特許第5883344号(P5883344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883344
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/02 20060101AFI20160301BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20160301BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20160301BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20160301BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   C09J201/02
   C09J167/00
   C09J11/08
   C09J109/00
   C09J123/26
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-101884(P2012-101884)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-227458(P2013-227458A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】竹中 真
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0330315(US,A1)
【文献】 特開平5−271638(JP,A)
【文献】 特表平7−502069(JP,A)
【文献】 特表平9−505615(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129080(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/104372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)極性官能基で変性された重合体、
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂、
(C)粘着付与樹脂、および
(D)熱可塑性エラストマーを含むホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A)極性官能基で変性された重合体が、極性官能基で変性された共役ジエン系重合体および極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記極性官能基が、酸無水物基、マレイン酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基である、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、およびポリヒドロキシブチレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
更に(E)可塑剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤を含む、使い捨て製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくは紙おむつ、ナプキンに代表される使い捨て製品分野に使用されるホットメルト接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おむつやナプキン等の使い捨て製品に用いられるホットメルト接着剤は、その基材、例えば、不織布、ティッシュ及びポリエチレンフィルム等に塗布され、高温のみならず常温でも、十分な接着性、粘着性を有することが要求される。
【0003】
近年、環境問題に対する意識の高まりから従来の石油由来の原料から天然素材、植物素材、生分解性素材への置き換えが進んでいる。そして、炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といった環境問題の観点から、石油を原料としないポリ乳酸系樹脂などの非石油系の樹脂を用いたホットメルト接着剤の製造が試みられている。
【0004】
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂を含むホットメルト接着剤は、ポリ乳酸系樹脂と、粘着付与樹脂等の他の成分との相溶性が不十分であるため、ポリ乳酸系樹脂を用いないホットメルト接着剤と比べて、粘着性、接着性および熱安定性等が劣る傾向にあった。
【0005】
特許文献1には、ポリ乳酸系樹脂と、ポリブチレンサクシネートまたはポリエチレンサクシネートとを含むホットメルト接着剤、特許文献2には、ポリ乳酸とポリビニルアルコール系樹脂とを含むホットメルト接着剤、特許文献3には、ポリ乳酸と天然の粉体物質とを含む生分解性接着剤がそれぞれ開示されているが、これら接着剤は、常温での粘着力は不十分であり、また、ポリオレフィン等の基材に対しても十分な接着力を有しない。また、特許文献4には、熱可塑性樹脂と粘着付与剤を主成分とし、そのいずれか一方または両方が、ポリ乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸から誘導された乳酸共重合樹脂を含む組成物であるホットメルト接着剤組成物が開示されている。このホットメルト接着剤組成物については、粘着付与剤と他成分との相溶性が悪いので、ポリオレフィン等の基材に対して十分な接着力を有しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−155951号公報
【特許文献2】特開2004−256642号公報
【特許文献3】特開2002−256250号公報
【特許文献4】特開平5−339557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決し、環境調和性が高く、かつ、十分な粘着性、接着性および熱安定性等を有するホットメルト接着剤、特には使い捨て製品分野に使用されるホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の事項に関する。
【0009】
1. (A)極性官能基で変性された重合体、
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂、
(C)粘着付与樹脂、および
(D)熱可塑性エラストマーを含むホットメルト接着剤。
【0010】
2. (A)極性官能基で変性された重合体が、極性官能基で変性された共役ジエン系重合体および極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体から選ばれる少なくとも1種を含む、上記1に記載のホットメルト接着剤。
【0011】
3. 前記極性官能基が、酸無水物基、マレイン酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基である、上記1または2に記載のホットメルト接着剤。
【0012】
4. (B)脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、およびポリヒドロキシブチレートから選ばれる少なくとも1種である、上記1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0013】
5. 更に(E)可塑剤を含む、上記1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0014】
6. 上記1〜5のいずれかに記載のホットメルト接着剤を含む、使い捨て製品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ホットメルト接着剤に、極性官能基で変性された重合体を配合することにより、ポリ乳酸系樹脂等の脂肪族ポリエステル系樹脂と、他の成分との相溶性が改善される。これにより、環境に優しく、かつ、粘着性、接着性および熱安定性等が向上し、幅広い種類の基材に塗布しやすいホットメルト接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のホットメルト接着剤は、少なくとも、(A)極性官能基で変性された重合体、(B)脂肪族ポリエステル系樹脂、(C)粘着付与樹脂、および、(D)熱可塑性エラストマーを含む。以下、それぞれ、「A成分」、「B成分」、「C成分」、および「D成分」と記載することもある。なお、本明細書において、「変性された重合体」とは、(i)重合体を得てから官能基が付与されたもの、(ii)重合の過程で官能基が導入されたもの、の双方を含むことを意味する。
【0017】
<(A)極性官能基で変性された重合体>
本発明のホットメルト接着剤は、(A)極性官能基で変性された重合体(A成分)を含有することにより、(B)脂肪族ポリエステル系樹脂と、(C)粘着付与樹脂等の他の成分との相溶性が高まり、粘着性、接着性および熱安定性等が向上する。
【0018】
本発明に用いる(A)極性官能基で変性された重合体とは、少なくとも1つの極性官能基を有する重合体のことをいう。極性官能基が導入されている位置は特に限定されず、重合体の末端であってもよいし、重合体の末端以外の内部であってもよい。極性官能基は、得られた重合体に付与されても良いし、モノマーを重合する過程で導入されても良い。
【0019】
「極性官能基」としては、無水マレイン酸基等の酸無水物基、カルボキシル基、マレイン酸基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基等が挙げられ、これらのうち無水マレイン酸基、マレイン酸基、アミノ基、エポキシ基が好ましい。
【0020】
(A)極性官能基で変性された重合体としては、特に限定はされないが、極性官能基で変性された共役ジエン系重合体および極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、これらのうち、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下、これらについて詳説する。
【0021】
(A−1)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体
「共役ジエン系重合体」とは、共役ジエン化合物に基づく構成単位(共役ジエン単位)を有する重合体のことをいう。
【0022】
ここで、「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンを例示することができる。1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明において、共役ジエン系重合体は、共役ジエン単位に加え、他の単量体に基づく構成単位を有していてもよい。他の単量体としては、ビニル系芳香族炭化水素、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルがあげられる。
【0024】
本発明において、「共役ジエン系重合体」は、本発明の目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されないが、例えば、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とがブロック共重合した共重合体、すなわち、ビニル系芳香族炭化水素ブロックと共役ジエン化合物ブロックを有して成るものが好ましい。
【0025】
「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。特にスチレンが好ましい。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明において、A成分として含まれる極性官能基で変性された共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン系重合体は、非水素添加型の共役ジエン系重合体であっても、水素添加型の共役ジエン系重合体であってもよいが、水素添加型の共役ジエン系重合体がより好ましい。
【0027】
「非水素添加型の共役ジエン系重合体」として、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(「SBS」ともいう)を例示できる。「水素添加型の共役ジエン系重合体」として、例えば水素添加されたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体「SEPS」ともいう)及び水素添加されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体「SEBS」ともいう)を例示できる。これらのうち、A成分として含まれる極性官能基で変性された共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン系重合体は、SEBSが好ましく、スチレン含有量が10〜40重量%のSEBSがより好ましい。
【0028】
「極性官能基で変性された共役ジエン系重合体」の「極性官能基」としては、無水マレイン酸基等の酸無水物基、カルボキシル基、マレイン酸基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基等が挙げられ、これらのうちマレイン酸基、アミノ基がより好ましい。
【0029】
極性官能基で変性された共役ジエン系重合体の製造方法としては、共役ジエン系重合体をまず合成し、後から極性官能基を導入することにより製造してもよいし、極性官能基を含有する単量体を用いて共重合反応を行うことにより製造してもよい。
【0030】
「極性官能基で変性された共役ジエン系重合体」としては、例えば、アミノ基で変性されたSEBS、マレイン酸基で変性されたSEBS等を挙げることができる。極性官能基で変性された共役ジエン系共重合体において、アミノ基やマレイン酸基等の極性基の導入位置は、特に限定されないが、例えば、共役ジエン系共重合体の少なくとも片末端に導入されていることが好ましい。
【0031】
極性官能基で変性された共役ジエン系共重合体として、市販品を用いることができ、例えば、旭化成ケミカルズ製のタフテックMP10、JSR製のダイナロン8630P、旭化成ケミカルズ製のタフテックM1913が挙げられる。
【0032】
(A−2)極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体
本発明において、「ポリオレフィン系重合体」とは、オレフィンに基づく構成単位を有する重合体を意味し、オレフィン単独重合体でもよく、オレフィンと共重合可能な化合物を共重合した共重合体でもよい。本発明において、ポリオレフィン系共重合体は、オレフィンを50重量%以上、好ましくは60重量%以上有し、オレフィンと共重合可能な化合物を50重量%未満、好ましくは40重量%未満有するオレフィン系共重合体が好ましい。なお、本明細書において、「極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体」には、上記「極性官能基で変性された共役ジエン系重合体」に該当する化合物は含まれないものとする。
【0033】
オレフィンとしては、エチレンまたは炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましい。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、はプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上併用してもよいが、オレフィンとしてエチレンを含むことが好ましい。
【0034】
本発明において、ポリオレフィン系重合体は、オレフィンと共重合可能な化合物に基づく構成単位を本発明の目的を損なわない程度に含有してもよい。オレフィンと共重合可能な化合物としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体およびカルボン酸ビニルエステルなどを挙げることができ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを含む不飽和カルボン酸またはその誘導体、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−ブテニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルおよびシクロヘキサンカルボン酸ビニルなどの単官能脂肪族カルボン酸ビニル、安息香酸ビニルおよび桂皮酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルおよびソルビン酸ビニルなどの多官能カルボン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステルなどを挙げることができ、これらのうちアクリル酸メチルが好ましい。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
「極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体」の「極性官能基」としては、無水マレイン酸基等の酸無水物基、カルボキシル基、マレイン酸基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基等が挙げられ、これらのうち無水マレイン酸基、エポキシ基がより好ましい。
【0036】
極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体の製造方法としては、ポリオレフィン系重合体を合成し、後から極性官能基を導入することにより製造してもよいし、極性官能基を含有する単量体を用いて共重合反応を行うことにより製造してもよい。極性官能基を含有する単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジルが好ましい。
【0037】
「極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体」としては、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸グリシジル−スチレン共重合体および無水マレイン酸変性ポリエチレン共重合体等を挙げることができる。極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体において、エポキシ基や無水マレイン酸基等の極性官能基の導入位置は特に限定はされず、重合体の末端に導入されていてもよいし、重合体の末端以外の内部の構成単位に導入されていてもよい。
【0038】
極性官能基で変性されたポリオレフィン系樹脂として、市販品を用いることができる。例えば、住友化学社製のボンドファースト7M、日本油脂社製のモディパーA4100、デュポン社製のフサボンド N525等が挙げられる。
【0039】
本発明において、A成分は、重量平均分子量(Mw)1.0×10〜3.0×10を含んでいることが好ましく、特に5.0×10〜2.0×10の極性官能基で変性された重合体を含んでいることが好ましい。
【0040】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量を換算して求められる。
【0041】
本発明のホットメルト接着剤は、A成分、B成分、C成分およびD成分に加えて、(E)可塑剤(以下、「E成分」と記載することもある。)を含むことが好ましい。A成分の配合比率は、A〜E成分の合計量を100重量部として、1〜30重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましい。
【0042】
<(B)脂肪族ポリエステル系樹脂>
本発明のホットメルト接着剤は、(B)脂肪族ポリエステル系樹脂(B成分)を含むことにより、石油を原料とする材料等の含有量を減らすことができ、環境面への問題を小さくできる。
【0043】
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・カーボネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシ吉草酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシ酪酸が好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記ポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などから生成する単位が挙げられる。このような乳酸以外の他の共重合単位は、全単量体単位を100モル%としたときに、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
【0045】
B成分の配合比率は、A〜E成分の合計量を100重量部として、5〜70重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることがより好ましく、10〜40重量部であることがさらに好ましい。
【0046】
<(C)粘着付与樹脂>
本発明のホットメルト接着剤は、(C)粘着付与樹脂(C成分)を含むことにより、粘着性を向上することができる。「粘着付与樹脂」は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
【0047】
粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらのうち、酸価が0〜200mgKOH/gの粘着付与樹脂がより好ましく、酸価が0mgKOH/gの粘着付与樹脂がさらに好ましい。酸価が該範囲内であると、本発明のホットメルト接着剤の粘着性が向上する。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0048】
粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として、例えば、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、安原化学社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、安原化学社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、エクソンモービル社製のECR5380(商品名)、ECR179EX(商品名)、ECR5400(商品名)、ECR5600(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)、エクソン社製のECR179X(商品名)、荒川化学社製のアルコンP100(商品名)、出光興産社製のI−marv S110(商品名)、I−marv Y135(商品名)、イーストタック社製のEasttack C100−R(商品名)、荒川化学社製のKR−85(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0049】
C成分の配合比率は、A〜E成分の合計量を100重量部として、5〜70重量部であることが好ましく、10〜60重量部であることがより好ましい。
【0050】
<(D)熱可塑性エラストマー>
本発明のホットメルト接着剤は、(D)熱可塑性エラストマー(D成分)を含むことにより、さらに接着性と粘着性が向上する。D成分としては、特に限定はされないが、熱可塑性ブロック共重合体であることが好ましい。熱可塑性ブロック共重合体は、非水素添加型であっても、水素添加型であってもよいが、非水素添加型が好ましい。なお、本明細書において、上記A成分に含まれる極性官能基を有する熱可塑性エラストマーについては、D成分から除かれる。
【0051】
「非水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」としては、例えば、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合した後、ブロック共重合体の共役ジエン化合物に基づくブロックが水素添加されていないブロック共重合体を例示できる。また、「水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」としては、例えば、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合した後、共役ジエン化合物に基づくブロックの全部、若しくは一部が水素添加されたブロック共重合体を例示できる。
【0052】
「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンを例示することができる。1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0053】
「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。特にスチレンが好ましい。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0054】
「非水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」として、具体的には、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(「SBS」ともいう)を例示できる。「水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」として、具体的には、例えば水素添加されたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体「SEPS」ともいう)及び水素添加されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体「SEBS」ともいう)を例示できる。
【0055】
本発明において、(D)熱可塑性エラストマーは、SBS及びSISの双方を含むか、SBS及びSISのいずれかを含むことが好ましい。本発明のホットメルト接着剤は、SBS及び/又はSISを含むことで、剥離強度が向上する。
【0056】
本発明では、(D)熱可塑性エラストマーは、重量平均分子量(Mw)7.5×10〜1.0×10のトリブロック共重合体を含んでなることが好ましい。Mwが上記範囲内にあることで、本発明のホットメルト接着剤は、塗工性に優れ、且つ、剥離強度にも優れる。
【0057】
本発明では(D)熱可塑性エラストマーとして、市販品を用いることができる。例えば、旭化成工業(株)製のタフプレンT125(商品名)、タフテックL518X(商品名)、タフテックH1053(商品名);JSR(株)製のTR2000(商品名);TSRC社製のタイポール4202(商品名);クレイトンポリマー社製のKraton
D1162PT(商品名)、G1650M(商品名);旭化成社製のAsaprene T−438(商品名);日本ゼオン社製のQuintac3460(商品名)、Quintac3433N(商品名)、Quintac3520(商品名)、Quintac3270(商品名);クレイトン社製のD1160(商品名)を例示できる。これらの市販品は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0058】
D成分の配合比率は、A〜E成分の合計量を100重量部として、1〜50重量部であることが好ましく、3〜40重量部であることがより好ましい。
【0059】
<(E)可塑剤>
本発明において、ホットメルト接着剤は、更に(E)可塑剤(E成分)を含んでもよい。(E)可塑剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、他の成分と相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0060】
可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを例示することができる。特にパラフィン系オイル及び/又はナフテン系オイルが好ましく、無色、無臭であるパラフィン系オイルが最も好ましい。
【0061】
可塑剤の市販品の一例として、例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS−32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)、ダフニ−オイルKP−68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エクソン社製のPrimol352(商品名)、出光興産社製のプロセスオイルNS−100(商品名)を例示することができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
E成分の配合比率は、特に限定はされないが、A〜E成分の合計量を100重量部として、0〜40重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがより好ましい。
【0063】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、安定化剤、ワックス、及び微粒子充填剤を例示することができる。
【0064】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0065】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的に使い捨て製品に使用されるものであって、後述する目的とする使い捨て製品を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0066】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。酸化防止剤の市販品として、以下の製品を使用することができる。
【0067】
具体的には、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャルティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、チヌビンP、城北化学社製のJF77(商品名)、エーピーアイコーポレーション製のトミノックスTT(商品名)、アデカ社製のAO−412S(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0068】
「ワックス」とは、ホットメルト接着剤に一般的に用いられるワックスであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)等の合成ワックス系;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;カスターワックスなどの天然ワックス;等を例示できる。
【0069】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0070】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、A成分、B成分、C成分およびD成分と、好ましくはE成分と、更に必要に応じて各種添加剤とを配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0071】
本発明のさらなる好ましい態様として、ホットメルト接着剤は、140℃での粘度(又は溶融粘度)が20000mPa・s以下であることが好ましく、9000mPa・s未満であることが特に好ましい。ホットメルト接着剤を均一に塗工できる粘度は、20000mPa・s以下であり、均一な塗工を容易に行える粘度は、9000mPa・s未満である。ホットメルト接着剤は、140℃での粘度が上記範囲にあることによって、よりいっそう塗工に適したものとなる。本明細書の140℃での粘度(又は溶融粘度)とは、27番ローターを用い、ブルックフィールド粘度計で測定された値を意味する。
【0072】
本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工、製本、使い捨て製品等、幅広く利用されるが、湿潤状態での接着に優れているので、使い捨て製品に特に有効に利用される。「使い捨て製品」とは、いわゆる衛生材料であれば、特に限定されるものではない。具体的には紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、手術用白衣、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、等を例示できる。
【0073】
本発明の別の要旨において、上述のホットメルト接着剤を塗布することで得られる使い捨て製品を提供する。使い捨て製品は、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類、ポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも一種の部材に本発明に係るホットメルト接着剤を塗布することで構成することができる。ポリオレフィンフィルムは、耐久性及びコスト等の理由からポリエチレンフィルムが好ましい。本発明のホットメルト接着剤を用いると、不織布どうし、または不織布とポリオレフィンフィルムとの接着力が良好となるため、特に紙おむつにおける使用が好適である。
【0074】
使い捨て製品の製造ラインでは、一般に使い捨て製品の各種部材(例えば、ティッシュ、コットン、不織布、ポリオレフィンフィルム、剥離紙、等)にホットメルト接着剤を塗布する。塗布の際、ホットメルト接着剤を、種々の噴出機から噴出して使用してよい。
【0075】
ホットメルト接着剤を塗布する方法は、目的とする使い捨て製品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗布方法は、接触塗布、非接触塗布に大別される。「接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗布方法をいい、「非接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗布方法をいう。接触塗布方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗布方法として、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗工、波状に塗布できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗布できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を更に詳細に、かつ、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0077】
ホットメルト接着剤に配合する成分を以下に示す。
【0078】
(A)極性官能基で変性された重合体
(A−1)極性官能基で変性された共役ジエン系共重合体
(A−1−1)アミノ基変性SEBS(旭化成ケミカルズ製の「タフテックMP10」)
(A−1−2)アミノ基変性SEBS(JSR製の「ダイナロン8630P」)
(A−1−3)マレイン酸基変性SEBS(旭化成ケミカルズ製の「タフテックM1913」)
(A−2)極性官能基で変性されたポリオレフィン系重合体
(A−2−1)エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合樹脂(住友化学社製の「ボンドファースト7M」(商品名))
(A−2−2)エチレン−メタクリル酸グリシジル−スチレン共重合体(日本油脂社製の「モディパーA4100」(商品名))
(A−2−3)無水マレイン酸変性ポリエチレン共重合体(デュポン社製の「フサボンド N525」(商品名))
【0079】
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂
(B−1)ポリ乳酸系樹脂
(B−1−1)ポリL乳酸樹脂(Nature works社製の「4032」(商品名))
(B−1−2)ポリLD乳酸樹脂(Nature works社製の「4060D」(商品名))
(B−2)ポリブチレンサクシネート樹脂(三菱化学社製の「AD92W」(商品名))
(B−3)ポリヒドロキシブチレート系樹脂(アルドリッチ社製の「PHB」(商品名)
【0080】
(C)粘着付与樹脂
(C−1)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(エクソン社製の「ECR179X」(商品名)、酸価0mgKOH/g)
(C−2)C9系石油樹脂(荒川化学社製の「アルコンP100」(商品名)、酸価0mgKOH/g)
(C−3)水素添加石油樹脂(出光興産社製の「I−marv S110」(商品名)、酸価0mgKOH/g)
(C−4)C5系石油樹脂(イーストタック社製の「Easttack C100−R」(商品名)、酸価0mgKOH/g)
(C−5)ロジン系樹脂(荒川化学社製のKR−85(商品名)、酸価165〜175mgKOH/g)
(C−6)水素添加石油樹脂(出光興産社製のI−marv Y135(商品名)、酸価0mgKOH/g)
【0081】
(D)熱可塑性エラストマー
(D−1)SBSトリブロック共重合体(旭化成社製のAsaprene T−438(商品名))
(D−2)SISトリブロック共重合体(日本ゼオン社製のQuintac3460(商品名))
(D−3)SISトリブロック共重合体(日本ゼオン社製のQuintac3433N(商品名))
(D−4)SISトリブロック共重合体(日本ゼオン社製のQuintac3520(商品名))
(D−5)SISトリブロック共重合体(日本ゼオン社製のQuintac3270(商品名))
(D−6)SISトリブロック共重合体(クレイトン社製のD1160(商品名))
【0082】
(E)可塑剤
(E−1)パラフィン系オイル(出光興産社製のダイナフレシアS−32(商品名))
(E−2)ナフテン系オイル(出光興産社製のNS−100(商品名))
【0083】
(F)酸化防止剤
(F−1)硫黄系酸化防止剤(アデカ社製のAO−412S(商品名))
(F−2)フェノール系酸化防止剤(住友化学社製のスミライザーGM(商品名))
【0084】
(A)〜(F)の成分を表1〜表4に示す配合割合で配合し、約145℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1〜25、比較例1〜11のホットメルト接着剤を製造した。表1〜4に示されるホットメルト接着剤の組成(配合)に関する数値は、全て重量部である。
【0085】
実施例および比較例の各々のホットメルト接着剤について、ループタック、熱安定性、T字剥離強度、溶融粘度、不織布/PEフィルム剥離強度試験を評価した。以下、各評価の概要について説明する。
【0086】
<ループタック>
厚みが50μmのPETフィルムに、50μmの厚さとなるようにホットメルト接着剤を塗布した。これを2.5cm×12.5cmのサイズに成形して試験体とした。この試験体を、粘着面(接着剤塗布面)が外側となるようにループ状に巻回し、これをPE板に対し20℃で300mm/minの速度で接触させた。その後、300mm/minの速度で試験体をPE板から引き剥がす時の、引き剥がし強度のピーク値を測定した。結果を表1〜3に示した。評価基準は下記のとおりである。
【0087】
◎: 剥離強度 1,000g/25mm以上
○: 剥離強度 500g/25mmより大きく、1,000g/25mm未満
△: 剥離強度 300g/25mmより大きく、500(g/25mm)以下
×: 剥離強度 300g/25mm以下
【0088】
<熱安定性>
70mLのガラス瓶にホットメルト接着剤を35g入れ、150℃の乾燥機に24時間静置した後の外観変化より判定した。結果を表1〜3に示した。評価基準は下記のとおりである。
【0089】
◎: 相分離、炭化物、およびリング(ホットメルト接着剤の劣化物がリング状に析出したもの)が観察されなかった。
○: 極わずかに相分離、炭化物、およびリングが観察された。
△: わずかに相分離、炭化物、およびリングが観察された。
×: 相分離、炭化物、およびリングが観察された。
【0090】
<T字剥離強度>
厚さが50μmのPETフィルムに、50μmの厚さとなるようにホットメルト接着剤を塗布した。これを2.5cm幅に成形して試験体とした。ポリエチレンフィルムを20℃雰囲気下、300mm/minの速度で、2kgローラーを用いて貼り合せた後、常温で24時間養生した。その後、20℃雰囲気下で300mm/minの速度で、剥離した時の強度を測定した。各ホットメルト接着剤について、3個の試料を測定して、得られる平均値で剥離強度を示した。結果を表1〜3に示した。評価基準は下記のとおりである。
【0091】
◎: 剥離強度 1,500g/25mm以上
○: 剥離強度 800g/25mmより大きく、1,500g/25mm未満
△: 剥離強度 300g/25mmより大きく、800g/25mm以下
×: 剥離強度 300g/25mm以下
【0092】
<溶融粘度>
溶融粘度は、ホットメルト接着剤を加熱して溶融し、140℃及び160℃において、溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定した。結果を表4に示した。評価基準は下記のとおりである。
【0093】
◎: 140℃における溶融粘度が9000mPa・s未満
○: 140℃における溶融粘度が9000mPa・s〜20000mPa・s
×: 140℃における溶融粘度が20000mPa・sを超える
【0094】
<不織布/PEフィルム剥離強度試験>
不織布に、ホットメルト接着剤を5g/mの塗布量で、スパイラルスプレーにより、温度150℃で塗工し、ホットメルト接着剤が塗工された不織布と、PEフィルムをホットメルト接着剤を介して重ね合わせ、圧力0.5kgf/cmでプレスしてサンプル(不織布/PEフィルム)を得た。得られたサンプルを基材進行に対して垂直方向(CD方向)25mmにカットし、300mm/minの速度で、剥離した時の強度を測定した。各ホットメルト接着剤について、3個の試料を測定して、得られる平均値で剥離強度を示した。結果を表4に示した。評価基準は下記のとおりである。
【0095】
◎: 剥離強度 80g/25mmを超える
○: 剥離強度 40g/25mm以上、80g/25mm以下
△: 剥離強度 20g/25mmより大きく、40g/25mm未満
×: 剥離強度 20g/25mm以下
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
表1および表2に示したように、実施例1〜19のホットメルト接着剤は、A成分、B成分、C成分およびD成分のいずれも含有するが、ループタック、熱安定性、およびPEフィルムとPETフィルムとのT字剥離強度のいずれも良好であった。
【0100】
表3に示したように、比較例1から9は、A成分、B成分、C成分およびD成分のうち、いずれか一成分または二成分を含有しないが、ループタック、熱安定性、およびPEフィルムとPETフィルムとのT字剥離強度のほとんどが低かった。比較例6〜9は、(A)成分の極性官能基で変性された重合体を含まず、(B)成分、(C)成分および(D)成分は含むが、これら成分が相溶せず分離してしまいホットメルト接着剤としての物性が低かった。
【0101】
【表4】
【0102】
表4に示したように、実施例20〜25は、A成分、B成分、C成分およびD成分のいずれも含有するが、ホットメルト接着剤を塗工するのに問題のない粘度であり、不織布とPEフィルムとのT字剥離接着強度も高く良好であった。一方、比較例10はA成分およびD成分を含まず、比較例11はA成分を含まないが、いずれの組成でも、相分離が発生して粘度測定が不可能となり、不織布上に塗布することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、ホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤が塗工された吸収性物品を提供できる。本発明に係る吸収性物品は、不織布とポリオレフィンフィルムを接着する紙おむつとして特に有効である。