(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなコルク栓は容器口の内側面に強く接した状態で打栓されるが、開栓時にはスムーズな開栓性が求められる。その開栓性に影響を与える因子のひとつとして、容器口に打栓されたコルク栓を引き抜く際にコルク栓の周面と、コルク栓の周面が接する容器口の内側面との間に生じる摩擦抵抗が挙げられる。
この摩擦抵抗が大きく働く場合は、開栓しにくいコルク栓となる一方、摩擦抵抗が小さく働く場合は、開栓しやすくなるが、栓飛びや容器を横倒しにすると液漏れ等が発生するおそれがある。
容器の保管環境は湿度や室温など様々な環境下で保管されることが想定され、また使用条件も長期間に亘って打栓された状態が続くなど様々である。そのため、容器の保管環境、使用条件などに影響を受けることなく、開栓性のばらつきが少ないコルク栓が理想といえる。
従来より、容器の保管環境、使用条件などに影響を受けることなく安定した開栓性を備えたものが種々提案されているが、コルク栓を引き抜く際に生じる摩擦抵抗が適切に設定され、より一層安定した開栓性を備えたコルク栓が求められている。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コルク栓特有のシール性を維持しながらも、容器の保管環境、使用条件などに影響を受けることなく安定した開栓性を備えたコルク栓及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコルク栓は、容器口を閉塞するために用いられるものであって、コルク成型体と、該コルク成型体の周面に合成樹脂材を被覆して形成された合成樹脂層とを備えたコルク栓本体を含み、前記容器口を閉塞したときに、前記容器口の内側面と接する前記合成樹脂層の表面には粗面化処理がなされており、前記粗面化処理が施された凹凸面は、凹部と平坦部とを有し
、該凹部は、前記コルク成型体の周方向に不連続に形成されており、かつ、略直線状の筋に形成された凹条部もしくは波形に形成された波型凹部であることを特徴とする。
この構成によれば、合成樹脂層の表面に粗面化処理が施されていることにより、容器口に打栓されたコルク栓本体と容器口の内側面との接触面積を適度に一様に減らすことができる。そのため、コルク栓を開栓するときに生じる容器口の内側面とコルク栓本体の周面との間の摩擦抵抗を適度に下げることができる。
よって、コルク栓特有の弾力性、圧縮性がもたらすシール性を維持しながらも、従来のものよりも、より一層安定した開栓性を備えたコルク栓とすることができる。
本発明において、前記凹部が、円柱状の前記コルク成型体の軸方向に前記平坦部のみで構成された箇所が生じないように形成されているものとしてもよい。
【0009】
本発明において、前記合成樹脂層の表面は、表面粗さRy3μm〜600μmに粗面化処理されているものとしてもよい。
この構成によれば、コルク栓を開栓するときに生じる容器口の内側面とコルク栓本体の周面との間の摩擦抵抗をより一層適度に下げることができ、容器の保管環境、使用条件などに影響を受けることなく、安定して開栓しやすいコルク栓とすることができる。
合成樹脂層の表面の表面粗さが、Ry3μmよりも小さい場合は、粗面化度合いが細かすぎて、容器口に打栓されたコルク栓本体と容器口の内側面との接触面積を適度に減らすことにならない。そのため、摩擦抵抗が大きくなる傾向となり、開栓性の改善効果があまり得られない。合成樹脂層の表面の表面粗さがRy600μmよりも大きい場合は、粗面化度合いが粗くなりすぎて、容器口に打栓されたコルク栓のコルク栓本体と容器口の内側面との接触面積が減らされすぎてしまう。そのため、摩擦抵抗が小さくなりすぎる傾向となり、栓飛びや容器を横倒しした際には液漏れのおそれもある。
また本発明において、前記合成樹脂材は、例えばポリエチレンテレフタレートからなるものとしてもよい。
この構成によれば、コルク臭に対してバリア性の高いものとすることができ、内容液への臭い移りを防止することができる。
【0010】
そして本発明において、前記コルク成型体が円柱状に形成されている場合の前記粗面化処理は、フリー回転自在な治具に前記コルク栓本体を取付け、加熱され回転する前記転写型を前記コルク栓本体の周面に押し当てることにより、前記コルク栓本体が共回りし、前記合成樹脂層の表面に前記凹凸面を転写することによりなされるものとしてもよい。
この構成によれば、円柱状のコルク栓本体の周面に凹凸面の凹凸度合いを均一に且つムラなく転写することができる。
また本発明において、前記容器口を閉塞したときに、容器内部側に配置される前記合成樹脂層の表面の一部を、シリコーン系樹脂材で被覆されているものとしてもよい。
この構成によれば、シリコーン系樹脂材によって容器口に対する滑り性がより改善される。
さらに本発明のコルク栓の製造方法は、円柱状に形成され、コルク成型体の周面に合成樹脂材を被覆して形成された合成樹脂層を備えたコルク栓本体をフリー回転自在な治具に取付け、凹凸面が形成され
加熱された転写型を回転させた状態で、前記コルク栓本体の周面に押し当てて前記コルク栓本体を共回りさせ、
凹部と平坦部とを有し前記コルク成型体の軸方向に前記平坦部のみで構成された箇所がないように形成される凹凸面を
コルク成型体の周面に転写することにより、前記合成樹脂層の表面に粗面化処理を施すようにしてもよい。
これによれば、円柱状をなし粗面化処理を行う加工面が湾曲したコルク栓本体であっても、その周面に凹凸面の凹凸度合いが均一で且つ凹凸面をムラなく転写でき、適度な粗面化処理が施されたコルク栓を精度良く作製することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコルク栓によれば、コルク栓特有の弾力性、圧縮性がもたらすシール性を維持しながらも、従来のものよりも、より一層安定した開栓性を備えたものとすることができる。
また本発明に係るコルク栓の製造方法によれば、円柱状をなし粗面化処理を行う加工面が湾曲したコルク栓本体であっても、その周面に凹凸面を均一な度合いで且つムラなく転写でき、適度な粗面化処理が施されたコルク栓を精度良く作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を図面とともに説明する。
まず第1の実施形態におけるコルク栓1Aについて
図1〜
図9を参照しながら説明する。
図1に示すように、コルク栓1Aは、ウイスキー、ブランデー、ワインなどの飲料用の容器2の容器口2aを閉塞するために用いられる。
コルク栓1Aは、コルク成型体10aと、コルク成型体10aの周面に合成樹脂材を被覆して形成された合成樹脂層12とを備えたコルク栓本体10を含み、合成樹脂層12の表面には粗面化処理がなされている。
ここではコルク栓の一例として、容器口2a内に打栓されるコルク栓本体10と、開栓するときにコルク栓本体10を引き抜くための取っ手部分となる把持部11とを備えたコルク栓1Aを示している。
2点鎖線で示す容器2はガラス材などからなり、把持部11はガラス材或いはプラスチックなど樹脂材、木質材などからなる。
【0014】
コルク成型体10aは、天然コルクを型抜きすることにより形成されたもの、或いは多数のコルク粒をバインダー樹脂とともに圧縮成型され、容器口2aの形状に合わせて円柱状に形成されている。コルク成型体10aの下端、すなわち容器口2aの開口周縁部内側は、面取りされており、コルク栓本体10が容器口2aにスムーズに打栓されるよう形成されている。上述のバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂系或いはポリウレタン系の熱硬化性樹脂系接着剤などが用いられる。
【0015】
コルク成型体10aの周面に形成される合成樹脂層12を構成する合成樹脂材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム(以下、ポリエチレンテレフタレートフィルムという)等が挙げられる。
このように合成樹脂層12としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合は、コルク臭に対してバリア性の高いものとすることができ、内容液への臭い移りを防止することができる。
ここで粗面化処理は、凹凸面を施す処理をいい、少なくとも容器口2aに打栓された際に容器口2aの内側面2bと接するコルク栓本体10の周面(側周面)に施されており、図例のものは、d範囲において粗面化処理がなされたものを示している(
図1参照)。
合成樹脂層12の表面は、表面粗さRy3μm〜600μmに粗面化処理されているものとしてもよく、この粗面化処理は、後記するように転写型に形成された凹凸面を転写することによりなされる。またこれに限定されず、炭酸ガスレーザーなどによるレーザー処理や研磨処理などによって行ってもよい。
転写型に形成された凹凸面を転写することにより粗面化処理を行うものとした場合は、円柱状のコルク栓本体10における合成樹脂層12の表面に容易に粗面化処理を行うことができる。またレーザー処理で粗面化処理を行う場合は、粗面化度などの調整がしやすい。
なお、粗面化処理による表面粗さ及びその処理工程については、後に詳しく説明する。
【0016】
図例のものは、転写型に形成された凹凸面を転写することにより粗面化処理を行った例を示しており、
図2(b)中、12aは溝状に形成された凹条部、12bは平坦部である。
図2(a)及び(b)に示す凹凸面は、コルク栓1Aの周方向(横方向)に途切れ途切れに且つ略直線状の横筋に形成された凹条部12aと、平坦部12bとで構成されている。凹条部12aは、それぞれが重なりあわないように周方向(横方向)に不連続に且つ等間隔に複数形成されるとともに、円柱状のコルク栓1Aの軸方向(縦方向)にも等間隔に複数段形成されている。そしてこのように複数列をなして形成された凹条部12aは、軸方向に平坦部12bのみで構成された箇所が生じないように形成位置をずらして形成されている。
このように粗面化処理を行うことにより、平坦部12bによってシール性を維持しつつ、凹凸面とすることでより安定した開栓性を備えたものとすることができる。
なお、
図2(a)に示すように凹条部12aは、断面視において、半円形状に形成されたものとしてもよいし、図示していないが、略方形状や側面がテーパー状に形成されたものであってもよい。
また例えば、
図3に示すように、断面視において、波形になるような凹部12cが形成されたものとしてもよい。
さらに以下の
図4〜
図6の変形例においては、凹凸面を断面視した場合の形状を示していないが、上述と同様に構成することができる。
【0017】
凹凸面の形状は、
図2、
図3に限定されるものではなく、
図4〜
図6に示すような形状としてもよい。
図4〜
図6は、第1の実施形態の変形例として、合成樹脂層12の表面に形成された凹凸面が異なる例を示している。上述の例と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する点についての説明は省略する。
図4(a)に示す例は、凹凸面が、コルク栓本体10の全周に連なって形成される略直線状の連続凹条部12dと、平坦面12bとで構成されている。連続凹条部12dは、適宜、等間隔に軸方向に複数段形成されている。
図4(b)に示す例は、コルク栓本体10の全周に連なって形成されるとともに、波状に上下にうねって形成された波型連続凹条部12d’と、平坦面12bとで構成されている。波型連続凹条部12d’は、適宜、等間隔に複数形成されている。
このようにコルク栓本体10の全周面に波型の横筋が施される粗面化処理を行うことにより、波型連続凹条部12d’が打栓時の圧縮変形にともなう歪を緩和するため、シール性及びガスバリア性を確保するための打栓時の歪に対する制御が容易なものとなる。
【0018】
図5(a)に示す例は、凹凸面が、コルク栓1Aの周方向に途切れ途切れに波型に形成された波型凹部12eと、平坦部12bとで構成されている。波型凹部12eは、それぞれが重なりあわないように周方向(横方向)に不連続に且つ等間隔に複数形成されるとともに、コルク栓1Aの軸方向(縦方向)にも等間隔に複数列形成されている。そして波型凹部12eは、軸方向に平坦部12bのみで構成された箇所が生じないように形成位置をずらして形成されている。
このように粗面化処理を行うことにより、波型凹部12eが打栓時の圧縮変形にともなう歪を緩和するため、
図4(b)の例と同様の効果を得ることができる。また
図4(b)の例よりも平坦面12bが多く確保できるので、シール性及びガスバリア性の確保がしやすいものとなる。
図5(b)に示す例は、
図5(a)の変形例といえるもので、平面視において不連続の波型凹部12e’の波状に上下にうねったうねりの数が
図5(a)より多く形成された例である。このようにうねりの数が異なっても、上述の
図5(a)と同様の効果を奏することができる。
【0019】
図6(a)に示す例は、凹凸面が、平面視して円形状に複数形成された円形凹部12fと、平坦部12bとで構成されている。軸方向の円形凹部12fの形成間隔は、特に限定されるものではないが、シール性を維持しつつより安定した開栓性を備えたものとするため、
図6(a)に示すように周方向の円形凹部12fの形成間隔よりも長く空けて、平坦部12bの形成面積を確保するようにしてもよい。
なお、円形凹部12fの径寸法や形成される数などは図例に限定されず、コルク栓本体10の形状等に合わせて
図6(b)に示すように円形凹部12f’の形成面積を減らしてもよい。
【0020】
以上の構成によれば、いずれの例もコルク栓特有のシール性を維持しながらも、合成樹脂層12の表面に粗面化処理がなされていることにより、打栓されたコルク栓本体10と容器口2aの内側面2bとの接触面積を適度に一様に減らすことができる。そのため、コルク栓1Aを引き抜いて開栓するときに生じる容器口2aの内側面2bとコルク栓本体10の周面との間の摩擦抵抗を適度に下げることができる。
よって、コルク栓特有の弾力性、圧縮性がもたらすシール性を維持しながらも、容器の保管環境、使用条件などに影響を受けることなく、従来のものよりも、より一層安定した開栓性を備えたコルク栓1Aとすることができる。
【0021】
合成樹脂層12は接着剤層(不図示)を介してコルク成型体10aの側周面全体に形成されており、合成樹脂層12は上述のようにポリエチレンテレフタレートからなるものが好適とされるが、これに限定されず、ポリエステル系樹脂製、ポリプロピレン製(例えばPP、OPP、CPP、OPPとCPPを貼り合わせたものでもよい)、ナイロン製の樹脂フィルムとすることもできる。接着剤層はウレタン系、ポリウレタン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、ポリエステル系、等の樹脂ベースとした接着フィルムなどを貼付けて形成したもの或いは接着剤を塗布して形成したものなどとしてもよい。
また合成樹脂層12を、コルク成型体10aの周面のうち、容器口2aの内側面2bと接する部分だけでなく、内容液と接するコルク成型体10aの底面側(把持部11とは反対側)にも形成すれば、コルク特有の臭いが内容液に移るのを防止することができる。
【0022】
把持部11は
図1に示すように断面T字状に形成されており、取っ手部11aとコルク成型体10aに形成された凹所10bに嵌め入れられる基部11bとを備えている。基部11bの周面に接着剤を塗布して凹所10bに嵌め入れれば、コルク成型体10aと把持部11とを強固に固着することができる。
よって、把持部11の取っ手部11aを持って、コルク栓1Aを上方向に引っ張れば、容器口2aに打栓されたコルク栓本体10をスムーズに開栓することができる。
なお、コルク成型体10aの凹所10b側に接着剤を塗布し、基部11bを嵌め入れるようにしてもよい。
【0023】
次に、第1の実施形態に係るコルク栓1Aの製造工程の一例について、コルク栓本体10を粗面化する加工装置を示した
図7、
図8及び
図9に示すフローチャートを参照しながら、説明する。
加工装置3は、基台30と凹凸転写部31とガイド付きシリンダ部32とを備えている。
テーブル型の基台30は、平面視して方形の板体4と板体4の角部を支持する4つの脚部5とを備えている。
凹凸転写部31は、転写型6dを回転可能とするためのローラ部6とローラ部6を支持する支持部7とを備えている。ローラ部6は、回り止めリング6aと、接続筒部6bと、ヒーターローラ6cと、転写型6dと、断熱板6eと、ローラ軸6fと、ベアリングホルダ6gとを備えており、ベアリングホルダ6gの更に下方側にはローラ軸6fを軸心周りに回転させるモータ(不図示)が設けられている。これらによって、転写型6dが加熱された状態で回転可能となる。転写型6dは、合成樹脂層12の表面に形成する所望の凹凸面を備えている。支持部7は、ストッパー7aと、支柱7bとを備えており、ローラ部6を支持しながら、ローラ部6の回り止め機能も備えている。
【0024】
ガイド付きシリンダ部32は、コルク栓本体10が取付けられるフリー回転自在な治具を構成するものであり、コルクガイド部8とシリンダ9とを備えている。コルクガイド部8は、コルク栓本体10が取付けられるコルクシャフト部8aと、該コルクシャフト部8aが垂直方向に設けられ、フリー回転自在になるようターンテーブルとなっているコルク台8bとを備えている。
シリンダ9は伸縮自在で空気式のシリンダロッド9aと、シリンダ本体9bとを備えている。シリンダロッド9aは、シリンダ本体9bの駆動によってコルクガイド部8をローラ部6方向とシリンダ本体9b方向に往復移動可能としている(
図7、
図8白抜矢示方向参照)。これによって、コルクシャフト部8aに取付けられたコルク栓本体10の周面を転写型6dに押し当てることができる。
コルクシャフト部8aの径は、コルク栓本体10の凹所10bの径と略同じに形成されている。シリンダ9の駆動構造は空気式など特に限定されるものではなく、ソレノイド式(電動式)であってもよく、コルク栓本体10を転写型6dに適度に押し当てることができ、押し当てるときの荷重を調整できるものであればよい。
【0025】
まずは、コルク成型体10aを形成する(
図9・S100)。コルク成型体10aは、天然コルクを円柱状に型抜きして形成することができる。またはコルク成型体10aの形成方法はこれに限定されず、例えば多数のコルク粒をバインダー樹脂とともに円柱状に圧縮成型するなどして形成してもよい。
次にコルク成型体10aの周面に、予めポリエチレン接着性フィルムを熱融着で接着しておく。一方、合成樹脂層12を形成するポリエチレンテレフタレートフィルムの内面(コルク成型体10aの周面に接着される面)には、ウレタン系接着剤によってポリエチレン層としてのポリエチレンフィルムをドライラミネート法により予め接着しておく。
そしてポリエチレンテレフタレートフィルムをコルク成型体10aの周面に被覆し、コルク成型体10aの外径よりも小さい径の加熱された金型に圧入する。
その後、これを金型から取り出すと、コルク成型体10aの復元によって、ポリエチレンテレフタレートフィルムが延伸した状態でコルク成型体10aに貼着され、合成樹脂層12を備えたコルク栓本体10を得ることができる(
図9・S101)。
このとき、コルク成型体10a側接着形成層として機能するポリエチレン接着性フィルムと、ポリエチレンテレフタレートフィルムの被膜側接着形成層として機能するポリエチレンフィルムとが熱融着され、一体化される。そのため、ポリエチレンテレフタレートフィルムがコルク成型体10aの周面の全面にわたって強固に接着される。
そして凹所10bをコルクシャフト部8aに嵌め入れて、コルク栓本体10をコルクガイド部8に取付ける(
図9・S102)。
ここでコルク栓本体10が押し当てられる前に転写型6dを加熱し回転状態としておく。
【0026】
コルクガイド部8にコルク栓本体10を取付けた後、シリンダ9を駆動させてヒートローラ6cによって加熱された転写型6dにコルク栓本体10の周面を押し当てる。加熱され回転する転写型6dをコルク栓本体10の周面に押し当てることにより、コルク栓本体10がコルクガイド部8と共にコルクシャフト部8aの軸心回りに共回りする(
図9・S103)。すると、円柱状のコルク栓本体10の周面に転写型6dの凹凸面が転写される(
図9・S104)。
図7、
図8は、シリンダ9が駆動し、コルク栓本体10の周面に転写型6dが押し当てられている状態を示しており、点線は、コルクシャフト部8aにコルク栓本体10を取付けた状態を示している。
こうして、コルク栓本体10の周面に凹凸面が転写され、粗面化処理を施した後、コルクシャフト部8aからコルク栓本体10を抜き取り、コルクガイド部8からコルク栓本体10を取外す(
図9・S105)。凹所10bに接着剤が塗布された把持部11の基部11bを嵌め入れる(
図9・S106)。そして基部11bが凹所10bに固着されることにより、コルク栓1Aを得ることができる。
【0027】
上述のコルク栓1Aの製造方法によれば、円柱状をなし粗面化処理を行う加工面が湾曲した面であっても、コルク栓本体10の周面に凹凸面の凹凸度合いを均一に且つ凹凸面をムラなく転写することができる。すなわち、コルク栓本体10の周面のうち、ある部分とある部分の表面粗さが著しく異なるといったことがない粗面化処理されたコルク栓1Aを精度良く作製することができる。また量産化も可能である。
ここで、合成樹脂層12の表面は、上述したように表面粗さRy3μm〜600μmに粗面化処理されていることが望ましい。より好ましくは、表面粗さRy3〜50μmに粗面化処理されていることが望ましい。
この構成によれば、コルク栓1Aの開栓時に容器口2aの内側面2bとコルク栓本体10の周面との間に生じる摩擦抵抗をより一層適度に下げることができ、容器2の保管環境、使用条件などに影響を受けることなく、安定して開栓しやすいコルク栓1Aとすることができる。
例えば容器2の保管環境の室温が高く、容器2内の内圧が上昇し栓飛びが生じやすい環境となっても、容器口2aの内側面2bとコルク栓本体10の周面との間に適度な摩擦抵抗が生じるので、栓飛びを抑制することができる。
すなわち、上述のようにコルク栓本体10の周面を粗面化処理すれば、開栓性のばらつきを抑制することができるので、容器の保管環境、使用条件などに係らず、安定した開栓性を備えたコルク栓1Aとすることができる。
合成樹脂層12の表面の表面粗さが、Ry3μmよりも小さい場合は、粗面化度合いが細かすぎて、打栓されたコルク栓1Aのコルク栓本体10と容器口2aの内側面2bとの接触面積を適度に減らすことにならない。そのため、摩擦抵抗が大きくなる傾向となり、開栓性の改善効果があまり得られない。また表面粗さがRy600μmよりも大きい場合は、粗面化度合いが粗くなりすぎて、打栓されたコルク栓1Aのコルク栓本体10と容器口2aの内側面2bとの接触面積が減らされすぎてしまう。そのため、摩擦抵抗が小さくなりすぎる傾向となり、栓飛びや容器2を横倒しした際には液漏れのおそれもある。
【0028】
転写型6dに形成される凹凸面の形状は、コルク栓本体10の周面の凹凸面に対応するものであり、特に限定するものではない。発明者が種々凹凸面で粗面化処理を施したコルク栓1Aを形成して、開栓を試みたところによれば、コルク栓本体10の周面を粗面化すれば上述の効果を奏することがわかった。
なお、製造方法、粗面化処理の方法、加工装置3の構成は上述の例に限定されるものではない。またここでは、コルク栓本体10の周面、すなわち容器口2aの内側面2bと接する面にのみ合成樹脂層12を形成する場合について説明したが、内容液と接するコルク栓本体10の底面側(把持部11とは反対側)にも形成する場合も同じ工程を採用することができる。
【0029】
次に第2の実施形態におけるコルク栓1Bについて
図10、
図11(a)(b)を参照しながら説明する。第1の実施形態と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する点についての説明は省略する。
コルク栓1Bは、容器口2aを閉塞したときに、容器2内部側(内容液側)に配置される合成樹脂層12の表面の一部がシリコーン系樹脂材で被覆されている点で第1の実施形態と異なるものである。
図10及び
図11(b)のZ−Z線矢視断面図に示すように、ポリエチレンテレフタレートからなる合成樹脂層12の表面にシリコーン系樹脂材からなるシリコーン層13が被覆されている。
【0030】
また第1の実施形態においても述べたように、コルク栓本体10の周面に形成される凹凸面の形状は特に限定されるものではないが、ここでは第1の実施形態で示した
図4(a)と同様に横筋状の凹凸面が形成される例を示している。
図11(a)に示す
図10のY−Y線矢視断面図のようにコルク栓本体10の周面は、周方向に連なって形成された横筋状の凹凸面が形成されている。
図11(a)において、12dはコルク栓本体10の全周に略等間隔で連なって形成される略直線状の連続凹条部、12bは連続凹条部12dの間の平坦部である。このようにコルク栓本体10の全周面に横筋(
図11(a)参照)が施される粗面化処理を行えば、
図4(a)に示す例と同様にシール性を維持しつつ、より安定した開栓性を備えたものとすることができる。
もちろん連続凹条部12dは、
図4(a)と同様に略直線状に限定されず、
図4(b)に示すように連続して上下に波打つ波型連続凹条部12d’であってもよい。また
図2(a)、(b)に示す不連続の横筋状の凹凸面の他、
図3、
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)、
図6(b)に示す凹凸面も適用可能であ
る。
【0031】
コルク栓本体10の周面は、d1範囲の最外層にポリエチレンテレフタレートからなる合成樹脂層12、d2範囲の最外層にシリコーン系樹脂材からなるシリコーン層13が被覆されている。
これによれば、合成樹脂層12によって、ガスバリア性の向上及びコルク臭特有の臭いを防いで内容液への臭い移りを防止できるとともに、シリコーン層13によって容器口2aに対する滑り性がより改善される。すなわち、合成樹脂層12とシリコーン層13のそれぞれが持つ効果が相乗する上、合成樹脂層12の表面は粗面化処理がなされているので、程よく容器口2aの内側面2bとコルク栓本体10の周面との間に生じる摩擦抵抗を下げることができる。
またコルク特有の弾力性、圧縮性がもたらすシール性を維持しながらも、容器2の保管環境、使用条件などに影響を受けることなく、安定的に開栓性に優れたものとすることができる点は第1の実施形態と同様である。
【0032】
次に、第2の実施形態に係るコルク栓1Bの製造工程の一例について、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
コルク栓1Bを粗面化する加工装置は、第1の実施形態と同じものを用いることができるが、転写型6dの凹凸面は、
図11(a)に示す横筋状の凹凸面を形成するため凹凸面を備えたものを用いる。また第1の実施形態は、コルク栓本体10のd範囲全面に粗面化処理を施したが、第2の実施形態は、コルク栓本体10のd1範囲にのみ転写型6dを押し当て、粗面化処理を施す。
【0033】
まずは、コルク栓1Bのコルク成型体10aを形成し、コルク成型体10aの周面にポリエチレンテレフタレートフィルムを被覆し合成樹脂層12を貼着一体に形成する工程は第1の実施形態の例と同様である。次にd2範囲にシリコーンエラストマーを塗布し、シリコーン層13を形成する。
合成樹脂層12及びシリコーン層13がコルク成型体10の周面に強固に接着されコルク栓本体10を得たら、凹所10bをコルクシャフト部8aに嵌め入れて、コルク栓本体10をコルクガイド部8に取付ける。
ここでコルク栓本体10が押し当てられる前に転写型6dを加熱し回転状態としておく。
【0034】
コルクガイド部8にコルク栓本体10を取付けた後、シリンダ9を駆動させてヒートローラ6cによって加熱された転写型6dにコルク栓本体10を押し当てる。加熱され回転する転写型6dをコルク栓本体10の周面に押し当てることにより、コルク栓本体10が共回りする。すると、円柱状のコルク栓本体10の周面に転写型6dの凹凸面が転写される。
こうして、合成樹脂層12の表面に凹凸面が転写され、粗面化処理を施した後、コルクシャフト部8aからコルク栓本体10を抜き取り、凹所10bに接着剤が塗布された把持部11の基部11bを嵌め入れる。そして基部11bが凹所10bに固着されることにより、コルク栓1Bを得ることができる。
【0035】
このようにシリコーン層13を形成した後に加熱された転写型6dでd1範囲を粗面化するものとすれば、加熱によってコルク栓本体10全体が膨張したり、合成樹脂層12が柔らかくなることによって凹凸転写加工の効果が減少してしまうことを防止することができる。
上述の製造方法によれば、適度な粗面化処理が施されたコルク栓1Bを精度良く作製することができ、量産化も可能であることは、第1の実施形態と同様である。またd1範囲に施す粗面化処理の粗面化度合いは、表面粗さRy3μm〜600μm、より好ましくは表面粗さRy3〜50μmの微細な粗面化処理されていることが望ましいことも、第1の実施形態の例と同様である。
【0036】
なお、コルク栓1A、1Bの形状、構成は上述の例に限定されるものではなく、角柱状であってもよいし、把持部11を備えていないコルク栓にも適用することができる。またコルク栓1A、1Bの製造方法も、上述の例に限定されるものではない。さらに容器2の形状も図例のものに限定されない。そして容器2の内容液としては、主にアルコール飲料であることを述べているが、これに限定されず、ジュース等の飲料でもよい。また飲料の他、食品や化粧品等、あらゆるものを密閉する容器の容器口を閉塞するために用いられるコルク栓にも適用できる。