特許第5883472号(P5883472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883472
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】自動車を動作させる装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
   F02D29/02 321B
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-102953(P2014-102953)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2014-228001(P2014-228001A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】10 2013 105 151.0
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】アントレアス ハインツェ
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−143765(JP,A)
【文献】 特開2009−133468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00−29/06
F02D 43/00−45/00
F02D 41/00−41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(10)を動作させる装置(12)であって、
調整可能な始動支援を利用可能にするために、前記自動車(10)を駆動するように設計された駆動ユニット(14)と、
ブレーキペダル(20)を用いて調整された、前記自動車(10)のブレーキ装置(22)のブレーキ圧力を検出するように設計された検出ユニット(24)と、
前記自動車(10)が静止した状態のときに検出された前記ブレーキ圧力が所定の閾値を超えた場合に、利用できる始動支援の程度を設定するように設計された制御ユニット(26)と、
を含み、
前記制御ユニット(26)は、前記自動車(10)が静止した状態で検出されたブレーキ圧力のブレーキ圧力低下勾配が、所定の勾配閾値以下である場合に、利用できる始動支援の程度を低くするように設計される装置。
【請求項2】
前記制御ユニット(26)は、前記駆動ユニット(14)の少なくとも1つの制御パラメータを変更することで、利用できる始動支援の程度を設定するように設計される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動ユニット(14)は、前記自動車(10)のアクセルペダル(18)が駆動された場合に、前記調整された始動支援の少なくとも一部を利用可能にするように設計される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(26)は、前記自動車(10)が静止した状態で検出された前記ブレーキ圧力が高くなった場合に、利用できる始動支援の程度を高くするように設計される、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニット(26)は、前記自動車(10)が静止した状態で検出されたブレーキ圧力の前記ブレーキ圧力低下勾配が、前記所定の勾配閾値よりも大きい場合に、利用できる始動支援の程度を所定の期間にわたって一定に保つように設計される、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置(12)が始動制御装置を有し、前記始動制御装置が作動していない状態で前記始動支援を提供することはできず、前記始動制御装置が作動している状態で、前記始動支援を提供することが可能になる、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記始動制御装置は、スイッチおよび/または前記自動車(10)のソフトウェアベースの車両制御ユニット(30)のメニュー入力部を有する、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置(12)が、利用できる始動支援の程度を音響的および/または視覚的に表すように設計された車両情報ユニット(32)をさらに有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を動作させる装置であって、自動車を駆動するために、調整可能な始動支援を利用可能にするように設計された駆動ユニットと、ブレーキペダルを用いて調整できる、自動車のブレーキ装置のブレーキ圧力を検出するように設計された検出ユニットとを有する装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、自動車を動作させる方法であって、自動車は、自動車を駆動するために、調整可能な走行支援を利用可能にするように設計された駆動ユニットを備えた装置を有し、方法は、ブレーキペダルを用いて調整された、自動車のブレーキ装置のブレーキ圧力を検出することを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オートマチックトランスミッション(例えば、コンバータトランスミッションまたはダブルクラッチトランスミッション)または自動化マニュアルトランスミッションを備えたスポーツ車、ならびに高出力のスポーティリムジン、クーペ、およびSUVは、レース用始動機能と呼ばれるものを有することが多い。このレース用始動機能は、もとはモータスポーツに由来し、始動支援を利用可能にして、その結果、始動しようとしている自動車が可能な限りの最大加速を達成できるようにする。
【0004】
ただし、公知のシステムでは、レース用始動機能の有効化後、達成可能な最大加速が常に利用される。始動支援の程度を現在の要求に合わせることはできない。始動システムは、計器で計測できない結果として、例えば、レース用始動の予備段階での駆動エンジンの高回転数化、遅延点火および/または噴射停止に結びつくので、レース用始動機能の作動は高い音量を伴う。これは、特に町の中心部で通行人を苛立たせることがある。さらに、公知のシステムでは、レース用始動機能を有効にするための複雑で不慣れな操作シーケンスを必要とすることが多い。例えば、これに関連して、自動車のブレーキは、左足で作動されなければならない。同時に、スロットルは、完全に右足で開かなければならない。この場合に、レース用始動は、左足を用いてブレーキを解放した結果として行われる。このことから、レース用始動時のシーケンスが、自動車を加速させる通常の操作シーケンスからかけ離れているのは明らかである。さらに、公知のシステムでは、レース用始動機能が有効になったときに、場合によっては存在する自動車の走行安定化プログラム(例えば、ESP(電子安定化プログラム)、DSC(動的安定化制御))が停止することが必要である。しかし、その結果、自動車の加速中に、特に、滑りやすい支持面で若干不安定な走行状態が起こり得る。
【0005】
そのようなシステムのこれらの上記態様は、レース用始動機能と呼ばれるものの顧客指向で日常的な通常の使用法と対立する。結果として、そのようなレース用始動機能の機能上の利益は、少数の冒険好きで、特に、経験豊富なドライバだけに限定される。
【0006】
(特許文献1)は、車両速度センサが、車両が停止したことを示し、ブレーキ圧力センサが、車両のブレーキペダルが解放されつつあることを示した場合に、始動の開始が決定される内燃機関を有する車両を開示している。車両の始動の開始に対応して、被制御ユニットは、比較的開いた位置の方向に内燃機関のスロットルバルブを開く。これに関連して、スロットルバルブの開く速度および開き量は、始動間隔に応じて設定され、始動間隔とは、ブレーキペダルの解放とアクセルペダルの押下との間の時間を特性化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2011 085 096A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした背景に対し、本発明の目的は、自動車を動作させるための、特に、上記の欠点がないようにしたレース用始動機能を利用可能にするための改良した装置および改良した方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、調整可能な始動支援を利用可能にするために、自動車を駆動するように設計された駆動ユニットと、ブレーキペダルを用いて調整された、自動車のブレーキ装置のブレーキ圧力を検出するように設計された検出ユニットと、自動車が静止した状態のときに検出されたブレーキ圧力が所定の閾値を超えた場合に、利用できる始動支援の程度を設定するように設計された制御ユニットとを含む、自動車を動作させる装置を用いて本発明により達成される。
【0010】
さらに、上記の目的は、自動車を動作させる方法を用いて本発明により達成され、自動車は、自動車を駆動するために、調整可能な走行支援を利用可能にするように設計された駆動ユニットを備えた装置を有し、その方法によれば、ブレーキペダルを用いて調整された、自動車のブレーキ装置のブレーキ圧力が検出され、自動車が静止状態のときに検出されたブレーキ圧力が所定の閾値を超えた場合に、利用できる駆動支援の程度が調整される。
【0011】
この場合に、走行支援とは、静止した状態から車両を加速する場合に使用できる潜在的な加速能力を利用可能にすることを意味すると解釈される。
【0012】
走行支援の程度は、本発明による装置および本発明による方法を使用して、要求に従って特定することができる。このために、車両が静止しているときに、ブレーキ圧力が検出され、一方、駆動ユニットは、アイドリングモードのままである。車両の運転者は、その後のブレーキの解放およびそれと同時のアクセルペダルの駆動中に、ブレーキペダルの駆動の強さによって走行支援の程度を特定することができる。言い換えると、走行支援の程度は、車両が静止した状態で検出されたブレーキ圧力に応じて調整される。走行支援の程度に対応する駆動ユニットの音量も運転者の要望に従って変えることができる。
【0013】
走行支援の、またはレース用始動機能の単純で人間工学的な操作性は、ブレーキペダルおよびアクセルペダルを用いた走行プロセスの慣れた操作制御シーケンスを通じて保証される。結果として、レース用始動機能の誤った操作を減少させることも、またはさらにはなくすこともできる。
【0014】
本発明による装置および本発明による方法はまた、車両を静止した状態に保つのに必要な通常のブレーキ圧力が、走行支援の調整を引き起こさないことを保証する。これは、ブレーキ圧力に対する閾値を設定することで達成される。したがって、走行支援は、自動車が静止した状態で検出されたブレーキ圧力が、所定の閾値を超えるまで調整されない。これは、レース用始動機能の単純で直感的な操作性を可能にする。したがって、そのような駆動システムの適合性が高まる。
【0015】
したがって、本発明の目的が完全に達成される。
【0016】
好ましい一実施形態によれば、制御ユニットは、駆動ユニットの少なくとも1つの制御パラメータを変更することで、利用できる走行システムの程度を調整するように設計される。
【0017】
自動車の始動特性の加速能力は、1つまたは複数の制御パラメータを変更することできわめて容易に影響を受け得る。これに関連して、制御パラメータは、検出されたブレーキ圧力に応じて、様々な量に変更することができる。さらに、始動支援の程度に応じて、様々な制御パラメータを選択することができ、その場合に、制御パラメータの値は、調整された走行支援に従って変更される。
【0018】
さらに好ましい実施形態では、駆動ユニットは内燃機関を有し、制御パラメータは、アイドリング回転数、点火角、内燃機関の燃料噴射の停止パターン、および/または内燃機関のターボ過給機の給気圧力によって形成される。
【0019】
例えば、内燃機関のトルク予備量は、点火角を遅らせるように設定することで増やすことができる。さらに、アイドリング回転数を上げることで走行支援を強化することができる。さらに、シリンダの遮断または噴射の停止により、さらなるトルク予備量を利用することが可能である。加えて、自動車の加速能力は、例えば、場合によっては存在するターボ過給機の給気圧力を高めることで改善することができる。
【0020】
さらなる実施形態では、駆動ユニットは、自動車のアクセルペダルが駆動された場合に、調整された走行支援の少なくとも一部分を利用可能にするように設計される。
【0021】
この実施形態では、調整された走行支援は、ブレーキが解放され、自動車のアクセルペダルが駆動されるとすぐに呼び出される。したがって、レース用始動機能のオペレータによる制御は、従来の静止状態からの車両の加速時の操作シーケンスに相当する。その結果、始動支援の使用の簡便さが大幅に高まる。不慣れで余分なシーケンスをなくすことで顧客の支持が高まる。
【0022】
さらなる実施形態によれば、駆動ユニットは、アクセルペダルのペダルの移動に応じて、設定された走行支援の部分を特定するように設計される。
【0023】
運転者がブレーキを解放し、その後、アクセルペダルを駆動すると、車両は始動支援を使用して加速される。アクセルペダルが、止まるところまで(スロットル開放/キックダウン)駆動された場合、設定された走行支援全体が呼び出され、したがって、車両は最大に加速される。他方で、アクセルペダルが、最大限のペダル移動の一部分にわたってのみ駆動された場合(部分加速)、設定された始動支援の一部のみが実際に利用可能になり、したがって、車両は、相応した制限を受けて加速される。始動プロセス中に、運転者はまた、実際に利用できる走行性能についての全決定権限も有する。したがって、車両の加速は、周囲の状態(例えば、通行人が不意に道路を横断する)に合わせて常に変わるようにすることができる。これは、利用できるレース用始動機能の安全性を高める。
【0024】
さらなる実施形態によれば、制御ユニットは、自動車が静止した状態のときに検出されたブレーキ圧力が高くなった場合に、利用できる始動支援の程度を高くするように設計される。
【0025】
この実施形態では、利用できる始動支援の程度は、ブレーキ圧力が所定の閾値を超える範囲に上昇した場合に高くなる。この措置は、始動支援の程度が、要求に対応する形で設定されるのを可能にし、ひいては、レース用始動機能の容易な拡張を可能にする。これに関連して、始動支援の程度は、カタパルトのような加速プロセスの間、穏やかな始動から最大実行までの増強範囲にわたって、自動車が静止した状態で検出されたブレーキ圧力に応じて調整することができる。さらに、選択された始動支援は、自動車が静止した状態で、ブレーキペダルを用いてブレーキ圧力をさらに上げることで、いつでも増強することができる。これは、利用できるレース用始動機能の融通性を高める。したがって、さらに、運転者は、設定された駆動システムの完全な制御を常に提供される。
【0026】
さらに、この実施形態の走行支援は、ブレーキ圧力が上昇した場合に、連続的に、または所定の増分で増強することができる。
【0027】
さらなる実施形態によれば、制御ユニットは、自動車が静止した状態で検出されたブレーキ圧力のブレーキ圧力低下勾配が、所定の勾配閾値以下である場合に、利用できる始動支援の程度を低くするように設計される。
【0028】
車両が静止した状態で、運転者がブレーキ圧力を相対的に低いブレーキ圧力値の方向にゆっくりと下げた場合、前に設定した始動支援の実施が、新たな、下がったブレーキ圧力に従って再度抑制される。これに関連して、対応するブレーキ圧力勾配にわたって低減される速度が見積もられる。また、ブレーキ圧力が、ブレーキ圧力の所定の閾値未満に下がった場合に、始動支援は停止される。したがって、選択される始動支援の程度は、変化した周囲の状態に常に合わせることができる。これは、本発明による装置の高いレベルの安全性を保証する。
【0029】
さらなる実施形態では、制御ユニットは、自動車が静止した状態で検出されたブレーキ圧力のブレーキ圧力低下勾配が、所定の勾配閾値よりも大きい場合に、利用できる始動支援の程度を所定の期間にわたって一定に保つように設計される。
【0030】
この措置は、ブレーキの迅速な解放の後、所定の期間にわたって、設定された始動支援が、(ブレーキが解放される前の)運転者の要望通りの実施に維持されるのを保証する。これは、アクセルペダルの駆動が遅れた場合でさえ、全走行支援が次の加速プロセスの間利用可能であることを保証する。次に、ブレーキペダルの駆動速度が、対応するブレーキ圧力勾配を用いて検出される。さらに、所定の期間は、車両の運転者が前もって定めた設定可能な時間間隔とすることができる。
【0031】
さらなる実施形態によれば、装置は始動制御装置を有し、始動制御装置が作動していない状態で走行支援を利用することはできず、始動制御装置が作動している状態で、始動支援を利用することが可能になる。
【0032】
始動制御装置を使用することで、運転者は、原則的に始動支援機能を使用したいかどうかを選択することができる。無効化された状態では、始動支援は、かけられたブレーキ圧力とは無関係に停止される。走行支援は、レース用始動機能が、始動制御装置を用いて有効にされた場合にのみ、(車両が静止した状態で)検出されたブレーキ圧力に応じて設定することができる。始動制御装置が作動した場合、始動制御装置は、レース用始動機能が運転者によって再度無効にされるまで、有効化した状態を維持する。さらに、始動制御装置の作動を現在の走行サイクルにのみ適用する可能性がある。そのような実施形態では、始動制御装置は、自動車が再始動するときに(すなわち、新たな走行サイクルが始まるときに)標準設定として作動される。
【0033】
さらなる実施形態によれば、始動制御装置は、スイッチおよび/または自動車のソフトウェアベースの車両制御ユニットの手動入力部を有する。
【0034】
スイッチを用いて、レース用始動機能への直接かつ迅速なアクセスを利用できる。車両制御ユニットは、例えば、走行情報システムの一部を形成することができる。レース用始動機能は、運転者情報システムのさらなるメニュー入力を用いて、高いコスト効率で実行することができる。さらに、車両コンソールの領域への余分なスイッチの配置を不要にすることが可能であるので、その結果、オペレータ制御の明瞭性を高めることができる。
【0035】
さらなる実施形態によれば、装置はまた、利用できる始動支援の程度を音響的および/または視覚的に表すように設計された車両情報ユニットを有する。
【0036】
運転者情報ユニットは、例えば、運転者情報システムの一部を形成することができる。代替として、またはそれに加えて、独立した表示ユニットを用いておよび/またはラウドスピーカを用いて車両情報ユニットを構築することもできる。運転者は、始動支援の状態または程度についての情報をいつでも与えられる。
【0037】
本発明による装置、または本発明による方法では、有利には、車両に存在する安定化システム(例えば、ESP、DSTなど)の全機能を使用することができる。結果として、そのようなレース用始動機能を利用した場合に安全性を高めることができる。安定化システムが作動することにより、レース用始動機能を経験量が標準的な運転者に容易にかつ安全にあてがうことができる。さらに、これは、高い顧客の利益と高いレベルの支持とをもたらす。
【0038】
さらなる実施形態では、自動車の安定化システムは、所定の程度の始動支援から始めて作動することができる。これは、特に、始動支援の程度が高い場合に、車両のさらに迅速な加速を可能にする。
【0039】
運転者情報システムを使用することで、運転者は、安定化システムの停止についての情報を知ることができる。
【0040】
さらなる実施形態によれば、制御ユニットは、走行安定化システムの制御装置に接続される。
【0041】
自動車がコンバータトランスミッションを有する場合、制御ユニットは、始動支援の程度に応じて、走行安定化システムの制動干渉を開始して、(前記始動支援の程度とは無関係に)一定のクリーピングトルクを利用可能にする。この措置により、利用の快適性が大幅に増す。
【0042】
当然ながら、本発明による装置の特徴、特性、および利点は、本発明による方法にも当てはまる、すなわち、その方法に適用することができる。
【0043】
本発明の例示的な実施形態が図で示され、以下の説明でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明による装置を備えた自動車の概略図を示す。
図2】予備段階中の本発明による方法を説明する図を示す。
図3】始動段階中の本発明による方法を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、調整可能な始動支援、またはレース用始動機能と呼ばれるものを利用可能にするように設計された、本発明による装置12を備えた自動車10を示している。このために、装置12は、内燃機関16およびダブルクラッチトランスミッション(図1では詳細に示していない)を備えた駆動ユニット14を有する。当然ながら、駆動ユニット14は、例えば、コンバータトランスミッション、または自動化マニュアルトランスミッションなどの他の任意のオートマチックトランスミッションを有することもできる。
【0046】
自動車10は、車室にアクセルペダル18およびブレーキペダル20を有する。ブレーキペダル20は、ブレーキ装置22に接続され、ブレーキ装置22は、例えば、ディスクブレーキ22a〜22bを有する。さらに、ブレーキ装置22は油圧管および油圧アクチュエータ(図1には示していない)を有することができる。流体は、ブレーキペダル20が駆動された場合に、油圧アクチュエータを用いてディスクブレーキ22a〜22bを駆動するために油圧管に案内される。
【0047】
装置12は、ブレーキペダル20を用いて設定された、ブレーキ装置22のブレーキ圧力を検出するように設計された検出ユニット24を有する。
【0048】
さらに、装置12は、検出ユニット24および内燃機関16に接続された制御ユニット26を有する。代替の実施形態では、制御ユニット26は、独立したエンジン制御装置を介して内燃機関16に接続することもできる。
【0049】
さらに、装置12は、車室に配置され、車両制御ユニット30および車両情報ユニット32を有する運転者情報システム28を有する。例えば、制御ユニット26の設定は、車両制御ユニット30を用いて行うことができる。車両情報ユニット32は、制御ユニット26の関連データを表示する働きをする。
【0050】
自動車10の運転者が、現在の走行サイクル中にレース用始動機能または始動支援を使用したい場合、この機能は、車両制御ユニット30のソフトウェアメニューを使用して有効にすることができる。あるいは、始動支援を有効にすることができるスイッチを車室に配置することもできる。
【0051】
レース用始動機能が有効になり、自動車10が静止した状態にある場合、制御ユニット26は、検出ユニット24で検出されたブレーキ圧力を評価し、このブレーキ圧力に応じて、始動支援の程度を内燃機関16に設定する。このため、制御ユニット26は、内燃機関16の少なくとも1つの制御パラメータを変更する。例えば、制御ユニット26は、内燃機関16のアイドリング回転数を上げ、かつ/または内燃機関16の点火角を遅らせることができる。現在設定されている始動支援の程度はまた、制御ユニット26によって車両情報ユニット32に送られる。設定した始動支援は、車両情報ユニット32を使用して、運転者に向けて表示される。
【0052】
運転者がブレーキペダル20を解放し、続いて、アクセルペダル18を駆動すると、設定した始動支援は、内燃機関16によって利用可能になる。結果として、自動車10は、運転者によって選択され、ブレーキ圧力を用いて設定された始動システムにより加速される。したがって、装置12は、操作が容易で、運転者が調整できるレース用始動機能を利用可能にする。
【0053】
図2および図3は、自動車10を動作させる働きをし、レース用始動機能/始動支援を利用可能にする、本発明による方法40を説明する図を示している。これに関して、図2は、予備/待機段階時の方法40を示し、図3は、始動段階と呼ばれる段階時の方法40を示している。この場合に、予備/待機段階とは、自動車10が静止した状態にあり、自動車10の目前に迫った始動プロセスのための予備的措置を行うことができる期間であると理解されたい。対照的に、被動段階は、設定した始動支援が呼び出される、すなわち、自動車10が静止した状態から加速される期間を表す。
【0054】
ステップ42で、レース用始動機能/始動支援が、例えば、走行が始まるときに有効にされる。これは、この例示的な実施形態では、運転者が車両制御ユニット30の対応するソフトウェアメニューを選択し、レース用始動機能を有効にすることで実行される。この場合に、この走行サイクル用の始動支援機能は、車両制御ユニット30を用いて再度無効にされるまで利用可能である。自動車10が再始動すると、レース用始動機能は、標準設定として無効にされる。代替の実施形態では、自動車10のその後の再始動のために、レース用始動機能の有効化を保存することもできる。
【0055】
ステップ44で、自動車10が静止した状態で、検出ユニット24を用いてブレーキ圧力を検出する。
【0056】
続いて、ステップ46で、検出したブレーキ圧力が所定の閾値を超えているかどうかをチェックする。閾値を用いて、自動車10を静止した状態に保つのに十分であり、通常は運転者によって加えられる通常のブレーキ圧力が、始動支援の調整を誘発するのを防止することが可能である。始動支援の特定の程度は、所定の閾値を超えたブレーキ圧力においてのみ設定される。
【0057】
検出したブレーキ圧力が閾値を超えている場合、ステップ48で、ブレーキ圧力が、前に検出したブレーキ圧力値と比べて高くなったかどうかをチェックする。
【0058】
ブレーキ圧力が高くなった場合、ステップ50で、ブレーキ圧力に応じて、対応する始動支援を設定する。例えば、点火角を遅らせて、内燃機関16のトルク予備量を増やすことで、始動支援の弱めの実施を設定することができる。これは、内燃機関16の走行騒音をわずかしか変化させず、その結果、周辺にいる人たちのいらだちを防止する。
【0059】
続いて、方法40は再度ステップ44に戻り、検出ユニット24を用いてその瞬間のブレーキ圧力を検出する。
【0060】
ブレーキ圧力が運転者によってさらに上げられた場合、これにより、始動支援の程度が連続的かつ無段階に高められる。これに伴い、自動車10の加速能力が連続的に高まる。走行支援の程度を調整するために、制御ユニット26は、内燃機関16の制御パラメータを変更する。したがって、点火角を遅らせるように調整するだけでなく、内燃機関16のアイドリング回転数を上げることも可能である。しかし、アイドリング回転数を上げることで、周辺にいる人たちは始動支援を明瞭に知覚できるようになる。
【0061】
ブレーキ圧力がさらに上がると、始動支援は、シリンダを遮断して、かつ/または頻繁に噴射を止めてアイドリング回転数をさらに上げることで増強される。したがって、始動支援の程度を高めることは、音響的にきわめて顕著な内部的および外部的影響を伴う。始動支援の程度の設定が高くなるほど、次の始動段階で自動車10を迅速に加速することができる。
【0062】
待機/予備段階では、運転者は、ブレーキ圧力を上げることで、要求および状況に対応した形で始動支援の程度をいつでも再調整することができる。例えば、始動支援は、車両の進路と交差している幹線道路交通に、目で見て比較的大きな途切れがなく、その結果として、非常に正確で、かつきわめて俊敏な割り込み操作が必要な場合に、相応して始動支援を増強することができる。
【0063】
同様に、自動車10の運転者は、待機/予備段階中に、ブレーキペダル20を用いてブレーキ圧力をゆっくりと下げることで、要求および状況に対応した形で、利用できる始動支援の程度をいつでも低くすることができる。これに関連して、ブレーキ圧力の低下はステップ48でも検出される。
【0064】
ブレーキ圧力が下がった場合、ステップ52でブレーキ圧力のブレーキ圧力低下勾配を求める。特定のブレーキ圧力勾配が所定の勾配閾値以下の場合、ステップ50で、利用できる始動支援の程度を低める。(例えば、通行人が歩道に不意に現れるなど、周辺の状態が変わった場合に)前に設定した始動支援を再度弱める可能性がある。したがって、待機/予備段階では、運転者は、設定した始動支援の程度を常に完全に制御している。
【0065】
ステップ52で、ブレーキ圧力のブレーキ圧力低下勾配が所定の勾配閾値よりも大きいことが認められた場合、運転者が即座にブレーキ20を解放して、続いてアクセルペダル18を用いて自動車10の加速プロセスを開始したと想定される。したがって、利用できる始動支援の程度は、(ブレーキペダル20を解放した時点から始まる)所定の期間にわたって一定に維持される。言い換えると、運転者が所望する始動支援の調整は、所定の期間にわたって保存される。その結果、アクセルペダル18を遅れて駆動した場合でさえ、完全な始動支援を利用できることが保証される。ステップ54で、所定の期間がすでに過ぎたかどうかをチェックする。
【0066】
所定の期間が過ぎた後、ステップ44〜52に従って始動支援を調整する。
【0067】
図3は、始動段階時の方法40を示す図を示している。始動支援を利用可能にする基本的な前提条件は、次に、ステップ42でレース用始動機能を有効にすることである。
【0068】
ステップ56で、ブレーキペダル20が解放され、スロットルペダル18が駆動されたかどうかをチェックする。
【0069】
これらの条件が満たされた場合、自動車10を加速することができると考えられる。このために、ステップ58で、アクセルペダル18の偏位を検出する。
【0070】
ステップ60で、アクセルペダルの検出した偏位に応じて、前に設定した始動支援の少なくとも一部分を利用可能にする。アクセルペダルの偏位が大きいほど、前に設定した始動支援の実際に利用できる部分が多くなる。したがって、スロットが全開にされた(キックダウン)場合に、予備段階で設定された始動支援全体を利用する。他方で、運転者がアクセルペダル18を一部だけ駆動した(スロットルを部分的に開いた)場合、予備段階で設定された始動支援の、対応するより小さい部分が同様に利用可能になる。これにより、自動車10は、それに応じて、より抑制した形で始動加速される。したがって、運転者は、始動段階においてでさえも、同様に所望の始動性能を完全に制御する。
【0071】
本発明による装置12および本発明による方法40は、有利には、比較的小容量のターボエンジンでも使用することができ、その理由は、比較的小容量のターボエンジンには、支援措置なしに始動するという点で弱点があるからである。これは、駆動ユニット14のターボ過給機が所望の回転数に設定されるまでの遅延によって引き起こされる。本発明による装置12が使用される場合、制御ユニット26は、検出ユニット24によって検出されたブレーキ圧力に応じて、ターボ過給機の回転数または給気圧力を上げることができる。これは、次の加速プロセス時に加速能力を高め、内燃機関16の自発的応答挙動をもたらす。
【0072】
したがって、日常の交通状況においてでさえ、そのようなレース用始動機能による顧客の利益が大きくなる。さらに、標準レベルの経験をもつ運転者でさえ、簡単な操作によって、始動支援の利点を利用できるようになる。
【符号の説明】
【0073】
10 自動車
12 装置
14 駆動ユニット
16 内燃機関
18 アクセルペダル
20 ブレーキペダル
22 ブレーキ装置
22a〜22d ディスクブレーキ
24 検出ユニット
26 制御ユニット
28 運転者情報システム
30 車両制御ユニット
32 車両情報ユニット
図1
図2
図3