(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の破砕部のそれぞれは、軸を中心に回転可能に設けられた破砕具を有し、前記複数の検体容器のそれぞれに収容された組織に接触した状態で前記破砕具を回転させることにより前記組織を破砕するように構成されており、
前記制御部は、前記複数の破砕部のそれぞれを、前記保冷庫に保持された前記複数の検体容器のそれぞれの内部に進入させ、組織を破砕するために前記破砕具を回転させた後、前記複数の破砕部のそれぞれを前記複数の検体容器のそれぞれの開口に近接する方向へ移動させ、前記破砕具に付着した組織を除去するために前記破砕具を再び回転させる、
請求項5乃至7の何れか一項に記載の破砕処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
組織の熱変性を抑えて正確な検査を行うためには、室温による温度上昇を避けるため、破砕処理を行っている間だけでなく、組織が採取されてから破砕処理が行われるまでの間においても組織を冷却しておく必要がある。
そのためには、上述した特許文献1に開示されている破砕装置にあっては、破砕処理中に組織を収容した容器を冷却するための冷媒とは別に、破砕処理前に容器を冷却しておくための氷及びボウル等を準備しなければならない。また、冷却しておいた容器を破砕装置にセットするときには、ユーザが、ボウルから装置へ検体を移し替える必要がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、
複数の組織の破砕処理を行う場合であっても、検体を収容する容器の破砕処理前における冷却と、破砕処理中の冷却を、簡便な取り扱いで実施することができる破砕処理装置及び保冷庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の破砕処理装置は、生体から採取された組織を破砕するための破砕処理装置であって、装置本体と、前記装置本体に着脱可能に取り付けられる保冷庫と、を備え、前記保冷庫は、組織を収容した
複数の検体容器
のそれぞれを保持する
複数の容器保持部を有し、
前記複数の容器保持部のそれぞれに保持された検体容器内の組織を冷却するように構成されており、前記
複数の容器保持部
のそれぞれに検体容器を保持した状態で前記装置本体に着脱可能であり、前記装置本体は、前記
複数の容器保持部に対応して設けられた複数の破砕部を有し、前記複数の容器保持部のそれぞれに保持された検体容器内
に前記複数の破砕部のそれぞれを挿入して組織
を破砕する
ように構成され、
前記装置本体は、前記保冷庫を位置決めするための位置決め部を備え、前記位置決め部によって前記保冷庫が位置決めされることにより、前記複数の容器保持部のそれぞれに保持された検体容器内に破砕部を挿入させるための破砕位置に、前記複数の容器保持部のそれぞれが位置づけられる。
【0009】
このような構成とすることにより、前処理を実施する前に装置本体から保冷庫を取り出しておき、この保冷庫で組織を収容した検体容器を冷却することができる。また、前処理を実施するときには、事前に冷却しておいた検体容器を保持した保冷庫をそのまま装置本体に装着することができる。このため、前処理を実施する前に検体容器を冷却するための容器と、ホモジナイズ実行中に検体容器を保冷するための保冷部とを、保冷庫で兼用することができる。
【0010】
上記態様において、前記装置本体は、ユーザによってセットされる前記保冷庫を受け入れるセット部と、前記セット部を、前記
位置決め部によって位置決めされる位置と、ユーザが前記保冷庫をセットするためのセット位置との間
で移動させる移動部と、を備えていてもよい。これにより、セット位置において保冷庫をセット部にセットし、セット部をセット位置から位置決めされる位置へ移動させることで、装置本体に保冷庫を装着することができる。また、装置本体に保冷庫が装着された状態で、セット部を位置決めされる位置からセット位置へ移動させ、セット部から保冷庫を取り出すことで、装置本体から保冷庫を取り外すことができる。
【0011】
上記態様において、前記
複数の検体容器
のそれぞれは開口を有し、前記
複数の破砕部のそれぞれは、前記セット部にセットされた前記保冷庫に保持された
前記複数の検体容器の
それぞれの内部に開口から進入し
て組織を破砕するように構成されており、前記移動部は、前記
複数の破砕部のそれぞれが前記
複数の検体容器
のそれぞれへ進入する方向に対して交差する方向に、前記セット部
を移動させるように構成されていてもよい。これにより、
複数の破砕部のそれぞれが検体容器に進入する経路から外れた
位置から、
位置決めされる位置
へ保冷庫を
移動することができる。このため、保冷庫を
位置決めされる位置に
位置決めするときに、作業者は
破砕部が検体容器に進入する経路上に手を入れる必要がない。
上記態様において、前記装置本体及び前記保冷庫は、それぞれ磁石を有しており、前記保冷庫が前記
位置決めされる位置にあるとき、前記装置本体の磁石と、前記保冷庫の磁石とが互いに引き合うように構成されていてもよい。
【0012】
上記態様において、前記装置本体は、
前記位置決めされる位置に位置する前記保冷庫を検知するための検知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検知部により前記保冷庫が検知された場合に、前記
複数の破砕部
のそれぞれに前記
複数の検体容器
のそれぞれに収容された組織を破砕する破砕動作を実行させ、前記検知部により前記保冷庫が検知されなかった場合に、前記
複数の破砕部
のそれぞれに破砕動作を実行させないように構成されていてもよい。これにより、
位置決めされる位置に保冷庫が
位置していない場合には、破砕動作が実行されず、破砕する対象の組織が存在しない状態で破砕動作を行うことによる予期せぬ装置の故障等を防止することができる。また、
位置決めされる位置に保冷庫が
位置している場合には、破砕動作を実行可能であり、破砕する対象の組織が存在する状態であれば当該組織の破砕を行うことができる。
【0013】
上記態様において、前記装置本体は、前記破砕処理装置の前面に設けられた開閉可能なカバー部と、前記カバー部が閉じた状態であることを検知するカバー検知部と、をさらに備え、前記制御部は、前記検知部により前記保冷庫が検知され、且つ、前記カバー検知部により前記カバー部が閉じた状態であることが検知された場合に、前記
複数の破砕部
のそれぞれに破砕動作を実行させ、前記検知部により前記保冷庫が検知されないか、又は前記カバー検知部により前記カバー部が閉じた状態であることが検知されない場合に、前記
複数の破砕部
のそれぞれに破砕動作を実行させないように構成されていてもよい。これにより、
位置決めされる位置に保冷庫が
位置しており、且つ、カバー部が閉じられている場合には、破砕動作が実行可能であり、破砕動作中にはカバー部によって装置の内側と外側とが遮断され、作業者が装置の内部に触れたり、破砕処理により装置の外部に組織又は試薬等が飛散したりすることが防止される。また、作業者が装置の内部に触れる可能性のあるカバー部が開いた状態の場合には、破砕動作が実行されることがない。
【0014】
上記態様において、前記装置本体は、前記
複数の破砕部
のそれぞれによる破砕動作の開始を指示するための指示部と、前記カバー部をロックするロック機構と、をさらに備え、前記制御部は、前記検知部により前記保冷庫が検知され、前記カバー検知部により前記カバー部が閉じた状態であることが検知され、且つ、前記指示部により破砕動作の開始が指示された場合に、前記ロック機構に前記カバー部をロックさせ、前記
複数の破砕部
のそれぞれに破砕動作を実行させ、破砕動作が終了した後に、前記ロック機構に前記カバー部のロックを解除させるように構成されていてもよい。これにより、破砕動作を実行している間はカバー部がロックされるため、カバー部が開くことを防止することができる。
【0015】
上記態様において、前記
複数の破砕部のそれぞれは、軸を中心に回転可能に設けられた
破砕具を有し、前記
複数の検体容器
のそれぞれに収容された組織に接触した状態で前記
破砕具を回転させることにより前記組織を破砕するように構成されており、前記制御部は、前記
複数の破砕部のそれぞれを、前記保冷庫に保持された
前記複数の検体容器の
それぞれの内部に進入させ
、組織を破砕するために前記
破砕具を回転させた後、前記
複数の破砕部のそれぞれを前記
複数の検体容器
のそれぞれの開口に近接する方向へ移動させ、前記
破砕具に付着した組織を除去するために前記
破砕具を再び回転させるように構成されていてもよい。これにより、破砕動作により
各破砕部に付着した組織を除去することができ、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0017】
上記態様において、前記
複数の破砕部のそれぞれは、前記装置本体に垂下するように設けられており、前記保冷庫は、前記
複数の破砕部のそれぞれの下方を前後方向にスライドすることで、前記装置本体に取り付けることが可能であり、前記
装置本体は、
当該装置本体の前面に設けられ、上下にスライドすることで開閉するように構成され
たカバー部を備えていてもよい。
【0018】
上記態様において、前記
複数の破砕部のそれぞれは、前記
複数の検体容器
のそれぞれに収容された組織に接触した状態で回転することにより前記組織を破砕
するための破砕具を備え、前記
複数の破砕具のそれぞれは、前記
複数の破砕部
のそれぞれに対して、着脱可能に取り付けられる構成としてもよい。これにより、使い捨ての
破砕部を使用したり、使用済みの
破砕部を取り外して洗浄したりすることができ、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0019】
上記態様において、前記保冷庫は、内部に冷媒を収容可能な箱を含んでいてもよい。これにより、保冷庫の箱の内部に検体容器の一部又は全部を収容し、冷媒によって当該検体容器を冷却することができ、また、保持した検体容器内の組織を破砕するときには、
複数の破砕部のそれぞれが保冷庫の箱の内部まで進入して
複数の検体容器
のそれぞれに収容された複数の組織を破砕することができる。
上記態様において、前記保冷庫
には、前記
複数の破砕具のそれぞれが前記箱の内部に収容された
前記複数の検体容器
のそれぞれに近接することを許容する
複数の開口が設けられていてもよい。
【0020】
上記態様において、前記保冷庫は、前記
複数の開口の
それぞれの周囲に突設された
複数の筒状部を具備
し、
前記複数の検体容器のそれぞれは上端に開口を有し、前記複数の破砕部のそれぞれは、前記複数の筒状部のそれぞれの内径よりも小さく、且つ、前記複数の検体容器のそれぞれの開口の内径よりも大きい径のフランジを備えていてもよい。これにより、破砕動作において試薬、組織片又は試薬と組織との混合物が開口を通じて外部に飛散することが抑制され、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0021】
上記態様において、前記保冷庫は、内部に収容された冷媒を覆う着脱可能な内蓋と、前記保冷庫の上面を構成する開閉可能な外蓋とを具備し、前記
複数の開口は前記外蓋に設けられていてもよい。
【0025】
上記態様において、前記保冷庫は、凸状又は凹状の第1部材を具備し、前記装置本体は、
前記位置決め部として、凹状又は凸状の第2部材を具備し、前記第1部材及び前記第2部材の一方は、先端に向かうにしたがって細くなるように傾斜した凸状をなしており、前記第1部材及び前記第2部材の他方は、前記凸状の傾斜と適合する角度で奥に向かうにしたがって細くなるように傾斜した凹状をなしており、前記保冷庫が
前記位置決めされる位置に位置づけられたときに、前記第1部材及び前記第2部材の一方が、前記第1部材及び前記第2部材の他方に挿入されるように構成されていてもよい。
【0031】
また、本発明の一の態様の保冷庫は、上記態様の破砕処理装置に着脱可能に取り付けられる保冷庫であって、組織を収容した
複数の検体容器
のそれぞれを保持するための
複数の保持部と、前記
複数の保持部
のそれぞれに保持された
前記複数の検体容器
のそれぞれを冷却する冷却部と、を備える。
【0032】
上記態様において、前記保冷庫は、前記冷却部及び
前記複数の保持部を覆う箱体を具備し、前記箱体には、前記
複数の保持部
のそれぞれによって保持される検体容器の内部に破砕処理装置が備える破砕部が進入するための
複数の開口が設けられていてもよい。これにより、保冷庫の内部に
複数の検体容器の
それぞれの一部又は全部を収容し、冷却部によって
各検体容器を冷却することができ、また、保持部によって保持した
各検体容器
に収容された組織を破砕するときには、
各破砕部が保冷庫の内部まで進入して
各検体容器
に収容された各組織を破砕することができる。
【0033】
上記態様において、前記箱体は、前記
複数の開口の
それぞれの周囲に突設された
複数の筒状部を具備していてもよい。これにより、破砕動作において試薬、組織片又は試薬と組織との混合物が開口を通じて外部に飛散することが抑制され、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0034】
上記態様において、前記冷却部は、冷媒を収容可能に構成されており、前記
複数の保持部
のそれぞれは、前記冷却部の上方に配置され
た内蓋
に設けられた保持孔
であってもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、
複数の組織の破砕処理を行う場合であっても、検体を収容する容器の破砕処理前における冷却と、破砕処理中の冷却を、簡便な取り扱いで実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0038】
(実施の形態1)
<破砕処理装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る破砕処理装置の外観を示す斜視図である。本実施形態における破砕処理装置1は、主に、病院の病理検査室に設置され、手術室において患者から採取された組織を試薬液中で破砕するための装置である。破砕処理装置1は、実質的に直方体形状の装置本体10と、この装置本体10に着脱可能な保冷庫4(
図2参照)とを備えている。装置本体10には、前面の一部を覆うカバー2が設けられている。当該カバー2は、上下にスライド可能であり、これによって開閉可能に構成されている。
図1には、カバー2が閉じた状態が示されている。
【0039】
閉じられた状態のカバー2が上方にスライドされると、カバー2が開いた状態となる。
図2は、カバー2が開いた状態の装置本体10の外観を示す斜視図である。カバー2が開放状態となると、装置本体10の上下方向中央部分が露出される。この中央部分は、前側が窪んだ形状となっており、この窪んだ部分に4つの破砕部3,3,3,3が設けられている。破砕部3は、窪みの天井部分に設けられた回転機構部と、組織を破砕するための破砕具であるブレンダ31とを具備する。ブレンダ31は、コンタミネーションを防止するために使い捨てとされ、回転機構部に着脱可能である。
【0040】
ブレンダ31は、概ね円筒形状のプラスチック製の部材であり、その上端部において回転機構部に取り付け可能な構造となっている。これにより、ブレンダ31は前記窪みの天井部分から垂下するように回転機構部に取り付けられる。また、ブレンダ31は二重構造となっており、それぞれ円筒形の内側部と外側部とを有している。内側部及び外側部のそれぞれの下端には刃が組織を破砕するための刃が設けられている。回転機構部にはブラシレスDCモータであるブレード回転用モータ32(
図7参照)が内蔵されており、回転機構部に取り付けられたブレンダ31は、ブレード回転用モータ32によって内側部分だけが回転する。これにより、内側部分の刃(以下、「内刃」という。)と、外側部分の刃(以下、「外刃」という。)とが相対的に同軸回転し、内刃及び外刃に接触した組織が切断されることとなる。
【0041】
かかる破砕部3,3,3,3の下方には、保冷庫4が配置されている。保冷庫4は、4つの検体容器5,5,5,5を保持可能であり、保持している4つの検体容器5,5,5,5を保冷可能である。検体容器5には試薬である可溶化液と被験者から採取された組織とが収容される。保冷庫4の上面の破砕部3,3,3,3のそれぞれ直下の位置には、4つの開口41,41,41,41が設けられている。装置本体10は、ブラシレスDCモータであるブレード昇降用モータ33を備えており(
図7参照)、ブレード昇降用モータ33が駆動することで破砕部3,3,3,3が昇降するようになっている。ブレード昇降用モータ33によって破砕部3,3,3,3が下降したときには、ブレンダ31,31,31,31のそれぞれが開口41,41,41,41のそれぞれに挿入される。
【0042】
開口41,41,41,41の下方には検体容器5,5,5,5が配置されており、ブレンダ31,31,31,31が下降することで、開口41,41,41,41を通じて検体容器5,5,5,5の内部に進入することが可能である。このようにしてブレンダ31の先端が検体容器5の底部近くまで下降し、内刃と外刃とが相対回転することで検体容器5内の組織が破砕される。
【0043】
装置本体10の下部は、引き出し状となっており、前方に引き出すことが可能である。
図3は、装置本体10の下部を引き出した状態を示す斜視図である。装置本体10の下部は、ユーザが保冷庫4をセットするセット部6となっている。このセット部6は、レールによって前後方向にスライド可能である。即ち、セット部6は、保冷庫4が破砕部3,3,3,3の直下に位置する破砕位置X(
図2に示す位置)と、保冷庫4の取り付け、取外しを行うための取付位置Y(
図3に示す位置)との間で水平方向に移動可能である。
【0044】
セット部6が取付位置Yにあるとき、ユーザは、セット部6に対する保冷庫4の取り付け、又は取り外しが可能である。保冷庫4は、実質的に左右に長い直方体形状をなしており、その両側に取手42,42が設けられている。
図4は、保冷庫4を取り外したときの破砕処理装置1を示す斜視図である。
図4に示すように、セット部6には、保冷庫4を載置するための載置部61が設けられている。載置部61は、保冷庫4の底部よりも若干大きい四角皿状をなしており、この載置部61の上に保冷庫4を載置することが可能である。
【0045】
図5は、保冷庫4の外観を示す斜視図である。保冷庫4は、直方体形状の箱状をなしている。保冷庫4の上面には、4つの開口41,41,41,41が設けられており、それぞれの開口41,41,41,41の周囲からは円筒形の筒状部43,43,43,43が突設されている。これらの筒状部43,43,43,43により、破砕処理において組織及び可溶化液が飛散することが防止され、コンタミネーションが防止される。
【0046】
両外側の2つの開口41,41は、内側の2つの開口41,41に対して前方に配置されている。即ち、内側の2つの開口41,41は左右に並べて配置されており、最も右側の開口41及び最も左側の開口41は、内側の2つの開口41,41よりも前方の位置に配置されている。このようにして、両外側の2つの開口41,41と、内側の2つの開口41,41との位置が前後にずれているので、最も右側の開口41とその隣の開口41との間の距離、及び最も左側の開口41とその隣の開口41との間の距離を長くすることができ、コンタミネーションの発生をさらに抑制することができる。
【0047】
保冷庫4の上部は蓋44aとされており、ヒンジによって開閉可能とされている。蓋44aの前端中央部にはロック部44bが設けられており、蓋44aを閉じた状態でロックすることが可能である。
【0048】
図6は、保冷庫4の内部構成を示す分解斜視図である。
図6に示すように、保冷庫4は、直方体の箱体44と、冷媒を収容するための冷媒容器45と、検体容器5,5,5,5を保持するための内蓋46とを具備している。箱体44は、上板が外蓋44aであり、上述したように開閉可能である。箱体44の内部には、冷媒容器45及び内蓋46が収容される。冷媒容器45は、上部が開口した容器であり、内部に冷媒を収容することができる。冷媒としては、氷が好適に用いられ、特に好ましくはクラッシュアイス(直径1mm〜1cm程度の粒状に砕かれた氷)が用いられる。クラッシュアイスを用いることにより、冷媒と容器側面とが接触する面積を大きくすることができ、高い冷却効果が得られる。冷媒容器45の上方には、冷媒容器45の開口を塞ぐように内蓋46が配置される。この内蓋46には、それぞれ検体容器5を保持するための4つの保持孔46a,46a,46a,46aが設けられている。保持孔46aは、円筒状の検体容器5の直径よりも若干大きく、内蓋46は検体容器5を保持孔46aに挿入した状態で保持する。
【0049】
図7は、使用状態の保冷庫4の断面図である。検体容器5は、プラスチック製の円筒状の容器である。検体容器5の上端は開口しており、内部に可溶化液81及び組織82を収容することができる。また、検体容器5の上端より若干下方の位置には、円環状に外方に突出したフランジ51が設けられており、このフランジ51の外径は内蓋46の保持孔46aの直径よりも大きくされている。このため、検体容器5を保持孔46aに挿入したときに、フランジ51が当接する位置で検体容器5が保持孔46aに保持される。
【0050】
保冷庫4は、クラッシュアイスCMを収容した冷媒容器45及び検体容器5,5,5,5を保持した内蓋46を箱体44に収容した状態で、蓋44aを閉じて使用される。蓋44aを閉じた状態のときに、開口41と保持孔46aとが同軸上に配置されるようになっている。このため、蓋44aを閉じると、検体容器5の上端が開口41の内部に挿入される。つまり、検体容器5の上端の開口は、保冷庫4の蓋44aに設けられた開口41を介して外部に連通しており、このため、上述したようにブレンダ31が保冷庫4に保持されている検体容器5の内部に進入可能である。
【0051】
検体容器5のフランジ51の外径は蓋44aの開口41の直径よりも大きくされている。このため、内蓋46に検体容器5を保持させた状態で蓋44aを閉じると、開口41の周囲の部分によりフランジ51が押さえられ、保冷庫4における検体容器5の浮き上がりが防止される。
【0052】
保冷庫4に保持された検体容器5の内蓋46よりも下方の部分は、冷媒容器45に収容されたクラッシュアイスCMの中に浸される。これにより、検体容器5内の可溶化液及び組織が冷却される。なお、冷媒はクラッシュアイスに限られず、使用する試薬の保管温度(本実施の形態においては2〜8℃に適した冷媒(ドライアイス、水、ゲル、他の冷却材等)を使用することができる。温度は、可溶化液が変性しないようになるべく低く、しかも可溶化液が凍結しないような温度が好ましい。
【0053】
かかる保冷庫4は、装置本体10から取り外され、外部の保冷庫として使用される。例えば、癌のリンパ節転移の術中迅速診断においては、手術中の被験者から採取された組織(リンパ節)が可溶化液と共に検体容器5に収容される。この検体容器5が保冷庫4に保持され、破砕処理の前に、検体容器5に収容された可溶化液及び組織が冷却される。
【0054】
破砕処理を行う場合には、保冷庫4が検体容器5を保持したままの状態で、取付位置Yにあるセット部6の載置部61に取り付けられる。その後、セット部6が後方にスライドされ、破砕位置Xに位置付けられる。
図8は、セット部6の移動を模式的に説明するための側面図である。
図8に示すように、保冷庫4の背面には円環状の突設部47と、磁性体板48とが設けられている。また、
図3、
図4及び
図8に示すように、装置本体10の保冷庫4に対向する面には、位置決め部11と、磁石12とが設けられている。位置決め部11は、保冷庫4に対向する面において保冷庫4の突設部47に対応する位置に設けられた突起である。また、磁石12は、保冷庫4に対向する面において保冷庫4の磁性体板48に対応する位置に設けられている。
図8に示すように、保冷庫4が取り付けられたセット部6が取付位置Yから後方へ移動されると、破砕位置Xにおいて保冷庫4の突設部47の穴に位置決め部11が挿入され、また、磁性体板48が磁石12に吸着される。このように、保冷庫4の突設部47の穴に位置決め部11が挿入されることにより、保冷庫4が正しい位置(破砕部3を検体容器5に挿入可能な位置)に位置決めされる。また、磁石12と保冷庫4の磁性体板48とが吸着することで、保冷庫4が前記正しい位置で固定される。この状態で、保冷庫4に保持されている検体容器の内部に破砕部3が進入し、組織を破砕する破砕処理が行われる。
【0055】
図9は、本実施の形態に係る破砕処理装置1の電気回路の構成を示すブロック図である。破砕処理装置1の装置本体10は、FPGAにより構成された制御部7を備えている。制御部7には、ブレード回転用モータ32,32,32,32、及びブレード昇降用モータ33が接続されており、ブレード回転用モータ32,32,32,32、及びブレード昇降用モータ33を制御可能である。装置本体10の筐体には、カバー2が閉じていることを検知するためのフォトインタラプタ21が設けられている。かかるフォトインタラプタ21は、制御部7に接続されており、制御部7に検知信号を出力可能となっている。
【0056】
また、装置本体10には、セット部6に保冷庫4が取り付けられていることを検知するためのフォトインタラプタ62が設けられている。更に詳細には、フォトインタラプタ62は破砕位置Xの近傍に設けられており、破砕位置Xにあるセット部6に保冷庫4が装着されている場合には、これを検知するようになっている。他方、セット部6が破砕位置Xにない場合、及び破砕位置Xにあるセット部6に保冷庫4が装着されていない場合には、フォトインタラプタ62によって保冷庫4が検知されない。このフォトインタラプタ62は、制御部7に接続されており、制御部7に検知信号を出力可能となっている。
【0057】
装置本体10の筐体には、カバー2を閉じた状態でロックするためのロック機構22が設けられている。かかるロック機構22は、制御部7に接続されており、制御部7により制御可能となっている。
【0058】
装置本体10の筐体には、ブザー71、スタートスイッチ72、状態表示ランプ73、緊急停止ボタン74が設けられている。
図1に示すように、スタートスイッチ72は、装置本体10の前面に設けられたボタンスイッチであり、作業者が操作可能である。また、ブザー71及びスタートスイッチ72のそれぞれは制御部7に接続されており、制御部7がブザー71、状態表示ランプ73を制御可能であり、また制御部7にスタートスイッチ72、緊急停止ボタン74の出力信号が与えられるようになっている。
【0059】
<破砕処理装置の動作>
次に、本実施の形態に係る保冷庫4の使用方法及び破砕処理装置1の動作について説明する。
【0060】
まず、カバー2が作業者によって開かれる。カバー2が開かれた状態で、保冷庫4が装置本体10から取り外される。作業者は、カバー2が開いた状態で、破砕位置Xにあるセット部6を前方に引き出し、取付位置Yに位置させる。さらに作業者は、取付位置Yにあるセット部6から、保冷庫4を取り外す。
【0061】
次に作業者は保冷庫4の蓋44a及び内蓋46を開け、冷媒容器45にクラッシュアイスを入れ、内蓋46を冷媒容器45上に被せる。更に、検体容器5に可溶化液を4mL分注し、内蓋46の保持孔46aに挿入し、可溶化液を冷却しておく。このような検体容器5は最大で4つ準備される。この状態で、手術室から組織が到着するのを待機する。
【0062】
組織が到着すると、作業者が可溶化液を予め冷却しておいた検体容器5に当該組織を投入する。組織及び可溶化液が収容された検体容器5が内蓋46に保持されている状態で、作業者が蓋44aを閉め、ロック部44bをロック状態にする。
【0063】
作業者は、装置本体10のカバー2が開いた状態で、破砕部3の回転機構部にブレンダ31を取り付ける。この作業についても、最大で4つのブレンダ31が破砕部3に取り付けられる。
【0064】
装置本体10の外部において保冷庫4で組織が十分に冷却された後、作業者は、取付位置Yにあるセット部6の載置部61に保冷庫4を取り付ける。このとき、保冷庫4の突設部47が後方を向くようにする。作業者は保冷庫4が取り付けられたセット部6を、取付位置Yから破砕位置Xまで後方へスライドさせる。これにより、保冷庫4の突設部47の穴に位置決め部11が挿入され、また、磁性体板48が磁石12に吸着される。このようにして、装置本体10への保冷庫4の装着が完了する。
【0065】
破砕処理装置1の動作について説明する。作業者4は、カバー2を閉じ、スタートスイッチ72を押下して、破砕処理装置1に組織の破砕処理の実行を指示する。制御部7は、スタートスイッチ72が押下された否かを監視している。制御部7が、スタートスイッチ72が押下されたと判断すると(ステップS1においてYES)、ステップS2に処理を進める。スタートスイッチ72が押下されていなければ(ステップS1においてNO)、制御部7はステップS1の判断を繰り返す。
【0066】
スタートスイッチが押下された場合、制御部7は、カバー2が閉じられているか否かを検出する(ステップS2)。カバー2が閉じられているか否かは、フォトインタラプタ21から出力される検知信号によって判断される。ステップS2において、カバー2が閉じられていることが検出されない場合には(ステップS2においてNO)、制御部7は、カバーが閉じられていないことを作業者に知らせるために、ステップS10のエラー処理を実行する。エラー処理では、ブザー71が鳴動するとともに、状態表示ランプ73が、エラーが発生したことを示す赤色で点滅する。エラー処理は、一定時間経過後に終了し、処理がステップS1に戻る。
【0067】
ステップS2においてカバー2が閉じられていることが検出された場合には(ステップS2においてYES)、制御部7は、保冷庫4が設置されているか否かを判別する(ステップS3)。上述したように、保冷庫4がセット部6に取り付けられた状態で、セット部6が破砕位置Xに移動されると、フォトインタラプタ62が保冷庫4を検知し、これに応じた検知信号を出力する。制御部7は、この検知信号を受信することで、装置本体10に保冷庫4が設置されたことを検出する。ステップS3において、保冷庫4が設置されたことが検出されない場合には(ステップS3においてNO)、制御部7は、保冷庫が設置されていないことを作業者に知らせるために、ステップS10のエラー処理を実行する。
【0068】
ステップS3において、保冷庫4が装置本体10に設置されていることが検出された場合には(ステップS3においてYES)、制御部7は、ロック機構22を制御して、カバー2をロックする(ステップS4)。これにより、作業者等が破砕部3に誤って触れることが防止される。
【0069】
次に制御部7は、ブレード回転用モータ32,32,32,32及びブレード昇降用モータ33を制御して、回転安定動作を実行させる(ステップS5)。
図11は、破砕部3の動作を説明するための模式図である。ブレンダ31には、外方に突出するように円環状のフランジ31aが設けられている。このフランジ31aの外径は、検体容器5の開口部の外径よりも大きくされている。回転安定動作では、破砕部3が降下され、ブレンダ31に設けられたフランジ31aが、検体容器5の上端より距離Aだけ上方にある位置に位置決めされた状態で、ブレンダ31の内刃が回転される。このとき、ブレンダ31の先端部は、検体容器5の長手方向中央部付近に位置し、可溶化液81の液面よりも上方にある。このような回転安定動作は、2秒間実行される。これにより、破砕部3の回転が安定して行われるようになる。
【0070】
次に制御部7は、ブレード回転用モータ32,32,32,32及びブレード昇降用モータ33を制御して、破砕動作を実行させる(ステップS6)。
図11に示すように、破砕動作は、ブレンダ31の内刃及び外刃が検体容器5の内部を昇降しながら相対回転を行う動作である。破砕動作においては、ブレンダ31の先端が検体容器5の底部近傍に位置する第1位置と、第1位置よりも所定距離Bだけ上方の第2位置との間をブレンダ31が往復する。
【0071】
第1位置では、ブレンダ31の先端が検体容器5の底部付近に位置するため、ブレンダ31の内刃及び外刃が組織と接触し、内刃及び外刃が相対回転することで、組織が破砕される。第1位置では、ブレンダ31のフランジ31aが、検体容器5の上端に当接する。即ち、フランジ31aにより、検体容器5の開口が閉塞され、ブレンダ31の回転動作により組織と可溶化液の混合物が検体容器5から飛散することが防止される。
【0072】
第2位置では、ブレンダ31の先端が検体容器5の底部よりも上方であり、可溶化液の液面よりも下方に位置する。このため、破砕された組織片が可溶化液と混和され、組織が内刃及び外刃に目詰まりすることが防止される。ブレンダ31には、フランジ31aよりも下方において円環状のフランジ31bが設けられている。このフランジ31bの外径は、検体容器5の内径よりも若干小さくされている。ブレンダ31が第2位置にあるときには、フランジ31bが検体容器5の上端に位置する。即ち、フランジ31bにより、検体容器5の開口が実質的に閉塞され、ブレンダ31の回転動作により組織と可溶化液の混合物が検体容器5から飛散することが防止される。
【0073】
図12は、破砕動作における破砕部3の昇降を説明するためのグラフである。図において、縦軸はブレンダ31の位置を示し、横軸は時間を示している。図に示すように、ブレンダ31は最下点の第1位置において約1秒間静止され、その後第1位置から距離Bだけ上方の第2位置まで移動する。ブレンダ31は最上点の第2位置において約1秒間静止され、その後第1位置まで下降する。破砕動作では、このような破砕部3の昇降を複数回繰り返す。この間、ブレンダ31の内刃は回転し続ける。かかる破砕動作は、60秒間実行される。
【0074】
破砕動作においては、上記のようにブレンダ31が第1位置及び第2位置を往復しながら回転動作するため、ブレンダ31の内刃及び外刃が一定の位置に留まることがなく、組織と可溶化液との混和物がよくかき混ぜられる。また、組織片が検体容器5の内壁に付着した状態で留まることが防止され、破砕された組織片の大きさが均一化される。
【0075】
破砕動作が完了すると、制御部7は、ブレード回転用モータ32,32,32,32及びブレード昇降用モータ33を制御して、液切り動作を実行させる(ステップS7)。この液切り動作では、破砕部3が上昇され、ブレンダ31に設けられたフランジ31aが、検体容器5の上端より距離Aだけ上方にある位置(上述した回転安定動作と同じ位置)に位置決めされた状態で、ブレンダ31の内刃が回転される。このとき、ブレンダ31の先端部は、検体容器5の長手方向中央部付近に位置し、可溶化液の液面よりも上方にある。このため、内刃及び外刃に付着した組織片及び可溶化液がブレンダ31から除去され、また組織片及び可溶化液が検体容器5の外側に飛散することが防止される。このような液切り動作は、4秒間実行される。
【0076】
液切り動作が完了すると、制御部7は、ロック機構22を制御して、カバー2のロックを解除する(ステップS8)。さらに制御部7は、ブザー71を動作させて、作業者にホモジナイズの終了を通知し(ステップS9)、動作を終了する。なお、ステップS6の破砕動作の間に緊急停止ボタン74が押下されると、制御部7は、破砕動作を中断して、破砕部3を上昇させ、カバー2のロックを解除する。
【0077】
作業者はカバー2を開き、破砕位置Xにあるセット部6を前方に引き出し、取付位置Yに位置させる。さらに作業者は、取付位置Yにあるセット部6から、保冷庫4を取り外す。作業者は保冷庫4の検体容器5においてホモジナイズが十分に行われたかどうかを確認する。また、作業者はブレンダ31の刃先に組織片が残っていないかを確認する。ホモジナイズが十分に行われず、検体容器5又はブレンダ31に組織片が付着しているような場合には、作業者は保冷庫4を装置本体10に装着し直して、破砕処理を再度実行させる。
【0078】
ホモジナイズが十分に行われたことが確認されると、作業者は検体容器5に蓋をして保冷庫4から取り出し、遺伝子検査へ供する。また、作業者はブレンダ31を装置本体10から取り外し、ブレンダ31を廃棄処分する。
【0079】
以上詳述した如く、本実施の形態に係る破砕処理装置1によれば、破砕動作を実行する前に作業者が装置本体10から保冷庫4を取り出しておき、この保冷庫4で組織を収容した検体容器5を冷却することができる。また、前処理を実施するときには、事前に冷却しておいた検体容器5を保持した保冷庫4をそのまま装置本体10に装着することができる。このため、前処理を実施する前に検体容器を冷却するための容器と、ホモジナイズ実行中に検体容器を保冷するための保冷部とを、保冷庫4で兼用することができる。
【0080】
また、セット部6を取付位置Xと破砕位置Yとの間でスライド可能に構成したため、取付位置Xにおいて保冷庫4をセット部6に取り付け、セット部6を取付位置Xから破砕位置Yへ移動させることで、装置本体10に保冷庫4を容易に装着することができる。また、装置本体10に保冷庫4が装着された状態から、セット部6を破砕位置Yから取付位置Xへ移動させ、セット部6から保冷庫4を取り出すことで、装置本体10から保冷庫4を容易に取り外すことができる。
【0081】
また、装置本体10に保冷庫4が装着されていない場合には、フォトインタラプタ62によりこれが検出され、破砕動作が実行されない。このため、破砕する対象の組織が存在しない状態で破砕動作を行うことによる予期せぬ装置の故障等を防止することができる。他方、装置本体10に保冷庫4が装着されている場合には、フォトインタラプタ62によりこれが検出され、スタートスイッチ72のオンが検出されれば破砕動作が実行される。このため、保冷庫4が装着された状態であれば保冷庫4に保持された検体容器内の組織の破砕を行うことができる。
【0082】
また、上記の保冷庫4の装着に加え、カバー部2が閉じられている場合には、フォトインタラプタ21によりこれが検出され、スタートスイッチ72のオンが検出されれば破砕動作が実行される。これにより、破砕動作中にはカバー部2によって装置本体10の内側と外側とが遮断され、作業者が装置本体10の内部に触れたり、破砕動作により破砕処理装置1の外部に組織又は可溶化液等が飛散したりすることが防止される。また、カバー部2が閉じられていない場合には、作業者が装置の内部に触れる可能性があるが、フォトインタラプタ21によりこれが検出され、スタートスイッチ72がオンにされても破砕動作が実行されない。
【0083】
また、保冷庫4が装着されており、且つ、カバー部2が閉じられている場合に、スタートスイッチ72のオンが検出されれば、カバー部2がロックされ、破砕動作が実行される。このため、破砕動作を実行している間は、カバー部2が開くことを防止することができる。
【0084】
また、破砕動作の後、破砕部3の液切り動作を実行する構成としたので、破砕動作により破砕部3に付着した組織を除去することができ、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0085】
また、保冷庫4に4つの検体容器5を保持可能としたので、保冷庫4によって最大4つの検体容器5を同時に冷却することができる。さらに、破砕処理装置1が最大4つの検体容器について同時に組織の破砕動作を実行可能な構成としたので、複数の組織の前処理を効率的に行うことができる。
【0086】
また、保冷庫4に保持された検体容器5内の組織を破砕するときには、開口41を通じて破砕部3が保冷庫4の内部まで進入して検体容器内の組織を破砕するため、保冷庫4の内部で組織を保冷したままで破砕動作を行うことができる。
【0087】
(実施の形態2)
<破砕処理装置の構成>
図13は、本実施の形態に係る破砕処理装置の外観を示す斜視図である。本実施の形態に係る破砕処理装置200もまた、実施の形態1に係る破砕処理装置1と同様に、主として病院の病理検査室に設置され、手術室において患者から採取された組織を試薬液中で破砕するための装置である。破砕処理装置200は、実質的に直方体形状の装置本体210と、この装置本体210に着脱可能な保冷庫204とを備えている。装置本体210には、前面の一部を覆うカバー2が設けられている。当該カバー2は、上下にスライド可能であり、これによって開閉可能に構成されている。
図13には、カバー2が開かれた状態が示されている。
【0088】
なお、以下において、本実施の形態に係る破砕処理装置200の構成のうち、実施の形態1に係る破砕処理装置1と同様の構成については同一符号を付して説明する。
【0089】
装置本体210の下部には、水平方向にスライド可能なセット部206が設けられている。このセット部206に保冷庫204が載置される。
図14は、セット部206を引き出した状態の破砕処理装置200を示す斜視図である。セット部206は、保冷庫204が破砕部3,3,3,3の直下に位置する破砕位置X(
図13に示す位置)と、保冷庫204の取り付け、取外しを行うための取付位置Y(
図14に示す位置)との間で水平方向に移動可能である。セット部206には、保冷庫204を載置するための載置部261が設けられている。載置部261は、保冷庫204の底部よりも若干大きい四角皿状をなしており、この載置部261の上に保冷庫204を載置することが可能である。
【0090】
図15及び
図16は、保冷庫204の外観を示す斜視図である。保冷庫204は、直方体形状の箱状をなしている。保冷庫204の上部は蓋244aとされており、ヒンジによって開閉可能とされている。保冷庫204の前端の2箇所には、蓋244aのロック部244b,244bが設けられており、蓋244aを閉じた状態でロックすることが可能である。
【0091】
ロック部244b,244bは、蓋244aに取り付けられた操作部244c,244cと、保冷庫204の本体である箱体244の前端に設けられた係合突起244d,244dとによって構成されている。係合突起244d,244dは、平板状をなしており、箱体244の上部開口の前端縁の左右両側端のそれぞれから、前方に突出するように設けられている。また、操作部244c,244cは、蓋244aの前端に左右方向に摺動可能に設けられている。操作部244c,244cは、それぞれ所定範囲内を左右方向に摺動可能であり、互いに最も近接した位置が解除位置、互いに最も離隔した位置がロック位置とされている。つまり、蓋244aが閉じられた状態において、操作部244c,244cが解除位置から互いに離反するように摺動されると、操作部244c,244cに設けられた開口に係合突起244d,244dが挿入されるようにして操作部244c,244cと係合突起244d,244dとが係合し、蓋244aがロックされる。また、蓋244aがロックされた状態において、操作部244c,244cがロック位置から互いに近接するように摺動されると、操作部244c,244cと係合突起244d,244dの係合が解除され、蓋244aのロックが解除される。
【0092】
また、操作部244c,244cには、上方に突出した摘み部244e,244eが設けられている。摘み部244e,244eが上方に突出しているため、ユーザは上方から摘み部244e,244eを摘み、操作部244c,244cを操作することができる。
【0093】
蓋244aの両側部には、平板状の突出部242a,242aが設けられている。他方、箱体244の一方の側部からは、一対の平板状の突出部242b,242cが設けられ、他方の即部からも同様に、一対の平板状の突出部242b,242cが設けられている。蓋244aが閉じられたとき、蓋244aの突出部242aと箱体244の一対の突出部244b,244cとが重ね合わさり、一つの取手として機能する。つまり、保冷庫204の左右両側には一対の取手が設けられている。
【0094】
セット部206が取付位置Yにあるとき、ユーザは、セット部206に対する保冷庫204の取り付け、又は取り外しが可能である(
図13参照)。
図17は、保冷庫204を取り外したときの破砕処理装置200を示す斜視図である。
図17に示すように、セット部206に設けられた載置部261上に保冷庫204を載置することが可能である。
【0095】
ユーザは、保冷庫204の取手を把持して、セット部206に対する保冷庫204の取り付け、取り外しを行う。このように、突出部242a,242b,242cを取手として使用するとき、ユーザは重ね合わさった突出部242a,242b,242cを指で上下に挟むようにして把持する。また、蓋244aの突出部242a,242aは、蓋244aの開閉するための取手としても機能する。つまり、
図15及び
図16に示すように、箱体244の一対の突出部242b,242cは互いに離間しており、両者の間には間隙が存在する。そのため、一対の突出部242b,242cの間に指が入るようにすれば、ユーザは蓋244aの突出部242aのみを掴むことが可能である。このようにして、両側の突出部242a,242aのそれぞれを掴んで上げ下げすることで、ユーザは蓋244aの開閉を行うことができる。
【0096】
かかる蓋244aの開閉は、保冷庫204を装置本体210から取り外した状態で行うことも可能であるし、取り付け位置Yにあるセット部206に保冷庫204が載置されている状態で行うことも可能である。
図18は、保冷庫204が取り付けられた状態で蓋244aが開かれたときの破砕処理装置200を示す斜視図である。
図18に示すように、セット部206が取付位置Yにあるとき、ユーザは保冷庫204の蓋244aを開閉することが可能である。これによって、破砕処理後の検体容器を保冷庫204から迅速に取り出すことができ、また、次に破砕処理を行う検体容器を迅速に保冷庫204にセットすることが可能である。
【0097】
図17に示すように、セット部206には当接部材265が設けられている。当接部材265は、載置部261の側部から上方に突出するように設けられた板状の部材であり、その上部が90度屈曲されて、この面が載置部261の背面と平行になっている。また、この面は、載置部261の背面の上方に位置しており、保冷庫204の蓋244aが開かれたときに、蓋244aと当接し、蓋244aがそれ以上開くことを防止するためのストッパーとして機能する。
【0098】
図18に示すように、セット部206が取付位置Yにある状態で、載置部261に載置されている保冷庫204の蓋244aが開かれると、蓋244aは90度より若干大きい角度まで開いた状態で当接部材265に当接し、その角度で開いた状態を維持する。このとき、蓋244aがブレンダ31,31,31,31に干渉しないようになっている。これにより、蓋244aがブレンダ31,31,31,31と接触することによる組織及び可溶化液の蓋244aへの付着が防止され、コンタミネーションの発生が防止される。
【0099】
また、
図14等に示すように、セット部206の前側部分は縦長の板状をなす板状部260となっており、この板状部260の上端中央部に凹状の把持部260aが設けられている。ユーザは、セット部206を取付位置Yと破砕位置Xとの間で移動させる際に、この把持部260aを把持してセット部206を装置本体210から引き出したり、装置本体210へ押し入れたりする。
【0100】
装置本体210のハウジング下部の両側部分は前方に突出したガイド部210a,210aであり、セット部206が破砕位置Xにあるとき、2つのガイド部210a,210aの間にセット部206が配置される。ガイド部210a,210aの前端面は、セット部206の板状部260の背面両側部と対向する。かかるガイド部210a,210aの前端面は一部が欠落しており、切欠部210b,210bが形成されている(
図14等参照)。蓋244aが閉じた状態の保冷庫204がセット部206に載置され、当該セット部206が取付位置Yから後方へ移動されるとき、切欠部210bが設けられているため、保冷庫204の両側の突出部242a,242b,242cがガイド部210aの前端面と干渉することがなく、セット部206を破砕位置Xまで移動させることが可能である。
【0101】
また、
図13に示すように、保冷庫204が載置されたセット部206が破砕位置Xにあるとき、ガイド部210aの内側に保冷庫204の突出部242a,242b,242cが収納される。つまり、突出部242aの上方にガイド部210aの上面が位置する。このため、破砕位置Xにある保冷庫204の蓋244aが開かれることが防止される。つまり、破砕処理中に保冷庫204の蓋244aが開くことによる故障又は事故の発生が防止される。
【0102】
図17に示すように、装置本体210の保冷庫204に対向する面には、位置決め部211と、磁石12とが設けられている。位置決め部211は、保冷庫204に対向する面に設けられた突起である。また、位置決め部211の下方には、保冷庫204を検出するためのフォトインタラプタ262が設けられている。さらに、フォトインタラプタ262よりも下方であって、装置本体の左右方向中央から左右に離隔した2箇所には、セット部206を検出するためのフォトインタラプタ263が設けられている(
図17には、2つのフォトインタラプタ263のうちの一方のみが示されている。)。
【0103】
図17に示すように、セット部206の背面板の左右に離隔した2箇所それぞれには、孔264a,264aが設けられており、それぞれの孔264a,264aの前方には、縦長の板状をなす検出片264,264が設けられている。
【0104】
図19は、保冷庫204が取り付けられないままセット部206が破砕位置Xに位置付けられたときの装置本体210を示す斜視図である。
図19に示すように、保冷庫204が取り付けられていない状態のセット部206を、取付位置Yから破砕位置Xへ移動させることが可能である。このとき、セット部206の背面板に設けられた2つの孔264aのそれぞれに、フォトインタラプタ263が挿入される。フォトインタラプタ263の発光部と受光部との間の間隙に、孔264aの前方に設けられた検出片264が位置付けられ、フォトインタラプタ263の発光部からの光が検出片264によって遮断される。このように、フォトインタラプタ263によって、セット部206が破砕位置Xに位置していることが検出可能である。
【0105】
他方、保冷庫204が取り付けられていなければ、セット部206が破砕位置Xに位置していても、フォトインタラプタ262の発光部からの光は遮断されない。つまり、保冷庫204が取り付けられていない状態では、フォトインタラプタ262によって、セット部206が破砕位置Xに位置していることは検出されない。
【0106】
ここで、保冷庫204の構成について説明する。
図16に示すように、箱体244の背面上部の左右方向中央部には位置決めブロック247が取り付けられている。
図20は、位置決めブロック247の構成を示す斜視図である。位置決めブロック247は、直方体形状をなしており、上部に円形凹部247aが設けられ、下部に2つの矩形凹部247b,247cが左右に並ぶように設けられている。
【0107】
破砕処理を行う場合には、保冷庫204が検体容器5を保持したままの状態で、取付位置Yにあるセット部206の載置部261に取り付けられる。その後、セット部206が後方にスライドされ、破砕位置Xに位置付けられる。このとき、位置決めブロック247に設けられた円形凹部247aに、装置本体210に設けられた位置決め部211が挿入され、保冷庫204が位置決めされる。
図21は、セット部206の移動を模式的に説明するための側面図である。
図21に示すように、保冷庫204の背面には位置決めブロック247が設けられており、載置部261の背面には、孔264a及び検出片264が設けられている。また、装置本体210の保冷庫204に対向する面には、位置決め部211と、フォトインタラプタ262と、フォトインタラプタ263とが設けられている。また、装置本体210の前記面には、磁石12が設けられており(
図14等参照)、保冷庫204の背面には、磁石12と対応する磁性体板48が設けられている。
【0108】
図21に示すように、保冷庫204が取り付けられたセット部206が取付位置Yから後方へ移動されると、破砕位置Xにおいて、保冷庫204の位置決めブロック247の円形凹部247aに位置決め部211が挿入され、矩形凹部247b,247cにフォトインタラプタ262の発光部及び受光部が挿入され、載置部261の孔264aにフォトインタラプタ263が挿入され、フォトインタラプタ263の発光部と受光部との間に検出片264が位置する。また、このとき磁性体板48が磁石12に吸着される。
【0109】
図21に示すように、位置決め部211は、先端に向かって細くなるようにテーパ状に形成された突起であり、位置決めブロック247の円形凹部247aは、奥に向かって細くなるように円錐台状に形成された凹部である。また、位置決め部211及び円形凹部247aの大きさ及び傾斜角はほぼ同一である。したがって、位置決め部211が円形凹部247aに挿入されると、位置決め部211の傾斜面と円形凹部247aの傾斜面とが当接し、保冷庫204が正しい位置(破砕部3を検体容器5に挿入可能な位置)に位置決めされる。
【0110】
また、上記のようにして位置決め部211が円形凹部247aに挿入されると同時に、フォトインタラプタ262の発光部と受光部とが、矩形凹部247b,247cのそれぞれに挿入されることで、前記発光部と前記受光部との間に、矩形凹部247bと247cとの間の壁部が位置し、この壁部によって前記発光部からの光が遮断される。これにより、フォトインタラプタ262によって、破砕位置Xにあるセット部206に保冷庫204が載置されていることが検出可能である。
【0111】
このとき、セット部206が破砕位置Xに位置している。したがって、上述したように、フォトインタラプタ263の発光部と受光部との間の間隙に、孔264aの前方に設けられた検出片264が位置付けられ、フォトインタラプタ263の発光部からの光が検出片264によって遮断される。これにより、フォトインタラプタ263によって、セット部206が破砕位置Xに位置していることが検出される。
【0112】
さらに、磁石12と保冷庫204の磁性体板48とが吸着することで、保冷庫204が前記正しい位置で固定される。この状態で、保冷庫204に保持されている検体容器の内部に破砕部3が進入し、組織を破砕する破砕処理が行われる。
【0113】
図22は、本実施の形態に係る破砕処理装置200の電気回路の構成を示すブロック図である。上述したフォトインタラプタ262,263,263は、破砕処理装置200の装置本体210に設けられた制御部7に接続されており、制御部7に検知信号を出力可能となっている。
【0114】
本実施の形態に係る破砕処理装置200の他の構成は、実施の形態1に係る破砕処理装置1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0115】
<破砕処理装置の動作>
次に、本実施の形態に係る破砕処理装置200の動作について説明する。
【0116】
まず、カバー2が作業者によって開かれる。カバー2が開かれた状態で、保冷庫204が装置本体210から取り外される。作業者は、カバー2が開いた状態で、破砕位置Xにあるセット部206を前方に引き出し、取付位置Yに位置させる。さらに作業者は、取付位置Yにあるセット部206から、保冷庫204を取り外す。
【0117】
次に作業者は保冷庫204の蓋244a及び内蓋46を開け、冷媒容器45にクラッシュアイスを入れ、内蓋46を冷媒容器45上に被せる。更に、検体容器5に可溶化液を4mL分注し、内蓋46の保持孔46aに挿入し、可溶化液を冷却しておく。このような検体容器5は最大で4つ準備される。この状態で、手術室から組織が到着するのを待機する。
【0118】
組織が到着すると、作業者が可溶化液を予め冷却しておいた検体容器5に当該組織を投入する。組織及び可溶化液が収容された検体容器5が内蓋46に保持されている状態で、作業者が蓋244aを閉め、ロック部244b,244bをロック状態にする。
【0119】
作業者は、装置本体210のカバー2が開いた状態で、破砕部3の回転機構部にブレンダ31を取り付ける。この作業についても、最大で4つのブレンダ31が破砕部3に取り付けられる。
【0120】
装置本体210の外部において保冷庫204で組織が十分に冷却された後、作業者は、取付位置Yにあるセット部206の載置部261に保冷庫204を取り付ける。このとき、保冷庫204の位置決めブロック247が後方を向くようにする。作業者は保冷庫204が取り付けられたセット部206を、取付位置Yから破砕位置Xまで後方へスライドさせる。これにより、保冷庫204の円形凹部247aに位置決め部211が挿入され、矩形凹部247b及び247cにフォトインタラプタ262の発光部及び受光部が挿入され、載置部261の検出片264がフォトインタラプタ263の発光部及び受光部の間に位置する。また、磁性体板48が磁石12に吸着される。このようにして、装置本体210への保冷庫204の装着が完了する。
【0121】
また、上述したように保冷庫204をセット部206から一旦取り外し、保冷庫204に次の検体容器を保持させてから再度セット部206に取り付けるようにしなくても、取付位置Yにおいてセット部206から保冷庫204を取り外さないまま、ロック部244b,244bのロックを解除して蓋244aを開け、破砕処理後の検体容器5を保冷庫204から取り外し、新たな検体容器5(例えば、別の冷却機等で冷却済の検体を収容したもの)を保冷庫204に保持させ、蓋244aを閉じてロック部244b,244bをロック状態にすることとも可能である。
【0122】
作業者は、カバー2を閉じ、スタートスイッチ72を押下して、破砕処理装置1に組織の破砕処理の実行を指示する。なお、
図13等に示すように、カバー2が開かれた状態では、カバー2がスタートスイッチ72の前面に位置しており、スタートスイッチ72がカバー2によって隠れた状態となっている。つまり、カバー2が開いた状態では、作業者がスタートスイッチ72を操作することができないようになっている。これにより、カバー2が開いたままスタートスイッチ72が誤操作されることが防止される。
【0123】
制御部7は、スタートスイッチ72が押下された否かを監視している。制御部7が、スタートスイッチ72が押下されたと判断すると(ステップS201においてYES)、ステップS202に処理を進める。スタートスイッチ72が押下されていなければ(ステップS201においてNO)、制御部7はステップS201の判断を繰り返す。
【0124】
スタートスイッチが押下された場合、制御部7は、カバー2が閉じられているか否かを検出する(ステップS202)。カバー2が閉じられるか否かは、フォトインタラプタ21から出力される検知信号によって判断される。制御部7は、この検知信号を受信することで、カバー2が閉じられていることを検出する。ステップS202において、カバー2が閉じられていることが検出されない場合には(ステップS202においてNO)、制御部7は、カバー2が閉じられていないことを作業者に知らせるために、ステップS210のエラー処理を実行する。エラー処理では、ブザー71が鳴動するとともに、状態表示ランプ73が、エラーが発生したことを示す赤色で点滅する。エラー処理は、一定時間経過後に終了し、処理がステップS201に戻る。
【0125】
ステップS202においてカバー2が閉じられていることが検出された場合には(ステップS202においてYES)、制御部7は、セット部206が破砕位置Xにあり、且つ、保冷庫204がセット部206に設置されているか否かを判別する(ステップS203)。上述したように、保冷庫204がセット部206に取り付けられているか否かにかかわらず、セット部206が破砕位置Xに移動されると、フォトインタラプタ263,263がセット部206を検知し、これに応じた検知信号を出力する。制御部7は、この検知信号を受信することで、セット部206が破砕位置Xに位置していることを検出する。また、上述したように、保冷庫204がセット部206に取り付けられた状態で、セット部206が破砕位置Xに移動されると、フォトインタラプタ262が保冷庫204を検知し、これに応じた検知信号を出力する。制御部7は、この検知信号を受信することで、装置本体210に保冷庫204が設置されたことを検出する。ステップS203において、セット部206が破砕位置Xにあることが検出されないか、又は、保冷庫204がセット部206に設置されていることが検出されない場合(即ち、フォトインタラプタ262,263,263の全てから検知信号が出力されていない場合)には(ステップS203においてNO)、制御部7は、保冷庫204が適切に設置されていないことを作業者に知らせるために、エラー処理(ステップS210)を実行する。
【0126】
ステップS203において、セット部206が破砕位置Xにあることが検出され、且つ、保冷庫204がセット部206に設置されていることが検出された(即ち、フォトインタラプタ262,263,263の全てから検知信号が出力された)場合には(ステップS203においてYES)、制御部7は、カバー2をロックし(ステップS204)、破砕処理を実行する。
【0127】
なお、ステップS204乃至ステップS209の処理は、実施の形態1において説明したステップS4乃至ステップS9の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0128】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態1及び2においては、保冷庫に冷媒である氷(クラッシュアイス)を収容し、これによって検体容器内の組織及び可溶化液を冷却する構成について述べたが、これに限定されるものではない。保冷庫がペルチェ素子等の冷却機構を備え、これによって検体容器内の組織及び可溶化液を冷却する構成としてもよい。この場合、冷却機構を動作させるために電源となる二次電池を保冷庫に内蔵する構成とするのが好ましい。また、保冷庫が装置本体に装着されたときに、破砕処理装置1が備える電源によって保冷庫の二次電池を充電する構成とすることができる。
【0129】
また、上述した実施の形態1及び2においては、保冷庫が最大4つの検体容器を保持可能な構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、2つ又は3つ等、4以外の複数の検体容器を保冷庫が保持可能な構成としてもよいし、保冷庫が1つの検体容器のみを保持可能な構成としてもよい。この場合、保冷庫によって保持可能な検体容器の数と同数の破砕部を破砕処理装置に設け、複数の検体容器について並列して破砕動作を実行可能とすることが好ましい。
【0130】
また、上述した実施の形態1及び2においては、保冷庫に検体容器を垂直に保持させ、破砕部を垂直方向に降下させて、検体容器の内部に破砕部を進入させる構成について述べたが、これに限定されるものではない。保冷庫に検体容器を垂直方向に対して傾斜した方向に保持させ、破砕部を検体容器の傾斜角度と同一角度で傾斜した方向に沿って移動可能とし、傾斜した検体容器の内部に破砕部を進入させる構成としてもよい。
【0131】
また、上述した実施の形態1及び2においては、装置本体に対して保冷庫を前後方向に移動させることにより、保冷庫を装置本体に着脱する構成について述べたが、これに限定されるものではない。検体容器に進入するときの破砕部の移動方向と交差する方向であれば、装置本体に対して保冷庫を移動させる方向はどのようなものであってもよい。例えば、破砕処理装置に対して保冷庫を左右方向に移動させる構成としてもよいし、水平方向に対して傾斜した方向に移動させる構成としてもよい。
【0132】
また、上述した実施の形態1及び2においては、セット部を取付位置と破砕位置との間で移動可能とし、セット部を取付位置と破砕位置との間で移動させることで、セット部に取り付けられた保冷庫を装置本体に対して着脱する構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、破砕処理装置の破砕部の下方の位置にセット部として保冷庫着脱用の台を固定し、この台に保冷庫を載置したり、この台から保冷庫を取り外したりすることにより、破砕処理装置に対して保冷庫を着脱する構成としてもよいし、破砕処理装置にセット部として保冷庫着脱用のスロットを設け、このスロットに対して保冷庫を挿脱することにより、破砕処理装置に対して保冷庫を着脱する構成としてもよい。