特許第5883431号(P5883431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883431
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】画像符号化方法および画像復号化方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/105 20140101AFI20160301BHJP
   H04N 19/134 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/139 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/196 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/423 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/503 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/51 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/513 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/593 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/60 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/61 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/70 20140101ALI20160301BHJP
   H04N 19/91 20140101ALI20160301BHJP
【FI】
   H04N19/105
   H04N19/134
   H04N19/139
   H04N19/176
   H04N19/196
   H04N19/423
   H04N19/503
   H04N19/51
   H04N19/513
   H04N19/593
   H04N19/60
   H04N19/61
   H04N19/70
   H04N19/91
【請求項の数】20
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2013-500883(P2013-500883)
(86)(22)【出願日】2012年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2012001107
(87)【国際公開番号】WO2012114712
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/446,671
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 敏康
(72)【発明者】
【氏名】西 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】柴原 陽司
(72)【発明者】
【氏名】笹井 寿郎
【審査官】 畑中 高行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−502102(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099241(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0290530(US,A1)
【文献】 Yeping Su and Andrew Segall,On motion vector competition,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 3rd Meeting: Guangzhou, CN, Document: JCTVC-C257,ITU-T,2010年10月
【文献】 Yeping Su and Andrew Segall,CE9: Reduced resolution storage of motion vector data,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 4th Meeting: Daegu, KR, Document: JCTVC-D072,ITU-T,2011年 1月20日
【文献】 Heiko Schwarz,Rec.ITU-T H.264(03/2009)-Prepublished version(JVT-AF11_draft_text.doc),ITU-T,2009年11月,p.176-185
【文献】 Test Model under Consideration Output Document (draft007),Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 2nd Meeting: Geneva, CH, Document: JCTVC-B205,ITU-T,2010年10月,p.78-93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N19/00−19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を符号化する画像符号化方法であって、
第1ピクチャの第1ブロックに含まれる第1サブブロックの第1動きベクトルをメモリに書き込む書き込みステップと、
前記メモリに書き込まれた前記第1動きベクトルを前記メモリから読み込む読み込みステップと、
前記メモリから読み込まれた前記第1動きベクトルを用いて、前記第1ピクチャとは異なる第2ピクチャのブロックであり前記第1ブロックの位置に対応するブロックである第2ブロックに含まれる第2サブブロックの第2動きベクトルを符号化する符号化ステップと、
前記第1ブロックに含まれる複数のサブブロックの複数の動きベクトルから、代表動きベクトルを選択する第1選択ステップと、
前記代表動きベクトルを前記第1動きベクトルの代わりに用いるか否かを決定する決定ステップと、
前記代表動きベクトルを用いるか否かを示すフラグを符号化ストリームに付加する付加ステップとを含み、
前記代表動きベクトルが用いられる場合、
前記書き込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリに書き込み、
前記読み込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリから読み込み、
前記符号化ステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを符号化する
画像符号化方法。
【請求項2】
前記画像符号化方法は、さらに、前記代表動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順と、前記第1動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順とを用いて、前記代表動きベクトルをスケーリングするスケーリングステップを含み、
前記符号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、スケーリングされた前記代表動きベクトルを用いて前記第2動きベクトルを符号化する
請求項1に記載の画像符号化方法。
【請求項3】
前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、双方向予測に用いられる動きベクトルを優先的に前記代表動きベクトルとして選択する
請求項1または2に記載の画像符号化方法。
【請求項4】
前記第1選択ステップでは、インター予測が用いられる前記複数のサブブロックの前記複数の動きベクトルから、前記代表動きベクトルを選択する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像符号化方法。
【請求項5】
前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、所定の順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像符号化方法。
【請求項6】
前記所定の順は、前記第1ブロック内の左上の位置から右下の位置への、ラスター順またはジグザグスキャン順であり、
前記第1選択ステップでは、前記ラスター順または前記ジグザグスキャン順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択する
請求項5に記載の画像符号化方法。
【請求項7】
前記所定の順は、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順であり、
前記第1選択ステップでは、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択する
請求項5に記載の画像符号化方法。
【請求項8】
前記第1選択ステップでは、前記代表動きベクトルを有するサブブロックである代表サブブロックが2つ以上の動きベクトルを有している場合、前記2つ以上の動きベクトルを前記代表動きベクトルとして選択し、
前記画像符号化方法は、さらに、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択する第2選択ステップを含み、
前記符号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、前記2つ以上の動きベクトルから選択された前記動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを符号化する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像符号化方法。
【請求項9】
前記第2選択ステップでは、
前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも前方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択し、
前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも後方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択する
請求項8に記載の画像符号化方法。
【請求項10】
前記第2選択ステップでは、
前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、かつ、前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択し、
前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、または、前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかによらず、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択する
請求項8または9に記載の画像符号化方法。
【請求項11】
画像を復号化する画像復号化方法であって、
第1ピクチャの第1ブロックに含まれる第1サブブロックの第1動きベクトルをメモリに書き込む書き込みステップと、
前記メモリに書き込まれた前記第1動きベクトルを前記メモリから読み込む読み込みステップと、
前記メモリから読み込まれた前記第1動きベクトルを用いて、前記第1ピクチャとは異なる第2ピクチャのブロックであり前記第1ブロックの位置に対応するブロックである第2ブロックに含まれる第2サブブロックの第2動きベクトルを復号化する復号化ステップと、
前記第1ブロックに含まれる複数のサブブロックの複数の動きベクトルから、代表動きベクトルを選択する第1選択ステップと、
符号化ストリームから、前記代表動きベクトルを用いるか否かを示すフラグを取得する取得ステップとを含み、
前記代表動きベクトルが用いられる場合、
前記書き込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリに書き込み、
前記読み込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリから読み込み、
前記復号化ステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを復号化する
画像復号化方法。
【請求項12】
前記画像復号化方法は、さらに、前記代表動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順と、前記第1動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順とを用いて、前記代表動きベクトルをスケーリングするスケーリングステップを含み、
前記復号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、スケーリングされた前記代表動きベクトルを用いて前記第2動きベクトルを復号化する
請求項11に記載の画像復号化方法。
【請求項13】
前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、双方向予測に用いられる動きベクトルを優先的に前記代表動きベクトルとして選択する
請求項11または12に記載の画像復号化方法。
【請求項14】
前記第1選択ステップでは、インター予測が用いられる前記複数のサブブロックの前記複数の動きベクトルから、前記代表動きベクトルを選択する
請求項11〜13のいずれか1項に記載の画像復号化方法。
【請求項15】
前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、所定の順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択する
請求項11〜14のいずれか1項に記載の画像復号化方法。
【請求項16】
前記所定の順は、前記第1ブロック内の左上の位置から右下の位置への、ラスター順またはジグザグスキャン順であり、
前記第1選択ステップでは、前記ラスター順または前記ジグザグスキャン順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択する
請求項15に記載の画像復号化方法。
【請求項17】
前記所定の順は、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順であり、
前記第1選択ステップでは、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択する
請求項15に記載の画像復号化方法。
【請求項18】
前記第1選択ステップでは、前記代表動きベクトルを有するサブブロックである代表サブブロックが2つ以上の動きベクトルを有している場合、前記2つ以上の動きベクトルを前記代表動きベクトルとして選択し、
前記画像復号化方法は、さらに、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択する第2選択ステップを含み、
前記復号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、前記2つ以上の動きベクトルから選択された前記動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを復号化する
請求項11〜17のいずれか1項に記載の画像復号化方法。
【請求項19】
前記第2選択ステップでは、
前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも前方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択し、
前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも後方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択する
請求項18に記載の画像復号化方法。
【請求項20】
前記第2選択ステップでは、
前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、かつ、前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択し、
前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、または、前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかによらず、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択する
請求項18または19に記載の画像復号化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を符号化する画像符号化方法、および、画像を復号化する画像復号化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像符号化処理では、一般に、動画像が有する空間方向および時間方向の冗長性を利用して情報量の圧縮が行われる。ここで一般に、空間方向の冗長性を利用する方法としては、周波数領域への変換が用いられ、時間方向の冗長性を利用する方法としては、ピクチャ間予測(以降、インター予測と呼ぶ)符号化処理が用いられる。インター予測符号化処理では、あるピクチャを符号化する際に、符号化対象ピクチャに対して表示時間順で前方または後方にある符号化済みのピクチャを、参照ピクチャとして用いる。そして、その参照ピクチャに対する符号化対象ピクチャの動き検出により、動きベクトルを導出し、動きベクトルに基づいて動き補償を行って得られた予測画像データと符号化対照ピクチャの画像データとの差分を取ることにより、時間方向の冗長性を取り除く。ここで、動き検出では、符号化ピクチャ内の符号化対象ブロックと、参照ピクチャ内のブロックとの差分値を算出し、最も差分値の小さい参照ピクチャ内のブロックを参照ブロックとする。そして、符号化対象ブロックと、参照ブロックとを用いて、動きベクトルを検出する。
【0003】
既に標準化されている、H.264と呼ばれる動画像符号化方式では、情報量の圧縮のために、Iピクチャ、Pピクチャ、Bピクチャという3種類のピクチャタイプを用いている。Iピクチャは、インター予測符号化処理を行わない、すなわち、ピクチャ内予測(以降、イントラ予測と呼ぶ)符号化処理を行うピクチャである。Pピクチャは、表示時間順で、符号化対象ピクチャの前方または後方にある既に符号化済みの1つのピクチャを参照してインター予測符号化を行うピクチャである。Bピクチャは、表示時間順で、符号化対象ピクチャの前方または後方にある既に符号化済みの2つのピクチャを参照してインター予測符号化を行うピクチャである。
【0004】
また、H.264と呼ばれる動画像符号化方式では、Bピクチャにおける各符号化対象ブロックのインター予測の符号化モードとして、予測画像データと符号化対象ブロックとの画像データの差分値および予測画像データ生成に用いた動きベクトルを符号化する動きベクトル検出モードがある。動きベクトル検出モードは、予測方向として、符号化対象ピクチャの前方または後方にある既に符号化済みの2つのピクチャを参照して予測画像を生成する双方向予測と、前方または後方にある既に符号化済みの1つのピクチャを参照して予測画像を生成する片方向予測を選択することができる。
【0005】
また、H.264と呼ばれる動画像符号化方式では、Bピクチャの符号化において、動きベクトルを導出する際に、時間予測動きベクトルモードと呼ぶ符号化モードを選択することができる。時間予測動きベクトルモードにおけるインター予測符号化方法を、図37を用いて説明する。図37は、時間予測動きベクトルモードにおける動きベクトルを示す説明図であり、ピクチャB2のブロックaを時間予測動きベクトルモードで符号化する場合を示している。この場合、ピクチャB2の後方にある参照ピクチャであるピクチャP3中の、ブロックaと同じ位置にあるブロックbを符号化した際に用いた動きベクトルvbを利用する。動きベクトルvbは、ブロックbが符号化された際に用いられた動きベクトルであり、ピクチャP1を参照している。ブロックaは、動きベクトルvbと平行な動きベクトルを用いて、前方向参照ピクチャであるピクチャP1と、後方参照ピクチャであるピクチャP3とから参照ブロックを取得し、2方向予測を行って符号化される。すなわち、ブロックaを符号化する際に用いられる動きベクトルは、ピクチャP1に対しては動きベクトルva1、ピクチャP3に対しては動きベクトルva2となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ITU−T Recommendation H.264「Advanced video coding for generic audiovisual services」、2010年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の時間予測動きベクトルモードでは、時間予測動きベクトル算出の際に利用する動きベクトルをあらかじめメモリに保存しておく必要がある。例えば、図37の参照ピクチャP3の全ての符号化対象ブロックが双方向予測の場合、各符号化ブロックは少なくとも2本の動きベクトルを持つ。そのため、時間予測動きベクトル算出用に参照ピクチャの全ての動きベクトルを保存しておくには、大容量のメモリが必要であり、また、メモリバンド幅も増加する。
【0008】
そこで、本発明は、時間予測動きベクトルモードにおける必要メモリおよびバンド幅を削減できる画像符号化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像符号化方法は、画像を符号化する画像符号化方法であって、第1ピクチャの第1ブロックに含まれる第1サブブロックの第1動きベクトルをメモリに書き込む書き込みステップと、前記メモリに書き込まれた前記第1動きベクトルを前記メモリから読み込む読み込みステップと、前記メモリから読み込まれた前記第1動きベクトルを用いて、前記第1ピクチャとは異なる第2ピクチャのブロックであり前記第1ブロックの位置に対応するブロックである第2ブロックに含まれる第2サブブロックの第2動きベクトルを符号化する符号化ステップと、前記第1ブロックに含まれる複数のサブブロックの複数の動きベクトルから、代表動きベクトルを選択する第1選択ステップと、前記代表動きベクトルを前記第1動きベクトルの代わりに用いるか否かを決定する決定ステップと、前記代表動きベクトルを用いるか否かを示すフラグを符号化ストリームに付加する付加ステップとを含み、前記代表動きベクトルが用いられる場合、前記書き込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリに書き込み、前記読み込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリから読み込み、前記符号化ステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを符号化する。
【0010】
また、前記画像符号化方法は、さらに、前記代表動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順と、前記第1動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順とを用いて、前記代表動きベクトルをスケーリングするスケーリングステップを含み、前記符号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、スケーリングされた前記代表動きベクトルを用いて前記第2動きベクトルを符号化してもよい。
【0011】
また、前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、双方向予測に用いられる動きベクトルを優先的に前記代表動きベクトルとして選択してもよい。
【0012】
また、前記第1選択ステップでは、インター予測が用いられる前記複数のサブブロックの前記複数の動きベクトルから、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0013】
また、前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、所定の順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0014】
また、前記所定の順は、前記第1ブロック内の左上の位置から右下の位置への、ラスター順またはジグザグスキャン順であり、前記第1選択ステップでは、前記ラスター順または前記ジグザグスキャン順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0015】
また、前記所定の順は、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順であり、前記第1選択ステップでは、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0016】
また、前記第1選択ステップでは、前記代表動きベクトルを有するサブブロックである代表サブブロックが2つ以上の動きベクトルを有している場合、前記2つ以上の動きベクトルを前記代表動きベクトルとして選択し、前記画像符号化方法は、さらに、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択する第2選択ステップを含み、前記符号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、前記2つ以上の動きベクトルから選択された前記動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを符号化してもよい。
【0017】
また、前記第2選択ステップでは、前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも前方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択し、前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも後方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択してもよい。
【0018】
また、前記第2選択ステップでは、前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、かつ、前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択し、前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、または、前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかによらず、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択してもよい。
【0019】
また、本発明に係る画像復号化方法は、画像を復号化する画像復号化方法であって、第1ピクチャの第1ブロックに含まれる第1サブブロックの第1動きベクトルをメモリに書き込む書き込みステップと、前記メモリに書き込まれた前記第1動きベクトルを前記メモリから読み込む読み込みステップと、前記メモリから読み込まれた前記第1動きベクトルを用いて、前記第1ピクチャとは異なる第2ピクチャのブロックであり前記第1ブロックの位置に対応するブロックである第2ブロックに含まれる第2サブブロックの第2動きベクトルを復号化する復号化ステップと、前記第1ブロックに含まれる複数のサブブロックの複数の動きベクトルから、代表動きベクトルを選択する第1選択ステップと、符号化ストリームから、前記代表動きベクトルを用いるか否かを示すフラグを取得する取得ステップとを含み、前記代表動きベクトルが用いられる場合、前記書き込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリに書き込み、前記読み込みステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを前記メモリから読み込み、前記復号化ステップでは、前記第1動きベクトルの代わりに前記代表動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを復号化する画像復号化方法でもよい。
【0020】
また、前記画像復号化方法は、さらに、前記代表動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順と、前記第1動きベクトルが参照する参照ピクチャの表示順とを用いて、前記代表動きベクトルをスケーリングするスケーリングステップを含み、前記復号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、スケーリングされた前記代表動きベクトルを用いて前記第2動きベクトルを復号化してもよい。
【0021】
また、前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、双方向予測に用いられる動きベクトルを優先的に前記代表動きベクトルとして選択してもよい。
【0022】
また、前記第1選択ステップでは、インター予測が用いられる前記複数のサブブロックの前記複数の動きベクトルから、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0023】
また、前記第1選択ステップでは、前記複数の動きベクトルから、所定の順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0024】
また、前記所定の順は、前記第1ブロック内の左上の位置から右下の位置への、ラスター順またはジグザグスキャン順であり、前記第1選択ステップでは、前記ラスター順または前記ジグザグスキャン順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0025】
また、前記所定の順は、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順であり、前記第1選択ステップでは、前記第1ブロック内の周辺から中心に向かう順で前記代表動きベクトルを探索することにより、前記代表動きベクトルを選択してもよい。
【0026】
また、前記第1選択ステップでは、前記代表動きベクトルを有するサブブロックである代表サブブロックが2つ以上の動きベクトルを有している場合、前記2つ以上の動きベクトルを前記代表動きベクトルとして選択し、前記画像復号化方法は、さらに、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択する第2選択ステップを含み、前記復号化ステップでは、前記代表動きベクトルが用いられる場合、前記2つ以上の動きベクトルから選択された前記動きベクトルを用いて、前記第2動きベクトルを復号化してもよい。
【0027】
また、前記第2選択ステップでは、前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも前方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択し、前記2つ以上の動きベクトルが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する動きベクトルと前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する動きベクトルとを含み、かつ、前記第1ピクチャが前記第2ピクチャよりも後方である場合、前記2つ以上の動きベクトルのうち前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する前記動きベクトルを選択してもよい。
【0028】
また、前記第2選択ステップでは、前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、かつ、前記2つ以上の動きベクトルのいずれかが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかに基づいて、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択し、前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも前方のピクチャを参照する場合、または、前記2つ以上の動きベクトルのいずれもが前記第1ピクチャよりも後方のピクチャを参照する場合、前記第1ピクチャが表示順で前記第2ピクチャよりも前方であるか後方であるかによらず、前記2つ以上の動きベクトルから動きベクトルを選択してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、時間予測動きベクトルモード時のメモリに保持する動きベクトル情報を適切に制御する新たな判断基準が用いられる。これにより、時間予測動きベクトルモードにおける必要メモリおよびバンド幅を削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施の形態1に係る画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る画像符号化装置の動作を示すフローチャートである。
図3図3は、実施の形態1に係る予測動きベクトル候補を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係る予測動きベクトルインデックスの符号を示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係る予測動きベクトルの選択処理を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態1に係るcolPic情報の読み書き処理を示す概念図である。
図7図7は、実施の形態1に係るcolPic情報の読み書き処理の詳細を示す図である。
図8図8は、実施の形態1に係るco−located情報の決定処理を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態1に係る時間予測動きベクトルの追加処理を示すフローチャートである。
図10図10は、実施の形態1に係る時間予測動きベクトルの算出処理を示すフローチャートである。
図11A図11Aは、実施の形態1に係る時間予測動きベクトルの算出処理の第1例を示す図である。
図11B図11Bは、実施の形態1に係る時間予測動きベクトルの算出処理の第2例を示す図である。
図12A図12Aは、実施の形態1に係る時間予測動きベクトルの算出処理の第3例を示す図である。
図12B図12Bは、実施の形態1に係る時間予測動きベクトルの算出処理の第4例を示す図である。
図13図13は、実施の形態1に係るcolPic情報の転送処理を示すフローチャートである。
図14図14は、実施の形態1に係るcolPic情報の転送処理の詳細を示すフローチャートである。
図15A図15Aは、実施の形態1に係る探索順序の第1例を示す図である。
図15B図15Bは、実施の形態1に係る探索順序の第2例を示す図である。
図16図16は、実施の形態2に係る画像復号化装置の構成を示すブロック図である。
図17図17は、実施の形態2に係る画像復号化装置の動作を示すフローチャートである。
図18図18は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムの全体構成図である。
図19図19は、デジタル放送用システムの全体構成図である。
図20図20は、テレビの構成例を示すブロック図である。
図21図21は、光ディスクである記録メディアに情報の読み書きを行う情報再生/記録部の構成例を示すブロック図である。
図22図22は、光ディスクである記録メディアの構造例を示す図である。
図23A図23Aは、携帯電話の一例を示す図である。
図23B図23Bは、携帯電話の構成例を示すブロック図である。
図24図24は、多重化データの構成を示す図である。
図25図25は、各ストリームが多重化データにおいてどのように多重化されているかを模式的に示す図である。
図26図26は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかを更に詳しく示した図である。
図27図27は、多重化データにおけるTSパケットとソースパケットの構造を示す図である。
図28図28は、PMTのデータ構成を示す図である。
図29図29は、多重化データ情報の内部構成を示す図である。
図30図30は、ストリーム属性情報の内部構成を示す図である。
図31図31は、映像データを識別するステップを示す図である。
図32図32は、各実施の形態の動画像符号化方法および動画像復号化方法を実現する集積回路の構成例を示すブロック図である。
図33図33は、駆動周波数を切り替える構成を示す図である。
図34図34は、映像データを識別し、駆動周波数を切り替えるステップを示す図である。
図35図35は、映像データの規格と駆動周波数を対応づけたルックアップテーブルの一例を示す図である。
図36A図36Aは、信号処理部のモジュールを共有化する構成の一例を示す図である。
図36B図36Bは、信号処理部のモジュールを共有化する構成の他の一例を示す図である。
図37図37は、従来技術に係る時間予測動きベクトルモードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【0033】
画像符号化装置は、図1に示すように、減算部101、直交変換部102、量子化部103、逆量子化部105、逆直交変換部106、加算部107、ブロックメモリ108、フレームメモリ109、イントラ予測部110、インター予測部111、スイッチ部112、インター予測制御部114、ピクチャタイプ決定部113、時間予測動きベクトル算出部116、colPicメモリ117、co−located情報決定部115、および、可変長符号化部104を備えている。
【0034】
直交変換部102は、入力画像列に対し、画像領域から、周波数領域への変換を行う。量子化部103は、周波数領域に変換された入力画像列に対し、量子化処理を行う。逆量子化部105は、量子化部103により、量子化処理された入力画像列に対し、逆量子化処理を行う。逆直交変換部106は、逆量子化処理された入力画像列に対し、周波数領域から、画像領域への変換を行う。
【0035】
ブロックメモリ108は、入力画像列をブロック単位で保存するためのメモリである。フレームメモリ109は、入力画像列をフレーム単位で保存するためのメモリである。ピクチャタイプ決定部113は、Iピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャのいずれのピクチャタイプで入力画像列を符号化するかを決定し、ピクチャタイプ情報を生成する。
【0036】
イントラ予測部110は、ブロックメモリ108に保存されているブロック単位の入力画像列を用いて、符号化対象ブロックをイントラ予測により符号化し、予測画像データを生成する。インター予測部111は、フレームメモリ109に保存されているフレーム単位の入力画像と、動き検出により導出した動きベクトルとを用いて、符号化対象ブロックをインター予測により符号化し、予測画像データを生成する。
【0037】
co−located情報決定部115は、符号化対象ピクチャより、表示時間順で、前方に位置するピクチャに含まれるブロック(以降、前方参照ブロックと呼ぶ)、または、後方に位置するピクチャに含まれるブロック(以降、後方参照ブロックと呼ぶ)のいずれをco−locatedブロックとするかを決定する。そして、co−located情報決定部115は、co−located参照方向フラグをピクチャ毎に生成し、符号化対象ピクチャに付随させる。
【0038】
また、co−located情報決定部115は、co−locatedブロックの動きベクトルから代表として選択される代表動きベクトルのみをcolPicメモリ117に保存するかどうかを決定する。そして、co−located情報決定部115は、その決定結果を示すco−located情報マージフラグをピクチャ毎に生成し、符号化対象ピクチャに付随させる。
【0039】
ここで、co−locatedブロックとは、符号化対象ブロックを含むピクチャとは異なるピクチャ内のブロックで、かつ、ピクチャ内における位置が、符号化対象ブロックと同じ位置になるブロックである。
【0040】
時間予測動きベクトル算出部116は、colPicメモリ117に格納されているco−locatedブロックの動きベクトル等のcolPic情報を用いて、時間予測動きベクトルモードの予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する。また、時間予測動きベクトル算出部116は、時間予測動きベクトルに対応する予測動きベクトルインデックスの値を割り当てる。
【0041】
そして、時間予測動きベクトル算出部116は、時間予測動きベクトルと、予測動きベクトルインデックスを、インター予測制御部114に送る。co−locatedブロックが動きベクトルを有していない場合には、時間予測動きベクトル算出部116は、時間予測動きベクトルモードによる動きベクトル導出を中止するか、または、動きベクトルを0として、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する。
【0042】
インター予測制御部114は、複数の予測動きベクトル候補から、動き検出により導出された動きベクトルとの誤差が最も小さい予測動きベクトル候補を用いて、動きベクトルの符号化を行うと決定する。ここで、誤差は、予測動きベクトル候補と、動き検出により導出された動きベクトルとの差分値を示す。
【0043】
また、インター予測制御部114は、決定した予測動きベクトルに対応する予測動きベクトルインデックスをブロック毎に生成する。そして、インター予測制御部114は、予測動きベクトルインデックスと、予測動きベクトル候補の誤差情報とを、可変長符号化部104に送る。また、インター予測制御部114は、符号化対象ブロックの動きベクトル等を含むcolPic情報をcolPicメモリ117に転送する。
【0044】
colPicメモリ117には、符号化対象ブロックの時間予測動きベクトルを算出するための、参照ピクチャの動きベクトル、参照ピクチャのインデックス値、および、予測方向などが格納されている。colPicメモリ117に格納される参照ピクチャの動きベクトルの数は、co−located情報マージフラグがオンの場合、後述する方法により削減される。
【0045】
直交変換部102は、生成された予測画像データと、入力画像列との予測誤差データに対し、画像領域から、周波数領域への変換を行う。量子化部103は、周波数領域へ変換した予測誤差データに対し、量子化処理を行う。
【0046】
可変長符号化部104は、量子化処理された予測誤差データ、予測動きベクトルインデックス、予測動きベクトル候補の予測誤差情報、ピクチャタイプ情報、co−located参照方向フラグ、および、co−located情報マージフラグに対し、可変長符号化処理を行う。これにより、可変長符号化部104は、ビットストリームを生成する。
【0047】
図2は、本実施の形態に係る画像符号化方法の処理フローの概要を示す。まず、co−located情報決定部115は、予測動きベクトル候補を時間予測動きベクトルモードで導出する際に、後述する方法で、co−located参照方向フラグ、および、co−located情報マージフラグなどのco−located情報を決定する(S101)。
【0048】
次に、時間予測動きベクトル算出部116は、co−located情報に応じてcolPicメモリ117からco−locatedブロックの参照動きベクトル等を含むcolPic情報をリードする。そして、時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックの参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する(S102)。
【0049】
そして、時間予測動きベクトル算出部116は、時間予測動きベクトルに対応する、予測動きベクトルインデックスの値を割り振る。一般に、予測動きベクトルインデックスは、値の小さい場合に必要な情報量(符号量)が少なくなる。一方、値が大きくなると、必要な情報量(符号量)が大きくなる。従って、より精度の高い動きベクトルとなる可能性の高い動きベクトルに対応する、予測動きベクトルインデックスの値を小さくすると、符号化効率が高くなる。
【0050】
インター予測部111は、動き検出により導出された動きベクトルを用いてインター予測によりピクチャを符号化する(S103)。また、可変長符号化部104は、予測動きベクトル候補から、誤差の最も小さい予測動きベクトルを用いて、動きベクトルの符号化を行う。
【0051】
例えば、インター予測制御部114は、予測動きベクトル候補と、動き検出により導出された動きベクトルとの差分値を誤差とし、最も誤差の小さい予測動きベクトル候補を、動きベクトルの符号化を行う際に用いると決定する。そして、可変長符号化部104は、選択した予測動きベクトル候補に対応する予測動きベクトルインデックスと、決定した予測動きベクトル候補の誤差情報とを可変長符号化する。
【0052】
インター予測制御部114は、インター予測に用いた動きベクトル等を含むcolPic情報を、後述する方法で、colPicメモリ117に転送し、保存する(S104)。
【0053】
図3は、予測動きベクトル候補の例を示している。動きベクトルMV_Aは、符号化対象ブロックの左隣に位置する隣接ブロックAの動きベクトルである。動きベクトルMV_Bは、符号化対象ブロックの上隣に位置する隣接ブロックBの動きベクトルである。動きベクトルMV_Cは、符号化対象ブロックの右上隣に位置する隣接ブロックCの動きベクトルである。また、Median(MV_A、MV_B、MV_C)は、動きベクトルA、B、Cの中間値を示している。ここで、中間値は、以下のように導出される。
【0054】
【数1】
【0055】
【数2】
【0056】
【数3】
【0057】
予測動きベクトルインデックスの値は、Median(MV_A、MV_B、MV_C)に対応する値を0とし、動きベクトルAに対応する値を1とし、MV_Bに対応する値を2とし、MV_Cに対応する値を3とし、時間予測動きベクトルに対応する値を4としている。予測動きベクトルインデックスの割り当て方は、この例に限らない。
【0058】
例えば、co−located情報マージフラグがオフの場合は、co−locatedブロックの参照動きベクトルの数が削減されないため、co−locatedブロックの参照動きベクトルから算出された時間予測動きベクトルの精度が高い可能性がある。そのため、co−located情報マージフラグがオフの場合は、時間予測動きベクトルに割り振るインデックス値を、他の予測動きベクトル候補よりも小さくすることによって、符号化効率を向上させることができる。
【0059】
一方、co−located情報マージフラグがオンの場合は、時間予測動きベクトルに割り振るインデックス値を、他の予測動きベクトル候補よりも大きくすることで、符号化効率を向上させることができる。
【0060】
図4は、予測動きベクトルインデックスを可変長符号化する際に用いる、符号表の例を示している。予測動きベクトルインデックスの値の小さい順に、符号長の短い符号を割り当てている。従って、予測精度が良い可能性の高い予測動きベクトル候補に対応する、予測動きベクトルインデックスの値を小さくすることにより、符号化効率を向上させることができる。
【0061】
図5は、インター予測制御部114における、予測動きベクトル候補の決定フローを示す図である。インター予測制御部114は、図5に示すフローにより、動き検出により導出した動きベクトルとの誤差が最も小さい予測動きベクトル候補を、動きベクトルを符号化する際に用いると決定する。そして、可変長符号化部104は、決定した予測動きベクトル候補の誤差情報と、決定した予測動きベクトルを示す予測動きベクトルインデックスを可変長符号化する。
【0062】
図6は、図1に示されたcolPicメモリ117への読み書き処理を示す概念図である。図6において、colPic情報書き込み部119は、co−locatedピクチャcolPicのco−locatedブロックの予測方向1の動きベクトルmvCol1、および、予測方向2の動きベクトルmvCol2を、co−located情報マージフラグに応じて、後述する方法でcolPicメモリ117に格納する。
【0063】
なお、本実施の形態では、予測方向1を前方参照とし、予測方向2を後方参照とする例を用いて説明するが、予測方向1を後方参照、予測方向2を前方参照、または、予測方向1および予測方向2がともに前方参照または後方参照としても構わない。
【0064】
また、co−locatedブロックは、co−locatedピクチャcolPic内での位置が符号化対象ピクチャ内での符号化対象ブロックの位置に一致するブロックである。co−locatedピクチャcolPicが符号化対象ピクチャよりも後方であるか前方であるかは、co−located参照方向フラグによって切り替えられる。
【0065】
その後、符号化対象ブロックが符号化される時に、colPicメモリ117に格納された動きベクトル等を含むcolPic情報を、colPic情報読み込み部118がco−located情報マージフラグに応じて後述する方法で読み出す。そして、時間予測動きベクトル算出部116によって時間予測動きベクトルが算出される。算出された時間予測動きベクトルは、符号化対象ブロックの符号化に用いられる。
【0066】
図7は、co−located情報マージフラグがオンの場合の、colPicメモリ117への動きベクトルの読み書き処理を示す例である。図7では、符号化対象ブロックは4×4のサブブロック毎に動きベクトルを保持し、colPicメモリ117は、符号化対象ブロック毎に1サブブロック分の記憶領域を持っている例を示す。
【0067】
colPicメモリ117への書き込み時には、colPic情報書き込み部119は、符号化対象ブロック内の動きベクトルのうち、イントラ予測で符号化されたブロック以外で、予測方向が双方向予測であるブロックの動きベクトルを優先的に選択する。そして、colPic情報書き込み部119は、選択した1サブブロックの動きベクトルを代表動きベクトルとして、colPicメモリ117に書き込む。
【0068】
このようにイントラ予測で符号化されたブロック以外の動きベクトルを選択することで、代表動きベクトルの精度を向上させ、その結果、時間予測動きベクトルの精度を向上でき、符号化効率を向上させることができる。また、加算平均等の影響で比較的ノイズの少ない予測画像を生成することができる双方向予測の動きベクトルを優先的に選択することにより、代表動きベクトルの精度を向上させ、その結果、時間予測動きベクトルの精度を向上でき、符号化効率を向上させることができる。
【0069】
一方、colPicメモリ117からの読み込み時には、colPic情報読み込み部118は、colPicメモリ117に格納された代表動きベクトルを読み出す。
【0070】
そして、colPic情報読み込み部118は、その代表動きベクトルを与える参照ピクチャインデックス(以下、代表参照ピクチャインデックス)と、各サブブロックの参照ピクチャインデックスを用いて、後述する方法により、代表動きベクトルのスケーリング処理を行う。そして、colPic情報読み込み部118は、スケーリング処理後の動きベクトルを、各サブブロックに設定する。
【0071】
colPic情報読み込み部118は、このように、代表動きベクトルを各サブブロックの参照ピクチャインデックスに合わせてスケーリング処理し、スケーリング処理後の動きベクトルを各サブブロックに設定する。これにより、その動きベクトルから生成される時間予測動きベクトルの精度が向上し、符号化効率を向上させることができる。
【0072】
このように、co−located情報マージフラグがオンの場合は、colPicメモリ117への書き込み時に、符号化対象ブロックの中の動きベクトルから代表動きベクトルを選択し、代表動きベクトルのみをcolPicメモリ117に格納することによって、colPicメモリ117の容量およびメモリバンド幅を削減することができる。図7の例では、符号化対象ブロック毎に必要なcolPicメモリ117の容量およびバンド幅が16分の1に削減される。
【0073】
なお、本実施の形態では、符号化対象ブロックが4×4のサブブロック毎に動きベクトルを保持するとしたが、必ずしもこれに限らない。符号化対象ブロックがN×Mのサブブロック毎に動きベクトルを保持するとすれば、(N×M)分の1のメモリ量およびバンド幅を削減することができる。
【0074】
図8は、図2の決定処理(S101)の詳細な処理フローである。以下、図8について説明する。co−located情報決定部115は、前方参照ブロック、または、後方参照ブロックのいずれをco−locatedブロックとするか決定する(S301)。例えば、前方参照ブロックの属する前方参照ピクチャと、後方参照ブロックの属する後方参照ピクチャのうち、符号化対象ピクチャと表示順において距離が近い方をco−locatedブロックの参照方向として決定することなどが考えられる。
【0075】
そして、co−located情報決定部115は、co−locatedブロックが前方参照ブロックであるか後方参照ブロックであるかを示すco−located参照方向フラグをピクチャ毎に生成し、ピクチャに付随させる。
【0076】
次に、co−located情報決定部115は、colPicメモリ117に格納する動きベクトルの本数を削減して保存するかどうかを決定する(S302)。例えば、遅延を抑えるためにメモリバンド幅を抑える場合、または、colPicメモリ117の容量を削減する場合などは、colPicメモリ117に格納する動きベクトルの本数を削減することが考えられる。
【0077】
そして、co−located情報決定部115は、colPicメモリ117に格納する動きベクトルの本数を削減することを表すco−located情報マージフラグを、ピクチャ毎に生成し、ピクチャに付随させる。
【0078】
図9は、図2の追加処理(S102)の詳細な処理フローである。以下、図9について説明する。時間予測動きベクトル算出部116は、co−located情報マージフラグがオンかどうかを判定する(S401)。そして、真ならば(S401でYes)、時間予測動きベクトル算出部116は、colPicメモリ117からcolPic情報をリードし、後述する方法で代表動きベクトルをスケーリングして、各ブロックの動きベクトルに設定する(S402)。
【0079】
co−located情報マージフラグがオフの場合(S401でNo)、時間予測動きベクトル算出部116は、colPicメモリ117からcolPic情報をリードし、各ブロックの動きベクトルに設定する(S403)。
【0080】
時間予測動きベクトル算出部116は、colPic情報に含まれるco−locatedブロックが、2つ以上の動きベクトルを有しているか、すなわち、少なくとも前方参照動きベクトル(mvL0)と、後方参照動きベクトル(mvL1)を有しているか否かを判断する(S404)。
【0081】
時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックが、2つ以上の動きベクトルを有していると判断された場合に(S404でYes)、co−locatedブロックが、後方参照ブロックであるか否かを判断する(S405)。co−locatedブロックが、後方参照ブロックであると判断された場合に(S405でYes)、時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックの前方参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、時間予測動きベクトルを導出する(S406)。
【0082】
一方、co−locatedブロックが、前方参照ブロックであると判断された場合に(S405でNo)、時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックの後方参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、時間予測動きベクトルを導出する(S408)。
【0083】
時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックが、前方参照動きベクトルと後方参照動きベクトルとを有していないと判断された場合に(S404でNo)、co−locatedブロックが前方参照動きベクトルを有しているか否かを判断する(S409)。
【0084】
co−locatedブロックが、前方参照動きベクトルを有していると判断された場合に(S409でYes)、時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックの前方参照動きベクトルを用いて、符号化対象ブロックの時間予測動きベクトルを導出する(S410)。時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックが、前方参照動きベクトルを有していないと判断された場合に(S409でNo)、co−locatedブロックが、後方参照動きベクトルを有しているか否かを判断する(S411)。
【0085】
co−locatedブロックが、後方参照動きベクトルを有していると判断された場合に(S411でYes)、時間予測動きベクトル算出部116は、後方参照動きベクトルを用いて、符号化対象ブロックの時間予測動きベクトルを導出する(S412)。co−locatedブロックが、後方参照動きベクトルを有していないと判断された場合には(S411でNo)、時間予測動きベクトル算出部116は、時間予測動きベクトルを予測動きベクトル候補に追加しない、または、co−locatedブロックの時間予測動きベクトルを0として、予測動きベクトル候補に追加する(S413)。
【0086】
最後に、時間予測動きベクトル算出部116は、参照動きベクトルに基づく導出処理(S406、S408、S410、S412)で求めた時間予測動きベクトルを予測動きベクトル候補に追加する(S407)。
【0087】
なお、図9の処理フローでは、時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックが前方参照動きベクトルを有しているか否かについて判断した後(S409)、co−locatedブロックが後方参照動きベクトルを有しているか否かについて判断している(S411)がこのフローに限らない。例えば、時間予測動きベクトル算出部116は、co−locatedブロックが後方参照動きベクトルを有しているか否かについて判断し、その後、co−locatedブロックが前方参照動きベクトルを有しているか否かについて判断してもよい。
【0088】
次に、時間予測動きベクトルモードにより、時間予測動きベクトルを導出する方法について、詳細に説明する。
【0089】
図10は、図9の設定処理(S402)の詳細な処理フローである。以下、図10について説明する。予測方向X(X=1、2)に対し、時間予測動きベクトル算出部116は、符号化対象ブロックにおける動きベクトルの保持単位であるサブブロックNを、ラスター順等で1つ選択する(S501)。そして、時間予測動きベクトル算出部116は、サブブロックNがインター予測で符号化されているブロックかどうかを、リードしたcolPic情報等を用いて判定する(S502)。
【0090】
インター予測の判定結果が偽ならば(S502でNo)、時間予測動きベクトル算出部116は、サブブロックNが符号化対象ブロック内の最終サブブロックかどうかを判定する(S506)。そして、最終サブブロックの判定結果が真ならば(S506でYes)、時間予測動きベクトル算出部116は、処理を終了する。そして、最終サブブロックの判定結果が偽ならば(S506でNo)、時間予測動きベクトル算出部116は、次のサブブロックの処理に移る(S501)。
【0091】
インター予測の判定結果が真であれば(S502)、時間予測動きベクトル算出部116は、サブブロックNの予測方向が予測方向Xと一致するかどうかを、colPic情報等を用いて判定する(S503)。予測方向の判定結果が偽であれば(S503でNo)、時間予測動きベクトル算出部116は、サブブロックNが最終サブブロックかどうかを判定する(S506)。
【0092】
そして、予測方向の判定結果が真であれば(S503でYes)、時間予測動きベクトル算出部116は、予測方向Xの代表動きベクトルを、予測方向Xの代表参照ピクチャインデックス、および、サブブロックNの参照ピクチャインデックスを用いて、以下の式によりスケーリングし、サブブロックNの動きベクトルを導出する(S504)。
【0093】
TargetMv=Mv×(curPOC−POC(TargetRefidx))/(curPOC−POC(Refidx)) ・・・(式4)
【0094】
ここで、TargetMvはサブブロックNの動きベクトル、Mvは代表動きベクトル、curPOCは符号化対象ピクチャの表示順、TargetRefidxはサブブロックNの参照ピクチャインデックス、Refidxは代表参照ピクチャインデックスを表す。また、POC(X)は、符号化対象ピクチャの参照ピクチャリストにおける、参照ピクチャインデックスXが示す参照ピクチャの表示順を表す。
【0095】
時間予測動きベクトル算出部116は、スケーリング処理(S504)で算出したスケーリング後の動きベクトルを、サブブロックNの予測方向Xに設定する(S505)。そして、時間予測動きベクトル算出部116は、サブブロックNが最終ブロックかどうかを判定する(S506)。
【0096】
このように、時間予測動きベクトル算出部116は、代表動きベクトルを各サブブロックの参照ピクチャインデックスに合わせてスケーリング処理し、スケーリング処理後の動きベクトルを各サブブロックに設定する。これにより、その動きベクトルから生成される時間予測動きベクトルの精度が向上し、符号化効率を向上させることができる。
【0097】
図11Aは、co−locatedブロックが後方参照ブロックであり、前方参照動きベクトルと、後方参照動きベクトルとを有する場合に、前方参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する方法を示している。時間予測動きベクトル算出部116は、前方参照動きベクトルを用いて、以下の計算式により、予測動きベクトル候補(TemporalMV)を導出する。
【0098】
TemporalMV=mvL0×(B2−B0)/(B4−B0) ・・・(式5)
【0099】
ここで、(B2−B0)は、ピクチャB2とピクチャB0の表示時間における時間差情報、(B4−B0)は、ピクチャB4とピクチャB0の表示時間における時間差情報を示す。
【0100】
図11Bは、後方参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する方法を示している。時間予測動きベクトル算出部116は、後方参照動きベクトルを用いて、以下の計算式により、予測動きベクトル候補を導出する。
【0101】
TemporalMV=mvL1×(B2−B0)/(B4−B8) ・・・(式6)
【0102】
図12Aは、co−locatedブロックが前方参照ブロックであり、前方参照動きベクトルと、後方参照動きベクトルとを有する場合に、後方参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する方法を示している。時間予測動きベクトル算出部116は、後方参照動きベクトルを用いて、以下の計算式により、予測動きベクトル候補を導出する。
【0103】
TemporalMV=mvL1×(B6−B8)/(B4−B8) ・・・(式7)
【0104】
図12Bは、前方参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する方法を示している。時間予測動きベクトル算出部116は、前方参照動きベクトルを用いて、以下の計算式により、予測動きベクトル候補を導出する。
【0105】
TemporalMV=mvL0×(B6−B8)/(B4−B0) ・・・(式8)
【0106】
図13は、図2の転送処理(S104)の詳細な処理フローである。以下、図13について説明する。インター予測制御部114は、co−located情報マージフラグがオンかどうかを判定する(S601)。
【0107】
そして、判定結果が真ならば(S601でYes)、インター予測制御部114は、符号化対象ブロックの動きベクトルを用いて、予測方向1および予測方向2の代表動きベクトルおよび代表参照ピクチャインデックスを後述する方法で算出する。そして、インター予測制御部114は、代表動きベクトルを符号化対象ブロックの動きベクトルの代わりとしてcolPic情報に付加し、colPicメモリ117に転送する(S602)。
【0108】
判定結果が偽ならば(S601でNo)、インター予測制御部114は、符号化対象ブロックの予測方向1および予測方向2の動きベクトル等をそのままcolPic情報として、colPicメモリ117に転送する(S603)。
【0109】
図14は、図13の転送処理(S602)の詳細な処理フローである。以下、図14について説明する。予測方向X(X=1,2)に対し、インター予測制御部114は、予測方向Xの代表動きベクトルおよび代表参照ピクチャインデックス、および、双方向フラグの初期化を行う(S701)。本実施の形態では、インター予測制御部114は、代表動きベクトルおよび代表参照ピクチャインデックスを初期値として無効に設定し、双方向フラグを0に設定する。
【0110】
次に、インター予測制御部114は、符号化対象ブロックにおける動きベクトルの保持単位であるサブブロックNを、符号化対象ブロックの左上のサブブロックから図15Aに示すようなスキャン順(ジグザグスキャン)等に従って1つ選択する(S702)。そして、インター予測制御部114は、サブブロックNがインター予測で符号化されたブロックであるかどうかを判定する(S703)。
【0111】
インター予測の判定結果が真であれば(S703でYes)、インター予測制御部114は、サブブロックNのインター予測の予測方向が双方向予測かどうかを判定する(S704)。
【0112】
そして、双方向予測の判定結果が真であれば(S704でYes)、インター予測制御部114は、サブブロックNの予測方向Xの動きベクトルを、予測方向Xの代表動きベクトルに設定する(S705)。また、インター予測制御部114は、サブブロックNの予測方向Xの参照ピクチャインデックスを、予測方向Xの代表参照ピクチャインデックスに設定する(S706)。そして、インター予測制御部114は、双方向フラグを1に設定する(S707)。
【0113】
このように、サブブロックNが、加算平均等の影響で比較的ノイズの少ない予測画像を生成することができる双方向予測であれば、インター予測制御部114は、その動きベクトルを優先的に代表動きベクトルに設定する。これによって、代表動きベクトルの精度を向上させ、その結果、時間予測動きベクトルの精度を向上でき、符号化効率を向上させることができる。
【0114】
双方向予測の判定結果が偽(S704でNo)、つまり、サブブロックNが双方向予測でなければ、インター予測制御部114は、次の判定を行う。すなわち、インター予測制御部114は、サブブロックNが予測方向Xの動きベクトルを持ち、かつ、双方向フラグが0(符号化対象ブロック内のサブブロックに、双方向予測のサブブロックがまだ見つかっていない)かどうかを判定する(S709)。
【0115】
そして、予測方向の判定結果が真ならば(S709でYes)、インター予測制御部114は、サブブロックNの予測方向Xの動きベクトルを、予測方向Xの代表動きベクトルに設定する(S710)。また、インター予測制御部114は、サブブロックNの予測方向Xの参照ピクチャインデックスを、予測方向Xの代表参照ピクチャインデックスに設定する(S711)。
【0116】
このように、符号化対象ブロック内のサブブロック内に双方向予測の動きベクトルがない場合、インター予測制御部114は、予測方向Xに一致する片方向予測の動きベクトルを代表動きベクトルに設定することによって、符号化効率を向上させることができる。
【0117】
インター予測の判定結果が偽(S703でNo)、または、予測方向の判定結果が偽(S709でNo)、つまり、サブブロックNがイントラ予測で符号化されたブロック、もしくは、予測方向Xの動きベクトルを持たない場合、インター予測制御部114は、サブブロックNが符号化対象ブロック内の最終サブブロックであるかどうかを判定する(S708)。
【0118】
このように、サブブロックNが、イントラ予測で符号化されたブロックである場合、もしくは、予測方向Xの動きベクトルを持たない場合、インター予測制御部114は、代表動きベクトルに設定しないことにより、符号化効率を向上できる。
【0119】
最終サブブロックの判定結果が真であれば(S708でYes)、インター予測制御部114は、処理を終了する。そして、最終サブブロックの判定結果が偽であれば(S708でNo)、インター予測制御部114は、次のサブブロックの処理を行う(S702)。
【0120】
なお、すべてのサブブロックの処理の終了後、予測方向Xの代表動きベクトルおよび代表参照ピクチャインデックスが見つからなかった場合、インター予測制御部114は、予測方向Xの代表動きベクトルおよび代表参照ピクチャインデックスの値にそれらが無効であることを示す値を設定してcolPic情報に付加してもよい。また、この場合、インター予測制御部114は、colPic情報のデータ量を削減するために、colPic情報から代表動きベクトルを除去するようにしても構わない。
【0121】
このように、符号化処理ブロック内の動きベクトルから、代表動きベクトルを図15Aに示すようなスキャン順等で順に探索し、その値を更新することによって、画面の端の影響等を受けにくい、より精度が高い代表動きベクトルを選択でき、符号化効率を向上させることができる。なお、本実施の形態では、図15Aに示すような左上からのスキャン順で代表動きベクトルの探索を行うようにしたが、必ずしもこれに限らない。
【0122】
例えば、符号化ピクチャ内における符号化対象ブロックの位置に応じて、左上から右下に向かって、ラスター順等で探索してもよいし、右下から左上に向かって探索するなどしてもよい。また、図15Bに示すように、左上から符号化対象ブロックの中心に向かって時計回り等で代表動きベクトルの探索を行ってもよい。このように探索することで、画面の端の影響等を受けにくい、より中心に近い代表動きベクトルを選択でき、符号化効率を向上させることができる。
【0123】
また、代表動きベクトルの探索を行い、最初に双方向予測のサブブロックが探索された時点で、探索を中止し、最初に探索した双方予測のサブブロックの動きベクトルを代表動きベクトルとしてよい。最初に探索した双方向予測のサブブロックの動きベクトルを代表動きベクトルとすることにより、処理量を削減しつつ、符号化効率を向上させることが可能となる。この場合、インター予測制御部114は、図15Bの逆の順序で代表動きベクトルを探索してもよい。
【0124】
このように、本実施の形態に係る画像符号化装置は、時間予測動きベクトルモード時のメモリに保持する動きベクトル情報を適切に制御する新たな判断基準を用いる。これにより、時間予測動きベクトルモードにおける必要メモリおよびバンド幅を削減することが可能になる。
【0125】
より具体的には、co−located情報マージフラグがオンの場合、画像符号化装置は、colPicメモリ117への書き込み時に、符号化対象ブロックの各サブブロックの動きベクトルの中から、双方向予測の動きベクトルを優先しながら、代表動きベクトルを選択する。そして、画像符号化装置は、各サブブロックの動きベクトルの代わりに、代表動きベクトルをcolPicメモリ117に格納することによって、colPicメモリ117の容量およびメモリバンド幅を削減することができる。
【0126】
また、画像符号化装置は、colPicメモリ117からの読み込み時には、代表動きベクトルを各サブブロックの参照ピクチャインデックスに合わせてスケーリング処理する。そして、画像符号化装置は、スケーリング処理後の動きベクトルを各サブブロックに設定する。これにより、画像符号化装置は、その動きベクトルから生成される時間予測動きベクトルの精度を向上させ、符号化効率を向上させることができる。
【0127】
なお、本実施の形態では、co−locatedブロックが2つ以上の動きベクトルを有している際に、co−locatedブロックが後方参照ブロックか、前方参照ブロックかで、符号化対象ブロックの時間予測動きベクトル算出に用いるco−locatedブロックの動きベクトルを切り替えるようにした。
【0128】
しかし、co−locatedブロックを含むピクチャに時間的に近い参照ピクチャを参照する動きベクトル(時間的な距離が短い動きベクトル)を用いて、時間予測動きベクトルを算出するようにしても構わない。ここで、時間的な距離は、表示時間順で、co−locatedブロックを含むピクチャと、co−locatedブロックが参照する参照ピクチャとの間のピクチャ数に応じて決定するなどが考えられる。
【0129】
また、co−locatedブロックの2つの動きベクトルのうち、大きさが小さい動きベクトルを用いて時間予測動きベクトルを算出するようにしても構わない。ここで、動きベクトルの大きさとは、動きベクトルの絶対値などを意味する。
【0130】
また、本実施の形態では、co−located情報マージフラグがオンの場合に、符号化対象ブロックの動きベクトルから代表動きベクトルを選択し、代表動きベクトル等を含むcolPic情報をメモリに書き込むようにしたが、必ずしもこれに限らない。例えば、co−located情報マージフラグがオンの場合は、符号化対象ブロックの動きベクトルだけではなく、参照ピクチャインデックスの数も削減して保存することなどが考えられる。
【0131】
この場合は、例えば、図14の処理フローで求めた代表動きベクトルと代表参照ピクチャインデックスを、colPic情報の各サブブロックの動きベクトルおよび参照ピクチャインデックスの代わりに保存する。そして、colPic情報の読み込み時には、図10の処理フローにおいて、代表動きベクトルのスケーリング処理を行わずに、代表動きベクトルと代表参照ピクチャインデックスを、各サブブロックの動きベクトルおよび参照ピクチャインデックスに設定する。
【0132】
これにより、colPicメモリ117に格納するcolPic情報のうち、動きベクトルだけではなく、参照ピクチャインデックスの数も削減できるため、メモリ容量およびバンド幅をより削減することができる。
【0133】
(実施の形態2)
図16は、本実施の形態に係る画像復号化装置の構成を示すブロック図である。
【0134】
本実施の形態では、復号化対象ピクチャより、表示時間順で、前方に位置するピクチャに含まれるブロックを、前方参照ブロックと呼ぶ。また、復号化対象ピクチャより、表示時間順で、後方に位置するピクチャに含まれるブロックを、後方参照ブロックと呼ぶ。
【0135】
画像復号化装置は、図16に示すように、可変長復号化部204、逆量子化部205、逆直交変換部206、加算部207、ブロックメモリ208、フレームメモリ209、イントラ予測部210、インター予測部211、スイッチ部212、インター予測制御部214、時間予測動きベクトル算出部216、および、colPicメモリ217を備えている。
【0136】
可変長復号化部204は、入力されたビットストリームに対し、可変長復号化処理を行い、ピクチャタイプ情報、予測動きベクトルインデックス、co−located参照方向フラグ、co−located情報マージフラグ、可変長復号化処理を行ったビットストリームを生成する。逆量子化部205は、可変長復号化処理を行ったビットストリームに対し、逆量子化処理を行う。逆直交変換部206は、逆量子化処理を行ったビットストリームを、周波数領域から、画像領域への変換し、予測誤差画像データを生成する。
【0137】
ブロックメモリ208は、予測誤差画像データと、予測画像データが加算されて生成された画像列を、ブロック単位で保存するためのメモリである。フレームメモリ209は、画像列を、フレーム単位で保存するためのメモリである。
【0138】
イントラ予測部210は、ブロックメモリ208に保存されているブロック単位の画像列を用いて、イントラ予測することにより、復号化対象ブロックの予測誤差画像データを生成する。インター予測部211は、フレームメモリ209に保存されているフレーム単位の画像列を用いて、インター予測することにより、復号化対象ブロックの予測誤差画像データを生成する。
【0139】
時間予測動きベクトル算出部216は、colPicメモリ217に格納されているco−locatedブロックの動きベクトル等のcolPic情報を用いて、時間予測動きベクトルモードの予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する。また、時間予測動きベクトル算出部216は、時間予測動きベクトルに対応する予測動きベクトルインデックスの値を割り当てる。そして、時間予測動きベクトル算出部216は、時間予測動きベクトルと、予測動きベクトルインデックスを、インター予測制御部214に送る。
【0140】
co−locatedブロックが動きベクトルを有していない場合には、時間予測動きベクトル算出部216は、時間予測動きベクトルモードによる動きベクトル導出を中止するか、または、動きベクトルを0として、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出してもよい。
【0141】
インター予測制御部214は、複数の予測動きベクトル候補から、予測動きベクトルインデックスに基づいて、インター予測の際に用いる動きベクトルを決定する。また、インター予測制御部214は、決定した予測動きベクトル候補のベクトルの値に、予測動きベクトル候補の予測誤差情報を加算することにより、インター予測の際に用いる動きベクトルを生成する。
【0142】
また、インター予測制御部214は、復号化対象ブロックの動きベクトル等を含むcolPic情報をco−located情報マージフラグの値に応じて、colPicメモリ217に転送する。
【0143】
最後に、加算部207は、復号化した予測画像データと、予測誤差画像データとを加算することにより、復号化画像列を生成する。
【0144】
図17は、本実施の形態に係る画像復号化方法の処理フローの概要を示す。可変長復号化部204は、ピクチャ単位で、co−located参照フラグおよびco−located情報マージフラグを復号化することにより、取得する(S801)。そして、時間予測動きベクトル算出部216は、co−located参照フラグに基づいて、前方参照ブロックをco−locatedブロックとするか、後方参照ブロックをco−locatedブロックとするか決定する。
【0145】
次に、時間予測動きベクトル算出部216は、図9および図10と同様の方法で、co−located情報に応じてcolPicメモリ217からco−locatedブロックの参照動きベクトル等を含むcolPic情報をリードする。そして、時間予測動きベクトル算出部216は、co−locatedブロックの参照動きベクトルを用いて、時間予測動きベクトルモードにより、予測動きベクトル候補(時間予測動きベクトル)を導出する(S802)。
【0146】
次に、インター予測制御部214は、複数の予測動きベクトル候補から、復号化した予測動きベクトルインデックスに基づいて、インター予測の際に用いる動きベクトルを決定する。また、インター予測制御部214は、決定した予測動きベクトル候補に、予測誤差情報を加算し、動きベクトルを導出する(S803)。
【0147】
インター予測部211は、導出した動きベクトルを用いて、インター予測により復号化を行う。インター予測制御部214は、図13および図14と同様な方法で、インター予測に用いた動きベクトル等を含むcolPic情報を、co−located情報マージフラグに応じて、colPicメモリ217に転送し、保存する(S804)。colPicメモリ217には、復号化対象ブロックの時間予測動きベクトルを算出するための、参照ピクチャの動きベクトル、参照ピクチャのインデックス値、および、予測方向などが格納されている。
【0148】
なお、参照ブロックが2つ以上の参照動きベクトルを有している場合に、時間予測動きベクトル算出のための参照動きベクトルの選択方法は、フラグ等に基づいていなくてもよい。例えば、参照動きベクトルの時間的な距離を算出し、時間的な距離が短い参照動きベクトルを用いてもよい。ここで、時間的な距離は、表示時間において、参照ブロックを含む参照ピクチャと、参照ピクチャが参照するピクチャとの間のピクチャ数に基づいて算出される。
【0149】
また、例えば、参照動きベクトルの大きさを算出し、大きさが小さい参照動きベクトルを用いて導出した動きベクトルを時間予測動きベクトルとしてもよい。
【0150】
このように、本実施の形態に係る画像復号化装置は、時間予測動きベクトルモード時のメモリに保持する動きベクトル情報を適切に制御する新たな判断基準を用いる。これにより、時間予測動きベクトルモードにおける必要メモリおよびバンド幅を削減することが可能になる。
【0151】
より具体的には、復号化したco−located情報マージフラグがオンの場合は、画像復号化装置は、colPicメモリ217への書き込み時に、復号化対象ブロックの各サブブロックの動きベクトルの中から、双方向予測の動きベクトルを優先しながら、代表動きベクトルを選択する。そして、画像復号化装置は、各サブブロックの動きベクトルの代わりに、代表動きベクトルをcolPicメモリ217に格納することによって、colPicメモリ217の容量およびメモリバンド幅を削減することが可能になる。
【0152】
また、画像復号化装置は、colPicメモリ217からの読み込み時には、代表動きベクトルを各サブブロックの参照ピクチャインデックスに合わせてスケーリング処理する。そして、画像復号化装置は、スケーリング処理後の動きベクトルを各サブブロックに設定する。これにより、画像復号化装置は、その動きベクトルから生成される時間予測動きベクトルの精度を向上させ、符号化効率の高いビットストリームを適切に復号化することが可能になる。
【0153】
以上、本発明に係る画像符号化装置および画像復号化装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。実施の形態に対して当業者が思いつく変形を施して得られる形態、および、実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される別の形態も本発明に含まれる。
【0154】
例えば、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、処理を実行する順番が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0155】
また、本発明に係る画像符号化装置および画像復号化装置は、それらに含まれる任意の構成要素を組み合わせて実現される画像符号化復号化装置として実現されてもよい。
【0156】
また、本発明は、画像符号化装置および画像復号化装置として実現できるだけでなく、画像符号化装置および画像復号化装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現できる。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD−ROM等の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0157】
また、画像符号化装置および画像復号化装置に含まれる複数の構成要素は、集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。これらの構成要素は、個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSIまたはウルトラLSIと呼称されることもある。
【0158】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内部の回路セルの接続および設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0159】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、画像符号化装置および画像復号化装置に含まれる構成要素の集積回路化を行ってもよい。
【0160】
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
【0161】
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、及び画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
【0162】
図18は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
【0163】
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
【0164】
しかし、コンテンツ供給システムex100は図18のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
【0165】
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
【0166】
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)。
【0167】
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
【0168】
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
【0169】
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
【0170】
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
【0171】
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、図19に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)。
【0172】
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
【0173】
図20は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
【0174】
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発明の画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
【0175】
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
【0176】
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
【0177】
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
【0178】
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を図21に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
【0179】
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
【0180】
図22に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
【0181】
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
【0182】
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば図20に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
【0183】
図23Aは、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
【0184】
さらに、携帯電話ex114の構成例について、図23Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
【0185】
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
【0186】
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
【0187】
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
【0188】
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
【0189】
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
【0190】
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
【0191】
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
【0192】
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【0193】
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0194】
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
【0195】
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
【0196】
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
【0197】
図24は、多重化データの構成を示す図である。図24に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
【0198】
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
【0199】
図25は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
【0200】
図26は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。図26における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。図26の矢印yy1,yy2,yy3,yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
【0201】
図27は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには図27下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
【0202】
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
【0203】
図28はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
【0204】
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
【0205】
多重化データ情報ファイルは、図29に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
【0206】
多重化データ情報は図29に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
【0207】
ストリーム属性情報は図30に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
【0208】
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
【0209】
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを図31に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
【0210】
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
【0211】
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、図32に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
【0212】
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
【0213】
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
【0214】
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
【0215】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0216】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0217】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【0218】
(実施の形態6)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
【0219】
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。図33は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
【0220】
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、図32のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、図32の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態4で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態4で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、図35のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
【0221】
図34は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
【0222】
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
【0223】
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
【0224】
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
【0225】
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
【0226】
(実施の形態7)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
【0227】
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を図36Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。特に、本発明は、動き補償に特徴を有していることから、例えば、動き補償については専用の復号処理部ex901を用い、それ以外のエントロピー符号化、デブロッキング・フィルタ、逆量子化のいずれか、または、全ての処理については、復号処理部を共有することが考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
【0228】
また、処理を一部共有化する他の例を図36Bのex1000に示す。この例では、本発明に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
【0229】
このように、本発明の動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本発明に係る画像符号化方法および画像復号化方法は、例えば、テレビ、デジタルビデオレコーダー、カーナビゲーション、携帯電話、デジタルカメラ、または、デジタルビデオカメラ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0231】
101 減算部
102 直交変換部
103 量子化部
104 可変長符号化部
105、205 逆量子化部
106、206 逆直交変換部
107、207 加算部
108、208 ブロックメモリ
109、209 フレームメモリ
110、210 イントラ予測部
111、211 インター予測部
112、212 スイッチ部
113 ピクチャタイプ決定部
114、214 インター予測制御部
115 co−located情報決定部
116、216 時間予測動きベクトル算出部
117、217 colPicメモリ
118 colPic情報読み込み部
119 colPic情報書き込み部
204 可変長復号化部
図1
図2
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図12B
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