(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを測定する方法であって、
前記クリンプハイトが異なる複数の前記圧着端子についての、前記下死点に降下させた前記クリンパと前記アンビルが前記圧着端子に加えるピーク荷重と前記クリンプハイトとの相関を示す下記関係式、
CH=A×P+B
(但し、CHはクリンプハイト、Pはピーク荷重、A,Bは定数)
を、前記電線の芯線量や前記クリンパの前記下死点位置を変えて前記圧着端子のサンプルを形成した際に実測した前記ピーク荷重と前記クリンプハイトとから前記定数Aを求めて取得する関係式取得ステップと、
前記圧着端子を形成する度に該形成時の前記ピーク荷重を測定して、該測定したピーク荷重と前記関係式から、形成した各圧着端子のクリンプハイトを算出するハイト算出ステップと、
を含むことを特徴とする圧着端子のクリンプハイト測定方法。
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを測定する装置であって、
前記クリンプハイトが異なる複数の前記圧着端子についての、前記下死点に降下させた前記クリンパと前記アンビルが前記圧着端子に加えるピーク荷重と前記クリンプハイトとの相関を示す下記関係式、
CH=A×P+B
(但し、CHはクリンプハイト、Pはピーク荷重、A,Bは定数)
を、前記電線の芯線量や前記クリンパの前記下死点位置を変えて前記圧着端子のサンプルを形成した際に実測した前記ピーク荷重と前記クリンプハイトとから求めた前記定数Aと共に記憶する記憶手段と、
前記圧着端子の形成時に前記ピーク荷重を測定するピーク荷重測定手段と、
前記形成時に測定したピーク荷重と前記関係式から、前記形成した圧着端子のクリンプハイトを算出するハイト算出手段と、
を備えることを特徴とする圧着端子のクリンプハイト測定装置。
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを管理する方法であって、
前記圧着端子を形成する度に、形成した各圧着端子のクリンプハイトを、請求項1記載の方法により測定するハイト測定ステップと、
前記測定したクリンプハイトと、クリンプハイト許容上限値及びクリンプハイト許容下限値のうち少なくとも一方との比較により、前記形成した各圧着端子の圧着状態の良否を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする圧着端子のクリンプハイト管理方法。
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを管理する方法であって、
前記圧着端子を形成する度に、形成した各圧着端子のクリンプハイトを、請求項2記載の方法により測定するハイト測定ステップと、
前記測定したクリンプハイトと、クリンプハイト許容上限値及びクリンプハイト許容下限値のうち少なくとも一方との比較により、前記形成した各圧着端子の圧着状態の良否を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする圧着端子のクリンプハイト管理方法。
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを管理する装置であって、
請求項3又は4記載のクリンプハイト測定装置と、
前記圧着端子を形成する度に前記クリンプハイト測定装置で測定したクリンプハイトと、クリンプハイト許容上限値及びクリンプハイト許容下限値のうち少なくとも一方との比較により、前記形成した各圧着端子の圧着状態の良否を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする圧着端子のクリンプハイト管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した別の提案では、センサで測定可能な端子の加締め時の荷重に基づいて圧着状態の良否を判定するので、各圧着端子の圧着状態を個別に継続して良否判定することができる。しかし、圧着状態の良品と不良品のクリンプハイト差に比べると、温度環境の変化等によるクリンプハイトの変動量は相対的に小さい。そのため、各圧着端子のクリンプハイトを定量的に測定するわけではないこの提案の方法をそのまま利用しただけでは、各圧着端子のクリンプハイトを継続的に管理することができない。
【0011】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、圧着端子のクリンプハイトの測定を手作業によらず定量的に継続して行うことができる圧着端子のクリンプハイト測定方法及びその装置と、圧着端子のクリンプハイト管理方法及びその装置とを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明のクリンプハイト測定方法は、
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを測定する方法であって、
前記クリンプハイトが異なる複数の前記圧着端子についての、前記下死点に降下させた前記クリンパと前記アンビルが前記圧着端子に加えるピーク荷重と前記クリンプハイトとの相関を示す下記関係式、
CH=A×P+B
(但し、CHはクリンプハイト、Pはピーク荷重、A,Bは定数)
を、前記電線の芯線量や前記クリンパの前記下死点位置を変えて前記圧着端子のサンプルを形成した際に実測した前記ピーク荷重と前記クリンプハイトとから前記定数Aを求めて取得する関係式取得ステップと、
前記圧着端子を形成する度に該形成時の前記ピーク荷重を測定して、該測定したピーク荷重と前記関係式から、形成した各圧着端子のクリンプハイトを算出するハイト算出ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、請求項3に記載した本発明のクリンプハイト測定装置は、
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを測定する装置であって、
前記クリンプハイトが異なる複数の前記圧着端子についての、前記下死点に降下させた前記クリンパと前記アンビルが前記圧着端子に加えるピーク荷重と前記クリンプハイトとの相関を示す下記関係式、
CH=A×P+B
(但し、CHはクリンプハイト、Pはピーク荷重、A,Bは定数)
を、前記電線の芯線量や前記クリンパの前記下死点位置を変えて前記圧着端子のサンプルを形成した際に実測した前記ピーク荷重と前記クリンプハイトとから求めた前記定数Aと共に記憶する記憶手段と、
前記圧着端子の形成時に前記ピーク荷重を測定するピーク荷重測定手段と、
前記形成時に測定したピーク荷重と前記関係式から、前記形成した圧着端子のクリンプハイトを算出するハイト算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載した本発明のクリンプハイト測定方法と、請求項3に記載した本発明のクリンプハイト測定装置とによれば、クリンパとアンビルにより端子を電線の芯線に加締めて圧着した圧着端子のクリンプハイトは、クリンパが下死点(クリンパが最もアンビルに近づく点)に位置して、端子を芯線に加締めた状態における、クリンパとアンビルとの間隔に応じて決まる。
【0015】
そして、クリンパを下死点に降下させてクリンパとアンビルにより端子を電線の芯線に加締めると、芯線に加締めて圧着された圧着端子の存在により、クリンパ及びアンビルとそれらに連なる端子圧着装置の全体が歪み、クリンパとアンビルの間隔が変化して拡がる。すると、変化した間隔を変化前の間隔に戻して端子圧着装置から歪みを解放しようとする反力に応じた荷重が、クリンパとアンビルから圧着端子に加わる。したがって、圧着端子のクリンプハイトと、下死点に降下させたクリンパとアンビルから圧着端子に加わるピーク荷重との間には、比例関係が存在する。
【0016】
上述した圧着端子のクリンプハイトとピーク荷重との比例関係を、それらの相関を示す関係式によって表すことで、この関係式を用いて、クリンパとアンビルにより端子を電線の芯線に加締めて圧着して圧着端子を形成する際にセンサで測定可能な端子の加締め時のピーク荷重から、圧着端子のクリンプハイトを計算により測定することができる。
【0017】
したがって、圧着端子のクリンプハイトの測定を手作業によらず定量的に継続して行うことができる。
【0018】
さらに、請求項2に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定方法は、請求項1に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定方法において、
前記クリンパは、ラムに連結されて該ラムと共に前記アンビルに対して昇降し、
前記関係式取得ステップにおいて、前記関係式として、
CH=A×P+B、B=DP+C
(但し、Bは、前記端子及び前記電線の不存在時に前記下死点に降下させた前記クリンパと前記アンビルのクリンパ昇降方向における間隔、DPは、前記ラムの制御上の下死点位置(サーボ下死点)、Cは定数)
なる式
を、前記電線の芯線量や前記クリンパの前記下死点位置を変えて前記圧着端子のサンプルを形成した際に実測した前記ピーク荷重と前記クリンプハイトとから前記定数Cを求めて取得するようにした、
ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定装置は、請求項3に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定装置において、
前記記憶手段は、前記関係式として、
CH=A×P+B、B=DP+C
(但し、Bは、前記端子及び前記電線の不存在時に前記下死点に降下させた前記クリンパと前記アンビルのクリンパ昇降方向における間隔、DP
は、クリンパに連結されてクリンパと共にアンビルに対して昇降するラムの制御上の下死点位置(サーボ下死点)、Cは定数)
なる式
を、前記電線の芯線量や前記クリンパの前記下死点位置を変えて前記圧着端子のサンプルを形成した際に実測した前記ピーク荷重と前記クリンプハイトとから求めた前記定数Cと共に記憶している、
ことを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定方法によれば、請求項1に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定方法において、また、請求項4に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定装置によれば、請求項3に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト測定装置において、圧着端子のクリンプハイトとピーク荷重との相関を示す関係式中の、端子及び電線の不存在時に下死点に降下させたクリンパとアンビルのクリンパ昇降方向における間隔(最小間隔)中の、ラムの制御上の下死点位置(サーボ下死点)の項を、関係式の反対側の辺に移項すると、移項したラムの制御上の下死点位置(サーボ下死点)をクリンプハイトから減じた寸法が、ピーク荷重と比例する式となる。
【0021】
ここで、クリンプハイトからラムの制御上の下死点位置(サーボ下死点)を減じた寸法は、クリンパを下死点に降下させクリンパとアンビルにより端子を電線の芯線に加締めて形成した圧着端子の存在により端子圧着装置が歪んで変化した、クリンパとアンビルの間隔の変化量に一致する。
【0022】
したがって、ピーク荷重からクリンプハイトを導き出す関係式を、端子を電線の芯線に加締めて形成した圧着端子の存在により歪んで変化したクリンパとアンビルの間隔の変化分と、その変化分をなくして端子圧着装置から歪みを解放しようとする反力によってクリンパとアンビルから圧着端子に加わるピーク荷重との関係を表す式によって構成し、これにより、ピーク荷重から計算によって求めるクリンプハイトの測定精度を良くすることができる。
【0023】
さらに、上記目的を達成するため、請求項5及び請求項6に記載した本発明のクリンプハイト管理方法は、
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを管理する方法であって、
前記圧着端子を形成する度に、形成した各圧着端子のクリンプハイトを、請求項1又は請求項2記載の方法により測定するハイト測定ステップと、
前記測定したクリンプハイトと、クリンプハイト許容上限値及びクリンプハイト許容下限値のうち少なくとも一方との比較により、前記形成した各圧着端子の圧着状態の良否を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0024】
また、上記目的を達成するため、請求項8に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト管理装置は、
アンビルに対して昇降するクリンパの下死点において該クリンパが前記アンビル上の端子を電線の芯線に加締めることで形成される圧着端子のクリンプハイトを管理する装置であって、
請求項3又は4記載のクリンプハイト測定装置と、
前記圧着端子を形成する度に前記クリンプハイト測定装置で測定したクリンプハイトと、クリンプハイト許容上限値及びクリンプハイト許容下限値のうち少なくとも一方との比較により、前記形成した各圧着端子の圧着状態の良否を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項5及び請求項6に記載した本発明のクリンプハイト管理方法と、請求項8に記載した本発明のクリンプハイト管理装置とによれば、請求項1及び請求項2に記載した本発明のクリンプハイト測定方法や、請求項3及び請求項4に記載した本発明のクリンプハイト測定装置と同様に、クリンパとアンビルにより端子を電線の芯線に加締めて圧着して圧着端子を形成する際にセンサで測定可能な端子の加締め時のピーク荷重から、圧着端子のクリンプハイトを計算により測定することができる。
【0026】
また、これにより、圧着端子を形成する度に、センサで測定可能なピーク荷重から圧着端子のクリンプハイトを手作業によらず定量的に継続して測定し、形成した圧着端子のクリンプハイトの管理を、漏れなく全数を対象にして行うことができる。
【0027】
さらに、請求項7に記載した本発明のクリンプハイト管理方法は、請求項6に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト管理方法において、
前記ハイト測定ステップに先立って、請求項2記載の方法における前記関係式の前記間隔を決定する間隔決定ステップをさらに含んでおり、
前記間隔決定ステップは、
前記クリンパの下死点をクリンパ昇降方向において変化させつつ、前記下死点に降下させた前記クリンパと前記アンビルが前記圧着端子に加えるピーク荷重を測定するピーク荷重測定ステップと、
前記測定したピーク荷重と、該ピーク荷重測定時の前記下死点に対応する前記間隔と、請求項2記載の方法における前記関係式と、から算出した計算上のクリンプハイトを、前記クリンプハイト許容上限値及び前記クリンプハイト許容下限値の範囲に収まるクリンプハイトの目標値と照合する照合ステップとを含んでおり、
前記計算上のクリンプハイトが前記目標値と一致する前記間隔を、請求項2記載の方法における前記関係式の前記間隔として決定する、
ことを特徴とする。
【0028】
請求項7に記載した本発明のクリンプハイト管理方法によれば、請求項6に記載した本発明の圧着端子のクリンプハイト管理方法において、圧着端子のクリンプハイトを手作業によらずに測定できる。このため、例えば、クリンパやアンビルの交換等に伴い、クリンプハイトが適正な目標値となるようにクリンパの下死点を再設定する必要が生じた場合に、クリンプハイトが目標値となる下死点を、少ない作業時間及び作業工数で効率的に決定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、圧着端子のクリンプハイトの測定を手作業によらず定量的に継続して行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明を適用してクリンプハイトを測定する圧着端子と電線の概略構成を示す斜視図である。
【0032】
図1に示す圧着端子51は、電線61に端子として圧着して取り付けられる。電線61は、導電性の芯線60と、該芯線60を被覆する絶縁性の被覆部62とを備えている。芯線60は、複数の導線が撚られて(束ねられて)構成されており、断面形状が丸形に形成されている。芯線60を構成する導線は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの導電性を有する金属からなる。被覆部62は、絶縁性の合成樹脂からなる。電線61は、圧着端子51が取り付けられる前に、一部の被覆部62が除去されて、該一部の芯線60が露出した状態となっている。
【0033】
圧着端子51は、導電性の板金を折り曲げるなどして形成されている。圧着端子51は、後述する電気接触部53が筒状に形成された所謂雌端子である。圧着端子51は、電線61と接続するための電線接続部52と、他の端子金具と接続するための電気接触部53と、これらの電線接続部52と電気接触部53とを互いに連ねる底壁54と、を備えている。
【0034】
電線接続部52は、一対の電線加締め足55と、一対の芯線加締め足50と、を備えている。なお、一対の芯線加締め足50は、本明細書に記した加締め足をなしている。一対の電線加締め足55は、それぞれ、底壁54の両縁から立設している。電線加締め足55は、底壁54に向かって曲げられることにより、底壁54との間に被覆部62ごと電線61を挟む。こうして、一対の電線加締め足55は、電線61を加締める。
【0035】
一対の芯線加締め足50は、それぞれ、底壁54の両縁から立設している。芯線加締め足50は、底壁54に向かって曲げられることにより、底壁54との間に露出した芯線60を挟む。こうして、一対の芯線加締め足50は、芯線60を加締める。
【0036】
次に、加締め足50,55を底壁54に向かって曲げて、圧着端子51を電線61に加締める端子圧着装置について、
図2乃至
図4を参照して説明する。
【0037】
図2の正面図に示す端子圧着装置200は、フレーム1を有している。該フレーム1は、基板2とその両側の側板3,3とを備えている。両側板3,3の上部後方には、
図3の側面図に示すように、減速機5を備えたサーボモータ4が固定されている。減速機5の出力軸6には、
図2に示すように、偏心ピン(クランク軸)8を有する円板7が軸装され、偏心ピン8にはスライドブロック9が枢着されている。スライドブロック9はラム11に取付けられた受座10,10a間に摺動自在に装着されている。スライドブロック9は、円板7の回転により受座10,10a間を左右方向にスライドする。ラム11は、スライドブロック9とともに上下方向に移動する。
【0038】
このラム11は両側板3,3の内面に設けたラムガイド12,12に上下摺動自在に装着されている。円板7、スライドブロック9、受座10,10a、ラム11およびラムガイド12がピストン−クランク機構を構成している。ラム11は、
図4に示すように、下端部に係合凹部13を有し、該係合凹部13にはクリンパ14を取付けたクリンパホルダ15の係合凸部16が着脱自在に装着されている。
【0039】
図2に示すように、クリンパ14にはアンビル17が対向している。アンビル17は、基板2上のアンビル取付台24に固定されている。また、
図4に示すように、ラム11と、クリンパホルダ15との間には、圧力センサ100が設けられている。この圧力センサ100はクリンプハイト管理装置300に接続されている。そして、圧力センサ100の出力によりクリンプハイト管理装置300でクリンパ14からの上下方向の荷重(以下この荷重の値を荷重値と呼ぶ)が検出され、この検出された荷重値から、圧着端子51のクリンプハイトが算出される。なお、この荷重は、圧着作業中の圧着端子51からの反力及び圧着端子51に加える力をなしている。
【0040】
なお、
図2において、18は既知の構成の端子供給装置である。この端子供給装置18は、図示しない連鎖状の圧着端子51を支持する端子ガイド19、端子押さえ20、先端に端子送り爪21を有する端子送りアーム22および該端子送りアーム22を進退させる揺動リンク23等を備えている。
【0041】
揺動リンク23は前記ラム11の降下、上昇に合わせて前後に揺動し、端子送り爪21により圧着端子51を一個ずつアンビル17上に送り込むようになっている。また、アンビル17はアンビル取付台24のハンドル25の操作によりクリンパ14に対する位置調整や撤去、交換等を容易にできるようになっている。
【0042】
図3に示すサーボモータ4は正逆回転を行い、前記ピストン−クランク機構によりラム11、即ちクリンパ14を降下および上昇させるものである。サーボモータ4は、該サーボモータ4の駆動を制御するドライバ32に接続されている。そして、クリンパ14の下降および上昇により、このクリンパ14とアンビル17との間に配置された、圧着端子51および電線61の圧着が行われる。
【0043】
したがって、ラム11の上側停止位置(上死点位置)と下側停止位置(下死点位置)は、サーボモータ4のサーボ制御上で定められた正逆回転量によって決定される。このように、ラム11の下死点位置は、サーボモータ4のサーボ制御に応じて定まり、ラム11が到達できるピストン−クランク機構の構造上の下死点位置とは必ずしも一致しない。そこで、ラム11が到達できる構造上の下死点と区別するために、サーボモータ4のサーボ制御に応じて定まるラム11の下死点をサーボ下死点と呼ぶことにする。ラム11の下死点位置は、端子圧着装置200における位置が低い(アンビル17に近い)ほど小さい値となり、位置が高い(アンビル17から遠い)ほど大きい値となる。
【0044】
なお、ドライバ32には入力部33が接続されている。入力部33は、圧着端子51の規格(又はサイズ)、対応する電線61のサイズ、クリンプハイトおよびサーボモータ4にかかる負荷(電流)などの基準データを入力するようになっている。また、サーボモータ4の図示しない出力軸にはエンコーダ31が付設されており、その回転数に基いてクリンパ14の位置を検出してドライバ32にフィードバックしている。
【0045】
続いて、圧力センサ100の出力に基づいて圧着端子51のクリンプハイトを測定し管理するクリンプハイト管理装置300について、
図5のブロック図を参照して説明する。
【0046】
本実施形態のクリンプハイト管理装置300(請求項中のクリンプハイト測定装置、クリンプハイト管理装置に相当)は、圧力センサ100の出力を増幅するアンプ41、アンプ41から出力されるアナログ電圧信号をデジタルの電圧データに変換するA/D変換器42、入力部43、CPU44、ROM45、RAM46、表示部47および通信インターフェース48を備えている。
【0047】
入力部43、CPU44、ROM45、RAM46、表示部47および通信インターフェース48はマイクロコンピュータを構成している。CPU44はROM45に格納された制御プログラムに基づいてRAM46のワーキングエリアを使用して制御を行う。
【0048】
具体的には、A/D変換器42で得られる圧力センサ100による荷重値のデータを特性値としてサンプリングする。また、CPU44は、サンプリングした特性値に基づいて演算を行い、クリンパ14とアンビル17から圧着端子51にかかる荷重のピーク値(ピーク荷重)の検出処理、ピーク荷重からクリンプハイト(CH)を算出するハイト算出処理、算出したクリンプハイトから圧着端子51の圧着状態の量比を判定する処理、等を行い、検出結果を表示部47に表示する。
【0049】
圧着端子51の圧着時には、圧力センサ100による荷重値のデータである特性値が得られ、例えば
図6のグラフに示したような波形が得られる。この波形は、クリンパ14及びアンビル17から圧着端子51にかかる荷重の時間の経過に応じた変化を示している。
図6中の異なる種類の線で示す波形はそれぞれ、芯線60の導体量が異なる電線61の荷重変化を示している。
【0050】
ここで、芯線60の導体量が異なる電線61としては、例えば、径の異なる電線や、正常な電線の一部の芯線を加締め部分において意図的に切断して芯線数を減らした電線等を用いることができる。
【0051】
図6中の各波形の矢印で示す箇所がピーク荷重であり、このピーク荷重が、不図示のピークホールド回路を用いてCPU44により検出される。
【0052】
ここで、ピーク荷重とクリンパ14の昇降位置との関係について、
図7のグラフを参照して説明する。クリンパ14とアンビル17から圧着端子51にかかる荷重は、おおよそ、ラム11が下死点位置にあるクリンパ14の下死点(クリンパ14が最もアンビル17に近づく点)においてピーク値(ピーク荷重)を迎える。
【0053】
圧着端子51のクリンプハイトは、クリンパ14が下死点に位置して、端子を芯線60に加締めた状態における、クリンパ14とアンビル17との間隔に応じて決まる。
図8(a)に示すように、下死点のクリンパ14とアンビル17間に端子及び芯線60が存在しない状態では、クリンパ14とアンビル17の間隔が最小値(最小間隔B)となる。
【0054】
これに比べて、
図8(b)に示すように、下死点のクリンパ14とアンビル17により芯線60に端子が圧着されて圧着端子51が形成された状態では、クリンパ14及びアンビル17とそれらに連なる端子圧着装置200の全体が圧着端子51の存在分だけ上下に歪み、クリンパ14とアンビル17の間隔が変化して最小間隔Bよりも拡がる。
【0055】
そして、圧着端子51には、変化したクリンパ14とアンビル17の間隔を変化前の最小間隔Bに戻して端子圧着装置200から歪みを解放しようとする反力に応じた荷重が、クリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わる。したがって、圧着端子51のクリンプハイトと、下死点に降下させたクリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わるピーク荷重との間には、比例関係が存在する。
【0056】
このことから、圧着端子51のクリンプハイト(CH)は、下死点に降下させたクリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わるピーク荷重(P)と、クリンパ14とアンビル17の最小間隔Bとを用いて、
CH=A×P+B、B=DP+C(但し、A,B,Cは定数、DPは、ラム11の下死点位置(サーボ下死点))
の関係式で表すことができる。この関係式は、RAM46(請求項中の記憶手段に相当)に記憶される。
【0057】
そこで、上述した関係式の定数A,B,Cを定めるために、下死点に降下させたクリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わるピーク荷重に対する、圧着端子51の存在により拡がったクリンパ14とアンビル17の間隔(クリンプハイトCHからラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを減じた値)の分布を求める。
【0058】
図9のフローチャートでは、芯線60の量(導体量)が異なる2種類の電線61を用いて形成した圧着端子51のサンプルから、CPU44が、ピーク荷重と、クリンプハイトCHからラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを減じた値との分布を求めて関係式の定数を定める際の手順を示している。
【0059】
まず、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを設定し、これと、各種類の電線61を用いた圧着端子51のサンプル作成数(N0,N1)とを、入力部43から入力する(ステップS1)。続いて、CPU44は、サンプル数のカウント値nをゼロリセットし(ステップS3)、カウント値nを「1」インクリメントして(ステップS5)、端子圧着装置200により1種類目の電線61を用いた圧着端子51のサンプルを作成させる(ステップS7)。
【0060】
そして、CPU44は、圧着端子51のサンプル作成時の圧力センサ100の出力から、クリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わる荷重の波形を検出(クリンプフォース(CF)波形取得)し(ステップS9)、ピーク荷重P(n)を割り出してRAM46に記憶(登録)させる(ステップS11)。
【0061】
続いて、作成した圧着端子51のクリンプハイトCH(n)を実測し、入力部43から入力してRAM46に記憶(登録)させた後(ステップS13)、CPU44は、カウント値nがサンプル作成数N0に達したか否かを確認する(ステップS15)。サンプル作成数N0に達していない場合は(ステップS15でNO)、ステップS5にリターンする。
【0062】
一方、サンプル数のカウント値nがサンプル作成数N0に達した場合は(ステップS15でYES)、CPU44は、カウント値nをゼロリセットし(ステップS17)、カウント値nを「1」インクリメントして(ステップS19)、端子圧着装置200により2種類目の電線61を用いた圧着端子51のサンプルを作成させる(ステップS21)。
【0063】
そして、CPU44は、圧着端子51のサンプル作成時の圧力センサ100の出力から、クリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わる荷重の波形を検出(CF波形取得)し(ステップS23)、ピーク荷重P(n)を割り出してRAM46に記憶(登録)させる(ステップS25)。
【0064】
続いて、作成した圧着端子51のクリンプハイトCH(n)を実測し、入力部43から入力してRAM46に記憶(登録)させた後(ステップS27)、CPU44は、カウント値nがサンプル作成数N1に達したか否かを確認する(ステップS29)。サンプル作成数N1に達していない場合は(ステップS29でNO)、ステップS19にリターンする。
【0065】
一方、カウント値nがサンプル作成数N1に達した場合は(ステップS29でYES)、CPU44は、(N0+N1)個の圧着端子51のサンプルについて、ピーク荷重P(n)とクリンプハイトCH(n)との相関を示す近似直線式CH(n)=A×P(n)+B(但し、B=DP(n)+C、A,B,Cは定数)から、式CH(n)−DP(n)=A×P(n)+Cを、最小二乗法を用いて求める(ステップS31)。
【0066】
そして、CPU44は、求めた定数A,CをRAM46に記憶させ(ステップS33)、これらから、クリンプハイトCHの許容公差(クリンプハイトCHの上限値UCL、下限値LCL)を決定して、RAM46に記憶(登録)させる(ステップS33)。以上で、一連の手順を終了する。
【0067】
また、
図10のフローチャートでは、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを変えて形成した圧着端子51のサンプルから、CPU44が、ピーク荷重と、クリンプハイトCHからラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを減じた値との分布を求めて、関係式の定数を定める際の手順を示している。
【0068】
まず、圧着端子51のサンプル作成数(N0)を、入力部43から入力する(ステップS41)。続いて、CPU44は、サンプル数のカウント値nをゼロリセットし(ステップS43)、カウント値nを「1」インクリメントする(ステップS45)。そして、ラム11の下死点(サーボ下死点)DPを設定した後(ステップS47)、CPU44は、端子圧着装置200により圧着端子51のサンプルを作成させる(ステップS49)。
【0069】
そして、CPU44は、圧着端子51のサンプル作成時の圧力センサ100の出力から、クリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わる荷重の波形を検出(CF波形取得)し(ステップS51)、ピーク荷重P(n)を割り出してRAM46に記憶(登録)させる(ステップS53)。
【0070】
続いて、作成した圧着端子51のクリンプハイトCH(n)を実測し、入力部43からに入力してRAM46に記憶(登録)させた後(ステップS55)、CPU44は、カウント値nがサンプル作成数N0に達したか否かを確認する(ステップS57)。サンプル作成数N0に達していない場合は(ステップS57でNO)、ステップS45にリターンする。
【0071】
一方、カウント値nがサンプル作成数N0に達した場合は(ステップS57でYES)、CPU44は、N0個の圧着端子51のサンプルについて、ピーク荷重P(n)とクリンプハイトCH(n)との相関を示す近似直線式CH(n)=A×P(n)+B(但し、B=DP(n)+C、A,B,Cは定数)から、式CH(n)−DP(n)=A×P(n)+Cを、最小二乗法を用いて求める(ステップS59)。
【0072】
そして、CPU44は、求めた定数A,CをRAM46に記憶させ(ステップS61)、これらから、クリンプハイトCHの許容公差(クリンプハイトCHの上限値UCL、下限値LCL)を決定して、RAM46に記憶(登録)させる(ステップS63)。以上で、一連の手順を終了する。
【0073】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図9のフローチャートにおけるステップS1乃至ステップS31と、
図10のフローチャートにおけるステップS41乃至ステップS59とが、請求項中の関係式取得ステップに対応する手順となっている。
【0074】
図11のグラフは、導体量が異なる3種類の電線61(
図7中の電線種と同一)を用いて複数サンプルずつ圧着端子51を形成した際の、各サンプルのピーク荷重と、圧着端子51の存在により拡がったクリンパ14とアンビル17の間隔(クリンプハイトCHからラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを減じた値)との分布を示している。なお、
図11中、yは近似直線式、R2 は決定係数である。
【0075】
例えば、
図9に示すような手順を行うことで、上述した近似直線式の定数A,Cを定めることができる。定数A,Cが定まれば、圧力センサ100の出力によりクリンプハイト管理装置300のCPU44が検出する圧着端子51のピーク荷重から、圧着端子51のクリンプハイトを計算により測定することができる。
【0076】
なお、仕様が同じ端子圧着装置200については、定数A,Cを共通の値としてもよい。しかし、各端子圧着装置200毎に、クリンパ14やアンビル17の寸法が公差内でばらつくこともあるので、各端子圧着装置200毎に定数A,Cを、上述した手順で個別に決定してもよい。
【0077】
上述した関係式を用い、圧力センサ100の出力を元にCPU44が検出した圧着端子51のピーク荷重からクリンプハイトを計算した場合、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPをアンビル側に変更すると、
図12のグラフ中白抜きの菱形のプロット点で示すように、求まるクリンプハイトの値は小さくなる。反対に、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPをアンビル17から離れるように変更すると、
図12中×印のプロット点で示すように、求まるクリンプハイトの値は大きくなる。
【0078】
上述したようにラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを変更しても、
図13のグラフに示すように、計算して求めたクリンプハイトは、実測したクリンプハイトとおおよそ同じ値となる。
【0079】
そこで、圧着端子51と電線61の芯線60とが導通不良を起こしたり、芯線60が断線不良を起こしたりしないような、適正な圧着端子51のクリンプハイトの値(クリンプハイトの目標値)を決定する。そして、目標値の上下にクリンプハイトの許容範囲を定めて上限値及び下限値を決定する。そして、
図2及び
図3に示す端子圧着装置200で圧着端子51を作製(形成)する度に、CPU44が検出するピーク荷重から計算で求まるクリンプハイトが、
図14のグラフに示す、クリンプハイトの上限値と下限値の間にあるかどうかを確認することで、クリンプハイト管理装置300により圧着端子51の良否を判定することができる。
【0080】
図15のフローチャートでは、圧着端子51の作製時に、CPU44が、クリンプハイトの上限値(UCL)及び下限値(LCL)に基づいて圧着端子51の圧着状態の良否を判定する際の手順を示している。この手順は、圧着端子51を作製する都度実行するものである。
【0081】
なお、ここでは、クリンプハイトの上限値(UCL)及び下限値(LCL)を上述した関係式に代入して求めた、上限値(UCL)及び下限値(LCL)にそれぞれ対応するピーク荷重の上限値P(UCL)及び下限値P(LCL)と、各圧着端子51を作製する度に測定したピーク荷重との比較により、圧着端子51の圧着状態の良否を判定する手順を説明する。
【0082】
ピーク荷重とその上限値P(UCL)及び下限値P(LCL)とを比較するのは、各圧着端子51を作製する度にクリンプハイトを計算することによるCPU44の負担を減らすためである。したがって、ピーク荷重とその上限値P(UCL)及び下限値P(LCL)との比較は、実質的に、各圧着端子51を作製する度に計算したクリンプハイトと、クリンプハイトの上限値(UCL)及び下限値(LCL)との比較を行うことに他ならない。
【0083】
まず、端子圧着装置200により電線61の芯線60に端子を圧着して圧着端子51を作製する(ステップS71)。そして、CPU44は、圧着端子51の作製時の圧力センサ100の出力から、クリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わる荷重の波形を検出(CF波形取得)し(ステップS73)、ピーク荷重Pを割り出す(ステップS75)。
【0084】
続いて、CPU44は、割り出したピーク荷重が、ピーク荷重の上限値P(UCL)及び下限値P(LCL)の範囲内にあるか否かを確認する(ステップS77)。範囲内にある場合は(ステップS77でYES)、CPU44は、圧着状態が良好(OK)であると判定し(ステップS79)、範囲内にない場合は(ステップS77でNO)、CPU44は、圧着状態が不良(NG)であると判定する(ステップS81)。
【0085】
そして、CPU44は、ステップS75で割り出したピーク荷重Pから、上述した関係式を用いて圧着端子51のクリンプハイトCHを計算し(ステップS83)、計算したクリンプハイトCHを表示部47に表示させて(ステップS85)、RAM46に記憶させる(ステップS87)。これにより、一連の手順を終了し、次の圧着端子51の作製時に、ステップS71からの手順を改めて行う。
【0086】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図15のフローチャートで説明した手順が、請求項中のハイト測定ステップ、判定ステップ、及び、判定手段に対応する手順となっている。
【0087】
なお、端子圧着装置200において、例えば、クリンパ14やアンビル17の交換等に伴い、クリンプハイトが適正な目標値となるようにラム11の下死点位置(サーボ下死点)を再設定する必要が生じた場合は、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)を変えながら圧着端子51を形成する。そして、各下死点における圧着端子51形成時の、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPと、CPU44によるピーク荷重Pの検出値とを、上述した関係式に代入して、クリンプハイトを計算により求める。このクリンプハイトが目標値(又はその上限値(UCL)と下限値(LCL)の範囲内)となったときに、クリンパ14の下死点を固定する。
【0088】
図16のフローチャートでは、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)を再設定する際の手順を示している。
【0089】
まず、圧着端子51のクリンプハイトCHの目標値CH0を入力部43から入力し(ステップS91)、アンビル17上に、圧着端子51とする端子と電線61(の芯線60)をセットする(ステップS93)。そして、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを段階的に下げてアンビル17に近づけながら(ステップS95)、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPと、クリンパ14とアンビル17から圧着端子51にかかる荷重のピーク値(ピーク荷重)Pを、実測及び圧力センサ100の出力により取得する(ステップS97)。
【0090】
そして、CPU44は、取得したラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPとピーク荷重Pを上述した関係式に代入して、圧着端子51のクリンプハイトCHを計算し(ステップS99)、計算したクリンプハイトCHとクリンプハイトの目標値CH0との差分が極小値(Δ)であるか否かを確認する(ステップS101)。差分が極小値でない場合は(ステップS101でNO)、ステップS95にリターンする。
【0091】
一方、計算したクリンプハイトCHとクリンプハイトの目標値CH0との差分が極小値である場合は(ステップS101でYES)、現在のラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPをラム11の正式な下死点位置(サーボ下死点)DPとして設定して(ステップS103)、圧着端子51のクリンプハイトCHを実測して実測したクリンプハイトCH1を取得する(ステップS105)。そして、実測したクリンプハイトCH1がクリンプハイトの目標値CH0とは異なる場合は、上述した関係式の定数Cを、C=C+CH1−CH0に更新して、以後のクリンプハイトCHの算出に適用する(ステップS107)。これにより、一連の手順を終了する。
【0092】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図16のフローチャートにおけるステップS95及びステップS97が、請求項中のピーク荷重測定ステップに対応する手順となっている。また、本実施形態では、
図16中のステップS101が、実質的に、請求項中の照合ステップに対応する手順となっている。そして、これらのステップを含む、
図16中のステップS91乃至ステップS103が、請求項中の間隔決定ステップに対応する手順となっている。
【0093】
このような手順でラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを再調整することで、クリンプハイトCHを実測する回数を減らして、クリンプハイトCHが目標値CH0となるラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを、少ない作業時間及び作業工数で効率的に決定することができる。
【0094】
以上に説明した本実施形態のクリンプハイト管理装置300を用いた圧着端子51のクリンプハイトの測定方法と管理方法によれば、クリンパ14とアンビル17により端子を電線61の芯線60に加締めて圧着して圧着端子51を形成する際に、圧力センサ100で測定可能なピーク荷重から、圧着端子51のクリンプハイトとピーク荷重との比例関係を示す関係式を用いて、クリンプハイトを計算により測定することができる。
【0095】
したがって、クリンプハイトの測定を手作業によらず定量的に継続して行うことができる。また、圧着端子51を形成する度にクリンプハイトを測定できるので、クリンプハイトの管理を、形成した圧着端子51の全数を対象にして漏れなく行うことができる。
【0096】
また、本実施形態では、ピーク荷重からクリンプハイトを算出するのに用いた関係式の定数Bを、端子圧着装置200において設定可能なラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPと定数Cとの和とした。このため、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを、符号を変えて関係式の右辺から左辺に移項すると、ラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPをクリンプハイトから減じた寸法が、ピーク荷重と比例する式となる。
【0097】
ここで、クリンプハイトからラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを減じた寸法は、クリンパ14を下死点に降下させクリンパ14とアンビル17により端子を電線61の芯線60に加締めて形成した圧着端子51の存在により端子圧着装置200が歪んで変化した、クリンパ14とアンビル17の間隔の変化量に一致する。
【0098】
したがって、ピーク荷重からクリンプハイトを導き出す関係式を、端子を電線61の芯線60に加締めて作製した圧着端子51の存在により歪んで変化したクリンパ14とアンビル17の間隔の変化分と、その変化分をなくして端子圧着装置200から歪みを解放しようとする反力によってクリンパ14とアンビル17から圧着端子51に加わるピーク荷重との関係を表す式によって構成し、これにより、ピーク荷重から計算によって求めるクリンプハイトの測定精度を良くすることができる。
【0099】
なお、本実施形態では、クリンプハイトがその上限値(UCL)及び下限値(LCL)の範囲内にあるか否かや、ピーク荷重がその上限値P(UCL)及び下限値P(LCL)の範囲内にあるか否かを確認するものとした。しかし、クリンプハイトやピーク荷重の目標値に対する許容変化量を定義し、クリンプハイトやピーク荷重の計算値又は実測値が対応する目標値に対して、許容変化量以内の差であるか否かを確認するようにしてもよい。そのようにしても、実質的には、クリンプハイトやピーク荷重の計算値又は実測値を、それらの上限値や下限値と比較することと同じである。
【0100】
また、圧着端子51の圧着状態の良否を判定する際に、クリンプハイトの計算値と比較する対象は、本実施形態のように、その上限値と下限値の両方であってもよく、どちらか一方であってもよい。どちらか一方とする場合は、例えば、クリンプハイトの計算値が上限値以下であれば圧着状態を一律に良好と判定したり、クリンプハイトの計算値が下限値以上であれば圧着状態を一律に良好と判定することになる。
【0101】
さらに、本実施形態では、ピーク荷重からクリンプハイトを導き出す関係式の、直線近似式における傾きに相当する定数Aを、切片に相当する定数Bと共に、クリンプハイトCHからラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを減じた値とピーク荷重との分布から求めるものとした。しかし、クリンプハイトCHからラム11の下死点位置(サーボ下死点)DPを減じた値とピーク荷重との分布から求める対象を、切片に相当する定数Bのみとして、傾きに相当する定数Aを不変としてもよい。
【0102】
また、切片に相当する定数Bは、本実施形態で説明したような、サーボモータの正逆回転によりアンビルを昇降させるサーボ正逆回転昇降式の端子圧着装置を用いる場合は、ラムの制御上の下死点位置(サーボ下死点)DPと定数Cの合計値となる。しかし、サーボ正回転式やフライホイール式のように、ラムの制御上の下死点位置(サーボ下死点)という概念が存在しない端子圧着装置の場合は、定数Bは単に、クリンパ14とアンビル17の最小間隔Bとなる。そして、RAM46に記憶される関係式も、CH=A×P+B(但し、A,Bは定数)となる。