(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配列光源における前記複数の微小光源が、隣接する微小光源同士の中心間距離が一定となるように配列してあることを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散フィルムの製造方法。
前記配列光源における前記複数の微小光源が、隣接する微小光源同士を線分で結んだ場合に、前記線分を一辺とする複数の正方形、前記線分を一辺とする複数の正三角形または一本の線分が描かれるように配列してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
前記配列光源において、隣接する微小光源同士の中心間距離を3〜25mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
前記工程(c)において、前記微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角を2〜50°の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
前記工程(c)において、前記塗布層の表面と、前記配列光源の下端と、の間隔を5〜100cmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
前記工程(c)において、前記微小光源から照射される活性エネルギー線のピーク波長を200〜410nmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態は、入射光を多角形状に光拡散させるための光拡散フィルムの製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法である。
(a)光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)塗布層に対し、複数の微小光源を配列させてなる配列光源を用いて、隣接する微小光源からの活性エネルギー線が塗布層の表面において重なり合うように活性エネルギー線を照射し、塗布層を、屈折率が異なる複数の領域からなる内部構造を有する光拡散フィルムとする工程
以下、本発明の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明するが、かかる説明の理解を容易にするため、まず、光拡散フィルムによる光拡散の基本原理を、線状光拡散フィルムを例に挙げて説明した後、より複雑な多角形状光拡散の機構を、正方形状光拡散フィルムを例に挙げて説明する。
【0020】
1.光拡散フィルムによる光拡散の基本原理
最初に、
図1〜2を用いて、光拡散フィルムによる光拡散の基本原理について説明する。
まず、
図1(a)には、フィルム内にルーバー構造を有する線状光拡散フィルム10aの上面図(平面図)が示してあり、
図1(b)には、
図1(a)に示す線状光拡散フィルム10aを、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向から眺めた場合の光拡散フィルム10aの断面図が示してある。
また、
図2(a)は、線状光拡散フィルム10aの全体図および真上方向から見た場合の拡散光の広がりを表わし、
図2(b)は、
図2(a)の線状光拡散フィルム10aをX方向から見た場合の断面図を表わす。
かかる
図1(a)の平面図に示すように、線状光拡散フィルム10aは、フィルム面方向において、相対的に屈折率が高い板状領域12aと、相対的に屈折率が低い板状領域14aと、が交互に平行配置されたルーバー構造13aを備えている。
また、
図1(b)の断面図に示すように、高屈折率の板状領域12aと、低屈折率の板状領域14aは、それぞれ所定の厚さを有しており、線状光拡散フィルム10aの垂直方向においても、交互に平行配置された状態を保持している。
【0021】
これにより、
図2(a)に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が線状光拡散フィルム10aによって拡散されると推定される。
すなわち、
図1(b)に示すように、線状光拡散フィルム10aに対する入射光の入射角が、ルーバー構造13aの境界面13a´に対し、平行から所定の角度範囲内の値、つまり、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光(52、54)は、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12aの内部を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が線状光拡散フィルム10aによって拡散されると推定される(52´、54´)。
一方、線状光拡散フィルム10aに対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、
図1(b)に示すように、入射光56は、線状光拡散フィルム10aによって拡散されることなく、そのまま線状光拡散フィルム10aを透過するものと推定される(56´)。
【0022】
以上の基本原理により、所定のルーバー構造13aを備えた線状光拡散フィルム10aは、例えば、
図2(a)に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
また、
図2(a)に示すように、線状光拡散フィルム10aは、入射光の入射角が光拡散入射角度領域に含まれる場合には、その入射角が異なる場合であっても、出光面側においてほぼ同様の光拡散をさせることができる。
したがって、得られた線状光拡散フィルム10aは、光を所定箇所に集中させる集光作用も有すると言うことができる。
【0023】
なお、光拡散入射角度領域は、
図2(a)に示すように、線状光拡散フィルム10aにおけるルーバー構造の屈折率差や傾斜角度等によって、その線状光拡散フィルム10aごとに決定される角度領域である。
また、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12aの内部における入射光の方向変化は、
図1(b)に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型となる場合のほか、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
【0024】
また、
図2(a)に示すように、内部構造としてルーバー構造を有する線状光拡散フィルム10aは、入射光を線状光拡散させることになる。
ここで、「線状光拡散」とは、
図2(a)に示すように、光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって線状になる性質を有することを意味する。
より具体的には、
図2(a)に示すように、入射光に含まれる成分のうち、フィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分については、選択的に光の拡散が生じる一方、入射光に含まれる成分のうち、フィルム面方向に延びるルーバー構造
の向きに平行な成分については、光の拡散が生じにくいため、線状光拡散が実現する。
したがって、線状光拡散フィルム10aにおける拡散光の広がりの形状は、
図2(a)に示すように、略楕円状になる。
【0025】
また、上述したように、線状光拡散に寄与する入射光の成分は、主にフィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分であることから、
図2(b)に示すように、本発明において、入射光の「入射角θ1」と言った場合、フィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分の入射角を意味するものとする。また、このとき、入射角θ1は、光拡散フィルムの入射側表面の法線に対する角度を0°とした場合の角度(°)を意味するものとする。
また、本発明において、「拡散光の開き角」とは、光拡散角度領域の幅であり、
図2(b)に示すように、フィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに平行な方向Xから、フィルムの断面を眺めた場合における、所定の入射角θ1の入射光に対する拡散光の開き角θ2を意味する。
【0026】
2.多角形状光拡散の機構
次いで、
図3〜4を用いて、本発明の製造方法によって得られる光拡散フィルムによる、より複雑な多角形状光拡散の機構について、正方形状光拡散フィルム10bを例に挙げて具体的に説明する。
なお、
図1〜2に示す線状光拡散フィルム10aも、本発明の製造方法により得られる光拡散フィルムに含まれるが、線状光拡散よりもさらに複雑な多角形状光拡散の機構を説明するために、敢えて正方形状光拡散フィルム10bを例に挙げて説明するものである。
【0027】
まず、
図3(a)には、正方形状光拡散フィルム10bの上面図(平面図)が示してあり、
図3(b)には、
図3(a)に示す正方形状光拡散フィルム10bを、点線A−A、点線B−Bに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向から眺めた場合の正方形状光拡散フィルム10bの断面図が示してある。
また、
図4には、正方形状光拡散フィルム10bの全体図と、真上方向から見た場合の正方形状光拡散フィルム10bによる入射光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が示してある。
【0028】
かかる
図3(a)の平面図に示すように、正方形状光拡散フィルム10bは、フィルム面方向において、相対的に屈折率が高い板状領域と、相対的に屈折率が低い板状領域と、が横方向Xおよび縦方向Yのそれぞれにおいて交互に平行配置されることによって織りなされた内部構造13bを備えている。
なお、横方向Xおよび縦方向Yのそれぞれにおいて交互に平行配置された相対的に屈折率が高い板状領域は、互いに交わって網目領域12bを形成するが、相対的に屈折率が低い板状領域は、相対的に屈折率が高い網目領域12bによって分断され、多角形領域(四角形領域)14bを形成していると推定される。
また、
図3(b)に示すように、高屈折率の網目領域12bと、低屈折率の多角形領域14bは、それぞれ所定の厚さを有しており、正方形状光拡散フィルム10bの膜厚方向においても、交互に平行配置された状態を保持している。
【0029】
これにより、
図4に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、
図1〜2を用いて説明した光拡散の基本原理により、入射光が正方形状光拡散フィルム10bによって、正方形状に光拡散されると推定される。
なお、正方形状光拡散フィルム10bの他にも、様々な多角形状光拡散フィルムを製造することが可能であり、例えば、
図5(a)〜(b)に示すような相対的に屈折率が高い網目領域12cと、相対的に屈折率が低い多角形領域(六角形領域)14cからなる内部構造13cを有する正六角形状光拡散フィルム10cの場合には、
図6に示すように、入射光を正六角形状に光拡散できる。
以下、本実施形態に係る光拡散フィルムの製造方法について詳述する。
【0030】
3.工程(a):光拡散フィルム用組成物の準備工程
工程(a)は、光拡散フィルム用組成物を準備する工程である。
より具体的には、屈折率が異なる2つの重合性化合物を40〜80℃の高温条件下にて撹拌して、均一な混合液とすることが好ましい。
また、これと同時に、混合液に対し、所望により光重合開始剤等の添加剤を添加した後、均一になるまで撹拌しつつ、所望の粘度となるように、必要に応じて希釈溶剤をさらに加えることにより、光拡散フィルム用組成物の溶液を得ることが好ましい。
以下、工程(a)について、より具体的に説明する。
【0031】
(1)高屈折率重合性化合物
(1)−1 種類
屈折率が異なる2つの重合性化合物のうち、屈折率の高い方の重合性化合物(以下、(A)成分と称する場合がある。)の種類は、特に限定されないが、その主成分を複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとすることが好ましい。
この理由は、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、(A)成分の重合速度を、屈折率の低い方の重合性化合物(以下、(B)成分と称する場合がある。)の重合速度よりも速くして、これらの成分間における重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A)成分に由来した高屈折率領域および(B)成分に由来した低屈折率領域からなる所定の内部構造を効率よく形成することができる。
また、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、単量体の段階では(B)成分と十分な相溶性を有しつつも、重合の過程において複数繋がった段階では(B)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、所定の内部構造をさらに効率よく形成することができるものと推定される。
さらに、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、内部構造における(A)成分に由来した高屈折率領域の屈折率を高くして、(B)成分に由来した低屈折率領域の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、後述する(B)成分の特性と相まって、屈折率の異なる領域からなる所定の内部構造を備えた光拡散フィルムを効率的に得ることができる。
なお、「複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基部分に複数の芳香環を有する化合物を意味する。
また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味する。
【0032】
また、このような(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、若しくは、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等を挙げることができる。
【0033】
また、(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとして、ビフェニル環を含有する化合物を含むことが好ましく、特に、下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物を含むことが好ましい。
【0035】
(一般式(1)中、R
1〜R
10は、それぞれ独立しており、R
1〜R
10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【0037】
(一般式(2)中、R
11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【0038】
この理由は、(A)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を含むことにより、(A)成分および(B)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、(A)成分と、(B)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、両成分同士の共重合性を低下させることができると推定されるためである。
また、所定の内部構造における(A)成分に由来した高屈折率領域の屈折率を高くして、(B)成分に由来した低屈折率領域の屈折率との差を、所定以上の値に、より容易に調節することができる。
【0039】
また、一般式(1)におけるR
1〜R
10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜4の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭素数が4を超えた値となると、(A)成分の重合速度が低下したり、(A)成分に由来した高屈折率領域の屈折率が低くなり過ぎたりして、所定の内部構造を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(1)におけるR
1〜R
10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜3の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0040】
また、一般式(1)におけるR
2〜R
9のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが好ましい。
この理由は、一般式(2)で表わされる置換基の位置を、R
1およびR
10以外の位置とすることにより、光硬化させる前の段階において、(A)成分同士が配向し、結晶化することを効果的に防止することができるためである。
さらに、光硬化させる前のモノマー段階で液状であり、希釈溶媒等を使用しなくとも、見掛け上(B)成分と均一に混合することができる。
これにより、光硬化の段階において、(A)成分および(B)成分の微細なレベルでの凝集・相分離を可能とし、所定の内部構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
さらに、同様の観点から、一般式(1)におけるR
3、R
5、R
6およびR
8のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが特に好ましい。
【0041】
また、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、通常1〜10の整数とすることが好ましい。
この理由は、繰り返し数mが10を超えた値となると、重合部位と、ビフェニル環とをつなぐオキシアルキレン鎖が長くなりすぎて、重合部位における(A)成分同士の重合を阻害する場合があるためである。
したがって、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、1〜4の整数とすることがより好ましく、1〜2の整数とすることが特に好ましい。
なお、同様の観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、通常1〜4の整数とすることが好ましい。
また、重合部位である重合性炭素−炭素二重結合の位置が、ビフェニル環に対して近すぎて、ビフェニル環が立体障害となり、(A)成分の重合速度が低下する場合をも考慮すると、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、2〜4の整数とすることがより好ましく、2〜3の整数とすることが特に好ましい。
【0042】
また、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物の具体例としては、下記式(3)〜(4)で表わされる化合物を好ましく挙げることができる。
【0045】
(1)−2 分子量
また、(A)成分の分子量を、200〜2,500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分の重合速度をさらに速くして、(A)成分および(B)成分の共重合性をより効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A)成分に由来した高屈折率領域および(B)成分に由来した低屈折率領域からなる所定の内部構造を、より効率的に形成することができる。
すなわち、(A)成分の分子量が200未満の値となると、立体障害により重合速度が低下して、(B)成分の重合速度に近くなり、(B)成分との共重合が生じ易くなる場合があるためである。一方、(A)成分の分子量が2,500を超えた値となると、(B)成分との分子量の差が小さくなるのにともなって、(A)成分の重合速度が低下して(B)成分の重合速度に近くなり、(B)成分との共重合が生じ易くなるものと推定され、その結果、所定の内部構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の分子量を、240〜1,500の範囲内の値とすることがより好ましく、260〜1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(A)成分の分子量は、分子の組成と、構成原子の原子量から得られる計算値から求めることができ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて重量平均分子量として測定することもできる。
【0046】
(1)−3 屈折率
また、(A)成分の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した高屈折率領域の屈折率と、(B)成分に由来した低屈折率領域の屈折率との差を、より容易に調節して、所定の内部構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(A)成分の屈折率が1.5未満の値となると、(B)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、有効な光拡散角度領域を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(A)成分の屈折率が1.65を超えた値となると、(B)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(B)成分との見かけ上の相溶状態さえも形成困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の屈折率を、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがより好ましく、1.56〜1.59の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(A)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分の屈折率を意味する。
また、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0047】
(1)−4 含有量
また、光拡散フィルム用組成物における(A)成分の含有量を、後述する(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の含有量が25重量部未満の値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が少なくなって、(A)成分に由来した高屈折率領域の幅が、(B)成分に由来した低屈折率領域の幅と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有する所定の内部構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における所定の内部構造の長さが不十分になり、光拡散性を示さなくなる場合があるためである。一方、(A)成分の含有量が400重量部を超えた値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が多くなって、(A)成分に由来した高屈折率領域の幅が、(B)成分に由来した低屈折率領域の幅と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有する所定の内部構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における所定の内部構造の長さが不十分になり、光拡散性を示さなくなる場合があるためである。
したがって、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、40〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜200重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0048】
(2)低屈折率重合性化合物
(2)−1 種類
屈折率が異なる2つの重合性化合物のうち、屈折率の低い方の重合性化合物((B)成分)の種類は、特に限定されず、その主成分として、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特に、ウレタン(メタ)アクリレートとすることが好ましい。
この理由は、ウレタン(メタ)アクリレートであれば、(A)成分に由来した高屈折率領域の屈折率と、(B)成分に由来した低屈折率領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B)成分に由来した低屈折率領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、所定の内部構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
したがって、以下においては、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートについて、主に説明する。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。
【0049】
まず、ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成される。
このうち、(a)成分であるイソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等を挙げることができる。
【0050】
また、上述した中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが、特に好ましい。
この理由は、脂環式ポリイソシアナートであれば、脂肪族ポリイソシアナートと比較して、立体配座等の関係で各イソシアナート基の反応速度に差を設けやすいためである。
これにより、(a)成分が(b)成分とのみ反応したり、(a)成分が(c)成分とのみ反応したりすることを抑制して、(a)成分を、(b)成分および(c)成分と確実に反応させることができ、余分な副生成物の発生を防止することができる。
その結果、所定の内部構造における(B)成分に由来した低屈折率領域の屈折率のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0051】
また、脂環式ポリイソシアナートであれば、芳香族ポリイソシアナートと比較して、得られる(B)成分と、(A)成分との相溶性を所定の範囲に低下させて、所定の内部構造をより効率よく形成することができる。
さらに、脂環式ポリイソシアナートであれば、芳香族ポリイソシアナートと比較して、得られる(B)成分の屈折率を小さくすることができることから、(A)成分の屈折率との差を大きくし、光拡散性をより確実に発現するとともに、光拡散角度領域内における拡散光の均一性の高い所定内部構造をさらに効率よく形成することができる。
また、このような脂環式ポリイソシアナートの中でも、イソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
この理由は、脂環式ジイソシアナートであれば、(b)成分および(c)成分と定量的に反応し、単一の(B)成分を得ることができるためである。
このような脂環式ジイソシアナートとしては、イソホロンジイソシアナート(IPDI)であることが、特に好ましく挙げることができる。
この理由は、2つのイソシアナート基の反応性に有効な差異を設けることができるためである。
【0052】
また、ウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(b)成分であるポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが、特に好ましい。
この理由は、ポリプロピレングリコールであれば、粘度が低いことから無溶剤で取り扱うことができるためである。
また、ポリプロピレングリコールであれば、(B)成分を硬化させた際に、当該硬化物における良好なソフトセグメントとなり、光拡散フィルムのハンドリング性や実装性を、効果的に向上させることができるためである。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、主に、(b)成分の重量平均分子量により調節することができる。ここで、(b)成分の重量平均分子量は、通常、2,300〜19,500であり、好ましくは4,300〜14,300であり、特に好ましくは6,300〜12,300である。
【0053】
また、ウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(c)成分であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、所定の内部構造をより効率的に形成する観点から、特に、ヒドロキシアルキルメタクリレートであることがより好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
【0054】
また、(a)〜(c)成分によるウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って実施することができる。
このとき(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜5:1:1〜5の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合割合とすることにより、(b)成分の有する2つの水酸基に対してそれぞれ(a)成分の有する一方のイソシアナート基が反応して結合し、さらに2つの(a)成分がそれぞれ有するもう一方のイソシアナート基に対して、(c)成分の有する水酸基が反応して結合したウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができるためである。
したがって、(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜3:1:1〜3の割合とすることがより好ましく、2:1:2の割合とすることがさらに好ましい。
【0055】
(2)−2 重量平均分子量
また、(B)成分の重量平均分子量を、3,000〜20,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分および(B)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A)成分に由来した高屈折率領域および(B)成分に由来した低屈折率領域が交互に延在した第1および第2のルーバー構造領域を効率よく形成することができる。
すなわち、(B)成分の重量平均分子量が3,000未満の値となると、(B)成分の重合速度が速くなって、(A)成分の重合速度に近くなり、(A)成分との共重合が生じ易くなる結果、所定の内部構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の重量平均分子量が20,000を超えた値となると、(A)成分および(B)成分からなる所定の内部構造を形成することが困難になったり、(A)成分との相溶性が過度に低下して、塗布段階で(A)成分が析出する場合があるためである。
したがって、(B)成分の重量平均分子量を、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがより好ましく、7,000〜13,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0056】
(2)−3 屈折率
また、(B)成分の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した高屈折率領域と、(B)成分に由来した低屈折率領域の屈折率との差を、より容易に調節して、所定の多角形領域を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(B)成分の屈折率が1.4未満の値となると、(A)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(A)成分との相溶性が極端に悪化し、所定の内部構造を形成することができないおそれがあるためである。一方、(B)成分の屈折率が1.5を超えた値となると、(A)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の屈折率を、1.45〜1.49の範囲内の値とすることがより好ましく、1.46〜1.48の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(B)成分の屈折率を意味する。
そして、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0057】
また、上述した(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を所定の範囲内の値とすることにより、光の透過と拡散におけるより良好な入射角度依存性、およびより広い光拡散入射角度領域を有する光拡散フィルムを得ることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光が所定の内部構造内で全反射する角度域が狭くなることから、光拡散における開き角度が過度に狭くなる場合があるためである。一方、かかる屈折率の差が過度に大きな値となると、(A)成分と(B)成分の相溶性が悪化しすぎて、所定の内部構造を形成できないおそれがあるためである。
したがって、(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.05〜0.5の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ここでいう(A)成分および(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分および(B)成分の屈折率を意味する。
【0058】
(2)−4 含有量
また、光拡散フィルム用組成物における(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量100重量%に対して、10〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の含有量が10重量%未満の値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が少なくなって、(B)成分に由来した低屈折率領域の幅が、(A)成分に由来した高屈折率領域の幅と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有する所定の内部構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における所定の内部構造の長さが不十分になる場合があるためである。一方、(B)成分の含有量が80重量%を超えた値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が多くなって、(B)成分に由来した低屈折率領域の幅が、(A)成分に由来した高屈折率領域の幅と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有する所定の内部構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における所定の内部構造の長さが不十分になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量100重量%に対して、20〜70重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜60重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0059】
(3)光重合開始剤
また、本発明における光拡散フィルム用組成物においては、所望により、(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光重合開始剤を含有させることにより、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に所定の内部構造を形成することができるためである。
ここで、光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。
【0060】
かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、光重合開始剤を含有させる場合の含有量としては、(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対し、0.2〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜15重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0061】
(4)その他の添加剤
また、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、その他の添加剤を添加することができる。
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
なお、その他の添加剤の含有量は、一般に、(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜3重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜2重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0062】
4.工程(b):塗布工程
工程(b)は、
図7(a)に示すように、準備した光拡散フィルム用組成物を、工程シート2に対して塗布して塗布層1を形成する工程である。
工程シートとしては、プラスチックフィルム、紙のいずれも使用することができる。
このうち、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルム、およびポリイミド系フィルム等が挙げられる。
また、紙としては、例えば、グラシン紙、コート紙、およびラミネート紙等が挙げられる。
また、後述する工程を考慮すると、工程シート2としては、熱や活性エネルギー線に対する寸法安定性に優れたフィルムであることが好ましい。
このようなフィルムとしては、上述したもののうち、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムおよびポリイミド系フィルムが好ましく挙げられる。
【0063】
また、工程シートに対しては、光硬化後に、得られた光拡散フィルムを工程シートから剥離し易くするために、工程シートにおける光拡散フィルム用組成物の塗布面側に、剥離層を設けることが好ましい。
かかる剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
なお、工程シートの厚さは、通常、25〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0064】
また、工程シート上に光拡散フィルム用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
なお、このとき、塗布層の厚さを、100〜700μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0065】
5.工程(c):活性エネルギー線照射工程
工程(c)は、
図7(b)〜(c)に示すように、塗布層1に対し、複数の微小光源25を配列させてなる配列光源20を用いて、隣接する微小光源25からの活性エネルギー線50が塗布層1の表面において重なり合うように活性エネルギー線50を照射し、塗布層1を、屈折率が異なる複数の領域からなる内部構造13を有する光拡散フィルム10とする工程である。
【0066】
(1)配列光源
(1)−1 微小光源
本発明の配列光源20は、
図7(b)〜(c)に示すように複数の微小光源25を配列させてなることを特徴とする。
この理由は、複数の微小光源を配列させてなる配列光源であれば、後述するように、隣接する微小光源からの活性エネルギー線を塗布層の表面において重なり合うように照射させることで、塗布層を、屈折率が異なる複数の領域からなる所定の内部構造を有する光拡散フィルムとすることができるためである。
ここで、「微小光源」とは、発光部分の表面積が54cm
2未満、より好ましくは6cm
2未満である光源を意味するものとする。
また、微小光源を光照射方向から見た場合の平面的なサイズとしては、最大径が3cm未満であることが好ましく、1cm未満であることがより好ましい。
【0067】
また、配列光源における複数の微小光源が、複数のLED光源であることが好ましい。
この理由は、LED光源であれば、光線射出方向が決まっていることから、活性エネルギー線の指向角を制御し易く、また、サイズが小さいことから、反射板等による光線方向が制御し易く、さらには、活性エネルギー線の波長選択が可能であり、オゾンレスや熱線レスといった所望の態様への適用が容易になるためである。
また、LED光源の中でも、砲弾型LED光源が好ましい。
この理由は、砲弾型LED光源であれば、それ自体に指向角制御部位を内包しているため、別途の指向角制御装置を必要とすることなく、活性エネルギー線の指向角を制御することができるためである。
【0068】
(1)−2 配列
また、配列光源における複数の微小光源が、隣接する微小光源同士の中心間距離が一定となるように配列してあることが好ましい。
この理由は、隣接する微小光源同士の中心間距離が一定となるように配列してあることにより、塗布層の表面における活性エネルギー線の重なり具合が均一になり、所定の内部構造を有する光拡散フィルムをより効率的に製造することができるためである。
以下、より具体的な配列の態様として、配列1〜3について説明する。
【0069】
(i)配列1
まず、
図8(a)に示すように、配列光源20における複数の微小光源25が、隣接する微小光源同士を線分26で結んだ場合に、線分26を一辺とする複数の正方形が描かれるように配列してなる配列1をとることが好ましい。
この理由は、微小光源をこのように配列することにより、入射光を正方形状に光拡散させることができる正方形状光拡散フィルムを効率的に製造することができるためである。
すなわち、配列1とした場合、
図8(b)に示すように、それぞれの微小光源25から照射された活性エネルギー線の広がり50´が、塗布層1の表面において一定パターンを描きながら重なり合うようにすることができるためである。
より具体的には、
図8(b)においては、それぞれの微小光源25から照射された活性エネルギー線の広がり51´が重なり合う部分の中心を貫くように、実線52を引いてあるが、かかる実線52が、規則正しく配列された正方形を描き出していることが理解される。
つまり、配列1の配列光源20を用いた場合、塗布層1の表面においては、概ね、かかる実線52に相当する部分に対し、その他の部分と比較して照度の大きい活性エネルギー線が照射されることになることが理解される。
したがって、実線52は、いわば活性エネルギー線強度の等高線ということができる。
【0070】
その結果、塗布層1においては、
図8(c)に示すように、実線52に相当する部分を起点として、(B)成分よりも重合速度が速い(A)成分が優先的に光硬化を開始し、成分間での相分離を経つつ、(A)成分に由来した高屈折率の網目領域12bおよび(B)成分に由来した低屈折率の四角形領域14bを形成することになると推定される。
なお、
図8(d)は、
図8(c)における実線52で囲まれた1つの正方形を取り出した場合の拡大図である。
また、
図8(b)においては、隣接する微小光源から照射された活性エネルギー線の広がりが重なり合う場合を示しているが、これは一例であり、隣接しない微小光源から照射された活性エネルギー線の広がりが重なり合っていてもよく、後述する
図9(b)および
図10(b)の場合も同様である。
【0071】
(ii)配列2
また、
図9(a)に示すように、配列光源20における複数の微小光源25が、隣接する微小光源同士を線分で結んだ場合に、線分26を一辺とする複数の正三角形が描かれるように配列してなる配列2をとることも好ましい。
この理由は、微小光源をこのように配列することにより、入射光を正六角形状に光拡散させることができる正六角形状光拡散フィルムを効率的に製造することができるためである。
すなわち、配列2とした場合、
図9(b)に示すように、それぞれの微小光源25から照射された活性エネルギー線の広がり50´が、塗布層1の表面において一定パターンを描きながら重なり合うようにすることができるためである。
より具体的には、
図9(b)においては、それぞれの微小光源25から照射された活性エネルギー線の広がり50´が重なり合う部分の中心を貫くように、実線52を引いてあるが、かかる実線52が、規則正しく配列された正六角形を描き出していることが理解される。
つまり、配列2の配列光源20を用いた場合、塗布層1の表面においては、概ね、かかる実線52に相当する部分に対し、その他の部分と比較して照度の大きい活性エネルギー線が照射されることになることが理解される。
したがって、実線52は、いわば活性エネルギー線強度の等高線ということができる。
【0072】
その結果、塗布層1においては、
図9(c)に示すように、実線52に相当する部分を起点として、(B)成分よりも重合速度が速い(A)成分が優先的に光硬化を開始し、成分間での相分離を経つつ、(A)成分に由来した高屈折率の網目領域12cおよび(B)成分に由来した低屈折率の六角形領域14cを形成することになると推定される。
なお、
図9(d)は、
図9(c)における実線52で囲まれた1つの正六角形を取り出した場合の拡大図である。
【0073】
(iii)配列3
また、
図10(a)に示すように、配列光源20における複数の微小光源25が、隣接する微小光源同士を線分26で結んだ場合に、一本の線分が描かれるように配列してある配列3をとることが好ましい。
この理由は、微小光源をこのように配列することにより、入射光を線状に光拡散させることができる線状光拡散フィルムを効率的に製造することができるためである。
すなわち、配列3とした場合、
図10(b)に示すように、それぞれの微小光源25から照射された活性エネルギー線の広がり50´が、塗布層1の表面において一定のパターンを描きながら重なり合うようにすることができるためである。
より具体的には、
図10(b)においては、それぞれの微小光源25から照射された活性エネルギー線の広がり50´の重なり合いにおける輪郭に対して、実線52を引いてあるが、かかる実線52が、各微小光源25からの活性エネルギー線の広がり50´に対応して丸みを帯びているものの、全体としては概ね縦方向に延びる線分を描き出していることが理解される。
つまり、配列3の配列光源20を用いた場合、塗布層1の表面においては、概ね、かかる実線52が、いわば活性エネルギー線強度の等高線となっていることが理解される。
【0074】
その結果、塗布層1においては、
図10(c)に示すように、実線52に相当する部分を起点として、(B)成分よりも重合速度が速い(A)成分が優先的に光硬化を介し、成分間での相分離を経つつ、(A)成分に由来した高屈折率の板状領域12aおよび(b)成分に由来した低屈折率の板状領域14bを形成することになると推定される。
なお、
図10(d)は、
図10(c)における実線52で囲まれた1つの微小光源25に由来する領域を取り出した場合の拡大図である。
【0075】
(iv)その他の配列
また、本発明における微小光源の配列態様は、上述した配列1〜3以外の配列態様であってもよい。
より具体的には、隣接する微小光源同士を線分で結んだ場合に、線分を一辺とする複数の四角形、三角形または一本の線分が描かれるような配列であって、かつ、隣接する微小光源同士の中心間距離が一定でないような配列であってもよい。
但し、この場合、得られる光拡散フィルムの光拡散性能が、光拡散フィルム内で不均一、不均質となる。
さらには、
図11(a)に示すように、隣接する微小光源25を線分26で結んだ場合に、線分26を一辺とする複数の六角形が描かれるような配列であってもよいし、
図11(b)〜(c)に示すように、隣接する微小光源25を線分26で結んだ場合に、線分26を一辺とする複数の八角形および四角形が描かれるような配列であってもよい。
なお、
図11(a)〜(c)のような微小光源の配列を採った場合、得られる多角形状光拡散フィルムにおける拡散光の形状は、
図11(a)の場合には六角形状光拡散、
図11(b)および(c)の場合には少し角の取れた四角形(四角形に近い八角形)となることが予想される。
【0076】
(1)−3 中心間距離
また、配列光源において、隣接する微小光源同士の中心間距離を3〜25mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、隣接する微小光源同士の中心間距離をかかる範囲内の値とすることにより、塗布層の表面における活性エネルギー線の重なり具合を好適な範囲に調整し、所定の内部構造を有する光拡散フィルムをさらに効率的に製造することができるためである。
すなわち、かかる中心間距離が3mm未満の値となると、微小光源同士が物理的に衝突し、配置することができなくなる場合があるためである。一方、かかる中心間距離が25mmを超えた値となると、活性エネルギー線の重なりが得られ難くなり、光拡散フィルム内に所定の内部構造を形成することが困難となり、目的とする多角形状光拡散が実現されず、かつ、不均一、不均質な光拡散フィルムとなる場合があるためである。
したがって、配列光源において、隣接する微小光源同士の中心間距離を4〜20mmの範囲内の値とすることがより好ましく、5〜15mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0077】
(1)−4 指向角の半角
また、微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角θ3を2〜50°の範囲内の値とすることが好ましい。
ここで、指向角とは、LED光源について、
図12に示すような相対光度の分布図を描いた場合において、最も明るい点(相対光度100%)から半分の光度(相対光度50%)が得られる角度の値(相対光度分布曲線上の相対光度50%の2つの点と同分布図下端中央の0の点とで為される角度)を意味する。
したがって、指向角の半角とは、指向角の半分の値であることから、
図12におけるθ3を意味する。
指向角の半角を上述した範囲内の値とすることが好ましい理由は、微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角θ3をかかる範囲内の値とすることにより、塗布層の表面における活性エネルギー線の重なり具合を好適な範囲に調整し、所定の内部構造を有する光拡散フィルムをさらに効率的に製造することができるためである。
すなわち、かかる指向角の半角θ3が2°未満の値となると、活性エネルギー線の重なりが得られ難くなり、光拡散フィルム内に所定の内部構造を形成することが困難になり、目的とする多角形状光拡散が実現されず、かつ、不均一、不均質な光拡散フィルムとなる場合がるためである。一方、かかる指向角の半角θ3が50°を超えた値となると、活性エネルギー線の指向性が極端に低下するため、光拡散フィルム内に所定の内部構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角θ3を3〜40°の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜30°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角θ3とは、
図12に示すように、微小光源25の中心からの活性エネルギー線の照射方向を0°とした場合における活性エネルギー線の広がりを示す角度である。
【0078】
(2)照射距離
また、塗布層の表面と、配列光源の下端と、の間隔を5〜100cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、塗布層の表面と、配列光源の下端と、の間隔をかかる範囲内の値とすることにより、塗布層の表面における活性エネルギー線の重なり具合を好適な範囲に調整し、所定の内部構造を有する光拡散フィルムをさらに効率的に製造することができるためである。
すなわち、かかる間隔が5cm未満の値となると、活性エネルギー線の重なりが得られ難くなり、光拡散フィルム内に所定の内部構造を形成することが困難になり、目的とする多角形状光拡散が実現されず、かつ、不均一、不均質な光拡散フィルムとなる場合があるためである。一方、かかる間隔が100cmを超えた値となると、活性エネルギー線の重なりに関わる微小光源の数が極めて少なくなり、活性エネルギー線の指向性が極端に弱くなる結果、光拡散フィルム内に所定の内部構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、塗布層の表面と、配列光源の下端と、の間隔を8〜90cmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜80cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0079】
(3)ピーク波長
また、微小光源から照射される活性エネルギー線のピーク波長を200〜410nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、活性エネルギー線のピーク波長をかかる範囲内の値とすることにより、所定の内部構造を有する光拡散フィルムをさらに効率的に製造することができるためである。
すなわち、かかるピーク波長が200nm未満の値となると、光重合開始剤による重合開始が適切に生じにくくなる場合があるためである。一方、かかるピーク波長が410nmを超えた値となっても、光重合開始剤による重合開始が適切に生じにくくなる場合があるためである。
したがって、微小光源から照射される活性エネルギー線のピーク波長を250〜405nmの範囲内の値とすることがより好ましく、300〜400nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0080】
(4)照度
また、活性エネルギー線照射における塗布層表面での照度を0.1〜10mW/cm
2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、活性エネルギー線照射における照度をかかる範囲内の値とすることにより、所定の内部構造を効率的に形成することができるためである。
すなわち、かかる照度が0.1mW/cm
2未満の値となると、所定の内部構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、かかる照度の値が10mW/cm
2を超えた値となると、高屈折率重合性化合物と、低屈折率重合性化合物との間で相分離が生じる前に塗布層が硬化してしまい、多角形状光拡散に必要な所定の内部構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、活性エネルギー線照射における塗布層表面での照度を0.3〜7mW/cm
2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜5mW/cm
2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0081】
(5)光量
また、活性エネルギー線照射における塗布層表面での光量を10〜500mJ/cm
2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、活性エネルギー線照射における光量をかかる範囲内の値とすることにより、所定の内部構造を効率的に形成することができるためである。
すなわち、かかる光量が10mJ/cm
2未満の値となると、所定の内部構造を、上方から下方に向けて十分に伸長させることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる光量が500mJ/cm
2を超えた値となると、得られる光拡散フィルムにおいて、黄変等の異常が生じる場合があるためである。
したがって、活性エネルギー線照射における塗布層表面での光量を20〜200mJ/cm
2の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜150mJ/cm
2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0082】
(6)酸素阻害の抑制
また、塗布層に対する活性エネルギー線の照射を、非酸素雰囲気下において行うことが好ましい。
この理由は、非酸素雰囲気下において活性エネルギー線照射を行うことにより、酸素阻害の影響を抑制して、効率的に所定の内部構造を形成することができるためである。
すなわち、仮に活性エネルギー線照射を、非酸素雰囲気下ではなく、酸素雰囲気下にて行った場合、高照度で照射すれば、塗布層の表面近傍の非常に浅い位置に所定の内部構造を形成することができるものの、光拡散に必要な屈折率差を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、低照度で照射した場合には、酸素阻害の影響を受け、所定の内部構造を形成することが困難になる場合があるためである。
なお、「非酸素雰囲気下」とは、塗布層の上面が酸素雰囲気、または酸素が含まれる雰囲気と直接接触していない条件下を意味する。
したがって、例えば、塗布層の上面にフィルムをラミネートしたり、あるいは、空気を窒素ガスで置換して、窒素パージを行ったりした状態で活性エネルギー線照射を行うことが、「非酸素雰囲気下」での活性エネルギー線照射に該当する。
【0083】
また、上述した「非酸素雰囲気下」での活性エネルギー線照射として、塗布層の上面に対し、活性エネルギー線透過シートをラミネートした状態での活性エネルギー線照射を行うことが、特に好ましい。
この理由は、このように活性エネルギー線照射を行うことにより、酸素阻害の影響を効果的に抑制して、さらに効率的に内部構造を形成することができるためである。
すなわち、塗布層の上面に対し、活性エネルギー線透過シートをラミネートすることで、塗布層の上面が酸素と接触することを安定的に防止しながら、当該シートを透過させて、効率的に塗布層に対して活性エネルギー線を照射することができるためである。
なお、活性エネルギー線透過シートとしては、工程(b)(塗布工程)において記載した工程シートのうち、活性エネルギー線が透過可能なものであれば、特に制限なく使用することができる。
【0084】
また、活性エネルギー線透過シートとしては、塗布層と接触しない側の表面中心線平均粗さが2μm以下の値であることが好ましく、1μm未満の値であることが特に好ましい。
この理由は、このような中心線平均粗さであれば、活性エネルギー線が活性エネルギー線透過シートにより拡散されるのを有効に防止し、所定の内部構造を効率的に形成できるためである。
なお、中心線平均粗さは、JIS B 0633により求めることができる。
同様の観点から、活性エネルギー線透過シートのヘーズ値は、0〜8%の範囲内の値であることが好ましく、0.1〜5%の範囲内の値であることが特に好ましい。
なお、ヘーズ値は、JIS K 7136により求めることができる。
【0085】
また、活性エネルギー線透過シートの像鮮明度(スリット幅:0.125mm、0.25mm、0.5mm、1mmおよび2mmの合計値)が、200〜500の範囲内の値であることが好ましく、300〜490の範囲内の値であることが特に好ましい。
この理由は、像鮮明度がこのような範囲内の値であれば、活性エネルギー線を該シートで損失することなく、塗布層に透過させ、所定の内部構造を効率的に形成することができるためである。
なお、像鮮明度は、JIS K 7374により求めることができる。
また、同様の観点から、活性エネルギー線透過シートの波長360nmの光に対する透過率が、30〜100%の範囲内の値であることが好ましく、45〜95%の範囲内の値であることが特に好ましい。
【0086】
(7)装置
また、塗布層に対して活性エネルギー線を照射するための装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、
図7(b)〜(c)に示すような態様とすることが好ましい。
すなわち、塗布層1を載置するための載置部60を備えるとともに、載置部60の上方に載置部60と対向するように配列光源20を備えていることが好ましい。
また、塗布層1の表面と、配列光源60の下端と、の間隔を、適宜、調整できるように、載置部60および配列光源20、あるいはいずれか一方を上下動が可能となるようにしてあることが好ましい。
なお、塗布層に対して活性エネルギー線を照射するための装置は、
図7(b)〜(c)に示すような静置型以外の態様でもよく、例えば、塗布層を平行移動可能なベルトコンベアを備えていてもよいし、かかる塗布層の移動に追従するように、配列光源も平行移動可能にしてもよい。
また、塗布層の移動に追従して、配列光源を構成する微小光源が、適宜、点灯および消灯するようにしてもよい。
さらには、塗布層と、配列光源とが所定の傾斜角度をもって対向できるようにしてもよい。この場合、得られる光拡散フィルム内には、一定の傾斜角を有した所定の内部構造が形成されることになる。
【0087】
6.完全硬化工程
また、塗布層が十分に硬化する光量となるように、工程(c)とは別に、さらに活性エネルギー線を照射することも好ましい。
このときの活性エネルギー線は、塗布層を十分に硬化させることを目的とするものであるため、進行方向がランダムな照射光を用いることが好ましい。
また、完全硬化工程後の光拡散フィルムは、工程シートを剥離することによって、最終的に使用可能な状態となる。
【0088】
7.光拡散フィルムの具体的な構成
(1)内部構造
(1)−1 屈折率
所定の内部構造において、屈折率が異なる領域間の屈折率の差、すなわち、高屈折率領域の屈折率と、低屈折率領域の屈折率との差を0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を0.01以上の値とすることにより、所定の内部構造内において入射光を安定的に反射させて、光拡散フィルムにおける入射角度依存性をより向上させることができるためである。
したがって、所定の内部構造における屈折率が異なる領域間の屈折率の差を0.05以上の値とすることが好ましく、0.1以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した屈折率の差は大きい程好ましいが、所定の内部構造を形成可能な材料を選定する観点から、0.3程度が上限であると考えられる。
【0089】
また、所定の内部構造において、高屈折率領域の屈折率を1.5〜1.7の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高屈折率領域の屈折率が1.5未満の値となると、低屈折率領域との差が小さくなり過ぎて、所定の内部構造を得ることが困難になる場合があるためである。一方、高屈折率領域の屈折率が1.7を超えた値となると、光拡散フィルム用組成物における材料物質間の相溶性が過度に低くなる場合があるためである。
したがって、所定の内部構造における高屈折率領域の屈折率を1.52〜1.65の範囲内の値とすることがより好ましく、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、高屈折率領域の屈折率は、例えば、JIS K 0062に準じて測定することができる。
【0090】
また、所定の内部構造において、低屈折率領域の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる低屈折率領域の屈折率が1.4未満の値となると、得られる光拡散フィルムの剛性が低下する場合があるためである。一方、かかる低屈折率領域の屈折率が1.5を超えた値となると、高屈折率領域の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所定の内部構造を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、所定の内部構造における低屈折率領域の屈折率を1.42〜1.48の範囲内の値とすることがより好ましく、1.44〜1.46の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、低屈折率領域における屈折率は、例えば、JIS K 0062に準じて測定することができる。
【0091】
(1)−2 幅
また、
図1(b)、
図3(b)、
図5(b)に示すような所定の内部構造において、高屈折率領域12および低屈折率領域14の幅を、それぞれ0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、これらの領域の幅を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、所定の内部構造内において入射光を安定的に反射させて、光拡散フィルムにおける入射角度依存性を、より効果的に向上させることができるためである。
すなわち、かかる高屈折率領域および低屈折率領域の幅が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる高屈折率領域および低屈折率領域の幅が15μmを超えた値となると、所定の内部構造内を直進する光が増加し、拡散光の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、所定の内部構造において、高屈折率領域および低屈折率領域の幅を、それぞれ0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、所定の内部構造を構成する高屈折率領域および低屈折率領域の幅や長さは、光学デジタル顕微鏡にてフィルム断面を観察することにより測定することができる。
【0092】
(2)膜厚
また、本発明の光拡散フィルムの膜厚を30〜250μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルムの総膜厚が30μm未満の値となると、所定の内部構造内を直進する入射光が増加し、光拡散を示すことが困難になる場合があるためである。一方、光拡散フィルムの膜厚が250μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射して所定の内部構造を形成する際に、初期に形成された内部構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所定の内部構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、光拡散フィルムの膜厚を40〜200μmの範囲内の値とすることがより好ましく、50〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0093】
8.用途
また、
図13に示すように、本発明により得られる光拡散フィルムを、反射型液晶表示装置100に用いることが好ましい。
この理由は、本発明により得られる光拡散フィルムであれば、外光を集光し効率的に透過させて液晶表示装置の内部に取り込み、かつ、その光を光源として利用できるように、効率的に拡散させることができるためである。
したがって、本発明により得られる光拡散フィルムは、ガラス板(104、108)および液晶106、並びに、鏡面反射板107等からなる液晶セル110の上面、あるいは下面に配置して、反射型液晶表示装置100における光拡散板103として使用することが好ましい。
なお、本発明により得られる光拡散フィルムは、偏光板101や位相差板102に適用することで、広視野角偏光板や広視野位相差板を得ることもできるし、プロジェクション用スクリーン、さらには照明器具にも適用することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を参照して、本発明の光拡散フィルムの製造方法をさらに詳しく説明する。
【0095】
[実施例1]
1.(B)成分の合成
容器内に、(b)成分としての重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール(PPG)1モルに対して、(a)成分としてのイソホロンジイソシアナート(IPDI)2モル、および(c)成分としての2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2モルを収容した後、常法に従って重合させ、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。
【0096】
なお、ポリプロピレングリコールおよびポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定したポリスチレン換算値である。
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC−8020
・GPCカラム :東ソー(株)製(以下、通過順に記載)
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒 :テトラヒドロフラン
・測定温度 :40℃
【0097】
2.光拡散用組成物の調製
次いで、得られた(B)成分としての重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート100重量部に対し、(A)成分としての下記式(3)で表わされる重量平均分子量268のo−フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル A−LEN−10)100重量部と、(C)成分としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン5重量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散フィルム用組成物を得た。
なお、(A)成分および(B)成分の屈折率は、アッベ屈折計[アタゴ社製、品名「アッベ屈折計DR−M2」、Na光源、波長:589nm]によりJIS K0062に準じて測定したところ、それぞれ1.58および1.46であった。
【0098】
【化6】
【0099】
3.光拡散フィルム用組成物の塗布
次いで、得られた光拡散フィルム用組成物を、工程シートとしてのフィルム状の透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと称する。)に対して、アプリケーターを用いて塗布し、膜厚200μmの塗布層を得た。
【0100】
4.塗布層の光硬化
次いで、
図14(a)に示すような配列光源を準備した。なお、
図14(b)には、
図14(a)の配列光源に含まれる微小光源のうち、一塊りの9個を取り出した拡大図が示してある。
かかる配列光源の具体的な構成は、下記の通りである。
・微小光源の配列態様 :デルタ配列(隣接する微小光源同士を線分で結んだ場合に、線分を一辺とする複数の正三角形が描かれるような配列)
・隣接する微小光源同士の中心間距離 :6mm
・微小光源の配列個数 :縦10個×横25個
・微小光源の種類 :LED光源(ナイトライドセミコンダクター(株)製、NS355L−5RLO)
・微小光源の直径 :5mm
・微小光源から照射される活性エネルギー線のピーク波長 :355nm
・微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角 :7.5°
【0101】
次いで、塗布層の露出面側に、活性エネルギー線透過シートとして、厚さ38μmの紫外線透過性を有する剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET382050;紫外線照射側の表面における中心線平均粗さ0.01μm、ヘーズ値1.80%、像鮮明度425、波長360nmの透過率84.3%)をラミネートした。
次いで、
図7(b)〜(c)に示すような装置において、上述した配列光源を、塗布層の表面と、配列光源との間隔が26cmとなるように平行配置した状態で、活性エネルギー線を2分間照射し、膜厚200μmの光拡散フィルムを得た。
なお、光拡散フィルムの膜厚は、定圧厚さ測定器(宝製作所(株)製、テクロック PG−02J)を用いて測定した。
【0102】
また、得られた光拡散フィルムは、
図5(a)〜(b)に示すような、高屈折率の網状領域と、低屈折率の六角形領域と、からなる内部構造を有していることを確認した。
【0103】
5.測定
コノスコープ(autronic−MELCHERS Gmbh社製)を用いて、得られた光拡散フィルムの下側、つまり、工程シートと接していた側より、当該フィルムに対して、フィルム面に対して垂直な方向(入射角θ1=0°)からの入射光を波長500nmのレーザーポインタにて入射させた。
このとき得られた拡散光の写真を
図15(a)に示し、
図15(a)における拡散光の輪郭を図示したものを
図15(b)に示す。
【0104】
[実施例2]
実施例2では、塗布層を光硬化させる際に、
図16(a)〜(b)に示すような配列光源を用いたほかは、実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
また、得られた光拡散フィルムは、
図3(a)〜(b)に示すような、高屈折率の網状領域と、低屈折率の四角形領域と、からなる内部構造を有していることを確認した。
また、実施例2で得られた光拡散フィルムのレーザー顕微鏡写真を
図17(a)〜(b)に示す。
図17(a)は、光拡散フィルムをフィルム面に略平行な面で切断した切断面のレーザー顕微鏡写真であり、
図17(b)は、光拡散フィルムをフィルム面に垂直な面で切断した切断面のレーザー顕微鏡写真である。
さらに、実施例2で得られた光拡散フィルムにおける拡散光の写真を
図18(a)に示し、
図18(a)における拡散光の輪郭を図示したものを
図18(b)に示す。
【0105】
なお、実施例2で用いた配列光源の具体的な構成は、下記の通りである。
・微小光源の配列態様 :四角配列(隣接する微小光源同士を線分で結んだ場合に、線分を一辺とする複数の正方形が描かれるような配列)
・隣接する微小光源同士の中心間距離 :7mm
・微小光源の配列個数 :縦10個×横20個
・微小光源の種類 :LED光源(ナイトライドセミコンダクター(株)製、NS375−5RLM)
・微小光源の直径 :5mm
・微小光源から照射される活性エネルギー線のピーク波長 :375nm
・微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角 :15°
【0106】
[比較例1]
比較例1では、塗布層を光硬化させる際に、
図19(a)〜(b)に示すような配列光源を用いるとともに、塗布層の表面と、配列光源との間隔が15cmとなるように平行配置したほかは、実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
また、得られた光拡散フィルムは、各微小光源由来の活性エネルギー線同士が重なり合わなかったため、
図1、3および5に示すような所定の内部構造が形成されず、よりランダムな別の内部構造が形成されていることを確認した。
また、比較例1で得られた光拡散フィルムにおける拡散光の写真を
図20(a)に示し、
図20(a)における拡散光の輪郭を図示したものを
図20(b)に示す。
【0107】
なお、比較例1で用いた配列光源の具体的な構成は、下記の通りである。
・微小光源の配列態様 :四角配列(隣接する微小光源同士を線分で結んだ場合に、線分を一辺とする複数の正方形が描かれるような配列)
・隣接する微小光源同士の中心間距離 :14mm
・微小光源の配列個数 :縦5個×横10個
・微小光源の種類 :LED光源(ナイトライドセミコンダクター(株)製、NS375−5RLM)
・微小光源の直径 :5mm
・微小光源から照射される活性エネルギー線のピーク波長 :375nm
・微小光源から照射される活性エネルギー線の指向角の半角 :15°