害を引き起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−51752号公報
【特許文献2】特開平8−294247号公報
【特許文献3】特開平8−335367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受の構成部品によってハウジングの内側の構造部が損傷されることを防止できる電動機が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ハウジングと、ハウジングに固定される固定子と、固定子の内側に配置される回転子と、転動体及び保持器を備え、ハウジングの内側に取り付けられ回転子の回転軸を支持する軸受と、軸受に取り付けられ、軸受の内部の潤滑剤が飛散することを防止するシールド部材と、軸受と回転子の鉄心との間に位置するようにハウジングから延在し、シールド部材、転動体、及び保持器の少なくとも1つがハウジングの内側に飛散することを防止する飛散防止部材と、を備える電動機が提供される。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、飛散防止部材が、回転軸の延在方向と平行な方向において、軸受のアキシャル隙間の1/2よりも大きい距離だけ軸受から離間している、電動機が提供される。
本発明の第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、飛散防止部材が、回転軸が挿通される中心穴を有し、軸受が、複数の転動体を有する転がり軸受であり、中心穴の直径が、回転軸の直径に、転動体の直径を2倍した値を加えた和よりも小さい、電動機が提供される。
本発明の第4の態様によれば、第1〜第3の態様のいずれか1つにおいて、飛散防止部材が金属製の材料から形成される、電動機が提供される。
本発明の第5の態様によれば、第1〜第4の態様のいずれか1つにおいて、記飛散防止部材がハウジングと一体に形成される、電動機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、軸受が破壊された結果、軸受の構成部品(シールド部材、転動体、保持器等)が回転子鉄心に向かって移動したとしても、それら構成部品は飛散防止部材に突き当たって停止させられる。従って、第1の態様によれば、過度のラジアル荷重等が原因で軸受が破壊されたとしても、軸受の構成部品が固定子及び回転子の配置されたハウジングの内側に飛散することを防止できるので、固定子巻線及び回転子鉄心等を含むハウジングの内側の構造部が損傷されることを防止できる。その結果、第1の態様によれば、軸受が破壊されたとしても、ハウジングの内側の構造部を修理したり交換したりする必要はなく、軸受を交換するだけで電動機を再利用できるようになるので、費用及び工数の面での使用者の負担が軽減される。
本発明の第2の態様によれば、アキシャル荷重等が原因で、軸受の内輪が外輪に対して軸線方向に移動したとしても、軸受の内輪が飛散防止部材と接触することを防止できる。
本発明の第3の態様によれば、軸受が破壊された結果、回転軸が本来の軸線方向に対して傾斜したとしても、少なくとも軸受の転動体がハウジングの内側に飛散することを防止できる。
本発明の第4の態様によれば、適度な剛性を有する金属製の材料を選択することで、軸受の構成部品が突き当たったときの衝撃で飛散防止部材が変形することを防止できる。
本発明の第5の態様によれば、軸受の構成部品が突き当たったときの衝撃で飛散防止部材がハウジングから脱落することを防止できる。従って、第5の態様によれば、飛散防止部材がハウジングの内側に侵入し、それにより固定子巻線及び回転子鉄心等が損傷されることを防止できる。さらに、第5の態様によれば、ハウジングの部品点数が削減されるので、ハウジングの組立工程が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態の例示的な電動機の縦断面図である。
図2図1の部分拡大図であり、図1の電動機における飛散防止部材の近傍を拡大して示している。
図3】飛散防止部材の変形例が適用された電動機を示す、図1と同様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に記載される内容は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲や用語の意義等を限定するものではない。
【0010】
図1図3を参照して、本発明の1つの実施形態の電動機について説明する。本実施形態の電動機は、回転子と固定子が協働して動力を発生させる回転式の電動機である。より具体的に、本実施形態の電動機は、回転子の内部に永久磁石が埋め込まれた構造を有するIPM(Interior Permanent Magnet)モータである。図1は、例示的な電動機Mの縦断面図である。図1のように、本例の電動機Mは、筒状の本体部11を有するハウジング1と、本体部11の内側に配置される固定子2及び回転子3と、ハウジング1に取り付けられ、回転子3の回転軸32を支持する一対の軸受4,4と、を備えている。これらについて以下に順に説明する。なお、以下の説明では、回転軸32の延在方向を単に軸線方向と称することがある。
【0011】
図1のように、本例のハウジング1は、軸線方向に沿って延在する筒状の本体部11と、本体部11の延在方向の両端部の各々を閉塞する側壁部12,13と、を有している。それら側壁部12,13の各々には、軸線方向に沿って延在する円柱状の中心穴CHが形成されており、中心穴CHの内周面には、軸受4の外輪41に対応する寸法及び形状を有する円周溝CGが形成されている。以下では、ハウジング1の外側に突出する回転軸32の先端部AEに近い方の側壁部12を出力側の側壁部12と称し、それとは反対側の側壁部13を反出力側の側壁部13と称することがある。図1のように、反出力側の側壁部13に隣接する本体部11の所定の箇所には、軸線方向に対して垂直に延在する貫通穴THが形成されており、貫通穴THには、後述する固定子巻線22の引き出し線LWが挿通されている。そして、本体部11の外周面には、貫通穴THを閉塞するように配置された端子台TBが取り付けられている。
【0012】
続いて、本例の固定子2は、複数の電磁鋼板が積層された構造を有する筒状の固定子鉄心21と、固定子鉄心21に装着された固定子巻線22と、を有している。図1のように、固定子鉄心21の外周面が、ハウジング1の本体部11の内周面に固着されており、固定子鉄心21と本体部11は同心状になっている。また、固定子鉄心21の内周面には、軸線方向に沿って延在する複数のスロットが等間隔に形成されており、それらスロットの内部には固定子巻線22が配置されている。そして、固定子巻線22の引き出し線LWは、上述した端子台TBの金属端子部と電気的に接続されている。従って、端子台TBに交流電源が接続されると、固定子巻線22を流れる交流電源によって回転軸32の周りに回転磁界が形成される。
【0013】
続いて、本例の回転子3は、複数の電磁鋼板が積層された構造を有する円筒状の回転子鉄心31と、回転子鉄心31と一体に回転するように回転子鉄心31の中心穴に嵌入された回転軸32と、を有している。図1のように、回転子鉄心31は、その周方向に沿って等間隔に配置された複数の挿入穴IHを有している。それら挿入穴IHの各々は、回転子鉄心31の外周面よりも所定の距離だけ半径方向の内側に位置しており、回転子鉄心31の軸線方向の概ね全長にわたって延在している。そして、それら挿入穴IHの各々には、軸線方向に沿って並べられた複数の平板状の磁石33が挿入されている。本例の磁石33は、フェライト磁石又はネオジム磁石等の永久磁石であり、それら磁石33の外面は挿入穴IHの内面に接着されている。
【0014】
また、本例の回転軸32は、ハウジング1の出力側の側壁部12に取り付けられた出力側の軸受4、及び反出力側の側壁部13に取り付けられた軸受4によって支持されている。回転軸32の先端部AEは、工作機械又は周辺機器等の負荷装置(図示しない)の被駆動軸に連結可能であり、それにより電動機Mの回転駆動力が種々の負荷装置に伝達される。例えば、回転軸32の先端部AEに装着された駆動プーリ、及び被駆動軸の先端部に装着された被駆動プーリに掛けられた無端状のベルトを介して、電動機Mの回転駆動力が負荷装置に伝達される。このような負荷装置の駆動方式は一般にベルト駆動方式と称される。
【0015】
続いて、本例の電動機Mにおける軸受4について説明する。図2は、図1の部分拡大図であり、図1の電動機Mにおける出力側の軸受4の近傍を拡大して示している。なお、出力側の軸受4と反出力側の軸受4は同様の構造を有するので、以下では出力側の軸受4のみについて説明する。図2のように、出力側の軸受4は、円筒状の外輪41と、外輪41よりも半径方向の寸法が小さい円筒状の内輪42と、外輪41及び内輪42の間に配置された複数の転動体43と、それら転動体43を円周方向に沿って等間隔に保持する保持器(図示しない)と、を備えている。このような構造を有する軸受は一般に転がり軸受と称される。そして、出力側の軸受4の外輪41は、上述した出力側の側壁部12の円周溝CGに嵌着されており、内輪42の中心穴には回転軸32が嵌入されている。
【0016】
図2のように、出力側の軸受4には、複数の転動体43が軸受4の外部に露出しないように、外輪41と内輪42の間の円環状の開口部を少なくとも部分的に閉塞する円環状のシールド部材44が取り付けられている。より具体的に、出力側の軸受4には、複数の転動体43を挟むように軸線方向に沿って配列された一対のシールド部材44,44が取り付けられており、それらシールド部材44,44の各々は、外輪41の内周面に形成された円周溝に嵌着されている。本例のシールド部材44は、主として、軸受4の内部に付与された潤滑剤、特に、外輪41及び内輪42のそれぞれと転動体43の接触部に塗布された潤滑剤が、軸受4の外部に飛散するのを防止する機能を有している。これにより、軸受4の内部の潤滑剤が、ハウジング1の本体部11の内側に飛散して回転子鉄心31及び固定子巻線22等に付着することが防止される。なお、出力側の軸受4のシールド部材44,44の各々は、軸受4の外輪41ではなく内輪42に嵌着されてもよいし、ハウジング1の側壁部12の内周面に取り付けられてもよい。
【0017】
ところで、電動機Mによる負荷装置の駆動方式として、上述したベルト駆動方式が採用される場合には、電動機Mの最大トルクが大きくなるにつれて回転軸32に加わるラジアル荷重も増大する。そして、回転軸32に過度のラジアル荷重が加わると、出力側の軸受4が破壊され、それにより軸受4の構成部品が飛散する虞がある。ここでいう軸受4の構成部品には、上述したシールド部材44、転動体43、及び保持器等が含まれる。そこで、本例の電動機Mは、破壊された軸受4の構成部品がハウジング1の本体部11の内側に飛散するのを防止する飛散防止部材5を備えている。引き続き図2を参照して、本例の飛散防止部材5について詳細に説明する。
【0018】
図2のように、本例の飛散防止部材5は、軸線方向に対して垂直に配置された円盤状の形態を有しており、その中央部には、回転軸32が挿通される中心穴51が形成されている。そして、本例の飛散防止部材5は、ハウジング1の側壁部12における固定子鉄心21及び回転子鉄心31に対向する端面に取り付けられている。なお、本例の飛散防止部材5は、軸受4のアキシャル隙間の1/2よりも大きい距離だけ、軸受4から軸線方向に離間して配置されることが好ましい。ここでいうアキシャル隙間とは、外輪41を固定した状態で内輪42を軸線方向の両側に移動させたときの最大の移動量を意味している。上述した飛散防止部材5の配置によれば、回転軸32に加わるアキシャル荷重等によって軸受4の内輪42が外輪41に対して軸線方向に移動したとしても、軸受4の内輪42が飛散防止部材5に接触することを防止できる。
【0019】
このように、出力側の軸受4と回転子鉄心31の間には、軸線方向に対して垂直に配置された飛散防止部材5が介在しているので、軸受4の構成部品が回転子鉄心31に向かって移動したとしても、それら構成部品は飛散防止部材5に突き当たって停止させられる。また、本例の飛散防止部材5は、軸受4の構成部品が突き当たったときの衝撃で変形することのないように、高度な剛性を有する金属材料から形成されることが好ましい。ただし、本例の飛散防止部材5は、高度な剛性を有する種々の樹脂材料又は複合材料から形成されてもよい。さらに、本例の飛散防止部材5は、軸受4の構成部品が突き当たったときの衝撃でハウジング1から脱落することのないように、ボルト及びナット等を含む固定部材によってハウジング1に強固に固定されることが好ましい。ただし、本例の飛散防止部材5は、ハウジング1に溶接されてもよいし、種々の接着剤によってハウジング1に接着されてもよい。
【0020】
また、本例の電動機Mにおいて、飛散防止部材5の中心穴51の寸法は、軸受4の構成部品が本体部11の内側に飛散するのを確実に防止するように最適化されうる。例えば、飛散防止部材5の中心穴51の直径(D)は、回転軸32の直径(d1)に、転動体43の直径(d2)を2倍した値を加えた和よりも小さくされることが好ましい。すなわち、D<d1+d2×2であることが好ましい。これにより、軸受4が破壊された結果、回転軸32が本来の軸線方向に対して傾斜したとしても、回転軸32の外周面と飛散防止部材5の内周面との間に、転動体43の直径(d2)よりも大きい隙間が形成されることはない。従って、上述した中心穴51の寸法によれば、軸受4の転動体43が本体部11の内側に飛散するのを確実に防止できる。ただし、飛散防止部材5の中心穴51の直径(D)を回転軸32の直径(d1)に際限なく近づけると、軸受4のラジアル隙間等が原因で、飛散防止部材5の内周面が回転軸32の外周面に接触する虞がある。ここでいうラジアル隙間とは、外輪41を固定した状態で内輪42を半径方向に移動させたときの最大の移動量を意味している。そのため、中心穴51の直径(D)は、回転軸32の直径(d1)に、軸受4のラジアル隙間(g)を加えた和よりも大きくされることが好ましい。すなわち、D>d1+gであることが好ましい。
【0021】
以上のように、本例の電動機Mによれば、軸受4が破壊された結果、軸受4の構成部品が回転子鉄心31に向かって移動したとしても、それら構成部品は飛散防止部材に突き当たって停止させられる。従って、本例の電動機Mによれば、過度のラジアル荷重等が原因で軸受4が破壊されたとしても、軸受4の構成部品が、固定子2及び回転子3の配置されたハウジング1の本体部11の内側に飛散することを防止できるので、固定子巻線22及び回転子鉄心31等を含む本体部11の内側の構造部が損傷されることを防止できる。その結果、軸受4が破壊されたとしても本体部11の内側の構造部を修理したり交換したりする必要はなく、軸受4を交換するだけで電動機Mを再利用できるようになるので、費用及び工数の面での使用者の負担が軽減される。
【0022】
続いて、本実施形態の電動機Mにおける飛散防止部材5の変形例について説明する。図3は、本例の飛散防止部材5が適用された電動機Mを示す、図1と同様の縦断面図である。図1図3を比較すると分かるように、図1の例では、ハウジング1とは別個に形成された飛散防止部材5が、ハウジング1の側壁部12に取り付けられているのに対して、図3の例では、飛散防止部材5がハウジング1と一体に形成されている。より具体的に、本例の飛散防止部材5は、種々の金属材料の鋳造又は機械加工等によってハウジング1の出力側の側壁部12と一体に形成されている。本例の飛散防止部材5の寸法及び形状等は上述した図1の例と同様であり、本例の電動機Mにおける飛散防止部材5以外の部分の構造も上述した図1の例と同様である。
【0023】
本例の電動機Mによれば、軸受4の構成部品が突き当たったときの衝撃で飛散防止部材5がハウジング1の側壁部12から脱落することを防止できる。従って、本例の電動機Mによれば、飛散防止部材5がハウジング1の本体部11の内側に侵入し、それにより固定子巻線22及び回転子鉄心31等が損傷されることを防止できる。さらに、本例の電動機Mによれば、ハウジング1の部品点数が削減されるので、ハウジング1を組み立てる組立工程が簡素化される。
【0024】
本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々改変されうる。例えば、上記の実施形態では、ハウジング1の出力側の側壁部12のみに飛散防止部材5が取り付けられているものの、本発明の電動機Mでは、出力側の側壁部12と反出力側の側壁部13の両方に飛散防止部材5が取り付けられてもよい。また、上記の実施形態では、永久磁石33が回転子鉄心31に埋め込まれた構造のIPMモータが採用されているものの、本発明の電動機Mは、永久磁石33が回転子鉄心31の外周面に貼り付けられた構造のSPM(Surface Permanent Magnet)モータであってもよいし、その他の形式のモータであってもよい。さらに、上述した各部の寸法、形状、及び材質等は一例にすぎず、本発明の効果を達成するために多様な寸法、形状、及び形状等が採用されうる。
【符号の説明】
【0025】
1 ハウジング
11 本体部
12 側壁部
13 側壁部
2 固定子
21 固定子鉄心
22 固定子巻線
3 回転子
31 回転子鉄心
32 回転軸
33 磁石
4 軸受
41 外輪
42 内輪
43 転動体
44 シールド部材
5 飛散防止部材
51 中心穴
AE 先端部
CG 円周溝
CH 中心穴
IH 挿入穴
LW 引き出し線
TB 端子台
TH 貫通穴
M 電動機
図1
図2
図3