【実施例1】
【0020】
図1を用いて本発明の環境認識装置10について説明する。
【0021】
実施例1の環境認識装置10は画像(映像)を取得する画像取得部101と、取得した画像から輝度情報、時間変化、幾何情報のうち少なくとも一つの光点特徴量を抽出する光点特徴量抽出部102と、室外に設置された前記撮像部のレンズ表面に付着した薄汚れを評価および判定するレンズ汚れ判定部103と、前記レンズ汚れ判定部103の判定結果を元に前記光点特徴量抽出部102で抽出した光点の中からヘッドライトとして判定する検知条件を予め関連づけたパラメータに設定するヘッドライト検知条件設定部104と、前記ヘッドライト検知条件設定部104の設定した前記パラメータを元に前記光点の中から前記パラメータに該当する光点を接近ヘッドライトとして判定する接近ヘッドライト判定部105と、前記接近ヘッドライト判定部105の検知条件を元に車両報知信号を外部に出力する車両報知信号出力部106と、から構成されている。
【0022】
この環境認識装置10は前記レンズ汚れ判定部103の判定結果を元に光点の中からヘッドライトとして検知するパラメータを変更することを特徴としている。レンズに薄汚れが付着した場合、映像のコントラストが低下するため、映像に含まれる車両特徴量を十分得ることができない。夜間の映像を用いる場合レンズに薄汚れが付着していなくてもコントラストが低いため、レンズに薄汚れが付着した場合車両検知がさらに困難になる。本発明を用いることで、レンズ薄汚れ時でもヘッドライト検知条件を調整することで正しく車両検知できる。以下、それぞれの構成要素について説明を行う。
【0023】
前記レンズ汚れ判定部103は、撮像部のレンズに堆積した薄汚れの判定を行う。その手法は、いくつかあるため、順に説明する。
【0024】
一つ目は画像取得部101から得た画像から、画像処理技術を用いてレンズに薄汚れがついた映像か否かを判定する方法である。レンズに薄汚れが付着している場合の映像上の特徴量を評価することで判定することができる。二つめの方法として、車両の情報や環境から得た情報から薄汚れ状態を推測する方法がある。例えば、走行時間が長くなるとレンズに付着する可能性が高くなるため、その情報を用いたり、オフロード走行状態を取得して、より汚れが付きやすい状態であることを検知する手法がある。これは一つ目の方法と組み合わせると、走行環境に応じてどのような種別の汚れが付きやすいかわかるため薄汚れ評価の精度を高くできる。三つ目に物理的にレンズについた汚れが外部センサを用いて走査する方法が考えられる。以上のような方法でレンズ薄汚れ状態を取得することができる。
【0025】
レンズ汚れ判定部103はこの薄汚れ状態を用いて、レンズ汚れの度合いを出力する。前記レンズ汚れ判定部103の出力はレンズ薄汚れのあり/なしの二値、またはレンズ薄汚れの度合いをその汚れの濃さに応じて段階的に表す0〜1の正規化されたレンズ汚れ指数である。あり/なしの2値によってヘッドライト検知条件を変更する場合と比較して、段階ごとのレンズ汚れ指数に応じたヘッドライト検知条件を用いるとヘッドライト検知性能を高くすることができる。レンズ薄汚れ度合いはレンズに付着した薄汚れを処理のサイクルごと毎回計算してもよいし、数サイクルおきに計算してもよい。処理のサイクルごと計算する場合、レンズ薄汚れ状態を即座に反映できるため、常に最新のレンズ状態に基づいた処理ができる。つまり雨天時やオフロード走行中などの路面からの巻き上げが多い等の理由でレンズ状態が大きく変動する場合でも常に最適な処理が可能となる。一方、数サイクルおきに計算する場合、遅れが生じるかわりに、負荷低減が可能である。発明で対象にしているレンズ薄汚れは時間をかけて堆積した汚れであるため、常に最新の状態を対象としなくてもよい。また、毎回の処理の結果からその時間平均を求めてその時間平均を判定結果として出力してもよい。長期的なレンズ汚れを評価対象とする場合、瞬間的に現れる極端な値はノイズとなるのでノイズ低減の効果がある。また、汚れ度合い以外に、その薄汚れが付着した位置を出力したり、薄汚れの種類を取得してその情報とともに出力してもよい。例えば、左側のみ薄汚れがついたということがわかれば、左側のみ条件を変更することができるため、右側の誤検知または不検知を低減することができる。
【0026】
光点特徴量抽出部102は画像から車両のヘッドライト/テイルランプ、路面の反射光、街灯、ガードレールの反射、路外のネオンや看板類、などの光点として画像に現れる物体を抽出することができる。光点は画像の輝度情報、エッジ強度、周辺ピクセルとの輝度差の少なくとも一つの特徴量を用いて同一の特徴量を持つ画素の集合体として抽出される。抽出された光点は画像上の位置やブロックの形状といった幾何情報、過去フレームから得た光点の移動速度や形状の変化、輝度の変化のうち少なくとも一つの時系列情報が付加され、それらの情報はレンズ汚れ判定部103の結果に応じて動的に必要な光点を抽出するために用いられる。
【0027】
前記薄汚れ判定結果に関連づけたヘッドライト検知条件設定部104は前記光点の中から前記光点の特徴量を元に予め設定された特徴量条件に合致する光点を抽出しそれをヘッドライトとみなす。ヘッドライトとして判定する条件は例えば、画像中の光点の位置または、面積または、輝度または、輝度分布または、時間方向の位置変化などの少なくともいずれか一つの条件で構成される。
【0028】
前記接近ヘッドライト判定部105は前記ヘッドライト検知条件設定部104の結果に基づいてヘッドライト判定信号を生成する。
【0029】
前記車両報知信号出力部106は前記接近ヘッドライト判定部105の判定結果を元に報知信号を出力する。
【実施例2】
【0030】
実施例2の環境認識装置10を
図2に示す。
図1と比較したときの違いは前記レンズ汚れ判定部103と前記薄汚れ判定に関連づけたヘッドライト検知条件設定部104のかわりに、高輝度特徴量解析部201と解析部の結果に関連づけたヘッドライト検知条件設定部202を備えることである。前記高輝度特徴量解析部201は前記画像取得部101と前記光点特徴量抽出部102のうち少なくとも一方から得た画像情報と光点特徴量とを用いて画像解析によりレンズ薄汚れに相当する画像状態を取得する。この手段をとることによる効果は、実際にレンズに薄汚れが付いていなくても、夜間車両検知が困難な場合を判定して最適なヘッドライト検知条件を用いた車両検知が可能なことである。例えば霧の発生など実際にレンズに薄汚れが付いていない場合でも映像の視認性が低下していることに起因してレンズ薄汚れ付着状態と同等の画像が得られた場合、レンズに薄汚れが付着した場合と同様に車両検知性能が低下する。その場合でも、レンズ薄汚れの場合と同様に視認性の低下を検知することができるため、ヘッドライト検知による最適な車両検知が実施可能である。
【0031】
具体的に処理の内容を説明する。前記光点特徴量抽出部102は、例えば、
図3のような形態で構成することができる。光点領域抽出部301は光点領域を取得した画像中から抽出し、その領域を出力することができる。ラベリング処理部302は前記領域情報に対して、領域ごとにラベル番号と呼ばれる各領域固有の番号を割り当てる。光点幾何情報選択部303は、重心の位置、領域の大きさを計算し、そのラベル情報を保存すべきか否かを計算した幾何情報(上記重心の位置や領域の大きさ)を元に評価することで不要な光点情報が保存されるのを防ぐことができる。保存した光点情報を用いて、その光点が俯瞰変換した際に実世界でどの位置に存在するかを、計算する。光点重心位置取得部304では光点重心位置を実空間上でヘッドライトの高さに光点が存在すると考え計算し、対応するラベル番号とともに保存することができる。
【0032】
この
図3の構成で実現できる機能を
図8を用いて説明する。まず、前記光点特徴量抽出部102は
図8aのような画像取得部101の出力である、自車後側方の路面や車両、その他を含んだ映像を入力とする。ここで802は他車両701の持つヘッドライト704, 705が路面に反射した際に生じた反射光を示しており、801は街灯や町の看板やガードレール、建物の照明などの路外に存在する発光体や、その発光体が路面に反射して生じた反射光を示している。光点領域抽出部301は、この映像のなかから高輝度領域である801, 802などヘッドライト光以外を含めて抽出する。次にラベリング処理部302を
図8bを用いて説明する。
図8bは光点領域抽出部301により抽出された光点に対して、それぞれの光点を区別するためのラベル番号が振られた際の様子を示している。この際、ノイズ除去のため、高輝度領域の面積が非常に小さいものを除外しているため、
図8aの801中には4つの高輝度領域が存在していたが、
図8bでは2つになっている。光点幾何情報選択部303を
図8cを用いて説明する。不要な光点情報を除外するため、面積と幾何情報を用いた光点の選択を行う。ここでは、ヘッドライトは円形に近く反射光は楕円に近いという仮定を置いた場合の処理を
図8cで表した。処理では光点の面積と、その光点の外接矩形の面積を比較し、光点の面積が外接矩形の面積のX倍(Xは非負の自然数)以上であったらヘッドライト、それより小さかったら反射光という判定ができる。光点幾何情報選択部303はさらに光点重心の俯瞰位置を用いて計算する。
図8dにその例を示す。
図8d中の番号は
図8c中の番号と対応している。図では、803が遠方の光点なので、
図8dでも後方に描かれている。また807が路外に存在する光点、805,806は隣接レーンを走行する車両のヘッドライトなので隣接レーンの位置に俯瞰変換された光点として描かれている。
【0033】
前記高輝度特徴量解析部201は以下の方法で実現することができる。レンズ薄汚れ状態のとき表れる映像上の特徴を、
図7を用いて説明する。
図7はリアカメラで撮像した映像を模擬的に表したものである。
【0034】
そのうち、
図7aはレンズに汚れが付着していないクリアレンズの時に自車後方の夜間映像を撮像したものを示し、
図7bはレンズ薄汚れの時に撮像したものを示している。702は白線である。白線によって路面を自車が走行するレーン、自車の右側の右隣接レーン、自車左側の左隣接レーンが区切られている。701は右隣接レーンを走行する車両であり、その車両のフロント部分および車両の左側面が描かれた様子をボックスを用いて表現している。704は車両フロントの内側ヘッドライトを表し、705は外側ヘッドライトを表す。703は遠方の車両ヘッドライトを表す。
図7aはレンズが薄汚れ状態ではない場合、光点 (ここではヘッドライト) の実際の形状と映像上の形状はほぼ一致していることを表している。
【0035】
一方、
図7bは、レンズ薄汚れ状態である場合、光点の実際の形状と映像上の形状が異なることを示している。図中の点線はヘッドライトの実際の形状を表しており、この映像中では、レンズ薄汚れが原因で実際よりも
図7aの703, 704, 705が
図7bの706, 707, 708のように大きくみえる様子を表している。レンズ薄汚れ状態の場合、光点より照射される光はレンズに入射する前に薄汚れに入射する。そして光が薄汚れによって拡散されるためレンズに入射する光は実際の光よりも広がりをもつことになる。この効果により、たとえ車体が画像中に本来写る場合であっても薄汚れによる光の反射によりハレーションを起こすため映像として車体が視認できなくなる。この映像上の特徴を検知できれば検知したい状態を判定することができる。例えば、光点の輝度分布から薄汚れ時の光点条件を設定するために必要な高輝度特徴量を得ることができる。画像取得部101より取得した画像全体またはその一部から得た輝度の時空間方向の変化を計算したときの高輝度領域の面積や空間方向の光の広がりをその高輝度特徴量として出力することができる。
【0036】
前記高輝度特徴量解析部201の結果に関連づけたヘッドライト検知条件設定部202は
図4で示された構成で実現することができる。前記高輝度特徴量解析部201の結果に関連づけたヘッドライト検知条件設定部202は、前記高輝度特徴量解析部201より得た結果が薄汚れ状態であった場合は、光点が画面内に占める面積の大きさからヘッドライトとして判定すべき面積の大きさを設定する面積条件設定部401と、光点が前フレームと比較して映像上どの程度接近または後退しているときにヘッドライトとして判定すべきかを設定する移動方向条件設定部402と、光点のうちどのような形状を持つ光点をヘッドライトとして判定するか設定する形状条件設定部403と、光点のうち光点の重心座標または外接矩形の4点の座標がどこに存在した場合ヘッドライトとして判定すべきかを設定する位置条件設定部404と、から構成される。
【0037】
前記面積条件設定部401は、汚れ時の光点の面積しきい値を汚れ無し時の光点の面積しきい値より小さく設定することで汚れ時の不検知を低減することができる。または汚れ時の光点の面積しきい値を汚れ無し時の光点の面積しきい値より大きく設定することで汚れ時の誤検知を低減することができる。
【0038】
前記移動方向条件設定部402は光点の移動方向および移動距離でヘッドライトかどうかの判定を行う。通常、映像上の光点がヘッドライトだった場合どのような方向にも移動しうるため、光点が接近しているか後退しているかどうかでヘッドライトか否かを判定することはできない。レンズ薄汚れ時に最低限の性能を確保するため接近していることを条件に加えることは有用である。後退する光点は路外の静止物である可能性があるが、接近する光点であり、かつ移動方向条件設定部402以外の条件で合致した光点は接近する車両のヘッドライトである可能性が極めて高い。よって前記移動方向条件設定部402では、レンズ薄汚れ時には所定速度以内で映像上接近することを条件として設定する。レンズに汚れが付着していない場合低速で移動するものをヘッドライトとして判定すると隣接レーンの外側を走行する車両のヘッドライト反射光を誤検知する可能性がある。そのため、移動速しきい値は一定以上と設定して低速なものを除外するとよい。一方、レンズ薄汚れ付着の場合前記反射光を誤検知する可能性が低いため、移動速しきい値はレンズに薄汚れが付着していない場合より低く設定することができる。
【0039】
前記形状条件設定部403は、レンズ薄汚れ時にはレンズ表面の薄汚れにより光点が広がる性質に着目し、より円形に近いものをヘッドライト検知条件として定めることができる。ただし、レンズの薄汚れの有無に関わらず円形に近いことを条件として定めてもよい。これは、路面反射光やガードレールの反射が細長い光として表れることを利用して誤検知を低減する効果がある。また、レンズ薄汚れ時には、反射光は汚れにより輝度値が低くなるため、誤検知の可能性が低下する。そのため、円形に近いかどうかを決定するしきい値を低減すると、不検知を低減することができる。
【0040】
図9を用いて前記高輝度特徴量解析部201の結果に関連づけたヘッドライト検知条件設定部202の中で特に重要な点を説明する。
図9のaおよびbを用いて前記移動方向条件設定部402の設定を説明する。aは現時刻でのリアカメラ映像、bは次時刻でのリアカメラ映像である。901は現時刻での他車両内側ヘッドライトの重心位置、902は次時刻での他車両内側ヘッドライトの重心位置である。b中に描かれた現時刻での光点重心位置901から次時刻の光点重心位置902は901と比較して自車に接近していることがわかる。この光点の移動の方向を条件として考える。まず、光点が後方、つまり自車から遠ざかる場合、と前方、つまり自車に近付く場合の大きく分けて2種類がある。他車両の移動方向はどちらでもありうるため、一概に遠ざかる光点は車両以外ということはできない。また、自車に近付く光点が隣接レーンに存在しても、それが隣接レーンの外側の他車両ヘッドライトの反射光が隣接レーンに存在していることも考えられるため、光点が接近していることも一概に隣接レーンの車両であるということもできない。ただし、レンズに薄汚れが付着している場合、光点は全体的に膨張する傾向にあり、車両特徴量が得られないため、映像上危険性が高いと判定できる場合は隣接レーンに存在する接近光点を車両であるといっても問題がない。薄汚れにより、多少の反射光は見えづらくなっており光点の接近を車両とみなしても誤検知が多くならないからである。
【0041】
図9cを用いて位置条件設定部404の動作を説明する。左側隣接レーン幅905、右側隣接レーン幅906、近傍位置907、は原則、レーン位置に基づいて設定された自車後方左側車両検出枠903と自車後方右側車両検出枠904と、に基づいて予め設定された位置に設定される。レンズ薄汚れ時の車両の不検知を低減するためには、左側隣接レーン幅905、右側隣接レーン幅906をレンズ汚れなしより幅を広く設定し、誤検知抑制の場合は狭く設定するとよい。近傍位置907は報知信号発生タイミングを早めまたは遅めにする場合に設定を行う。