特許第5883776号(P5883776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883776
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】管継手接続治具
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20160301BHJP
   F16L 33/00 20060101ALI20160301BHJP
   B25B 27/14 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   F16L1/00 V
   F16L33/00 B
   B25B27/14 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-283724(P2012-283724)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-126147(P2014-126147A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】峯 祥太
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/131609(WO,A1)
【文献】 特開平09−303618(JP,A)
【文献】 特開平04−357383(JP,A)
【文献】 特開2002−267064(JP,A)
【文献】 実開昭54−171522(JP,U)
【文献】 米国特許第04893393(US,A)
【文献】 特開2012−000686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00 − 55/24
B25B 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管端を押し込むことで接続が完了し接続された管に引き抜き力を付加することでインジケータリングが露出する管継手に管を接続するための管継手接続治具であって、
接続対象の管を保持する管保持部と、
前記管保持部に保持された管の管軸と管継手の中心軸が一致するように当該管継手を保持する管継手保持部と、
前記管保持部と前記管継手保持部を相対的に近接させることで前記管の管端を前記管継手に押し込む管端押し込み機構部と、
前記管端押し込み機構部の押し込み動作に伴う弾性圧縮の復元力によって前記管保持部と前記管継手保持部を強制的に離間させて前記引き抜き力を付加するインジケータリング露出機構部とを備えることを特徴とする管継手接続治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管端に管継手を接続するための治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内ガス配管などでは金属コルゲート管の表面を樹脂で被覆したフレキシブル管が使用されることがある。このフレキシブル管の接続には、施工性の観点からワンタッチ接続が可能な管継手が使用されており、この種の管継手には、フレキシブル管の端部と管継手との気密性が安定的に保持されると共に、フレキシブル管の端部が正常に管継手に接続されていることを目視確認できるものが採用されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
図1は、前述した管継手の構造及び機能を示した説明図である。図において、管継手1は、金属コルゲート管101の周囲を被覆樹脂102で覆ったフレキシブル管100の端部に接続される。管継手1は、継手本体2と、継手本体2に部分的に挿入される押ナット3と、継手本体2の内部に装着される弾性手段4(圧縮コイルばね41,ガイド部材42,スライド部材43)と、第1のシール部材5と、リテーナ6と、ストップリング7と、第2のシール部材8と、第3のシール部材9と、インジケータリング10とを備えている。
【0004】
図1(a)に示すように、被覆樹脂102を先端部から除去したフレキシブル管100を管継手1に挿入すると、金属コルゲート管101の先端はスライド部材43に当接し、図示矢印に沿って挿入されたフレキシブル管100の管端と押ナット3を継手本体2内に押し込むことで、図1(b)に示すように、スライド部材43と継手本体2の内側で拘束されていたガイド部材42が開放されて圧縮コイルばね41が復元し、その復元力でガイド部材42は第一のシール部材5のパッキン51を押す。第一のシール部材5に押されたリテーナ6は図1(b)の矢印方向にスライドして金属コルゲート管101の谷部に係合し、フレキシブル管100は管継手1に固定される。この際圧縮コイルばね41の復元力によりパッキン51は半径方向に膨張するので、継手本体2とフレキシブル管100とのシール性が確保される。
【0005】
図1(b)に示す状態でフレキシブル管100と管継手1との接続は完了しているが、それを確認するとともに、施工管理者が後で確認できるようにするために、図1(c)に示すように、接続されたフレキシブル管100に引き抜き力を付加する。この状態ではフレキシブル管100は押ナット3に強固に連結しているので、押ナット3はフレキシブル管100と一体となって継手本体2から僅かに抜け、図1(c)に示すようにインジケータリング10が継手本体2の環状溝2aから外に現れる。
【0006】
このようなインジケータリング10を備えた管継手1によると、フレキシブル管100の押し込み後にフレキシブル管100に引き抜き力を付加する工程を追加することにより、フレキシブル管100の管継手1への接続完了を確認できるだけでなく、接続作業が正常に行われたことをインジケータリング10の露出によって明示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2010/131609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したようなインジケータリングを備えた管継手を採用する場合、管継手にフレキシブル管を真直ぐ押込む必要があり、また、インジケータリングを露出させるためには、フレキシブル管を管継手内に押し込んだ後に引き抜き力を付加する工程を追加する必要がある。作業者にとってはこの工程は煩わしさを感じる作業であり、また、インジケータリングを十分に露出させるためには比較的大きな引き抜き力(数十〜百数十N程度)が必要になる。一方、フレキシブル管が正常に押込まれていないにもかかわらず、インジケータリングが露出してしまう場合があり、この場合には、管継手が管端に確実に接続されているか否かを判別できないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、インジケータリングを備えた管継手を採用する場合に、管継手に接続対象管を真直ぐに押し込むことで精度良く接続を完了させることができ、接続後には確実にインジケータリングを露出させることで、管継手が管端に確実に接続されていることを目視確認することができ、後続作業を円滑に行うことができる管継手接続治具を提供すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明による管継手接続治具は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
管端を押し込むことで接続が完了し接続された管に引き抜き力を付加することでインジケータリングが露出する管継手に管を接続するための管継手接続治具であって、接続対象の管を保持する管保持部と、前記管保持部に保持された管の管軸と管継手の中心軸が一致するように当該管継手を保持する管継手保持部と、前記管保持部と前記管継手保持部を相対的に近接させることで前記管の管端を前記管継手に押し込む管端押し込み機構部と、前記管端押し込み機構部の押し込み動作に伴う弾性圧縮の復元力によって前記管保持部と前記管継手保持部を強制的に離間させて前記引き抜き力を付加するインジケータリング露出機構部とを備えることを特徴とする管継手接続治具。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を備えた管継手接続治具によると、管保持部に接続対象の管を保持させ、管継手保持部に管継手を保持させた状態で、管端押し込み機構部を動作させることで接続対象管の管端を管継手内に押し込んで両者の接続を適正に完了させることができる。その後、インジケータリング露出機構部を操作することで、管保持部と管継手保持部が弾性圧縮の復元力によって強制的に離間することになり、接続された管に所望の引き抜き力が付加されて管継手が備えるインジケータリングを正常に露出させることができる。
【0012】
このような管継手接続治具を用いることによって、インジケータリングを備えた管継手を採用するに際して、確実に管継手に接続対象管を押し込み、さらに確実にインジケータリングを露出させることができ、管継手が管端に確実に接続されていることを確認することができるので、後続作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】インジケータリングを備えた管継手の構造及び機能を示した説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る管継手接続治具の全体構成を示した概念図である。
図3】本発明の一実施形態に係る管継手接続治具における管保持部の具体的な構成例を示した説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る管継手接続治具における伝動機構の具体的な構成例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図2は本発明の一実施形態に係る管継手接続治具の全体構成を示した概念図である。本発明の実施形態に係る管継手接続治具20は、図1に示した管継手1に接続対象の管(フレキシブル管100)を接続するための治具である。この管継手接続治具20は、管保持部21、管継手保持部22、管端押し込み機構部23、インジケータリング露出機構部24を備えている。
【0015】
管保持部21は、フレキシブル管100などの接続対象管を保持する機構を備えている。図3は管保持部21の具体的な構成例を示している。管保持部21は治具本体20Aの上部に設けられ、図示の例では、一対の弾性支持部21A、一対の挟持部21B、一対の間隔調整部21C、間隔調整具21Dなどを備えている。この例では、ボルトナットなどで構成できる間隔調整具21Dを調整することで一対の間隔調整部21Cの間隔を調整し、一対の弾性支持部21Aに支持された一対の挟持部21B間に接続対象管100A又は100Bを挟んで保持する。この管保持部21は常に接続対象管100A又は100Bの管軸O1の位置を一定位置に保持することができるものである。また、この管保持部21は、異なる外径(R1又はR2)を有する接続対象管100A又は100Bを保持することができ、いずれの外径の接続対象管(100A又は100B)を保持する場合にも接続対象管(100A又は100B)の管軸の位置が治具本体20に対して常に一定位置に保持される。
【0016】
管継手保持部22は、管継手1を保持する機構を備えている。この管継手保持部22は、管保持部21に保持された管の管軸と管継手1の中心軸が一致するように管継手1を保持するものである。具体的な構成としては、図3に示した管保持部21の構成と同等の構成を採用することができる。
【0017】
管端押し込み機構部23は、管継手保持部22を支持するスライド部材23A、スライド部材23Aを治具本体20Aにスライド自在に支持する支持部材(支持ローラ)23B、スライド部材23Aをスライドさせるためのスライドハンドル23C、伝動機構23Dなどによって構成され、管保持部21と管継手保持部22を相対的に近接させることで接続対象管の管端を管継手1に押し込む機能を有するものである。図示の例では、スライド部材23Aに管継手保持部22が支持されている例を示しているが、これに限らず、スライド部材23Aに管保持部21が支持され、治具本体20Aに管継手保持部22が支持される構成であってもよい。
【0018】
図2及び図4によって伝動機構23Dの具体例を説明する。スライドハンドル23Cはその上端部が治具本体20Aの軸23Eにて揺動自在に支持され矢印a方向にバネ付勢されている。これによってスライドハンドル23Cを矢印b方向に揺動操作した後手を離すとバネ力によって矢印a方向に戻るようになっている。また、軸23Eにはラチェット歯車23F1とかみ合い歯車23F2とが同軸に一体となった二重歯車23Fが回転自在に軸支されている。
【0019】
スライドハンドル23Cにはラチェット送り部材23Gが軸支されており、このラチェット送り部材23Gはラチェット歯車23F1に常時噛み合うようにラチェット歯車23F1側に向けてバネ付勢されている。また、ラチェット送り部材23Gにはそのバネ付勢に抗してラチェット送り部材23Gをラチェット歯車23F1から引き離すための送り解除レバー23G1が一体に設けられている。二重歯車23Fのかみ合い歯車23F2には治具本体20Aに軸支された伝動歯車23Hが噛み合っており、この伝動歯車23Hがスライド部材23Aに設けられたかみ合い歯23A1に噛み合いラックアンドピニオン機構を構成している。
【0020】
このような伝動機構23Dによると、スライドハンドル23Cを矢印b方向に揺動操作することで、ラチェット歯車23F1に係合したラチェット送り部材23Gが二重歯車23Fを回動させ、伝動歯車23Hを介してスライド部材23Aを矢印c方向にスライドさせる。スライドハンドル23Cは一定の揺動範囲操作した後は手を離すことで元の位置に戻るので、スライドハンドル23Cを繰り返し揺動操作することでスライド部材23Aを矢印c方向に継続的にスライドさせることができる。
【0021】
インジケータリング露出機構部24は、管端押し込み機構部23の押し込み動作に伴う弾性圧縮の復元力によって管保持部21と管継手保持部22を強制的に離間させて管継手1とフレキシブル管100の接続に引き抜き力を付加する機構である。図示の例では、インジケータリング露出機構部24は、スライド部材23Aと一体に設けられる弾性部材圧縮部24Aと、スライド部材23Aにおける矢印c方向のスライドに伴い弾性部材圧縮部24Aによって弾性圧縮される弾性部材(圧縮バネ)24Bと、前述した送り解除レバー23G1と、ガイド部24Cなどによって構成されている。弾性部材圧縮部24Aはスライド部材23Aのスライド方向に沿って設けられるガイド部24Cに沿ってスライドするように規制されており、このガイド部24C内に弾性部材(圧縮バネ)24Bが配備されている。
【0022】
このような構成を有する管継手接続治具20の使用方法及び機能を説明する。先ず、管保持部21に接続対象管(フレキシブル管100)を保持させると共に管継手保持部22に管継手1を保持させる。この状態で接続対象管の管軸と管継手1の中心軸は同軸上に配置されることになる。この状態でスライドハンドル23Cを繰り返し操作してスライド部材23Aを矢印c方向にスライドさせ、管保持部21と管継手保持部22を近接させて管継手1内に接続対象管の管端を押し込む。この押し込みによって接続対象管と管継手1との接続が完了する。このように管継手接続治具20を用いて接続対象管と管継手1の接続を行うと、接続対象管の管軸と管継手1の中心軸が同軸上に配置された状態で接続が行われるので常に適正な接続がなされる。
【0023】
前述したスライドハンドル23Cの操作によってスライド部材23Aが矢印c方向にスライドすると弾性部材圧縮部24Aが弾性部材(圧縮バネ)24Bを弾性圧縮する。作業者は接続対象管と管継手1との接続完了を認識すると、送り解除レバー23G1を矢印d方向に操作しラチェット歯車23F1からラチェット送り部材23Gを引き離す。この操作によって、二重歯車23F、伝動歯車23H、スライド部材23Aがフリーな状態になるので、弾性圧縮された弾性部材24Bの復元力によってスライド部材23Aは矢印e方向にスライドすることになり、管保持部21と管継手保持部22が強制的に引き離される。これによって接続対象管と管継手1との接続に引き抜き力が付与されることになり、管継手1が備えるインジケータリング10が図1(c)に示すような露出状態になる。
【0024】
ここで、弾性圧縮された弾性部材24Bの復元力は管継手1のインジケータリング10を露出させるのに適正な値に設定されている。これによって、作業者は、送り解除レバー23G1の簡易な操作のみで接続対象管と管継手1との接続完了の確認を行うことができ、同時に管継手1から確実にインジケータリング10を露出させることができる。
【0025】
このように管継手接続治具20を用いることで、インジケータリング10を備えた管継手1を採用する場合に、真直ぐに管継手1にフレキシブル管100を押込むことで確実に管端に管継手1を接続させることができ、さらに確実にインジケータリング10を露出させることで、管継手1が管端に確実に接続されていることを確認することができる。これによって後続作業を円滑に行うことが可能になる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1:管継手,
10:インジケータリング,
20:管継手接続治具,20A:治具本体,
21:管保持部,22:管継手保持部,
23:管端押し込み機構部,24:インジケータリング露出機構部,
100:フレキシブル管
図1
図2
図3
図4