(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微粒無機顔料として、合成非晶質シリカ、アルミナ、アルミナ水和物より選ばれる何れか1種又はこれら2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用模様紙。
前記バインダとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、カルボキシルメチルセルロースより選ばれる何れか1種又はこれら2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用模様紙。
前記無機顔料として、二次粒子の体積平均粒子径が5〜20μmである合成非晶質シリカを、前記インクジェットインク受容層に占める割合として1〜12質量%の範囲で含有させることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録用模様紙。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、本発明の好適な実施の形態について述べるが、本発明は以下の記述で限定されるものではない。
【0028】
先にも述べたように、本発明に係るインクジェット記録用模様紙は、模様紙としての意匠性とインクジェット記録用紙としてのインクジェット記録適性を併せ持つことを目的とするものである。模様紙としての意匠性を担保するためには、模様紙に意匠性を付与するための模様形成体が模様紙の表面に表出していることと、表出した模様形成体の視認性が妨げられないことが必要となる。また、インクジェット記録用紙としてのインクジェット記録適性を保持するためには、インクジェットインク受容性を付与することと、インクジェットインクの吸収や定着を阻害する要因を少なくすることが必要であると考えられる。本願発明者等は意匠性とインクジェット記録適性とを両立した模様紙について鋭意研究を行い、本発明に係るインクジェット記録用模様紙を想起するに至った。
【0029】
本発明に係るインクジェット記録用模様紙は、模様形成体を含有する基紙と、基紙の模様形成体が表出した面に設けられたインクジェットインク受容層とからなり、インクジェットインク受容層は無機顔料とバインダとを含有する構成である。
【0030】
本発明のインクジェット記録用模様紙に用いる基紙は、少なくとも一方の面に模様形成体が表出した構成とする。模様形成体を基紙の少なくとも一方の面に表出させる方法としては、特に制限するものではなく、基紙を抄紙する際に抄紙原料中に模様形成体を添加して抄き込む方法、又は模様形成体を含有する塗工液を基紙上に塗布する方法、模様形成体を直接基紙表面に圧着させる方法、など公知の方法を用いることができる。
【0031】
模様形成体を塗布又は圧着させる方法を用いて模様形成体を設ける場合には、ベースとなる紙基材としては、一般的な上質紙、中質紙、白板紙などを用いることができる。また、模様形成体を抄紙原料に添加して抄紙段階で抄き込む場合に用いるパルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の化学パルプ、グランドパルプ、脱墨古紙パルプ等の古紙パルプ、などの一般的なパルプを1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0032】
これらの原料パルプには、必要に応じて従来公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種又は2種以上を併用してもよい。また、本発明においては、基紙を2層以上の抄き合わせ紙として、その最表層となる層にのみ模様形成体を抄き込むように構成してもよい。
【0033】
模様形成体を基紙表面に表出させる方法としては、用途や模様形成体の種類に応じて上述のいずれの方法を選んでも良いが、これらの方法の中でも、模様形成体が容易に脱落しないことから抄き込みによる方法が好ましい。
【0034】
次に、模様形成体について説明を行う。本発明において用いる模様形成体としては、基紙表面に表出した際に模様として認識でき、且つ、インクジェット記録用模様紙としたときにインクジェット記録適性を損なわないものであれば特に制限はなく、模様紙の分野において用いられている公知の模様形成体を適宜選択して用いることができる。このような模様形成体としては、具体的には、着色顔料やその凝集物、着色繊維、繊維凝集物、樹脂系凝集物などが挙げられる。
【0035】
本発明のインクジェット記録用模様紙においては、前記模様形成体が光輝性物質を含有するものであってもよい。模様形成体に光輝性物質を含有させることで、模様に光沢感を有する意匠性の高いインクジェット記録用模様紙とすることができる。模様形成体が光輝性物質を含有する場合には、模様の光沢感が視認性としての重要な要素となるが、模様の上に透過率の低いインクジェットインク受容層を設けると、光沢感が著しく損なわれることとなる。
【0036】
しかしながら、本発明のインクジェット記録用模様紙においては、インクジェットインク受容層を全光線透過率が90%以上のものとすることから、模様の光沢感が損なわれることが殆ど無く、極めて意匠性に優れ、しかも優れたインクジェット印刷適性を有するインクジェット記録用模様紙とすることができる。ここで、光輝性物質を含有する模様形成体としては、金やアルミニウムなど光輝性を有する金属片そのものを模様形成体としてもよいし、光輝性を有する光沢顔料そのもの又はそれらの凝集物を模様形成体とすることもできるが、光沢顔料を用いる場合には真珠光沢顔料が好ましい。このような真珠光沢顔料を使用することにより、更に光沢感及び意匠性に優れたインクジェット記録用模様紙とすることができる。
【0037】
ここで、真珠光沢顔料とは、光の反射・干渉現象を利用して真珠のような輝きを付与できる顔料のことである。更に詳細に述べれば、薄片状基材の表面を屈折率の高い金属酸化物で被覆することにより、入射した光が被覆層表面及び基材と被覆層の界面で多重層反射することで、真珠と同じような光沢感を発現させる。また、基材や被覆層の厚さを変えることで、反射光の層内での多重層反射光や相互干渉作用により、七色の干渉色を発現させることも可能である。
【0038】
このような真珠光沢顔料としては、例えば、天然若しくは合成薄膜状雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆したものがあり、更に具体的に例を挙げれば、日本光研工業製の「PEARL−GRAZEシリーズ」「ULTIMICAシリーズ」「PROMINENCEシリーズ」「TWINCLE PEARLシリーズ」、メルク製の「Iriodin」「Miraval」「Colorstream」などがある。
【0039】
前述の通り、これらの光輝性物質は、凝集体とせずに基紙に含ませてもよいが、真珠光沢顔料のように微粒状のものを用いる場合には、一定の大きさの模様として認識できるよう凝集体として基紙に含ませることもできる。このような凝集体からなる模様形成体とする方法としては特に制限するものではないが、例えば、光輝性物質とナトリウムカルボキシルメチルセルロースとを含有する混合物に、金属塩を添加することで得ることが可能である。更に、本発明においては、光輝性物質とナトリウムカルボキシルメチルセルロースとを含有する混合物に、発明の効果を損なわない範囲でセルロース繊維や化学繊維を添加することで凝集体の大きさや強度をコントロールすることも可能である。
【0040】
ここで凝集体からなら模様形成体を得るために用いる金属塩としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、塩化第二銅、硫酸亜鉛、酢酸鉛、塩化バリウム、などを用いることができる。このようにして得られた凝集体からなる模様形成体は、水分散性が良好で紙料原料中に均一に分散できるため、模様形成体を設ける手段として模様形成体を基紙へ抄き込む方法を採用した際に、基紙表面にランダムに模様形成体を散りばめることが容易となる。
【0041】
本発明において、模様形成体を基紙に抄き込む場合には、模様形成体の配合量は模様形成体を含有する基紙層全体に対して0.2〜5質量部の範囲とすることが好ましい。模様形成体の配合量が0.2質量部未満だと模様の視認性が十分に得られない可能性があり、逆に模様形成体の配合量が5質量部を超えると、基紙の紙層強度が弱くなり、印刷工程での紙剥けが起きたり、断裁時に紙層から模様形成体が脱落してしまう虞がある。
【0042】
次に、インクジェットインク受容層の構成について説明する。先にも述べたように、模様形成体は基紙表面に表出することにより基紙の模様として視認されるものであるため、模様が表出した基紙表面上に透過率の低いインクジェットインク受容層を設けると、インクジェットインク受容層が基紙表面の模様を隠蔽することにより模様の視認性に劣るものとなる。
【0043】
そのため、本発明のインクジェット記録用模様紙においては、インクジェットインク受容層として、JIS K 7105:1981における全光線透過率が90%以上のものを基紙上に設けるように構成する。全光線透過率が90%未満では、透明性に劣るインクジェットインク受容層によって模様形成体が隠蔽されてしまい、模様の視認性が損なわれることとなる。なお、模様の視認性を更に向上させる観点からはインクジェットインク受容層の全光線透過率を94%以上とすることが好ましく、特に、模様形成体に光輝性物質を含有させる場合には、光沢感の視認性を向上させる観点からも望ましい。
【0044】
このようなインクジェットインク受容層とすることで、模様の視認性に優れ、模様形成体に光輝性物質を含有した場合に光沢感が損なわれず、しかもインクジェット印刷適性を有するインクジェット記録用模様紙とすることができる。
【0045】
本発明においては、インクジェットインク受容層のJIS K 7105:1981における全光線透過率を90%以上として模様の視認性を確保する一方で、インクジェット記録適性も満足させなければならない。インクジェット記録適性を満足させるためには、インクジェットインク受容層に高いインク吸収性が求められる。インクジェットインク受容層に高いインク吸収性を付与する方法としては様々あるが、インクジェットインク受容層中にインク吸収性の向上に効果のある無機顔料を含有させる方法が、その効果の高さから用いやすい。
【0046】
しかしながら、インクジェットインク受容層に無機顔料を配合すると、その配合量が多くなるにつれインク吸収性は高くなるものの、その一方でインクジェットインク受容層の透明性は低下する傾向にあり、結果的に全光線透過率が低くなることから模様の視認性を損ねやすい。
【0047】
即ち、無機顔料を配合するインクジェットインク受容層において、インク吸収性と全光線透過率を高める特性とは一見相反する特性であり、この両方の特性を満足させることは困難と考えられていた。
【0048】
本願発明者らはこの点について鋭意研究を行い、その結果、インクジェットインク受容層に特定の顔料を一定量配合することにより、インク吸収性と全光線透過率を高める特性という一見相反する二つの特性を同時に満たせることを知見した。
【0049】
前記知見に基づき、本発明のインクジェット記録用模様紙においては、インクジェットインク受容層に含有させる無機顔料として、二次粒子の体積平均粒子径が500nm以下の微粒無機顔料を含有させ、且つ、前記微粒無機顔料のインクジェットインク受容層に占める割合を50〜80質量%とする。このように特定の粒子径を有する無機顔料を特定量配合することが、インク吸収性と全光線透過率を高める特性とを両立させる上で重要となる。
【0050】
これに対して、二次粒子の体積平均粒子径が500nmを超える無機顔料を、上記範囲の割合で含有させると、インクジェットインク受容層の透明性を損ね、結果的に全光線透過率を90%以上とすることが困難になる。本発明で用いる微粒無機顔料としては、より粒子径の細かなものほど透明性の高いインクジェットインク受容層とすることができ、このことから二次粒子の体積平均粒子径が300nm以下の微粒無機顔料を用いることがより好ましい。
また、微粒無機顔料のインクジェットインク受容層に占める割合が50質量%に満たないと、インクジェットインク受容層の透明性は確保できるが、インク吸収性を満足できない。逆に微粒無機顔料の占める割合が80質量%を超えると、インク吸収性は満足できるものの、インクジェットインク受容層の透明性を損ねやすく、更には、印刷工程や断裁工程等の加工工程で微粒無機顔料の脱落等の問題を生じることとなる。
【0051】
本発明においては、上記構成に加えて、二次粒子の体積平均粒子径が500nmを超える無機顔料を用いることも可能である。即ち、無機顔料として微粒無機顔料と比較的大きな粒子径を有する無機顔料とを併用するということである。比較的大きな粒子径の無機顔料をインクジェットインク受容層に含有させることにより、インクジェットプリンタでの用紙搬送性の向上を図ることができる。これは、比較的大きな粒子径の無機顔料がスペーサーとして機能することで、結果的にインクジェットインク受容層表面の摩擦係数の低減に寄与しているものと考えられる。しかしその一方で、二次粒子の体積平均粒子径が500nmを超える無機顔料を用いると、インクジェットインク受容層の透明性を損ねやすく、全光線透過率を90%以上とすることが困難となるため、その使用量は少量に留める必要がある。
【0052】
本発明において、前述の二次粒子の体積平均粒子径が500nmを超える無機顔料としては、二次粒子の体積平均粒子径が5〜20μmである合成非晶質シリカを用いることが好ましい。合成非晶質シリカは、透光性と光拡散性を有するという点から少量の使用であればインクジェットインク受容層の透明性を損ねにくく、更にはインクジェットインクの吸収性にも優れることから、前述のスペーサーとして機能する無機顔料として好適に使用することができる。該合成非晶質シリカとしては、二次粒子の体積平均粒子径が8〜16μmであるものがより好ましく、10〜15μmであるものが更に好ましい。二次粒子の体積平均粒子径が5μm未満であると、インクジェットインク受容層表面の摩擦係数の低減効果を得られ難い。一方、二次粒子の体積平均粒子径が20μmを超えると、インクジェットインク受容層の透明性を損ねやすく、全光線透過率を90%以上とすることが困難になる。
【0053】
また、本発明において二次粒子の体積平均粒子径が5〜20μmである合成非晶質シリカの配合量としては、インクジェットインク受容層に占める割合が1〜12質量%の範囲であることが好ましく、3〜10質量%の範囲であればより好ましい。配合量が1質量%未満ではインクジェットインク受容層表面の摩擦係数の低減効果を得られ難く、逆に12質量%を超えると、インクジェットインク受容層の透明性を損ねやすく、全光線透過率を90%以上とすることが困難になる。
【0054】
なお、二次粒子の体積平均粒子径が5〜20μmである合成非晶質シリカを用いる場合には、インクジェットインク受容層のJIS K 7105:1981における全光線透過率が90%を下回らないように微粒無機顔料との配合割合を調整する必要がある。即ち、該合成非晶質シリカとして二次粒子の体積平均粒子径が比較的大きいものを比較的多量に配合する場合には、インクジェットインク受容層の透明性が損なわれやすい傾向となるため、微粒無機顔料の配合割合を少なくし、インクジェットインク受容層の透明性を確保する必要がある。
【0055】
あくまで一例であるが具体例を挙げると、二次粒子の体積平均粒子径が20μmである合成非晶質シリカを、インクジェットインク受容層に占める割合として12質量%配合する場合には、インクジェットインク受容層に占める微粒無機顔料の配合割合を60質量%以下とすることが好ましい。
【0056】
また別の具体例としては、二次粒子の体積平均粒子径が12μmである合成非晶質シリカを、インクジェットインク受容層に占める割合として8質量%配合する場合には、インクジェットインク受容層に占める微粒無機顔料の配合割合を75質量%以下とすることが好ましい。
【0057】
このように微粒無機顔料の配合割合を調整することにより、二次粒子の体積平均粒子径が5〜20μmである合成非晶質シリカを用いた場合であっても、インクジェットインク受容層の透明性を保ち、JIS K 7105:1981における全光線透過率を90%以上とすることができる。
【0058】
本発明において、前記微粒無機顔料としては、合成非晶質シリカ、アルミナ、アルミナ水和物より選ばれる無機顔料を用いることが好ましい。これらはそれぞれ単独1種を用いてもよいが、2種以上を併用して用いることも可能である。微粒無機顔料としてこれらの無機顔料を用いることで、よりインク吸収性に優れたインクジェットインク受容層とすることができる。
【0059】
合成非晶質シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができ、また、湿式法シリカは、製造方法によって更に沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。本発明においては、いずれの合成非晶質シリカであっても微粒無機顔料として用いることができる。
【0060】
沈降法シリカは、ケイ酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させることで製造され、粒子成長したシリカ粒子を凝集・沈降させ、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕、分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカの具体例としては、例えば(株)トクヤマ製の「トクシール」、東ソー・シリカ(株)製の「ニップシール」などが市販されている。
【0061】
ゲル法シリカは、ケイ酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させることで製造される。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成するという特徴がある。ゲル法シリカの具体例としては、エボニックデグサジャパン(株)製の「カープレックス」、東ソー・シリカ(株)製の「ニップゲル」、グレースジャパン(株)製の「サイロイド」、「サイロジェット」などが市販されている。
【0062】
ゾル法シリカはコロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダなどの酸による複分解や、イオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものである。ゾル法シリカの具体例しては、例えば、日産化学工業(株)製の「スノーテックス」、日本化学工業(株)製の「シリカドール」等が市販されている。
【0063】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には、四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相方シリカの中から二次粒子の体積平均粒子径が500nm以下のものとして例を挙げれば、日本アエロジル(株)製の「アエロジル」、(株)トクヤマ製の「レオロシール」、Cabot Corporation製の「PG022」、等が市販されている。
【0064】
また、本発明においては、市販の各種シリカの中から二次粒子の体積平均粒子径が500nm以下のものを選択して用いる以外に、上掲した市販品をビーズミルやボールミル、衝突粉砕機(ウォータージェットミル)等の湿式粉砕機で粉砕することにより二次粒子の体積平均粒子径が500nm以下となるように調整して用いることも可能である。
【0065】
前記微粒無機顔料として配合可能なアルミナとしては、如何なる方法によって得られたものでも良いが、θ―アルミナ又は、γ−アルミナ等が酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましい。二次粒子の体積平均粒子径が500nm以下のアルミナとしては、例えば、Evonik Degussa製の「AEROXIDE Alu C」「W630」、Cabot Corporation製の「PG003」「PG008」、等が市販されている。
【0066】
前記微粒無機顔料として配合可能なアルミナ水和物は、Al
2O
3・nH
2O(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。このようなアルミナ水和物は、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られ、二次粒子の体積平均粒子径が500nm以下のものとしては、SASOL製「DISPERAL HP 14」等が挙げられる。
【0067】
なお、上記の気相法シリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物をインクジェットインク受容層に配合する場合には、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用することが好ましく、これらの分散液1種を用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0068】
本発明においては、インクジェットインク受容層に含有させるバインダとしては特に制限するものではなく、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適宜選択することが可能である。例えば、水溶性高分子樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体、澱粉、カチオン化澱粉、酸化澱粉、グラフト化澱粉などの澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースサルフェートなどのセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、無水マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、などから選ばれる1種又は2種以上を併用して用いることが可能である。
【0069】
本発明においては、これらの水溶性高分子樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、カルボキシルメチルセルロースの何れか1種又はこれら2種以上をバインダとして含有させることが好ましい。これらの水溶性高分子樹脂をバインダとして含有させると、インクジェット記録を行った際に膨潤してインクを吸収することから、更にインク吸収性の高いインクジェットインク受容層とすることができ、インクジェットプリンターでの画像品位を向上させることができる。
【0070】
また、本発明においては、バインダとして水溶性高分子樹脂とその他の樹脂とを併用することもできる。水溶性高分子樹脂と併用する樹脂は親水性樹脂であることが好ましく、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、スチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。
【0071】
本発明においては、インクジェットインクの定着性と発色性を向上させるため、インクジェットインク受容層に、更にカチオン性高分子を主成分とするインク定着剤を含有させてもよい。また、インクジェットインク受容層には本発明の目的とする効果を損なわない範囲で公知の添加剤を用いることが可能である。例えば、分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、増粘剤、架橋剤、防腐剤、柔軟剤、導電防止剤、帯電防止剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、酸化防止剤、香料、滑剤、ワックス、などの各種添加剤を用いることができる。
【0072】
また、基紙上にインクジェットインク受容層を設けるにあたっては、インクジェットインク受容層となる塗工液を基紙上に塗工することによって設けることができるが、塗工方法としては特に制限するものではなく、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、ダイコーターなどの一般的なコーターによる塗工方法を用いることができる。塗工後の乾燥方式としても特に制限するものではなく、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥など一般的な乾燥方法を用いることができる。
【0073】
本発明においては、インクジェットインク受容層を設けた模様紙の平滑性を制御する目的で、必要に応じてキャレンダー処理を行ってもよい。キャレンダー処理方法としては特に制限するものではなく、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダーなど一般的なキャレンダー処理を行うことができる。また、エンボス加工、穴あけ加工、裏面のタック加工など、各種の製品外観に応じた後加工処理を行ってもよい。
【0074】
また、インクジェットインク受容層の最表層をキャストコート法による光沢層としてもよい。キャストコート法は、ウェット法、凝固法、リウェット法などの公知の方法を選択できる。さらに、光沢層の表面に、キャレンダー処理を施してもよい。キャレンダー処理は、スーパーカレンダー、ラスタープレス、高温ソフトニップカレンダーなどの公知の工程によって加工することができる。
【0075】
インクジェットインク受容層の基紙への塗工量としては、特に制限するものではなく、インクジェットインク受容層の透明性(全光線透過率)とインク吸収性とを共に満足できるように適宜設定すればよい。
【0076】
前述したとおり、本発明のインクジェット記録用模様紙においては、インクジェットインク受容層中に微粒無機顔料をインクジェットインク受容層に占める割合として50〜80質量%含有させるが、微粒無機顔料の含有割合が多いほどインクジェットインク受容層の透明性は低くなり、インク吸収性は高くなる傾向にある。また同様に、インクジェットインク受容層は、その塗工量が多いほど透明性は低くなり、インク吸収性は高くなる傾向にある。従って、インクジェットインク受容層中の微粒無機顔料の含有割合が多い場合には、インク吸収性は満足させやすいがインクジェットインク受容層の透明性を損ないやすいので塗工量は比較的少なく設定することが好ましく、逆にインクジェットインク受容層中の微粒無機顔料の含有割合が少ない場合にはインクジェットインク受容層の透明性は確保しやすいがインク吸収性を損ないやすいので塗工量は比較的多く設定することが好ましい。
【0077】
具体的には、本発明においてインクジェットインク受容層の塗工量としては、3〜15g/m
2の範囲で設定することが好ましい。塗工量が3g/m
2に満たないとインクジェット記録適性を満足できない虞があり、15g/m
2を超えると、インクジェットインク受容層の透明性が低下しやすく、結果的に全光線透過率を90%以上とすることが困難となる虞がある。
【0078】
勿論、インクジェットインク受容層中の微粒無機顔料の含有割合が同じであっても、よりインク吸収性の向上に効果のある微粒無機顔料を用いることでインク吸収性を満足させつつ塗工量を少なくすることが可能であるし、微粒無機顔料としてより粒子径の細かなものを用いることでインクジェットインク受容層の透明性(全光線透過率)を満足させつつ塗工量を多くすることも可能である。
【0079】
また、本発明に係るインクジェット記録用模様紙の坪量については特に限定するものではなく、印刷を行うインクジェットプリンタに適用可能な範囲で適宜選択すればよいが、好ましくは50〜300g/m
2の範囲である。
【実施例1】
【0080】
以下に本発明に係るインクジェット記録用模様紙の実施例について具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。また、実施例中の部及び%は、断らない限り乾燥質量部及び質量%を示す。
【0081】
(模様形成体の作成)
ナトリウムカルボキシメチルセルロースとして0.30%濃度のナトリウムカルボキシメチルセルロース水溶液(セロゲン3H(平均分子量220,000):第一工業製薬社製)1200kg、光輝性物質として真珠光沢顔料(イリオジン305:メルク社製)3.2kg、セルロース繊維として粉体セルロース繊維(KCフロックW−50S:日本製紙ケミカル社製)3.0kgを、2000リットルタンクにて均一に撹拌し、混合液を得た。次いで、得られた混合液を撹拌しながら、金属塩として10%濃度硫酸バンド(テクノ北越社製)50kgを添加して模様形成体のスラリーを得た。
【0082】
(抄紙原料Aの調整)
カナダ標準ろ水度500mlCSFの1.2%濃度L−BKPのパルプスラリー100部(絶乾パルプ換算)と、カチオン澱粉(商品名ネオタック40T:日本NSC社製)1.0部と、タルク(商品名太平タルク:太平タルク社製)5.0部と、酸性ロジンサイズ剤(商品名AL1200:星光PMC社製)0.4部と、液体硫酸バンド(テクノ北越社製)1.0部とを添加して調製した紙料に、模様形成体のスラリーを4.0質量部添加し、抄紙原料Aを得た。
【0083】
(抄紙原料Bの調整)
抄紙原料Aの調製において、模様形成体を添加しなかったこと以外は抄紙原料Aの調整と同様にして抄紙原料Bを得た。
【0084】
(基紙Aの作成)
抄紙原料Aを用いて長網式抄紙機により坪量120g/m
2で抄紙し、単層の基紙Aを得た。得られた基紙Aは基紙の両面に表出した模様形成体が認められた。
【0085】
(基紙Bの作成)
バット式円網多層抄紙機を用いて、第1層を抄紙原料Aにて坪量15g/m
2、第2層を抄紙原料Bにて、坪量105g/m
2として、合計坪量120g/m
2の2層の基紙Bを得た。ここで、第1層の外側面を「表面」とし、第2層の外側面を「裏面」とする。以降、基紙Bを用いたいずれの実施例及び比較例についても同様とする。得られた基紙Bは、表面には表出した模様形成体が認められ、裏面には模様形成体が認められなかった。
【0086】
(実施例1)
微粒無機顔料として合成非晶質シリカ(FPS−101(メーカーカタログ粒子径1.6μm):エボニック・デグサ・ジャパン社製)を衝突粉砕機HJP−25005(スギノマシン製)で粉砕し、二次粒子の体積平均粒子径を500nmとした合成非晶質シリカを100質量部、インク定着剤としてカチオン性樹脂(ユニセンスCP−102:センカ社製)8質量部、バインダとしてポリビニルピロリドン(K−85W:日本触媒社製)50質量部、を水に添加して混合攪拌し、固形分濃度14%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。
【0087】
(実施例2)
微粒無機顔料として二次粒子の体積平均粒子径が150nmであるθ、γ、δ型複合アルミナ(PG003:Cabot Corporation社製)50質量部、同じく微粒無機顔料として二次粒子の体積平均粒子径が150nmである気相法シリカ(PG022A:Cabot Corporation社製)50質量部、インク定着剤としてカチオン性樹脂(ユニセンスCP−102:センカ社製)8質量部、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA124:クラレ社製)17.5質量部を水に添加して混合攪拌し、固形分濃度14%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。
【0088】
(実施例3)
実施例2において、バインダであるポリビニルアルコールの配合量を17.5質量部から92質量部へと変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0089】
(実施例4)
無機顔料として二次粒子の体積平均粒子径が150nmである気相法シリカ(PG022A:Cabot Corporation社製)を100質量部、インク定着剤としてカチオン樹脂(ユニセンスCP−102:センカ社製)を8質量部、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA124/クラレ社製)92質量部を水に添加して混合攪拌し、固形分濃度12.5%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。
【0090】
(実施例5)
実施例2において、バインダであるポリビニルアルコールの配合量を17.5質量部から45質量部へと変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0091】
(実施例6)
実施例4において、バインダであるポリビニルアルコールの配合量を92質量部から45質量部へと変更した以外は実施例4と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0092】
(実施例7)
実施例6において、微粒無機顔料である気相法シリカ100質量部を二次粒子の体積平均粒子径が150〜200nmであるパールネックレス状コロイダルシリカスラリー(PS−SO:日産化学社製)100質量部に変更した以外は実施例6と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0093】
(実施例8)
実施例2において、バインダであるポリビニルアルコールの配合量を17.5質量部から45質量部へと変更し、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から7g/m
2と変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0094】
(実施例9)
実施例4において、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から7g/m
2へと変更した以外は実施例4と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0095】
(実施例10)
実施例1において、バインダであるポリビニルピロリドンの配合量を50部から17.5部へと変更し、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分換算で4g/m
2から12g/m
2へと変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0096】
(実施例11)
実施例2において、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から3g/m
2へと変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0097】
(実施例12)
実施例2において、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から15g/m
2へと変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0098】
(実施例13)
実施例4において、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から3g/m
2へと変更した以外は実施例4と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0099】
(実施例14)
実施例4において、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から15g/m
2へと変更した以外は実施例4と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0100】
(実施例15)
実施例2において、基紙Aを基紙Bに変更し、基紙Bの表面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0101】
(実施例16)
実施例4において、用いる基紙を基紙Aから基紙Bに変更し、インクジェットインク受容層を基紙Bの表面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工した以外は実施例4と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0102】
(実施例17)
実施例1において微粒無機顔料である合成非晶質シリカ(FPS−101(メーカーカタログ粒子径1.6μm):エボニック・デグサ・ジャパン社製)を衝突粉砕機HJP−25005(スギノマシン製)で粉砕し、二次粒子の体積平均粒子径を300nmとして用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0103】
(実施例18)
実施例7においてバインダであるポリビニルアルコールをナトリウムカルボキシメチルセルロース(セロゲン7A:第一工業製薬社製)とした以外は実施例7と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0104】
(実施例19)
微粒無機顔料として二次粒子の体積平均粒子径が150nmであるθ、γ、δ型複合アルミナ(PG003:Cabot Corporation社製)100質量部、インク定着剤としてカチオン性樹脂(ユニセンスCP−102:センカ社製)8質量部、バインダとしてカゼイン(ALACID LACTIC CASEIN:Fonterra社製)を水に添加して混合攪拌し、固形分濃度14%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。
【0105】
(実施例20)
微粒無機顔料として二次粒子の体積平均粒子径が150nmであるθ、γ、δ型複合アルミナ(PG003:Cabot Corporation社製)90質量部、二次粒子の体積平均粒子径が15μmである合成非晶質シリカ(ニップジェルBY−001:東ソーシリカ社製)を10質量部、インク定着剤としてカチオン性樹脂(ユニセンスCP−102:センカ社製)8質量部、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA124:クラレ社製)20質量部を水に添加して混合攪拌し、固形分濃度14%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。
【0106】
(比較例1)
バインダとしてポリビニルピロリドン(K−85W:日本触媒社製)を水に添加して攪拌し、固形分濃度14%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。
【0107】
(比較例2)
実施例1において、微粒無機顔料である合成非晶質シリカ(ニップジェルAZ6A0(メーカーカタログ粒子径4μm):東ソーシリカ社製)を衝突粉砕機HJP−25005(スギノマシン製)で粉砕せず、そのまま使用した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0108】
(比較例3)
無機顔料として平均粒子径が3.3μmである炭酸カルシウム(白艶華PZ:白石工業社製)100質量部、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA124:クラレ社製)45質量部を水に添加して混合撹拌し、固形分濃度14%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。なお、平均粒子径はマイクロトラック7320−X100(HoneyWell社製)を用いたレーザー回折法にて測定を行った。
【0109】
(比較例4)
無機顔料として合成非晶質シリカ(ニップジェルAZ6A0(メーカーカタログ粒子径4μm):東ソーシリカ社製)50質量部、同じく無機顔料として合成非晶質シリカ(サイロイド74x5500(メーカーカタログ粒子径9μm):グレース社製)50質量部、インク定着剤としてカチオン樹脂(ユニセンスCP−102/センカ社製)8質量部、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA124/クラレ社製)45質量部を水に添加して混合撹拌し、固形分濃度14%のインクジェットインク受容層用塗工液を得た。得られたインクジェットインク受容層用塗工液を基紙Aの一方の面にコーティングロッドによって塗工量が固形分で4g/m
2となるように塗工し、目的とするインクジェット記録用模様紙を得た。
【0110】
(比較例5)
実施例1において、バインダであるポリビニルピロリドンの配合量を50質量部から7.5質量部へと変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0111】
(比較例6)
実施例2において、バインダであるポリビニルアルコールの配合量を17.5質量部から150質量部へと変更した以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0112】
(比較例7)
実施例1において、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から18g/m
2へと変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0113】
(比較例8)
実施例2において、インクジェットインク受容層の塗工量を固形分で4g/m
2から25g/m
2へと変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録用模様紙を得た。
【0114】
実施例1〜20、及び比較例1〜8で得られたインクジェット記録用模様紙の評価結果を
図1に示す。各評価方法及び評価基準は次のとおりである。
【0115】
「インクジェット記録適性」
市販のフルカラーインクジェットプリンター(EP−801A:セイコーエプソン社製)を用いて、各実施例及び比較例で得られたインクジェット記録用模様紙のインクジェットインク受容層を設けた面に写真画像を印刷し、インクジェット記録適性を評価した。インクジェット印字適性の評価は、写真画像の境界部の印字滲みと発色濃度とを目視にて確認し、次に示す要領によって総合的に判断した。
◎:非常に良好(実用レベル)
○:良好(実用レベル)
○△:可(実用下限レベル)
△:やや不良(実用不適)
×:不良(実用不適)
【0116】
「インクジェットインク受容層の全光線透過率測定」
JIS K7105:1981に準じ、色彩・濁度同時測定器(COH400:日本電色社製)を用いてインクジェットインク受容層の全光線透過率を以下の手順で測定を行った。ポリエチレンテレフタレートフィルム(クリスパーA4300:東洋紡績社製)の表面に各実施例及び比較例で用いたインクジェットインク受容層用塗工液を、各実施例及び比較例で基紙に塗工した塗工量と同量となるように塗布し、乾燥させて塗工層を形成して各実施例及び比較例に対応する評価用サンプルを得た。次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムのみの透過光量を色彩・濁度同時測定器を用いて測定し、同様にポリエチレンテレフタレートフィルムにインクジェットインク受容層を設けた前記評価用サンプルの透過光量を測定した。全光線透過率は以下に示す数1から算出を行った。
数1:Tt(%)=(T2/T1)×100
Tt:インクジェットインク受容層の全光線透過率(%)
T1:ポリエチンテレフタレートフィルムのみの透過光量
T2:ポリエチレンテレフタレートフィルム+インクジェットインク受容層の透過光量
【0117】
また、各実施例及び比較例で使用したインクジェットインク受容層に含有させる無機顔料の平均粒子径については、以下の方法で測定した値を用いた。
nmオーダーの場合:動的光散乱法
μmオーダーの場合:レーザー回折法
【0118】
図1に示された結果から明らかなように、実施例1〜20により得られたインクジェット記録用模様紙は、すべて実用レベルのインクジェット記録適性を有するものであった。加えて、何れのインクジェット記録用模様紙においてもインクジェットインク受容層の全光線透過率が90%以上であることから、模様形成体の視認性が良く、模様紙としての意匠性を満足するものであった。
【0119】
また、実施例20により得られたインクジェット記録用模様紙は、インクジェットインク受容層中に粒子径の比較的大きい合成非晶質シリカを含有させたことにより、インクジェットプリンタでの搬送性に優れるものであった。
【0120】
これに対して、比較例1により得られたインクジェット記録用模様紙は、インクジェットインク受容層に無機顔料を含まないことから、全光線透過率は高くなったが、インクジェット記録適性に劣り、実用に供し得ないものであった。
【0121】
また、比較例2〜4により得られたインクジェット記録用模様紙は、インクジェットインク受容層に比較的平均粒子径の大きい無機顔料を多く配合したことから全光線透過率が著しく劣り、模様形成体の視認性が悪く、模様紙としての意匠性を満足するものではなかった。
【0122】
また、比較例5により得られたインクジェット記録用模様紙は、インクジェットインク受容層に占める微粒無機顔料の割合が比較的多いため、全光線透過率が僅かではあるが90%を下回るものであった。このため本比較例により得られたインクジェット記録用模様紙は、模様形成体の視認性が悪く、模様紙としての意匠性を満足するものではなかった。
【0123】
また、比較例6により得られたインクジェット記録用模様紙は、インクジェットインク受容層に占める無機顔料の割合が比較的少ないためインクの吸収性に劣り、実用レベルのインクジェット記録適性が得られなかった。
【0124】
また、比較例7及び比較例8により得られたインクジェット記録用紙は、インクジェットインク受容層の塗工量を比較的多くしたため、全光線透過率が90%を下回って模様形成体の視認性が悪くなり、模様紙としての意匠性を満足するものではなかった。