(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クラッチ(260、360)は、前記クラッチ(260、360)の回転速度が予め決められたしきい値を超えると自動的に切り離されることを特徴とする請求項4に記載のトルクベクタリングデバイス。
前記制御手段(150、420、430、440)は、前記車両の現在の状態を示す前記複数の変数(442、444)のうちの少なくとも1つの分析に基いて前記クラッチ(260、360)を自動的に切り離すように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のトルクベクタリングデバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、好ましくは、当技術分野における上記特定された1つ又はそれ以上の欠陥及び欠点を、単独または組合せて緩和、軽減、または排除するものであり、付属の特許請求の範囲のデバイスを提供することによって上記説明された問題を少なくとも解決する。
【0008】
本発明の目的は、上記説明した問題を克服するトルクベクタリングデバイスを提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、現代の自動車で実施されるように構成された効率的なトルクベクタリングデバイスを提供することである。
【0010】
さらに、本発明の目的は、大きさとエネルギー消費量をかなり低減したトルクベクタリングデバイスを提供することである。
【0011】
1つの態様によると、車両のトルクベクタリングデバイスが提供される。トルクベクタリングデバイスは、第1駆動シャフトと第2駆動シャフトとを有する車軸に配置されている差動機構と、前記第1駆動シャフトと前記第2駆動シャフトとの間でトルクベクタリングのために前記車軸に接続されている電気モータに接続されている電力供給源と、前記電力供給源に接続され、かつ、前記自動車の現在の状態を示す複数の変数を受け取って、前記複数の変数に依存する駆動電流を決定するように構成されている制御手段とを有する。前記駆動電流は、前記電力供給源から前記電気モータに供給され、前記第1駆動シャフトと前記第2駆動シャフトのうちの一方にトルク増加をもたらし、かつ前記第1駆動シャフトと前記第2駆動シャフトのうちの他方に対応するトルク減少をもたらす。このことは、トルクベクタリングデバイスを比較的小さく作れるかもしれないという有利さがある。なぜなら、トルクベクタリングデバイスが電気モータに対して絶対的な回転速度に比例する回転速度で作動する代わりに、差動装置の回転速度に比例する回転速度で作動することのみを要求するからである。
【0012】
前記電力供給源は、蓄電池を含み、前記制御手段は、複数の変数を収集するように構成されている車両通信ネットワークと、前記複数の変数を受け取って、1つ又はそれ以上の制御信号を計算するように構成されているコントローラと、前記1つ又はそれ以上の制御信号を受け取って、前記駆動電流を前記蓄電池を介して電気モータに供給することによって前記蓄電池と前記電気モータとの間で前記エネルギー流れを制御するように構成されているパワーエレクトロニクスユニットとを有するかもしれない。したがって、トルクベクタリングデバイスは、トルクベクタリングデバイスが不均質な摩擦を有する表面で牽引を増進する機能として使用されるようなリアルタイムの状態検出で使用されるかもしれない。
【0013】
トルクベクタリングデバイスは、前記車軸を駆動するように配置されている電気推進モータをさらに含むかもしれない。このことは、共通の電気システムが、電気モータと電気推進モータのために使用され、それにより、トルクベクタリングデバイスの大きさと複雑さとを低減するかもしれないので、有利である。
【0014】
前記電気推進モータは、前記車軸に配置され、前記電気推進モータのローターが前記車軸の軸の周りを回転するかもしれない。したがって、車軸にトルクを伝達するコンポーネントが必要ないので、よりコンパクトなデバイスをもたらす。
【0015】
差動機構(differential mechanism)は、差動装置(differential)を含むかもしれない。このことは、容易に利用可能なコンポーネントが使用され、前記電気モータが遊星歯車セットによって前記第1駆動シャフトと前記第2駆動シャフトとに接続され、前記電気モータが太陽歯車を駆動し、前記第1駆動シャフトがリング歯車に接続され、前記第2駆動シャフトが遊星歯車セットに接続されているかもしれないので有利である。そのような実施例では、遊星歯車セットの歯数比は、電気モータが作動していないとき、トルクが遊星歯車セットを介して伝達されないように設計されているかもしれない。さらに、遊星歯車セットの歯数比は、第1駆動シャフトと第2駆動シャフトが同じ回転速度で回転しているとき、電気モータがまだ静止しているように設計されるかもしれない。このことは、エネルギー損失をできるだけ抑えられることを意味する。
【0016】
前記差動機構は、前記第1駆動シャフトに接続されている第1遊星歯車セッと前記第2駆動シャフトに接続されている第1遊星歯車セットとを含み、かつ、前記電気モータが異なる方向に回転する2つの歯車によって前記第1駆動シャフトと前記第2駆動シャフトに接続され、前記2つの歯車が前記車軸に沿って延びているシャフトによって互いに接続されているかもしれない。したがって、歯車と接続するシャフトは、第1駆動シャフトと第2駆動シャフトが同じ回転速度で回転するとき、まだ静止するように設計されている。さらに、シャフトは、第1駆動シャフトと第2駆動シャフトとの間で差動装置の回転速度に比例する速度で回転するように設計されている。差動装置の回転速度は、たいていは、ゼロかまたは非常にゼロに近いので、エネルギー損失は抑えられるだろう。
【0017】
前記電気モータは、前記電気モータの回転軸を前記差動機構から切り離すように構成されているクラッチに接続されているかもしれない。前記クラッチの回転速度が予め決められたしきい値を超えるとき、前記クラッチは、自動的に切り離されるかもしれない。さらに又は追加で、前記制御手段は、前記自動車の現在の状態を示す前記複数の変数のうちの少なくとも1つの分析に基いて前記クラッチを自動的に切り離すように構成されているかもしれない。このことは、電気モータが過負荷に対して、例えば、ESP介入などの一時的な自動車の条件に対して保護されるので有利である。
【0018】
前記電気推進モータは、前記車軸から前記電気推進モータを切り離すように構成されている機械的切り離しユニットに接続されているかもしれない。その代わりかまたは追加的に、前記制御手段は、前記車軸から前記電気推進モータを切り離すために、前記自動車の現在の状態を示す前記複数の変数のうちの少なくとも1つの分析に基づいて前記機械的切り離しユニットを自動的に切り離すように構成されているかもしれない。このことは、高速の間にドラッグトルク(空転摩擦トルク)と弱め界磁(field weakening)が生じ、高損失が減少または排除されるかもしれないので、さらに有利である。
【0019】
前記パワーエレクトロニクスユニットは、前記蓄電池を介して前記電気推進モータに駆動電流を供給することによって、前記蓄電池と前記電気推進モータとの間で前記エネルギー流れを制御するようにさらに構成されているかもしれない。前記パワーエレクトロニクスユニットは、前記自動車にブレーキをかけている間に逆のエネルギー流れを可能にし、前記蓄電池を充電するようにさらに構成されているかもしれない。
【0020】
前記コントローラは、複数の制御プログラムを実行するように構成されており、各制御プログラムは、前記自動車の現在の状態を示す前記複数の変数に基づいて、前記パワーエレクトロニクスユニットへの前記1つ又はそれ以上の制御信号によって示されるような前記電気モータに対するトルク要求を適切に計算することによって、前記自動車の駆動力のそれぞれの態様(respective aspect)を制御するように設計されているかもしれない。
【0021】
前記コントローラは、前記制御プログラムのうちの異なる制御プログラムから同時発生するトルクを、そのような同時発生する要求に優先順位を付けて、各独立した同時発生するトルク要求を、許可する、組み合わせる、または、禁止することで、最も適切と考えられるように処理するように構成されている調停機能をさらに含むかもしれない。本発明は、付属の図面を参照して、以下に、さらに詳細に記載されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
当業者が本発明を実施できるように、添付図面を参照して本発明の実施例をさらに詳細に以下で説明する。しかしながら、本発明は、本明細書に詳しく説明される実施例に制限されるものとして理解するべきではなく、多くの異なる形態で実施されるかもしれない。むしろ、実施例は、本開示が徹底的かつ完全なものであるものとして提供され、かつ当業者に本発明の完全な範囲を提供するであろう。実施例は本発明を限定しないが、本発明は付属の特許請求の範囲によってのみ限定される。また、添付図面に例示された特定の実施例の詳細な説明に使用される専門用語は、本発明を限定することを意図しない。
【0024】
自動車の駆動ラインの構成例は
図1〜
図6に示される。これらの実施例では、自動車10は、後車軸14に接続された前車軸12とトルクベクタリングデバイス16とを有する。
図1では、前車軸12は、変速装置18によって駆動され、後車軸14は、電気モータ20によって駆動される。トルクベクタリングデバイス16は後車軸14に配置される。
図2では、同様の構成が示されるが、ここでは、後車軸は、変速装置18によって駆動され、前車軸は電気モータ20によって駆動される。その結果、トルクベクタリングデバイス16は、前車軸に配置される。
図3と
図4は、前車軸12または後車軸14が電気モータ20によって駆動され、トルクベクタリングデバイス16が駆動軸12、14に配置される構成に示している。別の例として、
図5は、前車軸12と後車軸14が電気モータ20によって駆動される構成を示している。
【0025】
図6を参照すると、トルクベクタリングデバイス100の基本的機構が示される。自動車の駆動軸110は、変速装置120によって駆動され、車軸110の対向する端部に接続された2つの車輪112
a、112
bを有する。変速装置120は、差動機構130と結合され、車輪112
a、112
bが異なる速度で回転することを可能にする。電気モータ140は、差動機構130に接続され、車軸110の対向する端部にトルク差を提供する。制御手段150は、さらに電気モータ140に接続され、電気モータ140に制御信号を計算して伝達するように構成される。
【0026】
自動車が真っ直ぐなコースを移動するとき、両輪112
a、112
bは、同じ速度で回転するだろう。この状況において、電気モータ140は、まだ静止しているだろう。自動車が不均質な摩擦を有する表面を通過するとき、トルクベクタリングデバイス100は、駆動軸110の牽引の潜在力を高めるために使用されるかもしれない。この状況下で制御手段150は、信号を電気モータ140に送り、電気モータ140はトルクを作動させて印加する。この場合、トルクの増加は、車軸110の端部の一方に提供され、対応するトルクの減少は車軸110の対向する他方の端部に提供するだろう。
【0027】
トルクベクタリングデバイスの実施例を
図7に示す。電気推進モータ200は、トルクを回転シャフト202から歯車204、205、206、207、208を介して駆動軸210に伝達する。駆動軸210は、中心部分212と第1駆動シャフト214と第2駆動シャフト216を有する。中心部分212は2つの遊星歯車220
a、220
bによって第1駆動シャフト214と第2駆動シャフト216に連結される。中心部分212は、太陽歯車222に接続され、第1駆動シャフト214と第2駆動シャフト216は、複数の遊星歯車224に接続される。リング歯車226は、トルクベクタリングモータ230との係合のために外面上に歯を提供する。トルクベクタリングモータ230は電気モータであり、起動すると、軸232と歯車234、歯車236を介して回転シャフト240に回転を伝達する。回転シャフト240は、駆動軸210の軸に沿って延び、第1遊星歯車セット220
aのリング歯車226と係合する第1歯車242と、中間歯車246を介して第2遊星歯車セット220
bのリング歯車と係合する第2歯車244を有する。トルクベクタリングモータ230が作動するとき、トルクベクタリングモータ230は、トルクを提供するだろう。その結果、自動車の実際の状態によって決定されるトルクベクタリングモータ230が回転すると、リング歯車226の反対の回転が引き起こされるだろう。したがって、トルクの増加は、第1駆動シャフト214、第2駆動シャフト216の一方に提供され、トルクの減少は、遊星歯車220
a、220
bを介して第1駆動シャフト214、第2駆動シャフト216の他方に提供される。
【0028】
必要に応じて、電気推進モータ200は、駆動軸210の中心部分212に配置されるかもしれない。しかしながら、電気推進モータ200が駆動軸210からある距離で配置される場合に、多くの利点が得られる。例えば、そのような構成物は、以下で詳細に説明される電気推進モータ200を機械的に切り離す機能の実施を容易にするだろう。そのうえ、遊星歯車220
a、220
bは、電気推進モータ200の寸法に対応する必要が無いのでより小さくすることができる。更なる利点は、電気推進モータ200が駆動軸210からある距離に配置される場合、アクセスが容易となるので、駆動軸210の冷却が容易である。
【0029】
トルクベクタリングデバイスの別の実施例は、
図8に示さる。電気モータ(図示せず)は、差動装置ユニット320を介してトルクを駆動軸310に伝達する。トルクは、差動装置ユニット320によって、第1駆動シャフト314と第2駆動シャフト316の間で等しく分配される。第1駆動シャフト314に外側歯を有する歯車318が提供され、第1駆動シャフト314と同じ中心軸の周りを回転するように配置されている。第2駆動シャフト316に外側歯を有する歯車319が提供され、第2駆動シャフト316と同じ中心軸の周りを回転するように配置されている。
【0030】
トルクベクタリングモータ330は、トルクを第1駆動シャフト314から第2駆動シャフト316に伝達するか、逆も同様に伝達するように提供される。トルクベクタリングモータ330は、遊星歯車セット340の太陽歯車342に接続される。リング歯車346は、歯車318、348によって第1駆動シャフト314に接続される。また、遊星キャリヤー344は、シャフト350と歯車319、349によって第2駆動シャフト316に接続される。
【0031】
トルクベクタリングモータ330が作動するとき、トルクベクタリングモータ330は、歯車318、319に反対のトルクを供給するだろう。したがって、トルクの増加が第1駆動シャフト314、第2駆動シャフト316の一方に提供され、トルクの減少が遊星歯車セット340を介して第1駆動シャフト314、第2駆動シャフト316の他方に提供される。
【0032】
歯車318、歯車348と歯車319、349の歯数比が、それぞれ遊星歯車セット340の歯数比と調和していると、第1駆動シャフト314と第2駆動シャフト316が等しい回転速度を有する場合、トルクベクタリングモータ330は静止するだろう。もしそうだとすれば、以下の条件
i
1/i
2=2・(r
01+r
02)/(r
01+2r
02)
を満たさなければならない。ここで、i
1は、歯車318、348間の歯数比であり、i
2は歯車319、349間の歯数比であり、r
01とr
02は、遊星歯車セット340の参照半径である。上記パラメータは、トルクベクタリングモータの妥当な速度とトルク要件を達成するために選ばれるかもしれない。例えば、特定の構成では、i
1は3にセットされ、i
2は2、67であり、r
01は8であり、r
02は28である。
【0033】
説明された実施例では、トルクベクタリングモータ230、330は、無段変速リバーシブル電気モータであるかもしれない。
【0034】
図7と
図8に示されるように、トルクベクタリングモータ230、トルクベクタリングモータ330は、ESP調停などの過渡的な自動車条件への過負荷に対する機械的保護を供給するデバイス(自動クラッチ)260、自動クラッチ360に接続されるかもしれない。自動クラッチ260、自動クラッチ360は、従って、回転速度が予め決められたクラッチを切り離す限界を超えるとき、トルクベクタリングモータ230、トルクベクタリングモータ330を切り離すように提供される。そのような自動クラッチ260、自動クラッチ360の例は、
図9に示される。自動クラッチ260、自動クラッチ360は、シャフト240、シャフト350に接続されるクラッチドラム265と、旋回ジョイント262によってクラッチドラム265に接続されている少なくとも2つのレバーアーム263とを有する。ハブ261は、レバーアーム263とハブ261の間の摩擦を介してクラッチを切り離す限界以下の回転速度がハブ261からクラッチドラム265まで伝達されるように、トルクベクタリングモータ230、トルクベクタリングモータ330に接続されている。回転速度がクラッチを切り離す限界に達すると、レバーアーム263に作用する遠心力は、バネ力を超え、その結果、トルクは全く伝達されることができない。したがって、遠心クラッチ(自動クラッチ)260、360は、過剰な速度からトルクベクタリングモータを保護するためにある回転速度でトルクベクタリングモータ230、330を切り離すだろう。別の例では、制御手段150、420、430、440は、自動車の現在の状態を示す複数の変数442、444のうちの1つを分析することによって自動クラッチ260、360の自動切り離しを引き起こすように構成される。例えば、自動クラッチ260、360の自動切り離しは、電気モータ(トルクベクタリングモータ)230、330の回転速度の分析に基づき、回転速度が変数442、444のうちの1つとして測定された値を提供する少なくとも1つのセンサによって測定されるかもしれない。
【0035】
また更なる実施例は、電気推進モータ200の機械的切り離しユニットを提供する。そのような機械的切り離しユニットは、
図9を参照して説明されたクラッチと同様の遠心切り離しユニット、または、例えば、マイクロプロセッサによって制御されるドラッグクラッチ、または、限定されたスリップクラッチによって、ある速度で電気推進モータを切り離すように適合させることができる。特別な種類の電気推進モータに依存するが、ドラッグトルクと弱め界磁から派生する高速での高損失があるかもしれない。電気推進モータを切り離すことによって、そのような損失を最小にでき、したがって、燃料の節約を最大にできるかもしれない。電気推進モータが切り離されるとき、トルクベクタリングモータは、依然として使用され、その結果、車両安定性に影響を及ぼすためにいつも利用されるかもしれない。特定の実施例では、制御手段150、420、430、440は、駆動軸110、210、310、402から電気推進モータ20、200、400を切り離すために、自動車の現在の状態を示す前記複数の変数442、444のうちの少なくとも1つの分析に基づく機械的切り離しユニットの自動的な作動を引き起こすように構成されている。
【0036】
スピードギアは、電気推進モータ200と駆動軸110、210、310との間に配置されるかもしれない。従って、変速装置などのスピードギアは、電気推進モータの速度とトルクを変換するために使用される。このことは、電気推進モータ200が最適速度のインターバルで作動することを可能にし、その結果、自動車の全エネルギー消費を低減するので、有利である。
【0037】
今まで説明したすべての実施例において、トルクベクタリングモータ230、トルクベクタリングモータ330は、自動車中に配置される制御手段から制御信号を受け取ることを仮定した。制御手段は、複数の自動車変数を受け取って、トルクベクタリングモータに伝達される対応する出力信号を決定するように構成される。例えば、制御手段は、複数の自動車変数を収集するように構成されている自動車ネットワーク通信と、前記自動車変数を受け取って出力信号を計算するように構成されたコントローラと、電力供給源と電気モータとの間のエネルギー流れを制御するために出力信号に対応して電気モータに駆動電流を供給するように構成されているパワーエレクトロニクスユニットとを有する。電力供給源は、例えば、バッテリーや燃料電池のような電気蓄電池、または電気発生機であるかもしれない。トルクベクタリングデバイス100、200、300が、燃焼機関によって少なくとも部分的に駆動される自動車で実施される1つの特定の実施例では、電力供給源は、前記燃焼機関によって駆動される発生機であるかもしれない。更なる実施例では、発生機は、別の燃焼機関によって駆動されるかもしれない。しかしながら、以下の段落で説明される実施例では、電力供給源は電気蓄電池である。
【0038】
図10を参照して上記説明された実施例のトルクベクタリングデバイスがどのように車(自動車)などの現代の路上走行車で適用されるかを以下に説明する。
図10で理解できるように、自動車400は、第1車軸駆動機構404によって駆動される第1車軸402を含む。周知のとおり、第1車軸402上の差動機構406は、第1車軸402の左の駆動シャフト402
Lとその上に搭載された左の車輪408
Lが、第1車軸402の右の駆動シャフト402
Rとその上に搭載された右の車輪408
Rと異なる速度で回転することを可能にする。上記説明された電気モータ140、230または330などで実施されるトルクベクタリングモータ410は、既に図面を参照して説明したように、左の駆動シャフト402
L、右の駆動シャフト402
Rのうちの一方にトルク増加411
Iと、左の駆動シャフト402
L、右の駆動シャフト402
Rのうちの他方に対応するトルク減少411
Dを提供するかもしれない。
図10において、トルク増加411
Iは、左の駆動シャフト402
Lに印加され、一方、トルク減少411
Dは、右の駆動シャフト402
Rに印加される。しかしながら、トルクベクタリングモータ410の回転を逆にすることによって、状況は正反対になるだろう。
【0039】
トルクベクタリングモータ410は、蓄電池424の形態の電力供給源からパワーエレクトロニクスユニット420に供給される駆動電流412によって駆動される。次に、パワーエレクトロニクスユニット420は、トルクベクタリングコントローラ430からの1つ又はそれ以上の制御信号422によって制御される。駆動電流412の振幅と極性は、トルクベクタリングモータ410の回転速度と方向を決定し、その結果、左の駆動シャフト402
Lと右の駆動シャフト402
Rに印加されるトルク増加411
I/トルク減少411
Dの大きさと方向を決定する。
【0040】
電気機械と同様に、トルクベクタリングモータ410は、モータとして機能するばかりではなく、第1車軸402の回転の機械的エネルギーを蓄電池424で受け取って貯蔵する電気エネルギーに変換する発生機として駆動するかもしれない。このことは、自動車の電気エネルギーの消費を抑え、かつ蓄電池424の周期的な再充電を延ばすように、回生制動のために有利に使用されるかもしれない。この目的のために、パワーエレクトロニクスユニット420は、蓄電池424からトルクベクタリングモータ410(モータとして作動するとき)まで、及び、トルクベクタリングモータ410から蓄電池424(発生機として作動するとき)までの電気エネルギーの流れをしっかり制御するために適合されている。したがって、パワーエレクトロニクスユニット420は、トルクベクタリングモータ410への駆動電流412の正確な制御(モータの場合)及び蓄電池424へ供給される発生した電流の正確な制御(発生機の場合)を行うことができる高能率のソリッドステート回路を含む。正確な制御は、後者の場合に蓄電池424(例えば、1つ又はそれ以上の最先端の高エネルギーリチウム電池の形態)の容量、寿命、および安全性が特に重要であり、そうでなければ、危険にさらされるかもしれない。
【0041】
自動車400の実施例では、第1車軸駆動機構404は、電気モータも含むかもしれない。そのような場合、この電気モータもまた、パワーエレクトロニクスユニット420からの駆動電流414によって駆動されるかもしれない。また、逆に、電気モータ404は、パワーエレクトロニクスユニット420の制御の下で、蓄電池424を充電するための発生機として使用されるかもしれない。
【0042】
既に説明したように、パワーエレクトロニクスユニット420は、トルクベクタリングコントローラ430からの1つ又はそれ以上制御信号422によって順に制御される。前述の制御手段150と同じであるかもしれないトルクベクタリングコントローラ430は、好ましくは、マイクロプロセッサ(PLC、CPU、DSP)または、FPGAまたはASICなどの他の適切な処理デバイス技術、または、目的のタスクを実行できるデジタル及び/又はアナログ回路として実施されるかもしれない。トルクベクタリングモータ410の制御を実行し、制御信号422を発生できるように、トルクベクタリングコントローラ430はプログラムされているか、または、そうでなければ、電気モータ制御機能432が提供される。
【0043】
トルクベクタリングコントローラ430の電気モータ制御機能432は、自動車の現在の状態に基づいて、制御信号422を順番に決定する様々な制御変数のリアルタイムの計算を行うことができる。このために、自動車状態のデータが、複数の外部の自動車変数442の形態で、自動車全体に分散されている複数のセンサによって集められる。外部の自動車変数442は、車両通信ネットワーク440で連続的に伝送され、したがって、このネットワークを介して電気モータ制御機能432にアクセスしやすくなっている。例えば、車両通信ネットワーク440は、CAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)、及び/又は、FlexReyなどの工業基準プロトコルに応じて作られているかもしれない。
【0044】
さらに、自動車状態変数444の形態の自動車状態データは、車両通信ネットワーク440上の電気モータ制御機能432によって受け取られるかもしれない。そのような自動車状態変数444は、主な電子制御ユニット(ECU)450、アンチロック制動システム(ABS)452または電子安定性プログラム(ESP)454などによって、自動車中の他のユニットによって生成されるかもしれない。ECU450、ABS452、ESP454は、それ自身の車軸駆動機構464(例えば、燃焼機関など)、差動機構466及び1組の左の車輪468
Lと右の車輪468
Rを有する第2駆動シャフト462を制御するために提供されるかもしれない。自動車の他のユニットからそのような自動車状態変数444を受け取って、使用することによって、電気モータ制御機能432は、トルクベクタリングモータ410(及び、電気モータであるときの第1車軸駆動機構404)は、エネルギー消費、サービス寿命、車両安定性、牽引性能、および駆動安全性により最適に駆動される。
【0045】
逆に、車両通信ネットワーク440を使用して、トルクベクタリングコントローラ430は、トルクベクタリングコントローラ430がトルクベクタリングモータ410(及び、電気モータであるときの第1車軸駆動機構404)のためになした制御決定に関係している情報を自動車の他のユニットに与えるまたは指示するように適合しているかもしれない。例えば、燃焼機関の形態の第2の車軸駆動機構464の制御は、そのような情報または指示を考慮に入れると、燃料の消費量を抑えるかもしれないので、得をするかもしれない。さらに、電子安定性プログラム(ESP)454は、トルクベクタリングコントローラ430からのデータの種類によって改良されてより正確になるかもしれない。
【0046】
したがって、トルクベクタリングシステムを他のシステム、電子安定性プログラム(ESP)454とともに制御することによって、相乗効果を得られることができる。トルクベクタリングシステムは、エンジンとブレーキ系を使用することによって制御できる電子安定性プログラム(ESP)よりも低い差動スピードで、滑らかにかつより正確に制御できる。したがって、トルクベクタリングシステムまたは電子安定性プログラム(ESP)454からの性能要求によって実行される動作を知らせる制御信号を電子安定性プログラム(ESP)454に伝送することができる。
【0047】
ハイブリッド車の最適な燃料消費のために、エンジンと電気駆動の車軸は、燃料消費を最小にする方法で制御されるべきである。このことは、エンジンから動作を要求する信号を伝送するか、またはエンジンコントローラから電気駆動車軸への要求を送る電気駆動車軸中に電子モジュールの最適化されたコントローラを持つことによって実現することができる。受信された自動車状態データ442、444から電気モータ制御機能432によって提供、及び/又は、計算される制御変数の例は、ドライバーの加速または減速要求(すなわち、アクセルまたはブレーキペダル位置)、車輪速度、ハンドル角度、ヨーレート、横方向加速度、算出された車両速度、実際のタイヤスリップ値、道路摩擦利用、オーバーステア/アンダーステアのレベル、エンジン/モータのトルク、速度(車軸駆動機構404または車軸駆動機構464に対する)を含むかもしれない。電気モータ制御機能432は、好ましくは、複数の制御プログラム433
a〜433
eに分割されるかもしれない。各制御プログラムは、トルクベクタリングモータ410にトルク要求を適切に計算することによって、自動車の駆動力のそれぞれの態様を制御するように設計されており、パワーエレクトロニクスユニット420に対する制御信号422によって表されるように、従って、トルクベクタリングモータ410が左の駆動シャフト402
Lと右の駆動シャフト402
Rと間のトルク分布における所望の変化を得るように作動する。
図10で理解できるように、限定されない制御プログラムの例は、電気モータ制御機能432を含む。電気モータ制御機能432は、車両安定性433
a、牽引性能433
b、回生制御433C、ハイブリッド制御433d、およびヨーダンピング433
eを含む。開示された実施例において、これらの制御プログラム433
a〜433
eのすべてまたは少なくともいくつかが互いに並行して実行される。言い換えれば、トルクベクタリングコントローラ430は、制御プログラム433
a〜433
eをマルチタスク方法で実行することができる。複数の同時に実行する制御プログラム433
a〜433
eを持つことは、本当に複雑な車の駆動力に対して広範囲の柔軟で大規模な制御を提供する。
【0048】
電気モータ制御機能432に加えて、トルクベクタリングコントローラ430は、プログラムかまたは別の方法で調停機能性434と安全性/診断機能性436を提供する。
【0049】
調停機能性434の目的は、トルク要求が制御プログラム433
a〜433
eの異なる制御プログラムから同時になされる状況を扱うことである。各制御プログラムは、当の制御プログラムが取り扱うように課される特定のニーズを考慮してトルク要求を決定するので、2つまたはそれ以上の同時発生のトルク要求が相互に共存できなくて、かつ、すべてを承諾できない状況があるだろう。調停機能434は、そのような同時要求に優先順位を付け、それぞれの個々の要求を最も適切であると考えられるように、許可、組み合わせ、または禁止するように設計されている。したがって、調停機能434は、同時発生のトルク要求が互いに競合するときに、それぞれの個別制御プログラムの実行可能性を過度に制限せずに、潜在的な危険な状況が起こるのを防ぐだろう。調停機能性434は、その代わりかまたは追加として、それ自身の調停意思決定をする代わりに、自動車の他のユニット(メインECU450など)から調停指示を受けて行動するように設計されているかもしれない。また、第1車軸駆動機構404が、パワーエレクトロニクスユニット420から駆動電流414によって駆動される電気モータを含むとき、調停機能性434は、電気モータ404に導かれる要求のための調停を扱うように有利に適合されているかもしれない。
【0050】
安全/診断機能性436の目的は、入力される自動車状態データ442、444のエラー、例えば、もっともらしさのチェックとずれ補償を取り扱うことである。また、安全/診断機能性436は、トルクベクタリングモータ410、パワーエレクトロニックユニット420、蓄電池424、及びトルクベクタリングコントローラ430自身の状態と作動を監督し、かつ自動車の他のユニット(例えば、メインECU450)に対して診断情報を伝送するように設計されている。
【0051】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはそれらの組合せを含む適切な形態で実施されるかもしれない。しかしながら、好ましくは、本発明は、1つ又はそれ以上のデータプロセッサ、及び/又は、デジタル信号プロセッサ上で駆動するコンピュータソフトウェアとして実施される。本発明の実施例のエレメントとコンポーネントは、適切な方法で物理的に、機能的に、かつ論理的に実施されるかもしれない。機能性は単一ユニット、複数のユニット、または他の機能ユニットの一部として実際に実施されるかもしれない。このように、本発明は、単一ユニットで実施される、または異なるユニットとプロセッサの間で物理的にかつ機能的に分配されるかもしれない。
【0052】
上記説明された実施例は、付属の特許請求の範囲で画定される範囲から逸脱せずに組み合わせられるかもしれないことが理解されるだろう。本発明は、特定の実施例を参照して上記に説明されるが、本明細書に詳しく説明された特定の形態に制限されることを意図しない。むしろ、本発明は、付随の特許請求範囲によってのみ制限され、上記の特定な実施例以外の実施例は、付随の特許請求範囲内で等しく可能である。
【0053】
特許請求の範囲では、用語「comprise(有する)」は、他の構成要素または工程の存在を排除しない。また、個別に記載されているが、複数の手段、エレメントまたは方法の工程は、例えば、単一ユニットまたはプロセッサによって実施されるかもしれない。さらに、個々の特徴は、異なる請求項に含まれるかもしれないが、個々の特徴は、ことによると有利に結合されるかもしれないし、異なる請求項に含むものは、特徴の組合せが実現可能である、及び/又は、有利でないことを意味しない。また、単数の記載は、複数の記載を排除しない。用語「a、an(1つ)」、「第1」、「第2」などは、複数個を排除しない。特許請求の範囲の参照記号は、単に、はっきりした例を提供するものであり、特許請求範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0054】
トルクベクタリングの技術分野における更なる本発明の概念によると、これによりデバイスが示される。デバイスは、第1駆動シャフトと第2の駆動シャフトを有する車軸上に配置されている差動機構と、前記第1駆動シャフトと第2の前記駆動シャフトとの間でトルクベクタリングのための前記車軸に接続可能なトルク発生ユニットと、トルク量を決定するために前記トルク発生ユニットに接続されている制御手段と、第1駆動シャフトと第2の駆動シャフトの間の差動装置の回転速度を低減するために印加されるトルク量を決定するためにトルク発生ユニットに接続された制動ユニットとを含む。この更なる本発明の概念の好ましい実施例では、トルク発生ユニットは、摩擦ブレーキ、粘性カップリングユニット、ドッグクラッチ、またはディスク・クラッチなどのブレーキ手段である。特定の実施例では、トルク発生ユニットは、自動車の現在の状態を表す複数の変数を受け取って、前記変数に依存する出力信号を決定するように構成された制御手段に接続されている。ここで、前記出力信号は、第1駆動シャフトと第2の駆動シャフトの間の特異な回転速度を減少させるために前記トルク発生ユニットに供給される。
【0055】
図7と
図8を参照して、上記に説明された更なる本発明の概念に応じてトルクベクタリングデバイスを提供するために以下の変形が可能である。トルク発生ユニット、すなわち、ブレーキまたはクラッチは、電気モータ230、電気モータ330の代わりにまたは電気モータ230、電気モータ330に沿って、シャフト232(
図7)またはシャフト342(
図8)に配置されるかもしれない。また、トルク発生ユニットは、固定部に接続されるとき、シャフトの回転速度232、回転速度342は減少するかもしれない。電気モータ230、電気モータ330が取り替えられる場合、回転速度を制限する必要がないので、クラッチ260、クラッチ360を除去するかもしれない。
【0056】
粘性カップリングユニットは、シャフト232、シャフト242の回転速度に依存する制動トルクを提供するかもしれない。ドッグクラッチは、2つの切り離しまたは接続カップリングを提供するかもしれない、すなわち、シャフト232、シャフト242は、回転に対して自由であるか、回転に対して固定されている。摩擦ブレーキまたはディスク・クラッチは、トルクの連続制御を提供するかもしれない。
【0057】
そのようなすべてのトルク発生ユニットに対して、シャフトの回転速度232、回転速度242は、減少または排除されるだけであるかもしれない。その結果、自動車の車輪間の差動装置の回転速度は、減少または排除されるだけであるかもしれない。このことは、電気モータが実施されるとき、その機能に反し、第1駆動シャフトと第2駆動シャフトの間で差動装置の回転速度の増加を可能にする。
【0058】
しかしながら、ブレーキあるいはクラッチなどのトルク発生ユニットは、トルクベクタリングモータと共に実施されるかもしれない。そのような実施例では、デバイスは、電気モータだけの能力より高いブレーキトルクを提供するかもしれない。