(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883513
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】シームレスパイプ製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B21C 23/21 20060101AFI20160301BHJP
B21C 23/00 20060101ALI20160301BHJP
B21C 23/08 20060101ALI20160301BHJP
B21C 25/02 20060101ALI20160301BHJP
B23K 20/12 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
B21C23/21 Z
B21C23/00 A
B21C23/08 A
B21C25/02 D
B23K20/12 310
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-548671(P2014-548671)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-506841(P2015-506841A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】KR2012011230
(87)【国際公開番号】WO2013095031
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0141066
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0085024
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514159726
【氏名又は名称】コリア オートモーティブ テクノロジー インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】サン シ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ボム サク
(72)【発明者】
【氏名】キム ジン ピョン
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−052711(JP,A)
【文献】
特開2004−322160(JP,A)
【文献】
特開2005−271026(JP,A)
【文献】
特開2000−015457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/21
B21C 23/00
B21C 23/08
B21C 25/02
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被押出材を内部に収容するコンテナと、
前記被押出材の一端部を前記コンテナの内部で圧縮するステムと、
前記ステムの逆方向に設けられ、複数個のポートで構成された押出孔を備えるダイスと、
前記ダイスの前端に設けられ、前記押出孔を通じて排出される複数個の金属ピースが突き合わせられて形成された継手面に挿入される攪拌チップを一面に備え、前記一面を前記継手面に接触した状態で回転して摩擦撹拌接合を行う回転部材と、
前記摩擦撹拌接合に製造された金属パイプを収容して、これを外部に排出する金属パイプ排出経路を含む矯正金型と、
を含むシームレスパイプ製造装置。
【請求項2】
前記金属パイプ排出経路は、
押出方向に沿って前記矯正金型の内部に形成された円柱状の空き空間と前記ダイスの一面の中心部に連結されて、前記押出方向に沿って前記空き空間に比べて、小さな内径を有し、前記空き空間の内部に延びる棒の間に形成された空間である請求項1に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項3】
前記回転部材は、複数個備えられる請求項1に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項4】
被押出材を内部に収容して、ダイス内に備えられた複数個のポートを有する押出孔を通じて複数個の金属ピースを排出させる段階と、
前記複数個の金属ピースを互いに突き合わせて継手面を形成する段階と、
前記継手面に回転部材を直接接触させ、前記回転部材を回転させて、前記複数の金属ピースを摩擦撹拌接合して金属パイプを製造する段階と、
矯正金型の内部に形成された金属パイプ排出経路を通じて前記金属パイプを外部に排出する段階と、
を含むシームレスパイプ製造方法。
【請求項5】
前記押出孔を通じて排出される金属ピースは、所定の曲面を有する形状である請求項4に記載のシームレスパイプ製造方法。
【請求項6】
前記被押出材は、アルミニウム、銅、マグネシウム、鉄鋼素材、及びこれら金属の合金のうち何れか1つを含む請求項4に記載のシームレスパイプ製造方法。
【請求項7】
被押出材を内部に収容するコンテナと、
前記被押出材の一端部を前記コンテナの内部で圧縮するステムと、
前記ステムの逆方向に設けられ、複数個のポートで構成された押出孔を備えるダイスと、
前記ダイスの前端に設けられ、前記押出孔を通じて排出される複数個の金属ピースが突き合わせられて形成された継手面に挿入される攪拌チップを一面に備え、前記一面を前記継手面に接触した状態で回転して摩擦撹拌接合を行う複数個の回転部材と、
前記複数個の回転部材に回動力を分配して伝達する駆動装置と、
前記摩擦撹拌接合に製造された金属パイプを収容して、これを外部に排出する金属パイプ排出経路を含む矯正金型と、
を含むシームレスパイプ製造装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、
単一駆動源と、
前記単一駆動源の回動力を複数個の回転部材に分配して伝達する分配式動力伝達装置と、
を含む請求項7に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項9】
前記単一駆動源は、モータである請求項8に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項10】
前記分配式動力伝達装置は、
前記コンテナを取り囲む形態で回転自在に設けられ、一側が前記回転部材と連結される回転部材側ギアと歯合され、他側が前記駆動源と連結されるリングギアを含む請求項8に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項11】
前記リングギアは、他側が前記駆動源と連結される駆動源側ギアと歯合される請求項10に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項12】
前記リングギアは、他側に前記駆動源と連結される駆動プーリーとベルトで連結される従動プーリーが設けられる請求項10に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項13】
前記リングギアは、他側に前記駆動源と連結される駆動スプロケットホイールとチェーンで連結される従動スプロケットホイールが設けられる請求項10に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項14】
前記分配式動力伝達装置は、
前記駆動源側ギアと前記駆動源との間に一対の傘歯車が設けられる請求項11に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項15】
前記回転部材は、前記リングギアの一側フレームに前記被押出材に向けて複数個が等角配置される請求項10に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項16】
前記分配式動力伝達装置は、
一側に複数個の駆動プーリーが設けられて、複数個の前記回転部材とそれぞれ連結される複数個の回転部材側プーリーと複数個のベルトとによって互いに連結され、他側が前記駆動源と連結される分配回転軸を含む請求項8に記載のシームレスパイプ製造装置。
【請求項17】
前記分配式動力伝達装置は、
一側に複数個の駆動スプロケットホイールが設けられて、複数個の前記回転部材とそれぞれ連結される複数個の回転部材側スプロケットホイールと複数個のチェーンとによって互いに連結され、他側が前記駆動源と連結される分配回転軸を含む請求項8に記載のシームレスパイプ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接押出工程を用いて金属パイプを製造する技術に係り、さらに詳細には、直接押出工程を用いて複数の金属ピース(metal piece)で構成されたパイプを製造しながら、これを摩擦撹拌接合してシームレスパイプを製造することができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出成形とは、金属ビレットのような被押出材をコンテナ内で圧縮させて、押出孔を通じて所定の形状を有する押出材に排出させる成形方法である。このような押出成形には、直接押出法と間接押出法とがある。直接押出法は、被押出材の一端部を押しながら、前記一端部の反対側に配された押出孔を通じて被押出材を排出させて、押出材を製造する方法である。これに対して、間接押出法は、被押出材を押す方向と反対される方向に被押出材を排出させて、押出材を製造する方法である。
【0003】
押出成形を用いて金属パイプを製造することができる。この際、直接押出法を利用する場合には、中空のパイプを製造するために、金型で複数個のポート(port)で構成された押出孔を通過した後で、多数の金属ピース(piece)が再び固体状態での接合が発生して、金属パイプを製造する。この場合、金属パイプの長手方向に沿って固体状態でポートに分離されて、押出孔を通過した金属ピースが互いに接合されながら、接合の跡が生成され、これをシームライン(seam line)と言う。例えば、3つのポートで構成された3つの押出孔の金型の場合には、直接押出工程によって3つのシームラインが押出方向に形成される。このようなシームラインは、押出過程で機械的接合がなされたものであるために、肉眼では接合がなされたように見えるが、実際には、機械的に脆弱な部分であって、金属パイプの内部に流体の圧力が発生する場合には、破損が発生しやすい。
図11には、5000系のアルミニウム合金を直接押出法で製造した金属パイプを熱間ガス成形する拡管過程でシームラインが裂けられた部分(円表示部分)が示されている。これにより、熱間ガス成形過程で金属パイプの内部に高いガス圧力がかかる場合、脆弱な部分であるシームライン領域が、これを耐えることができずに裂けてしまったことを確認することができる。
【0004】
間接押出法による場合は、金属パイプ成形時にポートを経らないために、既存の直接押出工程で必然的に生成される固体状態の接合であるシームラインのないシームレスパイプ(seamless pipe)を製造することができる。しかし、間接押出法は、バッチ(batch)作業からなるので、連続して工程を進行することができず、直接押出法に比べて、大きな力を加えることができない短所がある。
【0005】
押出成形に使われる各種機械装置は、金属パイプの周辺の狭小な場所に設けられるものであって、スペースの制約がある。機械装置は、動力を提供する駆動源があり、このような駆動源は、通常磁力によって動作するモータや作動流体によって動作するシリンダーなどがある。駆動源が多ければ多いほど、場所の限界によって設置が難しくなり、装置の設置コストが増大し、駆動源のそれぞれでエネルギーの無駄遣いが発生して、作業能率が落ちるなどエネルギー効率が大きく低くなる短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点を含んで多様な問題点を解決するためのものであって、直接押出法を通じて押出工程で金型のポートで構成された押出孔を経るために、必然的に形成されるシームラインを金型のポートを経た地点で直ちに摩擦撹拌接合してシームレスパイプを製造する装置、及びその製造方法に関するものである。しかし、このような課題は、例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、被押出材を内部に収容するコンテナと、前記被押出材の一端部を前記コンテナの内部で圧縮するステムと、前記ステムの逆方向に設けられ、複数個のポートで構成された押出孔を備えるダイスと、前記ダイスの前端に設けられ、前記押出孔を通じて排出される複数個の金属ピースが突き合わせられて形成された継手面に挿入される攪拌チップを一面に備え、前記一面を前記継手面に接触した状態で回転して摩擦撹拌接合を行う回転部材と、前記摩擦撹拌接合に製造された金属パイプを収容して、これを外部に排出する金属パイプ排出経路を含む矯正金型と、を含むシームレスパイプ製造装置が提供される。
【0008】
前記金属パイプ排出経路は、押出方向に沿って前記矯正金型の内部に形成された円柱状の空き空間と前記ダイスの一面の中心部に連結されて、前記押出方向に沿って前記空き空間に比べて、小さな内径を有し、前記空き空間の内部に延びる棒の間に形成された空間であり得る。
【0009】
前記回転部材は、複数個備えられうる。
【0010】
本発明の他の観点によれば、被押出材を内部に収容して、ダイス内に備えられた複数個のポートを有する押出孔を通じて複数個の金属ピースを排出させる段階と、前記複数個の金属ピースを互いに突き合わせて継手面を形成する段階と、前記継手面に回転部材を直接接触させ、前記回転部材を回転させて、前記複数の金属ピースを摩擦撹拌接合して金属パイプを製造する段階と、矯正金型の内部に形成された金属パイプ排出経路を通じて前記金属パイプを外部に排出する段階と、を含むシームレスパイプ製造方法が提供される。
【0011】
前記押出孔を通じて排出される金属ピースは、所定の曲面を有する形状であり得る。
【0012】
前記被押出材は、アルミニウム、銅、マグネシウム、鉄鋼素材、及びこれら金属の合金のうち何れか1つを含みうる。
【0013】
本発明のさらに他の観点によれば、被押出材を内部に収容するコンテナと、前記被押出材の一端部を前記コンテナの内部で圧縮するステムと、前記ステムの逆方向に設けられ、複数個のポートで構成された押出孔を備えるダイスと、前記ダイスの前端に設けられ、前記押出孔を通じて排出される複数個の金属ピースが突き合わせられて形成された継手面に挿入される攪拌チップを一面に備え、前記一面を前記継手面に接触した状態で回転して摩擦撹拌接合を行う複数個の回転部材と、前記複数個の回転部材に回動力を分配して伝達する駆動装置と、前記摩擦撹拌接合に製造された金属パイプを収容して、これを外部に排出する金属パイプ排出経路を含む矯正金型と、を含むシームレスパイプ製造装置が提供される。
【0014】
前記駆動装置は、単一駆動源と、前記単一駆動源の回動力を複数個の回転部材に分配して伝達する分配式動力伝達装置と、を含みうる。
【0015】
前記単一駆動源は、モータであり得る。
【0016】
前記分配式動力伝達装置は、前記コンテナを取り囲む形態で回転自在に設けられ、一側が前記回転部材と連結される回転部材側ギアと歯合され、他側が前記駆動源と連結されるリングギアを含みうる。
【0017】
前記リングギアは、他側が前記駆動源と連結される駆動源側ギアと歯合されうる。
【0018】
前記リングギアは、他側に前記駆動源と連結される駆動プーリーとベルトで連結される従動プーリーが設けられる。
【0019】
前記リングギアは、他側に前記駆動源と連結される駆動スプロケットホイールとチェーンで連結される従動スプロケットホイールが設けられる。
【0020】
前記分配式動力伝達装置は、前記駆動源側ギアと前記駆動源との間に一対の傘歯車が設けられる。
【0021】
前記回転部材は、前記リングギアの一側フレームに前記被押出材に向けて複数個が等角配置される。
【0022】
前記分配式動力伝達装置は、一側に複数個の駆動プーリーが設けられて、複数個の前記回転部材とそれぞれ連結される複数個の回転部材側プーリーと複数個のベルトとによって互いに連結され、他側が前記駆動源と連結される分配回転軸を含む。
【0023】
前記分配式動力伝達装置は、一側に複数個の駆動スプロケットホイールが設けられて、複数個の前記回転部材とそれぞれ連結される複数個の回転部材側スプロケットホイールと複数個のチェーンとによって互いに連結され、他側が前記駆動源と連結される分配回転軸を含む。
【発明の効果】
【0024】
前記のようになされた本発明の実施形態によれば、押出が行われるダイス内で多数のポートで構成された押出孔通過時に発生したシームラインを摩擦撹拌接合で接合させて製造するので、シームラインがないながらも、接合部の機械的強度に優れたシームレスパイプを連続して製造することができる。さらに、装置のサイズを減らして、省スペース化を実現し、駆動源の個数を最小化して、エネルギーの無駄遣いを防止し、装置の製造コストを節減することができる。もちろん、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態によるシームレスパイプ製造装置を用いてシームレスパイプを製造する過程を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるシームレスパイプ製造装置に使われるダイスの形態を例示した正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるシームレスパイプ製造装置を用いてシームレスパイプを製造する過程を概略的に示す斜視図である。
【
図4】摩擦撹拌接合の原理を概念的に示す図面である。
【
図5】本発明の一実施形態によるシームレスパイプの製造方法を段階別に示すフローチャートである。
【
図6】従来の方法で製造された金属パイプを熱間ガス成形する過程でシームラインが裂けられた部分を示す写真である。
【
図7】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施形態によって製造されたアルミニウムチューブの接合部及び従来の方法によって製造されたアルミニウムチューブの接合部を観察した結果である。
【
図8】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す断面図である。
【
図9】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図10】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図11】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図12】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図13】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図14】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図15】本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明すれば、次の通りである。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現可能なものであって、以下の実施形態は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。また、説明の便宜上、図面では、構成要素がそのサイズが誇張または縮小されうる。
【0027】
以下の実施形態で、x軸、y軸、及びz軸は、直交座標系上の3つの軸に限定されず、それを含む広い意味として解釈されうる。例えば、x軸、y軸、及びz軸は、互いに直交することもできるが、互いに直交しない互いに異なる方向を称することもできる。
【0028】
図1には、本発明の一実施形態によるシームレスパイプ製造装置100の概略的な断面図が示されている。
【0029】
図1を参照すれば、被押出材130を装入するためのコンテナ110が提供されうる。例えば、被押出材130は、金属ビレット(billet)形態でコンテナ110内に装入されうる。コンテナ110は、被押出材130を収容できるように多様な形状の内部構造及び外形を有しうる。したがって、被押出材130及びコンテナ110の形状は、多様に変形され、本実施形態の範囲を制限しない。
【0030】
ステム(stem)112は、コンテナ110内の被押出材130を押し込んで圧縮させるようにコンテナ110内に配置される。例えば、被押出材130の効果的な圧縮のために、ステム112の外形は、コンテナ110の内部形状に合わせられうる。他の例として、ステム112の外形は、内部孔115の形状と一致しないこともあり、この場合、被押出材130の一部がコンテナ110内で圧縮されずに残留することができる。ステム112は、ラム(ram)または圧縮機とも呼ばれ、その用語及び形状によって、本実施形態の範囲が制限されるものではない。
【0031】
ダイス114は、ステム112の反対側のコンテナ110の前端に結合されうる。例えば、ステム112、コンテナ110、及びダイス114は、一列に、例えば、
図1のX軸方向に配列されて結合されうる。このようなX軸方向が、被押出材130の押出方向になりうる。本実施形態の変形された例で、ステム112、コンテナ110、及びダイス114が、一列に配列されないこともあり、この場合、押出方向は、主にダイス114を基準に決定されうる。
【0032】
ダイス114は、被押出材130の押出形状を限定する押出孔116を有しうる。この際、押出孔116は、互いに分離された複数個のポートで構成することができる。
図2の(a)及び
図2の(b)には、複数個のポートからなる押出孔116の形態が例示されている。例えば、
図2の(a)の押出孔116は、2個のポート116a、116bからなり、
図2の(b)の押出孔116は、3個のポート116a、116b、116cで構成されている。
【0033】
押出孔116の形状は、
図2に示されたように、パイプの一部を成す曲面を有する形状を有しうる。
【0034】
このような複数個のポートからなる押出孔116を通じて被押出材130を複数個の金属ピース132に排出する。例えば、
図2の(a)は、2個の金属ピースが排出され、
図2の(b)は、3個の金属ピースが排出される。
【0035】
このようなダイス114の前端には、押出孔116を通じて排出される金属ピース132を接合させるための摩擦撹拌接合装置が備えられうる。具体的に、摩擦撹拌接合装置は、複数個の金属ピース132が互いに接触された領域に集積接触可能な回転部材118a、118b、及び回転部材118a、118bに回動力を伝達することができる駆動装置120を含む。この際、回転部材118a、118bの一面として、金属ピース132が接する面には、攪拌チップ119a、119bが形成されている。
【0036】
摩擦撹拌接合は、接合母材を溶融させないとしても、互いに接合させる方法であって、
図4には、摩擦撹拌接合の原理が示されている。
図4を参照すれば、分離された接合母材400a、400bを互いに突き合わせて形成した継手面410に沿って接合母材400a、400bに比べて、軽い材質を有した回転部材420が提供される。この際、回転部材420の端部には、攪拌チップ422が形成されている。攪拌チップ422は、円形棒状を有し、継手面410に挿入される。攪拌チップ422を継手面420に挿入した後、回転部材420を高速で回転させながら、継手面410に沿って移動させる。この際、回転部材420と連結された攪拌チップ422が回転しながら、摩擦熱を発生させれば、これにより、継手面410の周辺が軟化されて、攪拌チップ422の撹拌による接合母材の塑性流動で接合母材の溶融が起こっていない状態で接合母材が強制的に混合される。このような混合によって、接合母材400a、400b間の接合部430が形成され、継手面410に沿って接合が起こる。
【0037】
このような摩擦撹拌接合は、溶融が起こっていない状態で接合がなされる固相接合であって、接合部は、接合による変形がほとんどない。また、溶融溶接で発生しやすい気孔、亀裂などの欠陷がほとんど発生しないので、接合部の機械的強度に優れている。
【0038】
図3には、このような摩擦撹拌接合によって金属ピースを接合する過程が示されている。
図1及び
図3を参照すれば、押出孔を通じて排出された2個の金属ピース132a、132bは、押出方向(+x方向)に相互平行に進行しながら、互いに突き合わせられ、継手面133を形成する。このような継手面133の上部及び下部には、垂直方向に移動可能な回転部材118a、118bが配されており、このような回転部材118a、118aをそれぞれ垂直移動させて、継手面133に接触させる。接触された回転部材118a、118bは、駆動装置120によって駆動力を伝達されて回転しながら、2個の金属ピース132a、132bを摩擦撹拌接合させる。
【0039】
この際、コンテナ110の内部のステム112は、被押出材130を圧縮し続けて、押出孔116を通じて金属ピース132a、132bを排出させるので、金属ピース132a、132bは、回転部材118a、118bに対して相対的に押出方向(+x方向)に連続して移動する。
【0040】
このような移動によって、継手面133は、押出方向(+x方向)に沿って引き続き接合が起こり、このように接合された金属パイプは、連続して矯正金型123に進入する。矯正金型123は、回転部材118a、118bによって接合された金属パイプを外部に安定して排出させるための金型である。
【0041】
この際、矯正金型123は、押出方向(+x)方向に沿って内部に形成された円柱状の空き空間121とダイス114の一面の中心部に連結されて、押出方向(+x方向)に沿って空き空間121に比べて、小さな内径を有し、前記空き空間の内部に延びる棒122の間に形成された空間からなる金属パイプ排出経路を有する。したがって、押出によって押出孔116を通じて排出された金属ピース132a、132bが、回転部材118a、118bによって摩擦撹拌接合された後、矯正金型123の金属パイプ排出経路を通じて外部に排出される。
【0042】
摩擦撹拌接合直後の金属パイプの円周面には、摩擦撹拌接合過程から発生した接合跡及びバリ(burr)が発生しうるが、本発明の実施形態によって、矯正金型123内に形成された金属パイプ排出経路を通じて排出する場合には、接合跡及びバリの発生を防止させうる。また、矯正金型123を通過する過程中に金属パイプは、矯正によって直径が少し、例えば、約5%内外で減少することができる。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態によるシームレスパイプの製造方法を段階別に示すフローチャートである。
【0044】
図5を参照すれば、まず、被押出材130をコンテナ110の内部に装入させる(ステップS1)。この際、被押出材130は、金属ビレット形態でコンテナ110内に装入されうる。被押出材130は、アルミニウム、銅、マグネシウム、及びこれらの合金であるか、鉄鋼素材であり得る。
【0045】
この際、被押出材130は、所定の温度で加熱して軟化させた後、コンテナ110に装入されうる。あるいはコンテナ110は、装入された被押出材130を加熱するための加熱装置(図示せず)を用いて押出成形前にコンテナ110の内部で加熱して軟化させることができる。
【0046】
次に、ステム112を用いて被押出材130の一端部を加圧しながら、ダイス114に備えられた複数のポートを備えた押出孔116を通じて金属ピース132a、132bを複数個排出させる(ステップS2)。この際、金属ピース132a、132bの形状は、押出孔116によって限定されるので、押出孔116の形状によって所定の曲面を有する形状であり得る。
【0047】
次に、金属ピース132a、132bを互いに接触させて継手面133を形成し、継手面133に回転部材118a、118bを直接接触させた後、回転部材118a、118bを回転させて、金属ピース132a、132bを摩擦撹拌接合させる(ステップS3)。
【0048】
次に、摩擦撹拌接合によって製造された金属パイプは、矯正金型123の金属パイプ排出経路を通じて外部に排出される(ステップS4)。
【0049】
この際、押出孔116を通じて連続して金属ピース132a、132bが押出方向(+x方向)に排出されるので、金属ピース132a、132bは、回転部材118a、118bに対して相対的に押出方向(+x方向)に移動する。これにより、継手面133は、回転部材118a、118bによって押出方向(+x方向)に沿って連続して摩擦撹拌接合がなされる効果が表われる。したがって、押出成形が実質的に完了するまで連続してパイプを製造することができる。
【0050】
このような本発明の一実施形態による場合、押出された金属ピースを摩擦撹拌接合法で接合させて製造するので、シームラインがないながらも、接合部の機械的強度に優れたシームレスパイプを連続して製造することができる。
【0051】
図7の(a)は、本発明の実施形態によって、摩擦撹拌溶接によって製造された5000系アルミニウム合金のチューブの接合部を観察した結果であり、
図7の(b)は、比較例として、一般的な従来の直接押出によって製造された5000系アルミニウム合金チューブのシームラインを観察した結果である。
図7の(a)及び
図7の(b)を参照すれば、従来の方法による場合には、シームライン(
図7の(b)の矢印)が観察されることに比べて、本発明の実施形態による場合には、如何なるシームラインも観察されないということが分かる。
【0052】
図8及び
図9には、本発明のさらに他の実施形態によるシームレスパイプ製造装置100が示されている。本実施形態によるシームレスパイプ製造装置100は、
図1ないし
図4のシームレスパイプ製造装置で一部構成を変形または付け加えたものであり、したがって、これら実施形態で重複された説明は省略する。
【0053】
図8を参照すれば、被押出材130を装入するためのコンテナ110が提供されうる。コンテナ110は、被押出材130を収容できるように多様な形状の内部構造及び外形を有しうる。ステム112は、コンテナ110内の被押出材130を押し込んで圧縮させるようにコンテナ110内に配置される。ダイス114は、ステム112の反対側のコンテナ110の前端に結合されうる。
【0054】
ダイス114は、被押出材130の押出形状を限定する押出孔116を有しうる。この際、押出孔116は、互いに分離された複数個のポートで構成することができる。複数個のポートからなる押出孔116の形態は、非常に多様である。
【0055】
このような複数個のポートからなる押出孔116を通じて被押出材130を複数個の金属ピース132に排出する。このようなダイス114の前端には、押出孔116を通じて排出される金属ピース132を接合させるための摩擦撹拌接合装置が備えられうる。具体的に、摩擦撹拌接合装置は、複数個の金属ピース132が互いに接触された領域に集積接触可能な回転部材118a、118b、及び回転部材118a、118bに回動力を伝達することができる駆動装置120を含む。この際、回転部材118a、118bの一面として、金属ピース132が接する面には、攪拌チップ119a、119bが形成されている。
【0056】
図8及び
図9を共に参照すれば、本発明の一部実施形態は、前記複数個の回転部材118a、118bに回動力を分配して伝達する駆動装置120が提供されうる。前記駆動装置120は、単一駆動源120−2、及び前記単一駆動源120−2の回動力を複数個の回転部材118a、118bに分配して伝達する分配式動力伝達装置120−1を含みうる。ここで、前記単一駆動源120−2は、モータであることを図示したが、それ以外にも、作動流体によって動作するシリンダーやリニアモータなど各種駆動源が適用可能である。
【0057】
前記分配式動力伝達装置120−1は、前記コンテナ110を取り囲むリング状にベアリング(B)によって回転自在に設けられ、一側が前記回転部材118a、118bと連結される回転部材側ギア120−15と歯合され、他側が前記駆動源120−2と連結されるリングギア120−14を含みうる。前記リングギア120−14は、他側が前記駆動源120−2と連結される駆動源側ギア120−13と歯合され、前記分配式動力伝達装置120−1は、前記駆動源側ギア120−13と前記駆動源120−2との間に一対の互いに歯合される傘歯車120−11、120−12が設けられうる。
【0058】
このような分配式動力伝達装置120−1の作動関係を見れば、
図9に示したように、前記単一駆動源120−2が、前記傘歯車120−11を回転させれば、これと歯合される前記傘歯車120−12が回転しながら、これと連結された前記駆動源側ギア120−13が回転する。引き続き、前記駆動源側ギア120−13は、前記リングギア120−14を回転させ、前記リングギア120−14は、これと歯合された2個の前記回転部材側ギア120−15を同時に回転させる。したがって、前記回転部材側ギア120−15の回転と共に前記回転部材118a、118bが回転しながら、金属ピースを摩擦撹拌接合することができる。
【0059】
図9を参照すれば、前記回転部材118a、118bは、前記リングギア120−14の一側フレームに前記被押出材130に向けて2個が180°に等角配置され、それ以外にも、
図10を参照すれば、前記回転部材118a、118b、118cは、前記リングギア120−14の一側フレームに前記被押出材130に向けて3個が120°に等角配置されるか、
図11を参照すれば、前記回転部材118a、118b、118c、118dは、前記リングギア120−14の一側フレームに前記被押出材130に向けて4個が90°に等角配置されうるなど、前記回転部材は、多様な個数で設けられうる。
【0060】
図12は、本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置200を概略的に示す斜視図である。
図12を参照すれば、前記リングギア120−14は、他側に前記駆動源120−2と連結される駆動プーリー120−18とベルト120−17で連結される従動プーリー120−19が設けられうる。
【0061】
このような分配式動力伝達装置120−3の作動関係を見れば、
図12に示したように、前記単一駆動源120−2が、前記駆動プーリー120−18を回転させれば、前記ベルト120−17によって、前記従動プーリー120−19が回転して、前記リングギア120−14が回転する。引き続き、前記リングギア120−14は、これと歯合された2個の前記回転部材側ギア120−15を同時に回転させる。したがって、前記回転部材側ギア120−15の回転と共に前記回転部材118a、118bが回転しながら、金属ピースを互いに摩擦撹拌接合することができる。
【0062】
図13は、本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置300を概略的に示す斜視図である。
図13を参照すれば、前記リングギア120−14は、他側に前記駆動源120−2と連結される駆動スプロケットホイール120−21とチェーン120−20で連結される従動スプロケットホイール120−22が設けられうる。
【0063】
このような分配式動力伝達装置120−4の作動関係を見れば、
図13に示したように、前記単一駆動源120−2が、前記駆動スプロケットホイール120−21を回転させれば、前記チェーン120−20によって、前記従動スプロケットホイール120−22が回転して、前記リングギア120−14が回転する。引き続き、前記リングギア120−14は、これと歯合された2個の前記回転部材側ギア120−15を同時に回転させる。したがって、前記回転部材側ギア120−15の回転と共に前記回転部材118a、118bが回転しながら、金属ピースを互いに摩擦撹拌接合することができる。
【0064】
図14は、本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置400を概略的に示す斜視図である。
図14を参照すれば、前記分配式動力伝達装置120−5は、一側に複数個の駆動プーリー120−24、120−24が設けられて、複数個の前記回転部材118a、118bとそれぞれ連結される複数個の回転部材側プーリー120−26、120−26と複数個のベルト120−23、120−23とによって互いに連結され、他側が前記駆動源12−2と連結される分配回転軸120−25を含みうる。
【0065】
このような分配式動力伝達装置120−5の作動関係を見れば、
図14に示したように、前記単一駆動源120−2が、前記分配回転軸120−25を回転させれば、前記分配回転軸120−25と共に前記2個の駆動プーリー120−24、120−24が同時に回転しながら、前記2個のベルト120−23、120−23によって、前記回転部材側プーリー120−26、120−26が回転する。したがって、前記回転部材側プーリー120−26、120−26の回転と共に前記回転部材118a、118bが回転しながら、金属ピースを互いに摩擦撹拌接合することができる。
【0066】
図15は、本発明の一部実施形態によるシームレスパイプ製造装置500を概略的に示す斜視図である。
図15を参照すれば、前記分配式動力伝達装置120−6は、一側に複数個の駆動スプロケットホイール120−28、120−28が設けられて、複数個の前記回転部材118a、118bと連結される複数個の回転部材側スプロケットホイール120−27、120−27と複数個のチェーン120−29、120−29とによって連結され、他側が前記駆動源120−2と連結される分配回転軸120−30を含みうる。
【0067】
このような分配式動力伝達装置120−6の作動関係を見れば、
図15に示したように、前記単一駆動源120−2が、前記分配回転軸120−30を回転させれば、前記分配回転軸120−30と共に前記2個の駆動スプロケットホイール120−28、120−28が同時に回転しながら、前記2個のチェーン120−29、120−29によって、前記回転部材側スプロケットホイール120−27、120−27が回転する。したがって、前記回転部材側スプロケットホイール120−27、120−27の回転と共に前記回転部材118a、118bが回転しながら、金属ピースを互いに摩擦撹拌接合することができる。
【0068】
一方、前述した実施形態の変形例として、リングギア120−14が、プーリー、チェーン、傘歯車のような中間連結手段を省略し、単一駆動源120−2に直接連結されて回転することもできる。
【0069】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これにより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、シームレスパイプ製造装置及び製造方法関連の技術分野に適用可能である。