特許第5883675号(P5883675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5883675-放射性廃液の処理方法 図000002
  • 特許5883675-放射性廃液の処理方法 図000003
  • 特許5883675-放射性廃液の処理方法 図000004
  • 特許5883675-放射性廃液の処理方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883675
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】放射性廃液の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/12 20060101AFI20160301BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   G21F9/12 501J
   G21F9/06 G
   G21F9/06 551Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-35803(P2012-35803)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-170959(P2013-170959A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年8月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】日野 祐子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 隆
(72)【発明者】
【氏名】武士 紀昭
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−205304(JP,A)
【文献】 特開昭59−231493(JP,A)
【文献】 特表2008−501123(JP,A)
【文献】 特開2004−233156(JP,A)
【文献】 特開2008−064703(JP,A)
【文献】 特開昭60−214299(JP,A)
【文献】 特表2004−532422(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0156735(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/12
G21F 9/06
C02F 1/28
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム、テクネチウム、ニオブ、セシウム、ストロンチウム、セリウム、アンチモン、テルル、ヨウ素、炭素、ホウ素のいずれか一つ以上の放射性核種を含み、かつ、塩を含む放射性廃液から放射性核種を分離除去する方法において、
前記放射性廃液に、過酸化水素、過マンガン酸およびその塩の水溶液、次亜塩素酸およびその塩の水溶液のいずれか一つ以上からなる酸化剤を添加すると共に、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液のいずれか一つ以上からなるpH調整剤を添加し、pHが酸性の前記放射性廃液に、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのいずれか一つ以上からなる不活性気体を通液し、その後、吸着材を充填した吸着塔に前記放射性廃液を通水して放射性核種を吸着除去することを特徴とする放射性廃液の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法において、
前記酸化剤を添加した前記放射性廃液に、当該放射性廃液に含まれる放射性核種と同じ元素の非放射性核種からなるキャリアを添加することを特徴とする放射性廃液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性廃液の処理方法に係り、特に、放射性核種を含む廃液から放射性核種を分離除去するものに好適な放射性廃液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設において発生する放射性核種を含む放射性廃液の処理方法の一つとして、イオン交換樹脂等を用いた吸着処理方法がある。一方、放射性廃液が高濃度の塩を含む場合、放射性核種の吸着を塩が妨害する場合がある。
【0003】
これに対し、特許文献1では、放射性核種とキレート形成反応を行うことで放射性核種を吸着する粉状あるいは粒状の物質を放射性廃液に添加し、放射性核種を吸着した物質をその後ろ過により分離する方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−40593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の方法によれば、塩の妨害の影響を低減しつつ放射性廃液から放射性核種を分離することが可能である。一方、放射性核種とキレート形成反応を行うことを前提としているため、キレート形成反応を行わない種類の放射性核種に対しては効果の程度が限定される。
【0006】
放射性廃液に含まれる放射性核種は、種類により単一の化学形態のものもあるが、複数の化学形態で存在しているものもある。特に塩を含む放射性廃液に含まれる放射性核種は、複数の化学形態で存在する傾向がある。複数の化学形態を取るものは、形態の違いにより電荷が異なる。即ち、プラスであったりマイナスであったり、あるいは中性であったりする場合がある。このような場合、ある一種の放射性核種を分離除去するために、吸着材を複数種類用意する必要が生じる。
【0007】
また、放射性廃液に含まれる不純物と放射性核種が化学結合することで吸着処理では分離できない化合物として存在しているものもある。例えば、放射性廃液中に放射性核種としてヨウ素が含まれ、かつ有機物が不純物として存在していると、ヨウ素はヨウ化メチルなどの有機ヨウ素となり、通常の吸着処理とは異なる放射性核種の分離方法を適用する必要が生じる。
【0008】
一般に、放射性廃液に含まれる放射性核種の濃度は極微量であるため、事前に化学分析等で放射性核種の化学形態を測定するのは難しい。このため、放射性核種の分離で使用する吸着材の選定も容易ではないし、不純物と化学結合した吸着処理が難しい化合物として存在しているか否かを事前に確かめることも容易ではない。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、放射性核種を含む放射性廃液、特に、塩を含む放射性廃液で含有される放射性核種の濃度が低い放射性廃液から、放射性核種を効率よく分離除去することのできる放射性廃液の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放射性廃液の処理方法は、上記目的を達成するために、ルテニウム、テクネチウム、ニオブ、セシウム、ストロンチウム、セリウム、アンチモン、テルル、ヨウ素、炭素、ホウ素のいずれか一つ以上の放射性核種を含み、かつ、塩を含む放射性廃液から放射性核種を分離除去する方法において、前記放射性廃液に、過酸化水素、過マンガン酸およびその塩の水溶液、次亜塩素酸およびその塩の水溶液のいずれか一つ以上からなる酸化剤を添加すると共に、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液のいずれか一つ以上からなるpH調整剤を添加し、pHが酸性の前記放射性廃液に、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのいずれか一つ以上からなる不活性気体を通液し、その後、吸着材を充填した吸着塔に前記放射性廃液を通水して放射性核種を吸着除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放射性核種を含む放射性廃液、特に、塩を含む放射性廃液で含有される放射性核種の濃度が低い放射性廃液から、放射性核種を効率よく分離除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理装置の実施例1を示す構成図である。
図2】本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理装置の実施例2を示す構成図である。
図3】本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理装置の実施例3を示す構成図である。
図4】本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理装置の実施例4を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示した実施例に基づき、本発明の好適な実施例である放射性廃液の処理方法を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1に、本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液の処理装置の実施例1を示す。
【0019】
該図に示す如く、放射性核種を含む放射性廃液は、配管10を通じて調整タンク2に導入される。調整タンク2には、酸化剤供給装置4とpH調整剤供給装置7が設置されている。酸化剤供給装置4は、酸化剤タンク5と、酸化剤供給配管6と、酸化剤供給配管6に設置された開閉バルブ(図示なし)からなる。pH調整剤供給装置7は、pH調整剤タンク8と、pH調整剤供給配管9と、pH調整剤供給配管9に設置された開閉バルブ(図示せず)からなる。調整タンク2に導入された放射性廃液に、酸化剤供給装置4から酸化剤が、酸化剤供給配管6を通じて酸化剤タンク5より供給される。また、pH調整剤供給装置7からpH調整剤が、pH調整剤供給配管9を通じてpH調整剤タンク8より供給される。調整タンク2には、放射性廃液と酸化剤とpH調整剤を混合する撹拌装置(図示せず)が備えられており、調整タンク2に供給された放射性廃液と、酸化剤と、pH調整剤が混合される。
【0020】
放射性廃液に含まれる放射性核種は、例えばルテニウム、テクネチウム、ニオブなどの遷移金属、セシウムなどのアルカリ金属、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、セリウムなどの希土類といった金属元素、アンチモン、テルル、ヨウ素などのハロゲン、炭素、ホウ素といった非金属元素のうちの一つあるいはそれ以上の複数核種からなる。
【0021】
酸化剤供給装置4から供給される酸化剤としては、例えば過酸化水素、オゾン、過マンガン酸及びその塩の水溶液、次亜塩素酸及びその塩の水溶液が使用される。pH調整剤供給装置7から供給されるpH調整剤としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の酸溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ溶液が使用される。
【0022】
pH調整剤は、必要に応じて添加してもよいし、添加しなくてもよい。
【0023】
また、ここで放射性廃液に含まれる放射性核種と同じ元素からなる非放射性核種を、キャリアとして添加してもよい。この場合、図示されていないキャリア供給装置から調整タンク2に非放射性核種が添加される。
【0024】
調整タンク2を通過した放射性廃液は、配管11を通じて吸着装置1に供給される。吸着装置1に供給される放射性廃液には、必要に応じて残存している酸化剤を分解除去する操作を加えてもよい。吸着装置1には、放射性廃液に含まれる放射性核種に応じ、一種類またはそれ以上の種類の吸着材が充填されている。吸着装置1を通過する過程で、放射性廃液に含まれる放射性核種が吸着分離され、放射性核種が除去された水が処理水として得られる。
【0025】
吸着装置1に充填される吸着材としては、例えばイオン交換樹脂、キレート樹脂、活性炭、オキシン添着活性炭、ゼオライト、チタン酸、フェロシアン化物などが使用される。
【0026】
ここで、放射性廃液に酸化剤を添加した際に生じる反応について、ヨウ素を例として説明する。ヨウ素の放射性同位体、例えばI−131は、ヨウ化物イオン(I)やヨウ素酸イオン(IO)の化学形態をとることが知られている。IとIOを含む放射性廃液に、酸化剤としてオゾンを添加すると、以下のような反応が進行し、IがIOになる。
+ 3O → IO + 3O
これにより、IとIOの二種類の化学形態が存在している場合は、それぞれの化学形態に対応する吸着材を用意する必要があったが、化学形態をIOに調整することでIOに対応する吸着材を用意すればよく、吸着塔数の削減や吸着材コストの低減といった効果が得られる。
【0027】
本実施例では、放射性廃液に酸化剤とpH調整剤を添加する例について述べたが、酸化剤の代わりに還元剤を添加してもよい。その場合、本実施例における酸化剤供給装置は還元剤供給装置と読み替えられる。放射性廃液として、例えば放射性のヨウ素を含む廃液に、還元剤として例えばアスコルビン酸(C)を、pH調整剤として塩酸を添加する場合、以下のような反応が進行する。
IO+5I+6H→3I+3H
+I→C+2H+2I
これにより、放射性ヨウ素がIOとIの二種類の化学形態で存在していた場合、Iの一種類にできる。
【0028】
本実施例によれば、放射性核種を含む放射性廃液、特に塩を含む放射性廃液で含有される放射性核種の濃度が低い放射性廃液から、放射性核種を効率よく分離除去することができる効果がある。
【実施例2】
【0029】
図2に、本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液の処理装置の実施例2を示す。
【0030】
該図に示す如く、放射性核種を含む放射性廃液は、配管10を通じて液性調整部21に導入される。液性調整部21には、酸化剤供給装置4AとpH調整剤供給装置7Aが設置されている。酸化剤供給装置4Aは、酸化剤タンク5Aと、酸化剤供給配管6Aと、酸化剤供給配管6Aに設置された開閉バルブ(図示せず)からなる。pH調整剤供給装置7Aは、pH調整剤タンク8Aと、pH調整剤供給配管9Aと、pH調整剤供給配管9Aに設置された開閉バルブ(図示せず)からなる。液性調整部21に導入された放射性廃液に、酸化剤供給装置4Aから酸化剤が、酸化剤供給配管6Aを通じて酸化剤タンク5Aより供給される。また、pH調整剤供給装置7AからpH調整剤が、pH調整剤供給配管9Aを通じてpH調整剤タンク8Aより供給される。液性調整部21内で、液性調整部21に供給された放射性廃液と、酸化剤と、pH調整剤が混合される。液性調整部21は、例えばスタティックミキサーなど、液性調整部21を通水する過程で酸化剤とpH調整剤が放射性廃液と混合できる構造となっている。
【0031】
放射性廃液に含まれる放射性核種は、実施例1に示した元素からなる。
【0032】
酸化剤供給装置4Aから供給される酸化剤、pH調整剤供給装置7Aから供給されるpH調整剤としては、実施例1に示した薬剤が使用できる。
【0033】
pH調整剤は必要に応じて添加してもよいし、添加しなくてもよい。また、必要に応じて、放射性廃液に含まれる放射性核種と同じ元素から成る非放射性核種を、キャリアとして液性調整部21に供給してもよい。
【0034】
液性調整部21を通過した放射性廃液は、配管11Aを通じて吸着装置1Aに供給される。吸着装置1Aに供給される放射性廃液には、必要に応じて残存している酸化剤を分解する操作を加えてもよい。吸着装置1Aには、放射性廃液に含まれる放射性核種に応じ、一種類またはそれ以上の種類の吸着材が充填されている。吸着装置1Aを通過する過程で、放射性廃液に含まれる放射性核種が吸着分離され、放射性核種が除去された水が処理水として得られる。
【0035】
本実施例によれば、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、液性調整部を使用することで、装置の簡素化を図ることができる。
【実施例3】
【0036】
図3に、本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液の処理装置の実施例3を示す。
【0037】
該図に示す如く、放射性核種を含む放射性廃液は、配管10を通じて液性調整部21Bに導入される。液性調整部21Bには、pH調整剤供給装置7Bが設置されている。pH調整剤供給装置7Bは、pH調整剤タンク8Bと、pH調整剤供給配管9Bと、pH調整剤供給配管9Bに設置された開閉バルブ(図示せず)からなる。液性調整部21Bに導入された放射性廃液に、pH調整剤供給装置7BからpH調整剤が、pH調整剤供給配管9Bを通じてpH調整剤タンク8Bより供給される。液性調整部21B内で、液性調整部21Bに供給された放射性廃液と、pH調整剤が混合される。液性調整部21Bは、例えばスタティックミキサーなど、液性調整部21Bを通水する過程でpH調整剤が放射性廃液と混合できる構造となっている。
【0038】
放射性廃液に含まれる放射性核種は、実施例1に示した元素からなる。
【0039】
pH調整剤供給装置7Bから供給されるpH調整剤としては、実施例1に示した薬剤が使用できる。また、必要に応じて、放射性廃液に含まれる放射性核種と同じ元素から成る非放射性核種を、キャリアとして液性調整部21Bに供給してもよい。
【0040】
液性調整部21Bを通過した放射性廃液は、配管11Bを通じて吸着装置1Bに供給される。吸着装置1Bには、放射性廃液に含まれる放射性核種に応じ、一種類またはそれ以上の種類の吸着材が充填されている。吸着装置1Bを通過する過程で、放射性廃液に含まれる放射性核種が吸着分離され、放射性核種が除去された水が処理水として得られる。
【0041】
ここで、放射性廃液のpHを調整することで生じる効果について、ルテニウムを例として説明する。ルテニウムの放射性同位体、例えばRu−106は、放射性廃液の性状により複数の酸化数を取りかつ複数の化学形態をとることが知られている。例えばアルカリ性の放射性廃液中では、水酸化物イオンが結合しコロイド状のルテニウム化合物を形成する。コロイド状のルテニウム化合物は、特に濃度が低い場合、吸着材で除去するのは困難である。そこでルテニウムを含む放射性廃液に酸、例えば塩酸、を添加して、放射性廃液のpHを2に調整する。この時、ルテニウムはプラス電荷を持った陽イオンか、塩化物イオンが結合した塩化ルテニウムの形態となる。陽イオンのルテニウムは陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂で、塩化ルテニウムはキレート樹脂で容易に吸着除去できる。
【0042】
本実施例によれば、実施例2と同様な効果を得ることができることは勿論、pH調整剤のみの添加のため、さらに装置の簡素化を図ることができる。
【実施例4】
【0043】
図4に、本発明の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液の処理装置の実施例4を示す。
【0044】
該図に示す如く、放射性核種を含む放射性廃液は、配管10を通じて調整タンク22に導入される。調整タンク22には、酸化剤供給装置4CとpH調整剤供給装置7Cが設置されている。酸化剤供給装置4Cは、酸化剤タンク5Cと、酸化剤供給配管6Cと、酸化剤供給配管6Cに設置された開閉バルブ(図示せず)からなる。pH調整剤供給装置7Cは、pH調整剤タンク8Cと、pH調整剤供給配管9Cと、pH調整剤供給配管9Cに設置された開閉バルブ(図示せず)からなる。調整タンク22に導入された放射性廃液に、酸化剤供給装置4Cから酸化剤が、酸化剤供給配管6Cを通じて酸化剤タンク5Cより供給される。また、pH調整剤供給装置7CからpH調整剤が、pH調整剤供給配管9Cを通じてpH調整剤タンク8Cより供給される。調整タンク22には放射性廃液と酸化剤とpH調整剤を混合する撹拌装置(図示せず)が備えられており、調整タンク22に供給された放射性廃液と、酸化剤と、pH調整剤が混合される。この時、放射性廃液に不純物として有機物が含まれていると、有機物は酸化剤と反応して炭酸イオン(CO2−)や炭酸水素イオン(HCO)になる。放射性廃液のpHが酸性の場合、炭酸イオンや炭酸水素イオンはさらに酸化されて二酸化炭素(CO)となり、放射性廃液から揮発する。揮発した二酸化炭素は、配管12を通って調整タンク22より放出される。放射性廃液から二酸化炭素の揮発を促進するため、調整タンク22には不活性ガス、例えば窒素ガスなど、を調整タンク22内の放射性廃液にバブリングする装置(図示せず)を備えてもよい。
【0045】
放射性廃液に含まれる放射性核種は、実施例1に示した元素からなる。
【0046】
酸化剤供給装置4C、pH調整剤供給装置7Cから供給される酸化剤、pH調整剤としては、実施例1に示した薬剤が使用できる。
【0047】
pH調整剤は、必要に応じて添加してもよいし、添加しなくてもよい。また、ここで放射性廃液に含まれる放射性核種と同じ元素からなる非放射性核種を、キャリアとして添加してもよい。この場合、図示されていないキャリア供給装置から調整タンク22に非放射性核種が添加される。
【0048】
調整タンク22を通過した放射性廃液は、配管11Cを通じて吸着装置1Cに供給される。吸着装置1Cに供給される放射性廃液には、必要に応じて残存している酸化剤を分解除去する操作を加えてもよい。吸着装置1Cには、放射性廃液に含まれる放射性核種に応じ、一種類またはそれ以上の種類の吸着材が充填されている。吸着装置1Cを通過する過程で、放射性廃液に含まれる放射性核種が吸着分離され、放射性核種が除去された水が処理水として得られる。
【0049】
本実施例によれば、放射性廃液に有機物からなる不純物が含まれている場合にも、実施例1で生じる効果と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1A、1B、1C…吸着装置、2、22…調整タンク、21、21B…液性調整部、4、4A、4C…酸化剤供給装置、5、5A、5C…酸化剤タンク、6、6A、6C…酸化剤供給配管、7、7A、7B、7C…pH調整剤供給装置、8、8A、8B、8C…pH調整剤タンク、9、9A、9B、9C…pH調整剤供給配管、10、11、11A、11B、11C、12…配管。
図1
図2
図3
図4