(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、を有するエアバッグ装置において、
前記エアバッグは、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエアバッグである、ことを特徴とするエアバッグ装置。
通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時にガスが供給されて膨張展開するとともに内部のガスを外部に放出可能なベントホールを有するエアバッグのベントホール開閉制御方法において、
前記ベントホールを開閉可能な開閉手段と、該開閉手段及び前記エアバッグの膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に接続されるとともに段階的に伸張可能な伸張テザーと、を有し、
前記開閉手段は、前記ベントホールを外側から閉塞可能な弁体と、該弁体と前記伸張テザーとを接続するストラップと、を有し、前記ストラップは、前記エアバッグを構成する基布に形成されたスリット部から前記エアバッグの内部に挿通されているとともに幅方向に拡幅された突起部を有し、
前記エアバッグの膨張展開に伴って、前記伸張テザーが弛緩状態から緊張状態に移行する第一段階と、前記伸張テザーが緊張状態を維持しながら所定長さまで伸張する第二段階と、前記エアバッグに乗員が接触して前記伸張テザーが弛緩する第三段階と、を区別し、前記第一段階では前記突起部を前記スリット部から前記エアバッグの外側に配置することによって前記ベントホールを開状態に保持し、前記第二段階では前記突起部を前記スリット部から前記エアバッグの内部に引き込むことによって前記弁体により前記ベントホールを閉状態に保持し、前記第三段階では前記伸張テザーが弛緩することによって前記弁体が離隔がすることにより前記ベントホールを開状態に移行させるようにした、
ことを特徴とするベントホール開閉制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図10を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の実施形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置を示す図であり、(A)はエアバッグの背面図、(B)はエアバッグ装置の断面図、を示している。
図2は、
図1に示したエアバッグのベントホール及び開閉手段を示す図であり、(A)はベントホールの平面図、(B)は開閉手段の第一例、(C)は開閉手段の第二例、を示している。なお、
図2(A)〜(C)における円弧形状の一点鎖線は縫合予定線を意味している。
【0023】
本発明の実施形態に係るエアバッグ装置は、
図1及び
図2に示したように、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグ1と、エアバッグ1にガスを供給するインフレータ2と、エアバッグ1及びインフレータ2を固定するリテーナ3と、を有し、エアバッグ1を構成する基布に形成されたベントホール4と、ベントホール4を開閉可能な開閉手段5と、開閉手段5及びエアバッグ1の膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材(例えば、エアバッグ1の内面)に接続されるとともに段階的に伸張可能な伸張テザー6と、を有し、伸張テザー6は、エアバッグ1の膨張展開に伴って、弛緩状態から緊張状態に移行する第一段階と、緊張状態を維持しながら所定長さまで伸張する第二段階と、エアバッグ1に乗員が接触して弛緩する第三段階と、を有するように構成され、開閉手段5は、第一段階ではベントホール4を開状態に保持し、第二段階ではベントホール4を閉状態に保持し、第三段階ではベントホール4を開状態に移行可能に構成されている。
【0024】
図1(B)に示したエアバッグ装置は、例えば、運転席用エアバッグ装置であり、運転席の前面に配置されたステアリングホイール11の略中央部に配置されたステアリングボス部12に配置されており、図示しない樹脂製のパッドにより被覆されている。エアバッグ1は、インフレータ2の作動により内部にガスが供給されると膨張展開を開始し、パッドを開裂させて車室内に放出され、運転席に着座した乗員の前方に膨張展開される。
【0025】
前記エアバッグ1は、例えば、乗員との接触面を形成する第一基布1aと、ステアリングホイール11側に配置される第二基布1bと、を有し、第一基布1aと第二基布1bとの縁部を縫合することによってエアバッグ1を構成する袋体が形成されている。第二基布1bの略中央部には、
図1(A)に示したように、インフレータ2を装着するための開口部1cが形成されている。エアバッグ1は、例えば、開口部1cにインフレータ2の一部が挿入され、内側からバッグリング(図示せず)が配置され、ボルト・ナット等の固定具(図示せず)によりリテーナ3に固定される。なお、エアバッグ1の内部には、エアバッグ1の膨張展開時における突出幅(厚さ)を規制する幅規制テザー7が配置されていてもよい。
【0026】
前記インフレータ2は、エアバッグ1に供給されるガスを発生させるガス発生器であり、例えば、略円板形状の外形をなしている。
図1(B)では、ディスク型のインフレータ2を使用した場合を図示しているが、略円柱形状の外形をなしたシリンダ型のインフレータを使用してもよい。インフレータ2は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御される。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、インフレータ2はECUからの点火電流により点火され、インフレータ2の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ1にガスを供給する。
【0027】
前記リテーナ3は、エアバッグ1及びインフレータ2を固定する部材であり、パッドを接続することによってエアバッグモジュールが構成される。かかるエアバッグモジュールは、ステアリングボス部12に相対移動可能に接続され、パッドとステアリングボス部12との間でホーンスイッチを構成する。ステアリングホイール11は、複数のスポークを介してステアリングボス部12に接続されている。なお、上述した、エアバッグ1、インフレータ2及びリテーナ3により構成されるエアバッグ装置の基本構成は、単なる一例であり、図示したものに限定されるものではない。
【0028】
前記ベントホール4は、例えば、
図1(A)及び(B)に示したように、エアバッグ1の背面側を構成する第二基布1bに形成されている。かかる構成により、ベントホール4から放出されるガスが乗員に吹きかからないようにすることができる。また、ベントホール4は、例えば、ステアリングホイール11の内側に形成されている。かかる配置により、乗員がエアバッグ1に接触して圧力が負荷される方向と対峙する位置にベントホール4を配置することができ、ガスを放出しやすくすることができる。
【0029】
ここで、
図2(A)は、ベントホール4の形状を示す図である。
図2(A)に示したように、ベントホール4は、全体の外形が円形状を有しており、ベントホール4を構成する開口部にブリッジ部41が形成されている。ここでは、ブリッジ部41は十字形状を有しており、中央部に略I字形状のスリット部42が形成されている。かかるブリッジ部41により、ベントホール4は、四つの領域(ベント領域4a〜4d)に分割される。ブリッジ部41は、例えば、エアバッグ1を構成する第二基布1bの一部により構成される。すなわち、第二基布1bからベント領域4a〜4dを切り抜くことによって、ブリッジ部41及びベントホール4が形成される。
【0030】
上述したベントホール4の構成は単なる一例であり、図示しないが、ベントホール4は、二つ又は三つのベント領域に分割されていてもよいし、五つ以上のベント領域に分割されていてもよいし、ベント領域は異なる大きさに形成されていてもよいし、ブリッジ部41がベント領域の分割数に応じて略Y字形状や略T字形状等に形成されてもよいし、全体の外形が四角形状や多角形状であってもよい。
【0031】
ここで、
図2(B)は、開閉手段5の構成の第一例を示す図である。開閉手段5は、ベントホール4を外側から閉塞可能な弁体51と、弁体51と伸張テザー6とを接続するストラップ52と、を有している。弁体51は、略扇形形状の形成されている。
図2(A)に示したように、四つのベント領域4a〜4dを有する場合には、四つの弁体51によりベントホール4が閉塞可能に構成される。弁体51は、例えば、90度以上の中心角(例えば、90〜100度)を有しており、隣接する弁体51がブリッジ部41上で重なり合うように構成されている。また、弁体51の外周には、ベントホール4の90度ごとに配置されたタブ部51aが形成されている。したがって、各弁体51には、二箇所にタブ部51aが形成されることとなる。タブ部51aには、弁体51を位置決め可能なピンを挿通するピン孔が形成されている。
【0032】
なお、弁体51の扇形を構成する二辺は、弁体51が各ベント領域4a〜4dを覆うことができ、閉状態時にブリッジ部41上に配置されるように構成されていれば、必ずしも隣接する弁体51は重ね合わされていなくてもよい。このとき、弁体51の中心角は約90度に形成される。また、弁体51の形状は、ベント領域の形状に合わせて適宜設定されるものであり、ベント領域の個数に応じて弁体51の個数が設定される。
【0033】
また、弁体51は、ストラップ52の延伸方向に沿って形成された切込部51bを有している。ストラップ52は、例えば、弁体51を外側に折り曲げた状態を維持するのに必要な長さを有しており、端部に接合部52aを有している。接合部52aは、弁体51どうしを縫合する部分であるとともに、伸張テザー6に接続する部分でもある。また、ストラップ52は、幅方向に拡幅された突起部52bを有している。この突起部52bは、ストラップ52が挿通されるスリット部42よりも幅広に形成されており、ストラップ52がスリット部42を通過するときに突起部52bが引っ掛かるように構成されている。したがって、突起部52bがエアバッグ1の外側に引き出されている場合には、突起部52bが変形してスリット部42を通過するまでは、突起部52bから弁体51までの長さは変動しないこととなる。
【0034】
上述した開閉手段5は、一対の弁体51のタブ部51aを重ね合わせて仮留めすることにより、略半円形状に組み合わされた弁体51を二組形成する。このとき、ストラップ52どうしは接合部52aで縫合される。そして、二組の略半円形状に組み合わされた弁体51のタブ部51aを重ね合わせて仮留めすることにより、円形状に組み合わされた弁体51を形成する。このとき、四本のストラップ52は、円形状に組み合わされた弁体51の中央部で重ね合わされて接合部52aで縫合される。
【0035】
このように弁体51を円形状に組み合わせた状態で、ストラップ52をベントホール4の中央部に形成されたスリット部42に挿通し、各弁体51の外周部をエアバッグ1に縫合する。なお、弁体51のエアバッグ1への取り付け方法は、上述した方法に限定されるものではなく、例えば、各弁体51のストラップ52をスリット部42に挿通してから、各弁体51を重ね合わせて仮留めするようにしてもよい。
【0036】
図2(C)に示した開閉手段5の構成の第二例は、
図2(B)に示した一対の弁体51をストラップ52の接合部52aで連設し一体に形成したものである。かかる開閉手段5では、一本の弁体51のタブ部51aを重ね合わせて仮留めすることにより、略半円形状に組み合わされた弁体51を二組形成する。このとき、ストラップ52に対して略垂直方向に形成されているタブ部51aどうしを重ね合わせるようにすることにより、ストラップ52を一本のストラップ52に折り重ねることができる。続いて、二組の略半円形状に組み合わされた弁体51のタブ部51aを重ね合わせて仮留めすることにより、円形状に組み合わされた弁体51を形成し、弁体51を円形状に組み合わせた状態で、ストラップ52をベントホール4の中央部に形成されたスリット部42に挿通し、各弁体51の外周部をエアバッグ1に縫合する。
【0037】
次に、上述した開閉手段5の作用について説明する。ここで、
図3は、開閉手段の作用を示す図であり、(A)は膨張展開初期段階における開状態の平面図、(B)は
図3(A)におけるX−X断面図、(C)は閉状態の平面図、(D)は
図3(C)におけるX−X断面図、(E)は乗員接触時における開状態の平面図、(F)は
図3(E)におけるX−X断面図、を示している。
【0038】
図3(A)に示したように、開閉手段5は、弁体51がベント領域4a〜4dを開いた状態で折り畳まれており、エアバッグ1にインフレータ2からガスが供給されて膨張展開して伸張テザー6に一定の張力が生じるまで、ベントホール4(ベント領域4a〜4d)が開状態に維持されるようにしたものである。すなわち、開閉手段5は、ベントホール4を外側から閉塞可能な弁体51と、弁体51と伸張テザー6とを接続するストラップ52と、を有し、弁体51は、エアバッグ1の折り畳み時にベントホール4を閉塞しないように折り畳まれていることとなる。
【0039】
このように、膨張展開の初期段階において、一定時間ベントホール4を開状態に維持することにより、例えば、エアバッグ1の膨張展開時に乗員がステアリングホイール11に近接している場合(例えば、アウト・オブ・ポジションの状態)であっても、ベントホール4からガスを放出することができ、乗員の衝撃を緩和することができる。
【0040】
図3(A)及び(B)に示したように、弁体51は、その表面がエアバッグ1の表面側に折り返されており、その分だけストラップ52がエアバッグ1の外部に引き出されている。このとき、ストラップ52に形成された突起部52bがエアバッグ1の外側に配置されるようにしておく。かかる状態にしておくことにより、エアバッグ1の膨張展開時に伸張テザー6に張力が作用した場合であっても、突起部52bがストッパを構成し、その突起部52bをスリット部42に通過させる程度の張力が伸張テザー6に作用するまで、ベントホール4(ベント領域4a〜4d)の開状態を維持することができる。
【0041】
図3(C)及び(D)に示したように、伸張テザー6に一定の張力が生じ、突起部52bがエアバッグ1の内部に引き込まれると、ストラップ52は伸張テザー6の張力によってエアバッグ1の内部に引き込まれ、弁体51の折り返し部はベントホール4の中央部に向かって移動し、ベントホール4(ベント領域4a〜4d)を閉塞する。
【0042】
図3(E)及び(F)に示したように、例えば、エアバッグ1に乗員が接触した場合には、伸張テザー6が弛緩するとともに、エアバッグ1の内圧が上昇することにより、ベント領域4a〜4dを覆っていた弁体51が押し上げられてエアバッグ1の表面から離隔する。このとき、弁体51は外周部がエアバッグ1に接続されており、ストラップ52がベントホール4の中央部からエアバッグ1の内部に挿通されていることから、花が開くように、弁体51が捲れることとなり、ベントホール4の中央部からガスが放出される。すなわち、伸張テザー6の弛緩状態時に弁体51の拘束を解除することによりベント領域4a〜4d)を開放するように構成されている。
【0043】
かかる構成によれば、捲れた弁体51の外側には障害物が存在しないことから、エアバッグ1内のガスを直進させてベントホール4から外部に放出させることができる。したがって、弁体51が捲れることによって直ちにガスを外部に放出することができ、エアバッグ1の内圧に応じたガス放出の応答性(又は追随性)を向上させることができる。
【0044】
前記伸張テザー6は、エアバッグ1の膨張展開時に弁体51のストラップ52を段階的に引っ張ることができる紐部材であれば、どのようなものであってもよい。伸張テザー6は、例えば、一端がストラップ52に接続されており、他端がエアバッグ1の膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に接続されている。エアバッグ構成部材は、例えば、エアバッグ1の内面であってもよいし、エアバッグ1の内部に配置された幅規制テザー7やガスの流れを制御する整流布等であってもよい。
【0045】
ここで、
図4は、ベントホールが開状態から閉状態に移行する状態を示す概念図であり、(A)は伸張テザーの第一段階、(B)は伸張テザーの第二段階の初期状態、(C)は伸張テザーの第二段階の中間状態、(D)は伸張テザーの第二段階の終期状態、を示している。
【0046】
図4(A)に示したように、伸張テザー6は、延伸方向の中間部に形成された拡幅部61と、拡幅部61に延伸方向と略垂直に形成された破断部62と、開閉手段5のストラップ52と接続される連結部63と、を有している。破断部62は、例えば、複数の切れ目又は開口により構成されており、所定の間隔で直線状又は曲線状に配列される。また、切れ目は、単なる切り込みであってもよいし、小幅のスリットであってもよい。また、開口は、いわゆるピンホールであってもよいし、円形状や多角形状の小穴であってもよい。なお、連結部63は、図示したように、伸張テザー6に縫合によって接続されるように構成された別部品であってもよいし、同一の基布の延長部として構成された一体部品であってもよい。
【0047】
破断部62は、例えば、中央部に左右均等に破断を生じる一次破断部と、一次破断部の両側に形成され左右交互に破断を生じる二次破断部と、を有している。一次破断部は、伸張テザー6が破断部62で破断するきっかけ(起点)を与える部分である。二次破断部は、左右のスリット幅及びスリット間隔を調整することにより、伸張テザー6に張力が生じた場合に左右交互に破断できるように構成される。このように破断部62をエアバッグ1の膨張展開に伴って破断させることにより、
図4(C)に示したように、伸張テザー6に開口部64を形成させながら、その長さを徐々に長くすることができる。
【0048】
図4(A)に示したように、エアバッグ1の膨張展開に伴って、伸張テザー6が弛緩状態から緊張状態に移行する第一段階において、開閉手段5の弁体51は、
図3(A)に示したように折り返されており、ベントホール4(ベント領域4a〜4d)が開状態になっている。エアバッグ1の膨張展開の初期段階において、伸張テザー6は弛緩状態になっており、ストラップ52の突起部52bがエアバッグ1の外部に配置されていることから、エアバッグ1の膨張展開に伴って、伸張テザー6から突起部52bまでの部分が直線上に並んで緊張状態に移行した場合であっても、突起部52bをエアバッグ1の内部に引き込む張力が生じるまでは、ストラップ52の一部は弛緩した状態になっており、開閉手段5の弁体51は開状態に維持される。
【0049】
すなわち、ストラップ52は、エアバッグ1を構成する基布に形成されたスリット部42からエアバッグ1の内部に挿通されているとともに、幅方向に拡幅された突起部52bを有し、突起部52bは、伸張テザー6の第一段階ではスリット部42の外側に位置するように構成することによって、エアバッグ1の膨張展開の初期段階におけるベントホール4の開状態を容易に形成することができる。
【0050】
図4(B)に示したように、さらにエアバッグ1が膨張展開し、伸張テザー6及び開閉手段5のストラップ52に一定の張力が生じると、突起部52bがエアバッグ1の内部に引き込まれ、連れてストラップ52もエアバッグ1の内部に引き込まれる。その結果、開閉手段5の弁体51がベントホール4(ベント領域4a〜4d)を閉塞するように移動し、ベントホール4(ベント領域4a〜4d)が閉状態に移行する。ベントホール4を閉状態に移行するタイミングは、伸張テザー6の長さ(La+Lb+Lc)、開閉手段5のストラップ52の長さLd及び突起部52bをエアバッグ1内に引き込む張力(突起部52bの抵抗力)の大きさによって調整することができる。なお、
図4(B)に示した状態は、エアバッグ1の膨張展開に伴って、伸張テザー6が緊張状態を維持しながら所定長さまで伸張する第二段階の初期状態に相当する。
【0051】
図4(C)に示したように、さらにエアバッグ1が膨張展開し、伸張テザー6に一定の張力が生じると、破断部62の一次破断部が破断して開口部64を形成し、その分だけ伸張テザー6の長さが伸張される。この
図4(C)に示した状態は、エアバッグ1の膨張展開に伴って、伸張テザー6が緊張状態を維持しながら所定長さまで伸張する第二段階の中間状態に相当する。
【0052】
図4(D)に示したように、さらにエアバッグ1が膨張展開し、伸張テザー6に一定の張力が生じると、破断部62の二次破断部が破断して伸張テザー6の長さが伸張され、全ての破断部62が破断すると、伸張テザー6は最大長さLmaxとなる。この
図4(D)に示した状態は、エアバッグ1の膨張展開に伴って、伸張テザー6が緊張状態を維持しながら所定長さまで伸張する第二段階の終期状態に相当する。
図4(B)〜
図4(D)に示したように、伸張テザー6の第二段階では、開閉手段5によってベントホール4が閉塞され、伸張テザー6に一定の張力が生じていることから、ベントホール4は閉状態に保持される。
【0053】
ここで、
図5は、ベントホールが閉状態から開状態に移行する状態を示す概念図であり、(A)は伸張テザーの第二段階の終期状態、(B)は伸張テザーの第三段階、(C)は伸張テザーの第二段階の中間状態、(D)は伸張テザーの第三段階、を示している。なお、
図5(A)は
図4(D)に示した状態、
図5(C)は
図4(C)に示した状態と同じ状態を図示している。
【0054】
図5(A)に示した伸張テザーの第二段階の終期状態は、エアバッグ1の膨張展開が完了した状態を意味している。この状態で、エアバッグ1に乗員が接触すると、エアバッグ1の変形に伴って開閉手段5の弁体51にエアバッグ1のガス圧が負荷される。このとき、伸張テザー6は弛緩状態に移行していることから、弁体51はガス圧によって外側に捲れることとなり、ベントホール4(ベント領域4a〜4d)が開放され、エアバッグ1内のガスが外部に放出される。すなわち、ベントホール4は開状態に移行することとなる。このように、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩する第三段階では、開閉手段5はベントホール4を開状態に移行させるように作用する。
【0055】
次に、
図5(C)に示した伸張テザーの第二段階の中間状態において、エアバッグ1に乗員が接触した場合について説明する。この段階では、エアバッグ1は膨張展開が完了していないものの、ベントホール4が閉状態に保持されていることから一定の内圧を保持している。そして、エアバッグ1に乗員が接触すると、エアバッグ1の変形に伴って開閉手段5の弁体51にエアバッグ1のガス圧が負荷される。このとき、伸張テザー6は弛緩状態に移行していることから、弁体51はガス圧によって外側に捲れることとなり、ベントホール4(ベント領域4a〜4d)が開放され、エアバッグ1内のガスが外部に放出される。すなわち、ベントホール4は開状態に移行することとなる。このように、伸張テザー6の第二段階の中間状態においても、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩する第三段階に移行する場合があり、この場合においても、開閉手段5はベントホール4を開状態に移行させるように作用する。
【0056】
ここで、
図6は、ベントホールの開度及び内圧の時間変化を示す図であり、(A)はベントホールの開度の時間変化、(B)はベントホールの内圧の時間変化、を示している。なお、
図6(A)において、横軸は時間(msec)、縦軸はベントホール4の開度(%)を示しており、
図6(B)において、横軸は時間(msec)、縦軸はエアバッグ1の内圧(kPa)を示している。
【0057】
図6(A)において、実線で示した折れ線Kaは、基本的なエアバッグ1のベントホール4の開度の時間変化を示している。
図6(A)では、エアバッグ1が膨張展開を開始したときを基準(0msec)としている。当初、ベントホール4は開閉手段5により開状態に設定されている。そして、時間t1に到達すると、ストラップ52の突起部52bがエアバッグ1の内部に引き込まれ、開閉手段5がベントホール4を閉状態に移行させる。時間t2に到達すると、伸張テザー6は緊張状態となり、開閉手段5はベントホール4を完全に閉塞する。この状態でエアバッグ1は膨張展開を継続し、時間t3に到達するとエアバッグ1は完全に膨張展開された状態となる。その後、時間t4に乗員がエアバッグ1に接触すると伸張テザー6が弛緩し、開閉手段5はベントホール4を開状態に移行させる。本図によれば、時間t2までの時間は、伸張テザー6が弛緩状態から緊張状態に移行する第一段階に相当し、時間t2〜時間t4までの時間は、伸張テザー6が緊張状態を維持しながら所定長さまで伸張する第二段階に相当し、時間t4以後の時間は、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩する第三段階に相当する。
【0058】
図6(A)において、点線で示した折れ線Kbは、ベントホール4の開度を調整した場合を図示している。ベントホール4の開度は、
図4(B)に示した開閉手段5のストラップ52の長さLdによって調整することができる。すなわち、ストラップ52の長さLdを長くすることによって、弁体51が捲れる量を多くすることができ、ストラップ52の長さLdを短くすることによって、弁体51が捲れる量を少なくすることができる。このように、ストラップ52の長さLdを調整することによって、例えば、Δkの範囲でベントホール4の開度を調整することができる。
【0059】
図6(A)において、一点鎖線で示した折れ線Kcは、ベントホール4を閉状態に移行させるタイミングを調整した場合を図示している。ベントホール4を閉状態に移行させるタイミングは、
図4(B)に示した伸張テザー6の長さ(Lb+Lc)及びストラップ52の長さLd並びに突起部52bの抵抗力によって調整することができる。すなわち、この長さLb〜Ldの総和を長くしたり、突起部52bの抵抗力を大きくしたりすることによって、ベントホール4を閉状態に移行させるタイミングを遅くすることができ、長さLb〜Ldの総和を短くしたり、突起部52bの抵抗力を小さくしたりすることによって、ベントホール4を閉状態に移行させるタイミングを早くすることができる。このように、長さLb〜Ldの総和や突起部52bの抵抗力を調整することによって、例えば、Δtの範囲でベントホール4を閉状態に移行させるタイミングを調整することができる。
【0060】
図6(A)において、二点鎖線で示した折れ線Kdは、時間t3よりも早い時間、すなわち、エアバッグ1が膨張展開を完了する前に、乗員がエアバッグ1に接触した場合を図示している。この場合も実線で示した折れ線Kaと同様の挙動によってベントホール4が開状態に移行することが理解できる。すなわち、エアバッグ1の膨張展開完了前に乗員が接触した場合であっても、エアバッグ1の膨張展開完了後に乗員が接触した場合と同様に、乗員の衝撃を緩和することができる。
【0061】
図6(B)において、実線で示した曲線Paは、基本的なエアバッグ1の内圧の時間変化を示している。
図6(B)では、エアバッグ1が膨張展開を開始したときを基準(0msec)としている。当初、ベントホール4は開閉手段5により開状態に設定されているものの、エアバッグ1の膨張展開の初期段階ではエアバッグ1の容量が小さいこと及びインフレータ2から供給されるガス量が多いことから、急激にエアバッグ1の内圧が上昇する。その後、エアバッグ1が一定の大きさまで膨張すると、ベントホール4が開状態に保持されていることも相俟って徐々に内圧は低下する。時間t2に到達すると、伸張テザー6は緊張状態となり、開閉手段5はベントホール4を完全に閉塞することから、エアバッグ1の内圧は徐々に上昇することとなる。時間t3に到達すると、エアバッグ1は完全に膨張展開された状態となり、その後、時間t4に乗員がエアバッグ1に接触すると、伸張テザー6が弛緩し、開閉手段5はベントホール4を開状態に移行させる。したがって、ベントホール4からエアバッグ1内のガスが外部に放出され、エアバッグ1の内圧が低下することとなる。
【0062】
図6(B)において、点線で示した曲線Pbは、ベントホール4の開度を調整した場合を図示している。ベントホール4の開度を大きくした場合、ベントホール4から放出されるガス量が増加することから、エアバッグ1の内圧を早く低下させることができる。また、ベントホール4の開度を小さくした場合、ベントホール4から放出されるガス量が減少することから、エアバッグ1の内圧が低下する時間を遅くすることができる。
【0063】
図6(B)において、一点鎖線で示した曲線Pcは、ベントホール4を閉状態に移行させるタイミングを調整した場合を図示している。ベントホール4を閉状態に移行させるタイミングを遅くした場合、エアバッグ1の内圧が低下した後、再上昇するまでの時間を遅くすることができる。ベントホール4を閉状態に移行させるタイミングを早くした場合、エアバッグ1の内圧が低下した後、再上昇するまでの時間を早くすることができる。
【0064】
図6(B)において、二点鎖線で示した曲線Pdは、時間t3よりも早い時間、すなわち、エアバッグ1が膨張展開を完了する前に、乗員がエアバッグ1に接触した場合を図示している。この場合も実線で示した曲線Paと同様の挙動によってベントホール4が開状態に移行することとなる。したがって、エアバッグ1の膨張展開完了前に乗員が接触した場合であっても、エアバッグ1の膨張展開完了後に乗員が接触した場合と同様に、エアバッグ1の内圧を低下させて乗員の衝撃を緩和することができる。
【0065】
上述したエアバッグ装置によれば、通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時にガスが供給されて膨張展開するとともに内部のガスを外部に放出可能なベントホール4を有するエアバッグ1において、ベントホール4を開閉可能な開閉手段5と、開閉手段5及びエアバッグ1の膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材(例えば、エアバッグ1の内面)に接続されるとともに段階的に伸張可能な伸張テザー6と、を有し、エアバッグ1の膨張展開に伴って、伸張テザー6が弛緩状態から緊張状態に移行する第一段階と、伸張テザー6が緊張状態を維持しながら所定長さまで伸張する第二段階と、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩する第三段階と、を区別し、第一段階では開閉手段5によってベントホール4を開状態に保持し、第二段階では開閉手段5によってベントホール4を閉状態に保持し、第三段階では開閉手段5によってベントホール4を開状態に移行させるように、ベントホール4の開閉を制御することができる。
【0066】
上述した本実施形態に係るエアバッグ1、エアバッグ装置及びベントホール開閉制御方法によれば、エアバッグ1の膨張展開に伴って第一段階〜第三段階に変化する伸張テザー6を使用して開閉手段5を操作し、ベントホール4の開閉を制御したことにより、ベントホール4を所定のタイミングで開状態→閉状態→開状態と変化させることができる。したがって、乗員がエアバッグ1に近接した状態に存在している場合等のように、エアバッグ1の膨張展開の初期段階において乗員と接触した場合にはベントホール4からガスを放出して乗員の衝撃を緩和することができ、エアバッグ1の膨張展開の中間段階〜終期段階においてベントホール4を閉状態に保持することができ、エアバッグ1の膨張展開の中間段階〜終期段階において乗員と接触した場合にはベントホール4からガスを放出して乗員の衝撃を緩和することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、常開型のベントホールを形成する必要がないか、必要最小限の大きさに縮小することができ、エアバッグ1の膨張展開時における無駄なガスの放出を抑制することができ、インフレータ2を小型化することができ、エアバッグ装置の軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0068】
続いて、開閉手段5の変形例について説明する。ここで、
図7は、開閉手段の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。
図8は、開閉手段の変形例を示す図であり、(A)は第四変形例、(B)は第五変形例、を示している。開閉手段5は、
図2及び
図3に示した構成に限定されるものではなく、以下に説明するように、種々の構成を採用することができる。
【0069】
図7(A)に示した開閉手段5の第一変形例は、開閉手段5が、エアバッグ1の表面に一端が接続された弁体51と、弁体51の他端に接続されるストラップ52と、を有している。弁体51は、エアバッグ1に形成されたベントホール4を閉塞可能な大きさに形成されている。ストラップ52は、エアバッグ1に形成されたスリット部42からエアバッグ1の内部に引き込まれて伸張テザー6に接続されており、中間に突起部52bが形成されている。
【0070】
図7(A)に示したように、開閉手段5は、左から順に、開状態→閉状態→開状態と変遷する。第一段階における開状態では、弁体51はベントホール4が露出するように捲れた状態に折り畳まれており、ストラップ52の突起部52bがスリット部42からエアバッグ1の外部に引き出されている。ストラップ52に一定の張力が生じると、突起部52bがエアバッグ1の内部に引き込まれ、弁体51はベントホール4を閉塞するように移動し、ベントホール4は閉状態に移行する。その後、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩するとストラップ52がエアバッグ1の外部に引き出され、ベントホール4と弁体51との間に隙間が生じ、ベントホール4はガスを放出可能な開状態に移行する。
【0071】
図7(B)に示した開閉手段5の第二変形例は、開閉手段5が、エアバッグ1の表面にスライド可能に配置された弁体51と、弁体51と一体に形成されたストラップ52と、を有している。弁体51は、エアバッグ1の表面に縫合されたバンド部53の隙間に挿通されており、先端にバンド部53に係止可能なストッパ部51cが形成されている。また、バンド部53にはベントホール4を露出可能な開口部53aが形成されており、弁体51にはベントホール4及び開口部53aと連通可能な長孔51dが形成されている。また、ストラップ52は、エアバッグ1に形成されたスリット部42からエアバッグ1の内部に引き込まれて伸張テザー6に接続されており、中間に突起部52bが形成されている。
【0072】
図7(B)に示したように、開閉手段5は、左から順に、開状態→閉状態→開状態と変遷する。第一段階における開状態では、弁体51は長孔51dがベントホール4及び開口部53aと連通する状態に配置されており、ストラップ52の突起部52bがスリット部42からエアバッグ1の外部に引き出されている。ストラップ52に一定の張力が生じると、突起部52bがエアバッグ1の内部に引き込まれ、弁体51は長孔51dがベントホール4及び開口部53aからずれるように移動し、ストッパ部51cがバンド部53に係止するとベントホール4を完全に閉塞し、ベントホール4は閉状態に移行する。その後、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩するとストラップ52がエアバッグ1の外部に引き出され、弁体51は長孔51dがベントホール4及び開口部53aと連通するように移動し、ベントホール4はガスを放出可能な開状態に移行する。
【0073】
図7(C)に示した開閉手段5の第三変形例は、開閉手段5が、ベントホール4の内側の外縁部に形成された環状の挿通部54と、挿通部54内に一端が縫合されたストラップ52と、を有している。ストラップ52は、挿通部54に形成されたスリット部54aからエアバッグ1の内部に引き出されており、中間に突起部52bが形成されている。
【0074】
図7(C)に示したように、開閉手段5は、左右の開状態と閉状態との間を行き来するように変遷する。第一段階における開状態では、ベントホール4が開口した状態となるように、ストラップ52の突起部52bが挿通部54内に配置されている。ストラップ52に一定の張力が生じると、突起部52bが挿通部54から引き出され、ストラップ52の縫合部はスリット部54aに引き寄せられる。その結果、ベントホール4を構成していた基布が中央部に寄せ集められ、ベントホール4は閉状態に移行する。その後、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩するとストラップ52が挿通部54の内部に引き戻され、ベントホール4はガスを放出可能な開状態に移行する。
【0075】
図8(A)に示した開閉手段5の第四変形例は、開閉手段5が、エアバッグ1の表面に両端が接続された弁体51と、弁体51の中間部に接続されたストラップ52と、を有している。なお、
図8(A)において、上段は平面図、下段はX−X断面図を図示している。弁体51は、両端の縫合部の間隔よりも長く形成されており、弁体51にエアバッグ1の内側から圧力が負荷されると弁体51はベントホール4から浮き上がり隙間からガスを放出できるように構成されている。ストラップ52は、エアバッグ1に形成されたスリット部42からエアバッグ1の内部に引き込まれて伸張テザー6に接続されており、中間に突起部52bが形成されている。
【0076】
図8(A)に示したように、開閉手段5は、左から順に、開状態→閉状態→開状態と変遷する。第一段階における開状態では、弁体51はベントホール4の脇に折り畳まれており、ストラップ52の突起部52bがスリット部42からエアバッグ1の外部に引き出されている。したがって、弁体51にエアバッグ1の内側から圧力が負荷されると弁体51はベントホール4から容易に浮き上がり隙間からガスを放出することができる。そして、ストラップ52に一定の張力が生じると、突起部52bがエアバッグ1の内部に引き込まれ、弁体51はベントホール4を閉塞するように移動し、スリット部42側に折り畳まれて収容された状態になり、ベントホール4は閉状態に移行する。このとき、弁体51はストラップ52により引っ張られていることから、ベントホール4上に密着した状態になっており、エアバッグ1の内側から圧力が負荷された場合であっても、弁体51がベントホール4から浮き上がり難くなっている。その後、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩するとストラップ52がエアバッグ1の外部に引き出され、ベントホール4と弁体51との間に隙間が生じ、ベントホール4はガスを放出可能な開状態に移行する。
【0077】
図8(B)に示した開閉手段5の第五変形例は、開閉手段5が、エアバッグ1の表面に一端が接続された弁体51と、弁体51の他端に接続される一対のストラップ52と、を有している。弁体51は、エアバッグ1に形成されたベントホール4を閉塞可能な大きさに形成されている。ストラップ52は、エアバッグ1に形成されたスリット部42からエアバッグ1の内部に引き込まれて伸張テザー6に接続されており、中間に突起部52bが形成されている。
【0078】
図8(B)に示したように、開閉手段5は、左から順に、開状態→閉状態→開状態と変遷する。第一段階における開状態では、弁体51はベントホール4が露出するようにベントホール4の脇に折り畳まれており、その状態でエアバッグ1に縫合部55で破断可能に縫合されている。すなわち、弁体51は、エアバッグ1の折り畳み時にベントホール4を閉塞しないように折り畳まれた状態でエアバッグ1に破断可能に縫合されており、ストラップ52は、スリット部42からエアバッグ1の外部に引き出されている。ストラップ52に一定の張力が生じると、弁体51の縫合部55が破断し、ストラップ52がエアバッグ1の内部に引き込まれ、弁体51はベントホール4を閉塞するように移動し、ベントホール4は閉状態に移行する。その後、エアバッグ1に乗員が接触して伸張テザー6が弛緩するとストラップ52がエアバッグ1の外部に引き出され、ベントホール4と弁体51との間に隙間が生じ、ベントホール4はガスを放出可能な開状態に移行する。
【0079】
次に、伸張テザー6の変形例について説明する。ここで、
図9は、伸張テザーの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、(D)は第四変形例、(E)は第五変形例、(F)は第六変形例、を示している。伸張テザー6は、
図4及び
図5に示した構成に限定されるものではなく、以下に説明するように、種々の構成を採用することができる。
【0080】
図9(A)に示した伸張テザー6の第一変形例は、伸張テザー6の中心部に沿って破断部65を形成したものである。かかる構成により、伸張テザー6は、縦方向に切り裂き可能に構成されており、矢印方向に伸張テザー6を伸張させることができる。
【0081】
図9(B)に示した伸張テザー6の第二変形例は、伸張テザー6の折り畳み部に縫合部66を形成したものである。かかる構成により、縫合部66の縫合糸を破断させることによって、矢印方向に伸張テザー6を伸張させることができる。
【0082】
図9(C)に示した伸張テザー6の第三変形例は、ベースとなる第一テザー6aの表面に、徐々に長さが長くなるように形成された、第二テザー6b、第三テザー6c、第四テザー6d及び第五テザー6eが撓んだ状態で縫合されており、第一テザー6a〜第四テザー6dは中間部で破断可能に構成されている。したがって、各テザーに一定の張力を生じさせることにより、第一テザー6a〜第四テザー6dを順に破断させることができ、矢印方向に伸張テザー6を伸張させることができる。
【0083】
図9(D)に示した伸張テザー6の第四変形例は、伸張テザー6を構成する基布(織物)の網目を伸張方向(図の矢印方向)と交差するように形成することによって、基布そのものを伸縮し易くして、矢印方向に伸張テザー6を伸張させるようにしたものである。
【0084】
図9(E)に示した伸張テザー6の第五変形例は、伸張テザー6を山谷織りした折り畳み部にピン67を差し込んだものである。かかる構成により、伸張テザー6に一定の張力を生じさせることにより、ピン67の差し込み部から伸張テザー6を破断させて、矢印方向に伸張テザー6を伸張させることができる。なお、この構成では、ピン67はリテーナ3等のエアバッグ1の膨張展開時に移動しない部分に固定される。
【0085】
図9(F)に示した伸張テザー6の第六変形例は、伸張テザー6を摩擦力によって保持するようにしたものである。例えば、リテーナ3の表面に摩擦板68が固定されており、伸張テザー6の端部がリテーナ3と摩擦板68とにより挟持されている。したがって、摩擦板68の摩擦力よりも大きな張力が伸張テザー6に生じた場合には、伸張テザー6は矢印方向に引き出されることとなる。
【0086】
上述した伸張テザー6の構成は、エアバッグ1の膨張展開時における突出幅(厚さ)を規制する幅規制テザー7にも適用することができる。かかる伸張可能なテザーを幅規制テザー7に適用することにより、エアバッグ1を容易に段階的に膨張展開させることができ、エアバッグ1の膨張展開の初期段階における突出やその後のエアバッグ1の前後方向の振動等を抑制することができる。
【0087】
最後に、エアバッグ装置の変形例について説明する。ここで、
図10は、エアバッグ装置の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、(D)は第四変形例、を示している。なお、上述した実施形態に係るエアバッグ装置と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0088】
図10(A)に示したエアバッグ装置の第一変形例は、ベントホール4をステアリングホイール11の外側に配置したものである。ベントホール4には、上述した開閉手段5が配置されており、上述した実施形態と同様の作用により、ベントホール4を開閉することができる。なお、図示しないが、ベントホール4は、ステアリングホイール11の内側及び外側の両方に配置するようにしてもよい。
【0089】
図10(B)に示したエアバッグ装置の第二変形例は、ステアリングホイール11の内側に複数のベントホール4を配置したものである。ベントホール4を複数配置することにより、ガスの放出量を容易に増大させることができ、エアバッグ1の容量等に応じた設計を容易に行うことができる。
【0090】
図10(C)に示したエアバッグ装置の第三変形例は、伸張テザー6をエアバッグ1の幅規制テザー7の中間部に接続したものである。かかる幅規制テザー7は、エアバッグ1の膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に相当する。なお、幅規制テザー7を段階的に伸張可能な伸張テザーとし、伸張テザー6を通常のテザーに変更するようにしてもよい。
【0091】
図10(D)に示したエアバッグ装置の第四変形例は、エアバッグ1の内面に形成された筒部6fと、筒部6fの表面に接続された段階的に伸張可能な幅規制テザー7(伸張テザー)と、一端がリテーナ3に接続され他端が筒部6fに挿通されるとともにリテーナ3に接続されたループテザー6gと、開閉手段5及びループテザー6gに接続された連結テザー6hと、を有している。かかる変形例では、筒部6f、幅規制テザー7、ループテザー6g及び連結テザー6hにより、伸張テザー6が構成されているものといえる。
【0092】
本発明は上述した実施形態に限定されず、エアバッグ装置は、助手席用エアバッグ装置の他、サイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等であってもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。