(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ロストモーション機構は、上記第1圧縮子または上記第2圧縮子のいずれか一方に形成されたキー溝と、上記第1圧縮子または上記第2圧縮子のいずれか他方に形成された上記キー溝に係合するキーとからなることを特徴とする請求項1に記載の人工芝用耐久試験機。
上記ロストモーション機構は、上記第1圧縮子の回転移動量と、上記第2圧縮子の回転移動量とが、ほぼ同一となるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の人工芝用耐久試験機。
請求項1ないし6のいずれか1項に記載された人工芝用耐久試験機を用いて、圧縮加重が300〜3000N、回転角5〜45°、回転速度10〜50rpmの条件下で上記第1および第2圧縮子による5万回以上の往復運動に耐えうる耐久性能を有することを特徴とする人工芝。
【背景技術】
【0002】
パイル間に充填材を充填した人工芝は、天然芝に近い特性を持つ人工芝サーフェイスとして、サッカーやラグビー、野球場などの各種運動競技施設に普及している。また最近では、全天候型である特徴を生かして、学校のグラウンド用として用いられることも年々増えており、人工芝の稼働率が高められてきている。
【0003】
人工芝には、ゴム底の運動靴から各種競技用スパイク等の様々な靴によって負荷がかけられるため、稼働率の向上に伴い、様々な靴底との摩擦による摩耗や繰り返し耐久性を十分に評価することが不可欠とされ、そのため種々の耐久試験が行われている。
【0004】
人工芝の耐久試験機には、代表的なものとして、リスポート試験機と、フラットソール試験機とがある。
図8に示すように、リスポート試験機1aでは、サッカーのスパイクに設けられているポイント(スタッド)4を表面に多数配置した鉄輪3を人工芝2の上で往復運動を繰り返すことにより、人工芝の耐久試験を行っている。(類似例として、特許文献1参照。)
【0005】
しかしながら、リスポート試験機1aによると、鉄輪3に取り付けられたポイント4が、往復運動中に人工芝2に充填された充填材を掻き乱すため、往復運動を繰り返す内に轍ができてしまう。その結果、部分的に人工芝のパイルが抜けたり、基布を傷めたりするおそれがあるため、定期的に運転を止めて充填材を均したり、充填材を再充填する必要があった。
【0006】
他方、フラットソール試験機1bは、
図9に示すように、試験台上に敷設された人工芝2の上に、運動靴の底を模したゴム板5を、スライド装置6によって往復的に擦り付けることにより、人工芝の耐久試験を行う。
【0007】
しかしながら、フラットソール試験機1bについても、リスポート試験機1aと同様に、充填材の移動を防ぐことができず、定期的に均し作業や、充填材の再充填作業が必要となる。
【0008】
また、リスポート試験1aは前後左右、フラットソール試験機1bは、単に前後に往復移動するのみであって、足の動きに似たひねり動作(ねじり動作)モードを備えていないため、より使用状態に近似した状態で耐久性能を評価できているとはいえなかった。
【0009】
さらに、いずれの試験機も大掛かりな装置で、試験体サイズや負荷を与える摩耗機構の重量ともに大きく、試験体の交換作業や、試験途中での充填材等のメンテナンスにも手間と時間がかかるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より使用状態に近い状態で長時間にわたって安定した試験を行うことができる人工芝用耐久試験機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。すなわち、パイル間に充填材が充填された人工芝に対して所定の負荷を与えて、上記人工芝の耐久性能を試験する人工芝用耐久試験機において、所定の固定手段を介して上記人工芝が設置される試験台と、上記試験台に対してほぼ直交する回転軸線を中心として回転しながら、上記人工芝に所定の圧縮負荷を与える圧縮部とを含み、上記圧縮部は、下面に上記人工芝に接触する接触部を有し、所定の回転駆動手段により回転する円盤状の第1圧縮子と、下面に上記人工芝に接触する接触部を有し、上記第1圧縮子の外周に沿って同軸的に配置されるリング状の第2圧縮子とを備え、上記第2圧縮子は、ロストモーション機構を介して上記第1圧縮子の回転運動に追従して回転することを特徴としている。
【0013】
より好ましい態様として、上記ロストモーション機構は、上記第1圧縮子または上記第2圧縮子のいずれか一方に形成されたキー溝と、上記第1圧縮子または上記第2圧縮子のいずれか他方に形成された上記キー溝に係合するキーとからなることを特徴としている。
【0014】
さらに好ましい態様として、上記ロストモーション機構は、上記第1圧縮子の回転移動量と、上記第2圧縮子の回転移動量とが、ほぼ同一となるように設定されていることを特徴としている。
【0015】
また、上記第1圧縮子の上記
接触部と、上記第2圧縮子の上記
接触部は、同一
平面に存在していることを特徴としている。
【0016】
さらに、上記回転駆動手段は、所定の角度幅で上記第1圧縮子を往復的に回転駆動することを特徴としている。
【0017】
上記試験台は、上記回転駆動手段の回転軸線と同軸的に配置されるシリンダを有し、上記シリンダの底部に上記人工芝が設置されているとともに、上記第2圧縮子は、上記シリンダの内周面に沿って同軸的に挿通可能に形成されており、上記シリンダの内径をD1、上記第2圧縮子の直径をD2、上記充填材の平均粒径をdとして、上記シリンダおよび上記圧縮子は、
D1−D2<d
を満足するように形成されていることを特徴としている。
【0018】
本発明には、この人工芝用耐久試験によって以下の耐久性能を有する人工芝も含まれる。すなわち、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された人工芝用耐久試験機を用いて、圧縮加重が300〜3000N、回転角5〜45°、回転速度10〜50rpmの条件下で上記接触子を上記人工芝に往復的に5万回以上の耐久性能を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、人工芝に人の足の動きに近いねじり動作の圧縮荷重を加えることができ、より使用状態に近似した耐久試験をおこなうことができる。さらに、圧縮部が円盤状の第1圧縮子と、第1圧縮子の外周に配置されるリング状の第2圧縮子とを備え、それらがロストモーション機構を介して連結されていることにより、第1圧縮子と第2圧縮子の回転移動量を変えることができ、より使用状態に近い耐久性能を試験することができる。
【0020】
また、ロストモーション機構として第1圧縮子または第2圧縮子のいずれか一方に形成されたキー溝と、いずれか他方に形成されたキーとからなり、キー溝の回転方向の両端面に対してキーが所定の回転振り幅で当接するように形成されていることにより、回転数や回転角を自由に調節することができ、より使用状態に近くすることができる。
【0021】
さらには、上記ロストモーション機構は、上記第1圧縮子の回転移動量と、上記第2圧縮子の回転移動量とが同一となるように設定されていることにより、単位面積あたりの負荷量(回転数)を均一にすることができ、使用状態に近い状態で試験することができる。
【0022】
また、上記第1圧縮子の上記
接触部と、上記第2圧縮子の上記
接触部は、同一
平面に存在していることにより、人工芝に同じ条件で摩擦することができる。さらに、上記回転駆動手段は、所定の角度幅で上記第1圧縮子を往復的に回転駆動することにより、人工芝全体に均一に負荷をかけて試験することができる。
【0023】
また、上記試験台は、上記回転駆動手段の回転軸線と同軸的に配置されるシリンダを有し、上記シリンダの底部に上記人工芝が設置されているとともに、上記第2圧縮子は、上記シリンダの内周面に沿って同軸的に挿通可能に形成されており、上記シリンダの内径をD1、上記第2圧縮子の直径をD2、上記充填材の平均粒径をdとして、上記シリンダおよび上記圧縮子は、D1−D2<dを満足するように形成されていることにより、シリンダと圧縮子の間の隙間から充填材が抜け落ちることを防止することができるばかりでなく、使用状態を長時間にわたって均一に保つことができる。
【0024】
また、本発明には、この人工芝用耐久試験によって以下の耐久性能を有する人工芝も含まれる。すなわち、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された人工芝用耐久試験機を用いて、圧縮加重が300〜3000N、回転角5〜45°、回転速度10〜50rpmの条件下で上記接触子を上記人工芝に往復的に5万回以上の耐久性能を有することにより、より耐久性のより人工芝を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、この人工芝用耐久試験機10は、被試験体である人工芝2が載置される試験台20と、同試験台20の人工芝2に対してほぼ直交する回転軸線により回転しながら圧縮する圧縮部30と、これらを制御する制御部40とを備えている。
【0028】
試験台20は、全体が頑丈なフレームに固定された状態で、床などの被設置面(ともに図示しない)に設置される基台21を有し、基台21の上には、円盤状の載置ステージ22が形成されている。
【0029】
載置ステージ22は、円盤状を呈し、その上部には、人工芝2が配置される固定シリンダ23が同軸的に設けられている。載置ステージ22の下面には、固定シリンダ23を位置決めするガイド凹部222が設けられている。
【0030】
載置ステージ22の上面には、固定シリンダ23を固定するための固定ピン221が設けられている。固定ピン221は、この例では90°間隔で4個所設けられているが、その数や設置場所は任意に選択されてよい。
【0031】
図2を併せて参照し、固定シリンダ23は、中央に人工芝2が設置される中空部232を有する有底円筒状のシリンダ本体231と、シリンダ本体231の下端に一体的に形成されたフランジ部233とを備えている。
【0032】
固定シリンダ23の底部には、上述した載置ステージ22のガイド凹部222に形状的に合致するように形成されたガイド凸部234が設けられており、これらを互いに合致させることにより、載置ステージ22と固定シリンダ23との相対的な位置を合わせる、いわゆる芯出しができるようになっている。
【0033】
フランジ部233には、載置ステージ22の上面にから突設する固定ピン221が差し込まれる挿通孔235が設けられている。挿通孔235は、固定ピン221の数と同じ4個所設けられている。固定ピン221を挿通孔235に差し込むことで、固定シリンダ23が載置ステージ22に固定される。
【0034】
シリンダ本体231の底部には、載置される人工芝2が回転によって滑らないようにするために、滑り止め手段としてのローレット面236が設けられている。この例において、滑り止め手段は、ローレット処理が用いられるが、これ以外にラバー面などであってもよく、シリンダ本体231の底部と人工芝2との間で滑り止め効果が得られるものであれば、仕様に応じて任意に選択されてよい。
【0035】
再び
図1を参照して、圧縮部30は、人工芝2を押圧する圧縮子31と、圧縮子31を上下に昇降させるとともに、回転駆動するアクチュエータ32と、圧縮子31に係る圧縮応力を測定するロードセル33と、圧縮子31にアクチュエータ32の回転駆動力を伝達する伝達シャフト34とが設けられている。アクチュエータ32およびロードセル33はともに、制御部40に電気的に接続されている。
【0036】
図3を参照して、圧縮子31は、人工芝2に対してほぼ直交する回転軸線を有する伝達シャフト34の下端に一体的に取り付けられた円盤状の第1圧縮子311と、第1圧縮子311の外周面に沿って同軸的に配置される第2圧縮子312とを備えている。第1圧縮子311および第2圧縮子312の下面(人工芝2に対向するスラスト面)にはそれぞれ、人工芝2に対する接触部313が着脱可能に設けられている。
【0037】
この例において、接触部313は、
図4(a)に示すように、円盤状に形成されたゴムシートからなり、第1圧縮子311に対して取り付けられる第1接触部313aと、第2圧縮子312に対して取り付けられる第2接触部313bとに分割されている。接触部313は、例えばネジ止めで固定するようになっているが、固定方法は任意であってよい。
【0038】
この例において、接触部313にはゴムシートが用いられているが、これ以外に、競技場などの使用状況を再現するために、
図4(b)に示すように、表面にスパイク用のスタッド313cを多数備えたスパイク仕様も用意されている。図面ではサッカー用のスパイクが用いられているが、例えば陸上競技用や野球用、ゴルフ用などのスパイクピンが用いられていてもよい。
【0039】
さらには、
図4(c)および(d)に示すように、一般的な校庭などでの使用状況を再現するために、運動靴のゴム底ソール仕様も用意されている。ここで、
図4(c)は、ソール溝が平行溝の場合であり、
図4(d)はソール溝が交差している場合について例示したが、これ以外の形状であってもよい。
【0040】
図3および
図5,6に示すように、第1圧縮子311は、伝達シャフト34の下端に同軸的に取り付けられており、その下面には上述した第1接触部313aが設けられている。第2圧縮子311は、中央に第1圧縮子311が同軸的に挿入されるガイド孔351が設けられており、その下面には、第2接触部313bが一体的に設けられている。
【0041】
ガイド孔351は、軸方向に貫通する貫通孔で、第1圧縮子311は、第1
接触部313aと第2
接触部313bとが同一平面に存在するように、ガイド孔351内に配置される。
【0042】
第1圧縮子311と第2圧縮子312は、ロストモーション機構35を介して、アクチュエータ32からの回転駆動力が伝達するように連結されている。この実施形態において、ロストモーション機構35は、第2圧縮子312の内周面側に設けられたキー溝352と、第1圧縮子311の外周面に形成され、キー溝352内に配置されるキー353とからなる。
【0043】
キー溝352は、ガイド孔351から外側に向けて張り出すように形成されており、ガイド孔351と同じ曲率の扇形状に形成されている。この例において、ガイド溝352は、中心軸を挟んで左右対称となるように形成されている。
【0044】
説明の便宜上、例えば第1圧縮子311の半径R1が50mm、第2圧縮子312の半径R2が100mmで、横軸X−Xが回転基準の0°であるとして説明する。
【0045】
まず、第1圧縮子311と第2圧縮子312とが一体に形成された場合、一定角度で第1圧縮子311を往復回転させると、中心側の第1圧縮子311よりも外径側の第2圧縮子312の回転移動量が大きくなり、人工芝2に対する摩擦量が中心から外径側に向かうにつれて大きくなる。すなわち、人工芝2の中心から外側に向かって摩擦勾配が生じ、実際の使用状態を再現しにくくなる。
【0046】
そこで、本発明では第1圧縮子311と第2圧縮子312の回転移動量をほぼ同一とするため、この実施形態では、第1圧縮子311の回転角α1が±30°ずつ往復回転するのに対して、第2圧縮子312の回転角α2が±15°ずつ往復回転する位置、すなわち30−15=15°のロストモーションでキー351とキー溝352とが当接するように形成されている。なお、ロストモーション機構の振り幅については、仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0047】
この例において、キー351とガイド溝352との公差は、0〜0.5mm程度に納めることが好ましい。すなわち、公差が0.5mmを超えると、回転にロスが生じるため好ましくない。
【0048】
アクチュエータ32は、例えば上下昇降機構と回転機構を備えたアクチュエータからなり、制御部40の指示に応じて圧縮子31を人工芝に所定の応力で圧縮しながら回転するようになっている。
【0049】
この例において、アクチュエータ32は、油圧式の上下昇降機構が用いられているが、例えば空気式であってもよいし、ネジなどの機械式であってもよく、圧縮子31を人工芝2に向けて所定の圧縮応力で圧縮し、かつ、圧縮子31を回転させることができれば、その具体的な態様は任意であってよい。
【0050】
この実施形態において、アクチュエータ32は、回転駆動手段として図示しないモータを備えているが、モータには、回転方向(正転、逆転),それに回転角や回転スピードなどの任意に設定できるステッピングモータが好ましく用いられ、制御部40の指示に応じて動作する。モータ21は、ステッピングモータに変えてAC/DCモータが用いられてもよい。
【0051】
伝達シャフト34は、一端がアクチュエータ32に接続されており、その先端(
図3では下端)には上述した第1圧縮子311が一体的に形成されている。第1圧縮子311は伝達シャフト34に一体であってもよいし、着脱自在であってもよい。
【0052】
再び
図1を参照して、人工芝2は、基布2aに所定間隔でパイル2bが植設され、その裏面にパイル2bの抜け止め用のバッキング材2cが設けられ、パイル2b間に充填材2dが充填されている状態で試験に供される。この例において、充填材2dは、廃タイヤの破砕品などからなる弾性ゴムチップや砂等が用いられてよい。
【0053】
本発明の人工芝用耐久試験機10は、シリンダ23の内径をD1、第2圧縮子312の外径をD2、充填材2dの平均粒径をdとしたとき、シリンダ23および圧縮子31は、
D1−D2<d
を満足するように形成されている。
【0054】
これによれば、シリンダ23と第2圧縮子312との間のクリアランスが充填材2dの平均粒径dよりも小さいことにより、圧縮子31によって充填材2dが人工芝2から掻き出されて、移動したり、はみ出したりすることがなくなる。
【0055】
通常、充填材には、平均粒径が2.0mmの粒状物が用いられることから、クリアランスは、0.1〜1.5mmが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0mmがよい。すなわち、クリアランスが0.1mm未満の場合は、機械的精度が求められるため、試験中に圧縮子31がシリンダ23に接触するするおそれがあるため好ましくない。逆に、1.5mm以上開けると、充填材が隙間に入り込むため好ましくない。
【0056】
圧縮子31での圧縮応力を強めた状態でアクチュエータ32を回転させた場合、人工芝と圧縮子との接触抵抗が人工芝とシリンダ底部と接触抵抗を上回ることによって、上述したローレット面236の滑り止め手段を使ってもなお、人工芝2が試験台20との間でずれたり、空転したりするおそれがある。
【0057】
そこで、このようなズレや空転をより確実に防止するため、別の固定手段を併合して人工芝2を試験台20に固定することがより好ましい。
【0058】
図7に示すように、この例において、固定手段はシリンダ本体231の内側に挿入される固定リング24からなる。固定リング24は、例えば鉄製でその外径がシリンダ本体231の内径よりも若干小径な円筒状を呈し、その下端には、ネジ止め用の雌ねじ孔241が設けられている。
【0059】
固定リング24を用いて人工芝2を固定する場合には、人工芝2は、固定リング24が当接する部分(この例では外周部分)のパイル2bを予め除去して基布2aを露出させておくことが好ましい。
【0060】
これによれば、シリンダ本体231の底部に人工芝2を設置したのち、固定リング24を差し込み、さらにネジ242で締め付けることによって、シリンダ本体と固定リング24との間で人工芝2を狭持することにより、人工芝2を確実に固定することができる。
【0061】
したがって、固定リング24を用いた場合、固定リング24の内径をD3として、上述したクリアランスは、D3−D2<dとすることが好ましい。
【0062】
次に、
図1を参照しながら、この人工芝用耐久試験機10の使用手順の一例を説明する。まず、予め人工芝2を試験台20のシリンダ本体231の底部に設置しておく。次に、例えば
図4(a)〜(d)の中から接触部313を選択し、圧縮子31の先に取り付ける。
【0063】
図示しない試験開始ボタンが押されると、制御部40は、アクチュエータ32に下降指令を出し、これを受けて、圧縮子31が下降を始める。同時に制御部40は、ロードセル33からの圧縮応力データを受信する。
【0064】
制御部40は、圧縮子31が人工芝2に接触したのをロードセル33にかかる負荷を計測しながら、所定の圧縮応力となった位置でアクチュエータ32による下降動作を停止する。制御部40は、次に、モータに回転指令を出し、これを受けてモータが回転を開始する。
【0065】
まず、制御部40は、モータを介して第1圧縮子311を往方向(
図6の+方向)に+30°回転させる。これに伴い、キー353がキー溝352内を+方向に移動してゆき、+15°回転した位置で、キー353の+端353aがキー溝352の+端352aに当接する。
【0066】
第1圧縮子311をさらに回転させてゆくと、第2圧縮子312が追従して+方向に回転する。すなわち、第1圧縮子311が0°から+15°が回転するまでは、第2圧縮子312はロストモーション機構35によって回転が停止され、+15°から+30°の時に一緒に回転する。
【0067】
+30°回転が終了すると、制御部40は、−方向に30°回転させるため、第1圧縮子311を−60°回転させる。第1圧縮子311が復方向(
図6の−方向)に−60°回転させてゆき、−45°回転した位置で、キー353の−端353bがキー溝352の−端352bに当接する。
【0068】
この位置で、第1圧縮子311をさらに回転させてゆくと、第2圧縮子312が追従して−方向に15°回転する。これを繰り返し行うことにより、第1圧縮子311と第2圧縮子312とが同じ回転移動量で往復移動することとなり、人工芝2を均一に接触させることができる。この例において、第2圧縮子312の回転移動量は、第1圧縮子311の回転移動量の半分となるように設定されている。
【0069】
制御部40は、モータの回転時においてもロードセル33を監視し続け、常に一定の圧縮応力が人工芝2に係るようにアクチュエータ32を制御する。所定の耐久試験プログラムに基づいて所定の耐久時間を経過すると、制御部40は、モータの往復回転を止め、アクチュエータ32を介して圧縮子31を持ち上げて圧縮試験を停止する。
【0070】
制御プログラムとしては、モータを単純に往復回転させる方法以外にも、その回転速度や回転角などステッピングモータの特性を利用して、自在にプログラミング可能である。
【0071】
また、本発明の人工芝用耐久試験1を用いて人工芝2の耐久試験を行った場合に、圧縮荷重が300〜3000N(望ましくは500〜2000N)、回転角5〜45°(望ましくは10〜20°)、回転速度10〜50rpmの条件で耐久試験を行い、圧縮子31を人工芝2に5万回以上擦り合わせても割れやちぎれなどが生じない耐久条件を備えた人工芝が好ましい。
【0072】
この例において、圧縮部31は、第1圧縮子311と第2圧縮子312とに2分割されているが、より回転移動量を細かく制御したい場合には、同心円状にさらに分割して、それらを同様にロストモーション機構によって連結するようにしてもよい。
【0073】
さらには、この例において、ロストモーション機構は、キー溝352とキー353とかた構成されているが、これ以外のギア比やカムなどを用いた別の機械的手段によって制御してもよい。さらには、それぞれ独立したモータによって、第1圧縮子311と第2圧縮子312の回転を独立に制御してもよい。
【0074】
以上のように、本発明によれば、実際の人工芝に係る負荷(人が足で捻る動作)を再現でき、より使用環境に近似した耐久試験を行うことができる。圧縮子の単位面積あたりの回転量が伝達手段を介して均一になっていることにより、圧縮子の接触面内に係る負荷量を一定に保つことができる。また、充填材が移動しにくくいため、人工芝に対して均一に摩耗を与えることができ、試験途中での充填材の均しや再充填する手間を省くことができる。