特許第5883214号(P5883214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883214
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   G01N35/10
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-119571(P2010-119571)
(22)【出願日】2010年5月25日
(65)【公開番号】特開2011-247688(P2011-247688A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2013年4月17日
【審判番号】不服2014-11100(P2014-11100/J1)
【審判請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100176843
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 美生子
(74)【代理人】
【識別番号】100156579
【弁理士】
【氏名又は名称】寺西 功一
(72)【発明者】
【氏名】田中 晶子
(72)【発明者】
【氏名】田原 博寿
【合議体】
【審判長】 尾崎 淳史
【審判官】 麻生 哲朗
【審判官】 ▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−145143(JP,A)
【文献】 特開2001−242183(JP,A)
【文献】 特開平1−235853(JP,A)
【文献】 特開2006−126084(JP,A)
【文献】 特開2007−278706(JP,A)
【文献】 実開平4−33937(JP,U)
【文献】 特表昭63−501038(JP,A)
【文献】 特開昭59−19857(JP,A)
【文献】 特開平8−220161(JP,A)
【文献】 実公昭56−46218(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料及び試薬を反応容器に分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、
第1試薬及びこの第1試薬が前記反応容器内に吐出された後に吐出される第2試薬から成る前記試薬のうち、前記第1試薬を収容する試薬容器から前記試薬を吸引して前記反応容器内へ吐出する分注を行う移動可能な分注プローブと、
前記反応容器を、この反応容器内の底面以外の内面へ前記分注プローブの一端部の縁辺が近接することにより検出する検出手段と、
前記分注プローブを前記試料が分注された前記反応容器内へ移動して、前記検出手段により検出される吐出位置で停止させる移動手段と、を備え、
前記分注プローブは、管状を成し、前記一端部の一端に形成された前記試薬を吸引及び吐出する開口、外径が前記一端部の外径よりも太く形成された他端部を含む部分の内部に上下方向に形成された第1の流路、及び前記一端部の内部に前記第1の流路に対して斜め下方に傾斜する方向に形成された前記開口及び前記第1の流路に通ずる第2の流路を備え、
前記移動手段は、前記分注プローブの他端部を保持して移動させ、前記一端部が離間して前記反応容器内へ進入した離間位置で停止させた後、前記開口から前記試薬を当該反応容器の底面以外の内面に沿って吐出できる程度に前記縁辺が近接する前記吐出位置で停止させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記分注プローブは、前記試料が分注された前記反応容器内に前記試薬を吐出し、
前記吐出位置では、前記反応容器内に吐出された前記試料及び吐出される前記試薬の混合液の液面より上方に前記縁辺が位置していることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記分注プローブは、前記吐出位置で前記反応容器内面に沿って前記試薬を吐出するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記試薬容器に収容された前記試薬の液面を、この液面と前記分注プローブとの接触により検出し、
前記分注プローブは、前記検出手段により検出される位置から所定の距離下方へ移動した吸引位置で停止した後、前記試薬容器から前記試薬を吸引することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査項目の分析に用いる試薬を分注する分注プローブを備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の測光部で光学的に測定することにより、被検試料に含まれる各検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置には、各検査項目の試薬を収容した試薬容器が試薬庫に格納される。そして、被検試料毎に検査対象の検査項目の分析を行うために、サンプル分注プローブが試料容器に収容された試料を吸引して反応容器に吐出する分注を行う。また、試薬分注プローブが試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注を行う。更に、撹拌子が反応容器内に分注された試料と試薬の混合液を撹拌した後、測光部が反応容器内の撹拌された混合液を測定する。
【0004】
そして、試薬の分注では、試薬分注プローブが試薬を吸引して吐出位置に停止し、吐出位置の下方に停止した反応容器内に試薬を吐出する分注方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この特許文献1のように、反応容器から離間してその反応容器内に試薬を吐出する離間分注方法では、吐出速度が遅いと試薬を吐出する試薬分注プローブの一端からの試薬の液切れが悪くなり、吐出された試薬の一部が一端部外面に残存して分注精度が低下する恐れがある。このため、所定の高速度で試薬の吐出が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−145334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、離間分注方法では、試料が分注された反応容器内に試薬を高速度で吐出すると、吐出された試薬が反応容器内の試料に衝突し、その衝突の勢いで試料の一部が反応容器3内の測定に関与しない位置又は反応容器3外へ飛散して、分析データが悪化する問題がある。
【0008】
また、近年では、分析可能な検査項目の増加に伴い、多種類の試薬を用いて分析が行われる。これらの試薬は1試薬系及び2試薬系の第1試薬や2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬により構成され、試薬毎に性状が異なり、泡立ちやすい試薬や高粘度の試薬が含まれている。このため、試料が分注された反応容器内に泡立ちやすい第1試薬を吐出すると、吐出された第1試薬により反応容器内の試料と第1試薬の混合液における上層で多量の泡立ちが生じ、生じた泡に試料の一部が巻き込まれて保持され、撹拌子による試料と第1試薬の撹拌が不十分になることがある。また、第1試薬の吐出により反応容器内の上層に生じた泡の上方から第2試薬を吐出すると、撹拌子による試料、第1試薬、及び第2試薬の撹拌が不十分になることがある。そして、撹拌が不十分であると、分析データが悪化する問題がある。
【0009】
更に、反応容器内に高粘度の試薬を吐出すると、試薬が吐出されたときに空気が巻き込まれ、巻き込まれた空気が試料と試薬の混合液内に滞留して、測光部における測定精度が低下し、分析データが悪化する問題がある。
【0010】
本発明の実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので分析データの向上を図ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、実施形態の自動分析装置は、試料及び試薬を反応容器に分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、第1試薬及びこの第1試薬が前記反応容器内に吐出された後に吐出される第2試薬から成る前記試薬のうち、前記第1試薬を収容する試薬容器から前記試薬を吸引して前記反応容器内へ吐出する分注を行う移動可能な分注プローブと、前記反応容器を、この反応容器内の底面以外の内面へ前記分注プローブの一端部の縁辺が近接することにより検出する検出手段と、前記分注プローブを前記試料が分注された前記反応容器内へ移動して、前記検出手段により検出される吐出位置で停止させる移動手段と、を備え、前記分注プローブは、管状を成し、前記一端部の一端に形成された前記試薬を吸引及び吐出する開口、外径が前記一端部の外径よりも太く形成された他端部を含む部分の内部に上下方向に形成された第1の流路、及び前記一端部の内部に前記第1の流路に対して斜め下方に傾斜する方向に形成された前記開口及び前記第1の流路に通ずる第2の流路を備え、前記移動手段は、前記分注プローブの他端部を保持して移動させ、前記一端部が離間して前記反応容器内へ進入した離間位置で停止させた後、前記開口から前記試薬を当該反応容器の底面以外の内面に沿って吐出できる程度に前記縁辺が近接する前記吐出位置で停止させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図。
図3】本発明の実施例に係る第1試薬分注プローブの構成を示す断面図。
図4図3に示した第1試薬分注プローブの一部を示す断面図。
図5】本発明の実施例に係る第1試薬分注工程を示すフローチャート。
図6】本発明の実施例に係る第1試薬の分注における第1試薬分注プローブの各停止位置を示す図。
図7】本発明の実施例に係る第2試薬分注工程を示すフローチャート。
図8】本発明の実施例に係る第2試薬の分注における第2試薬分注プローブの各停止位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図8を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料等の試料と各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24と、分析部24の測定に関る各分析ユニットの駆動及び制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0016】
また、自動分析装置100は、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データを生成するデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0017】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料や被検試料等の各試料を収容する試料容器17と、試料容器17を保持するサンプルディスク5とを備えている。また、試料に含まれる検査項目の成分と反応する成分を含有する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、試薬容器6を格納する試薬庫1と、試薬庫1に格納された試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aとを備えている。また、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、試薬容器7を格納する試薬庫2と、試薬庫2に格納された試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aとを備えている。また、円周上に配置された複数の反応容器3と、反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0018】
また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせるサンプル分注ポンプ16aと、サンプル分注プローブ16を移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料の液面をこの液面とサンプル分注プローブ16との接触により検出する試料検出器16bと、サンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄槽70とを備えている。
【0019】
また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬を吸引して試料が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、第1試薬分注プローブ14に第1試薬の吸引及び吐出を行わせる第1試薬分注ポンプ14aと、第1試薬分注プローブ14を移動可能に保持する第1試薬分注アーム8とを備えている。また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬の液面をこの液面と第1試薬分注プローブ14との接触により検出する第1試薬検出器14bと、第1試薬分注プローブ14を洗浄する洗浄槽80とを備えている。
【0020】
そして、第1試薬検出器14bは、試薬容器6内の第1試薬の液面を、例えば第1試薬の液面と第1試薬分注プローブ14との接触による試薬容器6内の第1試薬と第1試薬分注プローブ14間の静電容量変化を検出する。この静電容量型の検出方法により、第1試薬を吐出する反応容器3を、この反応容器3に第1試薬分注プローブ14が近接することにより検出する。そして、検出した検出信号を分析制御部25に出力する。
【0021】
このように、試薬容器6内の第1試薬の液面を検出する第1試薬検出器14bを用いて検出することにより、新たに検出手段を設けることなく、反応容器3を検出することができる。
【0022】
また、反応容器3に分注された試料と第1試薬の混合液を撹拌する第1撹拌子18と、第1撹拌子18を移動可能に保持する第1撹拌アーム20と、第1撹拌子18を洗浄する洗浄槽18aとを備えている。
【0023】
また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、第2試薬分注プローブ15に第2試薬の吸引及び吐出を行わせる第2試薬分注ポンプ15aと、第2試薬分注プローブ15を移動可能に保持する第2試薬分注アーム9とを備えている。また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬の液面をこの液面と第2試薬分注プローブ15との接触により検出する第2試薬検出器15bと、第2試薬分注プローブ15を洗浄する洗浄槽90とを備えている。
【0024】
また、反応容器3に分注された試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する第2撹拌子19と、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム21と、第2撹拌子19を洗浄する洗浄槽19aとを備えている。また、反応容器3内の混合液に光を照射して光学的に測定する測光部13と、測光部13で測定を終了した反応容器3内を洗浄する反応容器洗浄ユニット12とを備えている。
【0025】
そして、測光部13は、回転移動して光路を横切る反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の試料及び第1試薬の混合液や、試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を透過した光を検査項目の波長毎に検出する。そして、検出した検出信号を処理してデジタル信号で表される標準データや被検データを生成し、生成した標準データや被検データをデータ処理部30に出力する。
【0026】
分析制御部25は、分析部24の各分析ユニットを駆動する機構を有する機構部26と、機構部26の各機構を制御する制御部27とを備えている。そして、機構部26は、サンプルディスク5、試薬ラック1a、及び試薬ラック2aを夫々回動する機構、並びに反応ディスク4を回転する機構を備えている。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下移動する機構を備えている。また、サンプル分注ポンプ16a、第1試薬分注ポンプ14a、及び第2試薬分注ポンプ15aを夫々吸引及び吐出駆動する機構、並びに反応容器洗浄ユニット12を上下移動する機構を備えている。
【0027】
制御部27は、機構部26のサンプルディスク5、試薬ラック1a、試薬ラック2a、反応ディスク4、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、サンプル分注ポンプ16a、第1試薬分注ポンプ14a、第2試薬分注ポンプ15a、反応容器洗浄ユニット12等の各分析ユニットを駆動する機構を制御する制御回路を備えている。そして、各第1及び第2試薬分注アーム8,9の機構を制御して、各第1及び第2試薬分注プローブ14,15を移動させる。
【0028】
制御部27の第1試薬分注アーム8の制御回路は、第1試薬分注アーム8を回動する回動機構及びこの回動機構及び第1試薬分注アーム8を上下方向に移動する上下移動機構を制御する。そして、第1試薬分注プローブ14を、回動機構により上死点の高さで試薬庫1、反応ディスク4、及び洗浄槽80の各上停止位置へ移動させる。また、上下移動機構に下移動駆動パルスを供給して各上停止位置から下に移動させ、様々な位置で停止させる。
【0029】
ここで、第1試薬の分注における吸引では、第1試薬分注プローブ14を試薬庫1の上停止位置から下へ移動させる。そして、第1試薬検出器14bからの検出信号に基づいて、試薬容器6内の第1試薬の液面が第1試薬検出器14bにより検出される位置から、その第1試薬の吸引が可能な所定の距離下方へ移動させた第1試薬吸引位置で停止させる。
【0030】
また、第1試薬の吐出では、第1試薬分注プローブ14を反応ディスク4の上停止位置から下へ移動させ、一端を含む一部が反応容器3から離間して反応容器3内へ進入した所定の高さ(離間位置)で停止させる。停止させた後、更に移動して一端が反応容器3内の底面以外の内面に近接して第1試薬検出器14bにより検出される位置(第1試薬吐出位置)で停止させる。そして、第1試薬吐出位置で停止した第1試薬分注プローブ14により、反応容器3から離間した状態で反応容器3内へ第1試薬を吐出する離間分注方法と同様に高速度で反応容器3内への第1試薬の吐出が行われる。
【0031】
制御部27の第2試薬分注アーム9の制御回路は、第2試薬分注アーム9を水平方向に回動する回動機構及びこの回動機構及び第2試薬分注アーム9を上下方向に移動する上下移動機構を制御する。そして、第2試薬分注プローブ15を、回動機構により上死点の高さで試薬庫2、反応ディスク4、及び洗浄槽90の各上停止位置へ移動させる。また、下移動駆動パルスを供給して上下移動機構により各上停止位置から下に移動させ、様々な位置で停止させる。
【0032】
ここで、第2試薬の分注における吸引では、第2試薬分注プローブ15を試薬庫2の上停止位置から下へ移動させる。そして、第2試薬検出器15bからの検出信号に基づいて、試薬容器7内の第2試薬の液面が第2試薬検出器15bにより検出される位置から、その第2試薬の吸引が可能な所定の距離下方へ移動させた第2試薬吸引位置で停止させる。また、第2試薬の吐出では、反応ディスク4の上停止位置で停止させ、停止させた位置で反応容器3内への第2試薬の吐出が行われる。
【0033】
図1に示したデータ処理部30は、分析部24の測光部13から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0034】
演算部31は、測光部13から出力された標準データ及びこの標準データの標準試料に対して予め設定された標準値から、標準値と標準データの関係を表す検量データを生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0035】
また、測光部13から出力された被検データに対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。そして、読み出した検量データを用いて測光部13より出力された被検データから、濃度値や活性値として表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0036】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0037】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0038】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを表示する。また、自動分析装置100で分析可能な検査項目の分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面、及びこの分析パラメータ設定画面で設定された検査項目の分析に用いる試薬の情報を設定するための試薬情報設定画面を表示する。また、被検試料毎にこの被検試料を識別する氏名やID等の識別情報及び分析パラメータ設定画面で設定された検査項目の中から検査対象となる検査項目を選択して設定するための検査項目設定画面を表示する。
【0039】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータ、試薬情報、被検試料の識別情報及び検査項目、被検試料毎に識別情報及び検査対象となる検査項目を設定するための入力操作を行う。
【0040】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50からの操作により入力された各検査項目の分析パラメータの情報、試薬情報、被検試料毎の識別情報及び検査項目の情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0041】
以下、図1乃至図8を参照して、分析部24における第1試薬分注プローブ14の構成、及び第1及び第2試薬の分注工程について説明する。そして、図3は、第1試薬分注プローブ14の構成を示す断面図である。また、図4は、図3に示した第1試薬分注プローブ14の一部を示す断面図。また、図5は、第1試薬を分注する第1試薬分注工程を示すフローチャートである。また、図6は、第1試薬の分注における第1試薬分注プローブ14の各停止位置を示す図である。また、図7は、第2試薬を分注する第2試薬分注工程を示すフローチャートである。また、図8は、第2試薬の分注における第2試薬分注プローブ15の各停止位置を示す図である。
【0042】
先ず、第1試薬分注プローブ14の構成について説明する。
図3において、第1試薬分注プローブ14は管状を成し、一端に第1試薬を吸引及び吐出する開口141が形成され、他端部近傍が第1試薬分注アーム8に保持されている。そして、他端部を含む直線状の部分W1の内部に第1の中心軸142を中心として上下方向に形成された第1の流路、及び一端を含む一端部W2の内部に第1の中心軸142に対して斜め下方に角度θ1(0°<θ1<90°)傾斜する方向に第2の中心軸143を中心として形成された開口141及び第1の流路に通ずる第2の流路を有する。また、第2の流路の径が第1の流路の径よりも細く形成され、一端部W2の外径が一端部W2以外の部分W1の外径よりも細く形成されている。
【0043】
このように、第1試薬分注プローブ14の部分W1を一端部W2よりも太くして剛性を高め、剛性を高めた他端部近傍で保持して移動させることにより、第1試薬吐出位置で停止させたとき、第1試薬の分注精度を低下させる要因となる第1試薬分注プローブ14の振動を抑えることができる。
【0044】
更に、角度θ1(0°<θ1≦45°)である場合、図4(a)に示すように、開口141面を含む一端面が第2の中心軸143に対して角度θ2{0°<θ2<90°)傾斜し、角度θ1(45°<θ1<90°)である場合、図4(b)に示すように、開口141面を含む一端面が第2の中心軸143に対して角度θ3[{θ1<θ3<90°}又は{90°<θ3<(θ1+45°)}]傾斜している。
【0045】
このように、開口141の面を第2の中心軸143に対して傾斜させることにより、第1試薬を反応容器3内に吐出したときの液切れを良くして第1試薬の分注精度の向上を図ることができる。
【0046】
更にまた、他端部がチューブを介して第1試薬分注ポンプ14aに連通し、第1及び第2の流路及びチューブ内に第1試薬分注ポンプ14aからの吸引及び吐出動作による圧力を伝達する純水等の圧力伝達媒体を保持している。そして、第1試薬分注ポンプ14aからの吸引動作により、開口141から第1試薬を吸引する。
【0047】
第1試薬を吸引した第1試薬分注プローブ14は、反応ディスク4の上停止位置から下に移動して、一端部W2が離間して反応容器3内へ進入した離間位置で停止する。離間位置で停止した後、例えば水平方向に移動して一端部W2の第1の中心軸142から最も離れた縁辺144が反応容器3内面に近接して第1試薬検出器14bにより検出される第1試薬吐出位置で停止する。そして、第1試薬吐出位置で、第1試薬分注ポンプ14aからの吐出動作により第1試薬を吐出する。なお、第1試薬分注プローブ14の縁辺144は、部分W1外面よりも第1の中心軸142から離れて位置している。
【0048】
このように、第1試薬分注プローブ14の角度θ1傾斜させた第1の流路の開口141から、第1試薬を吐出させることにより、第1試薬の液切れが良くなるため、第1試薬を精度よく分注することができる。
【0049】
次に、第1試薬を分注する第1試薬分注工程について説明する。
図5は、第1試薬分注工程を示したフローチャートである。この第1試薬分注工程S10における第1試薬の分注では、第1試薬分注プローブ14は、ホームポジションである洗浄槽80の上停止位置から移動して、試薬庫1の上停止位置で停止する(ステップS11)。
【0050】
試薬庫1の上停止位置で停止した後、第1試薬分注プローブ14は、所定量の空気を吸引する。そして、試薬庫1の上停止位置から下へ移動して、図6(a)に示すように、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬の液面が第1試薬検出器14bにより検出される位置から所定の距離下方へ移動した第1試薬吸引位置で停止する(ステップS12)。
【0051】
第1試薬吸引位置で停止した後、第1試薬分注プローブ14は、試薬容器6から第1試薬を吸引する(ステップS13)。
【0052】
第1試薬を吸引した後、第1試薬分注プローブ14は、第1試薬吸引位置から上へ移動して試薬庫1の上停止位置で停止する。次いで、試薬庫1の上停止位置から移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する。更に、反応ディスク4の上停止位置から下へ移動して、図6(b)に示すように、一端部W2が離間して反応容器3内へ進入した離間位置で停止する(ステップS14)。
【0053】
離間位置で停止した後、第1試薬分注プローブ14は、離間位置から更に移動して、図6(c)に示すように、縁辺144が反応容器3内に吐出された試料及び吐出される第1試薬の混合液の液面よりも上方の内面に近接して第1試薬検出器14bにより検出される第1試薬吐出位置で停止する(ステップS15)。
【0054】
このように、反応容器3を第1試薬検出器14bで検出することにより、縁辺144が反応容器3内面に近接した位置で第1試薬分注プローブ14を停止させることができる。これにより、第1試薬分注プローブ14の一端部W2が反応容器3内面に衝突して変形するのを防ぐことができる。また、反応容器3内の試料と第1試薬の混合液よりも上方で停止させることにより、第1試薬分注プローブ14の一端部W2の外面がその混合液により汚染されるのを防ぐことができる。
【0055】
第1試薬吐出位置で停止した後、第1試薬分注プローブ14は、図6(c)に示すように、試料が吐出された反応容器3内面に沿って第1試薬を吐出する(ステップS16)。
【0056】
このように、第1試薬分注プローブ14の縁辺144が反応容器3内面に近接した状態で、反応容器3内面に沿って第1試薬を吐出させることにより、吐出された勢いで第1試薬が反応容器3内の試料に衝突して、試料の一部が反応容器3内の測定に関与しない位置及び反応容器3外へ飛散するのを抑制することができる。
【0057】
また、第1試薬分注プローブ14の縁辺144が反応容器3内面に近接した状態で、反応容器3内面に沿って第1試薬を吐出させることにより、反応容器3内の試料及び第1試薬の混合液上層における泡立ちを抑制することができる。これにより、試料の一部が巻き込まれて泡に保持されるのを防ぐことが可能となり、第1撹拌子18で試料と第1試薬を均一に撹拌することができる。また、第2撹拌子19で試料、第1試薬、及び第2試薬を均一に撹拌することができる。
【0058】
更に、第1試薬分注プローブ14の縁辺144が反応容器3内面に近接した状態で、反応容器3内面に沿って第1試薬を吐出させることにより、試料の一部が飛散するのを抑制すると共に、反応容器3内の試料及び第1試薬の混合液上層における泡立ちを抑制することができるので、吐出速度を上げて第1試薬を分注する時間を短縮することができる。
【0059】
更にまた、第1試薬が高粘度の性状を有する場合、離間分注方法で第1試薬が反応容器3内に吐出されると空気が巻き込まれ、巻き込まれた空気が試料と第1試薬の混合液内に滞留して光学的測定に悪影響を与えて分析データが悪化する問題に対して、空気の巻き込みを抑制することができる。
【0060】
なお、第1試薬分注プローブ14の縁辺144が反応容器3内面に近接した状態で反応容器3内面に沿って吐出させる場合、吐出された第1試薬の液切れが多少悪くなっても第1試薬分注プローブ14の開口141から反応容器3内面を伝わって下方に降下し易くなるため、第1試薬の分注精度を確保した上で高速度よりも遅い速度(低速度)で吐出させることができる。これにより、試料の飛散、上層における泡立ち、及び空気の巻き込みをより抑制することができる。
【0061】
第1試薬を吐出した後、第1試薬分注プローブ14は、第1試薬吐出位置から離間位置へ移動し、更に上方へ移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する。次いで、反応ディスク4の上停止位置から移動して洗浄槽80の上停止位置で停止する。洗浄槽80の上停止位置で停止した後、洗浄槽80で第1試薬分注プローブ14の第1試薬に接触した内外面の洗浄を行う(ステップS17)。
【0062】
洗浄が行われた後、第1試薬分注プローブ14は、次の第2試薬の分注に備えて、ホームポジションで停止する(ステップS18)。
【0063】
次に、第2試薬を分注する第2試薬分注工程について説明する。
図7は、第2試薬を分注する第2試薬分注工程を示したフローチャートである。この第2試薬分注工程S30における第2試薬の分注では、第2試薬分注プローブ15は、ホームポジションである洗浄槽90の上停止位置から移動して、試薬庫2の上停止位置で停止する(ステップS31)。
【0064】
試薬庫2の上停止位置で停止した後、第2試薬分注プローブ15は、所定量の空気を吸引する。そして、試薬庫2の上停止位置から下へ移動して、図8(a)に示すように、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬の液面が第2試薬検出器15bにより検出される位置から所定の距離下方へ移動した第2試薬吸引位置で停止する(ステップS32)。
【0065】
第2試薬吸引位置で停止した後、第2試薬分注プローブ15は、図8(a)に示すように、上下方向に流路が形成された一端部の開口から試薬容器7内の第2試薬を吸引する(ステップS33)。
【0066】
第2試薬を吸引した後、第2試薬分注プローブ15は、第2試薬吸引位置から上へ移動して試薬庫2の上停止位置で停止する。次いで、試薬庫2の上停止位置から移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する(ステップS34)。
【0067】
反応ディスク4の上停止位置で停止した後、第2試薬分注プローブ15は、図8(b)に示すように、反応ディスク4の上停止位置を第2試薬吐出位置として、試料及び第1試薬が吐出された反応容器3内に第2試薬を吐出する(ステップS35)。
【0068】
第2試薬を吐出した後、第2試薬分注プローブ15は、反応ディスク4の上停止位置から移動して、洗浄槽90の上停止位置で停止する。洗浄槽90の上停止位置で停止した後、洗浄槽90で第2試薬分注プローブ15の第2試薬に接触した内外面の洗浄を行う(ステップS36)。
【0069】
洗浄が行われた後、第2試薬分注プローブ15は、次の第2試薬の分注に備えて、ホームポジションで停止する(ステップS37)。
【0070】
なお、第1試薬分注プローブ14と同様に構成される第2試薬分注プローブに置き換える。そして、置き換えた第2試薬分注プローブを移動して、一端を含む一端部が反応容器3から離間して反応容器3内へ進入した離間位置で停止させた後、更に移動して、一端部の縁辺が吐出された試料及び第1試薬、並びに吐出される第2試薬の混合液の液面よりも上方の反応容器3内面に近接して第2試薬検出器15bにより検出される位置で停止させる。停止させた後に、反応容器3内面に沿って第2試薬を吐出させるように実施してもよい。これにより、2試薬系における第2試薬を吐出するときの空気の巻き込みを抑制することができる。
【0071】
以上述べた本発明の実施例によれば、第1試薬の分注では、第1試薬分注プローブ14を移動して、一端部W2が反応容器3から離間して反応容器3内へ進入した離間位置で停止させた後、更に移動して、第1試薬検出器14bにより検出される第1試薬吐出位置で停止させることにより、縁辺144が反応容器3内面に近接する位置で第1試薬分注プローブ14を停止させることができる。
【0072】
そして、第1試薬吐出位置で反応容器3内面に沿って第1試薬を吐出させることにより、吐出された勢いで第1試薬が反応容器3内の試料に衝突して、試料の一部が反応容器3内の測定に関与しない位置及び反応容器3外へ飛散するのを抑制することができる。
【0073】
また、第1試薬吐出位置で反応容器3内面に沿って第1試薬を吐出させることにより、反応容器3内の試料及び第1試薬の混合液上層における泡立ちを抑制することができる。これにより、試料の一部が巻き込まれて泡に保持されるのを防ぐことが可能となり、第1撹拌子18で試料と第1試薬を均一に撹拌することができる。また、第2撹拌子19で試料、第1試薬、及び第2試薬を均一に撹拌することができる。
【0074】
更に、第1試薬が高粘度の性状を有する場合、離間分注方法で第1試薬が反応容器3内に吐出されると空気が巻き込まれ、巻き込まれた空気が試料と第1試薬の混合液内に滞留して光学的測定に悪影響を与えて分析データが悪化する問題に対して、空気の巻き込みを抑制することができる。
【0075】
以上により、分析データの向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0076】
3 反応容器
6 試薬容器
14 第1試薬分注プローブ
14b 第1試薬検出器
141 開口
144 縁辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8