(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記膝関節アクチュエータはモータであって、当該モータの出力軸の軸方向と前記大腿装着部の長手方向とが略平行である、請求項1〜3の何れか一項に記載の装着型動作支援装置。
【背景技術】
【0002】
近年、利用者の身体に装着されて、利用者の動作を支援する装着型動作支援装置が開発されている。例えば、利用者の歩行時や起立時などの股関節や膝関節の動きを支援する装着型動作支援装置は、下半身外骨格形状の装着具を備えている。この装着具は、例えば、利用者の腰に装着される腰装着部、大腿に装着される大腿装着部、および下腿に装着される下腿装着部等から構成されている。さらに、この装着具には、腰装着部と大腿装着部の間の股関節部、および大腿装着部と下腿装着部との間の膝関節部をそれぞれ動作させるためのアクチュエータが設けられている。
【0003】
上記従来の装着型動作支援装置では、装着具の膝関節部近傍にアクチュエータが配置されているため、アクチュエータの重みにより膝関節部周りの装着具のイナーシャが増大し、装着者の軽快な歩行が阻害されたり、イナーシャを受けた装着具の動きを修正するためにアクチュエータの負荷が増大するという課題があった。そこで、特許文献1に記載の肢体アシスト装置では、装着具に大腿装着部と下腿装着部とを含む四節平行リンク機構を備えることにより、膝関節用アクチュエータの重量に起因して装着者にかかる慣性モーメントを軽減している。具体的には、この肢体アシスト装置は、第一のリンク部、大腿リンク部、下腿リンク部および第二のリンク部を順次回転自在に連結してなる閉じられた四節リンク機構と、第一のリンク部を駆動する膝関節用アクチュエータとを備えている。そして、肢体アシスト装置が具備するアクチュエータの中でも特に重量の大きい膝関節用アクチュエータを利用者の膝関節よりも体幹(胴体)方向へ配置している。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の肢体アシスト装置では、アクチュエータは股関節部の側部と膝関節の側部のそれぞれにおいて装着者の左右方向外側へ突出して配置されているので、外側へ張り出したアクチュエータが装着者の動作の妨げとなるおそれがある。そこで、特許文献2に記載の歩行補助装置では、使用者の大腿部の前方に2つのモータを配置し、各モータの出力をプーリおよびベルトからなる動力伝達機構を介して大腿フレームと下腿フレームへそれぞれ伝達するようにしている。また、特許文献3に記載の歩行支援装置では、使用者の臀部の後方と大腿部の後方にそれぞれモータを配置し、各モータの出力をプーリおよびベルトからなる動力伝達機構を介して大腿フレームおよび下腿フレームへそれぞれ伝達するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、装置の装着者の左右方向外側への張り出し量を低減することができるものの、モータが装着者の大腿部の前側に配置されるために、装着者が荷の昇降等の動作を行う際に、装着者の手や荷等がアクチュエータと接触するおそれがある。
【0007】
また、特許文献3では、装置の装着者の左右方向外側への張り出し量を低減することができるものの、モータが装着者の大腿部の後側に配置されるために、装着者が着座したり蹲踞したりする際に、アクチュエータが装着者の動作を阻害するおそれがある。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、装着者の筋力を補助或いは代行する装着型動作支援装置であって、アクチュエータによる装置全体の装着者の左右方向への張り出し量を低減可能であるとともに、アクチュエータにより装着者の歩行動作、荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作が阻害されないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下において、装着型動作支援装置の装着者から見て前後を「前後」といい、左右(装着者の肩幅方向)を「左右」という。
【0010】
本発明に係る装着型動作支援装置は、装着者の筋力を補助或いは代行する装着型動作支援装置であって、前記装着者の大腿側部に装着される大腿装着部と、前記装着者の下腿側部に装着される下腿装着部と、前記大腿装着部と前記下腿装着部とを連結している膝関節部と、前記大腿装着部に相対して前記下腿装着部を変位すべく前記膝関節部を動作させる膝関節アクチュエータとを備え、前記膝関節アクチュエータは、前記大腿装着部の前後中央よりも前側又は後側であって前記大腿装着部よりも左右方向内側に、前記膝関節アクチュエータの長手方向と前記大腿装着部の長手方向とが略平行となるように配設されているものである。
【0011】
また、本発明に係る装着型動作支援装置は、装着者の筋力を補助或いは代行する装着型動作支援装置であって、前記装着者の大腿側部に装着される大腿装着部と、前記装着者の下腿側部に装着される下腿装着部と、前記大腿装着部と前記下腿装着部とを連結している膝関節部と、前記大腿装着部に相対して前記下腿装着部を変位すべく前記膝関節部を動作させる前記膝関節アクチュエータとを備え、前記膝関節アクチュエータは、前記装着者の大腿の前後中央よりも前側又は後側であって前記装着者の大腿の左右中央よりも外側であり、且つ、前記大腿装着部よりも左右方向内側に配設されているものである。
【0012】
上記構成の装着型動作支援装置によれば、膝関節アクチュエータは大腿装着部および下腿装着部よりも装着者の左右外側へ突出しないので、装着者の左右方向への装置の張り出し量の低減を図ることができる。さらに、膝関節アクチュエータは、装着者の各種動作(例えば、歩行動作、荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作等)において、当該膝関節アクチュエータと相対して移動する物体(例えば、荷、椅子、装着者の腕)と当接しない。よって、膝関節アクチュエータにより装着者の各種動作が阻害されない。
【0013】
前記装着型動作支援装置において、前記装着者の足に装着される足装着部と、前記下腿装着部と前記足装着部とを連結している足関節部と、前記下腿装着部に相対して前記足装着部を変位すべく前記足関節部を動作させる足関節アクチュエータとを備え、前記足関節アクチュエータは、前記下腿装着部の前後中央よりも前側又は後側であって前記下腿装着部よりも左右方向内側に、前記足関節アクチュエータの長手方向と前記下腿装着部の長手方向とが略平行となるように配設されていることがよい。
【0014】
また、前記装着型動作支援装置において、前記装着者の足に装着される足装着部と、前記下腿装着部と前記足装着部とを連結している足関節部と、前記下腿装着部に相対して前記足装着部を変位すべく前記足関節部を動作させる足関節アクチュエータとを備え、前記足関節アクチュエータは、前記装着者の下腿の前後中央よりも前側又は後側であって前記装着者の下腿の左右中央よりも外側であり、且つ、前記下腿装着部よりも左右方向内側に配設されていることがよい。
【0015】
上記構成によれば、足関節アクチュエータは大腿装着部および下腿装着部よりも装着者の左右外側へ突出しないので、装着者の左右方向への装置の張り出し量の低減を図ることができる。さらに、足関節アクチュエータは、装着者の各種動作(例えば、歩行動作、荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作等)において、当該足関節アクチュエータと相対して移動する物体(例えば、荷、椅子、装着者の腕)と当接しない。よって、足関節アクチュエータにより装着者の各種動作が阻害されない。
【0016】
前記装着型動作支援装置において、前記装着者の腰周りに装着される腰装着部と、前記腰装着部と前記大腿装着部とを連結している股関節部と、前記腰装着部に相対して前記大腿装着部を変位すべく前記股関節部を動作させる股関節アクチュエータとを備え、前記股関節アクチュエータは、前記腰装着部の左右端よりも左右中央側に、その長手方向と前後方向とが略平行となるように配設されていることがよい。
【0017】
上記構成によれば、股関節アクチュエータは、腰装着部よりも装着者の左右外側へ突出しないので、装着者の左右方向への装置の張り出し量の低減を図ることができる。さらに、股関節アクチュエータは、装着者の各種動作(例えば、歩行動作、荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作等)において、当該股関節アクチュエータと相対して移動する物体(例えば、荷、椅子、装着者の腕や下肢)と当接しない。よって、股関節アクチュエータにより装着者の各種動作が阻害されない。
【0018】
前記装着型動作支援装置において、前記膝関節アクチュエータはモータであって、当該モータの出力軸の軸方向と前記大腿装着部の長手方向とが略平行であることがよい。
【0019】
上記構成によれば、膝関節アクチュエータは装着者の筋肉との当接を避けるように大腿装着部に沿った状態に設けられることとなり、装着者の違和感を軽減することができる。
【0020】
前記装着型動作支援装置において、前記膝関節アクチュエータは、前記膝関節部よりも上方に配設されており、前記膝関節アクチュエータの動力を前記下腿装着部に伝達するリンク機構を更に備えていることがよい。
【0021】
上記構成によれば、膝関節アクチュエータをより上方に配置することが可能となり、装着者の膝関節近傍に膝関節アクチュエータが配置される場合と比較して膝関節アクチュエータのイナーシャを軽減することができる。
【0022】
前記装着型動作支援装置において、前記足関節アクチュエータはモータであって、当該モータの出力軸の軸方向と前記下腿装着部の長手方向とが略平行であることがよい。
【0023】
上記構成によれば、足関節アクチュエータは装着者の筋肉との当接を避けるように足腿装着部に沿った状態に設けられることとなり、装着者の違和感を軽減することができる。
【0024】
前記装着型動作支援装置において、前記足関節アクチュエータは、前記足関節部よりも上方に配設されており、前記足関節アクチュエータの動力を前記足装着部に伝達するリンク機構を更に備えていることがよい。
【0025】
上記構成によれば、足関節アクチュエータをより上方に配置することが可能となり、装着者の足関節近傍に足関節アクチュエータが配置される場合と比較して足関節アクチュエータのイナーシャを軽減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、関節の駆動するためのアクチュエータによる、装着者の左右方向への装置の張り出し量の低減を図ることができる。また、関節の駆動するためのアクチュエータは、装着者の荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作において、これらの動作を阻害しない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0029】
図1は本発明の好適な実施の形態に係る装着型動作支援装置の全体的な概略構成を示す図である。また、
図2は装着型動作支援装置の左側下部を示す側面図であり、
図3は装着型動作支援装置の左側下部を示す正面図である。
図1〜3に示す装着型動作支援装置(以下、単に「動作支援装置1」という)は、下半身外骨格形状を有しており、高齢者、身体障害者および健常者を問わず人間の身体に装着されて、装着者の主に下肢部の筋力を補助又は代行することにより装着者の動作を支援するものである。以下では、動作支援装置1の装着者から見て前後を「前後」といい、左右(装着者の肩幅方向)を「左右」といい、上下を「上下」ということとする。また、装着者の身体を左右対称に切る面とこれに平行な面を「矢状面」といい、装着者の身体を前後に切る面であって矢状面に垂直な面を「前額面」という。
【0030】
動作支援装置1は、装着者の身体に装着される装着具2と、この装着具2に積載されたバックパック3と、バックパック3に収容されたバッテリ4および制御器5とを備えている。装着具2は、装着者の腰(骨盤)周りに装着される腰フレーム21と、装着者の背部に装着される背部フレーム22と、装着者の下肢部に装着される左右の下肢フレーム23,23とで概略構成されている。
【0031】
〔腰フレーム21〕
腰フレーム21は、装着者の腰(骨盤)の後側および左右両側を覆うことができるように、平面視で略U字形をなしている。具体的には、腰フレーム21は、左右方向に長尺であって装着者の腰の背側に位置する基部45と、基部45の左右両端から前方へ突出する側部46,46とを備えている。腰フレーム21は、装着者の腰周りへ係留させるためのベルトやフックなどの係止具(図示略)を備えており、この係止具により腰フレーム21は装着者の腰に係留される。
【0032】
〔下肢フレーム23〕
左右の下肢フレーム23,23はほぼ同一の構成であって、腰フレーム21の左右中央を対称軸として左右線対称に設けられている。よって、以下では一方(左側)の下肢フレーム23の構造についてのみ詳細に説明し、他方の説明を省略する。下肢フレーム23は、装着者の大腿側部に装着される大腿装着部である大腿ロッド31と、装着者の下腿側部に装着される下腿装着部である下腿ロッド32と、装着者の足(足裏)に装着される足装着部である足乗板33と、腰フレーム21と大腿ロッド31とを連結している股関節部34と、大腿ロッド31と下腿ロッド32とを連結している膝関節部35と、下腿ロッド32と足乗板33とを連結している足関節部36とを備えている。大腿ロッド31、下腿ロッド32および足乗板33は、装着者の身体へ係留させるためのベルトやフックなどの係止具(図示略)をそれぞれ備えている。
【0033】
股関節部34は、腰フレーム21の側部46の前端に股関節軸41を介して矢状面上で回動可能に連結された第1継手42と、第1継手42の下端に第2股関節軸43を介して前額面上で回動可能に連結された第2継手44と、第2継手44と大腿ロッド31との連結部に設けられた第1並進機構47とを備えている。なお、「矢状面上で回動する」とは、矢状面と垂直な軸を中心として、矢状面との平行を維持した状態で回動することをいう。また、「前額面上で回動する」とは、前額面と垂直な軸を中心として、前額面との平行を維持した状態で回動することをいう。
【0034】
第1並進機構47は、第2継手44から並進方向に延びる接続ピン47aと、大腿ロッド31側に設けられて接続ピン47aが挿通される接続孔47bと、接続ピン47aに嵌装された圧縮バネ47cとで構成されている(
図2、参照)。接続ピン47aは接続孔47bよりも長く、接続ピン47aの下端は接続孔47bから下方へ突き抜けており、その下端部に鍔部が形成されている。接続孔47bの開口縁と接続ピン47aの鍔部は並進方向に離間しており、接続ピン47aの接続孔47bの開口縁と接続ピン47aの鍔部の間に圧縮バネ47cが設けられている。接続ピン47aと大腿ロッド31とは滑り対偶であって、接続ピン47aと接続孔47bとの間に滑りが生じることにより大腿ロッド31が並進方向へ伸長する。さらに、接続ピン47aは接続孔47b内で半径方向(接続ピン47aの軸回り)に回動可能であって、これにより大腿ロッド31に接続ピン47aの軸回りの回旋自由度が与えられている。
【0035】
上記構成の股関節部34において、腰フレーム21に相対して大腿ロッド31を股関節軸41回りに回動変位させる股関節駆動部37が設けられている。股関節駆動部37は、股関節アクチュエータ61と、股関節アクチュエータ61の出力を大腿ロッド31へ伝達する股関節動力伝達機構62とで構成されている。股関節アクチュエータ61は、本実施の形態においては電動モータであって、モータの長手方向とモータの出力軸の軸方向は平行である。股関節アクチュエータ61は腰フレーム21に支持されており、腰フレーム21の左右端よりも左右中央側に、股関節アクチュエータ61の長手方向と前後方向とが略平行となるように配設されている。なお、
図2に示す例では、股関節アクチュエータ61は、その長手方向が前後方向と略平行且つ前下がりの姿勢で、腰フレーム21に取り付けられている。このように配置された股関節アクチュエータ61は、装着具2の装着者の腰の左右方向外側であって骨盤および大臀筋の直ぐ上方の、装着者の体側の凹みに位置することとなる。
【0036】
図4は股関節動力伝達機構の構成を示す平面一部断面である。
図4に詳細に示されるように、股関節動力伝達機構62は、回転軸直交装置62aと、リンク機構62bとから構成されている。本実施の形態に係る回転軸直交装置62aは、一対の噛合する傘歯車71a,71bで構成されており、一方の傘歯車71aは股関節アクチュエータ61の出力軸61aに嵌装され、他方の傘歯車71bは出力軸61aと略直交する駆動軸72に嵌装されている。駆動軸72には、出力リンク73が固定されている。出力リンク73は、中間リンク74を介して入力リンク75と連結されている。入力リンク75は、股関節軸41に支承されており、第1継手42と一体的に回動する。これらの出力リンク73、中間リンク74、入力リンク75、および腰フレーム21の側部46により、リンク機構62b(四節リンク機構)が構成されている。
【0037】
上記構成の股関節動力伝達機構62において、股関節アクチュエータ61の出力軸61aが回転すると、その動力が駆動軸72、出力リンク73、中間リンク74、および入力リンク75の順に伝達される。このようにして、股関節アクチュエータ61からの動力を受けて入力リンク75が第1継手42と一体的に股関節軸41回りに矢状面上で回動すると、第1継手42に第2継手44を介して接続された大腿ロッド31が股関節軸41回りに矢状面上で回動する。
【0038】
図1〜3に戻って、膝関節部35は、大腿ロッド31の下端に左右方向に延びる第1膝関節軸48を介して矢状面上で回動可能に連結されているとともに、下腿ロッド32の上端に左右方向に延びる第2膝関節軸50を介して矢状面上で回動可能に連結されている膝プレート49を備えている。
【0039】
上記膝関節部35において、大腿ロッド31に相対して下腿ロッド32を第1膝関節軸48および第2膝関節軸50回りに回動変位させる膝関節駆動部38が設けられている。膝関節駆動部38は、膝関節アクチュエータ63と、膝関節アクチュエータ63の出力を下腿ロッド32へ伝達する膝関節動力伝達機構64とで構成されている。膝関節アクチュエータ63は本実施の形態においては電動モータであって、この電動モータはモータの出力軸の軸方向に長尺である。膝関節アクチュエータ63は、大腿ロッド31に支持されている。このように膝関節アクチュエータ63が装着者の膝関節から離れた腰側に配置されることにより、膝関節アクチュエータ63が装着者の膝関節近傍に配置された構成と比較して、装着者の歩行時に膝関節アクチュエータ63の重量に起因して装着者にかかるイナーシャ(慣性モーメント)を低減させることができる。
【0040】
また、膝関節アクチュエータ63は、大腿ロッド31の前後中央より後側であって、大腿ロッド31の左右方向最も外側よりも内側に、膝関節アクチュエータ63の長手方向と大腿ロッド31の長手方向とが略平行となるように配設されている。なお、大腿ロッド31の長手方向は、股関節部34と膝関節部35とを繋ぐ方向であって、装着者の大腿骨の延びる方向と略平行である。このように配置された膝関節アクチュエータ63は、
図6に示すように、装着具2の装着者の大腿101L(101R)の前後中央よりも後側であって装着者の大腿101L(101R)の左右中央よりも外側の、大腿二頭筋103と大腿四頭筋102の間に位置することとなる。装着者の大腿の横断面の外形は楕円形であり、この楕円の後方且つ左右外側部は、身体の各種動作(例えば、歩行動作、荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作)の非干渉域である。換言すれば、膝関節アクチュエータ63は、装着者の各種動作において当該膝関節アクチュエータ63と相対して移動する物体(例えば、荷、椅子、装着者の腕)と当接しない。なお、膝関節アクチュエータ63は、装着者の大腿と接触し、また、動作によっては装着者の下腿とも接触することがあるが、膝関節アクチュエータ63が装着者の下腿および大腿の筋を避けて配置されていることから装着者の違和感は軽減される。
【0041】
膝関節動力伝達機構64は、回転軸直交装置64aと、リンク機構64bとから構成されている。回転軸直交装置64aは、股関節動力伝達機構62の回転軸直交装置62aと同様の構成を有している。すなわち、本実施の形態に係る回転軸直交装置64aは、一対の噛合する傘歯車76a,76bで構成されており、一方の傘歯車76aは膝関節アクチュエータ63の出力軸63aに嵌装され、他方の傘歯車76bは出力軸63aと略直交する駆動軸77に嵌装されている。駆動軸77には、出力リンク78が固定されている。出力リンク78は中間リンク79の一端と回動可能に連結されており、中間リンク79の他端は下腿ロッド32に支承されている。これらの出力リンク78、中間リンク79、下腿ロッド32(出力リンク)、膝プレート49、および大腿ロッド31により、リンク機構64b(五節リンク機構)が構成されている。
【0042】
上記構成の膝関節動力伝達機構64において、膝関節アクチュエータ63の出力軸63aが回転すると、その動力が駆動軸77、出力リンク78、中間リンク79、および下腿ロッド32の順に伝達される。このようにして、
図5に示すように、膝関節アクチュエータ63からの動力を受けて下腿ロッド32が大腿ロッド31に相対して第1膝関節軸48および第2膝関節軸50回りに矢状面上で回動する。なお、大腿ロッド31に対する膝プレート49の第1膝関節軸48回りの回動角度と、下腿ロッド32に対する膝プレート49の第2膝関節軸50回りの回動角度とは、所定の比率(例えば、1)となるように拘束されている。これにより、下腿ロッド32の第2膝関節軸50回りの回動変位に伴って膝プレート49も第1膝関節軸48回りに回動変位するので、膝関節部35は装着者の膝関節の動きに似たより滑らかな動作をすることができる。
【0043】
足関節部36は、足乗板33に左右方向に延びる足関節軸51を介して矢状面上で回動可能且つ前額面上で揺動可能に連結された第3継手52と、第3継手52と下腿ロッド32との連結部に設けられた第2並進機構53とを備えている。なお、足乗板33は、少なくとも装着者の踵を覆う形状の基板と、基板から上方へ突設されて足関節軸51を支持する軸支持部とを有している。
【0044】
第2並進機構53は、第3継手52に設けられた並進方向に延びる角柱部53aと、角柱部53aが摺動可能に挿入される下腿ロッド32に設けられた角筒部53bと、角柱部53aを角筒部53b内へ収容する方向へ付勢する付勢部材としての引張バネ53cとで構成されている(
図3、参照)。角柱部53aと角筒部53bとは滑り対偶であって、角柱部53aが角筒部53b内を並進方向に滑ることにより、下腿ロッド32は並進方向に伸長することができる。
【0045】
上記構成の足関節部36において、下腿ロッド32に相対して足乗板33を足関節軸51回りに回動変位させる足関節駆動部39が設けられている。足関節駆動部39は、足関節アクチュエータ81と、足関節アクチュエータ81の出力を足乗板33へ伝達する足関節動力伝達機構82とで構成されている。足関節アクチュエータ81は、本実施の形態においては電動モータであって、この電動モータはモータの出力軸の軸方向に長尺である。足関節アクチュエータ81は、下腿ロッド32に支持されている。このように足関節アクチュエータ81が装着者の足関節から離れた膝側に配置されることにより、足関節アクチュエータ81が装着者の足関節近傍に配置された構成と比較して、装着者の歩行時に足関節アクチュエータ81の重量に起因して装着者にかかる慣性モーメントを低減させることができる。
【0046】
また、足関節アクチュエータ81は、下腿ロッド32の前後中央より後側であって、下腿ロッド32の左右方向最も外側よりも内側に、足関節アクチュエータ81の長手方向と下腿ロッド32の長手方向とが略平行となるように配設されている。なお、下腿ロッド32の長手方向は、膝関節部35と足関節部36とを繋ぐ方向であって、装着者の下腿骨(頸骨)の延びる方向と略平行である。このように配置された足関節アクチュエータ81は、
図7に示すように、装着具2の装着者の下腿102L(102R)の前後中央よりも後側であって装着者の下腿102L(102R)の左右中央よりも外側の、前頸骨筋(又は長指伸筋)104と下腿三頭筋105との間に位置することとなる。装着者の下腿の脹ら脛よりも下部の横断面の外形は楕円形であり、この楕円の後方且つ左右方向外側部は、身体の各種動作(例えば、歩行動作、荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作)の非干渉域である。換言すれば、足関節アクチュエータ81は、装着者の各種動作において当該足関節アクチュエータ81と相対して移動する物体(例えば、荷、椅子、装着者の腕)と当接しない。なお、足関節アクチュエータ81は、装着者の下腿と接触し、また、動作によっては装着者の大腿とも接触することがあるが、足関節アクチュエータ81が装着者の下腿および大腿の筋を避けて配置されていることから装着者の違和感は軽減される。
【0047】
足関節動力伝達機構82は、回転軸直交装置82aと、リンク機構82bとから構成されている。回転軸直交装置82aは、股関節動力伝達機構62の回転軸直交装置62aと同様の構成を有している。すなわち、本実施の形態に係る回転軸直交装置82aは、一対の噛合する傘歯車83a,83bで構成されており、一方の傘歯車83aは足関節アクチュエータ81の出力軸81aに嵌装され、他方の傘歯車83bは出力軸81aと略直交する駆動軸84に嵌装されている。駆動軸84には、出力リンク85が固定されている。出力リンク85と足乗板33は、入力リンク86によって連結されている。
【0048】
上記構成の足関節動力伝達機構82において、足関節アクチュエータ81の出力軸81aが回転すると、その動力が駆動軸84、出力リンク85、入力リンク86、および足乗板33の順に伝達される。このようにして、足関節アクチュエータ81からの動力を受けて、足乗板33は下腿ロッド32に相対して足関節軸51回りに矢状面上で回動することができる。
【0049】
〔背部フレーム22〕
背部フレーム22は、いわゆる背負子である。背部フレーム22は、装着者の肩や胸に係留させるための脇ベルト、肩紐およびフックなどの係止具(図示略)を備えている。背部フレーム22には、バックパック3が積載される。バックパック3は背部フレーム22に着脱可能に積載されているが、バックパック3は背部フレーム22と一体的に構成されていてもよい。バックパック3に格納されたバッテリ4は、股関節アクチュエータ61、膝関節アクチュエータ63、足関節アクチュエータ81、および制御器5へ電気を供給する。また、バックパック3に格納された制御器5は、装着具2の各部に設けたセンサ(図示略)からの検出信号を受けて、装着具2が装着者の動作を補助又は代行するように股関節アクチュエータ61、膝関節アクチュエータ63および足関節アクチュエータ81を制御する。なお、上記センサは、部材の重心の変化量や部材に加わる負荷量などの物理量を検出するセンサであるが、これらに代えて又はこれらに加えて装着者の生体信号を検出する生体信号センサを用いても良い。生体信号センサを用いれば、装着者の意思に従った動力をアクチュエータ61,63,81に発生させることができる。
【0050】
以上説明した構成を有する動作支援装置1では、関節の駆動するためのアクチュエータ61,63,81は、いずれも腰フレーム21および背部フレーム22により形成される装置の外骨格よりも装着者の左右方向内側に配置されている。よって、関節の駆動するためのアクチュエータ61,63,81による、装置全体の装着者の左右方向への張り出し量の低減を図ることができる。
【0051】
また、動作支援装置1では、関節の駆動するためのアクチュエータ61,63,81は、これらによって装着者の歩行動作、荷の昇降動作、着座動作、および蹲踞動作が阻害されないように配設されている。例えば、
図5に示すように、装着者の股関節及び膝関節を曲げる蹲踞動作時に、
図8に示すように、膝関節アクチュエータ63および足関節アクチュエータ81は、装着者の大腿101L(101R)と下腿102L(102R)の間に位置するが、これらの動きを妨げることはない。ここで、膝関節アクチュエータ63と足関節アクチュエータ81は、それぞれ装着者の大腿101L(101R)と下腿102L(102R)に接触しているが、何れも装着者の筋(筋肉)と筋の間のような身体の凹み部分であって筋を避けたところと接触しているので、装着者の違和感を軽減することができる。加えて、アクチュエータ61,63,81が面取りされた形状であれば、これらと装着者との接触による違和感が更に軽減される。また、例えば、
図9に示すように、装着者の着座動作時に、椅子の座面106と装着者の下腿102L,102Rとが当接した状態で膝関節アクチュエータ63は座面106と非接触である。ここで、膝関節アクチュエータ63と装着者の大腿101L(101R)が接触しているが、装着者の大腿四頭筋102と大腿二頭筋103の間の身体の凹み部分であって筋を避けたところと接触しており、装着者の膝関節アクチュエータ63との接触部位に存在する皮下脂肪は変形するので、装着者の違和感を軽減することができる。
【0052】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0053】
例えば、本実施の形態に係る動作支援装置1において、膝関節アクチュエータ63は大腿ロッド31の前後方向中央より後側に配置されているが、大腿ロッド31の前後方向中央より前側に配置されていてもよい。この場合であっても、膝関節アクチュエータ63は、大腿ロッド31よりも左右方向内側において、膝関節アクチュエータ63の長手方向と大腿ロッド31の長手方向とが略平行となるように配置されるので、膝関節アクチュエータ63は装着具2の下肢フレーム23から大きく左右方向外側へ張り出すことがなく、また、装着者の各種動作において干渉することがない。
【0054】
また、例えば、本実施の形態に係る動作支援装置1において、足関節アクチュエータ81は下腿ロッド32の前後方向中央より後側に配置されているが、下腿ロッド32の前後方向中央より前側に配置されていてもよい。この場合であっても、足関節アクチュエータ81は、下腿ロッド32よりも左右方向内側において、足関節アクチュエータ81の長手方向と下腿ロッド32の長手方向とが略平行となるように配置されるので、足関節アクチュエータ81は装着具2の下肢フレーム23から大きく左右方向外側へ張り出すことがなく、また、装着者の各種動作において干渉することがない。
【0055】
また、例えば、本実施の形態に係る動作支援装置1において、股関節駆動部37、膝関節駆動部38、および足関節駆動部39は各々リンク機構62b,64b,82bを具備しているが、これらの各関節駆動部が具備する動力伝達機構はリンク機構に限定されない。例えば、リンク機構に代えてベルト伝動機構を採用することもできる。
図10は股関節動力伝達機構、膝関節動力伝達機構および足関節動力伝達機構の第1の変形例を示す装着型動作支援装置の左側下部の側面図である。同図に示すように、股関節駆動部37において、駆動軸72から入力リンク75(入力カム)までの間に、ベルト伝動機構62cが設けられている。ベルト伝動機構62cは、駆動軸72に設けられた駆動プーリ91aと、入力リンク75に設けられた従動プーリ91cと、これらに巻回された伝動ベルト91bとから構成されている。同様に、膝関節駆動部38にベルト伝動機構64cが設けられており、ベルト伝動機構64cは、駆動軸77に設けられた駆動プーリ92aと、膝プレート49に設けられて膝プレート49とともに回転する従動プーリ92cと、これらに巻回された伝動ベルト92bとから構成されている。膝プレート49に対する大腿ロッド31の第1膝関節軸48回りの回動と、膝プレート49に対する下腿ロッド32の第2膝関節軸50回りの回動とが相関するように拘束されており、駆動軸77からベルト伝動機構64cを介して膝プレート49へ伝達された動力により膝プレート49が回動すると、下腿ロッド32が大腿ロッド31に相対して回動変位する。また、同様に、足関節駆動部39にベルト伝動機構82cが設けられており、ベルト伝動機構82cは、駆動軸84に設けられた駆動プーリ93aと、足乗板33に設けられて足乗板33とともに回転する従動プーリ93cと、これらに巻回された伝動ベルト93bとから構成されている。
【0056】
また、例えば、本実施の形態に係る動作支援装置1において、股関節アクチュエータ61、膝関節アクチュエータ63、および足関節アクチュエータ81は各々電動モータであるが、これらの各関節アクチュエータは電動モータに限定されない。例えば、電動モータに代えてエアシリンダやオイルシリンダを採用することもできる。
図11は股関節動力伝達機構、膝関節動力伝達機構および足関節動力伝達機構の第2の変形例を示す装着型動作支援装置の左側下部の側面図である。同図に示すように、股関節アクチュエータ61には、ピストン61bを有するエアーシリンダが採用されている。ピストン61bの先端は、ピストンリンク71に連結されている。ピストンリンク71は、腰フレーム21の左右方向内側に位置しており、腰フレーム21を貫通するリンク軸71cを介して出力リンク73に固定されている。つまり、ピストンリンク71と出力リンク73は、リンク軸71cを中心として相対的に回動するように構成されている。これにより、股関節アクチュエータ61のピストン61bが前進及び後退することに伴って、出力リンク73は回動する。同様に、膝関節アクチュエータ63には、ピストン63bを有するエアーシリンダが採用されている。ピストン61bの先端は、ピストンリンク76に連結されている。ピストンリンク76は、大腿ロッド31の左右方向内側に位置しており、大腿ロッド31を貫通するリンク軸76cを介して出力リンク78に固定されている。これにより、膝関節アクチュエータ63のピストン63bが前進及び後退することに伴って、出力リンク78は回動する。また、同様に、足関節アクチュエータ81には、ピストン81bを有するエアーシリンダが採用されている。ピストン81bの先端は、ピストンリンク83に連結されている。ピストンリンク83は、下腿ロッド32の左右方向内側に位置しており、下腿ロッド32を貫通するリンク軸83cを介して出力リンク85に固定されている。これにより、足関節アクチュエータ81のピストン81bが前進及び後退することに伴って、出力リンク85は回動する。
【0057】
また、例えば、本実施の形態に係る動作支援装置1は、装着者の下肢全体の動作を支援するものであるが、動作支援装置は装着者の膝の屈伸のみを支援するものであってもよい。この場合、装着具2は、大腿ロッド31と、下腿ロッド32と、膝関節部35と、膝関節駆動部38とで構成される。また、動作支援装置は装着者の股関節の動作を支援するものであってもよい。この場合、装着具2は、腰フレーム21と、大腿ロッド31と、股関節部34と、股関節駆動部とで構成される。さらに、本実施の形態に係る動作支援装置1は、足関節部36を動作させる足関節駆動部39を備えているが、足関節駆動部39を省いて足関節部36を自由に動作させる構成としてもよい。