特許第5883410号(P5883410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883410
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20160301BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20160301BHJP
   B28B 11/02 20060101ALI20160301BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20160301BHJP
   C04B 35/195 20060101ALI20160301BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   B28B11/02
   F01N3/022 C
   C04B35/16 A
   C04B38/06 D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-73178(P2013-73178)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-195783(P2014-195783A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】土屋 祐典
(72)【発明者】
【氏名】末信 宏之
(72)【発明者】
【氏名】保浦 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 佑一
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/014684(WO,A1)
【文献】 特開2010−221189(JP,A)
【文献】 特開2011−230028(JP,A)
【文献】 特開2006−110538(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/085029(WO,A1)
【文献】 特開2006−231162(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/095835(WO,A1)
【文献】 特開2013−49009(JP,A)
【文献】 特開2004−1365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
B01D 46/00
B28B 11/02
C04B 35/195
C04B 38/06
F01N 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コージェライト化原料(A)を含有する成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、一方の端面である第1端面から他方の端面である第2端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、
作製した前記ハニカム成形体の前記セルの開口部に、コージェライト化原料(B)を含有する成形原料および7.5〜15質量%の発泡樹脂を含み且つ前記ハニカム成形体との間の焼成変化率の差が−1.0〜+2.0%である目封止材を充填して目封止ハニカム成形体を作製する目封止ハニカム成形体作製工程と、
作製した前記目封止ハニカム成形体を焼成して、前記複数のセルのうちの所定のセルである第1セルの前記第1端面側の端部および残余のセルである第2セルの前記第2端面側の端部に多孔質の目封止部が配設されたハニカム構造体を作製するハニカム構造体作製工程と、を有し、
前記目封止材における焼成前後の寸法変化率(%)から、前記ハニカム成形体における焼成前後の寸法変化率(%)を減じたときの値を、前記焼成変化率の差とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記コージェライト化原料(B)は、アルミナおよび水酸化アルミニウムの両方、または、これらのうちの水酸化アルミニウムのみを含み、
前記コージェライト化原料(B)に含まれる前記アルミナの質量と前記水酸化アルミニウムの質量との合計に対する前記水酸化アルミニウムの質量の百分率比が20〜100%である請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記コージェライト化原料(B)は、平均粒子径5〜30μmのタルクを含む請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記コージェライト化原料(B)は、シリカを5〜20質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記コージェライト化原料(B)は、平均粒子径1〜5μmのシリカを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用フィルタとして使用可能なハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンなどから排出される粒子状物質(PM)を除去するための捕集フィルタとして、ハニカム構造体が用いられている。粒子状物質捕集フィルタとして用いるハニカム構造体としては、両端面の所定の位置に目封止部を備えた目封止ハニカム構造体が用いられている。
【0003】
ここで、目封止ハニカム構造体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、所定のセル(第1セル)の流体の入口側の端部および残余のセル(第2セル)の流体の出口側の端部に配設された目封止部とを備えている。この目封止部は、一般に、第1セルと第2セルとが交互に、いわゆる市松模様をなすように配置されている。このような目封止ハニカム構造体によれば、排ガスの入口側の端面からセル内に排ガスが流入すると、セル内に流入した排ガスが隔壁を通過する。そして、排ガスが隔壁を通過するときに、排ガス中に含有されるPMが隔壁により捕集される。そのため、隔壁を通過した排ガスが浄化ガスとして排出される。
【0004】
目封止ハニカム構造体は、坏土をハニカム形状に形作ったハニカム成形体におけるセルの開口部に、目封止部の材料となる目封止材を充填し、次いで焼成することにより作製される。ハニカム成形体の材料となる坏土および目封止部の材料となる目封止材は、ともにセラッミク原料を含有するものの、焼成の際にハニカム成形体と目封止材との間で焼成変化率に差が生じてしまう。
【0005】
焼成の際にハニカム成形体と目封止材との間で焼成変化率に差が生じてしまう場合としては、焼成時において、ハニカム成形体の収縮が目封止材の収縮よりも大きい時と、これとは逆に、目封止材の収縮がハニカム成形体の収縮よりも大きい時とに大別することができる。
【0006】
ハニカム成形体の方が目封止材と比べて大きく収縮する場合、焼成を経て得られるハニカム構造体において、目封止部のある端面部は、目封止部のない中央部と比べて、収縮が小さくなる。なぜなら、目封止材は焼成時にハニカム成形体よりも収縮しないため、この目封止材の低収縮にハニカム成形体の端面部が拘束されるからである。そのため、ハニカム構造体の端面部の径寸法が中央部の径より大きくなる。その結果、ハニカム構造体は、本来円柱形になるべきところが、鼓型になってしまう。このような鼓型の変形が顕著になると、ハニカム構造体の径を所定の寸法公差内に収めることが不可能になる。そのため、焼成後に、ハニカム構造体の外周を円筒形状になるように研削し、次いで外周コートをする必要が生じる。
【0007】
また、ハニカム成形体の方が目封止材と比べて大きく収縮する場合、上述のように目封止材の低収縮にハニカム成形体の端面部が拘束されるので、焼成を経て得られるハニカム構造体の端面部には圧縮応力が残留する。ただし、この残留した圧縮応力は、ハニカム構造体において耐熱衝撃性の低下の問題を生じさせる恐れが少ない。なぜなら、ハニカム構造体を粒子状物質捕集用のフィルタとして使用する場合、端面部に残留した圧縮応力は、堆積した粒子状物質を焼却除去する時に発生する引張応力によって相殺されるからである。
【0008】
一方、目封止材の方がハニカム成形体と比べて大きく収縮する場合、端面部において目封止材が過剰に収縮する。そのため、焼成を経て得られるハニカム構造体の端面部において、空隙が目封止部と隔壁との間に生じがちになる。こうした空隙は、目封止部の脱落の原因になったり、ハニカム構造体を粒子状物質捕集用のフィルタとして使用する際に粒子状物質の漏れの原因になったりする。また、目封止材の方がハニカム成形体と比べて大きく収縮する場合、上述の空隙が生じない時もあるが、このような時には、目封止部のある端面部は、目封止部のない中央部と比べて、収縮が大きくなる。なぜなら、目封止材は焼成時にハニカム成形体よりも多く収縮するため、この目封止材の高収縮にハニカム成形体の端面部が拘束されるからである。その結果、ハニカム構造体は、本来円柱形になるべきところが、樽型になってしまう。このような樽型の変形が顕著になると、ハニカム構造体の径を所定の寸法公差内に収めることが不可能になる。そのため、焼成後に、ハニカム構造体の外周を円筒形状になるように研削し、次いで外周コートをする必要が生じる。
【0009】
また、目封止材の方がハニカム成形体と比べて大きく収縮する場合、上述のように目封止材の高収縮にハニカム成形体の端面部が拘束されるので、焼成を経て得られるハニカム構造体の端面部には引張応力が残留する。ハニカム構造体を粒子状物質捕集フィルタとして用いる場合、堆積した粒子状物質を焼却除去する際に、ハニカム構造体の内部に高熱が発生する。この高熱によりハニカム構造体が膨張するため、ハニカム構造体に高い引張応力が発生する。上述のように、ハニカム成形体と目封止材との間で焼成変化率の差によって、ハニカム構造体の端面部に引張応力が残留している場合、粒子状物質の焼却に起因した引張応力と重畳してしまう。こうして生じた重畳した引張応力は、ハニカム構造体の構造的強度を超えてしまうことがある。したがって、目封止材の方がハニカム成形体と比べて大きく収縮する場合には、焼成を経て得られるハニカム構造体において、耐熱衝撃性が低下してしまう恐れがある。
【0010】
ハニカム構造体の耐熱衝撃性を低下させないためには、目封止材とハニカム成形体との間の焼成変化率の差を一定値以下に制限する必要がある。このような背景の下、ハニカム成形体と目封止材との間での焼成変化率の差を7%以下とする目封止ハニカム構造体の製造方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2004/085029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上述の目封止ハニカム構造体の製造方法によっても、依然として、焼成直後の目封止ハニカム構造体では、セルの延びる方向における端部の幅(端面の径)が中央部分の幅よりも大きくなり過ぎたり、あるいは小さくなり過ぎたりしてしまうことがある。
【0013】
さらに、ハニカム成形体は押出成形によって成形されるので、ハニカム成形体の隔壁は圧密度合いが高く、また、焼成を経て得られるハニカム構造体の隔壁において結晶が配向する傾向がある。これに対して、目封止材はハニカム成形体のセルの開口部に単純に圧入されるだけなので、セルの開口部に充填された目封止材の圧密度合いは低く、また、焼成を経て得られる目封止部において結晶の配向は生じにくい。こうした違いを反映して、ハニカム成形体および目封止材に同じ組成のセラミック原料を用いる場合であっても、ハニカム成形体と目封止材との間での焼成変化率には違いが生じてしまう。そのため、上述の目封止ハニカム構造体の製造方法では、ハニカム成形体と目封止材との間での焼成変化率の差を7%以下とされているものの、実際のところは、ハニカム成形体と目封止材との間での焼成変化率の差を−2.0〜+2.0%に収めることは非常に困難である。
【0014】
そして、ハニカム成形体と目封止材との間での焼成変化率の差を−2.0〜+2.0%に収めることができない場合には、焼成後の目封止ハニカム構造体の外周を研削し、寸法や形状を整える工程を要してしまう。外周研削を行うと、研削面にコートを施して外周壁を形成する必要がある。特に、従来の目封止ハニカム構造体では、大型化を図る場合に焼成後の外周研削と外周コートが必須になっている。
【0015】
さらに、ハニカム成形体と目封止材との間での焼成変化率の差を−2.0〜+2.0%に収めることで外周コートを不要とされた場合であっても、得られるハニカム構造体において耐熱衝撃性に劣ることがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下に示すハニカム構造体の製造方法である。
【0017】
[1] コージェライト化原料(A)を含有する成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、一方の端面である第1端面から他方の端面である第2端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、作製した前記ハニカム成形体の前記セルの開口部に、コージェライト化原料(B)を含有する成形原料および7.5〜15質量%の発泡樹脂を含み且つ前記ハニカム成形体との間の焼成変化率の差が−1.0〜+2.0%である目封止材を充填して目封止ハニカム成形体を作製する目封止ハニカム成形体作製工程と、作製した前記目封止ハニカム成形体を焼成して、前記複数のセルのうちの所定のセルである第1セルの前記第1端面側の端部および残余のセルである第2セルの前記第2端面側の端部に多孔質の目封止部が配設されたハニカム構造体を作製するハニカム構造体作製工程と、を有し、前記目封止材における焼成前後の寸法変化率(%)から、前記ハニカム成形体における焼成前後の寸法変化率(%)を減じたときの値を、前記焼成変化率の差とするハニカム構造体の製造方法。
【0018】
[2] 前記コージェライト化原料(B)は、アルミナおよび水酸化アルミニウムの両方、または、これらのうちの水酸化アルミニウムのみを含み、前記コージェライト化原料(B)に含まれる前記アルミナの質量と前記水酸化アルミニウムの質量との合計に対する前記水酸化アルミニウムの質量の百分率比が20〜100%である前記[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0019】
[3] 前記コージェライト化原料(B)は、平均粒子径5〜30μmのタルクを含む前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0020】
[4] 前記コージェライト化原料(B)は、シリカを5〜20質量%含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0021】
[5] 前記コージェライト化原料(B)は、平均粒子径1〜5μmのシリカを含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、セラミック原料を含有する成形原料および7.5〜15質量%の発泡樹脂を含み且つハニカム成形体との間の焼成変化率の差が−1.0〜+2.0%である目封止材を用いることにより、ハニカム構造体の端部と中央部分との間で焼成時に生じる寸法差の幅を抑えることが可能である。具体的には、ハニカム構造体の端部と中央部との直径における焼成変化率差を−0.2〜+0.35%(直径143.8mmのハニカム構造体で端部と中央部との間で焼成前の寸法差が無かった場合には、−0.29〜0.50mm)に抑制されている。
【0024】
また、本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、目封止材に所定の構成を取ることにより、焼成時に目封止材とハニカム成形体の一体化を促進し、上述の空隙が生じることを防止している。
【0025】
また、本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、セラミック原料を含有する成形原料および7.5〜15質量%の発泡樹脂を含み且つハニカム成形体との間の焼成変化率の差が−1.0〜+2.0%である目封止材を用いることにより、耐熱衝撃性の低下を防止し、また、焼成時に目封止材とハニカム成形体の一体化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1ニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0028】
1.ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態は、ハニカム成形体作製工程と、目封止ハニカム成形体作製工程と、ハニカム構造体作製工程とを有する。ハニカム成形体作製工程では、コージェライト化原料(A)を含有する成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形する。この押出成形により、一方の端面である第1端面から他方の端面である第2端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を作製する。目封止ハニカム成形体作製工程では、作製したハニカム成形体のセルの開口部に、コージェライト化原料(B)を含有する成形原料、水、結合剤、分散剤、界面活性剤および7.5〜15質量%の発泡樹脂を含み且つハニカム成形体との間の焼成変化率の差が−1.0〜+2.0%である目封止材を充填して目封止ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体作製工程では、作製した目封止ハニカム成形体を焼成して、複数のセルのうちの所定のセルである第1セルの第1端面側の端部および残余のセルである第2セルの第2端面側の端部に多孔質の目封止部が配設されたハニカム構造体を作製する。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法によれば、7.5〜15質量%の発泡樹脂を含み且つハニカム成形体との間の焼成変化率の差が−1.0〜+2.0%である目封止材を用いることにより、ハニカム構造体の端部と中央部分との間で焼成時に生じる寸法差の幅を抑えることが可能である。上記のように寸法差の幅を抑えることが可能であるため、本実施形態のハニカム構造体の製造方法によれば、焼成後にハニカム構造体の外周を研削し、研削したハニカム構造体の外周を外周コート材でコートする工程を省くことが可能である。
【0030】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法の各工程について、さらに詳しく説明する。
【0031】
1−1.ハニカム成形体作製工程:
ハニカム成形体作製工程では、成形原料を混練して得られた坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る。
【0032】
成形原料は、コージェライト化原料(A)に分散媒および添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤などを挙げることができる。分散媒としては、水などを挙げることができる。
【0033】
「コージェライト化原料(A)」とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、およびシリカを所定の配合で調製することにより、コージェライト化原料(A)を得ることができる。
【0034】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、コージェライト化原料(A)100質量部に対して、0.2〜8質量部であることが好ましい。
【0035】
造孔材は、焼成により気孔を形成するものであれば特に限定されるものではない。造孔材としては、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲルなどを挙げることができる。造孔材の含有量は、コージェライト化原料(A)100質量部に対して、0.5〜25質量部であることが好ましい。
【0036】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどを用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよい。また、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、コージェライト化原料(A)100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましい。
【0037】
分散媒の含有量は、コージェライト化原料(A)100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましい。
【0038】
使用するコージェライト化原料(A)(骨材粒子)の粒子径および配合量(例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、およびシリカの粒子径や配合量)、ならびに添加する造孔材の粒子径および配合量を調整することにより、所望の気孔率、平均細孔径の多孔質基材を得ることができる。
【0039】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はない。例えば、ニーダー、真空土練機などを用いる方法を挙げることができる。
【0040】
押出成形では、坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る。押出成形は、口金を用いて行うことができる。口金に関しては、ハニカム成形体におけるセル形状、隔壁の交差部の形状、隔壁厚さ、セル密度に対応させたかたちで、スリット形状(スリットに取り囲まれたピンの形状)、スリット幅、ピンの密度などを適宜設計すればよい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0041】
こうして、ハニカム成形体を得ることができる。ハニカム成形体は、一方の端面である第1端面から他方の端面である第2端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有する。
【0042】
1−2.目封止ハニカム成形体作製工程:
目封止ハニカム成形体作製工程で用いる目封止材は、コージェライト化原料(B)を含有する成形原料および1.0〜15質量%の発泡樹脂を含むものである。さらに、目封止ハニカム成形体作製工程で用いる目封止材は、ハニカム成形体との間の焼成変化率の差が−1.0〜+2.0%であるものである。
【0043】
本明細書において「ハニカム成形体との間の焼成変化率の差」とは、「目封止材における焼成前後の寸法変化率(%)」と「ハニカム成形体における焼成前後の寸法変化率(%)」との差を意味する。なお、以降において、説明の便宜上、「『目封止材における焼成前後の寸法変化率(%)』と『ハニカム成形体における焼成前後の寸法変化率(%)』との差」のことを、「焼成変化率の差」と称することにする。また、「目封止材における焼成前後の寸法変化率(%)」が負の値になる場合には、目封止材は焼成によって収縮することを意味する。「ハニカム成形体における焼成前後の寸法変化率(%)」が負の値になる場合には、ハニカム成形体が焼成によって収縮することを意味する。通常、目封止材およびハニカム成形体は焼成によって収縮する傾向がある。こうした通常のケースにおいて、「焼成変化率の差」が負の値の場合には、目封止材がハニカム成形体よりも焼成によってより大きく収縮していることになる。
【0044】
発泡樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン、アクリルニトリルなどの共重合物を挙げることができる。
【0045】
目封止材中の発泡樹脂の含有割合は、固形分含量で、上述したように、通常、1.0〜15質量%である。発泡樹脂を添加することで気孔率を上げることが出来る。気孔率を高める、すなわち、気孔を多くすることにより、焼成での収縮を大きくすることが出来る。目封止材中の発泡樹脂の含有割合が1.0質量%未満である場合、気孔率が低く、目封止部と隔壁との剛性差により、目封部と隔壁との境界でクラックが生じ易くなる。目封止材中の発泡樹脂の含有割合が15質量%超である場合、目封止部の気孔率が高くなりすぎたり、気孔径が大きくなりすぎたりするおそれがある。過度な高気孔率や過度な大気孔径の場合、ハニカム構造体を粒子状物質捕集用のフィルタとして使用する際に捕集効率が低下してしまうおそれがある。目封止材中の発泡樹脂の含有割合は、1.5〜13質量%であることが好ましく、特に、2.0〜11質量%であることがより好ましい。また、発泡樹脂の含有割合が上記範囲内であると、発泡樹脂が水分を保持するため、後述の「摺込み法」で目封止材を充填する際に「ヒケ」が発生してしまうことを防止できる。
【0046】
発泡樹脂の平均粒子径は、2〜200μmであることが好ましく、3〜180μmであることが更に好ましく、4〜160μmであることが特に好ましい。発泡樹脂の平均粒子径が上記範囲であることによって、目封止部内を貫通する気孔(連通孔)が適度に形成される。そのため、ハニカム構造体を粒子状物質捕集用のフィルタとして使用する際に圧力損失の増加を抑えつつ捕集効率を維持できる。発泡樹脂の平均粒子径が2μm未満である場合、連通孔の数が減少するおそれがある。その結果、圧力損失が上昇するおそれがある。発泡樹脂の平均粒子径が200μm超である場合、連通孔の数が増加するおそれがある。その結果、捕集効率が低下するおそれがある。
【0047】
発泡樹脂の殻壁厚さは、0.01〜1.00μmであることが好ましく、0.10〜0.5μmであることが更に好ましく、0.15〜0.45μmであることが特に好ましい。発泡樹脂の殻壁厚さが0.01μm未満である場合、目封止材をハニカム構造部に充填する際に発泡樹脂が潰れ易くなるおそれがある。そのため、気孔形成の効果が低下してしまう恐れがある。発泡樹脂の殻壁厚さが1.00μm超である場合、発泡樹脂の重量が大きくなるため、焼成の際にクラックが発生し易くなる恐れがある。
【0048】
特に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、隔壁の材料としてコージェライト化原料(A)を用い、かつ、目封止部の材料(目封止材の原料)としてコージェライト化原料(B)を用いる。このように隔壁および目封止部を同種の材料から形成することにより、「焼成変化率の差」を−1.0〜+2.0%の範囲内に調整することが容易になる。
【0049】
本明細書において「コージェライト化原料(A)」とは、隔壁の材料に含まれるコージェライト化原料のことを意味する。本明細書において「コージェライト化原料(B)」とは、目封止部の材料(目封止材)に含まれるコージェライト化原料のことを意味する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、具体的な形態により、「コージェライト化原料(A)」の組成と「コージェライト化原料(B)」の組成とが、同じ場合や、異なる場合がある。
【0050】
コージェライト化原料(B)は、アルミナおよび水酸化アルミニウムの両方、または、これらのうちの水酸化アルミニウムのみを含み、コージェライト化原料(B)に含まれるアルミナの質量と水酸化アルミニウムの質量との合計に対する水酸化アルミニウムの質量の百分率比(以下、説明の便宜上、「水酸化アルミニウム比率」という)が20〜100%であることが好ましい。「水酸化アルミニウム比率」を20〜100%の範囲内で適宜変えることにより、「焼成変化率の差」を容易に調整することが可能になる。また、「水酸化アルミニウム比率」を増やすことにより、目封止部における焼成時の収縮を大きくすることが可能になる。「水酸化アルミニウム比率」が20%未満である場合、隔壁と目封止部との間での熱膨張率の差が生じ易くなる。そのため、ススを燃焼させる際に温度が上がると、焼成を経て得られるハニカム構造体において、目封止部との接触部分の近傍の隔壁でクラックが発生し易くなる。なお、「水酸化アルミニウム比率」が100%の場合には、コージェライト化原料(B)にアルミナが含まれていないことになる。
【0051】
コージェライト化原料(B)がアルミナを含む場合、アルミナの平均粒子径は0.5〜20μmであることが好ましい。コージェライト化原料(B)に含まれるアルミナの平均粒子径が0.5μm未満の場合、後述の「摺込み法」で目封止材を充填する際に摺込み性に劣る恐れがある。コージェライト化原料(B)に含まれるアルミナの平均粒子径が20μm超の場合、通常より焼成時間を長く設定する必要が生じる場合がある。さらに、コージェライト化原料(B)に含まれるアルミナの平均粒子径は、1.0〜15μmであることがより好ましく、特に、1.5〜10μmであることが最も好ましい。
【0052】
コージェライト化原料(B)は、平均粒子径5〜30μmのタルクを含むことが好ましい。コージェライト化原料(B)が平均粒子径5〜30μmのタルクを含むことにより、焼成収縮率を調整しやすく、「焼成変化率の差」を−1.0〜+2.0%の範囲内に容易に合わせられる。コージェライト化原料(B)に含まれるタルクの平均粒子径が5μm未満の場合、セルの開口部に目封止材を充填する際に目封止材の流動性が悪く、目封止部を所望の深さにすることが困難になる恐れがある。コージェライト化原料(B)に含まれるタルクの平均粒子径が30μm超の場合、焼成で収縮しづらく、「焼成変化率の差」を−1.0〜+2.0%の範囲内に合わせることが困難になる恐れがある。さらに、コージェライト化原料(B)に含まれるタルクの平均粒子径は、6〜28μmであることがより好ましく、特に、7〜26μmであることが最も好ましい。
【0053】
コージェライト化原料(B)はシリカを5〜20質量%含むことが好ましい[但し、上記の「質量%」はコージェライト化原料(B)の全量を100質量%とする]。コージェライト化原料(B)中のシリカの含有量が5質量%未満である場合、コージェライト化原料(B)に含まれるカオリン量が多くなりすぎ、焼成時にキレが発生し易くなる恐れがある。コージェライト化原料(B)中のシリカの含有量が20質量%超である場合、焼成で収縮しづらくなるため、焼成変化率を基材に合わせることが困難になる恐れがある。さらに、コージェライト化原料(B)中のシリカの含有量は、7〜18質量%であることがより好ましく、特に、9〜16質量%であることが最も好ましい(但し、上記の「質量%」は目封止材のコージェライト化原料(B)の全量を100質量%とする)。
【0054】
また、コージェライト化原料(B)は、平均粒子径1〜5μmのシリカを含むことが好ましい。コージェライト化原料(B)が平均粒子径1〜5μmのシリカを含むことにより、目封止材をセルの開口部に充填する際に、目封止材と隔壁とのなじみが優れる。このため焼成後に目封止部と隔壁との間に隙間が生じにくい。コージェライト化原料(B)に含まれるシリカの平均粒子径が1μm未満の場合、目封止材をセルの開口部に充填した際に、目封止材に含まれる水分が隔壁に吸収され、これに伴って、目封止材が隔壁の方に偏ってしまいやすい。その結果として、目封止部にヒケが生じ、スス漏れの原因となる恐れがある。コージェライト化原料(B)に含まれるシリカの平均粒子径が5μm超の場合、目封止材と隔壁との馴染みが不十分になり、目封止部と隔壁との間に隙間が生じる可能性がある。その結果、ハニカム構造体を粒子状物質捕集用のフィルタとして使用する際に、粒子状物質の漏れの原因となる恐れがある。さらに、コージェライト化原料(B)に含まれるシリカの平均粒子径は、1.5〜4μmであることがより好ましく、特に、2〜3μmであることが最も好ましい。
【0055】
目封止材は、上記セラミック原料を含有する成形原料および発泡樹脂以外に、水、結合剤、分散剤、界面活性剤などの添加剤などを含んでいてもよい。
【0056】
目封止材の粘度は、30〜2000dPa・sであることが好ましい。目封止材の粘度が30〜2000dPa・sであることにより、セルの開口部への目封止材の充填を十分なものとできる。また、目封止材をセルの開口部に充填する際に、目封止材の垂れの発生を抑えられる。目封止材の粘度が30dPa・s未満である場合、目封止材をセルの開口部に充填する際に、目封止材が垂れる恐れがある。目封止材の粘度が2000dPa・s超の場合、セルの開口部への目封止材の充填性が悪化し、目封止部を所望の深さまで設けることが出来ない可能性がある。さらに、目封止材の粘度は、40〜1500dPa・sであることがより好ましく、特に、50〜1000dPa・sであることが最も好ましい。
【0057】
次に、ハニカム成形体に目封止材を充填して、目封止部を形成し、目封止ハニカム成形体を得る。
【0058】
まず、ハニカム成形体に形成されている複数のセルのうちの所定のセルを第1セルと定め、残余のセルを第2セルと定める。そして、第1セルについては、第1端面側の端部に目封止材を充填する。第2セルについては、第2端面側の端部に目封止材を充填する。
【0059】
目封止材をセルの開口部に充填する際には、次の方法(説明の便宜上、「摺込み法」ということがある)を用いることができる。ハニカム成形体の一方の端面(例えば、第1端面)にマスクを貼り付ける。次に、レーザーなどの公知の手段により、マスクの、所定のセルを塞いでいる部分に孔を開ける。次に、ハニカム成形体を、マスクを貼り付けた側の端面(一方の端面)が上方を向くように配置する。次に、上方を向いた端面に、セラミック原料を含有する成形原料及び上記発泡樹脂を含有する目封止材を連続して摺り込む。このようにして、マスクに孔が形成されている残余のセルの他方の端部に上記目封止材を充填する。
【0060】
あるいは、以下のマスキング工程と圧入工程とを有する方法を用いてもよい。マスキング工程は、ハニカム成形体の一方の端面(例えば、第1端面)にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカム成形体の、シートが貼り付けられた側の端面」を目封止材が貯留された容器内に圧入して、目封止材をハニカム成形体のセル内に圧入する工程である。目封止材をハニカム成形体のセル内に圧入する際には、目封止材は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0061】
次に、ハニカム成形体に充填された目封止材を乾燥させるとよい。なお、ハニカム成形体の両端部に目封止材料を充填した後に、目封止材料を乾燥させてもよいし、ハニカム成形体の一方の端部に充填した目封止材料を乾燥させた後に、他方の端部に目封止材料を充填し、その後、他方の端部に充填した目封止材料を乾燥させてもよい。
【0062】
1−3.ハニカム構造体作製工程:
ハニカム構造体作製工程では、上述の目封止ハニカム成形体を焼成する。焼成温度は、ハニカム成形体の材質によって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、3〜10時間程度とすることが好ましい。
【0063】
ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
【0064】
また、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0065】
なお、上述のようにハニカム成形体に目封止材を充填するのではなく、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得た後、ハニカム焼成体の所定のセルの一方の端面側の端部に目封止材を充填してもよい。
【0066】
2.ハニカム構造体:
次に、上述の本実施形態のハニカム構造体の製造方法により得られるハニカム構造体について説明する。
【0067】
上述の本実施形態のハニカム構造体の製造方法により得られるハニカム構造体の一実施形態は、図1および図2に示すハニカム構造体100のように、多孔質の隔壁5を有するハニカム構造部6と多孔質の目封止部8とを備えている。隔壁5は、一方の端面である第1端面2から他方の端面である第2端面3まで貫通し流体の流路となる複数のセル4を区画形成している。目封止部8は、複数のセル4のうちの所定のセルである第1セル4aの第1端面2側の端部および残余のセルである第2セル4bの第2端面3側の端部に配設されている。ハニカム構造部6では、第1セル4aと第2セル4bとが交互に配置されている。そのため、第1端面2および第2端面3では、目封止部8がいわゆる市松模様をなすように配置されている。ハニカム構造体100は、ハニカム構造部6の外周に外周壁7を更に有している。なお、ハニカム構造体は、必ずしも外周壁7を有する必要はない。なお、図1、ハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0068】
2−1.ハニカム構造部:
隔壁5の気孔率は、30〜80%であることが好ましく、35〜75%であることが更に好ましく、40〜70%であることが特に好ましい。隔壁5の気孔率が上記範囲であると、圧力損失を低減した上で、隔壁5の構造的強度を保持できる。
【0069】
本明細書において「隔壁5の気孔率」とは、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0070】
隔壁5の厚さは、0.05〜1.25mmであることが好ましく、0.075〜1.00mmであることが更に好ましく、0.10〜0.75mmであることが特に好ましい。隔壁5の厚さが0.05mm未満であると、隔壁5の構造的強度が不足してしまう恐れがある。隔壁5の厚さが1.25mm超であると、圧力損失が上昇する傾向にある。
【0071】
本明細書において「隔壁5の厚さ」とは、セルの延びる方向に対して垂直な断面において、隣接する2つのセル4を区画する隔壁5の厚さのことを意味する。「隔壁5の厚さ」は、例えば、画像解析装置(ニコン社製、商品名「NEXIV、VMR−1515」)によって測定することができる。
【0072】
隔壁5の平均細孔径は、3〜50μmであることが好ましく、5〜40μmであることが更に好ましく、7〜30μmであることが特に好ましい。隔壁5の平均細孔径が3μm未満であると、圧力損失が上昇する傾向にある。隔壁5の平均細孔径が50μm超であると、捕集効率が低下する傾向にある。本明細書において「隔壁5の平均細孔径」とは、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0073】
ハニカム構造部6のセル密度は、7.75〜93.00個/cmであることが好ましく、15.50〜77.50個/cmであることが更に好ましく、23.25〜62.00個/cmであることが特に好ましい。ハニカム構造部6のセル密度が7.75個/cm未満であると、排ガスとハニカム構造部6との接触面積が十分に得られない傾向にある。ハニカム構造部6のセル密度が93.00個/cm超であると、圧力損失が上昇する傾向にある。本明細書において「セル密度」とは、セルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たり(1cm当たり)のセルの個数のことである。
【0074】
セル4の形状は、セルの延びる方向に直交する断面の形状において、特に制限はなく、例えば、四角形、三角形、八角形などの多角形、円形、楕円形などとすることができる。
【0075】
セルの開口率は、30〜90%であることが好ましく、40〜90%であることが更に好ましく、50〜90%であることが特に好ましい。セルの開口率が30%未満である場合、圧力損失が上昇する傾向にある。セルの開口率が90%超である場合、ハニカム構造部6の強度が十分に得られない傾向にある。本明細書において「セルの開口率」とは、ハニカム構造部6のセルの延びる方向に垂直な断面において、ハニカム構造部6全体の断面積に対する全てのセル4の断面積の合計の割合(百分率比)である。
【0076】
外周壁7の厚さは、特に限定されない。外周壁7の厚さは、0.025〜0.500mmであることが好ましく、0.050〜0.475mmであることが更に好ましく、0.075〜0.450mmであることが特に好ましい。外周壁7の厚さが0.025mm以上であることにより、外周壁7の構造的強度が保持できる。外周壁7の厚さが0.500mm超であると、圧力損失が大きくなる傾向にある。
【0077】
ハニカム構造部6の形状は、特に限定されない。円筒形状、底面が楕円形の筒形状、底面が四角形、五角形、六角形等の多角形の筒形状等が好ましく、円筒形状であることが更に好ましい。また、ハニカム構造部6(ハニカム構造体100)の大きさは、特に限定されない。ハニカム構造部6(ハニカム構造体100)のセルの延びる方向における長さは、50〜500mmであることが好ましい。また、例えば、ハニカム構造部6(ハニカム構造体100)の外形が円筒形の場合、その底面の直径は、50〜800mmであることが好ましい。
【0078】
隔壁5は、コージェライトを主成分とするものである。隔壁5の主成分がコージェライトであることにより、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を得ることができる。なお、「隔壁5がコージェライトを主成分とする」というときは、コージェライトが隔壁5に50質量%以上含有されていることを意味する。
【0079】
外周壁7は、コージェライトを主成分とするものであることが好ましい。コージェライトであると、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を得ることができるためである。外周壁7のその他の材質としては、例えば、以下の群から選択される少なくとも1種であってもよい。即ち、外周壁7の材質としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0080】
2−2.目封止部:
目封止部8は、多孔質であるため目封止部8には複数の細孔が形成されている。
【0081】
また、目封止部8は、コージェライトを主成分とするものである。目封止部8の主成分がコージェライトであることにより、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を得ることができる。なお、「目封止部8がコージェライトを主成分とする」というときは、コージェライトが目封止部8に50質量%以上含有されていることを意味する。
【0082】
目封止部8の気孔率は、30〜80%であることが好ましい。目封止部8の気孔率が30%未満である場合、圧力損失が増大してしまう。目封止部8の気孔率が80%超である場合、目封止部の強度が低くなりすぎ、また、使用時に目封止部8が抜け落ちてしまう恐れがある。また、目封止部8の気孔率が80%超である場合、ハニカム構造体100を粒子状物質捕集用のフィルタとして使用する際に、粒子状物質が漏れ易くなる。さらに、目封止部8の気孔率は、35〜75%であることがより好ましく、特に、40〜70%であることが最も好ましい。
【0083】
本明細書において「目封止部8の気孔率」とは、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0084】
また、目封止部8の気孔率は、隔壁5の気孔率と比較して、同じまたは高いことが好ましく、さらに、2%以上高いことがより好ましく、特に、4%以上高いことが最も好ましい。目封止部8の気孔率が隔壁5の気孔率と比較して同じまたは高い場合には、隔壁5と目封止部8との境界において剛性差が抑えられ、その結果、クラックの発生を抑制可能になる。
【0085】
目封止部8の平均細孔径は、4〜70μmであることが好ましく、7〜60μmであることが更に好ましく、10〜50μmであることが特に好ましい。上記平均細孔径が上記範囲であると、圧力損失の上昇を抑え、捕集効率を維持できる。目封止部8の平均細孔径が4μm未満であると、圧力損失が増大する傾向にある。目封止部8の平均細孔径が70μm超であると、捕集効率が低下する傾向にある。
【0086】
目封止部8の深さは、1〜25mmであることが好ましく、2〜20mmであることが更に好ましい。ここで、目封止部8の深さとは、目封止部8の、セル4の延びる方向の長さを意味する。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
参考例1)
コージェライト化原料(A)として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、およびシリカを使用した。このコージェライト化原料100質量部に、造孔材を1質量部、分散媒を32質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を1質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。分散媒として水を使用し、造孔材としては平均粒子径40μmの発泡樹脂を使用した。有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0089】
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形して、第1端面から第2端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を作製した。ハニカム成形体は、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が四角形で、全体形状が円柱形であった。
【0090】
次に、作製したハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させて乾燥したハニカム成形体(ハニカム乾燥体)を得た。その後、ハニカム乾燥体の両端部を切断して所定の寸法に整えた。なお、ハニカム乾燥体では、中心軸方向(セルの延びる方向)における中央部の直径と、端面の直径とが同じであった。
【0091】
次に、ハニカム乾燥体の第1端面にマスクを貼り付けた。このとき、第1端面におけるセルの開口は全てマスクにより塞がれるようにした。次に、レーザーを照射することにより、マスクの所定の部分(即ち、所定のセルを塞いでいる部分)に孔を開けた。
【0092】
次に、このハニカム乾燥体の、マスクを貼り付けた側の端面(第1端面)を上に向け、自動印刷機のゴムベラを用いて所定のセルの第1端面側の開口部に目封止材を連続して摺り込んだ。具体的には、新たな目封止材を追加することなく複数回に分けて、予め用意した目封止材をセルの開口部に摺り込んだ。このようにして、所定のセル(第1セル)の第1端面側の端部に上記目封止材を充填した。
【0093】
なお、目封止材は、コージェライト化原料(B)と5.0質量%の発泡樹脂(平均粒子径40μm、殻壁厚さ0.2μmのアクリルニトリルの共重合物)と35質量%の水と、有機バインダ2%、分散剤1%とからなるものであった。なお、コージェライト化原料(B)には、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、およびシリカを使用した。コージェライト化原料(B)に関する詳細な条件は、表1に示す。さらに、目封止材は、ハニカム成形体との間の焼成変化率の差が0.0%であった(表1)。目封止材の粘度(25℃)は、280dPa・sであった。なお、目封止材の粘度は、回転粘度計により測定した。
【0094】
次に、ハニカム乾燥体の第2端面にマスクを貼り付けた。このとき、第2端面におけるセルの開口は全てマスクにより塞がれるようにした。次に、レーザーを照射することにより、マスクの所定の部分(即ち、第2セルを塞いでいる部分)に孔を開けた。
【0095】
次に、このハニカム乾燥体の、マスクを貼り付けた側の端面(第2端面)を上に向け、上記第1端面と同様にして自動印刷機のゴムベラを用いて残余のセル(第2セル)の第2端面側の開口部に上記目封止材を連続して摺り込んだ。具体的には、第1セルの第1端面側の端部に目封止材を充填する場合と同様に、新たな目封止材を追加することなく複数回に分けて、予め用意した1種類の目封止材をセルの開口部に摺り込んだ。このようにして、第2セルの第2端面側の端部に上記目封止材を充填した。
【0096】
次に、上記目封止材を充填したハニカム乾燥体を熱風乾燥機で乾燥した。その後、1410〜1440℃で5時間焼成した。このようにしてハニカム構造体を作製した。
【0097】
得られたハニカム構造体は、公称直径が143.8mmであり、中心軸方向の長さが152.4mmであった。ハニカム構造体の直径Dに対する中心軸方向の長さLの比の値(L/D)が1.06であった。ハニカム構造体のセル密度は46.5個/cmであった。隔壁の厚さは0.3mmであった。ハニカム構造体の両端面におけるセルの開口率はそれぞれ62.8%であった。隔壁の気孔率は48%であった。隔壁の平均細孔径は12μmであった。なお、上記の「公称直径」とは、本製品の狙い直径中心値のことを意味する。
【0098】
(実施例2〜4)
実施例2〜4のハニカム構造体については、各条件を表1に示すように変更した以外は、参考例1と同様に作製した。
【0099】
(比較例1,2)
比較例1,2のハニカム構造体については、各条件を表1に示すように変更した以外は、参考例1と同様に作製した。
【0100】
【表1】
【0101】
参考例1、実施例〜4および比較例1,2のハニカム構造体について、[隔壁の気孔率]、[目封止部の気孔率]、[端面と中央部との寸法差の比率]、[外周コートの要否]、[耐熱衝撃性]の各評価を行った。各評価の評価方法を以下に示す。
【0102】
[隔壁の気孔率]
隔壁の気孔率(%)は、水銀ポロシメーター(水銀圧入法)によって測定した。水銀ポロシメーターとしては、Micromeritics社製、商品名:Auto Pore III 型式9405を用いた。
【0103】
[目封止部の気孔率]
目封止部の気孔率(%)は、水銀ポロシメーター(水銀圧入法)によって測定した。水銀ポロシメーターとしては、Micromeritics社製、商品名:Auto Pore III 型式9405を用いた。
【0104】
[端面と中央部との寸法差の比率]
「端面と中央部との寸法差の比率」を下記式(I)により算出した。さらに、端面の直径と、上述の公称直径143.8mmとの差(表1中では「公称直径143.8mmとの差」)を算出した。
式(I):
端面と中央部との寸法差の比率(%)=(焼成後の端面部と中央部との直径差−焼成前(乾燥後)の端面部と中央部の直径差)/143.8×100
【0105】
[外周コートの要否]
上述の「端面と中央部との寸法差の比率」が−0.35〜0.35%である場合を「外周コートの要否」が「否」、それ以外である場合を「外周コートの要否」が「要」と判定した。なお、「外周コートの要否」が「否」である場合とは、「端面と中央部との寸法差の比率」が0.00%およびその近傍に収まっているため、焼成後のハニカム構造体の外周研削をし、次いで外周コートをする必要がないことを意味する。
【0106】
[耐熱衝撃性]
ハニカム構造体をDPFとして用い、順次、煤(スート)の堆積量を増加させて、再生(煤の燃焼)を行い、クラックが発生する限界を確認した。先ず、ハニカム構造体の外周に、保持材としてセラミック製非熱膨張性マットを巻き、ステンレス鋼(SUS409)製のキャニング用缶体に押し込んで、キャニング構造体とした。その後、ディーゼル燃料(軽油)の燃焼により発生させた煤を含む燃焼ガスを、ハニカム構造体の一方の端面(第1端面)より流入させ、他方の端面(第2端面)より流出させることによって、煤をハニカム構造体内に堆積させた。そして、一旦、室温(25℃)まで冷却した後、ハニカム構造体の第1端面より、650℃の燃焼ガスを流入させた。ここで、煤が燃焼することによりハニカム構造体の圧力損失が低下したときに、燃焼ガスの流量を減少させることによって、煤を急燃焼させた。前記急燃焼後に、ハニカム構造体におけるクラックの発生の有無を確認した。クラックの発生を確認しなかった場合には、再び、順次、煤(スート)の堆積量を増加させて再生(煤の燃焼)を行うことで、ハニカム構造体内部に発生する温度を上昇させていった。この一連の試験の中で、クラックが生じなかったもっとも高い温度を「耐熱衝撃温度」とした。また、「耐熱衝撃性の評価」における「評価」の欄は、耐熱衝撃温度が1260℃以上の場合を、「OK(合格)」とし、耐熱衝撃温度が1260℃未満の場合を、「NG(不合格)」とした。表1には、実施例1のハニカム構造体の耐熱衝撃温度との差を示す。
【0107】
[考察]
実施例〜4は、外周コートの必要がなく、耐熱衝撃性も良好であった。これに対して、比較例1は、耐熱衝撃性に劣った。比較例2は、外周コートが必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、排ガス浄化用フィルタとして使用可能なハニカム構造体の製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0109】
2:第1端面、3:第2端面、4:セル、4a:第1セル、4b:第2セル、5:隔壁、6:ハニカム構造部、7:外周壁、8:目封止部、100:ハニカム構造体。
図1
図2