特許第5883763号(P5883763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883763
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/10 20060101AFI20160301BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   F28F3/10
   F28F3/08 311
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-230335(P2012-230335)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-81165(P2014-81165A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2013年8月21日
【審判番号】不服2015-2095(P2015-2095/J1)
【審判請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 要
(72)【発明者】
【氏名】木村 康治
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−99588(JP,A)
【文献】 特表2010−519498(JP,A)
【文献】 特開2000−105096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F3/10
F28F3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも四箇所に開口部を有する複数の伝熱プレートであって、互いに重ね合わされた状態でロウ付けされた複数の伝熱プレートを備え、第一流体を流通させる第一流路と第二流体を流通させる第二流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成され、且つ、四箇所の開口部のそれぞれが連なって、第一流路に対して第一流体を流出入させる一対の第一通路が形成されるとともに、第二流路に対して第二流体を流出入させる一対の第二通路が形成されたプレート式熱交換器において、最外層にある二つの伝熱プレートのうち、一方の伝熱プレートに重ね合わされるエンドプレートを備え、エンドプレートは、伝熱プレートの四箇所に形成された開口部に重なるように配置される板状の積層部であって、第一流体を流入させる第一通路及び第二流体を流入させる第二通路の少なくとも何れか一方を構成する開口部と重複した位置に貫通孔を有する積層部と、積層部における貫通孔の周辺部全域を包含する領域を外側から覆い、第一通路及び第二通路の少なくとも何れか一方の終端を画定する封止部とを備え、封止部は、積層部における貫通孔の周辺部に対して間隔をあけて設けられ、前記封止部と、前記積層部における貫通孔の周辺部と、の間の空間が、該封止部によって終端が画定された第一通路又は第二通路と連通していることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
貫通孔は、開口部よりも小径である請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
積層部における貫通孔の周辺部と封止部とが間隔をあけた状態で部分的に連結されている請求項1又は請求項2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
積層部は、伝熱プレートに対して重ね合わされる板状の基板と、基板に重ね合わされた補強板であって、基板よりも厚肉な補強板とを備え、貫通孔は、基板及び補強板を貫通して形成され、封止部は、貫通孔を覆うように補強板に重ね合わされている請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート式熱交換器に関し、特には、ブレージングタイプのプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレート式熱交換器の一つとして、ブレージングタイプのプレート式熱交換器が提供されている。かかるプレート式熱交換器は、図13A及び図13Bに示す如く、少なくとも四箇所に開口部22〜25,32〜35を有する複数の伝熱プレート2,3であって、四箇所のそれぞれの開口部22〜25,32〜35を連ならせた状態で積層された複数の伝熱プレート2,3と、最外層にある二枚の伝熱プレート2,3のうち、一方の伝熱プレート(以下、最下層伝熱プレートという)3に重ね合わされたエンドプレート4とを備える。
【0003】
この種のプレート式熱交換器1において、複数の伝熱プレート2,3及びエンドプレート4がロウ付けされることで、各伝熱プレート2,3を境にして第一流体Hを流通させる第一流路R1と第二流体Cを流通させる第二流路R2とが交互に形成されている。また、複数の伝熱プレート2,3の開口部22〜25,32〜35が四箇所のそれぞれで連なり、第一流路R1に第一流体Hを流出入させる一対の第一通路Ra,Rbが形成されるとともに、第二流路R2に第二流体Cを流出入させる一対の第二通路Rc,Rdが形成されている。そして、上述の如く、エンドプレート4は、最下層伝熱プレート3に重ね合わされることで、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdのそれぞれにおける一方の開放端を閉じている。すなわち、エンドプレート4は、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdの終端を画定している。
【0004】
これにより、この種のプレート式熱交換器1において、最外層にある二枚の伝熱プレート2,3のうち、他方の伝熱プレート(以下、最上層伝熱プレートという)2の開口部22〜25のそれぞれが第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdの流入出口を構成している。すなわち、一方の第一通路Ra及び一方の第二通路Rcは、最上層伝熱プレート2側から流体を流入させるとともに、他方の第一通路Rb及び他方の第二通路Rdは、最上流伝熱プレート2側に流体を流出させるように形成されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−64281号公報
【特許文献2】特開2010−085094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のプレート式熱交換器1において、第一通路Ra及び第二通路Rcの終端がエンドプレート4によって画定されているため、供給された流体(第一流体H及び第二流体Cの少なくとも何れか一方)の圧力WPがエンドプレート4に直接作用する。
【0007】
そのため、エンドプレート4に作用する流体の圧力WPは、第一通路Raや第二通路Rc(開口部22,32,24,34)の周辺部に対応する領域内にあるエンドプレート4と伝熱プレート3との接合部分P1や、伝熱プレート2,3同士の接合部分P1に対して引っ張り作用を生じさせる。すなわち、最上層伝熱プレート2側から供給される流体の圧力WPは、エンドプレート4における第一流路R1及び第二流路R2の少なくとも何れか一方と対応する領域を外側に押し出そうとする衝撃圧として作用する。これに伴い、エンドプレート4と一体化した伝熱プレート2,3が外側に向けて引っ張られ、エンドプレート4と伝熱プレート3との接合部分P1や、伝熱プレート2,3同士の接合部分P1に応力が集中的に作用する。
【0008】
また、この種のプレート式熱交換器1には、エンドプレート4に重ね合わされて該エンドプレート4に対してロウ付けされた補強板42を備えたものもある。かかるプレート式熱交換器1においては、上述の如く、流体の圧力WPが第一通路Ra及び第二通路Rcの終端を画定するエンドプレート4を外側に向けて押し出すように作用すると、エンドプレート4が補強板42を外側に向けて押圧する。その結果、エンドプレート4における第一通路Ra及び第二通路Rcの少なくとも何れか一方の周辺部と対応する領域と補強板42との接続部分P2に応力が集中的に作用する。
【0009】
そのため、従来のプレート式熱交換器1では、供給される流体の圧力WPが大きいときに、第一通路Ra及び第二通路Rcの少なくとも何れか一方の終端側で、第一流路R1及び第二流路R2の少なくとも何れか一方の周辺部P1,P2が圧力WPの影響を受けて破損(疲労破壊)する可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、流体が供給される通路の終端側が流体の圧力の影響で損傷することを抑制できるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプレート式熱交換器は、少なくとも四箇所に開口部を有する複数の伝熱プレートであって、互いに重ね合わされた状態でロウ付けされた複数の伝熱プレートを備え、第一流体を流通させる第一流路と第二流体を流通させる第二流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成され、且つ、四箇所の開口部のそれぞれが連なって、第一流路に対して第一流体を流出入させる一対の第一通路が形成されるとともに、第二流路に対して第二流体を流出入させる一対の第二通路が形成されたプレート式熱交換器において、最外層にある二つの伝熱プレートのうち、一方の伝熱プレートに重ね合わされるエンドプレートを備え、エンドプレートは、伝熱プレートの四箇所に形成された開口部に重なるように配置される板状の積層部であって、第一流体を流入させる第一通路及び第二流体を流入させる第二通路の少なくとも何れか一方を構成する開口部と重複した位置に貫通孔を有する積層部と、積層部における貫通孔の周辺部全域を包含する領域を外側から覆い、第一通路及び第二通路の少なくとも何れか一方の終端を画定する封止部とを備え、封止部は、積層部における貫通孔の周辺部に対して間隔をあけて設けられ、前記封止部と、前記積層部における貫通孔の周辺部と、の間の空間が、該封止部によって終端が画定された第一通路又は第二通路と連通していることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、エンドプレートの積層部における第一通路及び第二通路の少なくとも何れか一方を構成する開口部と重複した位置に貫通孔が形成されているため、伝熱プレートの開口部とエンドプレートの貫通孔とが連続(連通)する。しかし、封止部が積層部における貫通孔の周辺部全域を包含する領域を外側から覆っているため、第一通路及び第二通路の少なくとも何れか一方の開放端は、封止部によって閉じられる。これにより、第一通路及び第二通路は、最外層にある二つの伝熱プレートのうち、一方の伝熱プレート側が閉じられた状態になる。すなわち、エンドプレート(封止部)は、最外層にある一方の伝熱プレート側で第一通路及び第二通路の終端を画定する。なお、エンドプレートの積層部に対し、第一流体又は第二流体を流入させる第一通路又は第二通路の何れか一方を形成する開口部(流体の圧力の低い通路を形成する開口部)、第一流体を流出させる第一通路を形成する開口部、及び第二流体を流出させる第二通路を形成する開口部と対応した貫通孔が設けられない場合には、エンドプレート(積層部)がこれらの通路の開放端を直接的に閉じ、流体(第一流体、第二流体)を流出入させる通路の終端を画定する。
【0013】
これに伴い、第一流体及び第二流体は、最外層の二つの伝熱プレートのうち、他方の伝熱プレート側から供給される。すなわち、第一通路及び第二通路となる他方の伝熱プレートの開口部から第一流体及び第二流体のそれぞれが供給される。これにより、一方の第一通路に供給された第一流体は、第一流路を流れて他方の第一通路から排出され、一方の第二通路に供給された第二流体は、第二流路を流れて他方の第二通路から排出される。従って、第一流路を流通する第一流体と、第二流路を流通する第二流体とが伝熱プレートを介して互いに熱交換を行う。
【0014】
そして、上述の如く、最外層にある二つの伝熱プレートのうち、他方の伝熱プレート側から第一流体及び第二流体が供給されると、その流体の圧力が最外層にある二つの伝熱プレートのうち、一方の伝熱プレート側にあるエンドプレートに作用する。上記構成のプレート式熱交換器において、エンドプレートの積層部は、伝熱プレートの四箇所に形成された開口部に重なるように配置されるとともに、第一流体を流入させる第一通路及び第二流体を流入させる第二通路の少なくとも何れか一方(流通する流体の圧力の高い通路)を構成する開口部と重複した位置に設けられる貫通孔を有するため、供給された流体(第一流体又は第二流体)は貫通孔を通過した上で封止部に誘導されて封止部と積層部における貫通孔の周辺部との間に流れ込む。
【0015】
そうすると、封止部と積層部における貫通孔の周辺部との間に流れ込んだ流体は、封止部及び積層部のそれぞれに流体の圧力を作用させる。すなわち、流体は、積層部における貫通孔の周辺部に対し、流体の供給方向とは反対向きの圧力(最外層にある二つの伝熱プレートのうち、他方の伝熱プレート側に向けて押圧する圧力)を作用させる。これにより、積層部における貫通孔の周辺部には、封止部側からの圧力と、第一通路又は第二通路の流入口側からの圧力とが作用する。すなわち、封止部と積層部との間に流れ込んだ流体が、貫通孔の周辺部に対して背圧を作用させる。その結果、積層部における貫通孔の周辺部は押し引きされることなくバランスのとれた状態で維持する。これにより、エンドプレートと、該エンドプレートに対して直接的又は間接的に接続された伝熱プレートとの接続部分に集中的な応力が作用しなくなり、流体の圧力の影響で伝熱プレートが損傷(疲労破壊)することが抑制される。
【0016】
本発明の一態様として、貫通孔は、開口部よりも小径である、ことが好ましい。このようすれば、積層部における貫通孔の周辺部が伝熱プレートの開口部の内周よりも内側に延在する。従って、貫通孔の周辺部における両面において、流体の圧力を受ける面積が大きくなる。その結果、積層部における貫通孔の周辺部は、流体の圧力の作用で押し引きされることなく、バランスのとれた状態で確実に維持する。
【0017】
本発明の他態様として、積層部における貫通孔の周辺部と封止部とが間隔をあけた状態で部分的に連結されている、ようにし得る。このようにすれば、積層部の貫通孔を通過した流体は、貫通孔の周辺部と封止部との連結部分を躱して貫通孔の周辺部と封止部との間に流れ込む。このとき、流体は封止部に案内されつつ貫通孔の周辺部と封止部との間に流れ込むため、流体の圧力は、封止部を外側に押し出すようにも作用する。しかし、上述の如く、貫通孔の周辺部と封止部とが部分的に連結されることで、応力が発生するような封止部の変形等が制限される。これにより、エンドプレートの保護も確実となる。
【0018】
本発明の別の態様として、積層部は、伝熱プレートに対して重ね合わされる板状の基板と、基板に重ね合わされた補強板であって、基板よりも厚肉な補強板とを備え、貫通孔は、基板及び補強板を貫通して形成され、封止部は、貫通孔を覆うように補強板に重ね合わされている、ようにし得る。上記構成によれば、積層部が基板と補強板とによって二重構造となり、また、補強板の厚みによって貫通孔の周辺部の機械的な剛性が高まる。これにより、流体の圧力のかかり方が偏っても、貫通孔の周辺部が不用意に変形することが確実に防止される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係るプレート式熱交換器によれば、流体が供給される通路の終端側が流体の圧力の影響で損傷することを抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器の全体斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の縦断面図であって、図1のI−I断面図である。
図3図3は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の縦断面図であって、図1のII−II断面図である。
図4図4は、同実施形態に係るプレート式熱交換器を構成する第一伝熱プレートの説明図であって、図4Aは、第一面から見た第一伝熱プレートの平面図であり、図4Bは、第二面から見た第一伝熱プレートの平面図である。
図5図5は、同実施形態に係るプレート式熱交換器を構成する第二伝熱プレートの説明図であって、図5Aは、第一面から見た第二伝熱プレートの平面図であり、図5Bは、第二面から見た第二伝熱プレートの平面図である。
図6図6は、同実施形態に係るプレート式熱交換器を構成する第一伝熱プレート及び第二伝熱プレートの積層態様の説明図である。
図7図7は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図7Aは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第一通路を含む部分断面図であり、図7Bは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第二通路を含む部分断面図である。
図8図8は、本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図8Aは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第一通路を含む部分断面図であり、図8Bは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第二通路を含む部分断面図である。
図9図9は、本発明の別の実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図9Aは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第一通路を含む部分断面図であり、図9Bは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第二通路を含む部分断面図である。
図10図10は、本発明のさらに別の実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図10Aは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第一通路を含む部分断面図であり、図10Bは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第二通路を含む部分断面図である。
図11図11は、本発明のさらに別の実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図11Aは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第一通路を含む部分断面図であり、図11Bは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第二通路を含む部分断面図である。
図12図12は、本発明のさらに別の実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図12Aは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第一通路を含む部分断面図であり、図12Bは、同実施形態に係るプレート式熱交換器の第二通路を含む部分断面図である。
図13図13は、従来のプレート式熱交換器のプレート式熱交換器の縦断面図であって、図13Aは、第一通路及び第一流路を含む断面図であり、図13Bは、第二通路及び第二流路を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照して説明する。
【0022】
プレート式熱交換器は、図1に示す如く、重ね合わされた複数の伝熱プレート2,3と、複数の伝熱プレート2,3を挟み込むエンドプレート4及びフレームプレート5とを備える。
【0023】
より具体的には、プレート式熱交換器は、図2及び図3に示す如く、少なくとも四箇所に開口部22,23,24,25,32,33,34,35を有する複数の伝熱プレート2,3であって、互いに重ね合わされた複数の伝熱プレート2,3と、最外層にある二つの伝熱プレート2,3のうち、一方の伝熱プレート(以下、最下層伝熱プレートという)3に重ね合わされるエンドプレート4とを備える。また、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、最外層にある二つの伝熱プレート2,3のうち、他方の伝熱プレート(以下、最上層伝熱プレートという)2に重ね合わされるフレームプレート5を備える。
【0024】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、二種類の伝熱プレート2,3を備える。なお、以下の説明において、便宜上、二種類の伝熱プレート2,3のうち、一方の伝熱プレート2を第一伝熱プレートといい、他方の伝熱プレート3を第二伝熱プレートということとする。
【0025】
第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、図4及び図5に示す如く、共通した基本形態を有する。すなわち、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれは、第一面S1と反対側の第二面S2とを有する伝熱部20,30であって、平面視四角形状の伝熱部20,30と、該伝熱部20,30の外周端縁全周から第二面S2側に延出した環状の嵌合部21,31とを備える。
【0026】
第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、第一方向における伝熱部20,30の両端部のそれぞれに、第一方向と直交する第二方向に間隔をあけて二つの開口部22,23,24,25,32,33,34,35を有する。また、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、伝熱部20,30の第一面S1及び第二面S2の両面に複数の凹条及び凸条(採番しない)を有する。
【0027】
より具体的には、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれの伝熱部20,30には、四つの開口部22,23,24,25,32,33,34,35(以下、四つの開口部22,23,24,25,32,33,34,35のそれぞれを、第一開口部22,32、第二開口部23,33、第三開口部24,34、第四開口部25,35という)が形成されている。
【0028】
第一開口部22,32は、第一方向の一方の端部における第二方向の一方の端部に設けられ、第二開口部23,33は、第一方向の他方の端部における第二方向の一方の端部に設けられている。これに対し、第三開口部24,34は、第一方向の他方の端部における第二方向の他方の端部に設けられ、第四開口部25,35は、第一方向の一方の端部における第二方向の他方の端部に設けられている。
【0029】
そして、第一伝熱プレート2の伝熱部20において、第一開口部22の周辺部及び第二開口部23の周辺部(図4Aにおいてハッチングを付した領域)は、凹条及び凸条の形成された他の領域に対して該伝熱部20の第二面S2側に変位するように形成されている。また、第一伝熱プレート2の伝熱部20において、第三開口部24の周辺部及び第四開口部25の周辺部(図4Bにおいてハッチングを付した領域)は、凹条及び凸条の形成された他の領域に対して当該伝熱部20の第一面S1側に変位するように形成されている。
【0030】
これに対し、第二伝熱プレート3の伝熱部30において、第三開口部34の周辺部及び第四開口部35の周辺部(図5Aにおいてハッチングを付した領域)は、凹条及び凸条の形成された他の領域に対して伝熱部20の第二面S2側に変位するように形成されている。また、第二伝熱プレート3の伝熱部20において、第一開口部32の周辺部及び第二開口部33の周辺部(図5Bにおいてハッチングを付した領域)は、凹条及び凸条の形成された他の領域に対して当該伝熱部20の第一面S1側に変位するように形成されている。
【0031】
そして、第一伝熱プレート2(伝熱部20)の凸条、及び第二伝熱プレート3(伝熱部30)の凸条は、互いに重ね合わされた状態で、交差衝合するように配置されている。なお、第一伝熱プレート2(伝熱部20)及び第二伝熱プレート3(伝熱部30)において、凹条及び凸条は、交互に配列されている。
【0032】
第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれにおいて、嵌合部21,31は、伝熱部20,30側から外側(先端側)に向けて拡大するように形成されている。これにより、嵌合部21,31は、二種類の伝熱プレート2,3(第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3)が交互に積層された状態で、隣り合う伝熱プレート2,3(第一伝熱プレート2又は第二伝熱プレート3)の嵌合部21,31に嵌合するように構成される。
【0033】
そして、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、図6に示す如く、交互に積層される。その上で、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、ロウ付けによって一体的に結合されている。すなわち、図2及び図3に示す如く、第一伝熱プレート2は、伝熱部20の凸条を第二伝熱プレート3の伝熱部30の凸条に交差衝合させるとともに、嵌合部21を第二伝熱プレート3の嵌合部31に嵌合させ、第二伝熱プレート3は、伝熱部30の凸条を第一伝熱プレート2の伝熱部20の凸条に交差衝合させるとともに、嵌合部31を第一伝熱プレート2の嵌合部21に嵌合させている。
【0034】
これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第一流体Hを流通させる第一流路R1と第二流体Cを流通させる第二流路R2とが各伝熱プレート2,3を境にして交互に形成され、且つ、四箇所の開口部22,23,24,25,32,33,34,35のそれぞれが連なって、第一流路R1に対して第一流体Hを流出入させる一対の第一通路Ra,Rbが形成されるとともに、第二流路R2に対して第二流体Cを流出入させる一対の第二通路Rc,Rdが形成されている。なお、以下の説明において、便宜上、一対の第一通路Ra,Rbのうち、一方の第一通路Raを流入用第一通路といい、他方の第一通路Rbを流出用第一通路ということとする。また、一対の第二通路Rc,Rdのうち、一方の第二通路Rcを流入用第二通路といい、他方の第二通路Rdを流出用第二通路ということとする。
【0035】
エンドプレート4は、図2図3図7A、及び図7Bに示す如く、伝熱プレート2,3の四箇所に形成された開口部22,23,24,25,32,33,34,35に重なるように配置される積層部40であって、第一流体Hを流入させる流入用第一通路Ra及び第二流体Cを流入させる流入用第二通路Rcの少なくとも何れか一方を構成する開口部22,32,24,34と重複した位置に貫通孔40a,40cを有する積層部40と、該積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部全域を包含する領域を覆い、該開口部22,32,24,34によって形成される流入用第一通路Ra及び流入用第二通路Rcの少なくとも何れか一方の終端を画定する封止部41とを備える。
【0036】
本実施形態において、積層部40は、伝熱プレート2,3に対して重ね合わされる基板43aと、基板43aに重ね合わされた補強板42であって、基板43aよりも厚肉の補強板42とを備える。
【0037】
より具体的に説明する。本実施形態に係るプレート式熱交換器1において、エンドプレート4は、伝熱部21,31に重ね合わされる板状の基板43aを含むエンドプレート本体43を備える。
【0038】
エンドプレート本体43は、伝熱プレート2,3の伝熱部20,30の平面サイズ及び平面形状と対応した基板43aと、基板43aの外周から該基板43aの一方の面側に延出した環状部43bであって、最下層伝熱プレート(第二伝熱プレート)3の嵌合部31に対して嵌合される環状部43bを備える。
【0039】
基板43aは、平板状をなし、伝熱部20,30と対応するように平面視四角形状に形成される。環状部43bは、基板43a側から外側(先端側)に向けて拡大するように形成されている。これにより、エンドプレート4が最下層伝熱プレート(本実施形態においては第二伝熱プレート)3に積層された状態で、環状部43bが隣り合う最下層伝熱プレート3の嵌合部31に嵌合するように構成される。
【0040】
補強板42は、エンドプレート本体43(基板43a)よりも厚肉の金属プレートで構成される。補強板42は、基板43aに積層可能な相似形に形成される。すなわち、補強板42は、平面視四角形状をなし、基板43aよりも僅かに小さく形成されている。補強板42は、基板43aの一方の面に重ね合わされて固定されている。なお、本実施形態において、補強板42は、エンドプレート本体43の基板43aに対してロウ付けによって固定されている。これにより、本実施形態に係るエンドプレート4の積層部40は、基板43a及び補強板42によって積層構造(二重構造)になっている。
【0041】
本実施形態において、積層部40は、第一流体Hを流入させる流入用第一通路Ra、第二流体Cを流入させる流入用第二通路Rc、第一流体Hを流出させる流出用第一通路Rb、及び第二流体Cを流出させる流出用第二通路Rdのそれぞれを構成する開口部22,23,24,25,32,33,34,35と重複した位置に貫通孔40a,40b,40c,40dを有する。すなわち、本実施形態に係る積層部40は、伝熱プレート2,3の伝熱部20,30に設けられた四つの開口部22,23,24,25,32,33,34,35のそれぞれと対応する位置に貫通孔40a,40b,40c,40dを有する。
【0042】
本実施形態において、貫通孔40a,40b,40c,40dは、開口部22,23,24,25,32,33,34,35よりも小径に設定されている。これにより、積層部40における貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部は、伝熱部20,30の開口部22,23,24,25,32,33,34,35よりも内側に延在している。
【0043】
すなわち、第一通路Ra,Rbと対応する貫通孔40a,40bの周辺部は、第一通路Ra,Rbを形成する開口部22,23,32,33の連なる方向から見て、これらの開口部22,23,32,33の内周縁よりも内側に存在する。また、第二通路Rc,Rdと対応する貫通孔40c,40dの周辺部は、第二通路Rc,Rdを形成する開口部24,25,34,35の連なる方向から見て、これらの開口部24,25,34,35の内周縁よりも内側に存在する。
【0044】
本実施形態に係るエンドプレート4において、積層部40がエンドプレート本体43の基板43aと補強板42とによって構成されているため、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdのそれぞれに対応した貫通孔40a,40b,40c,40dは、基板43a及び補強板42を貫通して形成されている。
【0045】
本実施形態において、上述の如く、積層部40に四つの貫通孔40a,40b,40c,40dが設けられる。これに伴い、本実施形態に係るエンドプレート4は、各貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部全域を包含する領域を覆う四つの封止部41を備える。
【0046】
封止部41は、積層部40における貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部に対して間隔をあけて設けられている。本実施形態に係る封止部41は、皿状に形成されている。これに伴い、封止部41の外周端部が全周に亘って積層部40に封着されている。具体的には、封止部41は、貫通孔40a,40b,40c,40d及びその周辺部と対向するカバー部41aと、カバー部41aの外周全周から延出した環状の間隔保持部41bとを備え、貫通孔40a,40b,40c,40d及びその周辺部に対してカバー部41aを対向させた状態で間隔保持部41bが全周に亘って積層部40にロウ付けによって封着されている。
【0047】
これにより、エンドプレート4は、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdの終端が画定されている。すなわち、両端が開放した状態で形成される第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdの一方の開放端がエンドプレート4によって閉じられている。
【0048】
図2及び図3に戻り、フレームプレート5は、伝熱プレート2,3の伝熱部20,30の平面サイズ及び平面形状が同一の金属プレートで構成されたフレーム本体50であって、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdを構成する開口部22,23,24,25,32,33,34,35と重複した位置に開口(採番しない)を有するフレーム本体50と、フレーム本体50の開口に対して同心で設けられた筒状の配管接続部51a,51b,51c,51dであって、フレーム本体50の一方の面から延出した配管接続部51a,51b,51c,51dとを備える。そして、フレームプレート5は、フレーム本体50の他方の面を最上層伝熱プレート2に重ね合わせた状態で該最上層伝熱プレート2に対してロウ付けによって固定されている。
【0049】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、以上のとおりである。次に、本実施形態に係るプレート式熱交換器1の作用及び効果について説明する。
【0050】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1において、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdは、最下層伝熱プレート3側が閉じられた状態になる。すなわち、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdは、最下層伝熱プレート3側が終端となる。
【0051】
これに伴い、第一流体H及び第二流体Cは、最上層伝熱プレート2側から供給される。すなわち、流入用第一通路Ra及び流入用第二通路Rcとなる最上層伝熱プレート2の開口部22,32,24,34から第一流体H及び第二流体Cのそれぞれが供給される。
【0052】
そして、上述の如く、最上層伝熱プレート2側から第一流体H及び第二流体Cが供給されると、その流体H,Cの圧力が最下層伝熱プレート3側に作用する。より具体的に説明する。上記構成のプレート式熱交換器1において、エンドプレート4の積層部40は、伝熱プレート2,3の四箇所に形成された開口部22,23,24,25,32,33,34,35に重なるように配置されるとともに、第一流体Hを流入させる第一通路Ra及び第二流体Cを流入させる第二通路Rc(流体圧の高い通路)を構成する開口部22,32,24,34と重複した位置に設けられる貫通孔40a,40cを有する。そのため、供給された流体(第一流体H又は第二流体C)は貫通孔40a,40cを通過した上で封止部41に誘導されて封止部41と積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部との間に入り込む。
【0053】
そうすると、封止部41と積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部との間に流れ込んだ流体H,Cは、封止部41及び積層部40のそれぞれに流体の圧力を作用させる。すなわち、流体H,Cは、積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部に対し、第一通路Ra及び第二通路Rcに対する供給方向とは反対向きの圧力(最上層伝熱プレート2側に向けて押圧する圧力)を作用させる。
【0054】
これにより、積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部には、封止部41側からの圧力と、第一通路Ra又は第二通路Rcの流入口側からの圧力が作用する。すなわち、封止部41と積層部40との間に流れ込んだ流体H,Cが、貫通孔40a,40cの周辺部に対して背圧を作用させる。その結果、積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部は押し引きされることなくバランスのとれた状態で維持する。
【0055】
特に、本実施形態に係るプレート式熱交換器1において、貫通孔40a,40cは、開口部22,32,24,34よりも小径である。これに伴い、積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部が伝熱プレート2,3の開口部22,32,24,34の内周よりも内側に延在する。従って、貫通孔40a,40cの周辺部における両面において、流体の圧力を受ける面積が大きくなる結果、流体H,Cの圧力の作用で積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部は、押し引きされることなくバランスのとれた状態で維持する。
【0056】
これにより、エンドプレート4と、該エンドプレート4に対して直接的又は間接的に接続された伝熱プレート2,3との接続部分に集中的な応力が作用しなくなり、流体の圧力の影響で伝熱プレート2,3が損傷(疲労破壊)することが抑制される。
【0057】
そして、流入用第一通路Raを流通した第一流体Hは、第一流路R1に流れ込み、流入用第二通路Rcを流通した第二流体Cは、第二流路R2に流れ込む。これにより、第一流路R1を流通する第一流体Hと、第二流路R2を流通する第二流体Cとが伝熱プレート2,3(第一伝熱プレート2、第二伝熱プレート3)を介して熱交換する。そして、第一流路R1を流通した第一流体H(熱交換後の第一流体H)は、流出用第一流路Rbから流出し、第二流路R2を流通した第二流体C(熱交換後の第二流体C)は、流出用第二流路Rdから流出する。
【0058】
本実施形態においては、流出用第一通路Rb及び流出用第二通路Rdの終端側についても、流入用第一通路Ra及び流入用第二通路Rdの終端側と同様の構成が採用されている。すなわち、本実施形態に係るプレート式熱交換器1において、エンドプレート4の積層部40は、流出用第一通路Rb及び流出用第二通路Rdを構成する開口部23,33,25,35と重複した位置に設けられる貫通孔40b,40dを有する。そのため、上流側から流れてきた流体(第一流体H又は第二流体C)は貫通孔40b,40dを通過した上で封止部41に誘導されて封止部41と積層部40における貫通孔40b,40dの周辺部との間に入り込む。
【0059】
そうすると、封止部41と積層部40における貫通孔40b,40dの周辺部との間に流れ込んだ流体は、封止部41及び積層部40のそれぞれに流体の圧力を作用させる。すなわち、第一流路R1からの第一流体H及び第二流路R2からの第二流体Cのそれぞれは、積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部に対し、流出用第一通路Rb及び流出用第二通路Rdにおける流出方向と同方向の圧力(最上層伝熱プレート2側に向けて押圧する圧力)を作用させる。
【0060】
これにより、流出用第一通路Rb及び流出用第二通路Rdにおいても、積層部40における貫通孔40b,40dの周辺部には、封止部41側からの圧力と、流出用第一通路Rb又は流出用第二通路Rdの流出口側からの圧力が作用する。すなわち、封止部41と積層部40との間に流れ込んだ流体が、貫通孔40a,40cの周辺部に対して背圧を作用させる。その結果、積層部40における貫通孔40a,40cの周辺部は押し引きされることなくバランスのとれた状態で維持する。
【0061】
特に、本実施形態に係るプレート式熱交換器1において、貫通孔40b,40dは、開口部23,33,25,35よりも小径であるため、フレームにおける貫通孔40b,40dの周辺部が伝熱プレート2,3の開口部23,33,25,35の内周よりも内側に延在する。従って、貫通孔40b,40dの周辺部における両面において、流体の圧力を受ける面積が大きくなる結果、流体の圧力の作用で積層部40における貫通孔40b,40dの周辺部は、押し引きされることなくバランスのとれた状態で維持する。
【0062】
これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、流体H,Cの供給に伴う圧力のみならず、内部での流体H,Cの流通に伴う圧力(流出する流体H,Cの流通圧)が作用しても、エンドプレート4と、該エンドプレート4に対して直接的又は間接的に接続された伝熱プレート2,3との接続部分に集中的な応力が作用しなくなり、流体H,Cの圧力の影響で伝熱プレート2,3が損傷(疲労破壊)することが抑制される。
【0063】
また、本実施形態において、積層部40は、伝熱プレート2,3に対して重ね合わされる基板43aと、基板43aに重ね合わされた補強板42であって、基板43aよりも厚肉な補強板42とを備え、貫通孔40a,40b,40c,40dは、基板43a及び補強板42を貫通して形成され、封止部41は、貫通孔40a,40b,40c,40dを覆うように補強板42に重ね合わされている。これにより、積層部40が基板43aと補強板42とによって二重構造となり、また、補強板42の厚みによって貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部の機械的な剛性が高まる。これにより、流体の圧力のかかり方が偏っても、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部が不用意に変形することが確実に防止される。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更を加え得ることは勿論である。
【0065】
例えば、上記実施形態において、封止部41と積層部40の貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部とが連結されることなく、貫通孔40a,40b,40c,40d回りの全周に亘って封止部41と積層部40の貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部との間が連通したが、これに限定されない。例えば、図8図11に示す如く、積層部40における貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とが間隔をあけた状態で部分的に連結されてもよい。
【0066】
このようにしても、積層部40の貫通孔40a,40b,40c,40dを通過した流体は、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41との連結部分を躱して貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41との間に流れ込む。このとき、流体は封止部41に案内されつつ貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41との間に流れ込むため、流体の圧力は、封止部41を外側に押し出すようにも作用する。しかし、上述の如く、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とが部分的に連結されることで、応力が発生するような封止部41の変形等が制限される。これにより、エンドプレート4の保護も確実となる。
【0067】
具体的には、図8A、及び図8Bに示す如く、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41との間にブロック状の連結部材6aが一つ以上配置されるとともに、連結部材6が貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とを連結してもよい。このようにすれば、流体C,Hは、連結部材6aを躱して周辺部と封止部41との間に流れ込むため、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とを連結させつつ、上記実施形態と同様に、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部に背圧を作用させることができる。
【0068】
また、図9A図9B図10A、及び図10Bに示す如く、積層部40における貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部、及び封止部41における貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と対応する領域の少なくとも何れか一方に他方に向けて部分的に突出させた連結用突出部6b,6cを形成し、該連結用突出部6b,6cを他方に連結するようにしてもよい。このようにすれば、積層部40の貫通孔40a,40b,40c,40dを通過した流体H,Cは、連結用突出部6b,6cを躱して貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41との間に流れ込むため、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とを連結させつつ、上記実施形態と同様に、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部に背圧を作用させることができる。
【0069】
また、図11A及び図11Bに示す如く、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とが部分的に連結される当り、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41との間に、凹凸が連続して波状に形成された連結部材6dが配置され、連結部材6dの頂部が貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とに連結されてもよい。このようにしても、積層部40の貫通孔40a,40b,40c,40dを通過した流体H,Cは、連結部材6dの凹部を介して(凸部を躱して)貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41との間に流れ込むため、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部と封止部41とを連結させつつ、上記実施形態と同様に、貫通孔40a,40b,40c,40dの周辺部に背圧を作用させることができる。
【0070】
上記実施形態において、皿状に形成された封止部41を積層部40に封着したが、これに限定されない。例えば、図12に示す如く、伝熱部20,30に重ね合わせ可能なプレート材Pa1における第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdの対応する領域を押し出し成形して膨出させることで、積層部40(図12においては補強板42)における貫通孔40a,40b,40c,40d及びその周辺部を除く部分と封止部41とを一体成形し、該プレート材Pa1における膨出に伴って開放した部分に貫通孔40a,40b,40c,40dを有する環状部材Pa2を嵌合した状態で、環状部材Pa2とプレート材Pa1とを溶接等で接合することで、積層部40と封止部41とを一体的に形成してもよい。
【0071】
すなわち、積層部40及び封止部41のそれぞれを形成する部品Pa1,Pa2の分割位置は、積層部40と封止部41との境界に限定されるものではなく、貫通孔40a,40b,40c,40dを有するプレート状の積層部40と貫通孔40a,40b,40c,40d及びその周辺部を覆うカバー状の封止部41とが一体的に形成されればよい。なお、図12においては、封止部41と、積層部40の一部を構成する補強板42とが一体的に形成されたものが図示されているが、積層部40を単層構造とする場合には、単層の積層部40における貫通孔40a,40b,40c,40d及びその周辺部を除く部分と封止部41とが一枚のプレート材Pa1から成形されればよい。
【0072】
上記実施形態において、積層部40は、伝熱プレート2,3に対して重ね合わされる基板43aと、基板43aに重ね合わされた補強板42であって、基板43aよりも厚肉な補強板42とを備えたが、これに限定されない。例えば、積層部40は、一枚の金属プレートで構成され、単層構造とされてもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、エンドプレート4は、伝熱プレート2,3の嵌合部21,31に対して嵌合される環状部43bを有するエンドプレート本体43を備えたが、これに限定されない。例えば、エンドプレート4は、第一通路Ra,Rb及び第二通路Rc,Rdの終端を画定できればよく(開口部22,23,24,25,32,33,34,35を閉じることができればよく)、少なくとも伝熱プレート2,3の伝熱部20,30に重ね合わされる平板状の積層部40と、貫通孔40a,40b,40c,40d及びその周辺部を包含する領域を覆う封止部41とを備えたものであればよい。
【0074】
上記実施形態において、一対の第一通路Ra,Rb及び一対の第二通路Rc,Rdのそれぞれと対応する位置に貫通孔40a,40b,40c,40d及び封止部41を設けたが、これに限定されない。例えば、流体の圧力が作用し易い流入用第一通路Ra及び流入用第二通路Rcのうちの少なくとも何れか一方と対応する位置に貫通孔40a,40c及び封止部41を設けるようにしてもよい。
【0075】
この場合、エンドプレート4(封止部41)は、最下層伝熱プレート3側で流体の圧力の高い第一通路Ra及び第二通路Rcの少なくとも何れか一方の終端を画定する。これに対し、第一流体H又は第二流体Cを流入させる第一通路Ra又は第二通路Rbの何れか一方を形成する開口部(流体の圧力の低い通路を形成する開口部)22,32,24,34、第一流体Hを流出させる第一通路Rbを形成する開口部23,33、及び第二流体Cを流出させる第二通路Rdを形成する開口部25,35は、エンドプレート4(積層部40)によって直接的に閉じられる。
【符号の説明】
【0076】
1…プレート式熱交換器、2…第一伝熱プレート(伝熱プレート)、3…第二伝熱プレート(伝熱プレート)、4…エンドプレート、5…フレームプレート、6a,6d…連結部材、6b,6c…連結用突出部、20,30…伝熱部、21,31…嵌合部、22,32…第一開口部(開口部)、23,33…第二開口部(開口部)、24,34…第三開口部(開口部)、25,35…第四開口部(開口部)、40…積層部、40a,40b,40c,40d…貫通孔、41…封止部、41a…カバー部、41b…間隔保持部、42…補強板、43…エンドプレート本体、43a…基板、43b…環状部、50…フレーム本体、51a,51b,51c,51d…配管接続部、H…第一流体、C…第二流体、R1…第一流路、R2…第二流路、Ra…流入用第一通路(第一通路)、Rb…流出用第一通路(第一通路)、Rc…流入用第二通路(第二通路)、Rd…流出用第二通路(第二通路)
図1
図2
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図8
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図10
図11
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図13