(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明現像剤が、結着樹脂と離型剤とを含み、前記結着樹脂と前記離型剤との合計に対する前記離型剤の重量比が、4.9重量%以上7.2重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置100の構成例を示す概略図である。画像形成装置100は、有色の現像剤である有色現像剤と、透明色の現像剤である透明現像剤とを用いて光沢差のある画像を形成する。一つの態様では、画像形成装置100は、同一の記録媒体上で光沢差のある画像を形成する。例えば、画像形成装置100は、同一の記録媒体上に、光沢度が低い画像領域と、光沢度が高い画像領域とを形成する。別の一態様では、画像形成装置100は、異なる記録媒体間で光沢差のある画像を形成する。例えば、画像形成装置100は、ある記録媒体に光沢度が低い画像を形成し、別の記録媒体に光沢度が高い画像を形成する。
【0012】
画像形成装置100は、有色現像剤により有色現像剤像を形成する第1の現像装置と、透明現像剤により透明現像剤像を形成する第2の現像装置とを備える。画像形成装置100は、第1の現像装置および第2の現像装置を用いて、記録媒体上に有色現像剤像を形成するとともに有色現像剤像上に選択的に透明現像剤像を形成し、記録媒体上に形成された有色現像剤像および透明現像剤像を定着装置により定着させる。これにより、記録媒体上の有色現像剤像が形成された画像領域のうち、透明現像剤像が形成された画像領域の光沢度が、透明現像剤像が形成されていない画像領域の光沢度よりも高くなり、光沢差のある画像が得られる。
【0013】
本例では、画像形成装置100は、カラー印刷可能な電子写真方式のプリンタであり、有色現像剤としてのブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のカラートナーと、透明現像剤としての透明色のクリアトナーとを用いて、記録媒体としての用紙P上にカラー画像を形成する。
【0014】
図1において、画像形成装置100は、画像形成部1K、1Y、1M、1C、1T、露光装置としてのLEDヘッド30K、30Y、30M、30C、30T、媒体供給部40、転写部50、および定着部60を備える。
【0015】
画像形成部1K、1Y、1M、1Cは、それぞれブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの有色現像剤像としてのカラートナー像を形成する。画像形成部1K、1Y、1M、1Cは、それぞれ、潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム11K、11Y、11M、11Cと、感光体ドラムに形成された潜像をカラートナーで現像してカラートナー像を形成する第1の現像装置としての現像装置13K、13Y、13M、13Cとを有する。画像形成部1Tは、透明現像剤像としてのクリアトナー像を形成する。画像形成部1Tは、潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム11Tと、感光体ドラムに形成された潜像をクリアトナーで現像してクリアトナー像を形成する第2の現像装置としての現像装置13Tとを有する。画像形成部1K、1Y、1M、1C、1Tは、用紙搬送方向に沿ってこの順に配置される。各画像形成部は、画像形成装置100の本体に対して着脱可能に設置される。
【0016】
LEDヘッド30K、30Y、30M、30C、30Tは、それぞれ感光体ドラム11K、11Y、11M、11C、11Tの表面を露光して静電潜像を形成する。各LEDヘッドは、対応する感光体ドラムと対向して配置される。各LEDヘッドは、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)素子と、LED素子から出射される光を感光体ドラムの表面に結像させるレンズアレイとで構成される。
【0017】
媒体供給部40は、画像形成部1K、1Y、1M、1C、1Tに記録媒体としての用紙Pを供給する。媒体供給部40は、用紙Pを収容する用紙カセット41と、用紙カセット41に収容された用紙Pを1枚ずつ分離して繰り出す用紙搬送ローラ42a、42bと、繰り出された用紙Pの斜行を矯正して当該用紙Pを画像形成部に搬送する用紙搬送ローラ42c〜42fとを有する。
【0018】
転写部50は、画像形成部1K、1Y、1M、1C、1Tにより形成されたトナー像を、媒体供給部40から供給される用紙P上に転写する。転写部50は、媒体搬送部材としての転写ベルト51、ドライブローラ52、テンションローラ53、および転写部材としての転写ローラ54K、54Y、54M、54C、54Tを有する。転写ベルト51は、媒体供給部40から供給される用紙Pを保持して搬送する無端状の部材である。ドライブローラ52は、転写ベルト51を駆動する。テンションローラ53は、ドライブローラ52とともに転写ベルト51を張架する。転写ローラ54K、54Y、54M、54C、54Tは、それぞれ、転写ベルト51を挟んで感光体ドラム11K、11Y、11M、11C、11Tと対向して配置され、対応する感光体ドラム上に形成されたトナー像を転写ベルト51上の用紙Pに転写する。さらに、転写部50は、転写ベルト51に付着したトナーを除去する転写ベルトクリーニングブレード55と、転写ベルトクリーニングブレード55により除去されたトナーを収容するトナーボックス56とを有する。
【0019】
定着部60は、転写部50の用紙搬送方向下流側に配置され、用紙Pに転写されたトナー像を定着させる。定着部60は、定着ローラ61、定着ローラ61を加熱するヒータ62、定着ローラ61と圧接する加圧ローラ63、および定着ローラ61の表面の温度を検出するサーミスタ等の温度センサ64を有する。定着部60の用紙搬送方向下流側には、定着部60を通過した用紙Pを搬送してスタッカ72に排出する用紙搬送ローラ71a〜71dが配置される。また、両面印刷を行うための構成として、用紙搬送ローラ73a〜73nおよび搬送路切り替えガイド74、75が配置される。
【0020】
図2に示すように、画像形成装置100は、さらに、制御部2、駆動部3、および電源部4を備える。制御部2は、例えば中央処理装置(CPU)を含み、画像形成装置100の動作を制御する。駆動部3は、例えばモータを含み、制御部2からの指示に従い、画像形成部1K、1Y、1M、1C、1T、媒体供給部40、転写部50、定着部60など、画像形成装置100の各部に駆動力を供給する。電源部4は、制御部2からの指示に従い、画像形成部1K、1Y、1M、1C、1T、転写部50、定着部60など、画像形成装置100の各部に電圧または電力を供給する。
【0021】
制御部2は、図示しない上位装置またはユーザ等からの印刷指示に基づき、画像形成部1K、1Y、1M、1Cにより用紙P上にカラートナー像を形成し、画像形成部1Tにより用紙P上のカラートナー像上の特定の領域にクリアトナー像を形成し、用紙P上に形成されたカラートナー像およびクリアトナー像を定着部60により用紙Pに定着させる。このとき、制御部2は、例えば、印刷指示で指定された領域、または印刷指示に含まれる透明色の画像情報で示される領域に、クリアトナー像を形成する。印刷指示において、ユーザは、光沢を付与したい任意の箇所を指定することができる。
【0022】
図3は、画像形成部1Kの構成を示す概略図である。以下、
図3を参照して、画像形成部1Kの構成について説明する。なお、画像形成部1Y、1M、1C、1Tの構成については、トナーの色を除いて画像形成部1Kと同様であるので、説明を省略する。
【0023】
画像形成部1Kは、画像形成ユニット10と、現像剤収容器としてのトナーカートリッジ20とを有する。画像形成ユニット10は、トナーを用いてトナー像を形成するユニットである。トナーカートリッジ20は、トナーを収容する容器である。トナーカートリッジ20は、画像形成ユニット10に対して着脱可能に装着される。
【0024】
画像形成ユニット10は、感光体ドラム11K、帯電装置としての帯電ローラ12、現像装置13K、およびクリーニング装置14を備える。
【0025】
感光体ドラム11Kは、トナー像を担持する部材であり、例えば、導電性支持体としてのアルミニウムパイプに光導電層としての電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成を有する有機系感光体である。感光体ドラム11Kは、図中矢印(a)方向に回転する。感光体ドラム11Kの周囲には、その回転方向に沿って、帯電ローラ12、LEDヘッド30K、現像装置13K、転写ローラ54K、およびクリーニング装置14が、この順に配置される。
【0026】
帯電ローラ12は、感光体ドラム11Kの表面を一様に帯電させる。帯電ローラ12は、感光体ドラム11Kの表面に接触して配置され、図中矢印(b)方向に回転する。帯電ローラ12は、例えば、金属シャフトとその周囲に形成された半導電性ゴム層とによって構成される。帯電ローラ12により帯電された感光体ドラム11Kの表面には、LEDヘッド30Kにより静電潜像が形成される。
【0027】
現像装置13Kは、感光体ドラム11Kに形成された静電潜像をトナーTで現像してトナー像を形成する。現像装置13Kは、トナーTを保持して静電潜像に供給する現像剤担持体としての現像ローラ13aと、現像ローラ13aにトナーTを供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ13bと、現像ローラ13a上に供給されたトナーTを均一に薄層化する現像剤規制部材としての現像ブレード13cとを有する。現像ローラ13aは、感光体ドラム11Kの表面に接触して配置され、図中矢印(c)方向に回転する。現像ローラ13aは、例えば、金属シャフトとその周囲に形成された半導電性ウレタンゴム層とによって構成される。トナー供給ローラ13bは、現像ローラ13aの表面に接触して配置され、図中矢印(d)方向に回転する。トナー供給ローラ13bは、例えば、金属シャフトとその周囲に形成された半導電性発泡シリコンスポンジ層とによって構成される。現像ブレード13cは、現像ローラ13aの表面に接して配置され、例えばステンレスなどの板状部材で構成される。現像装置13Kにより感光体ドラム11K上に形成されたトナー像は、転写ローラ54Kにより用紙P上に転写される。
【0028】
クリーニング装置14は、感光体ドラム11Kを清掃する装置であり、トナー像の転写後に感光体ドラム11Kの表面に残留したトナーTを除去する。クリーニング装置14は、例えば、感光体ドラム11Kの表面に圧接されるウレタンゴムなどのクリーニングブレードを有する。
【0029】
トナーカートリッジ20は容器21を備え、容器21はトナーTを収容する内部空間である収容部22を有する。容器21の下部には、収容部22に収容されたトナーTを外部に排出するための排出口23が形成される。また、収容部22の下部には、排出口23を開閉するためのシャッタ24が配置される。シャッタ24は、例えばシャッタ24に固定されたレバー部材の操作により、容器21に対して図中矢印(e)方向に移動し、これにより排出口23が開閉される。トナーカートリッジ20が画像形成ユニット10に装着される前の状態においては、シャッタ24は、排出口23を閉鎖する位置(一点鎖線で示される位置)にあり、トナーカートリッジ20が画像形成ユニット10に装着された後に、レバー部材の操作等により排出口23を開放する位置(実線で示される位置)に移動する。これにより、収容部22に収容されたトナーTが、排出口23から図中矢印(f)方向に落下し、画像形成ユニット10に供給される。さらに、トナーカートリッジ20は、収容部22に収容されたトナーTを撹拌する撹拌部材である撹拌バー25を有する。攪拌バー25は、収容部22内に配置され、図中矢印(g)、(h)方向に回転する。
【0030】
次に、本実施の形態におけるトナーについて説明する。
クリアトナーは、結着樹脂を含む。結着樹脂(または基材)としては例えばポリエステル樹脂が用いられる。クリアトナーは、離型剤を含んでもよい。離型剤としては例えばパラフィンワックスが用いられる。クリアトナーは、例えば溶解懸濁法によって生成される。溶解懸濁法では、例えば、結着樹脂および離型剤を含むトナー成分を有機溶媒中に溶解または分散させた油相を、無機分散剤を分散させた水相中に分散させて、トナー粒子を生成する。この方法では、トナーを生成する過程でトナー中に無機微粒子が取り込まれ、これによりトナーの吸湿性が上がり、トナーの保存性が悪化する場合がある。そこで、無機微粒子の取り込みを防ぎ、トナーの保存性を向上させる観点より、好適な一態様では、トナーの結着樹脂として、下記式(1)で表される長鎖アルキル基で修飾されたポリエステル樹脂が用いられる。カラートナーは、クリアトナーと同様の製造方法で製造されてもよいし、異なる製造方法で製造されてもよい。カラートナーは、例えば、結着樹脂、着色剤、および離型剤を含む。
【化1】
【0031】
次に、
図1〜
図3を参照して、画像形成装置100の印刷動作を説明する。
図2において、制御部2は、図示しない上位装置またはユーザ等からの印刷指示を受けると、駆動部3を制御して、各感光体ドラム、現像ローラ13a、ドライブローラ52、定着部60の各ローラ、および各用紙搬送ローラ等を回転させる。また、制御部2は、電源部4を制御して、帯電ローラ12、現像ローラ13a、供給ローラ13b、現像ブレード13c、および各転写ローラ等に所定の電圧を印加する。また、制御部2は、印刷指示に含まれる各色の画像情報に基づいて各色のLEDヘッドを駆動する。さらに、制御部2は、電源部4を制御して定着部60に電力を供給する。このとき、制御部2は、温度センサ64の検出温度に基づき、定着ローラ61の表面の温度が所定の定着温度となるように、ヒータ62に供給される電力を制御する。このような制御により、以下の印刷動作が行われる。
【0032】
図1において、画像形成部1K、1Y、1M、1C、1Tでは、それぞれ感光体ドラム11K、11Y、11M、11C、11T上に各色のトナー像が形成される。一方、用紙カセット41内の用紙Pは、用紙搬送ローラ42a、42bによって図中矢印(i)方向に送り出された後、用紙搬送ローラ42c〜42fによって図中矢印(j)方向に搬送されて転写部50に供給される。転写部50では、ドライブローラ52が図中矢印(k)方向に回転し、転写ベルト51が図中矢印(l)、(m)方向に回転し、転写ローラ54K、54Y、54M、54C、54Tが転写ベルト51の回転に伴って図中矢印(n)方向に回転する。転写ベルト51の画像形成部側の表面は、矢印(l)方向に走行する。用紙搬送ローラ42c〜42fから供給された用紙Pは、転写ベルト51上に保持されて矢印(l)方向に搬送され、感光体ドラム11K、11Y、11M、11C、11Tを順に通過する。このとき、用紙P上には、各感光体ドラム上に形成された各色のトナー像が、各転写ローラによって、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、クリアの順番で転写される。すなわち、媒体供給部40から搬送された用紙P上には、各画像形成部によって形成されたトナー像が、用紙搬送方向における上流側から順に重ねて形成される。トナー像が形成された用紙Pは、転写ベルト51により図中矢印(o)方向に搬送されて定着部60に送られる。定着部60では、定着ローラ61は図中矢印(p)方向に回転し、加圧ローラ63は図中矢印(q)方向に回転し、定着ローラ61および加圧ローラ63は、転写部50からの用紙Pを挟んで搬送する。このとき、定着ローラ61と加圧ローラ63との当接部において、用紙P上に形成されたトナー像は、加熱および加圧されて用紙Pに定着し、カラー画像が形成される。定着部60を通過した用紙Pは、用紙搬送ローラ71a〜71dによって図中矢印(r)方向に搬送され、スタッカ72に排出される。なお、両面印刷の場合には、定着部60を通過した用紙Pは、用紙搬送ローラ73a〜73nおよび搬送路切り替えガイド74、75により、図中矢印(s)方向に搬送されて停止した後、矢印(t)、(u)、(v)、(w)方向に搬送され、再び転写部50に送られる。
【0033】
上記の印刷動作において、画像形成部1Kでは、以下のようにトナー像の形成が行われる。なお、画像形成部1Y、1M、1C、1Tの動作については、画像形成部1Kと同様であるので、説明を省略する。
【0034】
図3において、感光体ドラム11Kは、図中矢印(a)方向に回転する。この感光体ドラム11Kの表面は、帯電ローラ12により一様に帯電される。感光体ドラム11Kの帯電した表面には、LEDヘッド30Kから画像情報に応じた光が照射され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。現像装置13Kでは、トナーカートリッジ20から供給されたトナーTが供給ローラ13bにより現像ローラ13aに供給され、現像ローラ13aに供給されたトナーTが現像ブレード13cにより均一な厚さに均される。感光体ドラム11K上に形成された静電潜像は、現像ローラ13a上の均一化されたトナーTによって現像され、感光体ドラム11K上にトナー像が形成される。感光体ドラム11K上に形成されたトナー像は、転写ローラ54Kによって用紙P上に電気的に転写される。用紙P上に転写されず、感光体ドラム11Kの表面に残った残留トナーは、クリーニング装置14によって除去される。
【0035】
図4は、用紙P上に転写されたトナー像Aを示す概略断面図である。
図4に示されるように、用紙P上には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのうちの少なくとも1色のカラートナーによるカラートナー像Bが形成され、その上層にクリアトナーによるクリアトナー像Cが形成される。
図4において、クリアトナー像Cは、カラートナー像B上に部分的に形成されている。したがって、用紙P上には、カラートナー像Bが形成され、その上にクリアトナー像Cが形成されていない画像領域(以下、「カラートナー領域」という)R1と、カラートナー像Bが形成され、その上にクリアトナー像Cが形成されている画像領域(以下、「クリアトナー領域」という)R2とが形成されている。
【0036】
用紙P上に転写されたトナー像Aは、定着部60によって定着される。本実施の形態では、定着温度は160℃±10℃に設定されており、このときにトナー像Aに印加される温度は約120℃となる。定着ローラ61の表面と用紙P上のトナー層との間には空気の層があり、この空気の層が伝熱抵抗となるので、トナーが受ける温度は160℃より低くなり、約120℃となる。このため、後述する実施例においては、120℃における各トナーの粘度を測定している。
【0037】
ここで、トナーの粘度が小さいほど、定着後のトナー像表面の平滑度が高くなり、表面の光沢度が高くなる。そこで、本実施の形態では、カラートナーの粘度と比べてクリアトナーの粘度を十分に小さくする。具体的には、カラートナーの粘度v1に対するクリアトナーの粘度v2の比(v2/v1)、すなわちカラートナーに対するクリアトナーの粘度比を所定値以下とする。これにより、カラートナー領域R1と比べて、クリアトナー領域R2の定着後の表面の平滑度が高くなり、光沢度が高くなり、良好な光沢差が得られる。
【0038】
より詳しく説明すると、例えば、クリアトナーの粘度がカラートナーの粘度と略同一である場合には、定着部60によってトナー像Aに所定の熱量が加えられたとき、クリアトナーとカラートナーとで溶け終わるまでの時間が略同一となるため、クリアトナー領域R2とカラートナー領域R1とで、定着後の表面の平滑さが略同一となり、光沢度が略同一となる。この場合、例えば、クリアトナー領域R2の定着後の表面は、その平滑さが低いことから、拡散反射により白濁したように見え、高グロスにならない。
【0039】
これに対し、本実施の形態のように、クリアトナーの粘度をカラートナーの粘度よりも小さく設定した場合は、定着部60によってトナー像Aに所定の熱量が加えられたとき、クリアトナーがカラートナーよりも早く溶け終わるようになるので、カラートナー領域R1の定着後の表面よりも、クリアトナー領域R2の定着後の表面が平滑になり、光沢度が高くなる。この場合、例えば、クリアトナー領域R2の定着後の表面は、その平滑さが高いことから、正反射が強くなり、高グロスになる。
【0040】
トナーの粘度は、結着樹脂のガラス転移温度Tgまたは溶融温度T1/2を調整することで変更することができる。ここで、結着樹脂の溶融温度T1/2を調整してトナーの粘度を変更することが好ましく、溶融温度T1/2を大きくすることで粘度を大きく設定することができ、溶融温度T1/2を小さくすることで粘度を小さく設定することができる。上記T1/2は、1/2法における溶融温度である。以下の説明では、ガラス転移温度Tgを単に「Tg」と表記し、溶融温度T1/2を単に「T1/2」と表記する。
【0041】
なお、同じクリアトナーを用いた場合、クリアトナー像Cの下に形成されるカラートナー像Bのトナーの色や種類によらず、クリアトナー領域R2の定着後の表面の光沢度は略同じとなる。すなわち、クリアトナー領域R2の定着後の表面の光沢度は、クリアトナー像Cの下層のカラートナー像Bのトナーの色や種類に殆ど依存しない。また、結着樹脂の分子量分布を一定とした場合、トナーの溶融開始温度が低いほど、所定温度(例えば120℃)におけるトナーの粘度は小さくなり、定着後のトナー像表面の平滑性が上がる。したがって、クリアトナーの粘度をカラートナーの粘度と比べて小さくするために、クリアトナーの溶融開始温度をカラートナーの溶融開始温度よりも低く設定してもよい。トナーの溶融開始温度は、例えば後述のフローテスターにより測定することができる。また、良好な光沢差を得ることにより、例えば、カラートナー領域とクリアトナー領域とを有する印刷物において、クリアトナー領域の光沢を目立たせることができる。
【0042】
次に、実施例1および比較例1〜3を示す。
(実施例1)
実施例1では、以下の製造方法でクリアトナーを生成した。
まず、無機分散剤を分散させた水性媒体を得る工程において、純水37680重量部に工業用リン酸三ナトリウム十二水和物1110重量部を混合し、液温60℃で溶解させた後、pH調整用の希硝酸を添加した。さらに、純水4360重量部に工業用塩化カルシウム無水物540重量部を溶解させた塩化カルシウム水溶液を投入し、ネオミクサー(プライミクス株式会社製)にて4300回転/分の回転速度で、液温を60℃に保ちながら34分間高速撹拌して、分散剤を含む水相を調製した。
【0043】
一方、酢酸エチル5300重量部を液温50℃に加熱撹拌し、パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、PARACOHOL−6150、融点:67℃)56重量部を加えた。本ワックスは通常のパラフィンワックスと比べて酢酸エチルに対する溶解性が良好であり、投入後数分で完全に溶解した。ワックスを溶解させた後、上記式(1)の構造を有する長鎖アルキル基で修飾して疎水性を上げた、Tgが68℃、T1/2が115℃のポリエステル樹脂1090重量部を投入し、固形物がなくなるまで撹拌して油相を調製した。ポリエステル樹脂のTgは示差走査熱量計(SIIナノテクノロジーズ社製、DSC6220)にて測定し、T1/2はフローテスター(島津製作所製、CFT−500D)にて測定した。
【0044】
水相の液温を60℃に保持し、水相に油相を投入し、ネオミクサー(プライミクス株式会社製)にて1700回転/分の回転速度で10分間高速撹拌することによって懸濁させ、粒子を形成した。その後、減圧蒸留にて酢酸エチルを除去した。
【0045】
液中の粒子を一度脱水した後、純水に再分散させ、硝酸を加えてpHを1.5以下にして撹拌し酸洗浄を行い、懸濁安定剤であるリン酸三カルシウムを溶解させた。もう一度同様に酸洗浄を行った。さらに、脱水した粒子を純水に再分散させ、撹拌し、水洗浄を行った。その後、脱水、乾燥を行い、トナー母粒子を生成した。
【0046】
次に、外添工程において、生成したトナー母粒子100重量部に、疎水性シリカRX50(日本アエロジル社製、平均一次粒子径40nm)1.0重量部と、疎水性シリカRX200(日木アエロジル社製、平均一次粒子径12nm)0.8重量部とを添加し、10リットル容積のヘンシェルミキサーで5400回転/分の回転速度で10分間撹拌することでクリアトナーを得た。
【0047】
本実施例のクリアトナーのTgを測定したところ、67℃であった。また、本実施例のクリアトナーの粘弾性を測定したところ、粘度は982Pa・sであった。次に、本実施例の印刷評価に使用する各カラートナーの粘弾性を同様に測定したところ、粘度は、イエローが3504Pa・s、マゼンタが3962Pa・s、シアンが2422Pa・s、ブラックが3650Pa・sであった。したがって、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、以下の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.28
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.25
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.41
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.27
【0048】
なお、クリアトナーのTgは示差走査熱量計DSC6220にて測定し、クリアトナーおよびカラートナーの粘弾性はレオメーター(レオロジカ社製、VAR−100AD)にて測定した。また、測定されたクリアトナーおよびカラートナーの粘度は120℃における粘度であり、粘度比も120℃におけるものである。これらのことは、実施例2〜4および比較例1〜6についても同じである。
【0049】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、上記本実施の形態に係る画像形成装置により印刷を行い、印刷画像の光沢評価を行った。この光沢評価では、用紙上にイエロートナーの100%Dutyのベタ画像を転写し、このイエロートナーのベタ画像上の一部の領域にクリアトナーの100%Dutyのベタ画像を重ねて転写して定着し、印刷画像を得た。そして、この印刷画像のうち、クリアトナーを印刷した部分の光沢度と、クリアトナーを印刷せず、イエロートナーのみを印刷した部分の光沢度とを測定し、両部分の光沢度の差を光沢差として求めた。光沢度の測定は、グロスメータ(村上色彩技術研究所製、GM−26D)にて行った。イエローと同様に、マゼンタ、シアン、ブラックについても、クリアトナー印刷部の光沢度と非クリアトナー印刷部の光沢度とを測定し、光沢差を求めた。そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれについて、光沢差のレベルを次のように判定した。光沢差が15以上の場合は「非常に良好」(○)、光沢差が10以上14以下の場合は「良好」(△)、光沢差が9以下の場合は「悪い」(×)と判定した。
【0050】
実施例1の光沢評価では、光沢差は、イエローが24、マゼンタが20、シアンが16、ブラックが24であった。各色にて光沢差が15以上となり、光沢差のレベルは「非常に良好」となり、見た目にも良好な光沢差のある印刷結果が得られた。
【0051】
(比較例1)
比較例1では、使用したポリエステル樹脂のTgが71℃、T1/2が121℃であることを除き、実施例1と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は2325Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.66
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.59
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.96
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.64
【0052】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが8、マゼンタが3、シアンが2、ブラックが8であった。各色にて光沢差が9以下となり、光沢差のレベルは「悪い」となり、見た目にも光沢差がほとんど確認できなかった。
【0053】
(比較例2)
比較例2では、使用したポリエステル樹脂のTgが71℃、T1/2が124℃であることを除き、実施例1と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は3650Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒1.04
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.92
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒1.51
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒1.00
【0054】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが8、マゼンタが2、シアンが1、ブラックが8であった。各色にて光沢差が9以下となり、光沢差のレベルは「悪い」となり、見た目にも光沢差がほとんど確認できなかった。
【0055】
(比較例3)
比較例3では、使用したポリエステル樹脂のTgが71℃、T1/2が126℃であることを除き、実施例1と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は4128Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒1.18
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒1.04
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒1.70
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒1.13
【0056】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが7、マゼンタが2、シアンが1、ブラックが7であった。各色にて光沢差が9以下となり、光沢差のレベルは「悪い」となり、見た目にも光沢差がほとんど確認できなかった。
【0057】
以上の実施例1および比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
【0059】
次に、実施例2〜4および比較例4〜7を示す。
(実施例2)
実施例2では、ワックスをパラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、SP−0145、融点:62℃)に変更した以外は、実施例1と同様にクリアトナーを生成した。本ワックスも通常のパラフィンワックスと比べて酢酸エチルに対する溶解性が良好であり、投入後数分で完全に溶解した。本クリアトナーにおけるポリエステル樹脂とワックスとの合計に対するワックスの重量比(以下、「ワックスの重量比」という)、すなわちポリエステル樹脂の重量m1とワックスの重量m2との合計に対するワックスの重量m2の比m2/(m1+m2)は、56/(1090+56)×100≒4.9重量%である。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は638Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの120℃における粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.18
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.16
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.26
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.17
【0060】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが26、マゼンタが21、シアンが18、ブラックが28であった。各色にて光沢差が15以上となり、光沢差のレベルは「非常に良好」となり、見た目にも良好な光沢差のある印刷結果が得られた。
【0061】
さらに、本クリアトナーの定着性を評価した。この定着性の評価では、LEDプリンタ(株式会社沖データ製、ML−910PS)にて、定着温度を振って、本クリアトナーを用紙に印刷し、コールドオフセットおよびホットオフセットのそれぞれの発生の有無を確認した。そして、コールドオフセットおよびホットオフセットの両者が発生しない定着温度の範囲の温度幅を求めた。ここで、コールドオフセットとは、定着ローラの表面温度が低すぎることでトナーが用紙から剥がれてしまう現象のことであり、ホットオフセットとは、定着ローラの表面温度が高すぎることで印刷表面にざらつきが発生する現象のことである。得られた温度幅に基づき、定着性のレベルを次のように判定した。温度幅が35℃以上の場合は「非常に良好」(○)、温度幅が25℃以上34℃以下の場合は「良好」(△)、温度幅が24℃以下の場合は「悪い」(×)と判定した。本実施例の定着性の評価では、温度幅は35℃となり、定着性のレベルは「非常に良好」となった。
【0062】
また、本クリアトナーの保存性を評価した。この保存性の評価では、ガラス板の上に直径30mm、高さ80mmの金属製の円筒を設置し、円筒内に10gのクリアトナーを投入し、このクリアトナーの上に20gの錘を載せ、温度50℃、湿度55%の恒温槽内に48時間放置した後、錘と円筒をゆっくり外し、クリアトナー上に10g刻みで錘を増やしながら載せていき、クリアトナーが崩壊する錘の重量を測定した。なお、円筒を外した段階でクリアトナーが崩壊した場合は、崩壊する錘の重量を0gとする。測定された錘の重量に基づき、保存性のレベルを次のように判定した。重量が60g以下の場合は「非常に良好」(○)、70〜150gの場合は「良好」(△)、160g以上の場合は「悪い」(×)と判定した。本実施例の保存性の評価では、保存性のレベルは「非常に良好」となった。なお、表1には示されていないが、実施例1および比較例1〜3のクリアトナーについても保存性のレベルは「非常に良好」であった。
【0063】
(実施例3)
実施例3では、パラフィンワックスの添加量を84重量部に増やした以外は、実施例2と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーにおけるワックスの重量比は、84/(1090+84)×100≒7.2重量%である。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は617Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.18
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.16
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.25
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.17
【0064】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが27、マゼンタが22、シアンが19、ブラックが29であった。各色にて光沢差が15以上となり、光沢差のレベルは「非常に良好」となり、見た目にも良好な光沢差のある印刷結果が得られた。
【0065】
さらに、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に定着性評価を行ったところ、温度幅は40℃となり、定着性のレベルは「非常に良好」となった。また、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に保存性評価を行ったところ、保存性のレベルは「非常に良好」となった。
【0066】
(実施例4)
実施例4では、使用したポリエステル樹脂のTgが62℃、T1/2が101℃であることを除き、実施例3と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーにおけるワックスの重量比は、84/(1090+84)×100≒7.2重量%である。本クリアトナーのTgは66℃、粘度は525Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.15
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.13
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.22
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.14
【0067】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが31、マゼンタが27、シアンが22、ブラックが29であった。各色にて光沢差が15以上となり、光沢差のレベルは「非常に良好」となり、見た目にも良好な光沢差のある印刷結果が得られた。
【0068】
さらに、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に定着性評価を行ったところ、温度幅は38℃となり、定着性のレベルは「非常に良好」となった。また、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に保存性評価を行ったところ、保存性のレベルは「非常に良好」となった。
【0069】
(比較例4)
比較例4では、ワックスをエステルワックス(日油株式会社製、WEP−4、融点71℃)に変更し、ワックスの添加量を38重量部とした以外は、実施例2と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーにおけるワックスの重量比は、38/(1090+38)×100≒3.4重量%である。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は1506Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.43
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.38
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.62
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.41
【0070】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが17、マゼンタが12、シアンが10、ブラックが19であった。光沢差のレベルは、イエローおよびブラックが「非常に良好」、マゼンタおよびシアンが「良好」となった。
【0071】
さらに、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に定着性評価を行ったところ、温度幅は20℃となり、定着性のレベルは「悪い」となった。また、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に保存性評価を行ったところ、保存性のレベルは「非常に良好」となった。
【0072】
(比較例5)
比較例5では、ワックスをパラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、PARACOHOL−6150、融点:67℃)に変更し、ワックスの添加量を38重量部とした以外は、実施例2と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーにおけるワックスの重量比は、38/(1090+38)×100≒3.4重量%である。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は1005Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.29
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.25
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.41
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.28
【0073】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが21、マゼンタが16、シアンが15、ブラックが23であった。各色にて光沢差が15以上となり、光沢差のレベルは「非常に良好」となり、見た目にも良好な光沢差のある印刷結果が得られた。
【0074】
さらに、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に定着性評価を行ったところ、温度幅は20℃となり、定着性のレベルは「悪い」となった。また、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に保存性評価を行ったところ、保存性のレベルは「非常に良好」となった。
【0075】
(比較例6)
比較例6では、ワックスをパラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、PARACOHOL−6150、融点:67℃)に変更した以外は、実施例2と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーにおけるワックスの重量比は、56/(1090+56)×100≒4.9重量%である。本クリアトナーのTgは70℃、粘度は982Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.28
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.25
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.41
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.27
【0076】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが24、マゼンタが20、シアンが16、ブラックが24であった。各色にて光沢差が15以上となり、光沢差のレベルは「非常に良好」となり、見た目にも良好な光沢差のある印刷結果が得られた。
【0077】
さらに、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に定着性評価を行ったところ、温度幅は30℃となり、定着性のレベルは「良好」となった。すなわち、比較例4および5よりは良好な定着性が得られたが、同量のワックスを添加した実施例2と比較すると5℃ほど狭い温度幅となった。また、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に保存性評価を行ったところ、保存性のレベルは「非常に良好」となった。
【0078】
(比較例7)
比較例7では、使用したポリエステル樹脂のTgが56℃、T1/2が97℃であることを除き、実施例4と同様にクリアトナーを生成した。本クリアトナーにおけるワックスの重量比は、84/(1090+84)×100≒7.2重量%である。本クリアトナーのTgは61℃、粘度は220Pa・sであった。印刷評価に使用する各カラートナーの粘度は実施例1と同様であり、各カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は、次の通りであった。
(クリアトナー粘度/イエロートナー粘度)≒0.06
(クリアトナー粘度/マゼンタトナー粘度)≒0.06
(クリアトナー粘度/シアントナー粘度)≒0.09
(クリアトナー粘度/ブラックトナー粘度)≒0.06
【0079】
上記クリアトナーおよびカラートナーを用いて、実施例1と同様に光沢評価を行ったところ、光沢差は、イエローが35、マゼンタが32、シアンが26、ブラックが34であった。各色にて光沢差が15以上となり、光沢差のレベルは「非常に良好」となり、見た目にも良好な光沢差のある印刷結果が得られた。
【0080】
さらに、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に定着性評価を行ったところ、温度幅は36℃となり、定着性のレベルは「非常に良好」となった。また、上記クリアトナーを用いて、実施例2と同様に保存性評価を行ったところ、クリアトナーが崩壊する錘の重量が300gとなり、保存性のレベルは「悪い」となった。本比較例の保存性の評価結果が「悪い」となった理由は、使用したポリエステル樹脂のTgが他の実施例および比較例のポリエステル樹脂のTgと比較して56℃と低いため、保存性評価温度である50℃の環境下で、ポリエステル樹脂の一部が溶けてトナー粒子同士がくっついた状態になったためである。
【0081】
以上の実施例2〜4および比較例4〜7の評価結果を表2に示す。なお、表2の「光沢」の欄には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色について判定された光沢性のレベルのうち、最も悪いレベルが示されている。また、「総合」の欄には、「光沢」の欄に示された光沢性のレベル、「定着性」の欄に示された定着性のレベル、「保存性」の欄に示された保存性のレベルのうち、最も悪いレベルが総合判定レベルとして示されている。
【0083】
以上の実施例1〜4および比較例1〜7の評価結果から、カラートナーに対するクリアトナーの粘度比が小さくなるほど、光沢差が大きくなることが分かる。そして、粘度比を0.43以下とすることにより、良好な光沢差が得られることが分かる。さらに、粘度比を0.29以下とすることにより、非常に良好な光沢差が得られることが分かる。
【0084】
一方、トナーの粘度が小さくなるほど、保管時の溶融可能性が増し、トナー保存性が低くなる。そこで、クリアトナーの粘度は525Pa・s以上であることが好ましい。また、カラートナーに対するクリアトナーの粘度比は0.13以上であることが好ましい。
【0085】
また、粘度比が0.13よりも小さくなると、カラートナーの粘度に対するクリアトナーの粘度が低くなり、カラートナー上にクリアトナーが留まりづらくなる。そのため、高グロスを得て、かつ、画像品質を向上させるためには、粘度比は0.13以上とすることが好ましい。
【0086】
実施例2〜4および比較例4〜7の結果から、光沢性に加えて定着性を考慮すると、粘度比のより好ましい範囲は、0.13以上0.26以下の範囲である。
【0087】
また、実施例2〜4および比較例4〜7の結果から、ワックスの重量比が小さいほど定着の温度幅が狭くなる傾向があり、ワックスの重量比を4.9重量%以上とすることにより、良好な定着性が得られることが分かる。ワックスの添加量が少ないと、ホットオフセットが発生しやすくなり、これにより良好な定着性が得られる温度幅が狭くなると考えられる。
【0088】
一方、ワックスの添加量が多くなると、ワックスがトナー表面に露出しやすくなってしまい、露出したワックスが感光体ドラムに付着することで、いわゆるフィルミングという現象が発生しやすくなる。実施例1〜4および比較例1〜7のクリアトナーについては、フィルミングは発生しなかった。そこで、ワックスの重量比は7.2重量%以下であることが好ましい。
【0089】
なお、トナーの製造方法は上記に限られず、他の製造方法で製造されたトナーであっても、上記各条件を満たせば上記各効果が同様に得られる。例えば、カラートナーとクリアトナーとの粘度比が上記の条件を満たせば、良好な光沢差が得られる。
【0090】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明は、複写機、ファクシミリ装置、これらを複合させた複合機など、他の種類の画像形成装置にも適用可能である。
【0091】
また、上記の説明では、着色剤を含まないトナーを透明現像剤として例示したが、透明現像剤は、これに限られず、着色剤を少量含むものでもよい。例えば、顔料を少量添加したトナーであっても、上記実施の形態におけるクリアトナーと同様の働きまたは特性を持つものであれば、透明現像剤として利用可能である。