【実施例】
【0031】
[実施例1] 本発明の電解銅箔の製造
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO
4・5H
2O)と110g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、さらに、硫酸銅電解液1リットル当たり、5.5mgの低分子量ゲル(DV;Nippi社)、3mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS;HOPAX社)及び25mgの塩酸(RCI LABSCAN LIMITED)を添加し、0.1mgのチオ尿素(PANREAC QUIMICA SAU)を添加した。
【0032】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み8μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm
2である。本発明の電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率及び銅粒子数を測定し、実施例1にて製造された電解銅箔の結晶構造を粉末X線回折法によって測定し、その組織係数を計算して、結果を表2に記録した。
【0033】
[実施例2〜10] 本発明の電解銅箔の製造
実施例1の製造プロセスを繰り返すが、実施例2〜10においてチオ尿素の添加量及び製造された電解銅箔の厚さを表2に示すように変更した。実施例2〜10の電解銅箔測定結果も表2に記録した。
【0034】
[比較例1] 電解銅箔の製造
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO
4・5H
2O)と110g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、硫酸銅電解液1リットル当たり、5.5mgの低分子量ゲル(DV;Nippi社)、3mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS;HOPAX社)及び25mgの塩酸(RCI LABSCAN LIMITED)を添加し、0.01mgのチオ尿素(PANREAC QUIMICA SAU)を添加した。
【0035】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み8μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm
2である。この電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率及び銅粒子数を測定し、電解銅箔の結晶構造を粉末X線回折法によって測定し、その組織係数を計算して、結果を表3に記録した。
【0036】
[比較例2〜5] 電解銅箔の製造
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、比較例2〜5においてチオ尿素の添加量を表3に示すように変更した。比較例2〜5の電解銅箔測定結果も表3に記録した。
【0037】
[測定方法]
上記実施例1〜10及び比較例1〜5において製造された電解銅箔からそれぞれ適切なサイズの試料を切り取り、引張強度、伸長率及び粗さの測定を行った。また、粉末X線回折法によって電解銅箔の結晶構造を測定し、その組織係数を計算した。以下、測定に用いた検出方法を述べる。
【0038】
引張強度:
IPC−TM−650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG−I型抗張力試験機を用いて、室温(約25℃)下で、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック(chuck)距離50mm、クロスヘッド速度(crosshead speed)50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0039】
伸長率:
室温(約25℃)下で、IPC−TM−650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG−I型の抗張力試験機を用いて、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック距離50mm、クロスヘッド速度50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0040】
銅粒子数:
チタン製ロールから電解銅箔を剥離した後、電解銅箔(M面)上の任意の位置で1平方メートルの面積を試料として取得し、肉眼で電解銅箔の表面に自然生成された銅粒子数を観察した。
【0041】
粗さ(十点平均粗さ、Rz)測定:
α型表面粗さ計(Kosaka Laboratory社製、型番SE1700)を用いて、IPC−TM−650方法に従って、測定を行った。
【0042】
厚さ測定:
室温(約25℃)下で、IPC−TM−650方法に従って、METTLER社製のAG−204型の微量天秤を用いて、電解銅箔から長さ100mm×幅100mmの試料を切り取って、該試料の重さを測定した。測定した重さの値に100をかけてメートル坪量(g/m
2)とし、このメートル坪量から、銅箔の公称厚さ(μm)に基づいて、実施例および比較例で得られた電解銅箔の厚さを評価した。
メートル坪量と公称厚さ(μm)の対照表を下記表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
組織係数(texture coefficient、TC):
PANalytical社製のPW3040型粉末X線回折分析装置を用いて、45kVの印加電圧下で、電流40mA、走査解像度0.04°、かつ走査範囲(2θ)40°〜95°の条件下で分析を行った。また、下記式(I)により各試料の組織係数を計算した。
【0045】
【数1】
式(I)
【0046】
式(I)中、TC(hkl)が(hkl)結晶面の組織係数であり、TC値が大きくなるほど、当該結晶面の選択配向(preferred orientation)の程度が高くなることを示す。I(hkl)は、分析された試料の(hkl)結晶面の回折強度を示す。I
0(hkl)は、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials、ASTM)の標準銅粉末の(hkl)結晶面の回折強度(PDF#040836)を示す。また、nは、特定の回折角度(2θ)範囲内の回折ピークの数である。
【0047】
表2には、実施例1〜10の添加剤条件、物性及び組織係数の結果を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表3は、比較例1〜5の添加剤条件、物性及び組織係数の結果を示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表2及び表3の結果から、(200)面が占める組織係数が大きい本発明の電解銅箔では、観察された電解銅箔の表面の銅粒子数が著しく低減され、1平方メートル当たり0〜5個の銅粒子を有した。そのうち、実施例6の電解銅箔では1平方メートル当たりの銅粒子は1個しかなく、粉末X線回折分析でその結晶構造を測定した結果は、
図3に示すように、その(200)面の占める結晶構造は明らかに(111)面、(220)面、及び(311)面の結晶構造より多い。反対に、比較例2の電解銅箔は1平方メートル当たりの銅粒子は11個もあり、粉末X線回折分析でその結晶構造を測定した場合、
図4に示すように、その(200)面の組織係数は(111)面の組織係数とほぼ同等である。また、本発明の電解銅箔は優れた引張強度、伸長率を維持でき、また、当該S面及びM面の粗さは2μmよりも低い。上記の内容から、従来の電解銅箔と全く異なる結晶構造を有する本発明の電解銅箔では、電解銅箔の表面の銅粒子数が著しく低減され、PCB及びリチウムイオン二次電池に好適に使用される。
【0052】
上記の実施例は例示的に本発明の原理と効果を述べたものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に各種変更と修正を施すことができる。従って、本発明の主張する権利範囲は、特許請求の範囲に記載され、本発明の効果及び目的を損なわない限り、いずれも本発明の範囲に入る。