(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883600
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】応答時間の速い作動によって膜を変形できる膜デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20160301BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
G02B26/08 J
G02B3/14
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-204448(P2011-204448)
(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公開番号】特開2012-68638(P2012-68638A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2014年9月17日
(31)【優先権主張番号】1057552
(32)【優先日】2010年9月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ボリ
【審査官】
鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−113358(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0118414(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0195213(US,A1)
【文献】
特表2010−533887(JP,A)
【文献】
特開2008−122909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00 − 26/08
G02B 3/12 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜(1)と実質的に一定の量の流体(4)を収容するキャビティを画成する支持材(2)とを有し、前記膜(1)は前記支持材(2)の周辺にある固着領域(1.1)、前記流体(4)の変位が生じたときに可逆的に変形することができる中心領域(1.3)、および前記固着領域(1.1)と前記中心領域(1.3)との間の作動領域(1.2)を備え、応力を前記作動領域(1.2)内の前記膜(1)に印加し、作動が生じたときに前記中心領域(1.3)への前記流体(4)の変位を引き起こすことが意図されている作動手段(8)を併せ持つデバイスであって、前記キャビティは前記中心領域(1.3)のレベルにおける主チャンバー(5.1)および前記主チャンバー(5.1)と連通している前記作動領域(1.2)のレベルにおける周辺チャンバー(5.2)を有し、それに加えて、前記周辺チャンバー(5.2)は作動が生じたときに前記周辺チャンバーから前記主チャンバー(5.1)への、またはその逆の方向の前記流体(4)のうちの少なくとも一部の流体の流れを促すように前記主チャンバー(5.1)と連通している少なくとも1つの強制流構造(9)を備え、前記流体の残りは前記強制流構造(9)を通ることなく前記周辺チャンバー(5.2)から前記主チャンバー(5.1)へ、またはその逆の方向に移動し、所定の強制流構造(9)は、前記支持材(2)または前記膜(1)のいずれかに固定されていることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記キャビティ(5)は、側部(7)と底部(6)とによって前記支持材(2)内に画成され、前記強制流構造(9)は、前記側部(7)から前記主チャンバー(5.1)の方向に前記周辺チャンバー(5.2)内に突き出ている穿孔壁(9.1)を備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記作動手段(8)は、接触領域内で前記作動領域(1.2)内の前記膜と接触する複数のアクチュエータを備え、前記穿孔壁(9.1)は、接触領域に面する少なくとも1つのオリフィス(9.2)を備える請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記穿孔壁(9.1)は、多数のオリフィスを有するいくつかの領域(9.20)と、オリフィスを有さない少なくとも1つの領域(9.21)とを備える請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記穿孔壁(9.1)は、前記作動手段(8)の少なくとも1つの電極(8.2)を有し、この電極は、前記膜(1)によって支持される別の電極(8.1)の反対側にある請求項2から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記穿孔壁(9.1)は、前記キャビティ(5)の前記底部(6)よりも前記作動領域(1.2)の方に近い請求項2から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記支持材(2)は、前記キャビティ(5)の底部(6)を形成し、前記強制流構造(9)は、前記作動領域(1.2)内の前記膜(1)の中に組み込まれた、および/または前記作動領域(1.2)に面する前記底部(6)内に組み込まれた、および/または前記作動手段(8)が前記流体(4)と接触している場合には前記作動手段(8)内に組み込まれた、複数のチャネル(9.10)を備え、これらのチャネル(9.10)は、前記周辺チャンバー(5.2)から前記主チャンバー(5.1)へ方向付けられている請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記チャネル(9.10)は、前記主チャンバー(5.1)の中心に対して放射状に方向付けられている請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記強制流構造(9)は、少なくとも1つの半径方向に直交するチャネル(9.12)も有する請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記チャネル(9.10、9.12)は、前記支持材(2)の前記底部(6)内に形成されており、前記支持材(2)の底部が多層である場合、前記チャネルは全体的にまたは部分的に、前記底部の表面層(2.1)内に形成される請求項7から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記チャネル(9.10、9.12)は、前記膜(1)の前記作動領域(1.2)内に形成され、前記作動領域(1.2)は、前記中心領域(1.3)に比較して厚くすることができる請求項7から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記膜(1)は、前記チャネル(9.10、9.12)が形成されている前記作動領域(11.2)内に層(10.1、10.2)の積み重ねを有し、この積み重ねは、前記固着領域(1.1)内に少なくとも部分的に延入しうる請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記チャネル(9.10、9.12)は、前記底部に接続されている前記作動手段(8)によって、および/または前記流体(4)と接触している前記膜(1)に接続されている前記作動手段(8)によって画成され、前記チャネル(9.10、9.12)は、前記底部(6)、または前記膜(1)に、それぞれ食い込むか、または露出することができる請求項7から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記底部(6)内に配置されている前記チャネル(9.10)は、前記主チャンバー(5.1)へと進入している請求項7から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記チャネル(9.10)は、前記主チャンバー(5.1)内に配置されている前記底部(6)によって支持される凹み(9.11)内に現れている請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記底部(5)は、前記主チャンバー(5.1)に対向する前記周辺チャンバー(5.2)内に周辺ピット(5.10)を有し、前記チャネル(9.10)は、前記底部(5)内に形成されるときに前記ピット内に現れる請求項7から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
ミラーまたはレンズであることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスを含むことを特徴とする撮像デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を閉じ込める変形可能な膜を備え、その曲率半径を調整するために膜を作動させる手段を有するデバイスに関するものである。これらのデバイスは、可変焦点距離液体レンズ、能動的光学系の光学収差の補正用の液体レンズ、画像安定化デバイス、または可変焦点距離ミラーとして使用されうる。液体レンズは、例えば、写真デバイスまたはカメラ機能を備える携帯電話において使用することができる。多くの開発が進行中であり、特にオートフォーカス機能およびズーム機能がそうである。他の応用は、赤外線スペクトル(IR)で動作するカメラに関するものである。進歩の速度は、集積化とともに遅くなり、したがって、ほとんどの場合、光学系はカメラから分離されている。いくつかの開発が進行中であり、特に、光学系の集積化(カメラモジュールの作成)、オートフォーカス機能の集積化などがそうである。現状では、関連する技術的解決法は知られておらず、まだ確定していない。
【0002】
変形可能な膜ミラーの応用では、膜は反射性を有する。ミラーの焦点距離、したがって曲率半径を調整することも望ましい。そのようなミラーは、眼科、または能動的光学系において使用されうる。最後に、これらの光学デバイスは、レンズであろうと、ミラータイプのものであろうと、像を安定させるために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
変形可能な膜を備えるこのようなデバイスを示す、特許文献1から4が知られている。
図1を参照すべきであるが、これは、知られている光学膜デバイスの断面の概略を示している。このデバイスでは、所定の温度範囲および所定の周囲圧力範囲について、固着領域1.1内の支持材2に取り付けられた膜1は、実質的に一定の体積の流体4を閉じ込めるのを助ける。流体4は、支持材2に固着された膜1によって閉じ込められる。次いで、支持材2および膜は、支持材2にある底部6と支持材2が凹んでいれば場合により側面7を持つキャビティ5を形成する。したがって、膜1は、支持材2から始まって、その周囲に固着領域1.1、それに続く作動手段8が作用する作動領域1.2を有し、これは固着領域1.1によって囲まれている。この後に、中心領域1.3があり、これは作動領域1.2によって囲まれ、その曲率を調整することが望ましい。中心領域1.3は、得られた光学デバイスの光場に等しい。
【0004】
これらが作動して静止位置から動作位置へ移ると、作動手段8は、膜1によって閉じ込められている流体4の厚さをその水平面まで減らそうとし、中心領域1.3への流体4の変位を生じさせ、それにより膜1が変形し、凸形状をとる。膜1は、多くの断面図において、静止状態については点線で、動作位置については実線で表されている。矢印は、流体4の移動を示している。固着領域1.1への流体4の移動は、側面7の近接、および固着により、著しいものではない。
【0005】
膜1は、作動が終わり、作動手段8がその静止位置に戻ったときに、その中心領域1.3の変形が可逆であるように十分な柔軟性を有する。これは、漏れないように閉じ込められる、流体4への障壁を形成する。膜1の主要面の1つは、キャビティ5内に閉じ込められている流体4と接触している。
【0006】
作動手段8は、
図1に例示されているように、静電方式とすることができ、膜1とキャビティ5の底部6の両方に分配されうる。一変更形態として、これらは圧電方式、熱バイモルフ方式、または磁気方式とすることができる。すべての構成において、これらは膜1の作動領域1.2に作用し、静止時にこの領域に接続される場合も、接続されない場合もある。作動時に、作動手段8は、膜1の作動領域1.2の全体と接触するか、またはその一部とのみ接触する。
【0007】
膜デバイスがレンズである場合、膜は、少なくともその中心部において、また中心領域に面する支持材は、レンズを通して伝搬することが意図されている光ビームを通す。
【0008】
膜デバイスが、ミラーである場合、膜は、少なくともその中心領域において、入射光ビームを反射する。
【0009】
作動領域1.2に実質的に等しい、流体の変位を引き起こす領域が作動領域1.2内の膜1によって閉じ込められる流体4の厚さに比べて大きな寸法を有する構成では、流体4が中心領域1.3に流れることは困難である。
【0010】
流体4は、作動される膜1と連携する作動手段8の部分とキャビティ5の底部6との間に閉じ込められ、したがって、流体4は、中心領域1.3へゆっくりと流れる。このような困難は、膜デバイスの応答時間に直接的な影響を及ぼす。
【0011】
それに加えて、このタイプの膜デバイスでは、大量の流体4を移動させ、したがって膜1の実質的な変形をもたらすために、作動手段8と膜との間の広い接触領域を利用することは有利である。そのため、焦点距離の大きな変動が生じうる。逆に、作動手段8に垂直な流体4の量を減らすことも等しく有利である。静電方式の作動手段8の場合、少なくとも一対の対向電極があり、そのうちの一方は移動可能であり、膜1の側部において8.1として参照されており、他方は固定され、キャビティ5の底部6の側部において8.2として参照されている。所定の制御電圧および所定のエネルギー消費レベルに対して、その対の電極8.1、8.2の間の距離が小さければ小さいほど、発生する静電気力は大きくなり、また変形の幅も大きくなる。したがって、その対の2つの電極8.1、8.2の間の間隔を、したがってこれら2つの電極8.1、8.2の間の空間を占有する流体4の厚さを最小にすることが有利である。前記の主張は、もちろん、その対の2つの電極8.1、8.2の間に、流体4の求められている変位を引き起こすのに十分な流体4があれば、正しい。
【0012】
作動手段8のタイプが何であれ、膜デバイスの向きによって流体4が膜1にかかる重力のために圧力を加える場合に、膜1によって閉じ込められた流体4の量を、膜によって加えられる圧力が制限されるように最小にすることが有利であると思われる。所定の膜1の剛性について、膜デバイスの耐衝撃性を改善するために、流体4の量を制限することも有利である。
【0013】
作動手段8のタイプがどのようなものであれ、意識せずに引き起こされる焦点距離の変動を制限するために、流体4の量を最小にして実質的な温度および/または圧力の変動によって引き起こされる流体4の体積の変動を制限することも有利であると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2,919,073号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2,919,074号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2,930,352号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2,938,349号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、実際には、上述の不利点を有していない膜デバイスを提供することである。
【0016】
目的の1つは、特に、作動が生じたときに膜の変形の大きな振幅を保持しながら、増加した応答時間を有する膜デバイスを提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、静電気方式の作動手段を有しているときに、小さなエネルギー消費でこのように大きな変形振幅を得ることを可能にする膜デバイスを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる他の目的は、衝撃力に強い膜デバイスを提供し、流体に対する重力の効果が膜を損傷する危険をもたらさないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的を達成するために、本発明では、作動が生じたときに流体の一部からの流れを膜の中心領域へ強制し、膜の作動の領域に作用させてこの流れを円滑にし、加速することを提案する。
【0020】
より具体的には、本発明では、膜と実質的に一定の量の流体を収容するキャビティを画成する支持材とを備えるデバイスであって、膜は支持材の周辺にある固着領域、流体の変位が生じたときに可逆的に変形することができる中心領域、および固着領域と中心領域との間の作動領域を有し、応力を作動領域内の膜に印加し、作動が生じたときに中心領域への流体の変位を引き起こすことが意図されている作動手段を併せ持つ、デバイスを実現する。本発明によれば、キャビティは、中心領域のレベルにおける主チャンバーおよび主チャンバーと連通している作動領域のレベルにおける周辺チャンバーを有し、それに加えて、周辺チャンバーは、周辺チャンバーから主チャンバーへの、またはその逆の方向の流体のうちの少なくとも一部の流体を促すように主チャンバーと連通している少なくとも1つの強制流構造を備え、その流体の残りが、強制流構造を通ることなく、周辺チャンバーから主チャンバーへ、またはその逆の方向に移動した場合に、作動が生じ、所定の強制流構造は支持材と膜の両方へ固定されていない。
【0021】
作動手段は、膜の対称的変形が例えば可変焦点調整機能を実現するか、または非対称的変形が例えば像安定化機能を実現できるように設計される。
【0022】
キャビティが、側部と底部とによって支持材内に画成される場合、強制流構造は、側部から主チャンバーの方向に周辺チャンバー内に突き出ている穿孔壁を備えることができる。
【0023】
作動手段が、接触領域内で作動領域内の膜と接触する複数のアクチュエータを備える場合、穿孔壁は、接触領域に面する少なくとも1つのオリフィスを備えることができる。強制流構造の効率は、この手段によって高められる。
【0024】
一変更形態として、穿孔壁は、多数のオリフィスを有する複数の領域と、オリフィスを有さない少なくとも1つの領域とを備えることができ、多数のオリフィスを有する1つまたは複数の領域に対向する作動領域内で膜に作用することができ、オリフィスを有さない領域内では作用できない。
【0025】
穿孔壁に、静電タイプの作動手段の少なくとも1つの電極を装着することによって、この電極が膜によって支持されている別の電極の反対側にある場合、これにより、2つの電極の間の流体の厚さを減らし、その作動手段を同じエネルギー消費量でより効率的なものにすることが可能である。
【0026】
同じ目的で、穿孔壁はキャビティの底部よりも作動領域に近い方が好ましい。
【0027】
一変更形態として、組み合わせにより、支持材はキャビティに対して底部を形成するが、強制流構造は、作動領域内の膜の中に組み込まれた、および/または作動領域に面する底部内に組み込まれた、および/または作動手段内に組み込まれた複数のチャネルを、これらが流体と接触している場合に、備えているものとしてよく、これらのチャネルは、周辺チャンバーから主チャンバーに方向付けられる。強制流構造の効率を改善するために、チャネルは、好ましくは、主チャンバーの中心に対して放射状に方向付けられる。
【0028】
さらに、強制流構造は、少なくとも1つの半径方向直交チャネルを含み、作動領域の一部だけを対象とする作動が生じたときに、作動を受ける作動領域の一部分が関わる周辺チャンバーの一部から周辺チャンバーおよび主チャンバーの残り部分へ可能な限り速やかに流体を排出できる可能性がある。
【0029】
これらのチャネルは、支持材の底部に形成することができ、支持材の底部が多層である場合、チャネルは全体的にまたは部分的に、底部の表面層内に形成することができる。
【0030】
チャネルは、膜の作動領域内に形成することができ、作動領域は、有利には、中心領域に関して厚みがある。
【0031】
膜は、作動領域内に多数の層を重ねた積層を備えることができ、その中にチャネルが形成され、この積層は少なくとも部分的に固着領域内に延在しうる。
【0032】
強制流構造が作動手段内に組み込まれている場合、チャネルは、底部に接続されている作動手段によって、および/または流体と接触している膜に接続されている作動手段によって画成され、チャネルは、底部または膜にそれぞれ食い込むか、または露出することができる。
【0033】
底部内に配置されているチャネルを、ここでもまたデバイスの応答時間を短くすることを目的として、主チャンバーに貫通させることができる。
【0034】
チャネルは、主チャンバー内に配置されている底部によって支持されている凹み内へ開いているものとしてよく、これにより、デバイスの中心に流れやすくなる。
【0035】
底部は、主チャンバーの反対側にある周辺チャンバー内に周辺ピットを備えることができ、チャネルは、底部内に形成されたときにピット内に開く。そのようなデバイスの技術的な集積化および製造は、これにより円滑に行える。
【0036】
発明の主題を形成する膜デバイスは、ミラーもしくはレンズとすることができる。
【0037】
本発明は、こうして特徴付けられた膜デバイスを含む撮像デバイスに関するものでもある。
【0038】
本発明は、添付の図面を参照し、単に表示として与えられ、決して限定的でない、実施形態の例の説明を読むことで理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2A】穿孔壁を持つ強制流構造を備える本発明の主題を形成する膜デバイスを示す図である。
【
図2B】さまざまな穿孔壁の実施形態を示す図である。
【
図2C】さまざまな穿孔壁の実施形態を示す図である。
【
図3A】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の断面である。
【
図3B】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の断面図である。
【
図3C】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の断面図である。
【
図3D】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の上面図である。
【
図3E】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の断面図である。
【
図3F】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の断面図である。
【
図3G】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の上面図である。
【
図3H】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の上面図である。
【
図3I】キャビティの底部と連携する強制流構造のさまざまな変更形態の上面図である。
【
図4A】キャビティの底部内に組み込まれた強制流構造を備え、また静電方式の作動手段を備える、本発明の主題を形成する膜デバイスの断面図である。
【
図5A】膜内に組み込まれた強制流構造を備え、また静電方式の作動手段を備える、本発明の主題を形成する膜デバイスの断面図である。
【
図6A】キャビティの底部の側部から静電方式の作動手段内に組み込まれた強制流構造を備える本発明の主題を形成する膜デバイスの断面図である。
【
図6C】膜の側部から静電方式の作動手段内に組み込まれた強制流構造を備える本発明の主題を形成する膜デバイスの断面図である。
【
図7A】膜の側部から圧電タイプ、熱バイモルフ方式、または磁気方式の作動手段内に組み込まれた強制流構造を備える本発明の主題を形成する膜デバイスの断面図である。
【
図8A】本発明の主題を形成する膜デバイスを装着した撮像デバイスを示す図である。
【
図8B】本発明の主題を形成する膜デバイスを装着した撮像デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
周知の構造については、本発明をわかりにくくしないため詳しく表していない。
一方の図から次の図へと簡単に移行できるように、下記の異なる図の同一の、類似の、または同等の部分には、同じ参照符号を付す。
図に表されているさまざまな部分は、図を判読しやすくするために必ずしも均一な縮尺で表されていない。
【0041】
そこで
図2Aから2Cを参照すると、本発明の主題を形成する膜デバイスの第1の実施形態がさまざまな角度から示されている。この第1の実施形態では、支持材2は凹みを備える。この膜デバイスは、レンズもしくはミラータイプの光学デバイスとすることができる。
【0042】
図2Aにおいて断面図で示されているこの膜デバイスは、
図1に表されているものと同様に、固着領域1.1、固着領域1.1によって囲まれている作動領域1.2、および作動領域1.2によって囲まれている中心領域1.3を備える。膜1は、固着領域から中心領域へ表面全体にわたって延在する少なくとも1つの連続層を備える。これは、少なくとも局所的には多層であるものとしてよい。
【0043】
この第1の例では、支持材2は、流体4が配置される、キャビティ5を画成するように機能する底部6および側部7を備える。固着領域1.1において支持材2に固着されている膜1は流体4を閉じ込める。したがって、膜1は、例えば静止時に、実質的に平坦であるものとしてよい。
図6Cに例示されている一変更形態としては、支持材2は、凹みなしで実質的に平坦であるものとしてよく、膜1は静止時に凸形状をとる。
【0044】
作動手段8は、対毎に移動電極8.1および固定電極8.2を備える対向する電極の1つまたは複数の対を有する、静電タイプであるものとして表されている。固定電極の配置について、以下で説明する。キャビティ5内で、中央主チャンバー5.1は中心領域のレベルで区別され、また周辺チャンバーは作動領域1.2のレベルで区別されるものとしてよく、該周辺チャンバーは主チャンバー5.1を囲む。これは、主チャンバー5.1が、中心領域1.3に対向する、膜の中心領域1.3が配置される場所へ延在することを意味する。同様に、周辺チャンバー5.2は、作動領域1.2に対向する、作動領域1.2が配置される場所へ延在する。当然のことながら、中心領域および作動領域は、主チャンバーおよび周辺チャンバーを必ずしも画成しない。後者は、対応する領域に比べて小さい場合がある。周辺チャンバー5.2は、作動手段8が膜1の静止位置から膜1の動作位置へと作動したときに周辺チャンバー5.2内に配置されている流体4の一部を主チャンバー5.1に導く少なくとも1つの強制流構造9を備える。膜1は、静止位置において固着領域1.1の外部の支持材と接触しない。膜と支持材2との唯一の固着は、固着領域1.1において行われる。所定の強制流構造9は、それを支持材2と膜1の両方に固定されていない。これは、強制流構造9が支持材2と、膜1とに決して取り付けられないことを意味している。これは、支持材2に取り付けられるか、または膜1に取り付けられうる。一変更形態として、これは、取り付けられることなく支持材2上に静止している可能性があり、また膜の支持によって、または重力の作用の下で適所に保持されうる。流体4の変位は、作動手段8が動作位置から静止位置へと作動したときに逆方向に生じる。
【0045】
この例では、周辺チャンバー5.2内に配置されている流体4の一部のみが、強制流構造9内に導かれ、周辺チャンバー5.2は強制流構造9以外でも主チャンバー5.1と直接連通しているため、別の部分、つまり、流体の残り部分は、強制流構造9を通ることなく主チャンバー5.1内に直接入る。すべての断面図において、矢印は、作動手段8が静止位置から動作位置へと作動したときの流体4の移動を例示している。
【0046】
図2に例示されているこの例では、強制流構造9は、キャビティの底部6と、側部7と、周辺チャンバー5.2内の側部7から主チャンバー5.1の方へ突き出ている穿孔壁9.1とによって画成される。この壁9.1は、流体4を周辺チャンバー5.2から導いて、主チャンバー5.1の方へ方向付けるために少なくとも1つの貫通オリフィス9.2を取り付けている。穿孔壁9.1は、説明されている例ではリング形状であり、これはキャビティの側部7が円に従うと仮定している。
【0047】
図2Bおよび2Cは、その貫通オリフィス9.2により強制流構造9を画成するように機能する穿孔壁9.1の例を示している。それらのうちのそれぞれは、静止位置から動作位置への作動時に作動手段8と膜1との間の接触領域の反対側に位置決めすることができる。これは、
図2Bに例示されているものである。
【0048】
図2Cでは、4つの別々の領域9.20が穿孔壁9.2内に例示されており、それぞれ複数のオリフィス9.2を有し、それぞれ穿孔壁9.1の4分の1上に延在している。これらの領域9.20は、オリフィスリッチ(orifice−rich)と言われる。オリフィス9.2は、4つの領域9.20のそれぞれにおいて同じように分配される場合も、分配されない場合もある。領域9.20のそれぞれは、作動手段8の特定のアクチュエータに関連付けることができる。これらのオリフィスリッチ領域9.20は、オリフィスを有さない領域9.21によって隔てられている。この例では、2つずつ配置された、4つの対蹠的なアクチュエータがあり、それぞれ作動領域1.2内の膜1に接続された移動電極8.1、また移動電極8.1の反対側に、穿孔壁9.1に接続された固定電極9.2を有すると想定されている。オリフィスリッチ領域は少ない場合もあり、またオリフィスのない領域は1つしかない場合もある。
【0049】
膜1が複数の移動電極8.1を支持する一方で、穿孔壁9.1は単一の固定電極8.2のみを支持して作動手段8のいくつかのアクチュエータを形成することを考えることができる。逆も、もちろん、可能である。
【0050】
膜1上にいくつかの移動電極8.1を、および穿孔壁9.1上にいくつかの固定電極8.2を有することも可能である。穿孔壁9.1のオリフィス9.2は、その壁が穿孔されていない場合のものと比べて固定電極8.2の面積を狭める。静電アクチュエータの固定電極の寸法を決定する際にこのパラメータを考慮する。この目的のために、穿孔壁9.1を形成するリングの内径Riを、例えば、それを縮小することによって変更し、および/またはキャビティ5の内径Reを、例えば穿孔壁9.1の面積が広くないように大きくすることによって変更することが可能である。
【0051】
膜1は、この穿孔壁9.1上に固着されていない。
【0052】
作動手段8のアクチュエータは、同時に作動させないようにすることが可能であり、膜1は、例えば像安定化アプリケーションの場合に、非軸対称ジオプターを形成することができる。
【0053】
穿孔壁9.1上のオリフィス9.2の数、そのサイズおよびその分布は、作動手段8が作動したときに流体4の流れが円滑になされるように最適化される。
【0054】
強制流構造9は周辺チャンバー5.2内に置かれるため、流体4の流れは、作動時に円滑になり、加速され、膜デバイスの応答時間が最適化される。
【0055】
このような構造では、所定の面積の膜1および作動手段によって与えられる所定の静電気力に対して、流体4の体積を、
図1に例示されている従来技術のデバイスのものと比べて大きくすることが可能である。
【0056】
実際には、
図1のデバイスの場合と実質的に同じであるアクチュエータの電極8.1、8.2の間の距離を静止時に保ちつつキャビティ5内の流体4の厚さを著しく増やすことが可能である。静止時の2つの電極8.1、8.2の間の距離はhで表される。穿孔壁9.1は、キャビティ5の底部6から距離Hだけ間隔をあけられ、この距離Hは、距離hよりもかなり大きくてもよい。この手段によって、膜デバイスの応答時間は、
図1に例示されている従来技術のものと比べて非常に大きく増大する。
【0057】
逆に、このような膜デバイスを使用しても、流体4の量が多すぎるため、重力に対する抵抗の改善、つまり、膜1に対する流体4の効果の最小化は得られず、また耐衝撃性の改善も得られない。
【0058】
穿孔壁9.1内のオリフィス9.2は、流体4の主チャンバー5.1への流れを円滑にし、アクチュエータの電極8.1、8.2の間の距離を小さい値に保つことができる。重力抵抗、さらには膜デバイスの耐衝撃性も改善するために、別の強制流構造9を使用することが可能である。そこで、
図3Aから3Iを参照する。
【0059】
強制流構造9は、周辺チャンバー5.2内に延在し、日が差すパターンで放射状に外へ広がるチャネル9.10から主チャンバー5.1へと形成される。
【0060】
図3Aでは、チャネル9.10を持つ強制流構造9は、支持材2の底部6上に位置決めされる。これは、支持材2の底部6に関して浮き彫りになっている。チャネル9.10は、主チャンバー5.1の前で停止し、側部7とは接触しない。これらは、レンズもしくはミラータイプのデバイスの場合には、光場に侵入しない。作動手段8が作動すると、主チャンバー5.2内に位置している流体4の一部はこれらのチャネル9.10内に導かれ、主チャンバー5.1へ送られる。流体4の残りは、周辺チャンバー5.2から主チャンバー5.1に、チャネル9.10を使用せずに直接移動する。
【0061】
図3Bにおいて、キャビティ5の底部6は凹んでおり、チャネル9.10を画成する。これらのチャネル9.10は、説明されている例において実質的に一定の断面を有しているが、これは必須というわけではない。側部7に関して、周辺ピット5.10は、側部7に続いて表されている。チャネル9.10は、チャネル9.10に比べて深い周辺ピット5.10内に現れる。中心部では、チャネル9.10は、縦の点線によって表されている光場内で停止する。この
図3Bでは、作動手段は、明瞭化のため示されていない。しかし、チャネル9.10の頂部と膜1の作動領域1.2との間の流体4の厚さは、
図1に例示されている従来技術のものと類似していることに留意されたい。主チャンバー5.1では、底部6は、チャネル9.10の頂部または2つの連続するチャネル9.10の間の底部6の領域内に配置される。この例では、キャビティ5は円形である。当然のことながら、キャビティは円形でなく、例えば平行六面体とすることも考えることが可能である。
【0062】
図3Bでは、底部6の領域内の支持材はモノリシックである。
図3Cにおいて、これは、この例では少なくとも1つの基層2.2上に載る表面層2.1と重ねられている複数の層を有する。チャネル9.10は、表面層2.1内に形成される。表面層2.1および基層は、例えば、酸化ケイ素または窒化ケイ素から作ることができる。これらは、必ずしも同じ材料から作られない。
【0063】
図3Bのように、チャネルはキャビティ5の側部7の前で止まり、光場のところまで延在する。周辺ピットは存在していない。チャネル9.10は、明らかに、側部7のところまで延在する可能性がある。
図3Cを見ると、支持材2は、多層底部を形成する基材によって作られること、また側部7は、膜を支持材に、より具体的には基材に固着することを意図されている接着剤のビードによって作られることがわかる。
【0064】
図3Dは、キャビティの底部6の上面図である。放射状チャネル9.10が明瞭に見える。
図3Eは、
図3Dに例示されているキャビティの底部6の領域内の支持材2の軸BBにそって示されている横断面図であり、側部7は省かれている。チャネル9.10は、表面層2.1の全厚を貫通し、これらのチャネルは基層2.2を露出する。
図3Fでは、チャネル9.10はあまり深くなく、その深さは、表面層2.1の厚さより小さく、基層2.2は露出されない。
【0065】
図3Gでは、チャネル9.10は、光場内に、つまり、主チャンバー5.1内に延入する。本発明の主題をなす膜デバイスが、透過モードで動作する光デバイスである場合、チャネル9.10の光学衝撃は、互いに実質的に等しいか、または近い光学指数を有する支持材2について流体4および底部6を選択することによって最小化することができる。
【0066】
図3Hでは、チャネル9.10は、光場に延入しないが、光場の表面を占有し、チャネル9.10の底部6と実質的に同じ深さのところに位置決めできる、凹み9.11内に現れる。
【0067】
上記の例は、主チャンバー5.1への周辺チャンバー5.2の円滑にされ加速された流れに対応する。このようなデバイスは、焦点距離が可変であるレンズまたはミラーに関連して特に有利である。像安定化デバイスについては、最初に、流れが放射状であるが、半径方向直交していることが求められる。
図3Iは、放射状および半径方向直交の流れの例を示している。2つの同心円チャネル9.12および20個の放射状チャネル9.10を区別することができる。凹み9.11も組み込まれ、放射状チャネル9.10はこの中に出現する。この強制流構造の幾何学的形状9は、唯一の例である。チャネルを持つこの強制流構造9は、周辺チャンバー5.2から主チャンバー5.1への流れを円滑にする機能が得られる場合に、他の方向のチャネルを有することができることも明らかに理解される。
【0068】
図3Iでは、像安定化を行うことのみを目的とする作動に曝されうる4つの別々の流れ領域が、点線で表されている。
【0069】
図3をわかりにくくしないために、作動手段は表されておらず、強制流構造9は、そのまま支持材2の底部6内に配置されている。
【0070】
次に、本発明の主題をなす膜デバイスのいくつかの他の変更形態について考察することにする。
【0071】
図4Aおよび4Bでは、1つまたは複数の移動電極8.1が作動領域1.2内の膜1に接続され、複数の固定電極8.2が支持材2の底部6に接続されている静電方式の作動手段8が表されており、2つの連続する固定電極8.2は、強制流構造9のチャネル9.10によって隔てられている。この例では、
図3Cのように、底部6は多層であり、チャネル9.10は底部6の表面層2.1内に形成される。基層は、2.2として参照されている。対向する電極8.1、8.2は、膜デバイスの応答時間に悪影響を及ぼすことなく、満足の行く作動効率を発揮するように十分に近いものとしてよい。これらの
図4では、膜1は、単層であるものとして表されているが、もちろん、少なくとも局所的には多層である可能性がある。
【0072】
次に、
図5A、5Bでは、強制流構造9が膜1に接続されている。
図5Bは、膜1の下から見た図である。膜1は、少なくとも作動領域1.2では、単層または多層であるものとすることができる。これは、中心領域1.3に比べて作動領域1.2において厚いものとしてよい。
図5の例では、膜1は、中心領域1.3から固着領域1.1に延在する少なくとも1つの第1の連続層10.1、および第1の層10.1とともに積み重ねられ、作動領域1.2内に延入し、場合によっては固着領域1.1内に延入する少なくとも1つの第2の層10.2を有する。一変更形態として、膜1は、単層であるが、厚さが可変であってもよい。
【0073】
この例では、中心領域1.3に比べて作動領域1.2および固着領域1.1において厚みがある。厚みは、作動領域1.2の範囲内に限定されている可能性がある。
【0074】
これらの構成では、この厚みは必須というわけではないが、中心部の変形を最大にするために、柔軟な膜、したがって中心領域内でできる限り薄いものを形成することが目標であれば有利である。
【0075】
強制流構造9は、周辺チャンバー5.2から主チャンバー5.1へ向かうチャネル9.10を備え、これらのチャネル9.10は、厚くなっている作動領域1.2内に配置されている。チャネル9.10の間の作動領域1.2内の膜の厚さは、中心領域1.3内の膜の厚さより大きい。
【0076】
この例では、チャネル9.10は、連続層10.1とともに積み重ねられた1つまたは複数の層10.2内に形成され、これらはもちろん、連続層10.1を実現し、その中に食い込むことも可能であるが、もちろん、破壊を引き起こす連続層10.1の弱体化はあってはならない。
【0077】
移動電極8.1は、作動領域1.2内で膜10に接続され、これらはチャネル9.10の間に延在する。移動電極8.1は、2つの連続するチャネル9.10の間に表されているが、これは、一例に過ぎず、さらに少ない移動電極を有することも可能である。支持材2は、移動電極8.1に面する1つまたは複数の固定電極8.2を備える。ここでもまた、作動手段8に面する電極8.1、8.2の間の流体4の厚さを薄くできるが、応答時間は従来技術に比べて増大する。
【0078】
強制流構造9を膜1の領域内に置くことによって、膜1の剛性を変えることができる。実際、作動領域1.2内では、膜1は、チャネル9.10の領域内で第1の剛性を、またチャネル9.10の間に、第1の剛性より大きい第2の剛性を有する。剛性の大きな領域と剛性の小さな領域をこのように交互に配置することで、特に、例えば像安定化アプリケーションに対する非対称作動の場合に、作動効率を高めることができる。
【0079】
連続層10.1以外の、連続層強制流構造9に関わる1つまたは複数の層10.2は、チャネル9.10を受け入れる機能およびチャネル9.10間の作動領域1.2を局所的に剛体化する機能以外の機能を有することができる。これらの層が固着領域1.1内に延入する場合、これらの層は支持材2への固着を改善することができる。
【0080】
これらは、膜1の透過、つまり、膜を横切る能力を低減するために使用することもできる。
【0081】
図5A、5Bでは、チャネル9.10は、中心領域1.3の前で止まるものとして表されているが、これらは、キャビティの底部6にあったときに、
図3Gに表されているように、中心領域1.3内に延入する可能性があると明確に理解される。その部分に対する移動電極8.1は、中心領域1.3上に侵入しない。
【0082】
次に、
図6Aおよび6Bでは、強制流構造9が作動手段8内に組み込まれている。
【0083】
より具体的には、キャビティ5の底部6上に位置決めされている1つまたは複数の固定電極8.1を備える。強制流構造9は、2つの連続する固定電極8.1の間に存在する間隔によって形成されるか、または単一の固定電極8.1内に形成されるチャネル9.10を備える。第1の場合には、チャネル9.10は、支持材2の材料を露出し、第2の場合には、露出しない。
【0084】
同様に、強制流構造9を静電方式の作動手段8の1つまたは複数の移動電極8.1に組み込むことも、この移動電極またはこれらの移動電極8.1が流体4と接触している場合に、企図されうる。
図6Cを参照するとよい。前記の説明では、膜1の支持材2は、常に、流体4を受け入れる凹みを有するものとして表されているが、これは必須というわけではない。これは、
図6Cに例示されているものである。支持材2は実質的に平坦である。支持材2のこの構成は、強制流構造がチャネルを有しているすべての変更形態に適用することができる。
【0085】
図7Aおよび7Bでは、本発明による膜デバイスの別の例は、強制流構造9が作動手段8内に組み込まれているが、ここでは、作動手段は圧電式である。これらは、もちろん、熱バイモルフとすることが可能である、つまり、これらは、異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの層を備えるか、または磁性体とすることが可能である。膜1は、作動領域1.2内で、また場合によっては流体4の側部上の固着領域1.1内で、作動手段8を構成する1つまたは複数の積み重ねられた層を支持し、これらの層は8.3、8.4として参照され、層8.3は流体4と接触している。これらの層8.3、8.4のうち、少なくとも1つ、この場合には層8.4が固着領域1.1内に延入しうる。強制流構造9のチャネル9.10は、流体4と接触している層からこれらの層の少なくとも1つの中に形成される。層8.3は、2つの連続するチャネル9.10の間に配置され、これは、例えば膜1をキャビティ5の底部6に引っ張ることによって静止位置から動作位置に作動した後に変形されうる、円環セクタビームの形状で画成される。ここでまた、周辺チャンバー5.2内に配置されている流体4の一部は、強制流構造9のチャネル9.10を利用して、主チャンバー5.1の方へ移動する。
【0086】
直前に説明した両方の変更形態において、チャネル9.10は、支持材の底部6内に食い込むか、または単にそれを露出するか、または実際には膜1内に食い込むか、または単にそれを露出することができる。もちろん、チャネルが底部6または膜1に到達しない可能性もある。
【0087】
膜は、ポリジメチルシロキサン、メチルポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、パリレン、エポキシ樹脂、感光性ポリマー、Shin−Etsu社製のSiNRという名称で知られているシリコーン、またはDow Corning社製のWL5150という名称で知られているシリコーンなどの有機物質、またはケイ素、多結晶ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化チタン、ダイヤモンド状炭素、スズおよびインジウム酸化物、アルミニウム、銅、またはニッケルなどの無機物質の基剤から生産することができる。
【0088】
流体は、プロピレンカーボネート、水、屈折液、光学オイル、もしくはさらにはイオン液体のうちから選択された液体、または空気、窒素、ヘリウム、アルゴンのうちから選択された気体とすることができる。
【0089】
作動手段は、圧電性であるときにはPZT、窒化アルミニウム、ポリフッ化ビニリデンもしくはその共重合体、三フッ化エチレン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、ニオブ酸鉛、チタン酸ビスマスなどのシレナイトの基剤から、または静電性であるときには銅、銀、金、アルミニウム、チタン、もしくはさらにはITOなどの金属タイプの導電性材料の基剤から、熱バイモルフであるときにケイ素、酸化ケイ素、もしくはさらには窒化ケイ素の基剤とともに、または磁気的であるときには鉄、ニッケル、もしくはコバルトなどの強磁性体から、製作されうる。
【0090】
支持材、および特にその底部は、例えば、ガラス、半導体材料、またはプラスチックから作ることができる。
【0091】
発明の主題を形成する膜デバイスは、マイクロエレクトロニクス分野の知られている技術によって作ることができる。化学気相成長法タイプ、電気メッキ、エピタキシャル成長、熱酸化、蒸発、もしくは薄膜積層による物理的気相成長法タイプの薄層蒸着技術が使用されうる。有機物質またはゾルゲルタイプの材料を、スピンコーターを使用する噴霧によって蒸着することができる。鋳込成形、エンボス加工、高温圧着またはナノプリンティングを使用して、キャビティ5の底部6を構造化し、強制流構造9のチャネル9.10を形成することができる。接着剤による接着技術を使用して、膜1を支持材2に、または底部を膜が固着されているフレームに接着剤で接着することができ、また例えば、これらの技術を、直接接着(direct gluing)、共融接着(eutectic gluing)、陽極接着(anodic gluing)、または有機接着(organic gluing)のうちから選択することができる。薄化のステップ、例えば、研削、化学的薄化、または実際には両方のタイプによる薄化のステップを、接着剤で底部をフレームに接着した後に含めることができる。膜デバイスは、いくつかのバッチにわけて製造することができる。
【0092】
このような膜デバイスは、撮像デバイス、特に携帯電話のカメラの撮像デバイスの焦点距離が可変である光学デバイスとして使用することができる。
図8Aを参照されたい。このような撮像デバイスは、順番に、液体レンズタイプの本発明による可変焦点距離Lを有する少なくとも1つの光学デバイスを含む対物レンズ80、および基材82によって支持される、例えばCCDまたはCMOSタイプのイメージセンサー81を備える。説明されている例では、対物レンズ80は、固定焦点距離の少なくとも1つのレンズ83および本発明による1つの液体レンズLを含む。以下では、この固定焦点距離レンズ83は、従来型の光学ユニットと称する。液体レンズLは、従来型の光学ユニット83とイメージセンサー81との間に位置決めされる。一変更形態として、従来型の光学ユニット83は、液体レンズLとイメージセンサー81との間に位置決めされうる。この後者の構成は、オートフォーカスアプリケーションにとってより有利である。従来型の光学ユニット83は、静的である。上で見たように、その製造方法により、液体レンズLは、MOEMS(光電気機械マイクロシステム)と同等のものと考えられる。可変焦点距離液体レンズLは、イメージセンサー81から、対物レンズ80の特性に依存する、特定の距離のところに位置決めされ、この距離が小さければ、液体レンズLおよびイメージセンサー81を組み合わせて単一のコンポーネントにする必要があるが、そのためにはAIC(Above Integrated Circuit)技術を使用するか、またはWLCSP(Wafer Level Chip Scale Package)技術を使用して集積化する。液体レンズLの焦点距離は、静止時の液体の圧力だけでなく静止時の膜2の曲率も、また液体の屈折率を最適化することによって修正される。
【0093】
カメラデバイスが、
図8Bのようなズーム機能も備える場合、光学ユニット83を少なくとも2つの固定焦点距離レンズ83.1、83.2および2つの液体レンズLおよびL’とともに使用し、
図8Bのように、これらの液体レンズのうちの一方は光学ユニット83のレンズ83.1、83.2の間に位置決めされ、他方はイメージセンサー81に近接する。これらの
図8A、8Bでは、LおよびL’として参照される本発明による光学デバイスは、かなり図式的に表されており、作動手段も強制流構造も見えない。2つの液体レンズの使用は、ズーム機能を実現する特定の、広く使用されている方法である。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態が詳細に説明されているけれども、本発明の範囲を逸脱することなくさまざまな変更および修正を加えることができることは理解されるであろう。説明されているさまざまな変更形態は、相互排他的でないと理解されなければならず、これらを組み合わせることができる。
【0095】
本発明の主題をなすデバイスは、穿孔壁を有する強制流構造、およびチャネルを有する少なくとも1つの強制流構造を備えることが可能である。これは、膜内に集積化され、および/または底部内に集積化され、および/または作動手段内に集積化された強制流構造を備えることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 膜
1.1 固着領域
1.2 作動領域
1.3 中心領域
2 支持材
2.1 表面層
2.2 基層
4 流体
5 キャビティ
5.1 主チャンバー
5.2 周辺チャンバー
5.10 周辺ピット
6 底部
7 側面
8 作動手段
8.1 移動電極
8.2 固定電極
9 強制流構造
9.1 壁
9.2 貫通オリフィス
9.10 チャネル
9.11 凹み
9.12 チャネル
9.20 オリフィスリッチ領域
9.21 オリフィスのない領域
10.1 第1の連続層
10.2 第2の層
80 対物レンズ
81 イメージセンサー
82 基材
83 レンズ
83.1、83.2 固定焦点距離レンズ