(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883354
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ヒータ及び伝熱部材
(51)【国際特許分類】
H05B 3/40 20060101AFI20160301BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20160301BHJP
F16L 59/05 20060101ALI20160301BHJP
F16L 53/00 20060101ALI20160301BHJP
F16K 49/00 20060101ALN20160301BHJP
【FI】
H05B3/40 A
H05B3/10 Z
F16L59/05
F16L53/00 C
!F16K49/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-143415(P2012-143415)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-7111(P2014-7111A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】本吉 芳之
(72)【発明者】
【氏名】石 大作
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−8049(JP,A)
【文献】
特開2004−316864(JP,A)
【文献】
特開2003−185086(JP,A)
【文献】
特開2009−168120(JP,A)
【文献】
特開2005−106145(JP,A)
【文献】
特開2005−188677(JP,A)
【文献】
特開2006−286315(JP,A)
【文献】
特開2009−275857(JP,A)
【文献】
特開2010−38288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/40
F16L 53/00
F16L 59/05
H05B 3/10
F16K 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱部材を包囲して加熱するヒータであって、
発熱体と、
20℃における熱伝導率が1.0W/(m・K)以上の伝熱性材料片を可撓性の袋体に収容してなり、全体として変形可能な包囲体と、
可撓性の表皮体とを備え、
包囲体で被加熱部材を覆い、包囲体の外側に発熱体を配置して全体を表皮材で被覆することを特徴とするヒータ。
【請求項2】
包囲体、発熱体及び表皮材の順に積層して一体化されていることを特徴とする請求項1記載のヒータ。
【請求項3】
被加熱部材と発熱体との間に介在される伝熱部材であって、
20℃における熱伝導率が1.0W/(m・K)以上の伝熱性材料片を可撓性の袋体に収容してなり、全体として変形可能であることを特徴とする伝熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管またはその継手、あるいはバルブ等の被加熱部材を包囲して加熱するヒータに関する。また、本発明は、被加熱部材と発熱体との間に介在される伝熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バルブを加熱して内部を流通するガスの結露や、液体の硬化を防止することが行われている。バルブを加熱するには、バルブの本体部分や継手部分にヒータ線を巻装して更に全体を断熱材で包囲する方法や、ヒータ線を内蔵する断熱材でバルブの本体部分や継手部分を包囲する方法が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1では、バルブの本体部分及び継手部分を包囲するハウジング内に、直接加熱部と輻射加熱部とを設けたヒータユニットを提案している。このヒータユニットでは、一対のハウジングハーフが会合してハウジングを形成するものであり、各ハウジングハーフはセラミックヒータを内蔵しており、セラミックヒータの内側の面にはステンレス板が取り付けられて直接加熱部を構成し、セラミックヒータが取り付けられた部分以外が輻射加熱部を構成する。また、直接加熱部のステンレス板は、ハウジングハーフ同士を会合したときにバルブの本体部分に接する位置に固定されており、セラミックヒータに通電した際に本体部分を直接加熱する。それと同時に、継手部分を含めて本体部分を除く他の部分が輻射加熱部からの輻射熱により加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−316864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のヒータユニットによれば、直接加熱部はバルブの本体部分に対応して位置決めされており、更にバルブへの装着方法もハウジングハーフ同士を会合するだけでよいため、作業者の違いによる加熱ムラが発生することがない。
【0006】
しかしながら、バルブの本体部分が直接加熱されるのに対し、継手部分を含めた他の部分は輻射加熱であるため、加熱ムラが発生する。また、ハウジングハーフの大部分が輻射加熱部となるため、大面積のセラミックヒータ、あるいは小面積のセラミックヒータをハウジングハーフの複数箇所に配設する必要があり、高価なセラミックヒータを多用するため、全体として高価なものとなる。しかも、ハウジングヒータ全体を加熱するため、消費電力も多くなる。
【0007】
アルミニウム等の金属ブロックをバルブの形状に合わせて加工することも考えられるが、高価であり、他の寸法・形状のバルブに対応できず、バルブ毎に作製する必要がある。
【0008】
そこで本発明は、種々の形状の被加熱部材への対応も容易で、加熱ムラがなく、効率良く加熱できるヒータを提供することを目的とする。本発明はまた、被加熱部材と発熱体の間に介在され、発熱体からの熱を効率よく被加熱部材に伝熱するための伝熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、下記のヒータ及び伝熱部材を提供する。
(1)被加熱部材を包囲して加熱するヒータであって、
発熱体と、
20℃における熱伝導率が1.0W/(m・K)以上の伝熱性材料片を可撓性の袋体に収容してなり、全体として変形可能な包囲体と、
可撓性の表皮体とを備え、
包囲体で被加熱部材を覆い、包囲体の外側に発熱体を配置して全体を表皮材で被覆することを特徴とするヒータ。
(2)包囲体、発熱体及び表皮材の順に積層して一体化されていることを特徴とする上記(1)記載のヒータ。
(3)被加熱部材と発熱体との間に介在される伝熱部材であって、
20℃における熱伝導率が1.0W/(m・K)以上の伝熱性材料片を可撓性の袋体に収容してなり、全体として変形可能であることを特徴とする伝熱部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒータでは、包囲体により被加部材を隙間無く包囲し、包囲体を通じて発熱体からの熱を被加熱部材に伝熱するため、被加熱部材が様々な寸法・形状であっても効率良く加熱することができる。また、本発明の伝熱部材は、包囲体と同様に構成されており、被加熱部材を隙間無く包囲して発熱体からの熱を効率よく伝熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のヒータの一例を示す分舞斜視図である。
【
図2】包囲体(伝熱部材)の一例を示す一部切欠図である。
【
図3】バルブに本発明のヒータを装着した状態を説明するための図である。
【
図4】本発明のヒータの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本発明のヒータ1は、
図1に示すように、包囲体10と、発熱体20と、表皮体30とを備える。
【0014】
包囲体10は、
図2に示すように、可撓性を有する袋体11に、20℃における熱伝導率が1.0W/(m・K)以上である伝熱性材料片を収容したものであり、包囲体10は全体として変形可能である。伝熱性材料としては、20℃における熱伝導率が1.0W/(m・K)以上であれば特に制限はなく、安価なものほど好ましく、鉄や銅、アルミニウム、あるいはそれらの合金が好ましい。
【0015】
伝熱性材料片の形状は、特に制限はなく、例えば、繊維状物12(
図2(a))や粒状物13(
図2(b))、あるいは繊維状物12と粒状物13との混合物などが挙げられる。
【0016】
繊維状物12は、伝熱性を確保しつつ、変形に追従できれば繊維長や繊維径には制限はないが、繊維が長いほど繊維同士が絡み合って伝熱しやすくなるため1〜500μmが好ましい。また、包囲体10に収容される繊維状物12のかさ密度は、0.01〜10g/cm
3が好ましい。繊維量が多くなるほど包囲体10が厚くなり、被加熱部材の細かな形状に追従し難くなる。一方、繊維量が少なくなるほど包囲体10が薄くなり、変形しやすくなるが、発熱体20や表皮体30は可撓性を有するものの、包囲体10に比べると変形量は少ないため、包囲体10との間に隙間ができやすい。そこで、包囲体10に収容される繊維状物12のかさ密度は、0.1〜1.0g/cm
3が適当である。
【0017】
粒状物13は、その形状に特に制限はなく、球形である必要はなく、多面体や無定形、扁平体、円筒状であってもよい。また、粒状物13は、中実である必要はなく、中空にすることにより軽量化することができる。そして、変形した際に袋体11の内部で粒同士が接触し合えるように、個数や粒径が調整される。例えば、粒径は1〜10mmであればよい。その際、異なる形状や寸法の粒状物13を混合してもよい。
【0018】
袋体11は、耐熱性を有する材料からなり、かつ、変形自在であるために可撓性を有する。袋体11としては、金属製の箔やシート、フィルム、メッシュ、ガラスファイバー、セラミックファイバー、シリカファイバー等といった無機繊維製クロスなどが挙げられる。また、変形による損傷や劣化を抑えるために、耐熱性の樹脂をコーティングして補強してもよい。尚、繊維状物12を収容する場合は、メッシュでは網目から突出したり、離脱することが考えられるため、金属箔や金属シート、金属フィルムを用いることが好ましい。また、粒状物13を収容する場合も、メッシュの網目から脱落しないように、粒径を考慮して目開きを調整する必要がある。袋体11の厚さは、特に制限はないが、0.01〜3mmであればよい。
【0019】
また、包囲体10は、被加熱部材に装着した際に、変形して隙間を埋めるように、被加熱部材に装着したときにある程度の厚みを有する。具体的な厚さは用途に応じて設定することができるが、一般的な寸法や形状の配管や継手、バルブ等では、0.5〜3.0cmとすることにより、隙間を埋めることができる。
【0020】
発熱体20は、変形可能なように可撓性をすることが好ましく、更には広い面積を一度に加熱できるように加熱面21が面状であることが好ましい。具体的には、ヒータ線を耐熱性の布やリボンに縫合して一体化させた面状ヒータやリボンヒータ等を用いることができる。また、セラミックヒータを用いることもできる。尚、符合22は、外部電源(図示せず)に接続されるプラグである。
【0021】
表皮体30は、可撓性を有する材料であれば特に制限はないが、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等からなるシートや、ガラスファイバー、セラミックファイバー、シリカファイバー等といった無機繊維製クロスであればよい。表皮体30の厚さは特に制限はないが、0.1〜5mmであればよい。また、図示されるように、被加熱部材に装着した際に、装着状態を維持できるように両端縁に、面ファスナー31,32等を備えていてもよい。また、図示は省略するが、面ファスナーを用いずとも、ベルトを巻装して固定することもできる。尚、表皮体30は、全体を包囲できるように、包囲体10や発熱体20よりも幅広にする。
【0022】
必要に応じて、発熱体20と表皮体30との間に、断熱材(図示せず)を介在させてもよい。こうした断熱材としては、無機繊維製シート、有機繊維製シート、樹脂発泡体とを使用でき、無機質繊維製シートは、ガラスファイバー、セラミックファイバー、シリカファイバー等の無機繊維材にニードル加工を施して、必要に応じてコロイダルシリカ、アルミナゾル、ケイ酸ソーダ等の無機質バインダーでシート状に形成させたものが好ましい。また、アラミド、ポリアミド、ポリイミド等の有機繊維製シートも使用できる。さらに、シリコーン樹脂、フッ素樹脂発泡体等の樹脂発泡体も使用できる。こうした断熱材の厚さは特に制限はないが、1〜30mm、3〜15mmであればよい。
【0023】
上記の如く構成されるヒータ1は、種々の形状の被加熱部材に装着することができる。その際、包囲体10は繊維状物12または粒状物13を収容した袋体11であり、ある程度の厚みがあるため、被加熱部材と発熱体20との隙間を埋めて効率良く加熱することが可能になる。
【0024】
例えば、
図3(a)に示すように、バルブ100は、本体部分101の両端にナット102を介して配管103が接続されるとともに、本体部分101には内部の弁部材の開閉を制御するアクチュエータ104が接続されており、複雑な形状を呈する。そのため、特許文献1をはじめとして一般的なヒータでバルブ100を包囲するように装着すると、本体部分101とナット102との間の空間(図中110で示す部分)や、本体部分101とアクチュエータ104との接続部分(図中111で示す部分)、ナット102とアクチュエータ104との間の空間(図中112で示す部分)に隙間ができる。しかし、
図3(b)に示すように、本発明のヒータ1を用いると、包囲体10が変形してこれらの隙間110、111、112に入り込み、発熱体20からの熱を繊維状物12や粒状物13が伝熱して加熱効率を高める。
【0025】
また、包囲体10は、例えば、直径1インチ(25.4mm)以下といった細い配管に装着して使用することもできる。具体的には、直径6.0〜13.0mm、6.35〜12.7mm、6.35〜9.525mmといった細い配管に装着して使用することもできる。こういった比較的細い配管を加熱しようとする際には、特開2003−185086号公報に記載されるように、配管を均一に加熱するために、アルミニウムなど金属製で、中心に配管挿通用の貫通孔が形成された円筒体を貫通孔の軸線に沿って2等分してなる半筒体を一対、配管に装着する構成の配管加熱用被覆体(アルミブロックともいう)を用い、この配管加熱用被覆体を包囲するヒータからの熱を伝熱することで配管を加熱することが行われている。しかしながら、こうしたアルミブロックは配管に応じて設計、加工しなければならず、コスト高になってしまう。本発明のヒータ1によれば、包囲体10を配管に巻くことにより、包囲体10の柔軟性、弾力性により配管とヒータとの隙間を埋めることができるため、ある程度の幅を持って配管に対応できるので、配管ごとに設計、加工する必要がなく汎用的に使用できる。また、材料費も安くなるほか、軽量化を図ることができる。
【0026】
上記では、包囲体10、発熱体20及び表皮体30を個別にしたが、
図4に示すように、包囲体10、発熱体20及び表皮体30を積層して一体化してヒータ1とすることもできる。一体化することにより、被加熱部材への装着が一度ですみ、作業性が向上する。
【0027】
また、図示は省略するが、発熱体20と表皮体30とを一体化してもよく、表皮体30に発熱体20を埋め込むこともできる。また、発熱体20と表皮体30との間に断熱材を介在させてもよい。
【0028】
尚、包囲体10は、本発明における伝熱部材に相当する。
【符号の説明】
【0029】
1 ヒータ
10 包囲体(伝熱部材)
11 袋体
12 繊維状物
13 粒状物
20 発熱体
30 表皮体