(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一ガイドローラと前記第二ガイドローラとの間に設置され、前記研磨ベルトのテンションを調整する第三ガイドローラを更に備える、請求項1記載のヘアライン加工装置。
前記巻き出しローラ側の側面視角度が変化するように、前記転写フィルムと接触して動作する第四ガイドローラ又は、前記巻き取りローラ側の側面視角度が変化するように、前記転写フィルムと接触して動作する第五ガイドローラの少なくともいずれか一方を備える、請求項1又は2に記載のヘアライン加工装置。
【背景技術】
【0002】
加飾フィルムを用いて、プラスチック部品や外装品のような物品の表面を保護又は装飾する方法は従来から知られている。加飾フィルムの構成として、支持体である転写フィルムの面上に転写層が形成されたものが知られている。
【0003】
物品への高い装飾性が求められる場合、加飾フィルムとして、転写フィルムの表面にヘアライン加工を施したものが使用される場合がある。従来、このヘアライン加工を施すための装置として、ヘアライン加工装置が用いられてきた。
【0004】
図6は、従来のヘアライン加工装置の断面を示した図である。
【0005】
図6を参照して、従来のヘアライン加工装置500は、シート供給ロール401、シート巻取ロール402、ゴムロール301、サンドペーパーベルト300、ゴムロール302から構成される(例えば、特許文献1)。
【0006】
再び
図6を参照して、シート供給ロール401から巻き出された基体シート400は、ゴムロール301によってサンドペーパーベルト300と接触し、ヘアライン加工が施され、シート巻取ロール402によって巻き取られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記ヘアライン加工装置500は、ヘアライン加工装置500を側面から見た場合における、シート供給ロール401側のサンドペーパーベルト300とシート供給ロール401側の基体シート400とで形成される側面視角度θ1や、シート巻取ロール402側のサンドペーパーベルト300とシート巻取ロール402側の基体シート400とで形成される側面視角度θ2は、常に一定で調整不可能であった。そのため、サンドペーパーベルト300から基体シート400の垂直方向に伝わる力の大きさも常に一定となり、調整不可能であった。よって、常に一定の掘り込み角度と掘り出し角度でしか基体シート400にヘアライン加工ができなかった。その結果、基体シート400から削り出された削りくずが、基体シート400から切り離されず、基体シート400上に残ってしまうという問題があった。そして、この削りくずが残った基体シートを使い、印刷を施すと、印刷インキが削りくずのため印刷版から転移されず、インキがピンホール状に抜けた印刷物になるという問題があった。
さらに、上記ヘアライン加工装置500においては、サンドペーパーベルト300と基体シート400との接触長さも常に一定で、調整不可能であった。その結果、常に一定の長さの単調なヘアライン加工が施された転写フィルムしか得ることができないという問題もあった。
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、側面視角度を変化させることで、サンドペーパーベルトから基体シートの垂直方向に伝わる力の大きさを変化させ、ヘアラインの掘り込み角度と掘り出し角度を調整することにより、基体シート上に削りくずを残さず、ヘアライン加工を施せるヘアライン加工装置を提供することにある。また、基体シートとサンドペーパーベルトとの接触長さを変化させて、ヘアラインの長さを調整することにより、基体シートに様々な長さのヘアライン加工を施せるヘアライン加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のヘアライン加工装置の第1特徴構成は、転写フィルムを加工するヘアライン加工装置であって、前記転写フィルムの送り方向上流側に設置され、前記転写フィルムを移送する巻き出しローラと、前記転写フィルムの送り方向下流側に設置され、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムを巻き取る巻き取りローラと、前記巻き出しローラと前記巻き取りローラとの間に設置され、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムを研磨する研磨ベルトと、前記研磨ベルトを前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムに接触させる接触ローラと、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムと前記研磨ベルトとで形成される巻き出しローラ側の側面視角度が変化するように、前記研磨ベルトと接触して動作する第一ガイドローラ又は、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムと前記研磨ベルトとで形成される前記巻き取りローラ側の側面視角度が変化するように、前記研磨ベルトと接触して動作する第二ガイドローラの少なくともいずれか一方を備える角度調節機構と、を備える点にある。
【0011】
これらの特徴構成によれば、第一ガイドローラ又は第二ガイドローラを動作させて巻き出しローラ側の側面視角度又は巻き取りローラ側の側面視角度を変化させると、研磨ベルトから転写フィルムの垂直方向に加わる力の大きさが変化するので、ヘアラインの掘り込み方向の力の大きさを調整することができる。その結果、削りくずが残らないよう、転写フィルムの掘り込み角度と掘り出し角度を調整することが可能となる。
【0012】
本発明のヘアライン加工装置の第2特徴構成は、前記第一ガイドローラと前記第二ガイドローラとの間に設置され、前記研磨ベルトのテンションを調整する第三ガイドローラを更に備える点にある。
【0013】
これらの特徴構成によれば、第三ガイドローラによって研磨ベルトにかかるテンションを調整することにより、研磨ベルトの弛みやスリップを防止し、均一でムラのないヘアラインを形成することが出来る。
【0014】
本発明のヘアライン加工装置の第3特徴構成は、前記巻き出しローラ側の側面視角度が変化するように、前記転写フィルムと接触して動作する第四ガイドローラ又は、前記巻取りローラ側の側面視角度が変化するように、前記転写フィルムと接触して動作する第五ガイドローラの少なくともいずれか一方を備える点にある。
【0015】
これらの特徴構成によれば、第四ガイドローラ又は第五ガイドローラを動作させて巻き出しローラ側の側面視角度又は巻取りローラ側の側面視角度を変化させると、第一ガイドローラ又は第二ガイドローラを動作させた場合と同様に、研磨ベルトから転写フィルムの垂直方向に伝わる力の大きさが変化する。よって、ヘアラインの掘り込み方向の力の大きさを調整することができる。その結果、削りくずが残らないよう、転写フィルムの掘り込み角度と掘り出し角度を調整することが可能となる。
更に、第四ガイドローラ又は第五ガイドローラを動作させると、転写フィルムと研磨ベルトの接触長さも変化させることができる。その結果、ヘアラインの長さを調整することが可能となり、転写フィルムに様々な長さのヘアライン加工を施すことができる。
【0016】
本発明のヘアライン加工装置の第4特徴構成は、転写フィルムを加工するヘアライン加工装置であって、前記転写フィルムの送り方向上流側に設置され、前記転写フィルムを移送する巻き出しローラと、前記転写フィルムの送り方向下流側に設置され、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムを巻き取る巻き取りローラと、前記巻き出しローラと前記巻き取りローラとの間に設置され、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムを研磨する研磨ベルトと、前記研磨ベルトを前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムに接触させる接触ローラと、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムに対して前記接触ローラより外側に設置され、前記研磨ベルトのテンションを調整する第三ガイドローラと、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムと前記研磨ベルトとで形成される前記巻き出しローラ側の側面視角度が変化するように、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムと接触して動作する第四ガイドローラ又は、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムと前記研磨ベルトとで形成される前記巻き取りローラ側の側面視角度が変化するように、前記巻き出しローラから移送された前記転写フィルムと接触して動作する第五ガイドローラの少なくともいずれか一方と、を備える点にある。
【0017】
これらの特徴構成によれば、第四ガイドローラ又は第五ガイドローラを動作させて巻き出しローラ側の側面視角度又は巻き取りローラ側の側面視角度を変化させると、研磨ベルトから転写フィルムの垂直方向に加わる力の大きさが変化するので、ヘアラインの掘り込み方向の力の大きさを調整することができる。その結果、削りくずが残らないよう、転写フィルムの掘り込み角度と掘り出し角度を調整することが可能となる。
また、第四ガイドローラ又は第五ガイドローラを動作させると、転写フィルムと研磨ベルトの接触長さも変化させることができる。その結果、ヘアラインの長さを調整することが可能となり、転写フィルムに様々な長さのヘアライン加工を施すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヘアライン加工装置は、第一ガイドローラ又は第二ガイドローラを動作させて、巻き出しローラ側の側面視角度又は巻き取りローラ側の側面視角度を変化させると、研磨ベルトから転写フィルムの垂直方向に加わる力の大きさが変化するので、ヘアラインの掘り込み方向の力の大きさを調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記で、本発明に係る実施形態を図面に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明の実施例に記載した部位や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係るヘアライン加工装置100を示した図である。
図1で示すように、ヘアライン加工装置100は、巻き出しローラ11、巻き取りローラ12、研磨ベルト30、接触ローラ31、角度調節機構20、第三ガイドローラ34、第四ガイドローラ13、第五ガイドローラ14を備えている。
【0022】
転写フィルム10は、シート状のフィルムであり、合成樹脂などから構成される。転写フィルム10の材質としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体などを使用することができる。
【0023】
転写フィルム10の厚さは5〜500μmのものを使用することができるが、ハンドリング性の良さを考慮すると25〜75μmのものを使用することが好ましく、成形安定性の良さを考慮すると38〜50μmのものを使用することが好ましい。
【0024】
巻き出しローラ11は、ロール状に巻かれた転写フィルム10を巻き出して、転写フィルム10の長手方向に移送するローラである。
【0025】
巻き取りローラ12は、研磨ベルト30の下部を通過しヘアライン加工が施された転写フィルム10を、ロール状に巻き取るローラである。
【0026】
研磨ベルト30は、片面が研磨性を有する材質からなる無端のベルトである。研磨ベルト30は、巻き出しローラ11と巻き取りローラ12との間に、転写フィルム10の加工面と研磨ベルト30の研磨性を有する面とが接触するように設置され、巻き出しローラ11から移送された転写フィルム10を研磨する。研磨ベルト30の材質としては、ベルト表面に金属粉などの微粒子を付着させたサンドペーパーや、不織布に研磨砥粒を塗布・接着した研磨材や、スチールウールなどを使用することができる。
【0027】
接触ローラ31は、研磨ベルト30の研磨性を有する面の裏面と接するように設けられ、研磨ベルト30を転写フィルム10に押し付けた状態にするローラである。この研磨ベルト30は、図示しないモータによって回転駆動される。
【0028】
角度調節機構20は、転写フィルム10の掘り込み角度を調整する第一ガイドローラ32及び転写フィルム10の掘り出し角度を調整する第二ガイドローラ33を備えている。角度調節機構20は、接触ローラ31の上部に設けられる。
【0029】
第一ガイドローラ32は、接触ローラ31と巻き出しローラ11との間に、研磨ベルト30の研磨性を有する面の裏面と接するように設けられる。第一ガイドローラ32は、巻き出しローラ11側の側面視角度θを変化させるように任意の方向に動作可能である。第一ガイドローラ32を動作させることにより、転写フィルム10の掘り込み角度を調整することができる。
【0030】
第二ガイドローラ33は、接触ローラ31と巻き取りローラ12との間に、研磨ベルト30の研磨性を有する面の裏面と接するように設けられる。第二ガイドローラ33は、巻き取りローラ側12の側面視角度θ´を変化させるように任意の方向に動作可能である。第二ガイドローラ33を動作させることにより、転写フィルム10の掘り出し角度を調整することができる。
なお、側面視角度とは、ヘアライン加工装置100を側面から見た場合における、研磨ベルト30と転写フィルム10とで形成される角度をいうものとする。
【0031】
第三ガイドローラ34は、角度調節機構20の上部に、研磨ベルト30の研磨性を有する面の裏面と接するように設けられる。第三ガイドローラ34は、研磨ベルト30にかかるテンションを調整するように、任意の方向に動作可能である。第三ガイドローラ34を任意の方向に動作させることによって、研磨ベルト30の弛みやスリップを防止し、均一でムラのないヘアラインを形成することが出来る。また、第三ガイドローラ34は、研磨ベルト30の走行方向を調整し、研磨ベルト30の蛇行を制御することもできる。研磨ベルト30が蛇行して走行する場合は、例えば、第三ガイドローラ34の片方の端、又は両方の端を転写フィルム10の送り方向に1mmから50mmの範囲で水平に動かすことにより、研磨ベルト30の走行方向を調整し制御することが出来る。これによりヘアライン加工中に研磨ベルト30が蛇行して外れることを防止できる。また蛇行によるヘアラインの直線方向の乱れを防止できる。
【0032】
第四ガイドローラ13は、巻き出しローラ11と接触ローラ31との間に、転写フィルム10の加工面の裏面と接触するように設けられる。第四ガイドローラ13は、巻き出しローラ11側の側面視角度θを変化させるよう動作するローラである。第四ガイドローラ13を動作させることにより、研磨ベルト30から転写フィルム10の垂直方向に伝わる力の大きさが変化するため、転写フィルム10の掘り込み角度と掘り出し角度を調整することができる。また、第四ガイドローラ13を動作させることにより、研磨ベルト30と転写フィルム10との接触長さを調整することもできるため、ヘアラインの長さを調整することもできる。
【0033】
第五ガイドローラ14は、接触ローラ31と巻き出しローラ11との間に、転写フィルム10の加工面の裏面と接触するように設けられる。第五ガイドローラ14は、巻き取りローラ12側の側面視角度θ´を変化させるよう動作するローラである。第五ガイドローラ14を動作させることにより、研磨ベルト30から転写フィルム10の垂直方向に伝わる力の大きさが変化するため、転写フィルム10の掘り込み角度と掘り出し角度を調整することができる。また、第五ガイドローラ14を動作させることにより、研磨ベルト30と転写フィルム10との接触長さを調整することもできるため、ヘアラインの長さを調整することもできる。
【0034】
次に、転写フィルム10へのヘアライン加工の手順について説明する。
【0035】
再び
図1を参照して、まず、ロール状に巻かれた転写フィルム10が巻き出しローラ11から巻き出され、第四ガイドローラ13を経由し、巻き出しローラ側の側面視角度θを形成して接触ローラ31に送り込まれる。そして、転写フィルム10は、接触ローラ31によって研磨ベルト30に押し付けられる間に研磨され、ヘアライン加工が施される。接触ローラ31を通過した転写フィルム10は、巻き取りローラ側の側面視角度θ´を形成して第五ガイドローラ14まで移送される。そして、第五ガイドローラ14を経由した後、巻き取りローラ12によって再びロール状に巻き取られる。
【0036】
図2は、
図1に示した実施の形態において、第一ガイドローラ32と第二ガイドローラ33が水平方向に動作した場合の、その動作前後のヘアライン加工装置100を示した図である。
図2において点線部分は動作前の状態を示し、実線部分は動作後の状態を示している。
図2(a)は第一ガイドローラ32と第二ガイドローラ33との距離が広がる方向に動作したときのヘアライン加工装置100を示した図であり、
図2(b)は第一ガイドローラ32と第二ガイドローラ33との距離が、狭まる方向に動作したときのヘアライン加工装置100を示した図である。
【0037】
図2(a)に示すように、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33が、互いの距離が広がる方向に動作すると、研磨ベルト30もそれに追従して動作するので、巻き出しローラ側の側面視角度θ、巻き取りローラ側の側面視角度θ´が小さくなる。その結果、移動後の研磨ベルト30から転写フィルム10に加わる垂直方向の力の大きさは、移動前より小さくなるので、研磨ベルト30による転写フィルム10の掘り込み角度と掘り出し角度が緩やかになる。
【0038】
また、
図2(b)に示すように、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33が、互いの距離が狭まる方向に動作すると、研磨ベルト30もそれに追従して動作するので、巻きだしローラ側の側面視角度θ、巻き取りローラ側の側面視角度θ´が大きくなる。その結果、移動後の研磨ベルト30から転写フィルム10に加わる垂直方向の力の大きさは、移動前より大きくなるので、研磨ベルト30による転写フィルム10の掘り込み角度と掘り出し角度が急になる。
【0039】
このように、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33を動作させることで、研磨ベルト71による転写フィルム31の掘り込み角度と掘り出し角度を調整することができる。
【0040】
尚、
図2(a)に示すように、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33が、互いの距離が広がる方向に動作し、研磨ベルト30に加わるテンションが過多になった場合、第三ガイドローラ34は上記過多なテンションを解放するよう下方に動作する。その結果、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33の動作前後で、研磨ベルト30に加わるテンションを適切な範囲で保つことができるため、研磨ベルトの損傷を防止することができる。
【0041】
また、
図2(b)に示すように、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33が、互いの距離が狭まる方向に動作し、研磨ベルト30に加わるテンションが不足する場合、第三ガイドローラ34は上記不足分のテンションを補うよう上方に動作する。その結果、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33の動作前後で、研磨ベルト30に加わるテンションを適切な範囲で保つことができるため、研磨ベルト30の弛みを防止することができる。
【0042】
このように、第三ガイドローラ34は、第一ガイドローラ32又は第二ガイドローラ33の動作に伴って、任意の方向に動作することにより、研磨ベルト30に加わるテンションを調整できる。その結果、過多なテンションが加わることによる研磨ベルト30の損傷や、テンションの不足による研磨ベルト30の弛みを防止できる。
【0043】
図3は、
図1で示した実施の形態において、第四ガイドローラ13と第五ガイドローラ14が上下方向に動作した場合の、その移動前後のヘアライン加工装置100を示した図である。
図3(a)は第四、第五ガイドローラ13、14が、上方に動作したときのヘアライン加工装置100を示した図であり、
図3(b)は第四、第五ガイドローラ13、14が、下方に動作したときのヘアライン加工装置100を示した図である。
図3において、点線部分は、動作前の状態を示し、実線部分は動作後の状態を示している。
【0044】
図3(a)に示すように、第四ガイドローラ13と第五ガイドローラ14が上方に動作すると、転写フィルム10もそれに追従して動作するため、巻き出しローラ側の側面視角度θ、巻き取りローラ側の側面視角度θ´が小さくなる。その結果、研磨ベルト30から転写フィルム10に加わる垂直方向の力の大きさは、動作前より動作後の方が小さくなるため、研磨ベルト30による転写フィルム10の掘り込み角度と掘り出し角度が緩やかになる。また、研磨ベルト30と転写フィルム10との接触長さが長くなるため、動作前より動作後の方がヘアライン長さが長くなる。
【0045】
図3(b)に示すように、第四ガイドローラ13と第五ガイドローラ14が下方に動作すると、転写フィルム10もそれに追従して動作するため、側面視角度θ、側面視角度θ´が大きくなる。その結果、研磨ベルト30から転写フィルム10に加わる垂直方向の力の大きさは、動作前より動作後の方が大きくなるため、研磨ベルト30による転写フィルム10の掘り込み角度と掘り出し角度が急になる。また、研磨ベルト30と転写フィルム10との接触長さが短くなるため、動作前より動作後の方が、ヘアライン長さが短くなる。
【0046】
このように、第四ガイドローラ13と第五ガイドローラ14を動作させることで、研磨ベルト30による転写フィルム10の掘り込み角度と掘り出し角度と、ヘアライン長さを調整することができる。
【0047】
図4は、本発明の第2実施形態に係るヘアライン加工装置100を示した図である。この実施形態におけるヘアライン加工装置100の基本的な構成は、第1実施形態に係るヘアライン加工装置100と同様である。
【0048】
次に、加飾フィルムについて説明する。
図5は、本発明のヘアライン加工装置100を適用した転写フィルム90を用いた加飾フィルム200の断面図である。
図5で示すように、加飾フィルム200は、転写フィルム90と、加飾層91から構成されている。加飾フィルム200は、樹脂や金属などの成形品に転写し、成形品外面の装飾性を高めるために用いられる。
【0049】
転写フィルム90は、上記のように本発明のヘアライン加工装置100が適用されヘアラインの掘り込み深さとヘアライン長さを調整可能であるため、削りくずのない綺麗なヘアラインとなる。また、上記のように本発明のヘアライン加工装置100は、ヘアラインの掘り込み角度と掘り出し角度と、ヘアライン長さを調整可能であるため、様々なパターンのバラエティに富んだヘアラインとすることができる。
【0050】
加飾層91は、成形品表面を傷などから保護するハードコート層、成形品表面に文字や図柄を付与する図柄層、成形品表面との接着性を向上させる接着層の少なくとも1つを備えている。加飾層91は、転写後、成形品表面に残る層である。
【0051】
ハードコート層
ハードコート層は、転写後、転写フィルム90を成形品から剥離したときに、成形品の表面に配置され、成形品表面を保護するために一定以上の硬度を有している。ハードコート層の材質としては、シアノアクリレート系やウレタンアクリレートなどの電離放射線硬化性樹脂や、アクリル系やウレタン系などの熱硬化性樹脂が挙げられるが、特に限定されない。ハードコート層は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などにより転写フィルム90上に印刷される。
【0052】
図柄層
図柄層は、文字や図柄を表現するための層である。図柄層は、樹脂をバインダーとして顔料や染料などの着色剤を含有した着色インキにより形成される。バインダーとして使用される樹脂は、ポリビニル系樹脂、ポリアミド(PA)系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル(PMMA)系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。図柄層は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などにより転写フィルム90上に印刷される。
【0053】
接着層
接着層は、成形品との接着性を向上させるための層である。接着層の構成材料としては、成形品に対する十分な接着性を得ることができれば特に限定されない。
【0054】
尚、加飾フィルム200は、離型層を備えていても良い。離型層は、転写フィルム90からの加飾層91の剥離性を向上させるための層である。このため、離型層を設ける場合には、転写フィルム90と加飾層91との間に配置すればよい。離型層の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤、及びこれらの複合型離型剤などを用いることができる。離型層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などを用いることができる。
【0055】
以上から、上記のように構成されるヘアライン加工装置100が適用された転写フィルム10を用いた加飾フィルム200は、ヘアラインの掘り込み角度と掘り出し角度とヘアライン長さを調整可能であるため、削りくずが残らず、かつバラエティに富んだヘアラインとすることができる。
【0056】
尚、
図1で示した実施の形態では、角度調節機構20が第一ガイドローラ32と第二ガイドローラ33とを備えているが、いずれか一方のみを備えた構成としても良い。
【0057】
また、
図1で示した実施の形態では、第三ガイドローラ34が備わっているが、第三ガイドローラ34を備えない構成としても良い。
【0058】
また、
図1及び
図4で示した実施の形態では、第四ガイドローラ13と第五ガイドローラ14とが備わっているが、第四ガイドローラ13と第五ガイドローラ14を備えない構成としても良い。また、いずれか一方のみが備わった構成としても良い。