【実施例】
【0021】
図面を参照しながら、実施例の給湯暖房装置10について説明する。
図1に示すように、給湯暖房装置10は、コージェネレーションシステム12(以下、コジェネシステムと略す)と、ガス燃焼ユニット20と、複数の暖房端末60、62を有している。複数の暖房端末60、62は、複数の低温暖房端末60と、複数の高温暖房端末62とを含んでいる。
【0022】
給湯暖房装置10は、コジェネシステム12とガス燃焼ユニット20を熱源として、給湯運転(湯張りを含む)、暖房運転、追い焚き運転を実施することができる。但し、以下の説明では、暖房運転に係る構成及び動作についてのみ説明し、給湯運転や追い焚き運転に係る構成及び動作については説明を省略する。
【0023】
給湯暖房装置10は、コジェネシステム12及びガス燃焼ユニット20で加熱した熱媒を、各々の暖房端末60、62へ供給することによって暖房運転を行う。
図1に示すように、給湯暖房装置10は、コジェネシステム12からガス燃焼ユニット20へ熱媒を送る第1熱媒管路54と、ガス燃焼ユニット20から各々の低温暖房端末60へ熱媒を送る低温暖房管路30と、ガス燃焼ユニット20から各々の高温暖房端末62へ熱媒を送る高温暖房管路36と、各々の暖房端末60、62からコジェネシステム12へ熱媒を送る第2熱媒管路52を備える。これらの管路は、熱媒がコジェネシステム12、ガス燃焼ユニット20及び各々の暖房端末60、62を順に循環する循環経路を構成している。
【0024】
コジェネシステム12は、電気と熱を供給する電熱併給システムであって、熱媒を加熱する第1の熱源の一例である。コジェネシステム12は、電気を発電した時に発生する熱(排熱)によって熱媒を加熱する。コジェネシステム12の具体的な構造については、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例のコジェネシステム12は、エンジン14と、エンジン14によって駆動される発電機16と、エンジン14の排熱によって熱媒を加熱する熱交換器18を備えている。エンジン14の燃料は、一例ではあるが、可燃性ガスである。本実施例におけるコジェネシステム12は、熱需要に応じて運転される。そのことから、コジェネシステム12による排熱を確実に回収するため、コジェネシステム12は熱媒の循環経路上に設けられた排熱回収ポンプを備えている(図示省略)。
【0025】
ガス燃焼ユニット20は、コジェネシステム12で加熱された熱媒を、必要に応じてさらに加熱する第2の熱源の一例である。ガス燃焼ユニット20の具体的な構造については、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例のガス燃焼ユニット20は、可燃性ガスを燃焼して熱媒を加熱するバーナ22と、熱媒を循環させるための熱媒循環ポンプ32と、熱媒を貯めるシスターン24を備える。また、ガス燃焼ユニット20は、シスターン24からバーナ22へ流れる熱媒の温度を測定する第1温度センサ28と、バーナ22による加熱後の熱媒の温度を測定する第2温度センサ34を備える。
【0026】
ガス燃焼ユニット20で必要に応じて加熱された熱媒は、低温暖房管路30又は高温暖房管路36を通って、各々の暖房端末60、62へ供給される。各々の暖房端末60、62とガス燃焼ユニット20との間には、バルブ64、66が設けられている。各々のバルブ64、66の開閉は、後述するコントローラ100(
図2参照)によって制御される。一又は複数のバルブ64、66が選択的に開放されることによって、運転中にある一又は複数の暖房端末60、62へ熱媒が選択的に供給される。
【0027】
各々の暖房端末60、62は、熱媒の熱を消費して暖房を行う。低温暖房端末60は、パネルヒータや床暖房装置などである。これらの暖房端末は、人との接触が予定された暖房端末であり、比較的に低い温度(例えば60度未満)の熱媒が供給されることを必要とする。一方、高温暖房端末62は、温水式ルームエアコン、ファンコンベクター及び浴室暖房(乾燥)装置などである。これらの暖房端末は、人との接触が予定されていない暖房端末であり、比較的に高い温度(例えば60度以上)の熱媒が供給されることが許容されている。
【0028】
各々の暖房端末60、62で熱が消費された熱媒は、第2熱媒管路52を通って、コジェネシステム12へ送られる。ここで、第2熱媒管路52にはバルブ58が設けられている。また、第2熱媒管路52の中間位置は、バルブ56を介して、第1熱媒管路54の中間位置に接続されている。このような構成により、例えばコジェネシステム12が運転を中止しているときは、バルブ56、58の開閉を切り替えることにより、コジェネシステム12をバイパスして、熱媒をガス燃焼ユニット20へ直接的に送ることができる。
【0029】
上述のように、低温暖房端末60と高温暖房端末62では、必要とする熱媒の温度(要求温度)が互いに異なる。そのことから、ガス燃焼ユニット20は、低温暖房端末60と高温暖房端末62のそれぞれに、温度の異なる熱媒を供給可能に構成されている。
【0030】
例えば、低温暖房端末60の運転時には、熱媒循環ポンプ32を運転するとともに、バルブ64を選択的に開放する。それにより、シスターン24の熱媒が、バーナ22で加熱されることなく、低温暖房管路30を通って、運転中の低温暖房端末60へ直接的に供給される。ここで、シスターン24から流出した熱媒の一部は、管路26を通ってバーナ22に送られ、暖房高温管路36から管路38へ流れ込み、シスターン24に戻る。このとき、第1温度センサ28による測定温度は、低温暖房端末60に供給される熱媒の温度を示す。第1温度センサ28による測定温度が、低温暖房端末60の要求温度よりも低いときは、バーナ22を運転(点火)して、熱媒を加熱する。熱媒に加えられる熱量は、バーナ22の出力(ガスの燃焼量)と、管路38に設けられたバルブ40の開度によって調整される。
【0031】
一方、高温暖房端末62の運転時には、熱媒循環ポンプ32を運転するとともに、バルブ66を選択的に開放する。それにより、シスターン24の熱媒は、バーナ22を通過して、運転中の高温暖房端末62へ供給される。このとき、第2温度センサ34による測定温度は、高温暖房端末62に供給される熱媒の温度を示す。そして、第2温度センサ34による測定温度が、高温暖房端末62の要求温度よりも低いときは、バーナ22を運転(点火)して、熱媒を加熱する。熱媒に加えられる熱量は、バーナ22の出力(ガスの燃焼量)によって調整される。
【0032】
上記した構成及び動作により、ガス燃焼ユニット20は、高温暖房端末62へ比較的高温の熱媒を供給し、かつ、低温暖房端末60へ比較的低温の熱媒を供給することができる。なお、低温暖房端末60と高温暖房端末62の両者が同時に運転された場合、ガス燃焼ユニット20は、上述した動作を同時に実行することで、低温暖房端末60及び高温暖房端末62へ温度の異なる熱媒を同時に供給することができる。
【0033】
図2は、給湯暖房装置10が備えるコントローラ100の構成を示す。
図2に示すように、コントローラ100は、メインコントローラ102とインターフェースユニット104とコジェネコントローラ106とを備える。メインコントローラ102は、ガス燃焼ユニット20に搭載されており、主に、ガス燃焼ユニット20の動作を制御する。コジェネコントローラ106は、コジェネシステム12に搭載されており、主に、コジェネシステム12の動作を制御する。メインコントローラ102とコジェネコントローラ106は、インターフェースユニット104を介して接続されており、互いに通信可能となっている。
【0034】
コントローラ100はさらに、複数の低温暖房端末コントローラ112と、複数の高温暖房端末コントローラ114とを備える。これらのコントローラ112、114は、メインコントローラ102に通信可能に接続されている。各々の低温暖房端末コントローラ112は、メインコントローラ102と共に、対応する一又は複数の低温暖房端末60を制御する。また、低温暖房端末コントローラ112は、ユーザのための操作パネルでもあり、対応する低温暖房端末60の運転/停止、暖房温度の設定、及びその他の機能(例えばタイマー機能)の設定のために用いられる。同様に、各々の高温暖房端末コントローラ114は、メインコントローラ102と共に、対応する一又は複数の高温暖房端末62を制御する。また、高温暖房端末コントローラ114は、ユーザのための操作パネルでもあり、高温暖房端末62の運転/停止、暖房温度の設定、及びその他の機能(例えばタイマー機能)の設定に用いられる。
【0035】
コントローラ100はさらに、浴室操作パネル108と台所操作パネル110とを備える。浴室操作パネル108と台所操作パネル110は、メインコントローラ102に接続されているとともに、インターフェースユニット104を介してコジェネコントローラ106にも接続されている。通常、浴室操作パネル108は浴室に設置され、台所操作パネル110は台所に設置される。ユーザは、浴室操作パネル108又は台所操作パネル110を操作することによって、コジェネシステム12及びガス燃焼ユニット20の主電源のオン/オフ、運転モードの選択、給湯温度の設定、浴槽への給湯(湯張り)の指示等を行うことができる。
【0036】
本実施例のコントローラ100は、ユーザの操作に応じて、「通常運転モード」と「エコ運転モード」と「強エコ運転モード」のいずれかを、選択的に実行することができる。通常運転モードは、前述したように、第1温度センサ28及び第2温度センサ34によって熱媒の温度を測定しながら、バーナ22の出力を制御する運転モードである。一方、エコ運転モードとは、一定の条件下にあるときは、熱媒の温度にかかわらず、バーナ22の運転を禁止する運転モードである。そして、強エコ運転モードとは、常にバーナ22の運転を禁止する運転モードである。以下では、本実施例の特徴的な機能であるエコ運転モードについて詳細に説明する。
【0037】
エコ運転モードでは、運転中にある一又は複数の暖房端末60、62の定格出力の総量が、コジェネシステム12の定格出力(ここでは、熱供給に係る定格出力を意味し、電力供給に係る出力を含まない)を下回るときに、熱媒の温度にかかわらず、バーナ22の運転が禁止される。このような状況下では、暖房端末60、62の熱需要に対して、コジェネシステム12からの供給熱量が足りているので、熱媒の温度が一時的に要求温度を下回ったとしても、バーナ22を直ちに運転させる必要は必ずしもない。
【0038】
さらに、エコ運転モードでは、運転中にある一又は複数の暖房端末60、62の定格出力の総量が、コジェネシステム12の定格出力を上回るときでも、その差が所定値未満であれば、バーナ22の運転が禁止される。このような状況下でも、暖房端末60、62が定格出力(最大出力)で運転される期間は比較的に短いので、当該所定値を実験等によって適切に選定しておくことによって、暖房端末60、62への供給熱量が長時間に亘って不足する事態は避けられる。
【0039】
図3は、一例として、コジェネシステム12の定格出力WCと、各々の低温暖房端末60の定格出力WL1、WL2、WL3と、各々の高温暖房端末62の定格出力WH1、WH2、WH3とを、比較して示すグラフである。
図3に示す例では、各々の低温暖房端末60の定格出力WL1、WL2、WL3が、いずれもコジェネシステム12の定格出力WCよりも所定幅αだけ大きい閾値WC+αより小さいとする。但し、二以上の低温暖房端末60の定格出力の総量は、いかなる組み合わせであっても、当該閾値WC+αよりも大きいとする。即ち、WL1>WL2>WL3のときに、WL2+WL3>WC+αの関係があるとする。一方、各々の高温暖房端末62の定格出力WH1、WH2、WH3については、当該閾値WC+αよりも大きいとする。
【0040】
上記した定格出力の関係下では、単一の低温暖房端末60が運転中にあるときは、当該低温暖房端末60の定格出力WL1〜WL3は、コジェネシステム12の定格出力WCよりも所定幅αだけ大きい閾値WC+αを下回る。従って、バーナ22の運転は禁止される。一方、複数の低温暖房端末60が運転中にあるとき、又は、
一又は複数の高温暖房端末62が運転中にあるときは、運転中にある一又は複数の暖房端末60、62の定格出力の総量が、前記閾値WC+αを上回る。この場合、バーナ22の運転は禁止されない。即ち、熱媒の温度に応じてバーナ22が制御され、熱媒の温度が所定のレベルまで低下すれば、バーナ22が運転される。このように、エコ運転モードでは、各々の暖房端末60、62の定格出力に基づき、運転中にある一又は複数の暖房端末60、62の組み合わせに応じて、バーナ22の運転が禁止又は許可される。
【0041】
図4は、上記した定格出力の関係下において、コントローラ100がエコ運転モード中に実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示す処理は、暖房運転中にエコ運転モードが選択されると実行される。先ず、コントローラ100は、高温暖房端末62が運転中であるのか否かを判定する(S10)。の高温暖房端末62が運転中であれば(YES)、バーナ22の運転を禁止せず、熱媒の温度に応じたバーナ22の運転を許可する(S16)。一方、高温暖房端末62が停止中であれば、次いで、複数の低温暖房端末60が運転中であるのか否かを判定する(S12)。複数の低温暖房端末60が運転中であれば(YES)、バーナ22の運転を禁止せず、熱媒の温度に応じたバーナ22の運転を許可する(S16)。一方、単一の低温暖房端末60が運転中であれば、バーナ22の運転を禁止する(S14)。その後は、エコ運転モードが解除されるまで(S18でYES)、上記した処理が繰り返し実行される。
【0042】
なお、
図3、
図4は一例を示すものであって、本実施例の構成を限定するものではない。即ち、暖房端末60、62の定格出力によっては、複数の低温暖房端末60が運転中であっても、バーナ22の運転が禁止されることもある。また、一又は複数の高温暖房端末62が運転中であっても、バーナ22の運転が禁止されることもある。ここで、低温暖房端末60の定格出力は、必ずしも高温暖房端末62の定格出力より小さいとは限らない。そのことから、単一の低温暖房端末60が運転中であってもバーナ22の運転が許可される一方で、一又は複数の高温暖房端末62が運転中のときにバーナ22の運転が禁止されることもある。また、コジェネシステム12の定格出力WCに加算する所定幅αは、ゼロであってもよい。あるいは、運転状況、季節、外気温、運転時刻に応じて、所定幅αを変更してもよい。
【0043】
本実施例の構成によると、エコ運転モードが選択された場合は、熱媒の一時的な変動に影響を受けることなく、予定される暖房端末60、62の熱需要量に応じて、バーナ22の運転を適切に禁止することができる。それにより、熱媒の温度が暖房端末60、62の要求温度の付近で変動したとしても、第2熱源の運転/停止が頻繁に切り替えられることが防止される。それにより、暖房端末60、62の出力が安定しない、エネルギー効率が低下する、バーナ22の劣化を早める、といった問題を避けることができる。加えて、バーナ22の運転を禁止し、コジェネシステム12を優先的に使用することで、エネルギー効率を顕著に高めることができる。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0045】
例えば、給湯暖房装置10は、コジェネシステム12に代えて、ヒートポンプ又はその他の種類の熱源を採用することもできる。この場合、エネルギー効率に優れた熱源や、再生可能エネルギーを使用する熱源を採用することが有効である。
【0046】
例えば、給湯暖房装置10のコントローラ100は、各々の暖房端末60、62の定格出力を記述するデータベースを記憶可能であってもよい。この場合、コントローラ100は、当該データベースを用いて、運転中にある一又は複数の暖房端末60、62の定格出力の総量が、コジェネシステム12(第1熱源)の定格出力を下回るのか否かを判断可能であることが好ましい。このような構成によると、暖房端末60、62の更新や追加が生じた場合には、当該データベースを更新することによって、エコ運転モードを正しく実行させることができる。
【0047】
あるいは、各々の暖房端末60、62が、例えば暖房端末コントローラ112、114に、自己の定格出力を記憶しているのも好ましい。この場合、メインコントコントローラ102は、暖房端末コントローラ112、114から当該定格出力を取得し、運転中にある一又は複数の暖房端末60、62の定格出力の総量を特定することができる。
【0048】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。