特許第5883417号(P5883417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社国元商会の特許一覧

<>
  • 特許5883417-天端ポインター 図000002
  • 特許5883417-天端ポインター 図000003
  • 特許5883417-天端ポインター 図000004
  • 特許5883417-天端ポインター 図000005
  • 特許5883417-天端ポインター 図000006
  • 特許5883417-天端ポインター 図000007
  • 特許5883417-天端ポインター 図000008
  • 特許5883417-天端ポインター 図000009
  • 特許5883417-天端ポインター 図000010
  • 特許5883417-天端ポインター 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883417
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】天端ポインター
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/10 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
   E04G21/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-162857(P2013-162857)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-31101(P2015-31101A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(72)【発明者】
【氏名】山岡 由賢
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−124502(JP,A)
【文献】 実開昭62−177839(JP,U)
【文献】 特開2010−168884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天端マーカーと棒状の天端ポインター本体から成り、前記天端マーカーは、天端ポインター本体に昇降自在に外嵌する円筒部、この円筒部から横向きに連設された翼板部、及び前記円筒部の内周面に周方向に沿って突設された係止用突起から成り、天端ポインター本体には、天端マーカーの円筒部内を前記係止用突起と干渉しないで相対的に昇降自在な横断面形状の天端マーカー位置決め用軸部が設けられ、この天端マーカー位置決め用軸部には、この天端マーカー位置決め用軸部に対して相対昇降自在な向きの前記天端マーカーを当該天端マーカー位置決め用軸部の周りで回転させたときに前記係止用突起が周方向に嵌合係止して当該天端マーカーを位置決めする被係止部が、天端マーカー位置決め用軸部の長さ方向等間隔おきに設けられている天端ポインターにおいて、
前記天端マーカー位置決め用軸部には、この天端マーカー位置決め用軸部の長さ方向と平行で且つ互いに直角に連設された帯状主隔壁部と帯状副隔壁部、及びこの帯状主隔壁部と帯状副隔壁部との間の入隅部に、天端マーカー位置決め用軸部の長さ方向等間隔おきに突設された多数の被係止用凸部から構成され、天端マーカー位置決め用軸部の前記被係止部は、上下2つの被係止用凸部間で形成されている、天端ポインター。
【請求項2】
天端マーカー側の前記係止用突起と天端マーカー位置決め用軸部側の前記被係止部は、天端マーカーの回転軸心を対称点としてそれぞれ直径方向両側に点対称に設けられている、請求項1に記載の天端ポインター。
【請求項3】
天端ポインター本体は、前記天端マーカー位置決め用軸部、この天端マーカー位置決め用軸部の上端に連設された上半柱状部、及びこの上半柱状部の上端に連設された膨出頭部を備え、前記上半柱状部と膨出頭部は、前記天端マーカー位置決め用軸部と同様に、天端マーカーの円筒部内を前記係止用突起と干渉しないで相対的に昇降自在な横断面形状に構成された、請求項1又は2に記載の天端ポインター。
【請求項4】
前記天端マーカーは、当該天端マーカーの円筒部が天端ポインター本体の長さ方向に対して直角横向きとなる向きで、天端ポインター本体の上端に捩じ切り用小径軸部を介して一体成形されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の天端ポインター。
【請求項5】
前記天端ポインター本体の下端には、弾性筒状体が同心状に接続され、この弾性筒状体を天端ポインター取付け金具の天端ポインター取付け部に上向きに突設された係止板部に外嵌係止出来るように構成された、請求項1〜4の何れか1項に記載の天端ポインター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートで床版(スラブ)を築造する際に、打設するコンクリート層の表面、即ち、天端の仕上げレベルを表示するために使用される天端ポインターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の天端ポインターにおいて、特許文献1の明細書中に記載されるように、棒状の天端ポインター本体に、天端レベルを表示するマーク部材を高さ調整自在に取り付けることが知られている。しかし、その具体構成は特許文献1には記載されておらず、一般的な設計レベルで容易に想到し得る構成としては、天端ポインター本体に昇降自在に外嵌させたマーク部材を任意の高さでロックボルトによって固定するロックボルト固定方式や、天端ポインター本体に螺軸部を設け、この螺軸部に螺嵌させたマーク部材を正逆回転させることによりマーク部材の高さを調整可能にするネジ方式などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−108472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなロックボルト方式では、ロックボルトの締結操作に手間がかかるだけでなく、振動などでロックボルトが緩むと、容易にマーク部材が重力で降下して、表示される天端レベルが変わってしまう恐れがある。又、ネジ方式では、マーク部材の高さ調整に時間と手間がかかり、マーク部材の高さ調整範囲を大きくすることが実用上出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる天端ポインターを提案するものであって、本発明に係る天端ポインターは、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、天端マーカー(21)と棒状の天端ポインター本体(20)から成り、前記天端マーカー(21)は、天端ポインター本体(20)に昇降自在に外嵌する円筒部(27)、この円筒部(27)から横向きに連設された翼板部(28)、及び前記円筒部(27)の内周面に周方向に沿って突設された係止用突起(29a)から成り、天端ポインター本体(20)には、天端マーカー(21)の円筒部(27)内を前記係止用突起(29a)と干渉しないで相対的に昇降自在な横断面形状の天端マーカー位置決め用軸部(22)が設けられ、この天端マーカー位置決め用軸部(22)には、この天端マーカー位置決め用軸部(22)に対して相対昇降自在な向きの前記天端マーカー(21)を当該天端マーカー位置決め用軸部(22)の周りで回転させたときに前記係止用突起(29a)が周方向に嵌合係止して当該天端マーカー(21)を位置決めする被係止部(22a)が、天端マーカー位置決め用軸部(22)の長さ方向等間隔おきに設けられた天端ポインターにおいて、
前記天端マーカー位置決め用軸部(22)には、この天端マーカー位置決め用軸部(22)の長さ方向と平行で且つ互いに直角に連設された帯状主隔壁部(24)と帯状副隔壁部(25a)、及びこの帯状主隔壁部(24)と帯状副隔壁部(25a)との間の入隅部に、天端マーカー位置決め用軸部(22)の長さ方向等間隔おきに突設された多数の被係止用凸部(26a)から構成され、天端マーカー位置決め用軸部(22)の前記被係止部(22a)は、上下2つの被係止用凸部(26a)間で形成された構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の天端ポインターは、コンクリートスラブ内に埋設される鉄筋組立体の適当な箇所に取り付けられる天端ポインター取付け金具の天端ポインター取付け部に鉛直に起立するように取り付けて使用されるものであって、その使用に際して、天端レベルを表示する天端マーカーが天端ポインター本体の天端レベル相当高さに取り付けられる。而して上記本発明の構成によれば、前記天端マーカーを、天端マーカー位置決め用軸部に対して相対昇降自在な向きにしておくことにより、天端マーカー位置決め用軸部に対して天端マーカーを自由に昇降移動させることが出来る。そして天端マーカーを目的の天端レベル相当高さまで移動させたならば、その天端マーカーを天端マーカー位置決め用軸部の周りで1回転以下の僅かな角度範囲で回転させるだけで、当該天端マーカー側の係止用突起を天端ポインター本体の天端マーカー位置決め用軸部に設けられた被係止部の一つに自動的に嵌合係止させ、天端マーカーを目的の天端レベル相当高さに位置決めすることが出来る。
【0007】
即ち、本発明の天端ポインターによれば、天端マーカーを目的の天端レベル相当高さで位置決めする操作が極めて簡単容易且つ迅速に行えるので、従来のロックボルト方式やネジ方式のものと比較して、天端ポインター配設作業に要する手間と時間を大幅に減縮出来る。更に、本発明の構成によれば、天端マーカー位置決め用軸部を軽量に成形しながらに十分な曲げ強度を持たせることが出来るだけでなく、被係止部を構成する多数の被係止用凸部にも、それぞれ十分な支持強度を持たせることが出来る。
【0008】
尚、天端マーカー(21)側の前記係止用突起(29a,29b) と天端マーカー位置決め用軸部(22)側の前記被係止部(22a) は、天端マーカー(21)の回転軸心を対称点としてそれぞれ直径方向両側に点対称に設けることが出来る。この構成によれば、天端マーカー位置決め用軸部に対して天端マーカーを安定的に位置決めすることが出来る。
【0010】
天端ポインター本体(20)は、前記天端マーカー位置決め用軸部(22)、この天端マーカー位置決め用軸部(22)の上端に連設された上半柱状部(20c) 、及びこの上半柱状部(20c) の上端に連設された膨出頭部(23)を備えた構成とし、前記上半柱状部(20c) と膨出頭部(23)は、前記天端マーカー位置決め用軸部(22)と同様に、天端マーカー(21)の円筒部(27)内を前記係止用突起(29a)と干渉しないで相対的に昇降自在な横断面形状に構成することが出来る。この構成によれば、実際の使用時に作業者への目印として、天端レベルより上方に十分に突出する長さの必要な天端ポインターを、その上端までの全長を天端マーカー位置決め用軸部に形成する場合と比較して、軽量安価に構成することが出来る。又、上端の膨出頭部の存在は、作業者への目印として効果を発揮出来るばかりでなく、用済み後に天端ポインター取付け金具から取り外すときの作業を容易にする。
【0011】
前記天端マーカー(21)は、当該天端マーカー(21)の円筒部(27)が天端ポインター本体(20)の長さ方向に対して直角横向きとなる向きで、天端ポインター本体(20)の上端に捩じ切り用小径軸部(20a) を介して一体成形することが出来る。この構成によれば、天端マーカーと天端ポインター本体とを各別に成形しなければならない場合と比較して、製造コストの削減を図ることが出来る。
【0012】
更に、前記天端ポインター本体(20)の下端には、弾性筒状体(14)が同心状を接続し、この弾性筒状体(14)を天端ポインター取付け金具(1)の天端ポインター取付け部(6)に上向きに突設された係止板部(17)に外嵌係止出来るように構成することが出来る。この構成によれば、使用状態において横向きに外力を受けた天端ポインターが弾性支持力に抗して容易に傾倒出来るようにするために必要な弾性筒状体を、天端ポインター本体を天端ポインター取付け金具に対して着脱自在に接続するための手段に兼用することが出来、下端に天端ポインター取付け金具への取付け部を備えた天端ポインター本体の中間位置に弾性筒状体を介装する構成と比較して、安価に実施できると共に、天端ポインター取付け金具から天端ポインター本体を引上げるだけで天端ポインター本体を取り外すことが出来、天端ポインター本体の取外し作業も容易且つ能率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは、天端ポインター取付け金具の取付け操作の第一段階を示す側面図、図1Bは、天端ポインター取付け金具の取付け完了状態を示す側面図、図1Cは、天端ポインター取付け金具の取付け完了状態を示す平面図である。
図2図2は、同上天端ポインターを使用して天端ポインターを鉄筋組立体の所定箇所に取り付けた状態を示す正面図である。
図3図3は、天端ポインター取付け金具の平面図である。
図4図4は、天端ポインター取付け金具の分解、一部切欠き斜視図である。
図5図5Aは、使用前の天端ポインターを示す正面図、図5Bは同天端ポインターの側面図である。
図6図6Aは、図5BのX−X線拡大断面図、図6Bは、図5BのY−Y線拡大断面図である。
図7図7Aは、天端ポインター本体から切り離した天端マーカーの平面図、図7Bは、同天端マーカーの中央横断正面図である。
図8図8Aは、天端ポインター本体に天端マーカーを上下移動自在に嵌合させた状態を示す横断平面図、図8Bは、その両者の嵌合部分の縦断側面図である。
図9図9Aは、天端ポインター本体に天端マーカーを所定位置で係止させた状態を示す横断平面図、図9Bは、その両者の嵌合部分の縦断側面図である。
図10図10Aは、天端ポインター取付け金具に天端ポインターを取り付けた状態を示す使用前の正面図、図10Bは、その側面図である。要部拡大縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明に係る天端ポインターを使用する際に必要な天端ポインター取付け金具について説明すると、図1に示す天端ポインター取付け金具1は、水平の上側鉄筋2と水平の下側鉄筋3とから成る鉄筋組立体4に棒状の天端ポインター5を鉛直向きに取り付けるための取付け金具であって、天端ポインター取付け部6が設けられた取付け板7と位置決め用弾性把持具8とから成り、前記取付け板7には、前記下側鉄筋3の上に載置される中央部の左右両側から前記上側鉄筋2の下側に入り込む左右一対の延出板部9a,9bが連設され、前記位置決め用弾性把持具8は、取付け板7の前記中央部の下側に取り付けられたもので、前記下側鉄筋3に上から弾性に抗して外嵌させて当該下側鉄筋3を弾性的に把持出来るものであり、この位置決め用弾性把持具8が前記下側鉄筋3を把持した状態で前記左右一対の延出板部9a,9bが前記上側鉄筋2の下側に当接するように構成されている。
【0015】
以下、詳細に説明すると、図3及び図4に示すように、位置決め用弾性把持具8が下側に取り付けられる取付け板7の中央部には、下側鉄筋3の長さ方向と平行に突曲部7aが形成され、1枚の帯状弾性板をΩ形に曲げ加工して成る位置決め用弾性把持具8の天頂部を前記突曲部7aの下側の凹溝部内に嵌合させた状態で、取付け板7と位置決め用弾性把持具8の天頂部とを一箇所のカシメ10により結合している。このカシメ10は、図4に示すように、位置決め用弾性把持具8の天頂部の設けられた1つの取付け孔8aに、取付け板7(突曲部7a)に下向きに形成したバーリング孔の筒状壁部10aを下向きに貫通させ、位置決め用弾性把持具8の天頂部の下側で前記筒状壁部10aをカシメて形成している。位置決め用弾性把持具8の巾(構成する帯状弾性板の巾)は、前記取付け板7の中央部(突曲部7a)の全長の半分以下と小さいので、当該位置決め用弾性把持具8は、延出板部9a,9bが連設される側とは反対側の取付け板7の中央部側辺と面一に位置合わせした状態で取り付けられ、この延出板部9a,9bが連設される側の取付け板7の中央部側辺には、当該中央部側辺を下向きに折曲連設して、下側鉄筋3の上に当接する当接部11が設けられている。
【0016】
左右一対の延出板部9a,9bには、取付け板7内の領域から延出板部9a,9bの先端近傍位置に達する長さで且つ下側に突曲する補強用リブ12が形成され、更に両延出板部9a,9bの先端には、上向きに折曲連設された立上り板部13が設けられている。
【0017】
天端ポインター取付け部6は、天端ポインター5の下端の弾性筒状体14を上から差し込み可能に前記取付け板7に設けられた貫通孔15と、当該取付け板7の側辺から前記貫通孔15の真下位置までL形に折曲連設された折曲連設板部16と、この折曲連設板部16から前記貫通孔15に向かって上向きに折曲連設された係止板部17によって構成されている。更に詳述すると、前記貫通孔15は、バーリング加工で形成されたものであって、取付け板7から下側に突出する筒状板部15aを備えている。係止板部17は、天端ポインター5の下端の弾性筒状体14を弾性に抗して外嵌係止可能な逆止用爪部17aを上端部両側に備えた形状のものである。
【0018】
天端ポインター5は、図5及び図6に示すように、棒状の天端ポインター本体20と、この天端ポインター本体20の上端に捩じ切り用小径軸部20aを介して一体成形により連設した天端マーカー21、及び天端ポインター本体20の下端円柱状軸部20bに上端部を外嵌固定した弾性筒状体14から構成されている。天端ポインター本体20は、天端マーカー21を固定する下半領域に形成した天端マーカー位置決め用軸部22と、上端に連設した膨出頭部23を備えている。天端マーカー位置決め用軸部22と膨出頭部23との間の天端ポインター本体20の上半柱状部20cは、横断面が十字形の柱状に形成されている。
【0019】
天端マーカー位置決め用軸部22は、横断面において中央に位置する直径方向の帯状主隔壁部24と、この帯状主隔壁部24の両側で中心に対する点対称位置から直角外向きに連設された帯状副隔壁部25a,25bと、これら帯状主隔壁部24と両帯状副隔壁部25a,25bとの間の入隅部において天端ポインター本体20の長さ方向等間隔おきに一体成形された被係止用凸部26a,26bによって構成されている。この帯状主隔壁部24の両側の被係止用凸部26a,26bを結ぶ直径方向の巾は、この天端マーカー位置決め用軸部22の全体の最大直径とほぼ同一であり、中央に位置する帯状主隔壁部24の直径方向の巾は、この天端マーカー位置決め用軸部22の全体の最大直径より十分に小さい。従って、この天端マーカー位置決め用軸部22の平面形状は、帯状主隔壁部24の両側の被係止用凸部26a,26bを結ぶ直径方向の長さを長辺とする略長方形になっている。又、被係止用凸部26a,26bは、互に逆向きの先端近くの上下両面に括れ部を備えた矢形形状のものであり、上下に隣接する2つの被係止用凸部26a間及び被係止用凸部26b間によって、被係止部22aが形成されている。
【0020】
天端マーカー21は、捩じ切り用小径軸部20aで捩じ切ることにより天端ポインター本体20から切り離すことが出来るものであって、図7に示すように、その中央の円筒部27と、当該円筒部27から左右両側に一体に連設した左右一対の翼板部28から構成されている。前記円筒部27は、天端マーカー位置決め用軸部22の最大直径より内径が少し大きなものであり、その内周面には、直径方向の両側に一対の係止用突起29a,29bが突設されている。又、翼板部28a,28bの円筒部27につながる付け根には、図7Bに示すように、翼板部28a,28bの上下方向の屈曲を可能にする薄肉状ヒンジ部28a,28bが形成されている。
【0021】
これら一対の係止用突起29a,29bは、図8に示すように、平面形状が長方形の当該天端マーカー位置決め用軸部22の短辺方向の両側に係止用突起29a,29bを位置させた状態では、この円筒部27を天端ポインター本体20の天端マーカー位置決め用軸部22に外嵌させて、天端ポインター本体20の軸方向に天端マーカー21を移動させることが出来るものであって、この円筒部27を天端ポインター本体20の天端マーカー位置決め用軸部22に外嵌させた状態で当該円筒部27を、天端ポインター本体20を中心に所定方向、即ち、係止用突起29a,29bの先端が向かう方向に回転させることにより、両側の係止用突起29a,29bを天端ポインター本体20の天端マーカー位置決め用軸部22の被係合部22a、即ち、上下に隣接する2つの被係止用凸部26a間及び上下に隣接する2つの被係止用凸部26b間に周方向に嵌合させることが出来る。そして係止用突起29a,29bを被係止用凸部26a,26b間に周方向に嵌合させたとき、図9に示すように、当該被係止用凸部26a,26bの先端近くの括れ部に、係止用突起29a,29bの先端近くの上下両側に突設されている逆止用凸部が自動係合して抜け止めとなるように構成されている。
【0022】
尚、係止用突起29a,29bの後端には立上り壁部30a,30bが一体に連設されている。この立上り壁部30a,30bは、円筒部27に対する係止用突起29a,29bの取付け強度を高めるものであるが、係止用突起29a,29bが被係合部22aに嵌合したとき、上側の被係止用凸部26a,26bの先端に立上り壁部30a,30bが当接するように構成して、円筒部27の回転角を制限させる手段にも利用出来る。勿論、この立上り壁部30a,30bによって円筒部27の回転角を制限させないで、係止用突起29a,29bが被係合部22aに嵌合したときに当該係止用突起29a,29bの先端が被係合部22aの奥端に当接することにより、円筒部27の回転角が制限されるように構成することが出来る。
【0023】
尚、天端ポインター本体20の上端の膨出頭部23は、図5に示すように、天端マーカー21における円筒部27内の一対の係止用突起29a,29b間で当該円筒部27内を軸方向に貫通移動させることが出来るように、平面形状が長円形に構成されている。又、図5に示すように、当該膨出頭部23には、材料削減と軽量化のための多数の凹部が形成されている。この膨出頭部23、天端マーカー位置決め用軸部22、及び横断面十字形の上半柱状部20cを含む天端ポインター本体20と天端マーカー21とを、図5に示す向きで、捩じ切り用小径軸部20aを介して一体に連設することにより、図5Aの中心線で左右に分割される割り型を利用して、一体に合成樹脂成形出来る。
【0024】
使用に際しては、捩じ切り用小径軸部20aを捩じ切ることにより天端マーカー21を天端ポインター本体20から切り離し、この天端マーカー21を天端ポインター本体20の膨出頭部23を経由させて天端マーカー位置決め用軸部22に外嵌させる。そして天端ポインター本体20の下端に接続されている弾性筒状体14を、図10に示すように、取付け金具1の天端ポインター取付け部6に取り付ける。即ち、取付け板7の貫通孔15に弾性筒状体14を上から下向きに挿通させて、当該弾性筒状体14の下端部を係止板部17に弾性に抗して外嵌させ、係止板部17の逆止用爪部17aを弾性筒状体14の内周面に食い込ませて、天端ポインター本体20を取付け板7に対し垂直に起立する状態に取り付ける。このようにして天端ポインター5を天端ポインター取付け金具1に取り付けたならば、図1に示すように、鉄筋組立体4の天端ポインター取付け位置に天端ポインター取付け金具1を取り付ける。
【0025】
即ち、鉄筋組立体4が有する多数の上下両鉄筋2,3の交差部から天端ポインター取付け位置を選択し、図1に示すように、その上下両鉄筋2,3の交差部における下側鉄筋3を左右一対の延出板部9a,9bが挟む状態で当該左右一対の延出板部9a,9bを上側鉄筋2の下側に入り込ませながら、位置決め用弾性把持具8を下側鉄筋3に外嵌させるように、取付け板7の中央部(突曲部7a)を下側鉄筋3の側へ押し下げ、位置決め用弾性把持具8を下側鉄筋3に弾性に抗して外嵌係止させる。この結果、左右一対の延出板部9a,9b間に位置する取付け板7の中央部(突曲部7a)の当接部11が下側鉄筋3の上に当接し、左右一対の延出板部9a,9bの先端の立上り板部13と取付け板7の中央部(突曲部7a)との間に位置する上側鉄筋2の下側に左右一対の延出板部9a,9bが当接して、取付け板7が水平姿勢で支持されることになる。
【0026】
このとき、取付け板7が下側鉄筋3の周りで上下にシーソー運動することは、左右一対の延出板部9a,9bが下側鉄筋3の左右両側で上側鉄筋2の下側に当接していることにより阻止され、取付け板7が下側鉄筋3上に当接する当接部11を支点に左右一対の延出板部9a,9bが上下に揺動することは、当該左右一対の延出板部9a,9bが上側鉄筋2の下側に当接していることと、位置決め用弾性把持具8が下側鉄筋3に上から嵌合していることにより阻止されている。又、取付け板7が下側鉄筋3上で当該下側鉄筋3の長さ方向にスライドすることは、左右一対の延出板部9a,9bの先端の立上り板部13と上側鉄筋2との当接又は取付け板7の中央部(突曲部7a)と上側鉄筋2との当接によって阻止されるが、実際には、位置決め用弾性把持具8と下側鉄筋3との嵌合状態における両者間の摩擦抵抗と、左右一対の延出板部9a,9bと上側鉄筋2との間の摩擦抵抗により、当該取付け板7のスライドが防止されるように構成しておくのが望ましい。
【0027】
上記のように鉄筋組立体4の上下両鉄筋2,3の交差部に隣接するように天端ポインター取付け金具1が取り付けられることにより、取付け板7が鉄筋組立体4の下側鉄筋3の上に水平に固定された状態となり、この取付け板7の天端ポインター取付け部6に上記のように垂直に取り付けられている天端ポインター5は、図2に示すようにほぼ鉛直に起立することになる。この状態で、天端ポインター5の天端ポインター本体20における天端マーカー位置決め用軸部22に外嵌されている天端マーカー21を所定の天端レベルに調整する。即ち、天端マーカー位置決め用軸部22に対して天端マーカー21を位置決め解除方向に逆回転させて、図8に示すように、天端マーカー位置決め用軸部22の短辺方向の両側に天端マーカー21側の係止用突起29a,29bが位置する昇降自在な状態にし、天端マーカー位置決め用軸部22に対して天端マーカー21を所定の天端レベルまで昇降移動させる。
【0028】
天端マーカー21を所定の天端レベルに位置調整したならば、天端マーカー21を天端マーカー位置決め用軸部22に対して位置決め作用方向に正回転させ、図9に示すように、天端マーカー21側の係止用突起29a,29bを天端マーカー位置決め用軸部22の被係合部22a、即ち、上下に隣接するそれぞれ2つの被係止用凸部26a,26b間に周方向に弾性に抗して制限される深さまで圧入させる。以上の操作により、天端マーカー21が所定の天端レベルで天端ポインター本体20における天端マーカー位置決め用軸部22に固定される。この天端ポインター5の取付け状態において、天端ポインター取付け金具1は下側鉄筋3の上に被さった状態であって、上側鉄筋2より上方に突出する部分が生じる可能性は皆無であるから、上側鉄筋2に対するコンクリートの被り厚さを薄くする恐れは全く無い。
【0029】
打設コンクリートの天端の仕上げ作業は、天端マーカー21の左右一対の翼板部28を打設コンクリートの天端の仕上げレベルとして従来周知のように行われるが、この作業中に天端ポインター5を横側方に倒すような外力が作用した時は、図2に仮想線で示すように、取付け板7の貫通孔15から上方に突出する弾性筒状体14の弾性撓みを利用して天端ポインター5が傾倒し、その外力を吸収出来る。そしてその外力から解放されたとき、弾性筒状体14の弾性復元力により天端ポインター5が元の鉛直姿勢に自動的に復帰する。又、天端マーカー21の左右一対の翼板部28に対して上下方向の外力が作用した時は、その付け根の薄肉状ヒンジ部28a,28bの存在により、当該翼板部28が容易に上下方向に撓んでその外力を吸収出来る。そして打設コンクリートの天端の仕上げ作業が済んだ箇所から、打設コンクリートの天端から突出している天端ポインター5を強く引き上げて、その下端の弾性筒状体14を天端ポインター取付け金具1側の係止板部17から上方に離脱させて抜き取ることが出来る。
【0030】
尚、天端ポインター5が取り付けられていない状態の天端ポインター取付け金具1を鉄筋組立体4の所定箇所に取り付けた後に、当該天端ポインター取付け金具1に対して天端ポインター5を取り付けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の天端ポインターは、スラブ築造現場において、鉄筋組立体側に取り付けられた天端ポインター取付け金具にほぼ鉛直の起立姿勢で取り付けて、天端レベルを作業者に表示させる天端ポインターとして活用することが出来る。
【符号の説明】
【0032】
1 天端ポインター取付け金具
2 上側鉄筋
3 下側鉄筋
4 鉄筋組立体
5 天端ポインター
6 天端ポインター取付け部
7 取付け板
8 位置決め用弾性把持具
9a,9b 左右一対の延出板部
10 カシメ
11 当接部
13 立上り板部
14 弾性筒状体
15 貫通孔
16 折曲連設板部
17 係止板部
20 天端ポインター本体
20a 捩じ切り用小径軸部
20b 下端円柱状軸部
20c 上半柱状部
21 天端マーカー
22 天端マーカー位置決め用軸部
22a 被係止部
23 膨出頭部
24 帯状主隔壁部
25a,25b 帯状副隔壁部
26a,26b 被係止用凸部
27 円筒部
28 左右一対の翼板部
29a,29b 係止用突起
30a,30b 立上り壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10