(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883460
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイ
(51)【国際特許分類】
B65D 85/57 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
B65D85/57 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-558260(P2013-558260)
(86)(22)【出願日】2013年5月14日
(86)【国際出願番号】JP2013003081
(87)【国際公開番号】WO2014184822
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】302059702
【氏名又は名称】不二プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】池下 龍一郎
【審査官】
植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−114372(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00986063(EP,A2)
【文献】
登録実用新案第3052686(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、またはブルーレイディスク(BD)を保持するためにディスクケース内に介装される基板5の上に中央の表裏にディスクの中心孔と係合するディスク保持体の突設されたディスクトレイにおいて、
前記ディスク保持体10は、ディスクトレイ3の中央となる中心部20と、該中心部の周囲が円弧状に12分割された形状となるように、一つ置きに中心部からコ字型に切り離されて切設された略扇型の第一面のディスク係合片30および第二面のディスク係合片40と、該中心部から放射状に延設された放射補強部60と、該放射補強部の縁端にディスク係合片の中心部に近い先端と円環状を形成するように突設された円環補強部62と、該ディスク係合片と中心部と基板との間に切設されたコ字形貫穿70と、からなり、
ディスク係合片は、ディスクトレイの第一面のディスク係合片30側と第二面のディスク係合片40側に一つ置きに立設されるとともに、第一面(表側A)のディスク係合片30の中心部に近い先端にディスクを係合するためのディスク係合凸部32と、ディスクトレイの第二面(裏側B)のディスク係合片40の先端にディスクを係合するためのディスク係合凸部42と、さらに、該ディスク係合片30、40のディスク係合凸部の設けられた面に対抗する反対側の面34、44にディスク係合片の基端を結ぶ弧線状にディスク係合片に弾性力を持たせるための浅溝80、82と、からなる構成であるとともに、
前記ディスク係合片は、ディスクを確実に保持するためにディスク係合片の側面に設けられた挟持面36、46と、ディスク係合凸部の先端に形成された基部より幅厚の係合凸部先端32a、42aとからなり、更に、ディスク係合凸部の中心から外側に向けて根元から先端へ設けられた挟持面36、46が基板の垂線に対し、略15度ディスク側に傾いた構成であり、
前記ディスク保持体は、第一面と第二面に装着されたそれぞれのディスクの脱着の際に、第一面(表側)のディスク係合片の係合圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を及ぼさないように、第一面と第二面の保持体がコ字形貫穿70を介して独立した構造であり、更に、ディスクの磁気面と基板5とが摩擦接触しないように円環補強部62から傾斜部90が基板の平面に向かって設けられていることを特徴とするディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、または、ブルーレイディスク(BD)を収容保管するためのディスクケース内に介装されるディスクトレイに装備されるディスク保持体の構造に関し、特に、ディスクを表面と裏面の両面に1枚ずつ計2枚のディスクを保持係合することが可能であり、更に、第一面(表側)にディスクを保持係合する際にディスク係合片にかかる押圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を及ぼさずに両面にディスクを確実に保持することを可能にしたディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク(以下CD)、デジタルバーサタイルディスク(以下DVD)やブルーレイディスク(以下BD)等は、今日では映像から文章データまで幅広く利用され、様々な分野において普及しており、それに伴いそれぞれのディスクを収容保管するケースも様々な形状のものが開発・製造されている。更に、記録情報の増大に伴うディスク枚数の増加、または、再生機器の普及によりCD等に特典映像DVDを付加するなどのサービスが増えたことにより、2枚のディスクを1つのディスクトレイの両面に保持することで高効率に収納することが可能な様々な保持機構が開発されている。
【0003】
CD、DVD、BDは、同様の形状のケースに収められているが、それぞれの種類のディスクの形状は厳密には同一ではなく、中心孔のサイズ、ディスクの厚み、全体の直径等、全てにおいて異なる寸法で形成されている。また、異なる規格に基づいて製造されているため、それぞれの種類のディスクにより、係合保持するための適切な保持圧力も異なる。そのため、CDを保持する機構とDVDを保持する機構、または、BDを保持する機構は異なり、それぞれのケース毎の保持機構を開発しなければならなかった。
【0004】
従来のディスク両面保持タイプの2枚ディスクトレイは、片面に1枚のディスクのみを保持する片面タイプの保持体をディスクトレイの裏面に同様に形成し、表裏全てのディスク係合片はディスク保持体の中央部と連結されており、表面と裏面のディスク係合片は一体部品として構成されているため、十分な弾力性を確保できず、第一面(表側)の係合圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を及ぼす構造のものが多かった。
【0005】
第一面(表側)のディスク係合片に生じる係合圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に作用してしまう構成では、第一面(表側)のディスク係合片は、ディスクの中心孔に押圧されてディスク中心方向に縮径され、第二面(裏側)のディスク係合片は、第一面(表側)に係合されたディスクの中心孔によりディスクの縁端方向に押し広げられる形となって押圧され、ディスク係合片の口径が拡径されてしまう問題が発生していた。
【0006】
大量生産されたCD等のディスクは、係合用作業工程で、まず第一面(表側)をディスクトレイに係合保持させ、その後、第二面(裏側)を係合保持させるという作業工程が取られるのが一般的である。当該工程において、第一面(表側)のディスクの係合保持が完了した時点で、第二面(裏側)のディスク係合片の口径は拡径されている。この状態で、次なる第二面(裏側)のディスク係合作業を行うと、広径となったディスク係合片に第二面(裏側)ディスク中心孔が上手く嵌合せずに生産ラインが停止してしまうという問題が発生していた。
【0007】
従来の表裏一体型のディスク係合片は、第一面(表側)のディスク係合片の押圧力の影響を直接的に受ける上、更に表裏一体型はディスク係合片の弾力性が低いため、押圧力により、かしめられて拡径されてしまった第二面(裏側)のディスク係合片は非常に反発力が強く、作業工程で使用されるディスク係合用機械の押圧力の設定が低い場合にはエラーが多発し、反発力を十分超える押圧力を設定すると、ディスクまたはディスクトレイの破損が発生してしまうという事態も発生しかねない状態となっていた。
【0008】
従来の表裏一体型のディスク係合片を有するディスク保持体に係合保持された表裏2枚のCD等のディスクには、両面のディスク中心孔が互いのディスク係合片を押圧する相互作用で非常に高い係合圧力がかかってしまう構造となっている。そのため、一般の需要者が手でCD等のディスクを脱着する際に、ディスクが撓む程の負荷をかける必要があり、微細なキズでも大きな影響が発生する繊細な磁気記録面を損傷してしまう虞があった。
【0009】
表裏一体型(一体形成)であっても、ディスク係合片を薄く形成すれば高い弾力性を持たせることは可能ではあるが、ディスク係合片を薄く形成すると製品強度が下がり、ディスク係合片が容易に破損してしまうという結果を招くこととなるため、十分な厚みを維持したまま十分な弾力性を確保したディスク係合片の開発が望まれていた。
【0010】
そのため、第二面(裏側)のディスク係合片が、第一面(表側)のディスク係合片の係合圧力の影響を受けずに、十分な弾力性と係合保持力を備えた2枚ディスクトレイであり、更に、種々の異なる規格に基づいて製造されているCD,DVD,BD全てに対応可能な保持機構を有するディスク保持体を備えた2枚ディスクトレイの開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2004−189277号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の問題を解決するために本発明のディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイは、表面と裏面に一つ置きにディスク係合片30、40を設け、第一面(表側A)と第二面(裏側B)にそれぞれ独立してディスクを係合することにより、第一面にディスクを保持係合する際にディスク係合片にかかる押圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を
与えずに
干渉の低減された状態で両面にディスクを保持することが可能
であるとともに、表裏のディスク面の独立性を保つためにディスクトレイと接触しないように非接触状態で係合されているディスクの磁気面が、着脱時のディスク及びディスクトレイの歪みにより摩擦接触することを防止するように傾斜部が設けられた2枚ディスクトレイを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明に係るディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイは、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、またはブルーレイディスク(BD)を保持するためにディスクケース内に介装される基板5の上に中央の表裏にディスクの中心孔と係合するディスク保持体の突設されたディスクトレイにおいて、 前記ディスク保持体10は、ディスクトレイ3の中央となる中心部20と、該中心部の周囲
が円弧状に12分割
された形状となるように、一つ置きに中心部からコ字型に切り離
されて切設
された略扇型の第一面のディスク係合片30および第二面のディスク係合片40と、該中心部から放射状に延設された放射補強部60と、該放射補強部の縁端にディスク係合片の中心部に近い先端と円環状を形成するように突設された円環補強部62と、該ディスク係合片と中心部と基板との間に切設されたコ字形貫穿70と、からなり、ディスク係合片
は、ディスクトレイの第一面のディスク係合片30
側と第二面のディスク係合片40
側に一つ置きに立設されるとともに、第一面(表側A)のディスク係合片30の中心部に近い先端にディスクを係合する
ためのディスク係合凸部32
と、ディスクトレイの第二面(裏側B)のディスク係合片40の先端にディスクを係合する
ためのディスク係合凸部42
と、さらに、該ディスク係合片30、40のディスク係合凸部の設けられた面に対抗する反対側の面34、44にディスク係合片の基端を結ぶ弧線状にディスク係合片に弾性力を持たせるための浅溝80、82
と、からなる構成であるとともに、 前記ディスク係合片は、ディスクを確実に保持するためにディスク係合片の側面に
設けられた挟持面36、46
と、ディスク係合凸部の先端
に形成された基部より幅厚の係合凸部先端32a、42a
とからなり、更に、ディスク係合凸部の中心から外側に向けて根元から先端へ設けられた挟持面36、46が基板の垂線に対し、略15度ディスク側に傾いた構成であり、前記ディスク保持体は、第一面と第二面に装着されたそれぞれのディスクの脱着の際に、第一面(表側)のディスク係合片の係合圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を及ぼさないように、第一面と第二面の保持体がコ字形貫穿70を介して独立した構造であり、更に、ディスクの磁気面と基板5とが摩擦接触しないように円環補強部62から傾斜部90が基板の平面に向かって設けられている構造である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイは上記詳述したような構成であるので以下のような効果を奏する。
1、本発明のディスク保持体は、表面と裏面が
独立性を保持するように個別に構成されている2枚ディスクトレイであり、お互いに影響
・干渉すること無く確実に
干渉低減状態で装着・離脱をすることが出来る。また、補強部60、62を設けて
基板5と中心部を結合させたことにより、中央に集中して複数のコ字形貫穿70が切設されたディスク保持体に十分な強度が確保することが可能である。
また、ディスク係合片30、40のそれぞれの反対側の面34、44に浅溝80を設けたことにより、ディスク係合片に大きな弾力を持たせている。
【0017】
2.ディスク係合片の側面にディスクを確実に保持するための挟持面36、46を設け、ディスク係合凸部の中心から外側に向けて略15度ディスク側に傾けて形成することにより確実にディスクを底面より少し浮かせた状態で係合保持することが可能である。
3.ディスク係合片を第一面(表側)と第二面(裏側)に交互にコ字形貫穿70を介して独立した状態で設けることにより、ディスクの脱着時、および、係合状態において、第一面(表側)のディスク係合片の脱着・係合圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を及ぼさないという効果がある。
4.円環補強部62から
基板の平面に向かって設けられた傾斜部により、ディスクの磁気面が
基板と摩擦抵触しないように
表裏が独立に構成されているため、脱着時、または、ディスクを係合した状態での携行・搬送などにおいて、
摩擦・干渉を低減した状態でディスクの磁気面を保護することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイの正面図
【
図2】本発明に係るディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイの側面図
【
図4】本発明に係るディスク保持体のA−A’断面図
【
図5】本発明に係るディスク保持体のB−B’断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明に係るディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイを図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
本発明に係るディスク保持体の設けられた2枚ディスクトレイのディスク保持体10は、ディスク1をディスクトレイ3の基板5の上に係合保持する突起で、中心部20と、ディスク係合片30(第一面または表側)、40(第二面または裏側)と、放射補強部60と、円環補強部62と、コ字形貫穿70と、第二面(裏側)に設けられた浅溝80と、第一面(表側)に設けられた浅溝82と、傾斜部90とからなる構成である。ディスクトレイ3は、2枚のディスクを両面で係合保持するものであり、第一面(表側)と反対側となる第二面(裏側)とからなる構成である。
【0020】
中心部20は、ディスクトレイ3の中央に位置する補強部であり、中央から6方向に放射状に延びる第一面と第二面の両面に凸設された突条からなる放射補強部60と、中心部の周縁の両面に円環状に凸設される突条からなる円環補強部62とからなり、基板5の上に突設されている構成である。中心部20は、ディスクトレイの中央に装備されるディスク保持体の中心であり、ディスク脱着の際に押圧による負荷がかかる部位であるため表裏両面に凸条からなる放射補強部60および円環補強部62により補強が施され、亀裂などの破損を防止する構造となっている。
【0021】
ディスク係合片30は、中心部の外縁の基板5に切設された扇状の切込みで、第二面(裏側)に浅溝80の設けられているその基端38は、基板5と一体に形成されており、基板5から基端を残して扇形に切り離され立ち上げられた構造である。ディスク係合片30は、ディスク係合凸部32と、係合凸部先端32aと、挟持面36と、第二面(裏側)に設けられた浅溝80とからなる。本実施例では、基板5の中心部20の周囲を円弧状に12分割し、一つ置きに結合凸部を立ち上げた状態でディスク係合片30、40は形成されている。また、略扇形ディスク係合片30は、基端38が基板5と一体に形成されているが、他の3辺は基板5から切り離された構造であり、基端を除いてコ字状の貫穿70を介して中心部20とは接しない構成となっている。ディスク係合片30は、基板5を形成する樹脂の薄板で一体的に構成されているため、押圧に対する弾力は有するが、押圧に対する耐性が不足する可能性があるので、表裏両面に凸条からなる放射補強部60と円環補強部62が設けられている。
【0022】
ディスク係合凸部32は、ディスク係合片30に設けられているディスクの係合部で、係合凸部先端32aと、挟持面36とからなり、ディスク係合片30の中心部に近い先端を基板5に対して略垂直に曲折させL字形に立ち上げ形成されている。挟持面36でディスクの中心孔を係合保持する構成である。反対面である第二面(裏側)に浅溝80を設けることにより、ディスク係合片30に弾力性を持たせているが、ディスク係合凸部32自体にも弾力性があり、ディスクの脱着時に生ずる押圧力によりディスク中心孔に対して反発力を生ずる構成である。本実施例では、基板5の中心部20の周囲を12分割して、一つ置きに6つのディスク係合片を形成しており、第一面と第二面(表裏)にそれぞれ3つのディスク係合片を形成している。分割する割合は、12分割に限定されるものではなく、16分割して8つのディスク係合片を設けて表裏それぞれ4つのディスク係合片を形成することも可能である。
【0023】
挟持面36は、ディスクの中心孔に係合する面であり、ディスク係合片30の先端に立設されたディスク係合凸部32に設けられており、ディスク係合凸部32のディスク中心孔に接触する側に形成される構成である。挟持面36は、ディスク係合片32の根元から先端へ向けて、基板の垂線に対して略15度の傾斜が形成されている。この傾斜を設けることによりディスクがディスク係合片から離脱することを防止し、十分な弾力性を有するディスク係合片30と挟持面36により、適度な押圧力で様々な種類サイズのディスク孔に対応し、適切にディスクを係合保持することが可能な構造となっている。
【0024】
第二面のディスク係合片40は第一面のディスク係合片30と同様の構造であり、ディスク係合凸部42と、係合凸部先端42aと、挟持面46と、第一面(裏側)に設けられた浅溝82とからなる。基板5の中心部20の周囲を円弧状に12分割し、一つ置きに立ち上げ形成され、コ字状の貫穿70を介して中心部20に接しない構成となっている。ディスク係合片40のディスク係合凸部の設けられた面に対抗する反対側の面44には、ディスク係合辺の基端を結ぶ円弧線状に第一面(表側)の浅溝82が削設されており、ディスク係合片40に弾力性を持たせる構成である。
【0025】
ディスク係合凸部42は、係合凸部先端42aと、挟持面46とからなり、ディスク係合片40の中心部に近い先端を基板5に対して略垂直に曲折させL字形に形成され、挟持面36でディスクの中心孔を係合保持する構成である。
【0026】
挟持面46は、ディスク係合片40の先端に立設されたディスク係合凸部42に設けられており、ディスク係合凸部42のディスク中心孔に接触する側に形成された構成である。挟持面46は、ディスク係合凸部42の根元から先端へ向けて略15度の傾斜が形成されている。
【0027】
基板5は、2枚のディスク(CD、DVD、BD)を保持するためにディスクケースに介装されるディスクトレイであって、中央の表裏にディスクの中心孔と係合するディスク保持体10が突設された構成である。基板5の中心部20の周囲を円弧状に12分割し、コ字状の貫穿70を切設し、ディスク係合片30、40と、円環補強部62を押出形成してディスク保持体をディスクトレイの中央の表裏に装備する構成である。
【0028】
放射補強部60は、第一面および第二面の両面に設けられる放射状に延びる複数本の突条であり、ディスク保持体の中心から各
円環補強部62へ向けて延伸され、円環補強部62と一体形成されている構成である。放射補強部60は、中心部20およびディスク保持体10全体を補強する部材であるため、基板5の厚みよりも厚く形成されている。放射補強部60は、ディスクの中心を16分割してディスク係合片を片側4枚ずつに形成した場合は、中心から形成される放射状の突条は8本となる。また、放射補強部60はディスク保持体の強度が保てる構成であれば、必ずしも放射状に形成する必要はなく、様々な形状とすることも可能である。
【0029】
円環補強部62は、第一面および第二面の両面に設けられる凸条であり、脇に強度を補強するための傾斜部90を具有する構成である。円環補強部62は、各ディスク係合片30と40の間の基板上に中心部を囲んで12分割したディスク係合片を除いた部分に一つ置きの円環状に形成され、ディスク中心部およびディスク保持体自体を補強する構成である。円環補強部62は、ディスク係合凸部32、42よりも、やや低く(短く)、また、係合保持されるディスクの表面の高さよりも高く形成され、基板5に放射補強部60と一体的に凸条に形成されている構成である。円環補強部62は、収納されたディスクを安定させる機能を持つ中心孔と同一の円環状の突起であり、弾力性の高いディスク係合片30、40に係合保持されたディスクが衝撃により係合されたままディスク係合片30、40の可動範囲内で移動することを円環状の突起で防いでいる。円環補強部62は、係合時にディスクを安定させることが可能であればよく、ディスク係合凸部のような係合面は不要であり、かつ、本実施例の形状・高さに限定されるものではない。
【0030】
コ字形貫穿70は、ディスク保持体10の中心部20の周囲を円弧状に12分割して形成した略扇形のディスク係合片30、40の基端部分を残して基板5から分離させるために切設された、3辺を切り離すコ字型の長孔であり、放射補強部60と円環補強部62で補強された中心部20から、弾力性を有するディスク係合片30、40を離隔させる構造である。中心部20とディスク係合片30、40の先端を離隔させることで、一つ置きに立設させたディスク係合片30、40の第一面(表側)にかかる係合圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を及ぼさない構造としたものである。
【0031】
第二面(裏側)の浅溝80は、ディスク係合片30のディスク係合凸部の設けられた面に対抗する反対側の面34に、ディスク係合片の基端に円弧線状に削設された浅溝であり、ディスク係合片30に弾力性を持たせる構造である。
同様に、ディスク係合片40のディスク係合凸部42の突設された面の反対側(裏側)にディスク係合片40の基端を円弧状に結ぶ第一面(表側)の浅溝82を削設した構成である。浅溝80、82を削設することで、ディスク係合片30、40に十分な弾力性と幅広い可動域を確保することが可能であり、ディスクの脱着時に必要となる押圧力が軽減され、ディスクの脱着がスムーズに行える上、ディスク保持体の破損や、ディスク係合保持時に適度な圧力で保持するのでディスクへかかる係合負荷も軽減することが可能となっている。
【0032】
傾斜部90は、円環補強部62から基板5の平面に向かって一体的形成される凸条であって、円環補強部62のディスク中心孔接触面の両側端からコ字形貫穿70に沿ってディスクの縁端方向に、ディスク中心孔接触面の根元の略0.5mmの高さから略8度の角度で略V字型に形成されている。
ディスク係合凸部32、42により係合されたディスク
下面の中心孔
の内縁端が傾斜部90に接することでディスクの係合圧入作業は完了して係合保持される位置が決まるため、ディスクの磁気記録面が
基板5から僅かに浮いた状態
(略0.5mm)で係合保持することが可能となる。ディスクの磁気記録面が
基板5に非接触状態で係合保持できるため、携行、搬送などの振動などでディスクが微動しても磁気記録面を安全に保護することが可能となる。
【0033】
本実施例では、コ字形貫穿70を切設して、ディスク係合片30、40と中心部20を離間して、更に、係合凸部の反対側面34、44に浅溝80を設けたことにより、従来のディスク保持体と比較して、大きな弾力性と幅広い可動領域を確保したディスク係合片を設けることが可能となった。このディスク係合片の弾力と可動領域により、CD、DVD、BDなどの規格の異なる様々なディスクを一種類のディスク保持体でディスクトレイに係合することが可能となり、更に、ディスク係合片が十分な弾力性を備えているため、係合保存時にディスク中心孔に不要な圧力をかけずに適切な保持圧力で保存することを可能としている。
【0034】
本発明に係るディスク保持体は、第一面(表側)のディスク係合片30と、第二面(裏側)のディスク係合片40が表裏で独立して形成されており、第一面(表側)に加えられた係合圧力が第二面(裏側)のディスク係合片に影響を及ぼさないため、第一面(表側)のディスクが係合された状態で第二面(裏側)のディスク係合片が拡径されることが無い構成である。そのため、第一面(表側)にディスクを係合させた後に、第二面(裏側)を係合させる際に、低圧力でスムーズに係合させることが可能となった。
【0035】
従来よりも弾力性を有する表裏で独立したディスク係合片を備えており、係合圧力が低く抑えられているため、ディスクやディスク保持体を破損しない程度の適切な係合圧力で容易に係合することが出来る構成である。また、第二面(裏側)のディスク係合片に拡径が生じないので、ディスク中心孔とディスク保持体のセンタリングが容易であり、係合用機械でディスクを係合させる際にエラーの発生を抑えることが可能となった。また、ディスク係合凸部32、42の挟持面36、46に傾斜を設けた構造であるため、弾力性のあるディスク係合片と挟持面の傾斜により、係合されたディスクが振動や衝撃などで離脱することを防止することが可能となった。
【0036】
本発明に係るディスク保持体は、上記詳述したような構成であるため、生産ラインでのディスク係合作業において機械の作業ミスおよび商品の破損を軽減することが可能であり、また、需要者によるディスクの係合・離脱も容易であり、保存状態においてはディスクに負荷をかけない適度な係合圧力で保存することが可能である。更に、低圧力で係合・離脱することが可能であるため、ディスク係合片に大きな負荷がかかることはなく、従来のディスク係合片よりも係合・離脱時の破損が軽減できるため、長期に亘っての使用に耐える構造である。
【符号の説明】
【0037】
1 ディスク
3 ディスクトレイ
5 基板
10 ディスク保持体
20 中心部
30 ディスク係合片
32 ディスク係合凸部
32a 係合凸部先端
34 係合凸部反対側面
36 挟持面
38 基端
40 ディスク係合片
42 ディスク係合凸部
42a 係合凸部先端
44 係合凸部反対側面
46 挟持面
60 放射補強部
62 円環補強部
70 (切欠)コ字形貫穿
80 第二面(裏側)浅溝
82 第一面(表側)浅溝
90 傾斜部