特許第5883485号(P5883485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883485
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】電解銅箔
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20160301BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   C25D1/04 311
   C25D1/00 311
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-173655(P2014-173655)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-183294(P2015-183294A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2014年8月28日
(31)【優先権主張番号】103110616
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】周瑞昌
(72)【発明者】
【氏名】鄭桂森
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼耀生
(72)【発明者】
【氏名】羅喜興
(72)【発明者】
【氏名】劉岳旻
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−174146(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/002996(WO,A1)
【文献】 特開平07−268678(JP,A)
【文献】 特開2012−169597(JP,A)
【文献】 特開2006−052441(JP,A)
【文献】 国際公開第1997/043466(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/101984(WO,A1)
【文献】 特開2012−022939(JP,A)
【文献】 特開2012−038700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00 − 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解銅箔であって、前記電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面、及び(311)面の組織係数の合計を基準として、前記電解銅箔の(200)面の組織係数が50〜80%を占めており、
前記電解銅箔は、一方の面が光沢面であり、他方の面が十点平均粗さが2μmよりも低い粗面であることを特徴とする電解銅箔。
【請求項2】
前記電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面、及び(311)面の組織係数の合計を基準として、前記電解銅箔の(200)面の組織係数が62〜76%を占める、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項3】
前記(111)面の組織係数に対する(200)面の組織係数の比の値が3〜7の範囲にある、請求項1または2に記載の電解銅箔。
【請求項4】
前記(111)面の組織係数に対する(200)面の組織係数の比の値が3.88〜6.76である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解銅箔。
【請求項5】
表面積1平方メートル当たりにおける、サイズが5〜100μmである銅粒子の数量が5個以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解銅箔。
【請求項6】
30〜40kgf/mm2の引張強度を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解銅箔。
【請求項7】
厚さが1μm以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電解銅箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔に関し、より詳しくは、プリント回路板及び充放電電池に好適に使用される電解銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路板(Printed Circuit Board。以下、PCBという)は、様々な電子製品の基幹部品であり、電子部品を搭載して回路に接続することで、安定した作業環境を提供することができ、その応用範囲は民生、産業または国防まで多岐にわたる。また、PCBの製造は材料、電気、機械、化学、光学などの工業技術の集約であることから、PCBが経済発展において極めて重要であることは言うまでもない。
【0003】
しかし、PCBの製造工程には基板に銅箔を接着した上で配線パターンを作製する工程があるが、銅箔の表面には往々にして銅粒子が形成されるため、従来では、線幅/ピッチが比較的大きくなる。しかし、電子製品がより小型化・軽量化に向けて発展するに伴い、線幅/ピッチに対する要求はますます厳しくなり、すでに2mil/2mil(50μm/50μm)、ひいては1mil/1mil(25μm/25μm)にまで狭くなっているため、小さい銅粒子であってもPCB基板を短絡させる恐れがある。従って、銅箔表面の銅粒子数を低減しなければならない。
【0004】
また、現代社会におけるリチウムイオン二次電池への需要もますます増加している。リチウムイオン二次電池は、良好な充放電特性を有することを必要とするのみならず、安全性及び電池寿命も考慮しなければならない。従って、リチウムイオン二次電池の製造工程においてはより慎重さ及び精密さが求められる。
【0005】
リチウムイオン二次電池は、正極板、セパレータ膜及び負極板を一体に巻きつけ、容器に入れ、電解液を注入して、密封することにより構成される。そのうち、負極板は、銅箔からなる負極集電体と、その表面に塗布された炭素材などを材料とする負極活物質で構成される。しかし、銅箔表面の銅粒子が多すぎると、負極活物質の塗布にバラツキが生じ、さらには、炭素材などの材料を塗工する際のダイヘッドの隙間に銅粒子が滞留し、塗工した際に銅箔が断裂し、歩留まり率を悪化させる。これらは、現在解決が求められている課題である。
【0006】
銅箔は圧延銅箔及び電解銅箔に分けられる。また、電解銅箔は、硫酸及び硫酸銅からなる水溶液を電解液とし、イリジウム元素または他の酸化物で被覆されたチタン板を陽極(寸法安定性陽極、dimensionally stable anode、DSA)とし、チタン製ロールを陰極ドラム(Drum)とし、両極の間に直流電流を通電することで、電解液中の銅イオンをチタン製ロールに電解析出させ、次に、析出した電解銅をチタン製ロールの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより、製造することができる。その際、電解銅箔のチタン製ロール表面に接する面を「光沢面(S面)」と称し、その反対面を「粗面(M面)」と称する。通常、電解銅箔のS面の粗さはチタン製ロールの表面の粗さによるため、S面の粗さは相対的に一定である。一方、M面の粗さは硫酸銅電解液の条件を調整することにより制御することができる。
【0007】
従来の電解銅箔は、硫酸銅電解液に低分子量ゲル(例えばゼラチン)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、HEC)またはポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)などの有機添加剤を加え、結晶微細化の効果を有する3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(sodium 3−mercaptopropane Sulphonate、MPS)、ビス−(3−ナトリウムスルホプロピルジスルフィド)(bis−(3−soldiumsulfopropyl disulfide、SPS)などの硫黄含有化合物を添加することにより、電解銅箔の結晶相を変更させていた。
【0008】
銅粒子を減少させる方法は、一般的にはめっきする時の電流密度を低減し、めっきする時の先端放電効果を抑える方法が利用されているが、電流密度の低減に伴い歩留まり率も低下してしまう。また、電解液の循環量を増加させることで、電解液に含まれる添加剤の活性炭への吸着がより完全になるが、一方で生産によるエネルギー消費も増加してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、優れた生産効率を維持しつつ、銅箔表面の銅粒子の形成が低減された電解銅箔の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の欠点に鑑み、本発明は、電解銅箔であって、当該電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面、及び(311)面の組織係数の合計を基準として、電解銅箔の(200)面の組織係数が50〜80%を占める電解銅箔を提供する。
【0011】
一つの実施態様において、当該電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面、及び(311)面の組織係数の合計を基準として、当該電解銅箔の(200)面の組織係数は62〜76%を占める。
【0012】
一つの具体的な実施態様において、当該電解銅箔の(111)面の組織係数に対する(200)面の組織係数の比の値は3〜7の範囲にある。
【0013】
一つの具体的な実施態様において、当該電解銅箔の(111)面の組織係数に対する(200)面の組織係数の比の値は3.88〜6.76である。
【0014】
一つの実施態様において、前記電解銅箔は30〜40kgf/mm2の引張強度を有する。
【0015】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔は一方の面にS面を他方の面にM面を有し、且つ当該S面及びM面の粗さは2μmよりも低い。
【0016】
一つの実施形態において、前記電解銅箔の厚さは1μm以上であり、また、当該電解銅箔の表面積1平方メートル当たりにおける、サイズが5〜100μmである銅粒子の数量は5個以下である。
【0017】
一つの態様において、本発明に係る電解銅箔は、表面積1平方メートル当たりにおける、サイズが5〜100μmである銅粒子の数量は5個以下であり、且つ当該電解銅箔の(111)面の組織係数に対する(200)面の組織係数の比の値は3〜7の範囲にある。
【0018】
当該実施態様において、当該電解銅箔の(111)面の組織係数に対する(200)面の組織係数の比の値は3.88〜6.76である。
【0019】
一つの実施態様において、前記電解銅箔は30〜40kgf/mm2の引張強度を有する。
【0020】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔は一方の面にS面を他方の面にM面を有し、且つ当該S面及びM面の粗さが2μmよりも低い。
【0021】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔の厚さは1μm以上である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電解銅箔は、従来の電解銅箔に比べて、全く異なる結晶構造を有するため、銅箔表面における銅粒子の形成が効果的に低減され、且つ、本発明によれば、引張強度、伸長率に優れ、当該S面及びM面の粗さが2μmよりも低い電解銅箔を得ることができる。このため、本発明に係る電解銅箔は、PCB及びリチウムイオン二次電池に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電解銅箔の表面に自然生成された銅粒子付き電解銅箔を400倍に拡大した光学顕微鏡の断面図を示す。
図2】電解銅箔の表面に自然生成された銅粒子を2000倍に拡大した電子顕微鏡の拡大図を示す。
図3】実施例6の電解銅箔をX線粉末回折分析で測定した時の結晶構造図を示す。
図4】比較例2の電解銅箔をX線粉末回折分析で測定した時の結晶構造図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、特定の実施例により、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本明細書に開示された内容によって本発明の他の利点や効果を理解することができる。
【0025】
電解銅箔は、PCB及びリチウムイオン二次電池領域に広く応用できる。一般的に、リチウムイオン二次電池の電気容量を向上させるための方法として、銅箔の厚さを低減することが挙げられ、キャリア箔を利用し、銅箔の厚さを約3μm、ひいては1μmまで薄くすることができる。一方、現在の高容量リチウムイオン電池によく使用される銅箔の厚さは8μm及び6μmであり、フレキシブルPCBでは、より高い配線密度に対応し、線幅及びピッチを縮減するためにも、厚さが薄い銅箔を使用しなければならない。厚さ12μmの銅箔は現在のフレキシブル基板によく使用される規格である。説明の便宜上、本発明は厚さ6〜12μmの電解銅箔を代表的実施例として本発明の利点及び効果を説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限られない。
【0026】
本発明は電解銅箔の表面に形成される銅粒子の数を低減することを課題とする。その銅粒子は、電解銅箔の製造工程において銅箔のM面に形成される。図1に示すように、電解銅箔の表面に自然生成された銅粒子は、銅箔の表面から自然生成された凸物であり、外来不純物が堆積したものではない。一般的には、前記銅粒子のサイズは5〜100μmであり、サイズが5μm未満であるものは粗さの範囲と見なされる。また、図2に示す走査式電子顕微鏡の2000倍拡大図では、この銅粒子のサイズは約40μmであり、外観はほぼ先端が鈍化した円錐形である。当業者であれば、電解銅箔の表面に自然生成された銅粒子を肉眼で観察することができる。また、本発明の実施例に係る電解銅箔の表面から自然生成された銅粒子は、従来の電解銅箔のものに比べて、その銅粒子数が大幅に低減されていた。
【0027】
本発明に係る電解銅箔の製造は、硫酸と硫酸銅とからなる水溶液を電解液とし、チタン製ロールを陰極ドラム(Drum)とし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより、行うことができる。本発明において、電解銅箔の陰極ドラム表面に接する面を「光沢面(S面)」と称し、その反対面を「粗面(M面)」と称する。
【0028】
従来では通常、硫酸銅電解液に、低分子量ゲル(例えば、ゼラチン)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、HEC)またはポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)などの有機添加剤や、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(sodium 3−mercaptopropane Sulphonate、MPS)、ビス−(3−ナトリウムスルホプロピルジスルフィド)(bis−(3−soldiumsulfopropyl disulfide、SPS)などの硫黄含有化合物、及び塩素イオンなどのキレート剤を添加する。しかしながら、本願の発明者は、硫酸銅電解液に、濃度が0.1〜2.5ppmの間でチオ尿素を添加することにより、思いがけない結果を得ることを発見した。
【0029】
一つの具体的な実施態様において、当該硫酸銅電解液にゼラチン、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS)、塩素イオン及び0.1〜2.5ppmのチオ尿素を添加すると、得られる電解銅箔の表面に自然生成される銅粒子数は大幅に低減される。
【0030】
その際、当該電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の組織係数の総和を基準として、当該電解銅箔の(200)面の組織係数が50%、55%以上、57%以上、ひいては80%まで占める。好ましくは、得られた電解銅箔は、当該電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面の組織係数の総和を基準として、当該電解銅箔の(200)面の組織係数が62〜76%を占め、且つ優れた引張強度、伸長率を有し、当該S面及びM面の粗さが2μmよりも低い。
【実施例】
【0031】
[実施例1] 本発明の電解銅箔の製造
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO4・5H2O)と110g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、さらに、硫酸銅電解液1リットル当たり、5.5mgの低分子量ゲル(DV;Nippi社)、3mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS;HOPAX社)及び25mgの塩酸(RCI LABSCAN LIMITED)を添加し、0.1mgのチオ尿素(PANREAC QUIMICA SAU)を添加した。
【0032】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み8μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm2である。本発明の電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率及び銅粒子数を測定し、実施例1にて製造された電解銅箔の結晶構造を粉末X線回折法によって測定し、その組織係数を計算して、結果を表2に記録した。
【0033】
[実施例2〜10] 本発明の電解銅箔の製造
実施例1の製造プロセスを繰り返すが、実施例2〜10においてチオ尿素の添加量及び製造された電解銅箔の厚さを表2に示すように変更した。実施例2〜10の電解銅箔測定結果も表2に記録した。
【0034】
[比較例1] 電解銅箔の製造
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO4・5H2O)と110g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、硫酸銅電解液1リットル当たり、5.5mgの低分子量ゲル(DV;Nippi社)、3mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS;HOPAX社)及び25mgの塩酸(RCI LABSCAN LIMITED)を添加し、0.01mgのチオ尿素(PANREAC QUIMICA SAU)を添加した。
【0035】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み8μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm2である。この電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率及び銅粒子数を測定し、電解銅箔の結晶構造を粉末X線回折法によって測定し、その組織係数を計算して、結果を表3に記録した。
【0036】
[比較例2〜5] 電解銅箔の製造
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、比較例2〜5においてチオ尿素の添加量を表3に示すように変更した。比較例2〜5の電解銅箔測定結果も表3に記録した。
【0037】
[測定方法]
上記実施例1〜10及び比較例1〜5において製造された電解銅箔からそれぞれ適切なサイズの試料を切り取り、引張強度、伸長率及び粗さの測定を行った。また、粉末X線回折法によって電解銅箔の結晶構造を測定し、その組織係数を計算した。以下、測定に用いた検出方法を述べる。
【0038】
引張強度:
IPC−TM−650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG−I型抗張力試験機を用いて、室温(約25℃)下で、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック(chuck)距離50mm、クロスヘッド速度(crosshead speed)50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0039】
伸長率:
室温(約25℃)下で、IPC−TM−650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG−I型の抗張力試験機を用いて、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック距離50mm、クロスヘッド速度50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0040】
銅粒子数:
チタン製ロールから電解銅箔を剥離した後、電解銅箔(M面)上の任意の位置で1平方メートルの面積を試料として取得し、肉眼で電解銅箔の表面に自然生成された銅粒子数を観察した。
【0041】
粗さ(十点平均粗さ、Rz)測定:
α型表面粗さ計(Kosaka Laboratory社製、型番SE1700)を用いて、IPC−TM−650方法に従って、測定を行った。
【0042】
厚さ測定:
室温(約25℃)下で、IPC−TM−650方法に従って、METTLER社製のAG−204型の微量天秤を用いて、電解銅箔から長さ100mm×幅100mmの試料を切り取って、該試料の重さを測定した。測定した重さの値に100をかけてメートル坪量(g/m2)とし、このメートル坪量から、銅箔の公称厚さ(μm)に基づいて、実施例および比較例で得られた電解銅箔の厚さを評価した。
メートル坪量と公称厚さ(μm)の対照表を下記表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
組織係数(texture coefficient、TC):
PANalytical社製のPW3040型粉末X線回折分析装置を用いて、45kVの印加電圧下で、電流40mA、走査解像度0.04°、かつ走査範囲(2θ)40°〜95°の条件下で分析を行った。また、下記式(I)により各試料の組織係数を計算した。
【0045】
【数1】
式(I)
【0046】
式(I)中、TC(hkl)が(hkl)結晶面の組織係数であり、TC値が大きくなるほど、当該結晶面の選択配向(preferred orientation)の程度が高くなることを示す。I(hkl)は、分析された試料の(hkl)結晶面の回折強度を示す。I0(hkl)は、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials、ASTM)の標準銅粉末の(hkl)結晶面の回折強度(PDF#040836)を示す。また、nは、特定の回折角度(2θ)範囲内の回折ピークの数である。
【0047】
表2には、実施例1〜10の添加剤条件、物性及び組織係数の結果を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表3は、比較例1〜5の添加剤条件、物性及び組織係数の結果を示す。
【0050】
【表3】

【0051】
表2及び表3の結果から、(200)面が占める組織係数が大きい本発明の電解銅箔では、観察された電解銅箔の表面の銅粒子数が著しく低減され、1平方メートル当たり0〜5個の銅粒子を有した。そのうち、実施例6の電解銅箔では1平方メートル当たりの銅粒子は1個しかなく、粉末X線回折分析でその結晶構造を測定した結果は、図3に示すように、その(200)面の占める結晶構造は明らかに(111)面、(220)面、及び(311)面の結晶構造より多い。反対に、比較例2の電解銅箔は1平方メートル当たりの銅粒子は11個もあり、粉末X線回折分析でその結晶構造を測定した場合、図4に示すように、その(200)面の組織係数は(111)面の組織係数とほぼ同等である。また、本発明の電解銅箔は優れた引張強度、伸長率を維持でき、また、当該S面及びM面の粗さは2μmよりも低い。上記の内容から、従来の電解銅箔と全く異なる結晶構造を有する本発明の電解銅箔では、電解銅箔の表面の銅粒子数が著しく低減され、PCB及びリチウムイオン二次電池に好適に使用される。
【0052】
上記の実施例は例示的に本発明の原理と効果を述べたものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に各種変更と修正を施すことができる。従って、本発明の主張する権利範囲は、特許請求の範囲に記載され、本発明の効果及び目的を損なわない限り、いずれも本発明の範囲に入る。
図3
図4
図1
図2