【実施例】
【0053】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<紡糸溶液の調製>
(1)第1紡糸溶液;
ポリフッ化ビニリデン(登録商標:SOLEF 6020/1001、ソルベイソレクシス社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に加え、ロッキングミルを用いて溶解させ、濃度10mass%溶液を得た。
【0055】
次いで、導電性粒子としてカーボンブラック(デンカブラック粒状品、電気化学工業(株)製、平均一次粒子径:35nm)を前記溶液に混合し、撹拌した後、DMFを加えて希釈し、カーボンブラックを分散させ、カーボンブラックとポリフッ化ビニリデンの固形質量比が40:60で、固形分濃度が12mass%の第1紡糸溶液を調製した。
【0056】
(2)第2紡糸溶液;
ポリフッ化ビニリデン(登録商標:KYNAR HSV900、アルケマ社製)を用いたこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、カーボンブラックとポリフッ化ビニリデンの固形質量比が40:60で、固形分濃度が12mass%の第2紡糸溶液を調製した。
【0057】
(3)第3紡糸溶液;
溶媒をN−メチルピロリドンに変えたこと以外は第2紡糸溶液と同様にして、カーボンブラックとポリフッ化ビニリデンの固形質量比が40:60で、固形分濃度が12mass%の第3紡糸溶液を調製した。
【0058】
(4)第4紡糸溶液;
フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物(登録商標:ネオフロン VT―470、ダイキン工業社製)を用いたこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、カーボンブラックとフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比が40:60で、固形分濃度が12mass%の第4紡糸溶液を調製した。
【0059】
<塗工ペーストの調製>
(イ)第1塗工ペースト;
導電性粒子としてカーボンブラック(デンカブラック粒状品、電気化学工業(株)製、平均一次粒子径:35nm)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョン(ダイキン工業(株)製)、及び非イオン性界面活性剤とを水に分散させ、更に増粘剤として、2%ヒドロキシエチルセルロース(HEC)水溶液を加え、カーボンブラックとPTFEの固形質量比が60:40で、固形分質量濃度が20%の第1塗工ペーストを調製した。
【0060】
(ロ)第2塗工ペースト;
ポリフッ化ビニリデン(登録商標:SOLEF 6020/1001、ソルベイソレクシス社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に加え、ロッキングミルを用いて溶解させ、濃度10mass%溶液を得た。
【0061】
次いで、導電性粒子としてカーボンブラック(デンカブラック粒状品、電気化学工業(株)製、平均一次粒子径:35nm)を前記溶液に混合し、撹拌した後、DMFを加えて希釈し、カーボンブラックを分散させ、カーボンブラックとポリフッ化ビニリデンの固形質量比が40:60で、固形分質量濃度15%の第2塗工ペーストを調製した。
【0062】
<水分管理シートの作製>
(実施例1)
第1紡糸溶液を静電紡糸法により紡糸した導電性繊維を、対向電極上に載置したカーボンペーパー(導電性多孔シート、東レ社製、目付:84g/m
2、厚さ:190μm)上に堆積させ、カーボンペーパー−水分管理シート(平均繊維径:380nm、目付:6g/m
2、厚さ:25μm、空隙率87%)からなるガス拡散シートを作製した。このガス拡散シートの電子顕微鏡写真を
図1に示す。
図1から明らかなように、導電性繊維はカーボンブラックをポリフッ化ビニリデン樹脂内部に有し、カーボンブラックの一部が露出した状態にあった。また、導電性繊維は連続した長繊維であり、紡糸時に、長繊維同士が絡合した状態にあった。更に、ガス拡散シートから水分管理シートを剥離しても、水分管理シートは単体としても取り扱える形態安定性を有する、自立した状態にあった。なお、静電紡糸条件は次の通りとした。
【0063】
ノズル:内径0.4mmのステンレス製注射針
対向電極:ステンレスドラム
吐出量:1g/時間
ノズル先端とカーボンペーパーとの距離:10cm
印加電圧:15.5kV
温度/湿度:25℃/50%RH
【0064】
(実施例2)
水分管理シートの目付を15g/m
2としたこと以外は実施例1と同様にして、カーボンペーパー−水分管理シート(平均繊維径:480nm、目付:15g/m
2、厚さ:60μm、空隙率86%)からなるガス拡散シートを作製した。このガス拡散シートの電子顕微鏡写真を
図2に示す。
図2から明らかなように、導電性繊維はカーボンブラックをポリフッ化ビニリデン樹脂内部に有し、カーボンブラックの一部が露出した状態にあった。また、導電性繊維は連続した長繊維であり、紡糸時に、長繊維同士が絡合した状態にあった。更に、ガス拡散シートから水分管理シートを剥離しても、水分管理シートは単体としても取り扱える形態安定性を有する、自立した状態にあった。
【0065】
(実施例3)
カーボンペーパーを使用せず、対向電極であるステンレスドラム上に導電性繊維を堆積させたこと以外は実施例2と同様にして、水分管理シート(平均繊維径:420nm、目付:15g/m
2、厚さ:60μm、空隙率86%)を作製した。この水分管理シートの電子顕微鏡写真を
図3に示す。
図3から明らかなように、導電性繊維はカーボンブラックをポリフッ化ビニリデン樹脂内部に有し、カーボンブラックの一部が露出した状態にあった。また、導電性繊維は連続した長繊維であり、紡糸時に、長繊維同士が絡合した状態にあった。更に、ステンレスドラムから水分管理シートを剥離しても、水分管理シートは単体としても取り扱える形態安定性を有する、自立した状態にあった。
【0066】
(実施例4)
第2紡糸溶液を用いたこと、印加電圧を18kVとしたこと、及び目付を8g/m
2としたこと以外は、実施例3と同様にして、水分管理シート(平均繊維径:1.5μm、目付:8g/m
2、厚さ:55μm、空隙率92%)を作製した。この水分管理シートの電子顕微鏡写真を
図4に示す。
図4から明らかなように、導電性繊維はカーボンブラックをポリフッ化ビニリデン樹脂内部に有し、カーボンブラックの一部が露出した状態にあった。また、導電性繊維は連続した長繊維であり、紡糸時に、長繊維同士が絡合した状態にあった。更に、ステンレスドラムから水分管理シートを剥離しても、水分管理シートは単体としても取り扱える形態安定性を有する、自立した状態にあった。
【0067】
(実施例5)
第3紡糸溶液を用いたこと以外は実施例4と同様にして導電性繊維を紡糸し、堆積させて繊維ウエブを形成した後、水浴中に浸漬することにより溶媒置換を行い、続いて、温度60℃に設定した熱風乾燥機で乾燥することにより、水分管理シート(平均繊維径:960nm、目付:27g/m
2、厚さ:50μm、空隙率70%)を作製した。この水分管理シートの電子顕微鏡写真を
図5に示す。
図5から明らかなように、導電性繊維はカーボンブラックをポリフッ化ビニリデン樹脂内部に有し、カーボンブラックの一部が露出した状態にあり、また、導電性繊維同士は、溶媒置換時に、紡糸溶液の溶媒によってポリフッ化ビニリデンが可塑化結合した状態にあった。更に、ステンレスドラムから水分管理シートを剥離しても、水分管理シートは単体としても取り扱える形態安定性を有する、自立した状態にあった。
【0068】
(実施例6)
第4紡糸溶液を用いたこと、印加電圧を12kVとしたこと、及び湿度を40%としたこと以外は、実施例3と同様にして、水分管理シート(平均繊維径:500nm、目付:4g/m
2、厚さ:20μm、空隙率89%)を作製した。この水分管理シートの電子顕微鏡写真を
図12に示す。
図12から明らかなように、導電性繊維はカーボンブラックをフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂内部に有し、カーボンブラックの一部が露出した状態にあった。また、導電性繊維は連続した長繊維であり、紡糸時に、長繊維同士が絡合した状態にあった。更に、ステンレスドラムから水分管理シートを剥離しても、水分管理シートは単体としても取り扱える形態安定性を有する、自立した状態にあった。
【0069】
(比較例1)
カーボンペーパー(東レ株式会社製、目付:84g/m
2、厚さ:190μm)の片面に第1塗工ペーストを塗布し、温度60℃に設定した熱風乾燥機によって乾燥した後、加熱炉で、空気雰囲気中、温度350℃で1時間焼結し、目付110g/m
2、厚さ220μmのガス拡散シートを製造した。このガス拡散シートの電子顕微鏡写真を
図6に示す。
図6から明らかなように、このガス拡散シートはカーボンペーパー表面上及びカーボンペーパー内部の一部にマイクロポーラス層(水分管理層)が形成されていた。
【0070】
(比較例2)
カーボンペーパー(東レ株式会社製、目付:84g/m
2、厚さ:190μm)の片面に第2塗工ペーストを塗布し、温度100℃に設定した熱風乾燥機によって乾燥し、目付94g/m
2、厚さ220μmのガス拡散シートを製造した。このガス拡散シートの電子顕微鏡写真を
図7に示す。
図7から明らかなように、このガス拡散シートはカーボンペーパー表面上及びカーボンペーパー内部の一部にマイクロポーラス層(水分管理層)が形成されていた。
【0071】
(比較例3)
ガラス不織布(目付:11g/m
2、厚さ110μm)に第1塗工ペーストを塗布し、温度60℃に設定した熱風乾燥機によって乾燥させた後、加熱炉を用いて、空気雰囲気中、350℃で1時間焼結した後、温度170℃、8MPaの圧力で、30秒間ホットプレスを行い、目付83g/m
2、厚さ130μmの水分管理シートを作製した。この水分管理シートの電子顕微鏡写真を
図8に示す。
図8から明らかなように、ガラス繊維間の空隙に、カーボンブラック及びポリテトラフルオロエチレンが緻密に充填された状態にあった。
【0072】
(比較例4)
ホットプレスの圧力を13MPaに変えたこと以外は比較例3と同様にして、目付83g/m
2、厚さ110μmの水分管理シートを作製した。この水分管理シートの電子顕微鏡写真を
図9に示す。
図9から明らかなように、ガラス繊維間の空隙に、カーボンブラック及びポリテトラフルオロエチレンが緻密に充填された状態にあった。
【0073】
(比較例5)
ガラス不織布として、目付が6g/m
2で厚さが60μmのものを使用したこと以外は比較例3と同様にして、目付28g/m
2、厚さ70μmの水分管理シートを作製した。この水分管理シートの電子顕微鏡写真を
図10に示す。
図10から明らかなように、ガラス繊維間の空隙に、カーボンブラック及びポリテトラフルオロエチレンが緻密に充填された状態にあった。
【0074】
以上の水分管理シート又は水分管理層の物性をまとめると表1の通りであった。なお、比較例1、2における見掛密度はカーボンペーパーへの塗工前後での質量差及び厚み差から計算した値である。
【0075】
【表1】
【0076】
<発電試験>
エチレングリコールジメチルエーテル10.4gに対して、市販の白金担持炭素粒子(石福金属(株)製、炭素に対する白金担持量40質量%)を0.8g加え、超音波処理によって分散させた後、電解質樹脂溶液として市販の5質量%ナフィオン溶液(米国シグマ・アルドリッチ社製、商品名)4.0gを加え、更に超音波処理により分散させ、更に攪拌機で攪拌して、触媒ペーストを調製した。
【0077】
次いで、この触媒ペーストを支持体(商品名:ナフロンPTFEテープ、ニチアス(株)製、厚さ0.1mm)に塗布し、熱風乾燥機によって60℃で乾燥し、当該支持体に対する白金担持量が0.5mg/cm
2の触媒層を作製した。
【0078】
他方、固体高分子膜として、Nafion NRE212CS(商品名、米国デュポン社製)を用意した。この固体高分子膜の両面に、前記触媒層を夫々積層した後、温度135℃、圧力2.6MPa、時間10分間の条件でホットプレスにより接合し、固体高分子膜−触媒層接合体を作製した。
【0079】
そして、前記固体高分子膜−触媒層接合体の両面に、実施例1〜2又は比較例1〜2のガス拡散シートを、水分管理層が触媒層に当接するように積層した後、ホットプレスによって膜−電極接合体(MEA)としたもの(実験1〜2、比較実験1〜2)、及び前記固体高分子膜−触媒層接合体の両面に、実施例3〜6又は比較例3〜5の水分管理シート、カーボンペーパー(東レ(株)製、目付:84g/m
2、厚さ:190μm)の順に積層した後、ホットプレスによって膜−電極接合体(MEA)としたもの(実験3〜6、比較実験3〜5)、をそれぞれ作製した。
【0080】
その後、締め付け圧1.5N・mで固体高分子形燃料電池セル『As−510−C25−1H』(商品名、エヌエフ回路設計ブロック(株)製)にそれぞれ組み付け、それぞれの発電性能を評価した。この標準セルは、バイポーラプレートを含み、膜−電極接合体(MEA)の評価試験に用いるものである。発電は燃料極側に水素ガス利用率70%、空気極側に空気ガス利用率45%を供給し、セル温度は80℃、バブラー温度80℃のフル加湿条件で、電位−電流曲線を測定した。また、2.0A/cm
2電流密度時のアノード側とカソード側のバイポーラプレート間の、抵抗値を測定した。この結果は表2に示す通りであった。
【0081】
【表2】
【0082】
表2の結果から、疎水性有機樹脂の内部に導電性粒子を含有する導電性繊維を含有する不織布からなる水分管理シートを使用した燃料電池は、高加湿条件下における水の生成量が増加する高電流領域おいてもフラッディングを生じることのない排水性に優れるものであり、また、ガスの拡散性に優れているため、発電性能の高いものであった。
【0083】
実験2と実験3の発電結果から、本発明の水分管理シートは紡糸時に導電性多孔シート上に直接積層しても、自立した水分管理シートを作製した後に導電性多孔シートに積層しても、同程度の優れた発電性能を得ることができた。
【0084】
また、実験1〜4、6と実験5との比較から、溶媒置換を行った水分管理シートは、高加湿条件下における高電流密度領域においてもフラッディングを抑制できる優れた排水性、高いガス拡散性に加えて、燃料電池セル内での接触抵抗が低く、より発電性能の高いものであった。