特許第5883634号(P5883634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5883634フィレットローラの欠損判定装置およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883634
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】フィレットローラの欠損判定装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 39/00 20060101AFI20160301BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   B24B39/00
   B24B49/10
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-271783(P2011-271783)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-121646(P2013-121646A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009896
【氏名又は名称】愛知機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(74)【代理人】
【識別番号】100086520
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一夫
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−121638(JP,U)
【文献】 特開昭59−205258(JP,A)
【文献】 特許第5583569(JP,B2)
【文献】 特開平02−009554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 39/00
B24B 49/10
B23Q 17/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機により回転するワークに押し当てるフィレットローラを備えるフィレットロール加工装置における前記フィレットローラの欠損を判定するフィレットローラの欠損判定装置であって、
フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクルの間、所定時間毎に前記電動機の負荷電力を検出する電力検出手段と、
前記所定時間あたりの前記負荷電力の変化量を電力変化量として前記1サイクルの間、逐次算出する電力変化量算出手段と、
算出された前記1サイクル分の前記電力変化量を電力変化量積算値として積算する電力変化量積算手段と、
積算した前記電力変化量積算値を記憶する記憶手段と、
記憶した前記電力変化量積算値のうち今回積算した前記電力変化量積算値と前回積算した前記電力変化量積算値とを比較し、該比較の結果、前記電力変化量積算値が所定回数連続して増加または前記電力変化量積算値が前記所定回数連続して減少した場合に前記フィレットローラは欠損していると判定する欠損判定手段と、
を備えるフィレットローラの欠損判定装置。
【請求項2】
前記所定回数は、6回である請求項記載のフィレットローラの欠損判定装置。
【請求項3】
前記電力変化量積算値が積算される毎に、前記最新所定個の前記電力変化量積算値の移動平均値を算出する移動平均値算出手段を備え、
前記欠損判定手段は、算出した前記移動平均値と今回積算した前記電力変化量積算値とを比較し、該比較の結果、今回積算した前記電力変化量積算値が前記移動平均値を上回る状態が第2所定回数連続した場合または前記比較の結果、今回積算した前記電力変化量積算値が前記移動平均値を下回る状態が前記第2所定回数連続した場合に前記フィレットローラは欠損していると判定する手段である
請求項1または2に記載のフィレットローラの欠損判定装置。
【請求項4】
前記第2所定回数は、9回である請求項記載のフィレットローラの欠損判定装置。
【請求項5】
電動機により回転するワークに押し当てるフィレットローラを備えるフィレットロール加工装置における前記フィレットローラの欠損を判定するフィレットローラの欠損判定方法であって、
(a)フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクルの間、所定時間毎に前記電動機の負荷電力を検出し、
(b)前記所定時間あたりの前記負荷電力の変化量を電力変化量として逐次算出し、
(c)算出された前記1サイクル分の前記電力変化量を電力変化量積算値として積算し、
(d)積算した前記電力変化量積算値を記憶し、
(e)記憶された前記電力変化量積算値のうち今回積算した前記電力変化量積算値と前回積算した前記電力変化量積算値とを比較し、該比較の結果、前記電力変化量積算値が所定回数連続して増加または前記電力変化量積算値が前記所定回数連続して減少した場合に前記フィレットローラは欠損していると判定する
フィレットローラの欠損判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィレットローラの欠損判定装置およびその方法に関し、特に、電動機により回転するワークに押し当てるフィレットローラを備えるフィレットロール加工装置におけるフィレットローラの欠損を判定するフィレットローラの欠損判定装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィレットローラの欠損判定装置としては、振動センサにより検出したロール掛け作動に起因する振動量に基づいてフィレットローラが欠損したか否かを判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この装置では、検出した振動が予め定めた基準レベルを超えた場合に、フィレットローラに欠損が生じたと判定する。
また、従来から、工具を駆動するモータの電力値に基づいて工具の欠損を判定する装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この装置では、複数サイクルの加工を行なったときの複数の電力波形から、同一サンプリグ箇所毎に平均値および標準偏差を求め、これから許容範囲を設定し、実測電力値が許容範囲を超えたときに、工具が欠損したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−121638号公報
【特許文献2】特開2002−341909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の前者の欠損判定装置では、ロール掛け作動に起因する振動量だけを検出することは困難であり、精度良く判定することができない。また、振動センサが複数必要であるなど非常に高価である。一方、後者の欠損判定装置をフィレットローラに適用することも考えられるが、扱うデータ数が多く、大きな記憶容量が必要になるとともに、制御が複雑なものとなる。
本発明のフィレットローラの欠損判定装置およびその方法は、簡易な制御でありながら、精度良くフィレットローラの欠損を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の主目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、フィレットロール加工の際にワークを回転する電動機の所定時間あたりの電力変化量をフィレットロール加工1サイクル分積算した値を用いることにより、フィレットローラの欠損判定の精度を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のフィレットローラの欠損判定装置は、電動機により回転するワークに押し当てるフィレットローラを備えるフィレットロール加工装置における前記フィレットローラの欠損を判定するフィレットローラの欠損判定装
置であって、
フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクルの間、所定時間毎に前記電動機の負荷電力を検出する電力検出手段と、
前記所定時間あたりの前記負荷電力の変化量を電力変化量として前記1サイクルの間、逐次算出する電力変化量算出手段と、
算出された前記1サイクル分の前記電力変化量を電力変化量積算値として積算する電力変化量積算手段と、
積算した前記電力変化量積算値を記憶する記憶手段と、
記憶した前記電力変化量積算値のうち今回積算した前記電力変化量積算値と前回積算した前記電力変化量積算値とを比較し、該比較の結果、前記電力変化量積算値が所定回数連続して増加または前記電力変化量積算値が前記所定回数連続して減少した場合に前記フィレットローラは欠損していると判定する欠損判定手段と、
を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
この本発明のフィレットローラの欠損判定装置では、フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクルの間、ワークを回転する電動機の負荷電力を所定時間毎に検出し、所定時間あたりの負荷電力の変化量を1サイクルの間逐次算出して、算出した1サイクル分の負荷電力の変化量を積算して電力変化量積算値として記憶する。そして、記憶した電力変化量積算値のうち今回積算した電力変化量積算値と前回積算した電力変化量積算値とを比較し、当該比較の結果、電力変化量積算値が所定回数連続して増加または電力変化量積算値が所定回数連続して減少した場合にフィレットローラは欠損していると判定する。品質管理図の考え方の1つを用いるだけだから判定を簡易なもの
とすることができ、簡易な制御で済む。しかも、電力変化量積算値は、フィレットローラの欠損を判断する指標の中でも感度が高いものの一つであることから、精度良くフィレットローラの欠損を判定することができる。
【0008】
また、本発明のフィレットローラの欠損判定装置において、前記電力変化量積算値が積算される毎に、前記最新所定個の前記電力変化量積算値の移動平均値を算出する移動平均値算出手段を備え、前記欠損判定手段は、算出した前記移動平均値と今回積算した前記電力変化量積算値とを比較し、該比較の結果、今回積算した前記電力変化量積算値が前記移動平均値を上回る状態が第2所定回数連続した場合または前記比較の結果、今回積算した前記電力変化量積算値が前記移動平均値を下回る状態が前記第2所定回数連続した場合に前記フィレットローラは欠損していると判定する手段であるものとすることもできる。ここで、前記第2所定回数は、9回であるものとすることもできる。こうすれば、品質管理図の考え方の1つを用いるだけだから判定を簡易なものとすることができる。
【0009】
本発明のフィレットローラの欠損判定方法は、
電動機により回転するワークに押し当てるフィレットローラを備えるフィレットロール加工装置における前記フィレットローラの欠損を判定するフィレットローラの欠損判定方法であって、
(a)フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクルの間、所定時間毎に前記電動機の負荷電力を検出し、
(b)前記所定時間あたりの前記負荷電力の変化量を電力変化量として前記1サイクルの間逐次算出し、
(c)算出された前記1サイクル分の前記電力変化量を電力変化量積算値として積算し、
(d)積算した前記電力変化量積算値を記憶し、
(e)記憶された前記電力変化量積算値のうち今回積算した前記電力変化量積算値と前回積算した前記電力変化量積算値とを比較し、該比較の結果、前記電力変化量積算値が所定回数連続して増加または前記電力変化量積算値が前記所定回数連続して減少した場合に前記フィレットローラは欠損していると判定する
ことを要旨とする。
【0010】
この本発明のフィレットローラの欠損判定方法では、フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクルの間、ワークを回転する電動機の負荷電力を所定時間毎に検出し、所定時間あたりの負荷電力の変化量を1サイクルの間逐次算出して、算出した1サイクル分の負荷電力の変化量を積算して電力変化量積算値として記憶する。そして、記憶した電力変化量積算値のうち今回積算した電力変化量積算値と前回積算した電力変化量積算値とを比較し、当該比較の結果、電力変化量積算値が所定回数連続して増加または電力変化量積算値が所定回数連続して減少した場合にフィレットローラは欠損していると判定する。品質管理図の考え方の1つを用いるだけだから判定を簡易なもの
とすることができ、簡易な制御で済む。しかも、電力変化量積算値は、フィレットローラの欠損を判断する指標の中でも感度が高いものの一つであることから、精度良くフィレットローラの欠損を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例であるフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1の構成の概略を示す構成図である。
図2】フィレットロール加工装置30の構成の概略を示す構成図である。
図3】フィレットロール加工装置30の要部を拡大して示す拡大図である。
図4】フィレットローラ欠損判定装置10により実行されるフィレットローラ欠損判定処理の一例を示すメインフローチャートである。
図5図4のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。
図6】フィレットロール加工装置30によってフィレットロール加工を行なった際の電力変化量積算値の加工サイクル毎の変化の一例を示す説明図である。
図7】第2実施例のフィレットローラ欠損判定装置10により実行されるフィレットローラ欠損判定処理の一例を示すメインフローチャートである。
図8図7のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。
図9】フィレットロール加工装置30によってフィレットロール加工を行なった際の電力変化量積算値の加工サイクル毎の変化の一例を示す説明図である。
図10】フィレットローラ欠損判定装置10により実行されるフィレットローラ欠損判定処理の一例を示すメインフローチャートである。
図11図10のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。
図12図10のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。
図13図10のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施例であるフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1の構成の概略を示す構成図である。
実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えるフィレットロール加工システム1は、図示するように、ベース2と、ベース2上に取り付けられたレール2a上を移動可能に配置された駆動ヘッド4と、同じくレール2a上を移動可能に駆動ヘッド4に対向配置された従動ヘッド6と、レール2aに対してほぼ直交するようにベース2上に取り付けられたレール2b上を移動可能に配置されたフィレットロール加工装置30と、フィレットロール加工装置30におけるフィレットローラRの欠損の有無を判定する実施例のフィレットローラ欠損判定装置10と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット50とを備える。
【0014】
駆動ヘッド4は、駆動ヘッドモータMと、駆動ヘッドモータMの回転軸に接続されるとともにワークとしてのクランクシャフトCSの一端を掴む駆動側チャック4aとを備えており、ベース2上に固定配置された駆動ヘッド用エアシリンダ14の作動によりレール2a上を往復動(図1中左右方向)する。
【0015】
従動ヘッド6は、駆動ヘッド4の駆動側チャック4aと同心状であってクランクシャフトCSの他端を支持可能なセンタ6aを備えており、ベース2上に固定配置された従動ヘッド用エアシリンダ16の作動によりレール2a上を往復動(図1中左右方向)する。即ち、クランクシャフトCSは、一端側を駆動側チャック4aでチャックされ、他端側をセンタ6aにより支持されて、駆動ヘッドモータMの回転駆動によりクランクシャフトCSの図示しないジャーナル部Jを中心として回転する。
【0016】
図2は、フィレットロール加工装置30の構成の概略を示す構成図である。
フィレットロール加工装置30は、図示するように、レール2b上を移動可能に配置されたテーブル32と、テーブル32上に固定配置された支持プレート34と、クランクシャフトCSの軸線と平行な支軸31によって支持プレート34に揺動可能に取り付けられた上部アーム36と、同じく支軸31によって支持プレート34に揺動可能に取り付けられた下部アーム38と、上部アーム36の一端側に取り付けられたロールカセット40と、ロールカセット40に対向するように下部アーム38の一端側に取り付けられたワークレスト42と、上部アーム36および下部アーム38の他端側に架橋的に接続された加圧シリンダ44とを備えており、加圧シリンダ44のロッド44aの伸縮作動により上部アーム36および下部アーム38の一端側が開閉する(支軸31を中心に揺動する)ように構成されている。
なお、フィレットロール加工装置30は、図1に示すように、クランクシャフトCSの加工部位であるジャーナル部およびピン部ごとに独立して支持プレート34,上部アーム36,下部アーム38,ロールカセット40,ワークレスト42および加圧シリンダ44をそれぞれ有している。また、フィレットロール加工装置30は、ベース2に固定配置されたテーブル用エアシリンダ18の作動によりテーブル32をレール2b上で往復動(図2中左右方向)することによって、クランクシャフトCSに接近したり遠ざかったりする。
【0017】
図3は、フィレットロール加工装置30の要部を拡大して示す拡大図である。
ロールカセット40には、図示するように、バックアップローラ40aを介して図示しないカセットハウジングに回転可能に保持されたフィレットローラRを備えており、クランクシャフトCSのジャーナル部Jのフィレット部fやピン部Pのフィレット部fを加圧加工する。図3では、ジャーナル部Jの両端のフィレット部f,fを加圧加工するために、ほぼハの字状の一対のフィレットローラR,Rが記載されているが、片側のフィレット部fだけを加圧加工する場合には、何れか一方のフィレットローラRがあれば良いのは言うまでもない。
【0018】
ワークレスト42は、図2に示すように、クランクシャフトCSの周方向に沿って配置された一対のレストローラ42aを備えており、フィレットローラRによりクランクシャフトCSのジャーナル部Jのフィレット部fやピン部Pのフィレット部fをフィレットロール加工する際に、クランクシャフトCSのジャーナル部Jのフィレット部fを除く軸方向のほぼ全域やピン部Pのフィレット部fを除く軸方向のほぼ全域に接触してクランクシャフトCSの下部側を支持する。
【0019】
フィレットローラ欠損判定装置10は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサを備え、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM76と、データを一時的に記憶するRAM74と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。フィレットローラ欠損判定装置10には、フィレットローラRの欠損の有無を判定するために必要な信号、例えば、駆動ヘッドモータMに供給される電力を検出する電力計82からの電力などが入力されている。フィレットローラ欠損判定装置10は、後述する電子制御ユニット50と通信しており、必要に応じて駆動ヘッドモータMに供給される電力に関するデータを電子制御ユニット50に出力する。
【0020】
電子制御ユニット50は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、操作パネル(図示せず)で設定された指示を受けて、フィレットロール加工装置30の動作制御や駆動ヘッドモータMへの電力量,駆動ヘッド用エアシリンダ14や従動ヘッド用エアシリンダ16,テーブル用エアシリンダ18へのエア供給の切替えを行う切替弁84の駆動制御など装置全体の運転制御を行う。
【0021】
次に、こうして構成された実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えるフィレットロール加工システム1の動作、特に、フィレットローラ欠損判定装置10によるフィレットローラRの欠損の有無を判定する際の動作について説明する。
図4は、フィレットローラ欠損判定装置10により実行されるフィレットローラ欠損判定処理の一例を示すメインフローチャートであり、図5は、図4のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。このルーチンは、フィレットロール加工の開始指示がなされてから、所定時間Tsが経過したときから実行される。ここで、所定時間Tsは、フィレットロール加工開始から電力の立ち上がりが終了するまでに必要な時間に設定される。なお、所定時間Tsは、実施例では、フィレットロール加工の開始指示がなされてから図示しないタイマにより計時されるものとした。
【0022】
フィレットローラ欠損判定処理が実行されると、フィレットローラ欠損判定装置10のCPU72は、まず、電力計82からの電力値Pを入力し(ステップS100)、入力した電力値Pから電力変化量ΔPiを計算するとともに、計算した電力変化量ΔPiをRAM74の所定領域に設定された電力変化量用バッファに格納する処理を実行する(ステップS102)。ここで、ステップS100〜S102の処理は、実施例では、12msec毎に実行されるものとした。そして、電力測定時間Tmが経過したか否か、即ち、1回(1サイクル)のフィレットロール加工が終了したか否かの判定を行う(ステップS104)。ここで、電力変化量ΔPiは、実施例では、今回読み込んだ電力値Pnから前回読み込んだ電力値Pn−1を減じて絶対値を算出するものとし、電力測定時間Tmは、実施例では、1回のフィレットロール加工に要する時間よりも若干短い時間に設定するものとした。電力測定時間Tmをこのような値に設定することにより、加工終了時における電力の立下りの際の不安定な電力を判定から除外することができる。
【0023】
電力測定時間Tmが経過していないときには、電力測定時間Tmが経過するまでステップS100〜ステップS104までの処理を繰り返し実行する。電力測定時間Tmが経過、即ち、1サイクルのフィレットロール加工が終了すると、電力変化量用バッファに格納されている電力変化量ΔPiを積算することにより今回のフィレットロール加工における電力変化量積算値ΔPjを計算するとともに、計算した電力変化量積算値ΔPjをRAM74の所定領域に設定された電力変化量積算値用バッファに格納する(ステップS106)。
【0024】
そして、今回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjと、前回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPj−1とを比較する(ステップS108)。この比較において、今回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjの方が前回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きければ、連続増加フラグf1の値を調べ(ステップS110)、連続増加フラグf1が値1であれば欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS112)。ここで、連続増加フラグf1は、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい状態が連続しているか否かを判定するためのフラグであり、電力変化量積算値ΔPjと電力変化量積算値ΔPj−1との比較において、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きいと判断され続ける限りは値1が設定され、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1以下となったとき、即ち、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい状態が連続しなくなったとき、或いは、後述する本ルーチンのステップS116においてフィレットローラRが欠損している(異常)と判定されたときに値0にリセットされる。また、欠損判定カウンタC1は、フィレットローラRが欠損したか否かを判定する際に用いられるカウンタであり、本実施例では0〜5までを順に値1ずつインクリメントされ、フィレットローラRが欠損していると判定されたときに値0にリセットされる。
【0025】
一方、ステップS110において、連続増加フラグf1が値1でないと判定されたときは、連続増加フラグf1を値1にセットするとともに(ステップS120)、連続減少フラグf2の値を調べ(ステップS122)、連続減少フラグf2が値0であれば欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS112)。連続減少フラグf2が値0でないときには、連続減少フラグf2および欠損判定第2カウンタC2をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS124)、欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS112)。ここで、連続減少フラグf2は、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも小さい状態が連続しているか否かを判定するためのフラグであり、電力変化量積算値ΔPjと電力変化量積算値ΔPj−1との比較において、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも小さいと判断され続ける限りは値1が設定され、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1以上となったとき、即ち、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも小さい状態が連続しなくなったとき、或いは、ステップS116においてフィレットローラRが欠損している(異常)と判定されたときに値0にリセットされる。また、欠損判定第2カウンタC2は、フィレットローラRが欠損したか否かを判定する際に用いられるカウンタであり、本実施例では欠損判定カウンタC1と同様、0〜5までを順に値1ずつインクリメントされ、フィレットローラRが欠損していると判定されたときに値0にリセットされる。
【0026】
また、ステップS108において、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも小さければ、図5に示すように、連続減少フラグf2の値を調べ(ステップS126)、連続減少フラグf2が値1であれば欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS128)。一方、ステップS126において、連続減少フラグf2が値1でないと判定されたときは、連続減少フラグf2を値1にセットするとともに(ステップS130)、連続増加フラグf1の値を調べ(ステップS132)、連続増加フラグf1が値0であれば欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS128)。連続増加フラグf1が値0でないときには、連続増加フラグf1および欠損判定カウンタC1をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS134)、欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS128)。
【0027】
こうして欠損判定カウンタC1や欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントしたら(ステップS114,S128)、続いて欠損判定カウンタC1または欠損判定第2カウンタC2が値5以上であるか否かを判定し(ステップS114)、欠損判定カウンタC1または欠損判定第2カウンタC2の何れか一方でも値5以上であると判定されたとき、即ち、今回の電力変化量積算値ΔPjと前回の電力変化量積算値ΔPj−1との比較において5回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きいと判定されたとき、または、今回の電力変化量積算値ΔPjと前回の電力変化量積算値ΔPj−1との比較において5回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも小さいと判定されたときに、フィレットローラRに欠損が生じているものとして「異常」を出力するとともに(ステップS116)、全てのカウンタC1,C2および全てのフラグf1,f2を値0にリセットして(ステップS118)、本処理を終了する。
【0028】
図6は、フィレットロール加工装置30によってフィレットロール加工を行なった際の電力変化量積算値の加工サイクル毎の変化の一例を示す説明図である。
今回の電力変化量積算値ΔPjと前回の電力変化量積算値ΔPj−1との比較において5回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(または小さい)と判定されたときとは、実施例では、図6に示すように、最初に今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きいと判断されたときの前回の加工サイクル数a1における電力変化量積算値ΔPj−1を第1点目として、第6点目である加工サイクル数a6まで連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(または小さい)と判断されたときを意味するものとした。
【0029】
一方、ステップS114において、欠損判定カウンタC1や欠損判定カウンタC2の何れもが値5未満、即ち、今回の電力変化量積算値ΔPjと前回の電力変化量積算値ΔPj−1との比較において、今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きいまたは小さいとの判定が5回連続しなかったときには、何もせずに本処理を終了する。
【0030】
なお、ステップS108において、電力変化量積算値ΔPjと電力変化量積算値ΔPj−1とが同値であると判定されたときには、全てのカウンタC1,C2および全てのフラグf1,f2を値0にリセットして(ステップS118)、本処理を終了する。
【0031】
以上説明した実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1によれば、フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクル分の電力変化量ΔPiを電力変化量積算値ΔPjとして積算し、今回の電力変化量積算値ΔPjとして記憶するとともに、今回記憶した電力変化量積算値ΔPjと前回記憶した電力変化量積算値ΔPj−1とを比較して、5回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjの方が前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(増加)または小さい(減少)と判定したときに、フィレットローラRに欠損が生じているものと判断するだけだから、フィレットローラRの欠損の有無を簡易な制御で判定することができる。しかも、電力変化量積算値ΔPjは、フィレットローラRの欠損を判断する指標の中でも感度が高いものの一つであることから、精度良くフィレットローラRの欠損を判定することができる。
【0032】
実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1では、5回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きいと判定されたときとは、図6に示すように、最初に今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(または小さい)と判断されたときの前回の加工サイクル数a1における電力変化量積算値ΔPj−1を第1点目として、第6点目である加工サイクル数a6まで連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(または小さい)と判断されたときを意味するものとしたが、最初に今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きいと判断されたときの今回の加工サイクル数における電力変化量積算値ΔPj−1を第1点目として、第7点目である加工サイクル数まで連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(または小さい)と判断されたときを意味するものとしても構わない。
【実施例2】
【0033】
次に、第2実施例のフィレットローラ欠損判定装置を備えたフィレットロール加工システムについて説明する。
第2実施例のフィレットローラ欠損判定装置を備えたフィレットロール加工システムは、フィレットローラ欠損判定装置10における処理が異なる点を除いて実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1と同一の構成をしている。従って、第2実施例のフィレットローラ欠損判定装置を備えたフィレットロール加工システムでは、図1図3に例示する実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1の構成を用いて実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1とは異なる処理の部分について説明する。
図7は、第2実施例のフィレットローラ欠損判定装置10により実行されるフィレットローラ欠損判定処理の一例を示すメインフローチャートであり、図8は、図7のメインフローチャートから分岐したサブフローチャートである。このルーチンは、フィレットロール加工の開始指示がなされてから、所定時間Tsが経過したときから実行される。
【0034】
フィレットローラ欠損判定処理が実行されると、フィレットローラ欠損判定装置10のCPU72は、まず、図4のフィレットローラ欠損判定処理のステップS100〜S106の処理と同様に、電力値Pを入力し(ステップS200)、入力した電力値Pから電力変化量ΔPiを計算するとともに、計算した電力変化量ΔPiを電力変化量用バッファに格納し(ステップS202)、電力測定時間Tmが経過したか否かの判定を行なって(ステップS204)、電力測定時間Tmが経過していないときには、電力測定時間Tmが経過するまでステップS200〜S204までの処理を繰り返し実行し、電力測定時間Tmが経過したときに、今回のフィレットロール加工における電力変化量積算値ΔPjを計算するとともに、計算した電力変化量積算値ΔPjを電力変化量積算値用バッファに格納する(ステップS206)。
【0035】
次に、今回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjを含む、電力変化量積算値用バッファに格納された直近の20ケの電力変化量積算値ΔPj−19〜ΔPjを用いて、今回のフィレットロール加工における電力変化量積算値ΔPjの移動平均値ΔPmavjを算出するとともに、RAM76の所定領域に設定された移動平均値用バッファに格納する(ステップS208)。ここで、電力変化量積算値ΔPjを含む直近20ケの電力変化量積算値ΔPj−19〜ΔPjの移動平均値ΔPmavjは、周知の移動平均値算出方法により求めることができる。
実施例では、移動平均値ΔPmavjは、前回に求めた電力変化量積算値ΔPmavj−1に、今回求めた電力変化量積算値ΔPjを値20で除したものを加え、一番古い、即ち21ケ前に電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPmavj−20を値20で除したものを差し引くことにより求めるものとした。
【0036】
そして、今回,電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjと、今回求めた移動平均値ΔPmavjとを比較する(ステップS210)。この比較において、今回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjの方が、今回求めた移動平均値ΔPmavjよりも大きければ、連続増加フラグf1の値を調べ(ステップS212)、連続増加フラグf1が値1であれば欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS214)。ここで、連続増加フラグf1は、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい状態が連続しているか否かを判定するためのフラグであり、電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きいと判断され続ける限りは値1が設定され、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavj以下となったとき、即ち、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい状態が連続しなくなったとき、或いは、後述する本ルーチンのステップS218において、フィレットローラRが欠損している(異常)と判定されたときに値0にリセットされる。また、欠損判定カウンタC1は、フィレットローラRが欠損したか否かを判定する際に用いられるカウンタであり、本実施例では0〜9までを順に値1ずつインクリメントされ、フィレットローラRが欠損していると判定されたときに値0にリセットされる。
【0037】
一方、ステップS212において、連続増加フラグf1が値1でないと判定されたときは、連続増加フラグf1を値1にセットするとともに(ステップS222)、連続減少フラグf2の値を調べ(ステップS224)、連続減少フラグf2が値0であれば欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS214)。連続減少フラグf2が値0でないときには、連続減少フラグf2および欠損判定第2カウンタC2をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS226)、欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS214)。ここで、連続減少フラグf2は、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さい状態が連続しているか否かを判定するためのフラグであり、電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さいと判断され続ける限りは値1が設定され、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavj以上となったとき、即ち、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さい状態が連続しなくなったとき、或いは、ステップS218において、フィレットローラRが欠損している(異常)と判定されたときに値0にリセットされる。また、欠損判定第2カウンタC2は、フィレットローラRが欠損したか否かを判定する際に用いられるカウンタであり、本実施例では欠損判定カウンタC1と同様、0〜9までを順に値1ずつインクリメントされ、フィレットローラRが欠損していると判定されたときに値0にリセットされる。
【0038】
また、ステップS210において、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さければ、図7に示すように、連続減少フラグf2の値を調べ(ステップS230)、連続減少フラグf2が値1であれば欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS232)。一方、ステップS230において、連続減少フラグf2が値1でないと判定されたときは、連続減少フラグf2を値1にセットするとともに(ステップS234)、連続増加フラグf1の値を調べ(ステップS236)、連続増加フラグf1が値0であれば欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS232)。連続増加フラグf1が値0でないときには、連続増加フラグf1および欠損判定カウンタC1をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS238)、欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS232)。
【0039】
こうして欠損判定カウンタC1や欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントしたら(ステップS214,S232)、続いて欠損判定カウンタC1または欠損判定第2カウンタC2が値9以上であるか否かを判定し(ステップS216)、欠損判定カウンタC1または欠損判定第2カウンタC2の何れか一方でも値9以上であると判定されたとき(ステップS216)、即ち、今回の電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において9回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きいと判定されたとき、または今回の電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において9回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さいと判定されたときに、フィレットローラRに欠損が生じているものとして「異常」を出力するとともに(ステップS218)、全てのカウンタC1,C2および全てのフラグf1,f2を値0にリセットして(ステップS220)、本処理を終了する。
【0040】
図9は、フィレットロール加工装置30によってフィレットロール加工を行なった際の電力変化量積算値の加工サイクル毎の変化の一例を示す説明図である。
今回の電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において9回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい(または小さい)と判定されたときとは、実施例では、図9に示すように、最初に今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい(または小さい)と判断されたときの今回の加工サイクル数a1における電力変化量積算値ΔPjを第1点目として、第9点目である加工サイクル数a9まで連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい(または小さい)と判断されたときを意味するものとした。
【0041】
一方、ステップS216において、欠損判定カウンタC1や欠損判定カウンタC2の何れもが値9未満、即ち、今回の電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において、今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きいまたは小さいとの判定が9回連続しなかったときには、何もせずに本処理を終了する。
【0042】
なお、ステップS210において、電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとが同値であると判定されたときには、全てのカウンタC1,C2および全てのフラグf1,f2を値0にリセットして(ステップS220)、本処理を終了する。
【0043】
以上説明した実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1によれば、フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクル分の電力変化量ΔPiを電力変化量積算値ΔPjとして積算するとともに、今回積算した電力変化量積算値ΔPjを含む、直近の20ケの電力変化量積算値ΔPj−19〜ΔPjの移動平均値ΔPmavjを算出し、今回積算した電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとを比較して、9回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjの方が移動平均値ΔPmavjよりも大きい(増加)または小さい(減少)と判定したときに、フィレットローラRに欠損が生じているものと判断するだけだから、フィレットローラRの欠損の有無を簡易な制御で判定することができる。しかも、電力変化量積算値ΔPjは、フィレットローラRの欠損を判断する指標の中でも感度が高いものの一つであることから、精度良くフィレットローラRの欠損を判定することができる。
【実施例3】
【0044】
次に、第3実施例のフィレットローラ欠損判定装置を備えたフィレットロール加工システムについて説明する。
第3実施例のフィレットローラ欠損判定装置を備えたフィレットロール加工システムは、フィレットローラ欠損判定装置10における処理が異なる点を除いて実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1と同一の構成をしている。従って、第3実施例のフィレットローラ欠損判定装置を備えたフィレットロール加工システムでは、図1図3に例示する実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1の構成を用いて実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1とは異なる処理の部分について説明する。
【0045】
第3実施例のフィレットローラ欠損判定装置10では、図4および図5のフィレットローラ欠損判定処理に代えて図10図13のフィレットローラ欠損判定処理が実行される。この処理では、図4のフィレットローラ欠損判定処理のステップS114において、欠損判定カウンタC1および欠損判定第2カウンタC2の値が何れも5未満であった場合に、何もせずに処理を終了していたのに代えて図12および図13の処理を実行する点を除いて図4および図5のフィレットローラ欠損判定処理と同一である。
ここで、図12および図13の処理は、図7および図8のフィレットローラ欠損判定処理と同一のものである。即ち、第3実施例のフィレットローラ欠損判定装置10では、今回記憶した電力変化量積算値ΔPjと前回記憶した電力変化量積算値ΔPj−1とを比較して(ステップS314)、5回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjの方が前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(増加)または小さい(減少)と判定されなかったときには、今回積算した電力変化量積算値ΔPjと今回積算した電力変化量積算値ΔPjを含む、直近の20ケの電力変化量積算値ΔPj−19〜ΔPjの移動平均値ΔPmavjとを比較して(ステップS348)、9回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjの方が移動平均値ΔPmavjよりも大きい(増加)または小さい(減少)と判定したときに、フィレットローラRに欠損が生じているものと判断する(ステップS316)。以下、異なる処理を中心に第3実施例のフィレットローラ欠損判定装置10が実行するフィレットローラ欠損判定処理について説明する。
【0046】
フィレットローラ欠損判定処理が実行されると、フィレットローラ欠損判定装置10のCPU72は、図10のフィレットローラ欠損判定処理のステップS300〜S314の処理を実行する。即ち、電力値Pを入力し(ステップS300)、入力した電力値Pから電力変化量ΔPiを計算するとともに、計算した電力変化量ΔPiを電力変化量用バッファに格納し(ステップS302)、電力測定時間Tmが経過したか否かの判定を行なって(ステップS304)、電力測定時間Tmが経過していないときには、電力測定時間Tmが経過するまでステップS300〜S304までの処理を繰り返し実行し、電力測定時間Tmが経過したときに、今回のフィレットロール加工における電力変化量積算値ΔPjを計算するとともに、計算した電力変化量積算値ΔPjを電力変化量積算値用バッファに格納する(ステップS306)。
【0047】
そして、今回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjと、前回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPj−1とを比較し(ステップS308)、今回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjの方が前回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きければ、連続増加フラグf1の値を調べ(ステップS310)、連続増加フラグf1が値1であれば欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS312)。一方、ステップS310において、連続増加フラグf1が値1でないと判定されたときは、連続増加フラグf1を値1にセットするとともに(ステップS320)、連続減少フラグf2の値を調べ(ステップS322)、連続減少フラグf2が値0であれば欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS312)。連続減少フラグf2が値0でないときには、連続減少フラグf2および欠損判定第2カウンタC2をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS324)、欠損判定カウンタC1を値1だけインクリメントする(ステップS312)。
【0048】
一方、ステップS308において、電力変化量積算値ΔPjが電力変化量積算値ΔPj−1よりも小さければ、図11に示すように、連続減少フラグf2の値を調べ(ステップS326)、連続減少フラグf2が値1であれば欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントし(ステップS328)、ステップS326において連続減少フラグf2が値1でないと判定されたときは、連続減少フラグf2を値1にセットするとともに(ステップS332)、連続増加フラグf1の値を調べ(ステップS332)、連続増加フラグf1が値0であれば欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS336)。ステップS332において、連続増加フラグf1が値0でないときには、連続増加フラグf1および欠損判定カウンタC1をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS336)、欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントする(ステップS328)。
【0049】
こうして欠損判定カウンタC1や欠損判定第2カウンタC2を値1だけインクリメントしたら、続いて欠損判定カウンタC1または欠損判定第2カウンタC2が値5以上であるか否かを判定し(ステップS314)、欠損判定カウンタC1または欠損判定第2カウンタC2の何れか一方でも値5以上であると判定されたときに、フィレットローラRに欠損が生じているものとして「異常」を出力するとともに(ステップS316)、カウンタC1,C2およびフラグf1,f2を値0にリセットして(ステップS318)、本処理を終了する。
【0050】
一方、ステップS314において、欠損判定カウンタC1や欠損判定カウンタC2の何れもが値5未満のときには、図12に示すように、今回、電力変化量積算値用バッファに格納した電力変化量積算値ΔPjを含む、電力変化量積算値用バッファに格納された直近の20ケの電力変化量積算値ΔPj−19〜ΔPjを用いて、今回のフィレットロール加工における電力変化量積算値ΔPjの移動平均値ΔPmavjを算出し(ステップS340)、今回格納した電力変化量積算値ΔPjと今回求めた移動平均値ΔPmavjとを比較して(ステップS342)、今回格納した電力変化量積算値ΔPjの方が今回求めた移動平均値ΔPmavjよりも大きければ、連続増加フラグf3の値を調べ(ステップS344)、連続増加フラグf3が値1であれば欠損判定第3カウンタC3を値1だけインクリメントする(ステップS346)。ここで、連続増加フラグf3は、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい状態が連続しているか否かを判定するためのフラグであり、電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きいと判断され続ける限りは値1が設定され、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavj以下となったとき、即ち、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい状態が連続しなくなったとき、或いは、後述するステップS350において、フィレットローラRが欠損している(異常)と判定されたときに値0にリセットされる。また、欠損判定第3カウンタC3は、フィレットローラRが欠損したか否かを判定する際に用いられるカウンタであり、本実施例では0〜9までを順に値1ずつインクリメントされ、フィレットローラRが欠損していると判定されたときに値0にリセットされる。
【0051】
一方、ステップS344において連続増加フラグf3が値1でないと判定されたときは、連続増加フラグf3を値1にセットするとともに(ステップS354)、連続減少フラグf4の値を調べ(ステップS356)、連続減少フラグf4が値0であれば欠損判定第3カウンタC3を値1だけインクリメントする(ステップS346)。連続減少フラグf4が値0でないときには、連続減少フラグf4および欠損判定第4カウンタC4をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS358)、欠損判定第3カウンタC3を値1だけインクリメントする(ステップS346)。ここで、連続減少フラグf4は、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さい状態が連続しているか否かを判定するためのフラグであり、電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さいと判断され続ける限りは値1が設定され、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavj以上となったとき、即ち、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さい状態が連続しなくなったとき、或いは、後述するステップS350において、フィレットローラRが欠損している(異常)と判定されたときに値0にリセットされる。また、欠損判定第4カウンタC4は、フィレットローラRが欠損したか否かを判定する際に用いられるカウンタであり、本実施例では欠損判定第3カウンタC3と同様、0〜9までを順に値1ずつインクリメントされ、フィレットローラRが欠損していると判定されたときに値0にリセットされる。
【0052】
一方、ステップS342において、電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも小さければ、図13に示すように、連続減少フラグf4の値を調べ(ステップS360)、連続減少フラグf4が値1であれば欠損判定第4カウンタC4を値1だけインクリメントする(ステップS362)。一方、ステップS360において、連続減少フラグf4が値1でないと判定されたときは、連続減少フラグf4を値1にセットするとともに(ステップS364)、連続増加フラグf3の値を調べ(ステップS366)、連続増加フラグf3が値0であれば欠損判定第4カウンタC4を値1だけインクリメントする(ステップS362)。連続増加フラグf3が値0でないときには、連続増加フラグf3および欠損判定第3カウンタC3をそれぞれ値0にリセットするとともに(ステップS368)、欠損判定第4カウンタC4を値1だけインクリメントする(ステップS362)。
【0053】
こうして欠損判定第3カウンタC3や欠損判定第4カウンタC4を値1だけインクリメントしたら、続いて欠損判定第3カウンタC3または欠損判定第4カウンタC4が値9以上であるか否かを判定し(ステップS348)、欠損判定第3カウンタC3または欠損判定第4カウンタC4の何れか一方でも値9以上であると判定されたとき、即ち、今回の電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において9回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きい、或いは小さいと判定されたときに、フィレットローラRに欠損が生じているものとして「異常」を出力するとともに(ステップS350)、全てのカウンタC1,C2,C3,C4および全てのフラグf1,f2,f3,f4を値0にリセットして(ステップS352)、本処理を終了する。
【0054】
一方、ステップS348において、欠損判定カウンタC3や欠損判定カウンタC4の何れもが値9未満、即ち、今回の電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとの比較において、今回の電力変化量積算値ΔPjが移動平均値ΔPmavjよりも大きいまたは小さいとの判定が9回連続しなかったときには、何もせずに本処理を終了する。
【0055】
以上説明した第3実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1によれば、フィレットロール加工が開始されてから終了するまでの1サイクル分の電力変化量ΔPiを電力変化量積算値ΔPjとして積算し、今回の電力変化量積算値ΔPjとして記憶するとともに、今回記憶した電力変化量積算値ΔPjと前回記憶した電力変化量積算値ΔPj−1とを比較して、5回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjの方が前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(増加)または小さい(減少)と判定したときには、フィレットローラRに欠損が生じているものと判断し、今回の電力変化量積値ΔPjの方が前回の電力変化量積算値ΔPj−1よりも大きい(増加)または小さい(減少)との判定が5回連続しないときには、今回の電力変化量積算値ΔPjを含む、直近の20ケの電力変化量積算値ΔPj−19〜ΔPjの移動平均値ΔPmavjを算出するとともに、今回の電力変化量積算値ΔPjと移動平均値ΔPmavjとを比較して、9回連続して今回の電力変化量積算値ΔPjの方が移動平均値ΔPmavjよりも大きい(増加)または小さい(減少)と判定したときに、フィレットローラRに欠損が生じているものと判断するから、フィレットローラRの欠損の有無を簡易な制御でより確実に判定することができる。
【0056】
各実施例のフィレットローラ欠損判定装置10を備えたフィレットロール加工システム1では、装置全体の運転制御を行なう電子制御ユニット50とは別にフィレットローラ欠損判定装置10を設けるものとしたが、フィレットローラ欠損判定装置10は設けず電子制御ユニット50がフィレットローラRの欠損を判定するものとしても構わない。
【0057】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 フィレットロール加工システム
2 ベース
2a,2b レール
4 駆動ヘッド
4a 駆動側チャック
6 従動ヘッド
6a センタ
10 フィレットローラ欠損判定装置
14 駆動ヘッド用エアシリンダ
16 従動ヘッド用エアシリンダ
18 テーブル用エアシリンダ
30 フィレットロール加工装置
31 支軸
32 テーブル
34 支持プレート
36 上部アーム
38 下部アーム
40 ロールカセット
40a バックアップローラ
42 ワークレスト
44 加圧シリンダ
44a ロッド
50 電子制御ユニット
72 CPU
74 RAM
76 ROM
82 電力計
84 切替弁
CS クランクシャフト
M 駆動ヘッドモータ
R フィレットローラ
J ジャーナル部
f フィレット部
P ピン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13