特許第5883370号(P5883370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5883370燃料チューブ用樹脂組成物および燃料チューブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883370
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】燃料チューブ用樹脂組成物および燃料チューブ
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20160301BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20160301BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08L33/06
   F16L11/04
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-211262(P2012-211262)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-65802(P2014-65802A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】片山 和孝
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平8−506780(JP,A)
【文献】 特開2011−202069(JP,A)
【文献】 特開平1−318050(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、F16L11/04、B32B27
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)を含有する燃料チューブ用樹脂組成物であって、(A)と(B)とがアミン交換反応したポリアミド樹脂を含有し、このポリアミド樹脂,(A)および(B)からなる群から選ばれた少なくとも一つと、(C)とが結合していることを特徴とする燃料チューブ用樹脂組成物。
(A)芳香族ポリアミド樹脂。
(B)脂肪族ポリアミド樹脂。
(C)アミノエチル化アクリルポリマー。
【請求項2】
(A)がポリアミド9Tで、(B)がポリアミド6である請求項1記載の燃料チューブ用樹脂組成物。
【請求項3】
(A)と(B)とがアミン交換反応し、(C)と結合したポリアミド樹脂の溶融粘度が、200〜4000Pa・sの範囲である請求項1または2記載の燃料チューブ用樹脂組成物。
【請求項4】
(C)の含有量が、(A)および(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料チューブ用樹脂組成物。
【請求項5】
耐衝撃剤を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料チューブ用樹脂組成物。
【請求項6】
少なくとも一つの樹脂層を備えた燃料チューブであって、上記樹脂層が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料チューブ用樹脂組成物からなることを特徴とする燃料チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料チューブ用樹脂組成物およびそれを用いた燃料チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等に組み付けられる燃料チューブには、ゴムホースや樹脂ホースが使用されている。そして、上記樹脂ホースには、ポリアミド樹脂等を含有する樹脂組成物が使用されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−352790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)等が使用されている。しかしながら、上記PA6は、アミド基濃度が高く、耐塩化カルシウム性(耐融雪剤性)に劣るため、PA6を燃料チューブの外皮材料として使用することは困難である。そのため、PA6に代えて、PA11、PA12、PA1010、PA610、PA612等が使用されるが、燃料バリア性(燃料低透過性)、成形加工性の点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐塩化カルシウム性と燃料バリア性とを両立することができ、成形加工性に優れた、燃料チューブ用樹脂組成物およびそれを用いた燃料チューブの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、耐塩化カルシウム性と燃料バリア性とを両立することができ、成形加工性に優れた、燃料チューブを得るため、その形成材料について鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、ポリアミド9T(PA9T)等の芳香族ポリアミド樹脂と、PA6等の脂肪族ポリアミド樹脂とをアミン交換反応したポリアミド樹脂を用いると、耐塩化カルシウム性と燃料バリア性とを両立することができることを突き止めた。しかしながら、このアミン交換反応したポリアミド樹脂を使用すると、成形時の成形温度の上昇により、ポリアミド樹脂の粘度が低下し、成形加工性が悪くなることを突き止めた。そこで、さらに研究を続けた結果、アミン交換反応したポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂および脂肪族ポリアミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つに、増粘剤であるアミノエチル化アクリルポリマーを結合(反応)させると、ポリアミド樹脂の粘度が上昇し、成形温度を維持したまま、成形加工性を向上させることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の(A)〜(C)を含有する燃料チューブ用樹脂組成物であって、(A)と(B)とがアミン交換反応したポリアミド樹脂を含有し、このポリアミド樹脂,(A)および(B)からなる群から選ばれた少なくとも一つと、(C)とが結合している燃料チューブ用樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)芳香族ポリアミド樹脂。
(B)脂肪族ポリアミド樹脂。
(C)アミノエチル化アクリルポリマー。
【0008】
また、本発明は、少なくとも一つの樹脂層を備えた燃料チューブであって、上記樹脂層が、上記第1の要旨の燃料チューブ用樹脂組成物からなる燃料チューブを第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の燃料チューブ用樹脂組成物は、PA9T等の芳香族ポリアミド樹脂と、PA6等の脂肪族ポリアミド樹脂とをアミン交換反応したポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂および脂肪族ポリアミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つに、増粘剤であるアミノエチル化アクリルポリマーが結合(反応)したポリアミド樹脂を含有している。そのため、ポリアミド樹脂の溶融粘度を上げることができ、成形加工性に優れるとともに、耐塩化カルシウム性と燃料バリア性とを両立することができる。
【0010】
特に、芳香族ポリアミド樹脂(A)がPA9Tで、脂肪族ポリアミド樹脂(B)がPA6であると、アミン交換反応によりPA6/9T構造を含むポリアミド樹脂となり、耐塩化カルシウム性、燃料バリア性、成形加工性のバランスが良好となる。
【0011】
また、(A)と(B)とがアミン交換反応し、アミノエチル化アクリルポリマー(C)と結合したポリアミド樹脂の溶融粘度が、200〜4000Pa・sの範囲であると、成形加工性が向上する。
【0012】
そして、(C)の含有量が、(A)および(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲であると、成形加工性が良好となる。
【0013】
また、耐衝撃剤を含有する燃料チューブ用樹脂組成物を使用すると、低温衝撃性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0015】
本発明の燃料チューブ用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と略す場合もある。)は、下記の(A)〜(C)を含有している。そして、本発明においては、(A)と(B)とがアミン交換反応したポリアミド樹脂を含有し、このポリアミド樹脂,(A)および(B)からなる群から選ばれた少なくとも一つと、(C)とが結合していることが最大の特徴である。
(A)芳香族ポリアミド樹脂。
(B)脂肪族ポリアミド樹脂。
(C)アミノエチル化アクリルポリマー。
【0016】
《芳香族ポリアミド樹脂(A)》
上記芳香族ポリアミド樹脂(A)としては、半芳香族ポリアミド樹脂が好ましく、この半芳香族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド4T(PA4T)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミドMXD6(PAMXD6)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)、ポリアミド11T(PA11T)、ポリアミド12T(PA12T)、ポリアミド13T(PA13T)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、耐塩化カルシウム性、燃料バリア性の点で、PA9Tが好ましい。
【0017】
《脂肪族ポリアミド樹脂(B)》
上記脂肪族ポリアミド樹脂(B)としては、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド92(PA92)、ポリアミド99(PA99)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド912(PA912)、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、成形加工性、コストの点で、PA6が好ましい。
【0018】
上記芳香族ポリアミド樹脂(A)および脂肪族ポリアミド樹脂(B)の重量混合比は、(A)/(B)=95/5〜50/50の範囲が好ましく、特に好ましくは(A)/(B)=90/10〜60/40の範囲である。(A)が多すぎると、成形加工性が悪くなる傾向がみられ、(A)が少なすぎると、耐塩化カルシウム性、燃料バリア性が悪くなる傾向がみられる。
【0019】
《アミノエチル化アクリルポリマー(C)》
上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)としては、例えば、ポリエチレンイミンを側鎖にグラフト化した1級アミノ基含有アクリル系ポリマー(以下、単に「1級アミノ基含有アクリル系ポリマー」と略す場合もある)等があげられる。この1級アミノ基含有アクリル系ポリマーは、例えば、エチレンイミンと、カルボキシル基とを反応させることにより得ることができる。
【0020】
上記1級アミノ基含有アクリル系ポリマーは、形態別に以下の(1)〜(3)の3種類に分けることができる。(1)エマルション形態をもった完全水系樹脂、(2)アミノ基部分を中和することにより製造できる水希釈性樹脂、(3)溶媒下で合成される溶剤系樹脂。
【0021】
上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)の粘度(mPa・s/25℃)は、40,000以下が好ましく、特に好ましくは2,000以下である。
【0022】
上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)のアミン水素当量〔アミン1molに相当する固形分重量(g)〕は、350〜1800(g−solid/eq)の範囲が好ましく、特に好ましくは800〜1400(g−solid/eq)の範囲である。
【0023】
上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)のアミン価(固形分1gに含まれるアミンmmol数)は、0.6〜2.9(mmol/g−solid)の範囲が好ましく、特に好ましくは0.7〜1.3(mmol/g−solid)の範囲である。
【0024】
上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)の重量平均分子量(MW)は、1〜10万の範囲が好ましく、特に好ましくは8〜10万の範囲である。
【0025】
上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)の具体例としては、日本触媒社製のポリメント NK−380〔粘度:2,000(mPa・s/25℃)以下、アミン水素当量:800〜1400(g−solid/eq)、アミン価:0.7〜1.3(mmol/g−solid)、MW:10万〕があげられる。
【0026】
上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)の含有量は、(A)および(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.4〜0.6重量部の範囲である。(C)の含有量が少なすぎると、得られるポリアミド樹脂の溶融粘度が低くなりすぎて、成形加工性が劣る傾向がみられ、(C)の含有量が多すぎると、得られるポリアミド樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて、成形加工性が劣る傾向がみられる。
【0027】
(A)と(B)とがアミン交換反応し、(C)と結合したポリアミド樹脂の溶融粘度は、200〜4000Pa・sの範囲が好ましく、特に好ましくは1000〜2000Pa・sの範囲である。ポリアミド樹脂の溶融粘度が低すぎても、高すぎても、形成加工性が悪くなる傾向がみられる。
【0028】
なお、本発明の樹脂組成物には、上記(A)〜(C)以外に、耐衝撃剤、可塑剤、充填剤、耐加水分解防止材、耐熱老化防止剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、柔軟成分、造核剤、滑剤等を、必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0029】
上記耐衝撃剤は、柔軟性、耐衝撃性を向上させる観点から使用され、例えば、アイオノマー樹脂、変性ポリオレフィン(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体等)、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリエステルアミドエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、アクリルゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0030】
上記耐衝撃剤の含有量は、(A)および(B)の合計100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜10重量部の範囲である。
【0031】
また、上記可塑剤としては、例えば、アルキルアミド類から選ばれた1種類以上の化合物であることが望ましく、例えば、N−エチル−o−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド、N−プロピル−p−トルエンスルホン酸アミド、p−トルエンスルホン酸1−エチルヘキシル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0032】
上記可塑剤の含有量は、(A)および(B)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜5重量部の範囲である。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記芳香族ポリアミド樹脂(A)、脂肪族ポリアミド樹脂(B)、アミノエチル化アクリルポリマー(C)に、必要に応じて耐衝撃剤等の他の成分を適宜配合し、2軸混練機を用いて混練することで調製することや、溶融成形時にこれらをミキシング付き単軸スクリュー等を用いて混練することにより直接調製することができる。本発明の樹脂組成物は、(A)と(B)とがアミン交換反応し、(C)が結合したポリアミド樹脂を含有している。上記アミノエチル化アクリルポリマー(C)として、前述した、ポリエチレンイミンを側鎖にグラフト化した1級アミノ基含有アクリル系ポリマーを使用する場合には、(A)と(B)とがアミン交換反応し、(C)の1級アミノ基とが結合(反応)したポリアミド樹脂を得ることができる。
【0034】
つぎに、本発明の燃料チューブについて説明する。
本発明の燃料チューブは、少なくとも一つの樹脂層を備え、この樹脂層が、本発明の燃料チューブ用樹脂組成物からなることが特徴である。
【0035】
本発明の燃料チューブの製法について説明する。すなわち、上述の方法に準じて、樹脂組成物を調製し、これをチューブ状に押し出し成形して、管状の樹脂層からなる単層構造の燃料チューブを作製することができる。
【0036】
押し出し成形時の温度(成形温度)は、320〜340℃が好ましく、特に好ましくは325〜335℃である。温度が低すぎると、増粘による押出成形ができなくなる傾向がみられ、温度が高すぎると、分解し、押出成形できなくなる傾向がみられる。
【0037】
押出速度は、通常1〜30m/minであり、好ましくは5〜20m/minである。また、スクリュー回転数は、通常10〜600rpmであり、好ましくは20〜150rpm、吐出量は、通常2g/min〜100kg/min、好ましくは20g/min〜3kg/minである。
【0038】
本発明の燃料チューブは、上記特殊な樹脂層のみからなる単層構造に限定されるものではなく、ホースの用途に応じて適宜、2層以上の多層構造とすることも可能であり、樹脂層の内周側もしくは外周側にゴム層や別の樹脂層を形成してもよく、また、ホースの構成層間に補強糸等からなる補強層を介在させても差し支えない。
【0039】
本発明の燃料チューブは、ホースの用途に応じて異なるが、ホース内径は、通常1〜69.5mm、ホース外径は、通常1.5〜70mmである。上記樹脂層の厚みは、通常0.25〜20mmであり、好ましくは0.5〜5mmである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す樹脂組成物の材料を準備した。
【0042】
《芳香族ポリアミド樹脂(A)》
ポリアミド9T(PA9T)(クラレ社製、ジェネスタN1001D)
《脂肪族ポリアミド樹脂(B)》
ポリアミド6(PA6)(東レ社製、アミランCM1017)
【0043】
《アミノエチル化アクリルポリマー(C)》
日本触媒社製、ポリメント NK−380〔粘度:2,000(mPa・s/25℃)以下、アミン水素当量:800〜1400(g−solid/eq)、アミン価:0.7〜1.3(mmol/g−solid)、MW:10万〕
【0044】
《エポキシ変性アクリルポリマー(C′)》
東亞合成社製、ARUFON UG4040
【0045】
《耐衝撃剤》
無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(三井化学社製、タフマーMH7020)
【0046】
〔実施例1〕
下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し、2軸混練機(日本製鋼所社製、TEX30α)で混練することにより、樹脂組成物を調製した。そして、これを押出成形機(プラスチック工学研究所社製、GT−25)を用いて、チューブ状に押し出し成形して、単層構造の燃料チューブ(内径:6mm、外径:8mm)を作製した。
なお、押し出し成形時の条件は、押出温度:330℃、押出速度:5m/min、スクリュー回転数:40rpm、吐出量:100g/minであった。
【0047】
〔実施例2〜5、比較例1〜4〕
各成分の配合量を下記の表1に示すように変更した以外は、実施例1に準じて、燃料チューブ(内径:6mm、外径:8mm)を作製した。
【0048】
【表1】
【0049】
上記のようにして得られた実施例および比較例について、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、上記表1に併せて示した。
【0050】
〔耐塩化カルシウム性〕
各燃料チューブを用い、以下のようにして耐塩化カルシウム性を評価した。すなわち、下記の(1)〜(3)を1サイクルとし、100サイクル未満で表面状態においてクラックが確認されたものを×、100サイクル以上、クラックが確認されなかったものを○とした。
(1)燃料チューブを80℃の水槽で飽和吸水させた。
(2)曲げR=30の固定治具に固定し、50%CaCl2液を全面塗布し、100℃×5時間乾燥した。
(3)乾燥後の燃料チューブを水洗し、表面状態を確認した。
【0051】
〔燃料バリア性〕
両端をスェージロックで密封したホースに、Fuel C〔トルエン:イソオクタン=50:50(容量基準)〕と、エタノールとの混合燃料液(FC/E10)〔Fuel C:エタノール=90:10(容量基準)〕を封入して、40℃で一カ月間放置して安定化した後、内容物(混合燃料)を排出した。つぎに、新規な混合燃料(FC/E10)を再度封入し、これを、所定の温度サイクル環境に放置し、24時間毎に燃料透過量を測定した。この操作を3回繰り返し、その3回の測定値中の最大値をテスト1回当たりの燃料透過量とした。評価は、燃料透過量が30(mg/m/day)以下のものを○、30(mg/m/day)を超えるものを×とした。
【0052】
〔成形加工性(溶融粘度)〕
実施例および比較例について、(A)と(B)とがアミン交換反応し、(C)と結合したポリアミド樹脂の溶融粘度を、280℃、150s-1で測定した。なお、一部の比較例は、アミン交換反応もしくは(C)と結合していないが、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂の溶融粘度を測定した。評価は、溶融粘度が200〜4000Pa・sの範囲にあるものを○、200Pa・s未満もしくは4000Pa・sを超えるものを×とした。
【0053】
上記表1の結果から、全実施例は、耐塩化カルシウム性、燃料バリア性、成形加工性が優れていた。なかでも、実施例5は耐衝撃剤を含有するため、低温衝撃性が特に優れていた。
なお、全実施例について、得られたポリアミド樹脂を質量分析(MS分析)した結果、PA9TとPA6とがアミン交換反応したポリアミド樹脂と、PA9Tと、PA6の少なくとも一つが、アミノエチル化アクリルポリマー(C)の1級アミノ基とが結合(反応)していることが確認できた。
【0054】
これに対して、比較例1は、アミノエチル化アクリルポリマー(C)を使用していないため、得られたポリアミド樹脂の溶融粘度が低く、成形加工性が劣っていた。
比較例2は、エポキシ変性アクリルポリマー(C′)を使用したため、アミノエチル化アクリルポリマー(C)を使用する場合に比べて、ポリアミド樹脂との反応が強く、ポリアミド樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて、成形加工性が劣っていた。
比較例3は、PA9Tのみを使用したため、粘度が高く、成形加工性が劣っていた。
比較例4は、PA6のみを使用したため、耐塩化カルシウム性および燃料バリア性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の燃料チューブは、自動車用の燃料チューブとして使用されるが、自動車のみならず、その他の輸送機械(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等の車両用燃料チューブとしても使用することができる。