【実施例】
【0028】
つぎに本発明を下記の実施例と比較例に基づいてさらに説明する。
【0029】
実施例及び比較例において、茶葉中のチャフロサイドA及びチャフロサイドA前駆体の含有量は次のようにして測定した。
(1)茶葉をコーヒーミルで粉末化して茶葉粉末を得る。
(2)茶葉粉末100mgと、50質量%のメタノール水溶液4mLとをガラス製容器に入れ、ガラス製容器に還流器を取り付けた後、80℃の温度で30分間の抽出操作を行って、チャフロサイドAと前駆体とを含有する抽出液を得る。
(3)抽出液を遠心分離機(CHIBITAN−II、ミリポア社製)を用いて、遠心加速度5200Gで3分間遠心処理した後、抽出液の上清5μLをサンプリングして、HPLC−MS/MS装置を用いて、チャフロサイドAとその前駆体の定量分析を行う。
【0030】
HPLC装置は、Agilent 1100(アジレント・テクノロジー社製)を用い、定量用カラムはCadenza CD C18(内径:3mm、カラム長さ:150mm、インタクト社製)を用いる。展開溶媒には、チャフロサイドAは40質量%のメタノール水溶液、前駆体は18質量%のアセトニトリル水溶液を用いる。カラム内の流速は0.3mL/分とする(チャフロサイドAの保持時間:11.05分、前駆体の保持時間:10.4分)。
【0031】
MS装置はAPI2000またはAPI3000(アプライドバイオシステムズ社製)を用いる。MS/MSの測定は、エレクトロスプレーイオン化法により行う。
【0032】
チャフロサイドAのMS/MSによる測定は、下記条件で行う。
前駆体/生成物(m/z、イオンと極性) 413.0(M−H)
-/293.2
衝突エネルギー(eV) 36
キャピラリー電圧(kV) 4
温度(℃) 500
【0033】
前駆体のMS/MSによる測定は、下記条件で行う。
前駆体/生成物(m/z、イオンと極性) 511.0(M−H)
-/96.9
衝突エネルギー(eV) 9
キャピラリー電圧(kV) 4
温度(℃) 500
【0034】
[実施例1]
市販のやぶきた緑茶を用意した。このやぶきた緑茶は、チャフロサイドAの含有量が35ng/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が38μg/gであった。
【0035】
上記やぶきた緑茶500gを、100℃の温度で1時間乾燥した。得られた乾燥茶葉の水分含水率は3質量%であった。
【0036】
上記の乾燥茶葉500g(水分含水率:3質量%)を
図1に示すIH式加熱容器(円筒状容器の容積:0.64m
3)に投入し、円筒状容器の内壁表面温度(胴温)を180℃に維持し、円筒状容器に温度195℃の水蒸気含有空気(水蒸気濃度:92g/m
3)を540m
3/時間(水蒸気量として50kg/時間)の流量で吹き込みながら、円筒状容器を回転させて乾燥茶葉を6分30秒間加熱処理した。加熱処理後の乾燥茶葉は、チャフロサイドAの含有量が8μg/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が16μg/gであった。すなわち、加熱処理により、チャフロサイドAの含有量は228倍に増加していた。
【0037】
[実施例2]
水蒸気含有気体の代わりに温度195℃の過熱水蒸気を50kg/時間の流量にて、円筒状容器に吹き込んだこと、加熱時間を13分としたこと以外は、実施例1と同様にして乾燥茶葉を加熱処理した。加熱処理後の乾燥茶葉は、チャフロサイドAの含有量が8μg/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が15μg/gであった。すなわち、加熱処理により、チャフロサイドAの含有量は228倍に増加していた。
【0038】
[比較例1]
円筒状容器に水蒸気含有空気を吹き込まなかったこと、加熱時間を13分としたこと以外は、実施例1と同様にして乾燥茶葉を加熱処理した。加熱処理後の乾燥茶葉は、チャフロサイドAの含有量が2μg/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が26μg/gであった。すなわち、加熱処理により、チャフロサイドAの含有量は57倍に増加していた。
【0039】
[比較例2]
加熱時間を26分としたこと以外は、実施例1と同様にして乾燥茶葉を加熱処理した。加熱処理後の乾燥茶葉は、チャフロサイドAの含有量が4μg/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が10μg/gであった。すなわち、加熱処理により、チャフロサイドAの含有量は114倍に増加していた。
【0040】
[官能評価]
実施例1と2及び比較例1と2において加熱処理した後の乾燥茶葉の外観(色沢)と、その乾燥茶葉から抽出した茶飲料の水色、香気、滋味について官能評価を行った。茶飲料は、茶葉3gを熱湯150mLで1分間抽出して得た。評価は3人のパネリストが行った。良い(3)、普通(2)、やや劣る(1)、劣る(0)の4段階で評価した。この官能評価の結果を、乾燥茶葉の加熱条件(水蒸気含有気体の吹き込みの有無、加熱時間)及び加熱処理によるチャフロサイドAの増加倍率と共に下記の表1に示す。
【0041】
表1
────────────────────────────────────────
水蒸気含有気体 加熱時間 チャフロサイドA 外観 水色 香気 滋味
の吹き込み の増加倍率
────────────────────────────────────────
実施例1 有り 6分30秒 228倍 1 1 2 2
実施例2 有り 13分 228倍 3 2 3 2
────────────────────────────────────────
比較例1 なし 13分 57倍 2 1 1 1
比較例2 有り 26分 114倍 0 0 0 0
────────────────────────────────────────
【0042】
上記表1の結果から明らかなように、水蒸気含有気体を吹き込みながら加熱処理を行った乾燥茶葉(実施例1、2)は、水蒸気含有気体を吹き込まないで加熱処理した乾燥茶葉(比較例1)と比較して、チャフロサイドAの含有量が大きく増加し、また飲料用茶葉としての品質も良い。また水蒸気含有気体を吹き込みながら加熱処理を行った場合であっても、加熱処理時間が26分と長くなりすぎると、チャフロサイドAが分解して、その含有量が低下し、また飲料用茶葉としての品質も悪くなる(比較例2)。
【0043】
[実施例3]
市販のからべに緑茶を用意した。このからべに緑茶は、チャフロサイドAの含有量が20ng/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が84μg/gであった。
【0044】
上記からべに緑茶500gを、100℃の温度で1時間乾燥した。得られた乾燥茶葉の水分含水率は3質量%であった。
【0045】
上記の乾燥茶葉500g(水分含水率:3質量%)を
図1に示すIH式加熱容器(円筒状容器容積:0.64m
3)に投入し、円筒状容器の内壁表面温度(胴温)を180℃に維持し、円筒状容器に温度195℃の水蒸気含有空気(水蒸気濃度:92g/m
3)を540m
3/時間(水蒸気量として50kg/時間)の流量で吹き込みながら、円筒状容器を回転させて乾燥茶葉を3分15秒間加熱処理した。加熱処理後の乾燥茶葉は、チャフロサイドAの含有量が6μg/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が66μg/gであった。すなわち、加熱処理により、チャフロサイドAの含有量は300倍に増加していた。
【0046】
[実施例4]
加熱時間を6分30秒としたこと以外は、実施例3と同様にして乾燥茶葉を加熱処理した。加熱処理後の乾燥茶葉は、チャフロサイドAの含有量が20μg/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が58μg/gであった。すなわち、加熱処理により、チャフロサイドAの含有量は1000倍に増加していた。
【0047】
[実施例5]
水蒸気含有気体の代わりに温度195℃の過熱水蒸気を50kg/時間の流量にて、円筒状容器に吹き込んだこと、加熱時間を6分30秒としたこと以外は、実施例3と同様にして乾燥茶葉を加熱処理した。加熱処理後の乾燥茶葉は、チャフロサイドAの含有量が18μg/g、チャフロサイドA前駆体の含有量が58μg/gであった。すなわち、加熱処理により、チャフロサイドAの含有量は900倍となった。
【0048】
[官能評価]
実施例3〜5において加熱処理した後の乾燥茶葉の外観(色沢)と、その乾燥茶葉から抽出した茶飲料の水色、香気、滋味について官能評価を前記と同様にして行った。この官能評価の結果を、乾燥茶葉の加熱条件(水蒸気含有気体の吹き込みの有無、加熱時間)及び加熱処理によるチャフロサイドAの増加倍率と共に下記の表2に示す。
【0049】
表2
────────────────────────────────────────
水蒸気含有気体 加熱時間 チャフロサイドA 外観 水色 香気 滋味
の吹き込み の増加倍率
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実施例3 有り 3分15秒 300 2 2 3 1
実施例4 有り 6分30秒 1000 1 1 2 2
実施例5 有り 6分30秒 900 3 2 3 2
────────────────────────────────────────
【0050】
上記表2の結果から明らかなように、からべに緑茶においても水蒸気含有気体を吹き込みながら加熱処理を行った乾燥茶葉はチャフロサイドAの含有量が大きく増加し、また飲料用茶葉としての品質も良い。