【実施例1】
【0025】
以下本発明の一実施例としての加湿器を図面により説明する。
【0026】
図1は加湿装置の外観斜視図である。加湿装置は、本体1の正面および側面前部を形成する本体前枠11、側面後部と背面を形成する本体後枠12を有しており、本体1の天面には加湿空気を吹き出す吹出口13、操作ボタンを備えるとともに運転状態を表示する操作表示部14、図示しない水タンクを本体1に着脱する際に開閉するタンクカバー15が設けられている。
【0027】
本体前枠11は、正面壁11aの上端に湿度を表示するための湿度表示部16が設けられるとともに、正面壁11aの下部には挿入口11bが設けられ、この挿入口11bを介して本体1内の下部には水槽部2を収容する空間となる水槽収容部17が形成されている。水槽部2は挿入口11bから水槽収容部17に挿脱自在に装着される。さらに正面壁11aの下端には、正面壁11aよりわずかに水槽収容部17内に入り込むようにして段差部11cが屈曲形成されており、水槽部2を本体1に装着すると、水槽部外装面2dの上端が段差部11cに当接して水槽収容部17が閉塞される。
【0028】
次に、水槽部2の構造について
図2の上面図、
図3の斜視図を用いて説明する。水槽部2の内部は、底面より立設する仕切板2aによって、図示しない水タンクが装着される水タンク収容部20と、気化フィルタ3が設置される気化フィルタ収容部30とに区画されている。
【0029】
水タンク収容部20には、水槽部2の水位に応じて回動するフロート21が設けられるとともに、水タンクのキャップを受けるキャップ収容部22が形成されている。フロート21は端部にマグネットを備えており、このマグネットを本体1に設けられたリードスイッチが検知することにより水槽部2が本体1に装着されたことが検知され、水槽部2が本体1に装着された場合にのみ加湿運転を行うことができるようになっている。
【0030】
仕切板2aには水タンク収容部20と気化フィルタ収容部30を連通する連通孔2bが設けられており、水タンクから水槽部2に供給された水は、水タンク収容部20からこの連通孔2bを介して気化フィルタ収容部30に流入する。これにより水槽部2には一定量の水が貯えられて破線で示す定水面が形成されるため、気化フィルタ3は毛細管現象によってこの水を吸い上げることで水を含んで湿潤する。また、気化フィルタ3は略直方体形状をなし、側面3aが水槽部2の側壁2cと仕切板2aに接するようにして配置されている。
【0031】
気化フィルタ収容部30を形成する側壁のうち、気化フィルタ3に接する側壁(側壁2cと仕切板2a)は気化フィルタ3の高さよりも高く形成され、さらに、気化フィルタ3の移動を規制するための保持片31(31a、31b、31c)が設けられており、気化フィルタ3を設置する際にはこの保持片31を目印にして保持片31の内側に上から挿入する。なお、この保持片31は、水槽部2内の水とは接しないように定水面よりも高い位置に設けられていて、水垢等の汚れが付着することを防止している。
【0032】
なお、本実施例においては、3箇所の保持片31a、31b、31cと水槽部2に形成された屈曲部32によって気化フィルタ3の四隅を押えるように構成しているが、水槽部2に屈曲部32を形成せずに4つの保持片により気化フィルタの四隅を押えるようにしてもよい。また、保持片31cの代わりに屈曲部を設けて保持片を31aと31bの2箇所にしてもよい。
【0033】
気化フィルタ3は保持片によって角が押えられているだけで、中央部分には気化フィルタ3を保持するための機構が設けられていない。そのため、水槽部2を本体1に装着する際に気化フィルタ3が本体に当たって擦れてしまうと中央部分が変形して保持片31から外れてしまったりするおそれがあるが、気化フィルタ3に接する側壁(側壁2cと仕切板2a)を気化フィルタ3の高さよりも高くすることで、気化フィルタ3が本体1にこすれてしまうことが防止される。
【0034】
また、この保持片31は複数設けられているうち、本体の正面側(水槽部外装面2d側)の保持片31aおよび31cが背面側の保持片31bより若干高くなっており、さらに各保持片31の下端はなだらかに傾斜した形状となっている。
【0035】
気化フィルタ収容部30の底面には、ほぼ気化フィルタ3と同形状の平坦面である気化フィルタ設置面33が形成されている。そして、この気化フィルタ設置面33の両端には緩やかに傾斜する傾斜面34a、34bと、それぞれの傾斜面34a、34bから延びる平坦面35a、35bからなり気化フィルタ設置面33より高く形成された段部36a、36bが設けられている。なお、段部36a、36bの形状はこれに限らず、平坦面35a、35bを備えずに傾斜面34a、34bのみから構成されるようにしてもよい。また、傾斜面34a、34bは円弧状になっていてもよい。
【0036】
水槽部2の底面は常時水に浸かった状態となっていて、水垢などの汚れが付着するため定期的な清掃が必要となるが、底面に急激な段差があるとスポンジ等を用いても段差の境目に付着した汚れが取れづらく、また残った汚れからは雑菌が繁殖しやすくなる。そこで、このように水槽部2の底面を平坦な面と緩やかに傾斜する面から構成して急激な段差を設けないことで、掃除がしやすくなるとともにきれいに汚れを取り除くことができるため雑菌の繁殖も抑えることができる。
【0037】
さらに、気化フィルタ収容部30には、従来のように底面から突出するようなガイド部材も設けられておらず、保持片31の下端も傾斜しているため、清掃の際にスポンジを用いてもスポンジが引っかかったりすることもない。
【0038】
気化フィルタ収容部30の底面に段差を形成することで、底面が平らな場合と比べて気化フィルタ収容部30に貯められる水の量が少なくなる。そのため、加湿器が転倒した際に本体1からこぼれ出す水の量を少なくすることができる。
【0039】
図4は加湿器の縦断面構成図である。気化フィルタ3の上部にはモータ5とシロッコファン6からなる送風機7が設けられていて、送風機7の回転により、本体1背面に設けられた吸込口18から気化フィルタ3を通って本体1天面の吹出口13にいたる通風路に送風が行われる。この送風により、吸込口18から取り込まれた室内の空気は水槽部2内の水を吸い上げて湿潤している気化フィルタ3を通過する際に加湿空気となり、吹出口13より室内に放出されることで空気が加湿される。
【0040】
また、気化フィルタ3を挟んで挿入口11bと相対する通風路には、通風路中に突出する突出部材8が設けられている。本実施例においてこの突出部材8は、気化フィルタ3に送風される空気を加熱するヒータ部であり、ヒータ部8は発熱体とこの発熱体を保護するヒータ枠から構成される。
【0041】
送風機7は、ファンケーシング9を介して本体1に取り付けられ、このファンケーシング9からは気化フィルタ3の上端近傍に下垂した係止部材9aが設けられていて、気化フィルタ3がヒータ部8側に傾いた際には気化フィルタ3の上端がこの係止部材9aに当接するためヒータ部8に接触することが防止されるようになっている。係止部材9aは
図5に示すように、ファンケーシング9の下端に横長に形成してもよいし、短い片を複数箇所に形成してもよい。
【0042】
また、
図4中のH1は段部36aの最も高い位置である平坦面35aから挿入口11b上端までの高さ(一点鎖線で表示)を示し、H2は段部36bの最も高い位置である平坦面35bからヒータ部8までの高さを表しており、H1、H2ともに気化フィルタ3の高さよりも低くなるように形成されている。
【0043】
気化フィルタ3の正しい設置場所は、気化フィルタ設置面33上であり、このように正しい位置に気化フィルタ3を配置することで、適切な加湿量を得ることができるようになっている。しかし、気化フィルタ3の保持片31が水槽部2の底面に設けられておらず、また気化フィルタ設置面33と同様に段部36a、36bの一部が平坦であるため、誤って気化フィルタ3を段部36aや36bに設置してしまう(誤挿入してしまう)可能性がある。正しい位置に気化フィルタ3が設置されないと、適切な加湿量を得ることが出来ないばかりでなく、ヒータ部8に気化フィルタが接触してしまった場合には気化フィルタ3が溶けて故障の原因となるおそれもあるため、本実施例の加湿器では、使用者が気化フィルタ3を誤挿入したことに気づくもしくは、誤挿入したとしても自然と正しい位置に移動させられるようになっている。以下、気化フィルタ3が誤挿入された場合について説明する。
【0044】
気化フィルタ3が段部36aに設置された場合、段部36aから挿入口11bまでの高さH1は気化フィルタ3の高さより低いため、水槽部2を本体1に装着しようとしても気化フィルタ3が挟まってしまい挿入口11bは閉まらない。そのため使用者は気化フィルタ3を誤挿入したことに気づくことができる。また、水槽部2が最後までセットされて挿入口11bが閉まらないと、本体1に設けられたリードスイッチは水槽部2を検知できず、この状態では加湿運転が行われないようになっている。よって、誤挿入されたまま加湿運転を行ってしまうおそれもない。
【0045】
一方、気化フィルタ3が段部36bに設置された場合、段部36bからヒータ部8までの高さH2は気化フィルタ3の高さより低いため、水槽部2を奥まで挿入しようとすると、気化フィルタ3がヒータ部8に接触するので、押し込む際に大きな抵抗を感じる。この時点で誤挿入であることに気づいた場合には、気化フィルタ3を取り出して正しい位置に設置し直せばよい。ただし、気化フィルタ3は本体1内に入ってしまっているので抵抗を感じたとしても誤挿入が原因であることに気付かない可能性があるが、もし誤挿入に気付かずそのままさらに押し込んだとしても、ヒータ部8に近い保持片31bは高さが低くなっているので、水槽部2を押し込む力によって気化フィルタ3が保持片31bを乗り越え、自然と正しい設置位置まで気化フィルタ3を移動させることができる。
【0046】
保持片31bの高さは、上述のように気化フィルタ3を誤挿入した水槽部2を無理やり本体1に押し込んだ際に、気化フィルタ3が乗り越えられる程度に留めなければならないため、気化フィルタ3の変形や大きさのばらつきによっては、気化フィルタ3が保持片31bに引っかからずに傾いたり倒れたりしてしまう可能性がある。気化フィルタ3が傾いたり倒れたりすると、誤挿入された場合と同様に適切な加湿量を得ることができなかったり、ヒータ部8に接触することによって溶けて故障の原因となってしまうが、ファンケーシング9には係止部材9aが形成されていて、もし気化フィルタ3が保持片31bに引っかからなかったとしてもこの係止部材9aに当接するので、気化フィルタ3が傾いたり倒れたりすることが防止される。
【0047】
なお、保持片31aと31cは気化フィルタ3が多少変形したり大きさにばらつきがあったとしても、気化フィルタ3を押えることができる高さを有しているので、気化フィルタ3を係止させる部材を設けなくとも、気化フィルタ3が挿入口11bの方向に傾いたりしないようになっている。
【0048】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、本実施例においては、突出部材8をヒータ部により構成したが、加湿器がヒータ部8を備えない場合やヒータ部8と挿入口11bが同じ方向にある場合は、本体1の一部を空気通路中に張り出させて突出部材を形成してもよい。
【0049】
また、係止部材9aは、ファンケーシング9から下垂するようにして設けた例を示したが、本体1の側面から内側に向けて張り出すようにすることもできる。