(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オフィスやビル等で、手を洗った後の手拭きとして紙製の使い捨てのハンドタオルが広く用いられている。このハンドタオルには、吸水性が高く、バルク(嵩)が高く、さらに水に濡れても高い強度が要求される。しかしながら、吸水性を向上させるために坪量を高くすると、コストが高くなるという問題がある。又、強度が高くなり過ぎると、ハンドタオルが硬くなって手触りや使用感が低下することがある。
【0003】
嵩高感があり、柔軟な風合いを有した紙製品を得る方法として、所定範囲の繊維長や繊維粗度を有する原料パルプに柔軟剤(カチオン系薬剤)を添加して抄紙した後、クレープ加工を施し、パルプ繊維の繊維間結合を抑えて嵩高なクレープ紙を得る方法が知られている(特許文献1)。
又、高バルクな紙製品を得るための機械的処理として、抄紙工程の脱水乾燥工程において、湿紙をプレス脱水せずに通風乾燥する方法TAD(through air drying;通風乾燥)方式(特許文献2)や、湿紙形成から乾燥工程の間において湿紙ウェブに凹凸処理を行う方法がある。
さらに、抄造後のウェブにエンボスなどにより機械的に凹凸処理を行う方法がある。さらに、これら方法を組み合わせる場合もある。
しかしながら、上記した柔軟剤による内添法の場合、薬剤コストが高いと共に、パルプの繊維間結合が低下するためにウェブの強度が低下し、さらに紙粉の発生が増加し、吸水度が低下するという問題がある。
又、上記したTAD方式の場合、乾燥エネルギーのコストが膨大になる。さらに、抄紙後に凹凸処理する方法では、繊維間の結合や紙層構造が破壊されてウェブ強度が低下したり、ウェブの見かけ嵩は高くなるがウェブ自体の紙層嵩(キャリパー)を高くする(ふんわり感をだす)ことが難しいという問題がある。
【0004】
一方、従来の紙製品の抄造においては、湿紙ウェブを、フェルトを介して1又は2つのロールプレスニップでヤンキードライヤーに押し付けて脱水し、さらにヤンキードライヤー(シリンダー)に貼り付けて乾燥し、次いでヤンキードライヤーからウェブを剥がす際にクレープ付け(しわ付け)を行っている。又、プレスパートにおいて、ダブルフェルトマシンのようにウェットパートのトップとボトムロールでプレスして脱水し、その後ロールプレスニップでヤンキードライヤーに押し付けることもある。
しかしながら、このヤンキードライヤーへの押付けによって、ウェブが相対的に低バルクになるという問題がある。そして、上記した嵩高剤をパルプ原料に添加してクレープ付けによるバルク低下を抑制しようとしても、せいぜい3〜5%程度の嵩高効果しか得られず、一方で強度が著しく低下する。
又、上記したTAD方式は、ヤンキードライヤーで最終的に仕上げの乾燥及びクレープ付けを行う前にバキュームにより脱水し、通風ドライヤーで予備乾燥する技術であり、ロールプレスニップによる脱水工程が無いためにバルクロスが無く、高バルクなウェブが得られる。ところが、TAD方式はプレスニップ脱水相当の水分を通風熱で除去するため、従来のロールプレスニップ方式に比べて約2倍の乾燥エネルギーが必要になるとされている。
【0005】
そこで、TAD方式を用いずに、湿紙工程で高バルクな処理を行う方法として、シュープレス方式と呼ばれる広いプレスニップにより、加圧脱水を調整する方法も提案されている(特許文献3)。シュープレス方式は、従来のロールプレスニップ方式に比べて、より高いバルク及び柔らかさを得ることができるが、TAD方式ほど高いバルクは得られない。
さらに、これらの諸問題を解決する方法として、ファブリックプレス方式と呼ばれる抄紙機械が開発されている(特許文献4)。ファブリックプレス方式は、従来のプレス技術を踏襲するが、脱水と同時に凹凸付けベルト又はファブリックによりウェブに凹凸付けを行うものである。この脱水及び凹凸付けは、湿紙ウェブがフェルトから凹凸付けベルトに送られる間に、1又は2つ以上のプレスニップで行なわれ、次いでウェブがヤンキードライヤーに運ばれて乾燥される。
ファブリックプレス方式によれば、従来のロールプレスニップ方式と乾燥エネルギーが同等でありつつ、TAD方式に匹敵する高いバルクが得られる。
【0006】
なお、ファブリックプレス方式によるウェブの構造は、織物ではないが、織物に似た3次元パターンを形成する。これは、ウェブの凹凸付けが以下のように行われるためと考えられる。つまり、プレス処理の間、繊維性の網状組織が凹凸付けベルトの3次元の模様(パターン)を詰めるように満たすが、そのとき、凹凸付け層の三次元の模様が湿った繊維性のウェブに付与される。湿った繊維性のウェブは互いに相対的に可動であり、そのため、プレスフェルトが弾性的に圧縮する作用により、それらのウェブは互いに新しい位置及び方向を取る。プレスフェルトは、湿った繊維性のウェブを凹凸付けベルトの3次元の模様に押し付け、それによって、同じ坪量でバルク及び柔らかさを増し、かつ、改良された構造になる。
そして、ウェブのバルクは、プレスニップで脱水する間、ベルトの組織中のキャビティ(空洞)で、繊維性の網状構造(ネットワーク)を受けることで、圧縮されずに維持される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係るハンドタオルは、パルプを主成分とし、シートを1枚又は2枚以上重ねた1組からなり、1組の坪量が15〜45g/m
2であり、1組が1枚のシート(1プライ)からなる場合の吸水量が60〜230 water-g/m
2であり、1組が2枚以上のシート(2プライ以上)からなる場合の吸水量が100〜500 water-g/m
2であり、かつ旧JIS−S3104法に規定する吸水度が、1プライの場合に2.3〜25.0秒/0.1mLで、2プライ以上の場合に0.0〜3.0秒/0.1mLである。
【0015】
1組の坪量が15g/m
2未満であると強度及び吸収性が低下し、45g/m
2を超えると硬くなって柔らかさ(手触り)に劣る。上記坪量は、好ましくは15〜40g/m
2、更に好ましくは15〜35g/m
2である。
【0016】
吸水量が1プライの場合で60 water-g/m
2未満、又は2プライ以上の場合で100water-g/m
2未満であると、吸水量が低くて実用に適さない。
一方、吸水量が1プライの場合で230 water-g/m
2を超え、又は2プライ以上の場合で500water-g/m
2を超えると、吸水量は多くなるが、ハンドタオルが硬くなって柔らかさ(手触り及び使用感)が劣る。
1プライの場合の吸水量が80〜230water-g/m
2であることが好ましく、100〜230water-g/m
2であることがより好ましい。2プライ以上の場合の吸水量が200〜500water-g/m
2であることが好ましく、250〜500water-g/m
2であることがより好ましい。
なお、吸水量は、
図8に示すようにして測定する。まず、ハンドタオルから採取した1組のシートを、一片が7.62cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.62cmの矩形の試験片を作成する。吸水前の試験片の質量を電子天秤で測定しておく。試験片をホルダー(試験片の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ1cm入れ、ホルダーにセットした試験片をバットの蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片をホルダーと共に水中から取り出し、
図8に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、1plyの一般的なハンドタオル製品を幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、試験片の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダーと試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて30分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片1m2当たりの吸水量(Water-g/m2)を計算する。さらに、吸水量(Water-g/m2)を試験片の坪量で割ることにより、吸水量(Water-g/m2)/(g/m2)= Water-g/gを算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用した。
なお、本測定は、JIS−P8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0017】
旧JIS−S3104法に規定する吸水度は小さいほどよいが、吸水度が1.0秒以下のものを測定することはできないため、吸水度が1.0秒以下は「0.0秒」とみなすこととする。従って、吸水度の下限は測定上は1プライの場合で0.0秒/0.1mL、2プライ以上の場合で0.0秒/0.1mLとなる。但し、1プライの場合で2.3秒/0.1mL未満とすることは一般には難しいので、1プライの場合の吸水度の下限を2.3秒/0.1mLとしてもよい。
一方、吸水度が1プライの場合で25.0秒/0.1mLを超え、又は2プライ以上の場合で3.0秒/0.1mLを超えると、吸水が遅くて実用に適さない。なお、吸水度は旧JIS−S3104法に規定されており、「0.1mL」は、ハンドタオルへの水の滴下量である。
1プライの場合の吸水度が2.3〜20.0秒/0.1mLであることが好ましく、2.3〜15.0秒/0.1mLであることがより好ましい。2プライ以上の場合の吸水度が0.0〜2.5秒/0.1mLであることが好ましい。
【0018】
ハンドタオルは木材パルプ100%から成っていてもよく、古紙パルプ、非木材パルプを含んでも良い。目標とする品質を得るためには、NBKP:LBKP=10:90〜90:10(質量比)の木材パルプを原料とすることが好ましく、より好ましい範囲はNBKP:LBKP=20:80〜80:20、更に好ましい範囲はNBKP:LBKP=30:70〜70:30である。上記LBKPの材種としてユーカリグランディス、及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。又、古紙パルプ配合を100質量%とすることもできる。古紙パルプは品質的バラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するので、木材パルプに対して60質量%以下配合するのが望ましい。
なお、ハンドタオルに適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、市販のバージンパルプに対して、JIS P8121で測定されるカナダ標準ろ水度で0〜300ml、より好ましくは0〜250ml、更に好ましくは50〜250ml濾水度を低減させる。
又、ハンドタオルウェブの製造方法の詳細については後述する。
【0019】
本発明の実施形態に係るハンドタオルにおいて、視野1.0-1.4mmで測定したときの表面の凹凸の高低差の平均値が100〜600μm、好ましくは100〜550μm、より好ましくは150〜500μm、スキャン面積6cm×6cmの条件下で行った表面の凹部の面積率の平均値が2〜12%、好ましくは3〜12%、より好ましくは4〜12%である。このようにすると、上記した吸水量及び吸水度が確実に得られる。
なお、表面とは、ハンドタオルが2ply以上の製品であれば、製品の外側に向く両面(つまり、シートの重ね合わせ面と反対面)を意味し、1ply製品であれば、1枚のシートの両面を意味する。
表面の凹凸の高低差は、形状測定レーザマイクロスコープを用いて測定する。形状測定レーザマイクロスコープは、点光源であるレーザ光源を、対物レンズを介して観察視野内のX−Y平面を複数に分割したピクセルにスキャンし、各ピクセル毎の反射光を受光素子で検出する。そして、対物レンズを高さ(Z軸)方向に駆動し、最も反射光量の高いZ軸位置を焦点として、高さ情報と反射光量を検出する。このようにしてスキャンを繰り返すことにより、全体に焦点の合った光量超深度画像と高低画像(情報)が得られる。レーザ光源は、ピンホール共焦点光学系であるので、測定精度が高い。
形状測定レーザマイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9510」を使用することができる。観察・測定ソフトウェアとしては、製品名「VK Viewer」を使用することができる。又、測定条件は、倍率200倍(標準対物レンズは倍率10倍を使用)、測定モードはカラー超深度とし、Autoセットによりゲインをオートで調整し、測定ピッチ1μm、ディスタンス(Z軸方向の範囲 μm)をサンプルの紙厚以上に設定し、測定する。なお、測定は、抄紙機以外の工程(例えば、インターフォルダー等)で機械的にエンボス処理を行った部分以外の箇所を測定する。
【0020】
その後、画像解析ソフトウェア(VK Analyzer)を用い、得られた画像から高さプロファイルを取得する。まず、
図1に示す画像の観察視野を横切る線分Lを、目視で画像内に白い部分と黒い部分が隣接するように引く。なお、
図1の白い部分が凸部、黒い部分が凹部に相当するので、白が強い部分と黒が強い部分が隣接している部分を横切るように線分Lを決めればよい。高さプロファイルの取得は各画像につき線分Lを1つ選んで行う。線分Lの長さは1.0-1.4mmとする。そして、
図2のように高さプロファイルが得られる。ここで、
図2の高さプロファイルは、実際の試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(ハンドタオルの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、高さプロファイルの断面曲線から「輪郭曲線」Wを計算し、この「輪郭曲線」の最大値MAXと最小値MINの差を「凹凸の高低差」と規定する。ここで、「輪郭曲線」は、断面曲線からλc:250μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。
又、
図2の縦軸(凹凸プロファイルの高さ)の値は、形状測定レーザマイクロスコープに試料を載置する台座の高さを基準としている。なお、線分Lにて、例えば山(凸部)が1つで、それに隣接する2つの谷(凹部)が得られた場合、最も小さい凹部のMINを用いる。山(凸部)が2つの場合は、最も大きい凸部のMAXを用いる。
なお、上述のように高さプロファイルの視野(Lの長さ)は1.0-1.4mmであり、測定に際しては表面のエンボスを十分に避けることができる。
【0021】
表面の凹部の面積率は、ハンドタオルの表面を画像解析し、所定の閾値以下の暗い部分を凹部とみなし、その面積率を計算して得られる。
具体的には、ハンドタオルの表面を市販のイメージスキャナ(例えば、エプソン社製GT-X770)で、
図3に示すような画像データとして取り込み、所定の画像解析装置(例えば、日本製紙ユニテック社製の「きょう雑物測定装置(Easy Scan)」)により分解能800dpi、スキャン面積6cm×6cmの条件で、所定の閾値以下の暗部の面積率を求める。ここで、上記閾値を、黒を0ビット、白を255ビットとしたときの白側に近い98%に設定して画像処理し、得られたそれぞれの暗部(陰部)を粒子(きょう雑物)とみなし、その粒径(円相当径)(μm)を計測する。その後、粒径が200〜999μmの粒子について、各粒子の面積を積算し、画像面積1m
2当たりの暗部(凹部)の面積率に換算した(例えば、測定面積が0.0036m2、200-999μmの粒子の積算面積が500mm2の場合、面積率(%)は500mm2÷0.0036m2×100=13.9%となる)。
面積率の測定は、ハンドタオルのサンプルにシワやミシン目、折り目等が入らないようにしてスキャナの一辺にハンドタオルの一辺を沿わせて設置し、画像データを取り込む。次に、このハンドタオルの一辺をスキャナに対して90℃ずつ回転させてそれぞれ画像データを取り込む(合計4つの画像データ)。この操作を2回繰り返し、合計8個の画像データを取り込む。さらに、ハンドタオルのサンプルのもう一方の表面についても、同様の操作を8回行う。このようにして得られた製品の2つの表面(両面)の16個の画像データにつき、上記した画像解析を行い、暗部(凹部)の面積率を測定し、これら16個の面積率の平均値を採用する。
なお、ハンドタオルのサンプルにミシン目や折り目が入っている等、6cm×6cmのスキャン面積(0.0036m2)を確保できない場合は、一度で測定する測定面積を小さくしても良いが、この場合は測定面積が最低0.0036m2となるように、測定箇所を増やす。例えば、3cm×6cm(0.0018m2)を2箇所測定すれば、測定面積は0.0036m2となる。
【0022】
凹凸の高低差、及び凹部の面積率を上記範囲とすると、ハンドタオルの表面に適度な凹凸が生じ、坪量が低くても水を吸収しやすくなる。
一方、凹凸の高低差及び凹部の面積率が上記範囲未満であると、ハンドタオルの表面の凹凸が低くなって水を吸収し難くなり、吸水量が上記範囲未満となることがある。
凹凸の高低差及び凹部の面積率が上記範囲を超えると、水を吸収しやすくなるが、ハンドタオルの滑らかさ(手触り及び使用感)が劣ることがある。
なお、凹凸の高低差、及び凹部の面積率を上記範囲に管理する方法の一例としては、後述する凹凸付けファブリックを湿紙ウェブに押付け、脱水と同時に凹凸付けを行うことが挙げられる。
又、ハンドタオルは、抄紙後に抄紙機以外の工程(例えば、インターフォルダー等)で機械的にエンボス処理を施すことがある。これらのエンボスの大きさ(凹凸の高低差および凹凸の周期)は数mmと大きいため、吸水度や吸水量の向上効果は生じ難い。
【0023】
旧JIS S3104に基づく1組のハンドタオルの乾燥時の縦方向の引張強さをDMDTとし、乾燥時の横方向の引張強さをDCDTとし、DMDTとDCDTとの積の平方根である(DMDT×DCDT)
1/2をDGMTとしたとき、ハンドタオルのDMDTが7.6〜25.0N/25mm、DCDTが6.5〜22.0N/25mm、DGMTが7.0〜23.0N/25mmである。
DMDTは、好ましくは8.0〜25.0N/25mm、より好ましくは8.0〜23.0N/25mmである。DCDTは、好ましくは7.0〜22.0N/25mm、より好ましくは7.0〜20.0N/25mmである。DGMTは、好ましくは7.5〜23.0N/25mm、より好ましくは7.5〜21.0N/25mmである。
なお、従来の抄紙方法では、乾燥紙力剤を添加すると強度が高くなるが、紙が固くなる問題があった。本発明においては、乾燥紙力剤を添加しても、凹凸ファブリックを用いることでシートが柔らかくかつ強度を高くすることができる。
【0024】
旧JIS S3104に基づく1組のハンドタオルの湿潤時の縦方向の引張強さをWMDTとし、湿潤時の横方向の引張強さをWCDTとし、WMDTとWCDTとの積の平方根である(WMDT×WCDT)
1/2をWGMTとしたとき、WMDTが2.5〜7.2N/25mm、WCDTが1.6〜4.4N/25mm、WGMTが2.0〜6.0N/25mmであることが好ましい。
WMDTは、好ましくは3.0〜7.2N/25mmである。WCDTは、好ましくは2.0〜4.4N/25mmである。WGMTは、好ましくは2.4〜6.0N/25mmである。
WGMTが2.5N/25mm未満であると、やぶれ易くて実用に適さないことがある。WGMTが7.2N/25mmを超えると硬くなり、柔らかさが損なわれることがある。
なお、1組のハンドタオルのWGMTは、旧JIS S3104に基づく湿潤時の縦方向の引張強さWMDT(Wet Machine Direction Tensile strength)と、湿潤時の横方向の引張強さWCDT(Wet Cross Direction Tensile strength)との積の平方根であり、(WMDT×WCDT)
1/2(WGMT:Wet Geometric Tensile Strength)で表される。
【0025】
本発明の実施形態に係るハンドタオルをティシューソフトネス測定装置TSA(Tissue Softness Analyzer)により測定したとき、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が16〜50dBV
2rmsであり、好ましくは16〜45dBV
2rms、より好ましくは16〜40dBV
2rmsである。TS750が50dBV
2rmsより高いと平滑性に劣り、16dBV
2rmsより低いと平滑性のみが際立ち、良好な触感が得られない場合がある。
又、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が19〜40dBV
2rmsであり、好ましくは19〜36dBV
2rms、より好ましくは19〜30dBV
2rmsである。TS7が40dBV
2rmsより高いと十分な柔らかさが得られず、19dBV
2rmsより低いと柔らかさだけが際立ち、良好な触感を得ることができない場合がある。
【0026】
又、ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置したハンドタオルのサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、それぞれ押し込み圧力100mNと600mNの間での前記サンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性(D)の測定値が1.9〜3.2mm/Nであり、好ましくは2.2〜3.2mm/N、より好ましくは2.5〜3.2mm/Nである。D測定値が2.0mm/Nより低いとハンドタオル全体のしなやかさに劣り、3.2mm/Nより高いと、しなやかさが際立ちすぎ、全体のバランスに欠く場合がある。
【0027】
ここで、
図4に示すように、ティシューソフトネス測定装置TSA210は、紙試料(サンプル)206の上から、回転したブレード付きロータ204を押付けたときの各種センサで検知した振動データを、振動解析してパラメータ化(TS値)することにより、紙のソフトネス(手触り感)を定量評価するものであり、ドイツのエムテック(Emtec Electronic GmbH、日本代理店は日本ルフト株式会社)社製の商品名である。
TSAを用いた具体的な測定は、(i)円形の試料台205を外側から覆うようサンプル206(emtec社のサンプルパンチを使用して直径が約112.8mmの円形に加工したサンプル)を設置し、サンプル206の外周をサンプル固定リング208で保持し、(ii)ブレード付きロータ204を100mNの押し込み圧力でサンプル206の上から押し込んだ後、ロータ204を回転数2.0(/sec)で回転させ、(iii) 試料台205の振動を、試料台205内部に設置した振動センサ203で測定し、振動周波数を解析する。(iv)次に、押し込み圧力100mNと600mNで、ロータ204を回転させずにそれぞれサンプル206を変形させたときの上下方向の変形変位量(mm/N、剛性D)を計測する。 (i)〜(iv)の手順により、ハンドタオルの総合的なハンドフィール値の要素(滑らかさ、しなやかさ、ボリューム感)が各々数値化できる。測定は1サンプルについて表裏5回ずつ繰り返し、平均化する。なお、表裏とは、ハンドタオルが2ply製品であれば、製品の外側に向く両面(つまり、シートの重ね合わせ面と反対面)、1ply製品であれば、1枚のシートの両面を意味する。
なお、試料台205はベースプレート201上に設置され、試料台205とベースプレート201の間には、力センサ202が配置されている。そして、力センサ202の検出値により、ブレード付きロータ204の押し込み圧力を制御する。又、ブレード付きロータ204はモータ209によって回転する。
又、振動解析してパラメータ化(TS値)するソフトウェアは、emtec measurement systemを用いる。本ソフトウェアには、各種アルゴリズム(例えば、Base Tissue、Facial、TP等)が備えられ、TS7、TS750、Dをソフトウェア上で自動的に取得し、これらTS7、TS750、Dおよび、坪量、厚さ、Ply数等から各種アルゴリズムの種類によって、HF(ハンドフィール)値が計算される。本発明では、HF値ではなく、TS7、TS750、Dのみを規定しており、上記測定条件を満たせば、アルゴリズムは何を使用しても良く、TS7、TS750、Dの値はアルゴリズムの種類によって変わることはない。
【0028】
図5は、TSAによる紙試料サンプルの振動周波数の解析結果の一例を示す。低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークAの強度をTS750とし、6500Hzを含む(6500Hzの前後の)スペクトルの極大ピークBの強度をTS7とする。極大ピークBは、通常、約6500Hzに位置する。
図6は、TSAによる紙試料サンプルの剛性Dの測定方法を示す。
【0029】
紙試料サンプルの振動周波数は、紙の構造及びロータ4の回転数に依存し、振幅(スペクトルの強度)は、クレープの高さ等の紙の構造の高さに依存する。そして、スペクトルの最初のピーク(
図5のA)であるTS750は滑らかさ、粗さを表す。一方、TS7が現れる周波数(5000〜8000Hzの範囲、通常は6500Hz近傍)は、ロータ4の共振周波数であり、水平振動となって紙表面を進むときに紙繊維による瞬間的な遮断とロータ4の振動に起因する。剛性Dは、紙の剛性(引張強度)に相関する。
TS7の値が低いほど、ふんわり感(表面ソフトネスおよびバルクソフトネス)に優れ、TS750の値が低いほど、滑らかさに優れる。又、Dの値が大きいほど、しなやかさに優れる。
さらに、TS7、TS750、及びDの関数に基づき、総合的なハンドフィール値(HF値)を算出することができる。
例えば、(HF値)=A×(TS7)+B×(TS750)+C×(D)+αという関数を設定することで、総合的なハンドフィール値を客観的(定量的)に数値化できる。ここで、A,B,C及びαは係数であり、これら係数を適宜設定することで、ハンドフィール値を構成するファクター(つまり、TS7、TS750、及びDにそれぞれ対応する、柔らかさ、滑らかさ、剛性)の重み付けを調整し、実際の柔らかさの官能評価に合致させることができる。
なお、A及びBを負の値とし、Cを正の値とした場合、ハンドフィール値の値が大きくなるほど、総合的な柔らかさに優れることを意味する。
【0030】
ハンドタオルの比容積が8.0〜18.0cm
3/gであることが好ましく、より好ましくは10.0〜18.0cm
3/g、最も好ましくは12.0〜18.0cm
3/gである。比容積が8.0cm
3/g未満であると、ふんわり感が乏しく、柔らかさ(風合い)が劣ることがある。一方、比容積が18.0cm
3/gを超えると、バルク(嵩高さ)は高くなるが、平滑性が劣り、滑らかさ(触感)が悪くなることがある。
【0031】
本発明のハンドタオルは、ハンドタオルウェブを1プライまたは複数プライ重ね(好ましくは1枚〜3枚重ね)にして適宜所定の大きさのシートに切断し、連続して取り出せるようにC折りして互いに積層して所定の組数になるようにして製造することができる。又、この積層体をポリパックやボックス等に収納することができる。
【0032】
次に、
図7を用いて、本発明の実施形態に係るハンドタオルウェブの製造方法について説明する。
図7はハンドタオルウェブの製造装置50の一例を示す。
図7の装置50は、ファブリックプレス方式の抄紙機であり、予備的に脱水するための通風乾燥(TAD)設備を用いず、プレス手段のみで凹凸付けしたウェブ103を製造することができる。装置50は、連続するウェブを形成するウェット部2、ウェブを脱水して模様付け又は凹凸付けするプレス部3、及びウェブを最終乾燥する乾燥部4を備えている。
【0033】
ウェット部2は、クレセントフォーマー形式で湿紙を形成するものであり、繊維及び水からなる紙料をフォーミング領域に供給するヘッドボックス6、ウェブの水の一部を脱水するフォーミングフェルト8及びフォーミングワイヤー9、複数のガイドロール10、並びにフォーミングロール7を有する。
ヘッドボックス6は、フォーミングワイヤー9とフォーミングフェルト8との間の成型部5にて紙料ジェットを吐出する。フォーミングワイヤー9はエンドレスのループ形態であり、複数のガイドロール10及びフォーミングロール7の周りを走行し、フォーミングロール7にてフォーミングフェルト8に接触する。従って、位置5に吐出された紙料はフォーミングワイヤー9によって脱水されて繊維性ウェブ101を形成し、この繊維性ウェブ101がフォーミングフェルト8にてプレス部3に搬送される。フォーミングフェルト8も複数のガイドロール18の周りを走行するエンドレスのループ形態となっている。
なお、成型部5をサクションブレストロールフォーマーとすることもできる。
【0034】
プレス部3はメインプレス11及び凹凸付けファブリック14を備え、メインプレス11は第1のプレス要素12と第2のプレス要素13とからなる。第1及び第2のプレス要素12,13は、互いに圧着してそれらの間にプレスニップN1を形成する。
図7の例では、メインプレス11はロールプレスであり、第1及び第2のプレス要素12,13が対向する双ロールをなす。そして、第1のプレス要素(ロール)12が凹凸付けファブリック14のループ内に位置し、第2のプレス要素(ロール)13がフォーミングフェルト8のループ内に位置し、プレスニップN1にてフォーミングフェルト8と凹凸付けファブリック14が接触する。メインプレス11は、長いニッププレス又はシュープレス(図示しない)でも良い。
凹凸付けファブリック14は、エンドレスのループ形態をなし、複数のガイドロール15、及び乾燥部4に対向するスムーズな転送ロール16の周りを走行する。凹凸付けファブリック14は、第1のプレス要素(ロール)12の周りを走行したときにメインプレス11のプレスニップN1を通り、フォーミングフェルト8で搬送された繊維性ウェブ101と接触する。そして、プレスニップN1にて、凹凸付けファブリック14が繊維性ウェブ101の脱水及び凹凸付けを行って、凹凸付け繊維性ウェブ102を形成する。凹凸付け繊維性ウェブ102は、凹凸付けファブリック14によって転送ロール16まで搬送される。
転送ロール16は、後述する乾燥部4の乾燥シリンダー19と対向し、両者の間に転送ニップN2を形成する。そして、転送ニップN2に搬送された凹凸付け繊維性ウェブ102は、プレス及び脱水を施されずに乾燥にのみ供される。
【0035】
なお、プレス部3(プレスニップN1)において、フォーミングフェルト8は、z−方向(厚み方向)に弾性変形可能で圧縮可能な受水プレスフェルト17として働く。受水プレスフェルト17は、プレスニップN1を通過した凹凸付け繊維性ウェブ102をすぐに離し、ウェブ102を再び湿らさないようにする。
プレス部3を通る間、各ウェブ101、102の乾燥度は、繊維濃度15〜30%の範囲から42〜52%の範囲とすることができる。
【0036】
乾燥部4は、乾燥シリンダー19、クレープ付けドクター21、及び乾燥シリンダー19を覆うフード22を備えている。なお、
図7の例では、乾燥シリンダー19はヤンキードライヤーであるが、他のタイプの乾燥部(たとえばエアースルードライヤー、金属製の乾燥ベルト)を適用することができる。又、乾燥部は、単一の乾燥部(例えば、
図7のように1つのシリンダー)であってもよく、複数の乾燥部で構成することもできる。
乾燥シリンダー19の表面は、転送ニップN2近傍にて、凹凸付け繊維性ウェブ102を乾燥する乾燥表面20を形成する。又、クレープ付けドクター21は乾燥表面20の下流に配置され、乾燥表面20によって乾燥した凹凸付け繊維性ウェブ102にクレープ付けを行い、それによって、凹凸付け及びクレープ付けの両方を施された最終ウェブ103が得られる。クレープ付は、紙を縦方向(マシン走行方向)に機械的に圧縮し、クレープと称される波状の皺を形成する公知の方法であり、紙に嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)などを付与する。このクレープ付けは、ドライクレープと言われる。クレープには、ウェットクレープ(紙が乾燥する前、湿紙の状態で行う)もあるが、ドライクレープは柔らかさが出やすく、嵩高になりやすいため、ドライクレープが好ましい。
また、クレープ率は次式により定義される。
クレープ率(%)=100×(ヤンキードライヤー速度(m/分)−リール速度(m/分))÷リール速度(m/分)
クレープ率は好ましくは2〜25%、より好ましくは2〜20%、最も好ましくは2〜15%である。
そして、転送ニップN2にて、凹凸付け繊維性ウェブ102が凹凸付けファブリック14から離れて乾燥シリンダー19の乾燥表面20に転送される。転送ニップN2の圧力は1MPa以下であり、この圧力ではウェブ102の脱水は生じない。
なお、凹凸付けファブリック14から乾燥表面20側にウェブ102を確実に転送させるため、スプレー装置23によって乾燥表面20に接着剤を塗布するようにすると良い。スプレー装置23は、クレープ付けドクター21と転送ニップN2との間であって、乾燥表面20が開放された位置に配置することができる。
【0037】
凹凸付けファブリック14としては、金属又は合成樹脂(プラスチック)の線を経糸及び緯糸として縦横に編み込んだ網目状のワイヤが挙げられる。このワイヤの目数としては、経糸及び緯糸の目数がそれぞれ20〜70本/2.54cm、好ましくは20〜60本/2.54cm、より好ましくは20〜50本/2.54cmとすることができる。又、このワイヤの線径としては、経糸及び緯糸の線径が0.21〜0.80mm、好ましくは0.25〜0.80mm、より好ましくは0.30〜0.80mmとすることができる。
経糸及び緯糸の目数が上記範囲未満である場合、又は経糸及び緯糸の線径が上記範囲を超える場合、凹凸付けファブリック14の表面の凹凸が強過ぎ、得られたウェブの表面の凹凸も強くなり過ぎ、触感(滑らかさ)が劣ることがある。
経糸及び緯糸の目数が上記範囲を超える場合、又は経糸及び緯糸の線径が上記範囲未満である場合、凹凸付けファブリック14の表面の凹凸が低くなり過ぎ、得られたウェブの表面の凹凸も低くなって、吸水量が上記範囲未満となる。
なお、凹凸付けファブリックでない一般的なファブリックは、経糸及び緯糸の目数がそれぞれ、70〜200本/2.54cm程度である。また、経糸及び緯糸の線径はそれぞれ、0.08〜0.20mm程度である。
上記で示したワイヤの目数や線径は、ワイヤのトップ面(湿紙とワイヤーが接触する面)の値である。
【0038】
なお、ハンドタオルとする加工において、カレンダ加工及びエンボス加工の有無、印刷の実施の有無は、適宜選択できる。
【0039】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0040】
パルプ組成(質量%)をNBKP50%、LBKP50%とし、乾燥紙力剤および湿潤紙力剤を所定量添加した紙料を用い、それぞれ表1、表2に示す特性を有する2枚重ね及び1枚重ねのハンドタオルにつき、
図7に示すファブリックプレス方式の製紙機50を用い、凹凸付け繊維性ウェブ103を製造した。
凹凸付けファブリック14としては、経糸及び緯糸として縦横に編み込んだ網目状のプラスチック製ワイヤを用い、ワイヤの経糸及び緯糸の目数及び線径を表1、表2のように規定した。
【0041】
さらに、最終ウェブを2枚重ね、及び1枚重ねのハンドタオルに加工し、以下の評価を行った。
DGMT(Dry Geometric Tensile Strength)、WGMT(Wet Geometric Tensile Strength):旧JIS S3104に基づいて乾燥時の縦方向引張り強さDMDT、乾燥時の横方向引張り強さDCDT、湿潤時の縦方向引張り強さWMDTと湿潤時の横方向引張り強さWCDTとを測定し、DGMT、WGMTを算出した。
坪量:JIS P8124に基づいて測定した。
厚さ:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm 以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、測定は試料を10枚重ねて異なる10ヶ所で測定し、測定結果を平均した。そして、得られた平均値を枚数で割って1枚当りの紙厚とした。
比容積:シート1枚当たりの厚さを坪量で割り、単位gあたりの容積cm
3で表した。
吸水度:旧JIS−S3104法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で、1枚重ね品、2枚重ね品とも0.1mlの精製水を滴下し、水滴がハンドタオルに吸収される時間(秒)を測定した。
吸水量:上述の通りに測定した。
ハンドタオル表裏面の凹凸の高低差及び凹部の面積率:上述の通りに測定した。
【0042】
TS7、TS750、Dの測定は、上記ティシューソフトネス測定装置TSAを用いて行った。測定条件も上記のとおりである。
拭き取り性、柔らかさ、滑らかさ、破れにくさの評価は、モニター20人による官能評価によって行った。評価基準は10点満点で相対評価を行った。評価基準は以下の通りである。評価が5点以上であれば、その特性に優れる。
なお、拭き取り性の官能評価は、手を洗った後にハンドタオルで手の水分を拭き取り、水分をきれいに拭き取れるかの評価であり、吸水量が大きく影響し、吸水度も影響する。
◎:9〜10点
○:7〜8点
△:5〜6点
×:1〜4点
なお、坪量、引張強さ(DGMT,WGMT)、厚さ、比容積、及びティシューソフトネス測定装置TSAによる測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0043】
得られた結果を1プライのハンドタオルについては表1、表2に示し、2プライのハンドタオルについては表3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1〜表3から明らかなように、1組の坪量が15〜45g/m
2である各実施例の場合、1プライの場合の吸水量が60〜230 water-g/m
2で、かつ吸水度が2.3〜25.0秒/0.1mLとなった。又、2プライの場合の吸水量が100〜500water-g/m
2で、かつ吸水度が0.0〜3.0秒/0.1mLとなった。このようにして、坪量が低くても吸水性(吸水量と吸水度)に優れたハンドタオルが得られた。
なお、各実施例の場合、湿紙ウェブに、所定の凹凸付けファブリックを押付けて脱水と同時に凹凸付けを行ったため、表裏面の凹凸の高低差が100〜600μmであり、表裏面の凹部の面積率の平均値が2〜12%であった。
又、1プライの各実施例のうち、凹凸付けファブリックの経糸及び緯糸の目数を最も多くし、線径を最も細くした実施例5の場合、他の実施例に比べて表面の凹凸が低く、凹凸の高低差及び凹部の面積率の値が他の実施例に比べて小さくなったが、実用上問題はない。
凹凸付けファブリックの経糸及び緯糸の目数を最も少なくし、線径を最も太くした実施例9の場合、他の実施例に比べて表面の凹凸が高く、凹凸の高低差及び凹部の面積率の値が他の実施例に比べて大きくなったが、実用上問題はない。
実施例14は、実施例12を更にカレンダー処理した製品であり、実施例12に比べて凹凸の高低差が低下しているが、実用上問題はない。
【0048】
一方、1組の坪量が15g/m
2未満である比較例1の場合、1プライの吸水量が60water-g/m
2未満となり、吸水性(拭き取り性)が劣った。なお、比較例1の場合、強度(WGMT)も低下し、破れやすくなった。
1組の坪量が45g/m
2を超えた1プライの比較例2の場合、1プライの吸水量が230water-g/m
2を超え、吸水性に優れたものの、硬くなって柔らかさが劣った。同様に1組の坪量が45g/m
2を超えた2プライの比較例11の場合も、2プライの吸水量が500water-g/m
2を超え、吸水性に優れたものの、硬くなって柔らかさが劣った。
表1(1プライのハンドタオル)において、凹凸付けファブリックの経糸及び緯糸の目数を実施例より多くし、線径を実施例より細くした比較例3の場合、表面の凹凸が低くなり過ぎ、凹凸の高低差及び凹部の面積率の値が上記範囲未満となり、吸水性(吸水量と吸水度)、及び拭き取り性が劣った。
凹凸付けファブリックの経糸及び緯糸の目数を実施例より少なくし、線径を実施例より太くした比較例4の場合、表面の凹凸が高くなり過ぎ、凹凸の高低差及び凹部の面積率の値が上記範囲を超え、滑らかさが劣った。
市販の1プライのハンドタオルである比較例5,6の場合、表面の凹凸が低くなり過ぎ、凹凸の高低差が上記範囲未満となって嵩が低下し、吸水度が25.0秒/0.1mLを超えたと共に、柔らかさ及び滑らかさが劣った。これは、比較例5,6の場合、上記した凹凸付けファブリック14を用いずに抄紙したためである。なお、比較例6の凹凸が低いのに、滑らかさが劣る理由は、抄紙後の工程で機械的にエンボス処理を施したためと考えられる。又、比較例5,6の場合、実施例に比べて比容積が低いため、硬くなって(D値が1.9mm/N未満となって)柔らかさが劣った。
【0049】
1組の坪量が45g/m
2を超えた比較例11の場合、硬くなって(D値が1.9mm/N未満となって)柔らかさが劣った。
市販の2プライのハンドタオルである比較例12の場合、1組の坪量が45g/m
2を超え、硬くなって(D値が1.9mm/N未満となって)柔らかさが劣った。これは、比較例12の場合、上記した凹凸付けファブリック14を用いずに抄紙したためである。又、比較例12の場合、表面の凹凸の高低差が上記範囲未満となった。なお、比較例11は2プライの実施例と比べて坪量が高いため、柔らかさが劣り、滑らかさがやや劣った。
【0050】
抄紙の際、上記凹凸付けファブリックよりも経糸及び緯糸の目数が多く、経糸及び緯糸の線径が小さい一般的なファブリックを用いた比較例7〜9の場合、ファブリックの凹凸が低く、表面の凹凸の高低差が100μmとなり、吸水度が25.0秒/0.1mLを超えた。
なお、比較例8は紙力剤を添加しなかったため、強度(DMDT、DCDT、DGMT、WMDT、WCDT、WGMT)が大幅に低下した。
一方、紙力剤を添加した比較例7の場合、強度は向上したが、紙が硬くなって剛性(D)が1.9mm/N未満となった。又、比較例7に対し、紙力剤を2倍量添加した比較例9の場合、強度はさらに向上したが、紙も硬くなって剛性(D)が1.9mm/N未満となった。
又、一般的なファブリックを用いた比較例7〜9の場合、比容積が8.0cm
3/g未満となった。
以上より、DGMTおよびWGMT(強度)は、例えばパルプの原料及びその配合量、叩解度、乾燥紙力剤および湿潤紙力剤の添加の有無、抄紙条件等によって適宜調整することができるが、単に乾燥紙力剤および湿潤紙力剤を添加するだけでは、他の特性(柔らかさ、剛性(D))が低下する。すなわち、凹凸付けファブリックを用いて抄紙した各実施例は、強度と柔らかさを両立できることがわかった。