【文献】
Frequency Control Symposium,2010 IEEE International,2010年 6月,558-563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーザと前記共振器との間に配置され、前記レーザと前記共振器との間の前記光の位相を制御して前記デバイスを安定化させ、前記レーザ搬送波周波数と前記レーザの注入同期が行われる前記共振器の共振器モードとの間の周波数離調を制御するように構成される位相制御部を含む請求項1のデバイス。
前記光カプラは、前記レーザからの前記レーザビームを前記共振器中へ結合させ、前記共振器内の光を前記フォトダイオードへの前記出力光ビームとして結合させることの双方に用いられる請求項1のデバイス。
前記反射増幅器と前記共振器との間に配置され、前記反射増幅器と前記共振器との間の前記光の位相を制御するように構成される位相制御部を含む請求項12のデバイス。
前記光カプラは、前記反射増幅器からの前記光を前記共振器中へ結合させることと、前記共振器内の光を前記フォトダイオードへの前記出力光ビームとして結合させることの双方に用いられる請求項12のデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願は、小型パッケージとしてパッケージ可能な結晶ウィスパリングギャラリーモード共振器(例えば、フッ化カルシウムまたは三次光非線形性を有する別の材料)内での四波混合(FWM)の非線形プロセスに基づいた高周波数フォトニックマイクロ波発振器(例えば、X〜W帯)の実施様態について説明する。FWMにおいて、高フィネスWGM内の大きい場の強度により、2つのポンプ光子が2つのサイドバンド光子(すなわち、信号光子およびアイドラー光子)へと変換される。発生した光子の周波数の合計は、エネルギー保存則により、ポンピング光の周波数の2倍に等しい。共振器を過飽和させ、共振器(光コム)から放出される複数の光高調波を用いることにより、記載の発振器は、位相ノイズを低減させ、高速フォトダイオード上に発生したマイクロ波信号のスペクトル純度を増加させることができる。
【0017】
本文書中に記載の例において、三次非線形性を有しかつ連続波光と共に外部へポンピングされるモノリシック光共振器は、以下の3つの周波数安定信号を生成するトリプル発振器デバイス内で用いることができる:(i)単一の周波数光トーン、(ii)位相同期/モード同期(光パルス)された複数の周波数光トーン、および(iii)スペクトル純度の高い無線周波数(RF)信号。これらの信号全てを生成する単一のデバイスを用いることは、多様な用途において有用であり、特定の例として、このようなトリプル発振器デバイスを単一のチップスケールのアーキテクチャ内にパッケージすることができる。
【0018】
本文書中に記載されるトリプル発振器デバイスはフォトニック発振器であり、レーザ搬送波周波数における線幅の狭いレーザビームと、光コムの形式の複数のモード−同期光トーンと、スペクトル純度の高いRFまたはマイクロ波信号と、を生成することができる。いくつかの実施様態において、トリプル発振器は、高Qモノリシック光共振器および自己注入または他の種類の同期を介して共振器と同期した連続波(CW)レーザ(例えば、半導体レーザ)に基づく。自己注入同期の場合、共振器からの共振フィードバックに起因してレーザ発振(lasing)を開始する光増幅器を用いることができる。共振器材料は、三次の非線形性を有し、これにより、光信号の相互位相および自己位相変調の効果が共振器内において発生し得る。
【0019】
レーザを共振器に同期させることにより、レーザ線幅が大幅に低減し、よってサブkHz光信号の生成が可能になる。CWレーザビームによってポンピングされた非線形共振器は、光周波数コムを生成することができる。いくつかの条件において光周波数コムは、光周波数コムを高速フォトダイオード上において復調することにより、スペクトル純度が高くかつ周波数安定のRF信号を生成するために用いることができる。本文書中に記載の設計により、単色光、光周波数コムおよびRF信号の生成が単一のデバイスにおいて統合される。共振器に進入し共振器と相互作用する光の位相は、対応する光またはRF出力内の前述の3つの信号それぞれを得るために調整することができる。位相調節は、例えば、半導体位相部の提供、調節可能な遅延の挿入、またはレーザと共振器との間のセグメントの光路長の熱的な変更、または電圧および/または電流の付加によるインデックスの変更により、実行することができる。上記設定の実現可能な例を本文書中に記載する。いくつかのエバネッセント場光カプラおよび単一の共振器を、発生した信号のノイズを低減するために用いることができる。実施様態において、エバネッセント場カプラは、プリズム、テーパー状のファイバまたは平面誘電導波路を用いて実現することができる。この設計の顕著な特徴は、光学素子および電子素子を備えた単一の異種チップ内においてこれらの3つの信号を生成する点である。
【0020】
図1は、単一の光トーン、無線周波数(RF)発振信号および異なる光周波数を有する光コム信号を生成するトリプル発振器デバイスの一例を示す。このデバイスは、三次光非線形性を示す非線形光学材料によって形成された光共振器100と、CWレーザビーム2を単一の周波数(レーザ搬送波周波数)において生成する連続波(CW)レーザ1とを含む。このビーム2は、共振器100中に導入され、共振器100の非線形光学材料と相互作用して、共振器100内のレーザ搬送波周波数を含む異なる光周波数を有する光コムを生成する。共振器100と結合され、共振器100中へレーザビームを結合し、さらに共振器100内から出てきた光をレーザ1に向かう注入フィードバックビームとして結合させる光カプラ5が提供される。この光カプラは、多様な光結合構成において実装することができる(例を非限定的に挙げると、例えば、いくつかの実施様態の光インターフェースにおける光エバネッセント場ベースの光を結合させるエバネッセント光カプラ)。光フィルタ4は、レーザ1と共振器100との間に配置され、光エバネッセントカプラ5からレーザ1へと方向付けられた注入フィードバックビームをフィルタリングして、レーザ搬送波周波数における注入フィードバックビーム中の光をレーザ1中へと方向付けて、レーザ搬送波周波数において、共振器100に対するレーザ1の注入同期を行う。光フィルタ4はバンドパスフィルタであり、自己注入フィードバックビーム中の他のスペクトルコンポーネントがレーザ1中に進入することを遮断する。この例において、第1のビームスプリッタ3は、レーザ1と光フィルタ4との間に配置され、レーザ1と光フィルタ4との間のビームの一部を透過させ、ビームの別の部分を第1のデバイス出力として方向付ける。第1のデバイス出力は、レーザ搬送波周波数における単一の光トーンである。光検出器7(例えば、高速フォトダイオード)は、共振器100の外部において結合され、光コムを搬送する出力光ビームを受信して、RF発振信号を第2のデバイス出力として生成するように、配置される。第2のビームスプリッタ6は、フォトダイオード7によって受信された出力光ビームの光経路内に配置され、RF発振信号を生成するために出力光ビームの一部をフォトダイオード7へと送り、また、ビームの別の部分を第3のデバイス出力として方向付ける。第3のデバイス出力は、共振器100内において生成された光コムのレプリカである。
【0021】
光フィルタ4は、光コム中の他の光トーンを拒絶しつつ、光コム中の単一の光トーンを選択するように設けられる。この選択された光トーンは、レーザ1が動作するレーザ搬送波周波数における光であり得る。いくつかの設計において、レーザ1は、非線形共振器100内の非線形光相互作用を介する光コム中の2つの異なる光トーンが同時に存在することができないように、線幅の狭い高キャビティーQファクターの光共振器を有する。この場合、光フィルタ4は省略してもよい。
【0022】
図1中の光共振器100および本文書中に記載の他のトリプル発振器デバイスは、多様な共振器構成において実装することができる。
図18中の対応する光カプラ5またはさらなる光カプラは、光共振器100の特定の実施様態に適したカプラ構成において構成することができる。光ウィスパリングギャラリーモード共振器は光共振器100の例であり、光ウィスパリングギャラリーモード共振器は、ウィスパリングギャラリーモード共振器の多様な技術的特徴を有効に活用し、特定の用途の多様な要求を満たすために用いることができる。他の実施様態において、ここに記載されるトリプル発振器デバイスは、ウィスパリングギャラリーモード共振器と異なる他の光共振器を用いて実装することができる。
【0023】
以下において、非線形WGM共振器100の構造の具体的詳細と、所望の光コムを生成するための非線形性に基づいた動作とについて説明する。
【0024】
光共振器は、光ウィスパリングギャラリーモード(「WGM」)共振器として構成することができ、特定の1組の共振器モード(ウィスパリングギャラリー(「WG」)モードとして知られる)をサポートする。これらのWGモードは、境界における全内部反射に起因して、共振器表面近傍の内側領域内に閉じ込められる光波場を示す。例えば、誘電体球を用いてWGM共振器を形成することができ、WGMモードによって示される光波場は、球境界における全内部反射に起因して赤道周囲における球表面近傍の内側領域内に閉じ込められる。直径が10〜10
2ミクロンオーダーであるシリカ微小球は、Q値が10
9を超える小型光共振器を形成するために用いられている。このような高QWGM共振器は、高スペクトル純度および低ノイズの発振信号を生成するために用いることができる。結合によりウィスパリングギャラリーモードになると、光エネルギーは、長い光子寿命にわたって球赤道またはその近傍において循環し得る。
【0025】
本出願中に記載の結晶によって構成されるWGM共振器は、溶融シリカ製のWGM共振器よりも光学的に優れている。結晶質のCaF
2製のWGM共振器は、10
10以上のQファクターを生成することができる。このような高いQ値により、多様な用途が可能になる(例えば、カー非線形効果に起因するキロヘルツ光共振および低閾値光ハイパーパラメトリック発振の発生)。以下、先ず結晶WGM共振器の例示的なジオメトリについて説明し、次に、異なる材料によって構成されるWGM共振器の特性について説明する。
【0026】
図2A、
図2Bおよび
図3は、3つの例示的なWGM共振器を示す。
図2Aは、球状WGM共振器100を示す。球状WGM共振器100は、固体誘電体球である。球100は、z軸101に対して対称な平面102において赤道を有する。平面102の外周は円形であり、平面102は円形断面である。WGモードは、球状外面内における赤道周囲に存在し、共振器100内において循環する。赤道平面102の周囲の外面の球面曲率により、z方向およびその垂直方向双方に沿った空間的制限が得られ、これによりWGモードがサポートされる。球100の偏心度は一般的に低い。
【0027】
図2Bは、例示的な回転楕円体微小共振器200を示す。この共振器200は、(軸方向長さaおよびbを有する)楕円を短楕円軸101(z)に沿った対称軸周りに回転させることにより、形成することができる。よって、
図2A中の球状共振器と同様に、
図2B中の平面102も円形外周を有し、円形断面である。
図2Aの設計と異なり、
図2B中の平面102は、非球状回転楕円体の円形断面であり、回転楕円体の短楕円体軸周囲にある。共振器100の偏心度は(1−b
2/a
2)
1/2であり、一般的には高い(例えば、10
―1を超える)。よって、共振器200の外面は、球の一部ではなく、球状外部の場合よりも、z方向に沿ったモードにおいてより高い空間的制限を提供する。より詳細には、Zを含む平面(例えば、zyまたはzx平面)におけるキャビティーのジオメトリは楕円である。共振器200の中心における赤道平面102は、軸101(z)に対して垂直であり、WGモードは、共振器200内の平面102の外周近傍において循環する。
【0028】
図3は、別の例示的なWGM共振器300を示す。このWGM共振器300は、非球状外部を有する。その外部プロファイルは概して円錐形状であり、デカルト座標の二次方程式によって数学的に表すことができる。
図2Aおよび
図2Bのジオメトリと同様に、外面は、平面102内における方向および平面102に対して垂直なz方向双方における曲率を提供し、これにより、WGモードが制限およびサポートされる。このような非球状の非楕円表面は、例えば放物線または双曲線であり得る。
図3中の平面102は円形断面であり、WGモードは赤道中の円形周囲において循環することとなる。
【0029】
図2A、
図2Bおよび
図3の上記の3つの例示的なジオメトリの共通するジオメトリ特徴として、これらのジオメトリ全てが軸101(z)周りにおいて軸対称にまたは円対称である点がある。軸101(z)周りにおいて、WGモードが平面102内において循環する。曲線状外面は、平面102の周囲において平滑であり、平面102の周囲において二次元制約を提供することにより、WGモードをサポートする。
【0030】
顕著なことに、z方向101に沿った各共振器内のWGモードの空間広がりは、平面102の上側および下側において制限されるため、球100、回転楕円体200または円錐形状300の全体を設ける必要はない。その代わりに、平面102の周囲の形状全体のうち、ウィスパリングギャラリーモードをサポートできるだけの充分な大きさの一部のみを用いて、WGM共振器を形成することができる。例えば、球の適切な一部から形成されたリング、ディスクおよび他のジオメトリを球状WGM共振器として用いることができる。
【0031】
図4Aおよび
図4Bは、ディスク形状のWGM共振器400と、リング形状のWGM共振器420とをそれぞれ示す。
図4Aにおいて、固体ディスク400は、中央平面102の上方の上面401Aと、距離Hを隔てて平面102の下側の下面401Bとを有する。距離Hの値は、WGモードをサポートできるだけ充分に大きい。中央平面102の上方のこの充分な距離を超えると、共振器は、
図3、
図4Aおよび
図4Bに示すような鋭い縁部を持ち得る。外部の曲線状表面402は、所望のWGモードおよびスペクトル特性を達成するように、
図2A、
図2Bおよび
図3に示すような形状のうちいずれかから選択することができる。
図4B中のリング共振器420は、
図4A中の固体ディスク400から中央部分410を除去することにより、形成することができる。WGモードは外面402の近傍のリング420の外部近傍に存在するため、リングの厚さhを、WGモードをサポートするように充分に大きな値に設定することができる。
【0032】
光カプラは、光エネルギーをエバネッセント結合によって、WGM共振器内または外部において結合させるために用いられることが多い。
図5Aおよび
図5Bは、2つの例示的な光カプラがWGM共振器と係合している様子を示す。光カプラは、共振器の外面と直接接触するかまたは共振器の外面から間隔を以て分離され、これにより、所望の重要結合を提供する。
図5Aは、WGM共振器のためのカプラとしての角度研磨されたファイバ先端を示す。角度付きの端面を有する導波路(例えば、平面導波路または他の導波路)も、カプラとして用いることができる。
図5Bは、WGM共振器のためのカプラとしての微小プリズムを示す。他のエバネッセントカプラも利用可能である(例えば、フォトニックバンドギャップ材料から形成されたカプラ)。
【0033】
WGM共振器は、光子を小体積内に長期間効果的に閉じ込めるために用いることができる。そのため、WGM共振器は、基礎研究および実際のデバイス双方において、広範な用途を有する。例えば、WGM共振器は、原子光保存の代替策として、線形光学を用いた光保存のために用いることができ、また、原子ベースの低速光実験の代替策として、調整可能な光遅延線のために用いることもできる。WGM共振器は、他の用途の内、例えば光フィルタリングおよび光電子発振器にも用いることも可能である。
【0034】
WGM共振器を特徴付ける多数のパラメータ(例えば、内外結合効率、モード体積、自由スペクトル範囲)のうち、線質係数(Q)は基本的なものである、Qファクターは、共振器モード(t)中の光エネルギーの寿命に関連し、Q=2pυtであり、ここで、vはモードの線形周波数である。Q=2×10
10および波長S=1.3Tmのモードに対応するリングダウンタイムは15Tsであるため、光保存デバイスとして魅力的な極めて高Qの共振器が得られる。さらに、いくつかの結晶は、WGM特性の連続的操作を可能にする充分な非線形特性を持ちつつ、極めて高Qのウィスパリングギャラリーモードが可能なくらいの十分な透明度を有するので、それら結晶の有用性が拡大する。
【0035】
誘電共振器において、最大線質係数はQ
max=2pn
0/(SI)を超えることはできない。ここで、n
0は材料の反射率であり、Sは真空中の光の波長であり、Iは誘電材料の吸収係数である。吸収が低いほど、Q
maxが大きくなる。よって、WGMの可能な最も狭い線幅K=t
−1を予測するためには、透明性窓内の透明誘電中の光減衰値を知る必要がある。この透明性窓内において、殆どの用途において損失はごく小さいものとみなされる。この残留基礎吸収についての問題は、適切な感度を有する測定方法の不在に起因して、殆どの材料について未解決のままである。幸運なことに、高Qウィスパリングギャラリーモードそのものが、多様な透明材料中における極めて低い光減衰を測定するための独自のツールである。
【0036】
アモルファス材料へ適用することが可能なサーマルリフロー方法によって作製されたWGM共振器についての従来の試験の結果、Qファクターは9×10
9未満となった。これらの測定は、溶融シリカ微小キャビティーを用いて行われ、表面張力によってほぼ完全な共振器表面が得られ、その結果、材料吸収によって決定される基本的限界に近い測定されたQファクターを得た。光学結晶は、溶融シリカよりも損失が低いことが予測される。なぜならば、結晶は理論的には完全格子を有し、アモルファス材料中に常に存在する異物および不均等性を含まないからである。多数の結晶質材料用の透明性窓は、溶融シリカのものよりもずっと広い。そのため、充分に高純度な材料を用いれば、透明性窓の中央においてずっと低い減衰を期待することができる。なぜならば、レイリー散乱縁部および多フォノン吸収縁部双方がさらに離間する方向に押圧され、紫外線領域および赤外線領域それぞれに向かうからである。さらに、結晶は、全てではないにしろ、OHイオンおよび水の化学吸着に起因する外因性の吸収効果、1.55μmでの透明性窓の下部近傍における溶融シリカのQファクターの報告された制限に悪影響を受けることが少ない。
【0037】
最近まで、結晶性WGM共振器の実現に関する1つの未解決の問題として、表面散乱を無くすための回転楕円体表面のナノメートルスケールの平滑性が得られる作製プロセスが無い点があった。ごく最近になって、この問題が解消された。すなわち、機械的光学研磨技術が、Qが10
9に近い超高Q結晶性WGM共振器を作製するために用いられている。本文書において、透明結晶と共に作製されたWGM共振器中の高線質係数(Q=2×10
10)についてさらに説明する。
【0038】
室温におけるキロヘルツ範囲の共振帯域幅および高共振コントラスト(50%以上)を有する結晶性WGM共振器は、高性能光ネットワークへの集積化に有望である。モード体積が小さくまた単一光子の共振が極めて狭いため、多様な低閾値非線形効果を、小型ブロードバンド非線形感受率に基づいて、WGM共振器において得ることができる。一例として、以下において、より小体積の高Qシリカ微小球として上述した、結晶性共振器中における熱光学不安定度の観測について説明する。
【0039】
光学結晶の透明性窓内における小さな光減衰についての一貫した実験データはほとんど無い。例えば、特別に調製された溶融シリカの最小吸収の高感度測定は、該材料から作製されたキロメートル単位の光ファイバによってのみ、可能となる(S=1.55Tm,におけるI=0.2dB/km(-I≧10
−7cm
−1))。残念なことに、この方法は、結晶質材料には適用できない。ファイバはサファイアなどの結晶からも得られているが、これらファイバ中の減衰(数dB/メートル)は、表面の散乱によって決定される。透明誘電材料中の光吸収の測定のための熱量測定方法の場合、誤差が-I≧10
−7cm
−1のオーダーで発生する。いくつかの透明材料について、残留吸収について熱量測定方法を用いて試験されており、他の材料について、直接散乱実験によって特徴付けが行われている。その結果、どちらにおいても線形減衰の数ppm/cmレベルの値が得られ、これは、10
10レベルのQ制限に対応する。これが基本的制限であるのか、または用いられる結晶の不完全性によって制限された測定結果であるのか、という疑問がある。
【0040】
最高QWGM共振器用の材料の選択は、基本的要素に基づいて行う必要がある(例えば、最も幅広の透明性窓、高純度グレード、および環境安定性)。ハロゲン化アルカリは、吸湿特性および大気湿度に対する感度があるため、不適切である。固体透明材料中のバルク損失は、現象学的な依存によって近似することができる。
ここで、I
UV,I
R,およびI
IRは、光の青色ウイング(1次電子)、レイリー、および赤色ウイング(多フォノン)損失をそれぞれ示す。S
UV,およびS
IRは、材料透明性窓の縁部を示す。この式は、存在し得る結晶不純物に起因する共振吸収を考慮していない。残念なことに、方程式(1)中の係数は必ずしも既知ではない。
【0041】
光非線形挙動を有する高QWGM共振器の作製のための非線形材料の一例として、フッ化カルシウム(CaF
2)がある。この材料は、193および157nmにおける紫外線リソグラフィー用途において用いられるため、多様な用途において有用である。幅広アパチャ光学系に適したこの材料の超高純度結晶が生成され、市販されている。CaF
2中の散乱について最近報告された測定によれば、193nmにおいてI=3x10
−5cm
−1であり、10
13レベルのQ制限に対応する近赤外線帯において極めて低い散乱を予測することができる。
【0042】
この波長における格子吸収を中赤外線多フォノン縁部の位置から予測することができ、さらに低いQ制限を得ることができる。残留ドーピングおよび不定比性に起因して、散乱および吸収双方が存在し、実際の共振器中のQが低下する。Q制限のさらなる原因として、研磨技術に起因する残留表面の不均等性に起因する散乱がある。従来の光学研磨品質の限界(平均粗さs=2nm)において、WGM表面散乱についての導波路モデルに基づいた推定値は、Q
~10
11である。
【0043】
フッ化カルシウムおよびLiNbO
3,LiTaO
3およびAl
2O
3によって構成されたいくつかの他の結晶質材料によって作製されたWGM共振器について調査し、その線質係数を測定した。円筒状母材のコアドリルおよびその後の母材リムの回転楕円体ジオメトリ状への研磨により、CaF
2共振器を作製した。作製された共振器の直径は4〜7ミリメートルであり、厚さは0.5〜1mmであった。作製されたフッ化カルシウム共振器のQファクターは、約2×10
10であった。
【0044】
Qの測定をプリズム結合方法を用いて行った。下側に結合されたレジーム中で得られた共振の帯域幅から、固有のQを測定した。共振器中の異なる反射率のため、シリカ(n=1.44)およびフッ化カルシウム(n=1.43)用にBK7ガラスプリズム(n=1.52)を用い、ニオブ酸リチウム(n=2.10、2.20)用にダイヤモンド(n=2.36)を用い、サファイア(n=1.75)用にニオブ酸リチウムプリズム(n=2.10)を用いた。光源として、760nmの拡張キャビティーダイオードレーザと、1550nmの分散型フィードバック半導体レーザと、1319nmの固体YAGレーザを用いた。
【0045】
高Q非線形WGM共振器を用いて、低閾値光ハイパーパラメトリック発振を実現することができる。材料のカー非線形性によって発生する共振増強四波混合に起因して、発振が発生する。共振器モードの狭い帯域幅および高効率の共振周波数変換に起因して、発振により、ポンプ、信号、およびアイドラー波の安定した狭帯のビート(うなり)が発生する。このプロセスの理論的モデルについて説明する。
【0046】
高効率の非線形光相互作用を低光レベルにおいて実現することは、その発端からいって、非線形光学における主な目的の1つである。光共振器は、この目的達成に大きく寄与する。なぜならば、小体積中に光を長期間閉じ込めると、非線形光相互作用が増加するからである。光ウィスパリングギャラリーモード(WGM)共振器は、この目的に特に適している。高線質係数(Q)および小モード体積であるという特徴により、アモルファス材料製のWGM共振器における低閾値レーザ発振の観測と、高効率非線形波混合とが既に得られている。
【0047】
光ハイパーパラメトリック発振(ファイバ光学における変調不安定度)は、材料の小非線形性によって妨害されることが多いため、光ハイパーパラメトリック発振を観測するためには、高出力の光パルスが必要となる。CaF
2の非線形性は、溶融シリカよりも小さいとはいえ、低出力の連続波ポンプ光を用いて、共振器の高Q(Q>5X10
9)から、共振器モード間の強い非線形相互作用を観測することができた。この相互作用により、新たな場が発生した。
【0048】
高速フォトダイオード上でのポンプと発生したサイドバンドとの混合によって発生したマイクロ波信号の周波数は安定しており、周波数シフトも無い。このような周波数シフトは、自己位相変調効果および相互位相変調効果に起因して発生し得る。逆に、例えばコヒーレントな原子媒体の場合、相互位相変調効果(ac Starkシフト)に起因する周波数の不整合を補償するよう、発振周波数がシフトする。本システムにおいては、発振周波数はモード構造によって与えられるため、共振器寸法の変更によって調整することができる。アモルファス材料および液体によって構成された共振器と異なり、高Q結晶性共振器により、三次非線形プロセスと、高純度のハイパーパラメトリック発振信号の観測との区別が容易になる。その結果、ハイパー発振器は、全ての光二次周波数リファレンスとしての用途において有望となる。
【0049】
ハイパーパラメトリック発振は、誘導ラマン散乱(SRS)および他の非線形効果によってマスキングされ得る。例えば、WGMシリカ微小共振器を用いたSRS実験における光学ポンピング線近傍の二次線の観測を、(媒体の電子カー非線形性に基づいた4光子パラメトリックプロセスというよりは)ポンプと、共振器中に発生した2つのラマン波との間の四波混合として解釈された。多様な誘導非線形プロセス間の相互作用も観測されており、これを液滴球状微小キャビティーにおいて調査した。
【0050】
偏光選択則と、WGMのジオメトリ選択則とを共に用いることにより、結晶性WGM共振器中の結晶の電子非線形性にのみ起因して発生する非線形プロセスの観測が可能になる。ここで、対称軸に対して円筒状に対称であるホタル石WGM共振器について検討する。立方昌系結晶中の線形反射率は均等かつ等方性であるため、モードについての一般的記述は共振器において有効である。WGMのTEおよびTMファミリーの偏光方向はそれぞれ、対称軸に対して平行および直角である。光学ポンピング光がTEモードへ送られると、ラマン信号を同一モードファミリーにおいて生成することはできない。なぜならば、立方晶系結晶(例えば、CaF
2)中には、三重縮退したラマン活性振動が対称なF
2gで1つだけ存在しているからである。最終的に、超高Q結晶質共振器中において、材料およびジオメトリ分散に起因して、ラマン離調周波数における自由スペクトル範囲(FSR)の値と、搬送波周波数におけるFSRとが、モードスペクトル幅を超える量だけ異なる。そのため、ラマン信号および搬送波の周波数混合が大きく抑制される。TEモードファミリー中に発生する場は全て電子非線形性のみに起因し、ラマン散乱はTMモードにおいて発生する。
【0051】
以下の3つのキャビティーモードについて検討する:第1のキャビティーモードは、ポンプレーザによる共振に近く、その他2つのキャビティーモードは、発生した光サイドバンドによる共振に近い。キャビティー内の場の低速の振幅について以下の方程式を用いて、分析を開始した。
ここで、n
2は光学定数であり、光非線形性の強さを特徴付ける。n
oは材料の線形反射率であり、Vはモード体積であり、cは真空中の光速度である。この結合定数を導出して、これらのモードのジオメトリはほぼ重複していると仮定する。このような重複は、これらのモード間の周波数差が小さい場合に発生する。力F
oは、システムの外部ポンピングF
o=(2K
oP
o/w
o)
1/2を示し、ここで、P
oは、外部から付加されたモードのポンプ出力である。
【0052】
簡潔さのため、これらのモードは同一であると仮定する(すなわち、K
+=K_=K
o)。これは、実際の共振器を用いた観測によって正当化される。次に、上記式(1)〜(3)の定常状態を解くことにより、発生した場の発振周波数が得られた。
すなわち、ビート周波数は、共振器モード間の周波数差のみに依存し、ポンピングモードからの光出力またはレーザ離調には依存しない。その結果、電子周波数同期回路は、ポンプレーザの搬送波周波数を変化させるが、ポンピングレーザのビートの周波数および発生したサイドバンドを変化させない。
【0053】
閾値光出力は、キャビティー内の場の低速の振幅についての3つの方程式一式の定常状態解により、得ることができる。
ここで、数値ファクター1.54は、発振閾値に対する自己位相変調効果の影響によるものである。この実験における閾値の理論値は、P
th~0.3mWである。ここで、n
o=1.44は材料の反射率であり、n
2=3.2X10
−16cm
2/Wは、フッ化カルシウムの非線形性係数であり、V=10
−4cm
3はモード体積であり、Q=6X10
9、およびS=1.32μmである。
【0054】
上記方程式は、モード体積の低下と共に、パラメトリックプロセスの効率が増すことを示している。比較的大きなWGM共振器を用いたのは、作製上の便宜のためである。共振器のサイズを小型化した場合、発振の閾値が大幅に低下し得る。モード体積はおよそV=2pSR
2と見積もれるため、半径Rを1桁だけ低減した場合、パラメトリックプロセスの閾値は2桁低減することが明らかである。その結果、原子コヒーレンスに基づく発振器と同クラスのWGM共振器が得られる。しかし、原子発振器中のサイドバンド間の周波数差と対照的に、WGM発振器の周波数は、出力シフト(ac Stark)を含まない。
【0055】
システムの量子力学的振る舞いを記述するランジュバン方程式に基づいて分析を行ったところ、原子コヒーレント媒体におけるハイパーパラメトリックプロセスの低位相拡散と同様に、ビートの位相拡散は低いことがわかった。発振閾値に近く、位相拡散係数は以下のようになる。
ここで、P
Boutはサイドバンド中の出力である。対応するアラン偏差は、s
beat/w
beat=(2D
beat/tw
2beat)
1/2である。アラン偏差を以下のように仮定する。
K
0=3X10
5rad/sの場合、P
Bout=1mW、w
0=1.4X10
15rad/sおよびw
beat=5X10
10rad/sである。発振の安定性についての一般的な後続調査については、他の場所で、後で公表する。
【0056】
我々の実験により判明したところによれば、上記3つの相互作用モードを超える数のモードが、プロセスに関与することができる。関与するモードの数は、共振器中のモード間隔の変化によって決定される。一般的に、材料の二次分散およびジオメトリ分散に起因して、共振器のモードは等距離ではない。ここで、D=(2w
o−w
+−w_)/K
oを導入して
、共振器の二次分散を考慮に入れた。|D|≧1である場合、これらのモードは等距離ではないため、複数の高調波発生は不可能となる。
【0057】
WGM共振器の主要モードシーケンスのジオメトリ分散は、半径Rの共振器については、D
~0.41c/(K
0Rn
0m
5/3)であり、w
+,w
0,およびw_は、共振器のm+1,m,およびm−1モードと仮定される(w
mRn
wm=mc,m>>1)。R=0.4cm、K
0=2X10
5rad/s,m=3X10
4の場合、D=7X10
−4が得られ、よって、ジオメトリ分散はこの場合比較的小さい。しかし、材料分散は充分に大きい。Sellmeier分散方程式を用いて、ポンプレーザ波長においてD
~0.1を得た。これは、ほぼ3つのサイドバンド対をシステム内において生成することができる(そのうち2つのみが実験において確認された)ことを意味する。
【0058】
さらに、実験においてラマン信号が無かったことから、媒体の有効ラマン非線形性が先行の測定値よりも低いことが分かる。数に基づいた理論的推定から、ラマンおよびハイパーパラメトリックプロセス双方において、ポンプ出力閾値はほぼ等しいことが予測される。SRS閾値用に導出された式P
R~p2n
02V/GS
2Q
2(ここで、G
~2X10
−11cm/Wは、CaF
2についてのラマン利得係数である)を用いて、CaF
2製の全ての共振器について、P
th/P
R~1を推定する。しかし、上述したように、実験においてSRS信号は全く見られなかった。
【0059】
よって、ポンピング光と材料とが長時間相互作用するため、CaF
2の三次非線形性が小さい場合であっても、狭帯光サイドバンドが有効に発生する。このプロセスは、新規の種類の全光周波数リファレンスの実証に用いることができる。さらに、発振は、スクイーズド光の発生源として有望である。なぜならば、ハイパーパラメトリックプロセスにおいて生成されたサイドバンド光子対は一般的には、量子相関があるからである。
【0060】
フォトニックマイクロ波発振器は、明確に規定されかつ安定したビート信号を生成するために、多色光の生成およびその後の復調に基づいて、構築することができる。非線形WGM光共振器に基づいたハイパーパラメトリック発振器を用いて、超安定マイクロ波信号を生成することができる。このようなマイクロ波発振器の利点として、サイズが小さい点および入力電力が小さい点があり、また、(共振器のサイズによって決定される)任意の所望の周波数におけるマイクロ波信号を生成することができる。
【0061】
ハイパーパラメトリック光発振は、ポンプビーム中の2つのポンプ光子を1つの信号光子および1つのアイドラー光子へ変換することによる、2つのポンプ、信号およびアイドラー光子間の四波混合に基づく。この混合によって、ポンピング波を費やした真空ゆらぎから、信号およびアイドラー光サイドバンドが成長することができる。高フィネスWGM中の高キャビティー内強度により、4光子プロセス(例えば、hω+hω→h(ω+ωM)+h(ω-ωM))に基づくχ(3)ベースが得られる。ここで、ωは、外部ポンピングの搬送波周波数であり、ωMは、共振器自由スペクトル範囲によって決定されるωM
~ΩFSRである。プロセスのカスケードおよび複数の等距離信号およびアイドラー高調波(光コム)の生成も、この発振器において可能である。発振器の光出力の復調を高速フォトダイオードを用いて行うことにより、周波数ωMにおける高周波数マイクロ波信号を生成することができる。信号のスペクトル純度は、WGMのQファクターおよび発生した信号およびアイドラーの光出力の増加と共に増加する。発振のポンピング閾値は、超高Qファクターの共振器の微小ワットレベルと同じくらい低くすることができる。
【0062】
ハイパーパラメトリック発振を直接適用するには、いくつかの問題がある。そのような問題の1つとして、WGM共振器から出ていく光信号がほとんど位相変調されている事実がある。そのため、高速フォトダイオード上で信号を直接検出しても、マイクロ波は発生しない。この相違を回避するために、非線形WGM共振器を、さらなる遅延線が干渉計の別のアームに配置されたマッハツェンダー干渉計のアームに配置することができる。2つのアームからの光の光学干渉により、位相変調信号を振幅変調信号へと変換することができる。この振幅変調信号は光検出器によって検出可能であり、これによりマイクロ波信号が発生する。
【0063】
図6Aは、光干渉計構成におけるハイパーパラメトリックマイクロ波フォトニック発振器の一例を示す。この光干渉計構成において、第1の光経路611は非線形WGM共振器630を有し、第2の光経路612は長い遅延線を有する。レーザ601からの光は、2つの経路611および612へと分割される。2つの結合プリズム631および632または他の光カプラを用いて、共振器630を第1の光経路611へと光学的に結合させることができる。結合プリズム632の後に共振器630の出力光をシングルモードファイバ中に収集し、これを光遅延線からの光と組み合わせる。この組み合わされた光をフォトダイオードPD650へと送る。フォトダイオードPD650は、ビート信号を低ノイズの狭帯マイクロ波信号として生成する。フォトダイオード650の下流において、信号増幅器660およびスペクトルアナライザ660を用いることができる。
【0064】
図6Bは、ハイパーパラメトリックマイクロ波フォトニック発振器の一例を示す。このハイパーパラメトリックマイクロ波フォトニック発振器において、発振器は、上述の
図6A中の干渉計構成における遅延を用いることなく、マイクロ波信号を生成することができる。その結果、デバイスのパッケージングの簡略化が可能になる。
【0065】
図6Cに示す発振器において、レーザダイオード601は、光結合要素CP1(631、例えば、結合プリズム)と、第2の光結合要素CP2(632、例えば、結合プリズム)とへ直接接続される。光結合要素CP1は、WDM非線形共振器630へと光学的に結合される。第2の光結合要素CP2は、共振器630へと接続されて、光出力を生成する。フォトダイオードPD650は、CP2に接続されて、フォトダイオード650によって受信された光出力を低ノイズRF/マイクロ波信号へ変換する。
【0066】
光遅延線線を含まない上記設計は、共振器内に発生する単一のサイドバンド四波混合プロセスに基づく。単一のサイドバンド信号は、フォトダイオード上にマイクロ波信号を生成させるための干渉技術を全く必要としない。
【0067】
単一のサイドバンド信号の一例を
図7に示す。
図7は、ハイパーパラメトリック発振器の実験において観測されたスペクトルを示す。この発振器は、対称のサイドバンドを有する通常のハイパーパラメトリック発振器と対照的に、共振器FSR(12GHz)によって搬送波と分離されたサイドバンドを1つだけ有する。光信号は、12GHzのスペクトル純度の高いマイクロ波信号を高速フォトダイオード上に生成する。
【0068】
この単一のサイドバンド発振器は、デバイスを小型パッケージ内にパッケージングすることに適している。このプロセスは、WGM共振器内における複数の周波数縮退光モードの存在に起因して発生する。これらのモードは、共振器表面上において干渉する。この干渉は、共振器表面上に特定の空間パターンを発生させる。共振器内に発生した各サイドバンドは、固有のパターンを有する。共振器の表面上の出力カプラの適切なジオメトリ位置を選択することにより、搬送波と、ただ1つの発生したサイドバンドとを取り出すことができる。
【0069】
図8は、単色光がWGM共振器のいくつかの縮退またはほぼ縮退したモードに同時に相互作用した結果、共振器表面上に干渉パターンが発生することを示す。モードが完全に縮退している場合、このパターンは、時間的に一定である。出力カプラの位置を適切に選択することにより、出力光の検出を(例えば、点Aにおいて)行うことが可能になる。しかし、点Bにおいて、光波場における無効値(ヌル)が存在するため、カプラが点Bに配置されると、光は検出されない。
【0070】
従って、非線形WGM共振器を比較的高いスペクトル密度および出力エバネッセント場カプラと共に用いることにより、単一のサイドバンド発振器を作製することができる。この出力エバネセント場カプラは、共振器表面の近隣に配置することができる。実験から、共振器表面上の適切な点を選択することにより、発生したただ1つのサイドバンドと共に、光ハイパーパラメトリック発振を観測することが可能であることが判明した。このような発振は、高速フォトダイオード上において直接復調することができる。
【0071】
ハイパーパラメトリック発振器は、フォトダイオードの出力において発生したマイクロ波信号についての高スペクトル純度を生成する。信号の位相ノイズを測定したところ、ショットノイズが限定されていることが判明し、位相ノイズフロアは少なくとも−126dBc/Hzレベルに到達可能なことが分かった。スペクトル純度の向上のため、発振器を過飽和させ、光コムを生成することができる。光コムの復調によって生成されたマイクロ波信号は、単一のサイドバンド発振器よりもスペクトル純度が高い。光コムは、システムにおけるモードロックに対応し、短光パルスを発生させる。判明したこととして、光パルスのトレインの復調を継続時間tおよび反復率Tで行った結果生成されるマイクロ波信号の位相ノイズは、以下の出力スペクトル密度におけるショットノイズによって得られる。
ここで、ω
0は光ポンプの周波数であり、P
aveは、発生したパルストレインの平均光出力であり、αは、往復光損失である。よって、反復率と比較してパルスが短くなるほど、位相ノイズも低くなる。一方、T/tは、コムN中のおよそのモード数となることが既知である。よって、サイドバンドを1つまたは2つ有する通常のハイパーパラメトリック発振器と比較して、コムの(N^2)位相ノイズが大幅に少なくなることが予測される。
【0072】
三次非線形性を有する非線形WGM共振器(例えば、CaF
2WGM共振器)を用いて、調整可能な光コム生成器を形成することができる。CaF
2WGM共振器を用いて、25mGHzの周波数間隔で光コムを生成した(mは整数である)。選択されたWGM周波数に対してポンプレーザの搬送波周波数の適切な離調を選択することにより、この間隔(数m)を制御可能に変更した。高速フォトダイオードを用いた光コムの復調を用いて、高周波マイクロ波信号をコム周波数またはコム間隔において生成することができる。生成された25GHz信号の線幅は、40Hz未満であった。
【0073】
このようなコム生成器は、ポンプレーザビームを生成するレーザと、非線形WGM共振器と、ポンプレーザビームを非線形WGM共振器内に結合し、さらに、非線形WGM共振器の外部への光を結合させる光結合モジュールとを含む。光コム中の周波数の調整は、ポンプレーザビームの周波数の調整によって達成することができ、コム間隔の調整は、ポンプレーザを非線形WGM共振器へと同期させ、ポンプレーザの同期状態を制御することにより、達成することができる。
【0074】
図9は、このようなコム生成器の一例を示す。レーザ(例えば、ファイバへ結合された1550nmの調整可能レーザ)からのポンプ光が、結合プリズムを持ちいてCaF
2WGM共振器内へと送られ、別の結合プリズムを用いて共振器から取り出される。プリズムから出て行く光はコリメートされ、シングルモードファイバ内で結合される。結合効率は、例えば35%よりも高く設定することができる。共振器は、曲線状かつ研磨されたリムを有する円錐形状であってもよい。この試験において用いたCaF
2WGM共振器は、直径2.55mmであり、長さ0.5mmであった。固有のQファクターは、2.5×10
9のオーダーであった。共振器を適切な形状にすることにより、モード断面積を数百平方ミクロン未満まで低減することができる。例えば熱電冷却器(TEC)を用いることにより、共振器を熱的安定箱内にパッケージングすることができ、これにより、外部の熱変動を補償することができる。共振器の光出力を光スペクトルアナライザ(OSA)へと方向付けて、出力の光スペクトル特性を測定し、さらに光検出器およびRFスペクトルアナライザ(RFSA)へ方向付けて、光検出器の出力のRFまたはマイクロ波スペクトル特性を測定した。
【0075】
図9において、レーザ周波数は、WGM共振器のモードに同期される。図示のように、Pound−Drever−Hallレーザフィードバック同期システムでは、WGM共振器の光出力の一部を、レーザ同期するための光フィードバックとして用いる。レーザ同期のレベルおよび位相を、発振共振器用と非発振共振器用に異なるように設定する。同期されたレーザの出力を発振閾値を超えて増加させると、同期不安定度が増加する。これは、共振の対称性が発振閾値において変化することから予期できる。レーザ同期を保持するためにレーザ出力を増加しつつ、同期パラメータを変更または調節することができる。レーザがWGM共振器に同期されている間、同期パラメータを変更することよって、レーザ周波数のWGM共振器の共振周波数からの離調を変更することで、コムを微調整することができる。
【0076】
ポンピング出力がハイパーパラメトリック発振の閾値に近づいたときに、WGM共振器が低入力レベルにおいて光学的にポンプされると、光コムは発生せず、誘導ラマン散乱(SRS)およびFWMプロセスの競合が観測された。この試験において用いられたWGM共振器は、高QWGMの複数のモードファミリーを有していた。基本的モードシーケンスに属するモードの直接ポンピングを行った場合、FWM発振プロセスの場合よりもSRSの閾値が低いことが判明した。これは、予測されなかった結果である。なぜならば、同一のパラメータを有するモードにおいて、SRSプロセスは、ハイパーパラメトリック発振と比較して、若干低い閾値を有するからである。このような相違は、モードファミリーが異なれば、モード中場分布によって得られる線質係数も異なり、カプラ位置も異なることに起因する。試験設定については、より高次の横モードと比較してWGMの基本的シーケンスがより低いQファクター(より高いローディング)を有するように、配置を行った。モードがより高い体積Vを有する場合であっても、SRSプロセスは、より高いQモードから開始する。これは、SRS閾値の出力がVQ
2に反比例するためである。
【0077】
より高出力の光によって基本的モードシーケンスをポンピングした場合、ハイパーパラメトリック発振がSRSと共に発生することが多い。
図10は、基本的モードシーケンスに属するモードへポンピングされたCaF
2共振器中において観測された光搬送波およびハイパーパラメトリック発振から、SRSの測定周波数スペクトルが約9.67THzであることを示す。線の構造を、スペクトルの下側の挿入によって示す。ロードされた線質係数Qは10
9であり、モードへ送られたポンプ出力は8mWであった。試験の結果、ハイパーパラメトリックおよびSRSプロセスはより高いQモードにおいて開始することが分かった。これらのプロセスに関与するモード間の周波数分離は、共振器のFSRよりもずっと低く、これらのモードは明らかに横特性である。これにより、SRS光と搬送波との間のFWMの不在も説明できる。
【0078】
FWMによって生成された光子対は、
図10に示すようにポンプ周波数から約8THzだけ離れている。その理由として、CaF
2のゼロ分散点が1550nm近傍に存在する点がある。このようなポンプから遠く離れた光子対の生成により、WGM共振器ベースのハイパーパラメトリック発振器を、量子通信および量子暗号ネットワークに対して非常に適したものにすることができる。この発振器は、χ(2)下方変換プロセスに基づいた従来の二光子源と対照的に、光子対が通信ファイバ中に送り込まれた場合に発生する大きな結合損失を回避する。さらには、搬送波周波数と数テラヘルツのオーダーで離隔された狭帯光子の無損失分離も、容易に可能である。
【0079】
実行した試験において、ポンプ出力が発振閾値を大幅に超えて増加したとき、光コムが発生した。レーザの周波数が高Q横WGMへ同期されたとき、安定した光コムが発生した。このようにして、SRSプロセスと比較して閾値がより低いハイパーパラメトリック発振が観測された。光ポンプ出力が大幅に増加した場合であっても、光コム線の高速成長により、SRSプロセスは発生しなかった。
【0080】
図11は、共振器を1550nm光の10mWによってポンピングした場合において観測された、ハイパーパラメトリック発振の例を示す。スペクトル(a)および(b)は、WGM共振周波数からのポンプの異なる離調に対応する。測定されたスペクトル(a)は、25GHzだけ分離された搬送波および第1のストークスサイドバンドから、光子が12.5GHz周波数において生成された場合における、光子加重プロセスの結果を示す。このプロセスは、高密度WGMによって可能であり、単一モードファミリー共振器内において禁止されている。
【0081】
コムの成長は、いくつかの特性を有する。いくつかの場合において、
図11に示すように、信号およびアイドラーサイドバンドの成長において大きな非対称性が存在していた。この非対称性は、対称サイドバンドの発生を予測するハイパーパラメトリック発振の通常の理論では説明されない。これについての1つの可能性のある説明として、共振器の高モード密度がある。実験において、レーザは、単一のモードをポンピングするのではなく、ほぼ縮退したモードクラスターをポンピングする。横モードファミリーは、若干異なるジオメトリ分散を有するため、クラスターの形状は周波数と共に変化し、各モードファミリーは、固有のハイパーパラメトリック発振をもたらす。これらの発振の信号およびアイドラーモードはほぼ縮退しているため、相互に干渉し合うことができ、その結果、搬送波のいずれかの側部において、サイドバンド抑制が行われる。これにより、「単一のサイドバンド」発振が試験において観測されることとなる。干渉したコムは、独立しているとみなすべきではない。なぜならば、発生したサイドバンドは、コム復調によるマイクロ波信号の生成に示されているように、明確に区別できる位相従属性を有するからである。
【0082】
図12は、(a)出力50mWのポンプレーザビームによってポンピングされたCaF
2WGM共振器によって生成された光コムと、(b)(a)における測定の中央部分の拡大とを示す。生成された光コムは、2つの明確な繰り返し周波数を有する。これら2つの明確な繰り返し周波数は、共振器の1つおよび4つのFSRに等しい。
図13は、レーザ同期のレベルおよび位相を変更した場合の
図12に示すコムの変更を示す。
図13(b)は、
図13(a)中の測定における中央部分の拡大を示す。
【0083】
単一のサイドバンド発振が発生するポンプ閾値を超えてポンプ出力がさらに増加した場合、信号およびアイドラー高調波の相互作用がより顕著になる。
図12および
図13は、周波数スパンが30THzを超えたときに観測されたコムを示す。コムのエンベロープが変調されており、この変調の理由は
図13(b)から推測することができる。このコムをモードクラスター上に発生させる。このモードクラスターは、周波数と共に形状を変化させる。
【0084】
上記した非線形WGM共振器ベースの光コム生成器は、調整が可能であり、コム繰り返し周波数の制御可能な調整は、ポンプレーザの周波数を変更することによって達成される。他の実験条件(例えば、共振器の温度および光結合)を変更せず、レーザ同期のレベルおよび位相を変更することにより、コム周波数間隔を変化させることができる。
図11〜
図13に示す測定から、調整の例が得られる。非線形WGM共振器ベースのコム生成器のこの調整能力は、多様な用途において有用である。
【0085】
非線形WGM共振器ベースのコム生成器の別の特徴として、異なるモードの光コムがコヒーレントであるという点がある。このようにして生成されたカー(ハイパーパラメトリック)周波数コムの復調は、高速フォトダイオードによって直接検出することができ、これにより、高周波数RFまたはマイクロ波信号をコム繰り返し周波数において発生させる。これは必然的に導かれる結果であり、コム線がコヒーレントであることを示す。信号のスペクトル純度は、WGMのQファクター、生成されたサイドバンドの光出力、およびコムのスペクトル幅の増加とともに増加する。高速フォトダイオードの出力は、コム中の異なるスペクトルコンポーネント間のコヒーレント干渉に起因して発生するRFまたはマイクロ波ビート信号である。コムのコヒーレント特性を実証するために、主要周波数間隔が25GHzのコムを、光帯1480〜1640nmで、高速40GHzフォトダイオードへと方向付けた。
図14は、40GHzフォトダイオードによる、記録されたマイクロ波ビート信号出力を示す。
図14(a)は、信号を対数目盛り中に示し、
図14(b)は、同じ信号を線形目盛り中に示す。
図14(c)は、40GHzフォトダイオードへ方向付けられた光コムのスペクトルを示す。マイクロ波線の線形フィッティング結果は、発生したマイクロ波ビート信号の線幅が40Hz未満であることを示し、これは、ビート信号の高コヒーレンス性を示す。この実験において用いたマイクロ波スペクトルアナライザ(Agilent8564A)は10Hzのビデオ帯域幅を有し、平均化は行わず、内部マイクロ波減衰は10dB(実際のマイクロ波ノイズフロアは、1桁だけ低かった)である。光信号の後続光フィルタリングは行わなかった。
【0086】
図14はまた、マイクロ波信号が不均一に40Hzまで拡大したことを示す。ノイズフロアは、測定帯域幅(約4Hz)に対応する。このような拡大は、ポンプレーザ搬送波周波数に対するWGM共振周波数の熱反射ジッターに起因する。試験において用いられた8kHz変調に基づいたレーザ同期回路は、このジッターを補償できるほど充分に高速ではない。より高速の同期(例えば、10MHz)を用いれば、マイクロ波信号のより狭い帯域幅を測定することができるであろう。
【0087】
図14(c)に示すマイクロ波生成において用いられるコムは、非対称性形状を有する。
図12および
図13中のほぼ対称のコムと対照的に、このコムは、搬送波の青色側へシフトしている。
図14(c)中のコムを生成するために、基本的モードシーケンスに属するモードのうちの1つへレーザを同期させた。ポンプ出力が低い場合の
図10のような2つのモード発振プロセスが、ポンプ出力の増加と共に等距離コムへと変化することが観測された。SRSプロセスは抑制された。
【0088】
異なる試験において、外部変調光信号を光ポンプとして非線形WGM共振器へと送った。
図15は、非線形WGM共振器の光出力中に測定されたカオス発振を示す。共振器を、(25786kHzにおいて変調されかつ出力が50mWである)レーザ光で1550nmにおいてポンピングした。発生したスペクトルは、cwポンプされた共振器によって生成されたスペクトルよりも大幅に広いことはなく、これらのモードは等距離ではない。
【0089】
従って、WGM結晶性共振器を光学的にポンピングすることによって、共振器のFSRに対応する調整可能なコム周波数間隔を得るための、光周波数コムを生成することができる。これらのコムは、大きなスペクトル幅を有する(例えば、30THzを超えるもの)、また、モードの良好な相対的コヒーレント性を有する。発生したコムの特性は、光ポンプされたモードの選択と、共振器へのレーザ同期のレベルおよび位相とに依存する。
【0090】
上記において記載したWGM共振器中の光三次非線形性を用いた光コムの生成において、発生した光コム信号の周波数を安定化させるために、レーザ同期を用いることができる。
図9に示すように、Pound−Drever−Hall(PDH)レーザフィードバック同期方式を用いて、非線形WGM共振器へのポンプ光を生成するレーザを同期させることができる。PDH同期は、フィードバック同期回路に基づいたレーザ同期技術の一例である。フィードバック同期回路は、共振器の光結合を用いて、レーザを共振器へ同期させるための電気的な制御信号を生成する。同期のレベルおよび位相は、発振共振器用および非発振共振器用で異なる。同期レーザの出力を発振閾値を超えて増加させると、同期不安定度が増加する。このレーザ同期により、スペクトル純度の高いマイクロ波信号の生成を促進することができる。試験によれば、同期されていないコム信号の場合、同期レーザ(例えば、
図14に示すような40Hz未満のもの)によって生成されたコムの場合よりも、境界線幅が(例えば、約数MHz)広い。
【0091】
Pound−Drever−Hall(PDH)レーザフィードバック同期の代替例として、WGM共振器内部のレイリー散乱または固体リング共振器を用いて、このような自己注入同期の形式を用いる共振器へのレーザを同期させることができる。この注入同期により、適切な位相整合条件下において、レーザ光をレーザに再度注入することにより、レーザがハイパーパラメトリック周波数コムを生成する非線形共振器へ同期される。非線形共振器からレーザへのフィードバック光の光位相は、位相整合条件を満たすように、調節される。
【0092】
2つのフィードバック機構を用いて、非線形共振器からレーザへと光を方向付けて、レーザを同期することができる。第1のフィードバック機構においては、非線形共振器内のレイリー散乱を介して発生した信号を用いる。レイリー散乱によって発生した光は、記レーザからのオリジナルのポンプ光の光経路を追随して、非線形共振器からレーザへと伝搬する。
【0093】
第2のフィードバック機構においては、非線形共振器の出力光経路に配置された反射器(例えば、追加的な部分的に透明な鏡)を用いて、非線形共振器に戻り、その後レーザへ向かう反射を提供する。
図16は、レーザ1601を非線形共振器1610へ同期させるデバイス1600の一例を示す。非線形共振器1610は、リング共振器、ディスク共振器、球状共振器または非球状共振器であり得る(例えば、回転楕円体共振器)。光カプラ1620は、図示のような結合プリズムであってもよい。この光カプラ1620を用いて、共振器1610へ光入力を提供し、共振器1610からの光出力を提供する。レーザ1601は、レーザビーム1661を生成し、レーザビーム1661を結合プリズム1620へと方向付ける。結合プリズム1620は、レーザビーム1661をビーム1662として共振器1610中へと結合させる。ビーム1662は、共振器1610内部において反時計回りに循環する。循環ビーム1662の光は、共振器出力ビーム1663として光カプラ1620によって光学的に結合される。共振器出力ビーム1663の光経路内の結合プリズム1620の後に、反射器1640を配置することにより、共振器出力ビーム1663のうち少なくとも一部を結合プリズム1620へ戻すよう反射させる。光コリメータ1602および1631を用いて、光をコリメートすることができる。反射器1640は、部分的反射器であってもよく、共振器出力ビーム1663の一部を出力ビーム1664として透過し、共振器出力ビームの一部を返送ビーム1665として反射する。反射器1640は全反射器であってもよく、その場合、ビーム1663の光全てを返送ビーム1665として反射する。フィードバックビーム1665は、逆伝搬ビーム1666として共振器1610中に結合される。逆伝搬ビーム1666は、レーザ1601へのフィードバックビーム1667として、結合プリズム1620によって結合される。フィードバックビーム1667は、レーザ1601に進入し、注入同期を介してレーザを共振器1610へと同期させる。
【0094】
共振器1610内のレイリー散乱または外部反射器1640のいずれかに基づいた、非線形共振器1610からの光フィードバックに基づいた上記レーザ同期を確立することができるのは、共振器1610からレーザ1601へのフィードバックビーム1667の光位相が注入同期の位相整合条件を満たす場合である。位相制御機構は、レイリー散乱方式中のフィードバックビーム1667の光経路において実装してもよいし、あるいは、フィードバックビーム1667の光位相の調節および制御のための外部反射器1640を用いたこの方式中の1つ以上のビーム1661、1662、1663、1665、1666および1667の光経路内において実装してもよい。図示のように、この位相制御機構の1つの実施様態において、反射器1540は可動式の鏡であってもよく、ビーム1663の光経路に沿って位置を変更するように制御され、フィードバックビーム1667の光位相を調節することができる。返送ビーム1667の位相も、レーザ1601とカプラ1620との間に配置された位相ロテータ1603、若しくはカプラ1620またはコリメータ1631と外部反射器または鏡1640と間に配置された位相ロテータ1663によって調節することができる。共振器1610内のレイリー散乱および外部反射器1640双方を用いた共同構成も可能である。構成の選択は、動作条件に依存する(例えば、カプラ1620による共振器1610のローディング、共振器1610中のレイリー散乱の強度)。このような同期技術を用いて、PDH同期および他の同期設計の利用に関連する技術的困難を回避することができる。
【0095】
図1中のトリプル発振器デバイスを再度参照することにより、光コム生成について上記した特徴を、多様な構成のトリプル発振器デバイス実装において用いることができる。
【0096】
図17は、単一の光トーン、無線周波数(RF)発振信号および異なる光周波数を有する光コム信号を生成するトリプル発振器デバイスの別の例を示す。この例において、
図1中のレーザ1の代わりに反射増幅器1710を用いる。この反射増幅器1710は例えば半導体増幅器であり、電流によって励起されて、光増幅のための所望の光利得を生成する。増幅器1710は、光を反射し、共振器100からの光を増幅して、反射光を共振器100へと方向付けて共振器100の非線形光学材料と相互作用させて、異なる光周波数を有する光コムを共振器100中に発生させる。光カプラ5は、以下の2つの光結合機能を行う:(1)共振器100内から共振器100の外部への光を、反射増幅器1710へのフィードバックビーム8として結合させること、および(2)反射増幅器1710からの光を共振器100内へと結合させること、である。レーザ搬送波周波数における光を(他の光スペクトルコンポーネントを遮断しつつ)透過させるバンドパスフィルタ4を反射増幅器1710と光カプラ5との間に配置することにより、
図17中のデバイスが反射増幅器1710と共振器100との間の光部分中のレーザ搬送波周波数の光に対して動作することを保証する。反射増幅器1710によって得られる光利得は、反射増幅器1710の反射からの光フィードバックおよび光カプラ5によって生成されたフィードバックビームに基づき、レーザ搬送波周波数における反射増幅器1710と共振器100との間のレーザ発振を確立するのに充分である。
【0097】
図18は、
図1および
図17の単一のカプラ5に基づいた設計が、2つの別個のカプラ5および1810に置き換えられることを示す。この例において、第1のカプラ5を用いて、以下を行う:(1)レーザ1または反射増幅器1710からの光を共振器100中へ結合させること、(2)共振器100内の光を結合させて、レーザ1または反射増幅器1710へ向かう注入フィードバックビームを生成すること、および(3)共振器100内の光を結合させて、出力光ビームを光コムと共に生成すること、である。第2のカプラ1810を用いて、共振器100内の光を結合させる。この光は、フォトダイオード7によって受信され、RFまたはマイクロ波発振信号が生成される。第2のカプラ1810は、多様な構成において実装することができる(例を非限定的に挙げると、いくつかの実施様態におけるエバネッセント光カプラ)。
【0098】
図19は、チップパッケージ中の基板上のトリプル発振器デバイスの一例を示す。基板1901は、光導波路1910を含むかまたは光導波路1910をサポートするように作製される。基板1901は平面の誘電基板であってもよく、適切な材料によって構成される(例えば、半導体材料、ガラス材料)。共振器1940(例えば、非線形WGM共振器)は、導波路1910に光学的に結合され、基板1901上に配置される。レーザまたは反射半導体増幅器1920は、導波路1910の一端上に形成されて、導波路1910内部へ光を方向付けかつ導波路1910からの光を受信する。光共振器1940と光導波路1910との間の光学的な結合により、レーザまたは増幅器1920からの導波路1910中の光を光共振器1940内へと結合させることができ、また、光共振器1940内に閉じ込められた光を光導波路1910内へと結合させて、レーザまたは増幅器1920へと方向付けることができる。導波路フィルタ1930(例えば、Braggグレーチングフィルタ)を導波路1910内に形成し、
図1および
図17に示す光フィルタ4のフィルタリング機能を用いて、共振器1940内に発生した光コム中の選択的光トーンの1つを(光コム中の他の光トーンを遮断しつつ)透過させる。光共振器1940内において発生した光周波数コムは、光周波数コム出力1912として光導波路1910中へ結合される。
【0099】
図19において、レーザまたは増幅器1920と導波路フィルタ1930との間の位置する第1の光導波路カプラ1951は、光導波路1910(例えば、光エバネッセント結合または光グレーチング結合)へと結合されて、導波路1910内の一部の光をCWレーザ出力1952(単一の光トーン出力)として結合させるよう設けられている。第2の光導波路カプラ1953は、光導波路1910の位置に設けられている。この位置において、波路1910中の光は、光共振器1940内部(例えば、
図19に示すように共振器1940の他方の側部上の光導波路1910中の位置)において発生した光周波数コムを有する。この第2の導波路カプラ1953により、導波路1910の一部の内部の光が結合され、これにより、結合光周波数コム信号が基板1901上に形成されたフォトダイオード1960へと方向付けられる。フォトダイオード1960の出力は、RF発振信号である。RFリンク1970を基板1901上に形成することにより、RF発振信号をRFポート1972へと誘導する。
【0100】
図20を参照して、
図1中の設計に基づいたトリプル発振器デバイス中の位相制御機構が提供される。この例において、位相制御機構は、レーザ1と共振器100との間に配置された位相制御部として実装され、また、レーザ1と共振器100との間の光位相を制御して、デバイスを安定させるように構成される。この位相制御により、レーザ搬送波周波数と、(レーザ1の注入同期が行われる)共振器100の対応する共振器モードとの間の周波数離調も変化する。
【0101】
他の実施様態において、光共振器からの光フィードバックに基づいてレーザ発振を維持する反射増幅器がレーザ1の代わりに用いられ、位相制御部により安定したレーザ発振を生成し、出射レーザ光と、反射増幅器のための光フィードバックを生成する共振器モードとの間の周波数差を調整する。
【0102】
位相部のための多様な設計を実装することができる。例えば、位相制御部は、熱ヒータ含み得る。この熱ヒータは、位相部材料の温度を変化させて、例えば位相部材料の反射率または熱膨張を制御し、レーザ1と共振器100との間の光の位相を制御する。この熱位相制御は、位相制御部中の熱反射および熱膨張効果の組み合わせのうちの1つに基づくものであってもよい。別の例として、位相制御部は圧電素子を含み得る。この圧電素子は、付加された電気電圧信号に応答して、レーザ1および共振器100間の光の位相を変化させる。別の例として、位相制御部は、半導体位相シフタを含み得る。この半導体位相シフタは、レーザ1および共振器100間の光の位相を変化させる。さらに別の例において、位相制御部は、調節可能な遅延を生成するように構成される。この調節可能な遅延は、レーザ1および共振器100間の光の位相を変化させる。
【0103】
本文書中には多数の具体的記述が含まれるが、これらの記述は、発明の範囲の制限として解釈されるべきではなく、本発明の特定の実施形態の記載として解釈されるべきである。本文書中に別個の実施形態の文脈内において記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装することも可能である。逆に、単一の実施形態の文脈において記載された多様な特徴を複数の実施形態において別個にまたは任意の適切な別の組み合わせで実装することも可能である。さらに、上記においては、特徴を特定の組み合わせで機能するものとして特許請求の範囲の冒頭にも記載しているが、特許請求に記載される組み合わせからの1つ以上の特徴を組み合わせから実装することもでき、特許請求の範囲に記載の組み合わせは、別の組み合わせまたは別の組み合わせの変更例へ用いることも可能である。
【0104】
数個の実施様態について開示した。本文書に記載および例示される内容に基づいて、記載の実施様態の変更例および改良例ならびに他の実施様態が可能である。