(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吐出口配列方向に配列された複数の吐出口から記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部と、前記記録媒体を前記吐出口配列方向と交差する移動方向に前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御することにより前記記録媒体に画像を記録する制御部と、前記移動方向に交差する素子配列方向に配列された複数の撮像素子を有する撮像部とを備える、インクジェット方式にて画像を記録する画像記録装置において、前記記録媒体への画像の記録の際に前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に使用される補正係数を取得する補正係数取得方法であって、
a)前記撮像部により所定の目標濃度のテストパターンを複数回撮像して複数のテスト画像を取得する工程と、
b)前記複数のテスト画像に基づいて、各吐出口に対応する撮像素子からの出力の最大値と最小値との差である濃度変動幅を求める工程と、
c)前記吐出部により前記目標濃度となるように補正用媒体に補正用パターンを記録し、前記補正用パターンを前記撮像部により撮像して補正用画像を取得する工程と、
d)前記補正用画像における各吐出口に対応する撮像素子からの出力である出力濃度と、前記目標濃度との差である濃度誤差を求め、前記濃度誤差が当該濃度誤差に対応する前記濃度変動幅に基づいて定められた値以上である場合に、前記濃度誤差に基づいて当該吐出口の補正係数を決定する工程と、
を備えることを特徴とする補正係数取得方法。
吐出口配列方向に配列された複数の吐出口から記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部と、前記記録媒体を前記吐出口配列方向と交差する移動方向に前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御することにより前記記録媒体に画像を記録する制御部と、前記移動方向に交差する素子配列方向に配列された複数の撮像素子を有する撮像部とを備える、インクジェット方式にて画像を記録する画像記録装置における画像記録方法であって、
a)前記記録媒体への画像の記録の際に前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数を決定する工程と、
b)前記補正係数を利用しつつ前記吐出部および前記移動機構を制御することにより、前記記録媒体に画像を記録する工程と、
を備え、
前記a)工程が、
a1)前記撮像部により所定の目標濃度のテストパターンを複数回撮像して複数のテスト画像を取得する工程と、
a2)前記複数のテスト画像に基づいて、各吐出口に対応する撮像素子からの出力の最大値と最小値との差である濃度変動幅を求める工程と、
a3)前記吐出部により前記目標濃度となるように補正用媒体に補正用パターンを記録し、前記補正用パターンを前記撮像部により撮像して補正用画像を取得する工程と、
a4)前記補正用画像における各吐出口に対応する撮像素子からの出力である出力濃度と、前記目標濃度との差である濃度誤差を求め、前記濃度誤差が当該濃度誤差に対応する前記濃度変動幅に基づいて定められた値以上である場合に、前記濃度誤差に基づいて当該吐出口の補正係数を決定する工程と、
を備えることを特徴とする画像記録方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のインクジェット記録装置では、CCDラインセンサにおける複数の撮像素子(CCD)の分光感度のばらつき、光源の光量ムラや経年劣化等により、実際よりも濃度ムラを大きく検出したり、実際には濃度ムラが存在しない位置において濃度ムラを誤検出してしまうおそれがある。その結果、各ノズルからのインクの吐出量を過剰補正してしまい、各ノズルの補正関数の決定(すなわち、各ノズルの吐出補正)に多大な時間を要してしまう。
【0007】
特許文献2のカラー複写装置では、スキャナ部のCCDの分光感度のばらつき等を補正するために、複数の異なる階調レベルの無彩色パッチと、複数の異なる有彩色パッチとを用いる必要があり、分光感度のばらつき補正に多大な時間が必要となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、過剰補正を抑制して効率的かつ高精度な吐出補正を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、インクジェット方式にて画像を記録する画像記録装置であって、吐出口配列方向に配列された複数の吐出口から記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部と、前記記録媒体を前記吐出口配列方向と交差する移動方向に前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御することにより、前記記録媒体に画像を記録する制御部と、前記移動方向に交差する素子配列方向に配列された複数の撮像素子を有する撮像部と、
前記記録媒体への画像の記録の際に前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数を記憶する記憶部とを備え、前記制御部が、前記撮像部により所定の目標濃度のテストパターンを複数回撮像して複数のテスト画像を取得するテスト画像取得部と、前記複数のテスト画像に基づいて、各吐出口に対応する撮像素子からの出力の最大値と最小値との差である濃度変動幅を求める濃度変動幅取得部と、前記吐出部により前記目標濃度となるように補正用媒体に補正用パターンを記録し、前記補正用パターンを前記撮像部により撮像して補正用画像を取得する補正用画像取得部と、前記補正用画像における各吐出口に対応する撮像素子からの出力である出力濃度と、前記目標濃度との差である濃度誤差を求め、前記濃度誤差が
当該濃度誤差に対応する前記濃度変動幅に基づいて定められた値以上である場合に、前記濃度誤差に基づいて当該吐出口の補正係数を決定する補正係数取得部とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置であって、前記移動機構が、前記テストパターンが記録された媒体を前記撮像部に対して前記移動方向に相対的に往復移動可能であり、前記テスト画像取得部が、前記テストパターンが記録された前記媒体を前記撮像部に対して相対的に往復移動させて前記撮像部による前記テストパターンの撮像を繰り返し行う。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録装置であって、前記テストパターンが位置合わせ用目印を備え、前記テスト画像取得部が、前記テストパターンの前記撮像部に対する前記素子配列方向に関する相対位置を取得し、前記相対位置が所定の範囲内の撮像結果のみが前記複数のテスト画像に含められる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記記録媒体が前記吐出部に対向する位置を1回通過することにより、前記記録媒体への画像の記録が完了する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記濃度変動幅取得部が、現在から所定期間内の過去に取得された複数のテスト画像に基づいて求められた前記各吐出口に対応する撮像素子からの出力の最大値と最小値との差も利用して前記濃度変動幅を求める。
【0014】
請求項6に記載の発明は、吐出口配列方向に配列された複数の吐出口から記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部と、前記記録媒体を前記吐出口配列方向と交差する移動方向に前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御することにより前記記録媒体に画像を記録する制御部と、前記移動方向に交差する素子配列方向に配列された複数の撮像素子を有する撮像部とを備える、インクジェット方式にて画像を記録する画像記録装置において、前記記録媒体への画像の記録の際に前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に使用される補正係数を取得する補正係数取得方法であって、a)前記撮像部により所定の目標濃度のテストパターンを複数回撮像して複数のテスト画像を取得する工程と、b)前記複数のテスト画像に基づいて、各吐出口に対応する撮像素子からの出力の最大値と最小値との差である濃度変動幅を求める工程と、c)前記吐出部により前記目標濃度となるように補正用媒体に補正用パターンを記録し、前記補正用パターンを前記撮像部により撮像して補正用画像を取得する工程と、d)前記補正用画像における各吐出口に対応する撮像素子からの出力である出力濃度と、前記目標濃度との差である濃度誤差を求め、前記濃度誤差が
当該濃度誤差に対応する前記濃度変動幅に基づいて定められた値以上である場合に、前記濃度誤差に基づいて当該吐出口の補正係数を決定する工程とを備える。
【0015】
請求項7に記載の発明は、吐出口配列方向に配列された複数の吐出口から記録媒体に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部と、前記記録媒体を前記吐出口配列方向と交差する移動方向に前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記吐出部と前記移動機構とを制御することにより前記記録媒体に画像を記録する制御部と、前記移動方向に交差する素子配列方向に配列された複数の撮像素子を有する撮像部とを備える、インクジェット方式にて画像を記録する画像記録装置における画像記録方法であって、a)
前記記録媒体への画像の記録の際に前記複数の吐出口からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数を決定する工程と、b)前記補正係数を利用しつつ前記吐出部および前記移動機構を制御することにより、前記記録媒体に画像を記録する工程とを備え、前記a)工程が、a1)前記撮像部により所定の目標濃度のテストパターンを複数回撮像して複数のテスト画像を取得する工程と、a2)前記複数のテスト画像に基づいて、各吐出口に対応する撮像素子からの出力の最大値と最小値との差である濃度変動幅を求める工程と、a3)前記吐出部により前記目標濃度となるように補正用媒体に補正用パターンを記録し、前記補正用パターンを前記撮像部により撮像して補正用画像を取得する工程と、a4)前記補正用画像における各吐出口に対応する撮像素子からの出力である出力濃度と、前記目標濃度との差である濃度誤差を求め、前記濃度誤差が
当該濃度誤差に対応する前記濃度変動幅に基づいて定められた値以上である場合に、前記濃度誤差に基づいて当該吐出口の補正係数を決定する工程とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、過剰補正を抑制して効率的かつ高精度な吐出補正を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、複数の印刷用紙である記録媒体9上に、インクジェット方式にてカラー画像を順次記録する(すなわち、カラー印刷を行う)枚様式の印刷装置である。
【0019】
図1に示すように、画像記録装置1は、複数の記録媒体9を
図1中の(+Y)方向である移動方向に移動する移動機構2、移動機構2による搬送途上の記録媒体9に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出ユニット3、移動機構2に記録媒体9を供給する供給部51、印刷終了後の記録媒体9を移動機構2から受け取る排出部52、記録媒体9を撮像する撮像部6、並びに、これらの機構を制御する制御ユニット4を備える。吐出ユニット3および撮像部6は、移動機構2の上方((+Z)側)に配置され、図示省略のフレームに固定される。
【0020】
移動機構2は、複数のステージ21と、環状のガイド22と、ベルト駆動機構23とを備える。複数のステージ21は、それぞれが1枚のシート状の記録媒体9を吸着保持する。ガイド22は、複数のステージ21が接続されたベルトを内部に備え、複数のステージ21を案内する。ベルト駆動機構23は、ガイド22内のベルトを
図1中における反時計回りに移動させることにより、記録媒体9を保持するステージ21を吐出ユニット3および撮像部6の下方(すなわち、(−Z)側)において(+Y)方向に移動する。
【0021】
ベルト駆動機構23は、制御ユニット4の後述する制御部41(
図5参照)により制御されることにより、上記ベルトの移動方向を反対向きに切り替えてベルトを
図1中における時計回りに移動させる。これにより、記録媒体9を保持するステージ21は、吐出ユニット3および撮像部6の下方において(−Y)方向に移動する。すなわち、移動機構2は、ステージ21を吐出ユニット3および撮像部6に対して搬送方向に相対的に往復移動可能である。
【0022】
図2は吐出ユニット3を示す底面図である。吐出ユニット3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数(本実施の形態では、4個)の吐出部であるインクジェットヘッド31を備え、これらのインクジェットヘッド31は同様の構造を有する。複数のインクジェットヘッド31はY方向(すなわち、移動方向)に配列されて吐出ユニット3の取付部30に取り付けられる。
【0023】
図2中の最も(−Y)側のインクジェットヘッド31はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのインクジェットヘッド31の(+Y)側のインクジェットヘッド31はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのインクジェットヘッド31の(+Y)側のインクジェットヘッド31はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(+Y)側のインクジェットヘッド31はY(イエロー)の色のインクを吐出する。なお、吐出ユニット3では、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色用のインクジェットヘッド等も設けられてよい。
【0024】
図3は、一のインクジェットヘッド31を示す底面図である。他のインクジェットヘッド31も、
図3と同様の構造を有する。
図3に示すように、インクジェットヘッド31は、それぞれが同様の構造を有する複数(本実施の形態では、6個)のヘッド32を備える。複数のヘッド32は、センターリブ311の(−Y)側および(+Y)側に交互に位置するようにY方向に垂直なX方向に配列される。換言すれば、複数のヘッド32は、いわゆる千鳥状にX方向に配列される。
【0025】
各ヘッド32は、X方向に配列された複数の吐出口33を備える。複数のヘッド32は、全吐出口33がX方向に等ピッチにて配列されるように配置される。以下の説明では、X方向を「吐出口配列方向」ともいう。換言すれば、各インクジェットヘッド31は、移動方向に垂直な吐出口配列方向に配列された複数の吐出口33を備える。なお、吐出口配列方向は、必ずしも移動方向に垂直である必要はなく、移動方向に交差する方向であればよい。
【0026】
画像記録装置1では、移動方向に垂直なX方向に関し、各インクジェットヘッド31が記録媒体9上の記録領域の全体に亘って(本実施の形態では、記録媒体9のX方向の全体に亘って)設けられる。そして、制御部41(
図5参照)により吐出ユニット3と移動機構2とが制御され、記録媒体9が、吐出ユニット3の複数のインクジェットヘッド31に対向する位置を1回だけ通過することにより(すなわち、記録媒体9が、吐出ユニット3に対して移動方向に1回だけ相対移動することにより)、記録媒体9への画像の記録が完了する。換言すれば、画像記録装置1では、記録媒体9に対するシングルパス印刷が行われる。
【0027】
図4は、撮像部6を示す底面図である。
図4に示すように、撮像部6は、X方向に配列される複数の撮像素子61を有するラインセンサであり、撮像素子61はCCD(Charge Coupled Device)素子である。複数の撮像素子61が配列されるX方向を「素子配列方向」と呼ぶと、本実施の形態では、素子配列方向は吐出口配列方向に一致し、移動方向に垂直である。なお、素子配列方向は、必ずしも移動方向に垂直である必要はなく、移動方向に交差する方向であればよい。
【0028】
図1に示すように、撮像部6は、吐出ユニット3よりも記録媒体9の移動方向の下流側である(+Y)側に配置され、移動方向に垂直なX方向に関し、記録媒体9上の記録領域の全体に亘って(本実施の形態では、記録媒体9のX方向の全体に亘って)設けられる。そして、記録媒体9が、撮像部6に対向する位置を1回だけ通過することにより(すなわち、記録媒体9が、撮像部6に対して移動方向に1回だけ相対移動することにより)、記録媒体9の撮像が完了する。本実施の形態では、撮像部6の複数の撮像素子61のX方向における位置が、各インクジェットヘッド31の複数の吐出口33のX方向における位置と一致する。換言すれば、各撮像素子61は、各インクジェットヘッド31の1つの吐出口33に対応する。
【0029】
図5は、制御ユニット4の機能を示すブロック図であり、
図5では、制御ユニット4に接続される画像記録装置1の構成の一部を併せて示す。制御ユニット4は、上述の制御部41と、様々な情報を記憶する記憶部42とを備える。制御部41は、記録制御部411、テスト画像取得部412、濃度変動幅取得部413、補正用画像取得部414、および、補正係数取得部415を備える。
【0030】
記録制御部411は、上述のように、移動機構2および吐出ユニット3を制御して記録媒体9に画像を記録する。記憶部42には、吐出ユニット3の複数の吐出口33からのインクの吐出量の補正に利用される補正係数が記憶される。記録制御部411では、記憶部42に記憶された複数の補正係数に基づいて、吐出ユニット3の複数の吐出口33からのインクの吐出量が補正され、これにより、記録媒体9上における濃度ムラや筋ムラ等の発生が防止される。
【0031】
次に、画像記録装置1における上記補正係数の取得の流れについて、
図6を参照しつつ説明する。画像記録装置1では、まず、
図7に示す濃度ムラ補正用のテストパターン95が記録された媒体96(以下、「テスト媒体96」という。)がステージ21(
図1参照)により保持される。テストパターン95は、ステージ21の移動方向(Y方向)に配列された複数(本実施の形態では、6つ)の矩形状の領域951を有する。各領域951のX方向の幅は、撮像部6の複数の撮像素子61のX方向における幅以上である。各領域951には、一様な濃度の画像が記録されている。各領域951の濃度は、(+Y)側から順に100%、80%、50%、30%、10%、5%である。
【0032】
テスト媒体96は、記録媒体9と同様の印刷用紙であってもよく、他の媒体であってもよい。また、テストパターン95は、画像記録装置1によりテスト媒体96上に記録されてもよく、他の種類の画像記録装置等によりテスト媒体96上に記録されてもよい。テストパターン95の記録に利用されるインクのドライダウンが大きい場合、テストパターン95の記録から所定の時間が経過した後のテスト媒体96が用いられることが好ましい。
【0033】
続いて、
図1に示す移動機構2が駆動され、テスト媒体96が撮像部6の下方へと移動する。そして、
図5に示すテスト画像取得部412により移動機構2および撮像部6が制御されることにより、テスト媒体96が撮像部6の下方にて撮像部6に対して相対的に往復移動し、撮像部6によるテストパターン95の撮像が繰り返し行われる。本実施の形態では、撮像部6により、テストパターン95が4回撮像される。撮像部6により取得されたテストパターン95の複数の画像は、テスト画像取得部412に送られる。テスト画像取得部412では、テストパターン95の複数の画像から、所定の濃度(本実施の形態では100%であり、以下、「目標濃度」という。)の領域951の複数の画像が、複数のテスト画像として取得される(ステップS11)。
【0034】
図8は、複数のテスト画像の濃度を示す図である。
図8の横軸は、撮像部6の複数の撮像素子61のX方向における位置を示し、縦軸は、X方向の各位置におけるテスト画像の濃度、すなわち、複数の撮像素子61からの出力値を濃度に変換した値を示す。
図8では、ステップS11における4回の撮像により取得された4つのテスト画像の濃度を4本の実線81にて示す。
【0035】
次に、濃度変動幅取得部413により、複数のテスト画像に基づいて、インクジェットヘッド31の各吐出口33に対応する撮像素子61からの出力の最大値と最小値との差である濃度変動幅が求められる(ステップS12)。濃度変動幅は、実際には、各撮像素子61からの出力値を濃度に変換した値の最大値と最小値との差として求められる。
図8では、1つの撮像素子61の濃度変動幅の大きさを線82にて示す。
【0036】
図9は、撮像部6の全ての撮像素子61の濃度変動幅を示す図である。
図9の横軸はX方向の位置を示し、縦軸は濃度変動幅を示す。
図9中の実線83は濃度変動幅を示し、破線84は、濃度変動幅に基づいて各撮像素子61について定められた値である変動閾値を示す。本実施の形態では、変動閾値は濃度変動幅の0.5倍である。なお、変動閾値は、濃度変動幅に基づいて定められるのであれば、適宜変更されてよい。
【0037】
濃度変動幅が取得されると、記録媒体9と同様の印刷用紙である補正用媒体がステージ21により保持される。続いて、
図5に示す補正用画像取得部414により移動機構2および吐出ユニット3が制御されることにより、吐出ユニット3の下方を通過する補正用媒体に上記目標濃度となるように補正用パターンが記録される。本実施の形態では、テストパターン95と同様に、それぞれの濃度が100%、80%、50%、30%、10%、5%である複数の矩形状の領域がY方向に配列された補正用パターンが補正用媒体に記録される。
【0038】
補正用パターンのX方向の幅は、インクジェットヘッド31の複数の吐出口33のX方向における幅、および、撮像部6の複数の撮像素子61のX方向における幅に等しい。そして、補正用画像取得部414により移動機構2および撮像部6が制御されることにより、撮像部6の下方を通過する補正用媒体上の補正用パターンが撮像されて補正用画像が取得される(ステップS13)。なお、補正用媒体は、記録媒体9と異なる他の媒体であってもよい。
【0039】
次に、補正係数取得部415により、補正用画像における各吐出口33に対応する撮像素子61からの出力である出力濃度(すなわち、各撮像素子61からの出力値を濃度に変換した値)と、目標濃度との差の絶対値である濃度誤差が求められる。そして、各吐出口33の濃度誤差が、各吐出口33に対応する撮像素子61の変動閾値(
図9参照)と比較され、濃度誤差が変動閾値以上である吐出口33が、補正対象として抽出される。
【0040】
図10は、出力濃度を示す図である。
図10の横軸はX方向の位置を示し、縦軸は濃度を示す。
図10中の実線86は出力濃度を示す。上述の濃度誤差は、実線86と破線87にて示された目標濃度との差の絶対値である。
図10中の2本の一点鎖線88は、目標濃度に変動閾値を加えたもの、および、目標濃度から変動閾値を減じたものを示す。補正対象として抽出される吐出口33は、
図10中の実線86が、上側の一点鎖線88以上となる、あるいは、下側の一点鎖線88以下となる領域89に含まれる吐出口である。補正係数取得部415では、補正対象である各吐出口33について、各吐出口33の濃度誤差に基づいて補正係数が決定される(ステップS14)。補正係数は、例えば、出力濃度が目標濃度よりも小さい場合、濃度誤差を目標濃度により除算した値を1に加算することにより求められ、出力濃度が目標濃度よりも大きい場合、濃度誤差を目標濃度により除算した値を1から減算することにより求められる。
【0041】
画像記録装置1では、予め定められた所定の回数(本実施の形態では、3回)だけステップS13,S14が繰り返され(ステップS15)、最終的に決定された補正係数が記憶部42に格納され(ステップS16)、次のステップS17において利用される。換言すれば、ステップS16にて記憶部42に格納される補正係数が、最終的な補正係数であり、ステップS14にて決定される補正係数は、仮決定された仮補正係数である。
【0042】
画像記録装置1では、また、上述のステップS11〜S16が、テストパターン95の他の領域951の濃度(80%、50%、30%、10%、5%)をそれぞれ目標濃度として行われ、各濃度における補正係数が決定される。なお、ステップS13,S14の繰り返し回数は3回には限定されず、2回または4回以上でもよい。あるいは、ステップS13,S14は1回だけ行われてもよい。また、ステップS13,S14の繰り返しは、ステップS14にて決定された補正係数を利用して補正用パターンを記録および撮像し、補正用画像の濃度誤差が所定の範囲内に収まるまで行われてもよい。
【0043】
画像記録装置1では、記録制御部411により、ステップS14にて決定された補正係数を利用しつつ吐出ユニット3および移動機構2が制御されることにより、記録媒体9に画像が記録される(ステップS17)。具体的には、記録媒体9に記録される画像の元画像データにおいて、補正対象の各吐出口33に対応する画素の濃度が、補正係数を利用して変更され(例えば、元画像データの画素の濃度に補正係数が乗算され)、補正済データが生成される。そして、閾値マトリクスを利用して補正済データから網点データが生成され、網点データに基づいて各吐出口33からのインクの吐出量を示す吐出データが生成され、当該吐出データに基づいてインクの吐出が行われる。すなわち、補正対象の各吐出口33からのインク吐出量が補正係数を利用して補正される。なお、補正されるインク吐出量とは、吐出口33から1回に吐出されるインクの量であってもよく、記録媒体9の所定距離の移動の間に吐出口33からインクが吐出される回数(すなわち、所定距離間のインクの合計吐出量)であってもよい。
【0044】
ところで、目標濃度となるように記録された補正用パターンを撮像して補正用画像を取得し、補正用画像と目標濃度との差に基づいて全ての吐出口の補正係数を決定する画像記録装置(以下、「比較例の画像記録装置」という。)を想定すると、比較例の画像記録装置では、撮像部における複数の撮像素子の分光感度のばらつき等により、補正用画像と目標濃度との差が、実際よりも大きく算出されるおそれがある。その結果、各吐出口からのインクの吐出量を過剰補正してしまい、各吐出口の補正関数の決定に多大な時間を要してしまう。
【0045】
これに対し、本実施の形態に係る画像記録装置1では、目標濃度のテストパターンを複数回撮像して複数のテスト画像が取得され、各吐出口33に対応する撮像素子61における濃度変動幅が求められる。続いて、目標濃度となるように補正用パターンを記録し、当該補正用パターンが撮像されて補正用画像が取得される。そして、補正用画像の出力濃度と目標濃度との差である濃度誤差が、濃度変動幅に基づく変動閾値以上の吐出口33が補正対象として抽出され、抽出された各吐出口33のみに対し、濃度誤差に基づく補正係数が決定される。これにより、複数の撮像素子61の分光感度のばらつき等による過剰補正を抑制し、効率的かつ高精度な吐出補正を行うことができる。
【0046】
図11は、記録媒体9に記録される画像の濃度のばらつきについて、画像記録装置1と比較例の画像記録装置とを比較した結果を示す図である。
図11の横軸は画像の濃度を示し、縦軸は、比較例の画像記録装置により記録された画像の濃度の標準偏差を画像記録装置1により記録された画像の濃度の標準偏差により除算したものを示す。
【0047】
図11に示すように、濃度100%、50%、30%、10%、5%においては、画像記録装置1により記録された画像の濃度の標準偏差が、比較例の画像記録装置により記録された画像の濃度の標準偏差よりも小さく、効率的かつ高精度な吐出補正が行われていることがわかる。このように、効率的かつ高精度な吐出補正を行うことができる画像記録装置1の構造は、複数の吐出口からの吐出ムラによる画像の濃度ムラがインターレス印刷に比べて目立ちやすいシングルパス印刷が行われる画像記録装置に特に適している。
【0048】
画像記録装置1では、ステップS11において、テスト媒体96を撮像部6に対して相対的に往復移動し、テストパターン95の撮像が繰り返し行われて複数のテスト画像が取得される。これにより、複数のテスト画像を容易に取得することができる。また、テストパターン95がそれぞれ記録された複数のテスト媒体96を順次撮像して複数のテスト画像を取得する場合に比べ、複数回の撮像におけるテストパターン95の撮像部6に対するX方向の相対位置の変動が抑制される。その結果、テストパターン95の複数回の撮像において、各撮像素子61が撮像するテストパターン95上のX方向の位置のずれが抑制され、より高精度な吐出補正を行うことができる。
【0049】
画像記録装置1では、ステップS11において、吐出ユニット3により複数のテスト媒体96に対してテストパターン95がそれぞれ記録され、当該複数のテスト媒体96が撮像部6により順次撮像されることにより、複数のテスト画像が取得されてもよい。この場合、各テストパターン95は、位置合わせ用目印を備えることが好ましい。
図12は、位置合わせ用目印952の一例を示す図である。
図12では、位置合わせ用目印952は、テストパターン95の(+Y)側および(−Y)側に突出するY方向に平行な複数の直線である。
【0050】
ステップS11では、複数のテスト媒体96が順次撮像されて複数の画像が取得され、各画像における位置合わせ用目印952の位置に基づいて、当該各画像取得時のテストパターン95の撮像部6に対するX方向(すなわち、素子配列方向)に関する相対位置が、テスト画像取得部412により取得される。そして、当該相対位置が所定の範囲内の撮像結果(例えば、相対位置の目標位置からのずれが所定の許容値以下の画像)のみが、ステップS12の濃度変動幅の算出に利用される複数のテスト画像に含められる。これにより、当該複数のテスト画像において、各撮像素子61が撮像するテストパターン95上のX方向の位置のずれが抑制され、より高精度な吐出補正を行うことができる。
【0051】
なお、位置合わせ用目印952として、例えば、テストパターン95の領域951内に濃度が異なるY方向に平行な直線が設けられてもよい。この場合、位置合わせ用目印952に対応する撮像素子61の濃度変動幅は、位置合わせ用目印952のX方向における位置を変更した他のテストパターン95を利用して求められる。また、テストパターン95の各領域951がX方向に配列される複数の単位領域に分割され、隣接する単位領域のY方向における位置がずらされることにより、隣接する単位領域の境界が位置合わせ用目印952として利用されてもよい。
【0052】
ところで、上述の補正係数の決定は、所定の頻度(例えば、2,3日に1度)にて行われる。画像記録装置1では、現在から所定期間(例えば、30日や6ヶ月)内の過去に行われた補正係数の決定の際に取得された濃度変動幅(以下、「過去濃度変動幅」という。)が記憶部42に記憶され、上述のステップS12において、これらの過去濃度変動幅も利用して濃度変動幅が求められてもよい。過去の補正係数の決定の際にも、上記と同様に複数のテスト画像が取得されており、過去濃度変動幅は、当該複数のテスト画像に基づいて求められた各吐出口33に対応する撮像素子61からの出力の最大値と最小値との差である。
【0053】
過去濃度変動幅を利用する場合、ステップS12では、濃度変動幅取得部413により、今回取得された複数のテスト画像に基づいて求められた各撮像素子61からの出力の最大値と最小値との差が仮濃度変動幅として求められる。そして、仮濃度変動幅、および、記憶部42に予め記憶されている複数の過去濃度変動幅の平均値が、濃度変動幅として求められる。
【0054】
このように、過去濃度変動幅を考慮して濃度変動幅を求めることにより、撮像素子61からの出力の突発的なばらつき等による過剰補正を抑制し、より効率的かつ高精度な吐出補正を行うことができる。なお、過去濃度変動幅を利用した濃度変動幅の決定は、上記以外の様々な方法で行われてよい。例えば、濃度変動幅は、現在から過去に向かうに従って漸次減少する重みを考慮した仮濃度変動幅および過去濃度変動幅の加重平均であってもよい。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0056】
例えば、ステップS11では、テストパターン95の撮像回数は4回には限定されず、撮像部6によりテストパターン95が複数回撮像されて複数のテスト画像が取得されていればよい。また、ステップS13では、補正用パターンが複数回撮像され、複数の撮像結果を利用して補正用画像が取得されてもよい。具体的には、例えば、複数の撮像結果の平均値が補正用画像とされる。ステップS15では、記録制御部411により、補正係数を利用して網点データが補正されてもよく、吐出データが補正されてもよい。
【0057】
画像記録装置1では、撮像部6の各撮像素子61が、2つ以上の吐出口33とY方向に重なっていてもよい。この場合、各吐出口33に対応する出力濃度は、各吐出口33に対応する撮像素子群、すなわち、各吐出口33とY方向に重なる1つまたは2つの撮像素子61を含むとともにX方向に連続した複数の撮像素子61からの出力が補間されることにより求められてもよい。また、撮像部6の撮像素子61は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)素子であってもよい。
【0058】
上記実施の形態では、複数のテストパターン95を順次撮像して複数のテスト画像が取得される場合に、テストパターン95に位置合わせ用目印952が設けられたが、位置合わせ用目印952は、移動機構2により1つのテストパターン95を撮像部6の下方にて往復移動させて複数のテスト画像が取得される場合にも設けられてよい。この場合も、ステップS11において、各画像における位置合わせ用目印952の位置に基づいて、当該各画像取得時のテストパターン95の撮像部6に対するX方向(すなわち、素子配列方向)に関する相対位置が、テスト画像取得部412により取得される。そして、当該相対位置が所定の範囲内の撮像結果のみが、ステップS12の濃度変動幅の算出に利用される複数のテスト画像に含められる。これにより、当該複数のテスト画像において、各撮像素子61が撮像するテストパターン95上のX方向の位置のずれが抑制され、より高精度な吐出補正を行うことができる。
【0059】
画像記録装置1では、記録媒体9が吐出ユニット3に対してY方向に相対的に移動するのであれば、例えば、停止している印刷媒体9の上方にて、吐出ユニット3が移動機構2によりY方向に移動してもよい。画像記録装置1の構造は、例えば、インターレス印刷を行う画像記録装置に適用されてもよく、また、長尺状のロール紙に画像を記録する画像記録装置に適用されてもよい。
【0060】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。