(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883844
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】電気手術のための電力伝達のインピーダンス媒介制御
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
A61B17/39 320
【請求項の数】33
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-501509(P2013-501509)
(86)(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公表番号】特表2013-523219(P2013-523219A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011029958
(87)【国際公開番号】WO2011119933
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年2月26日
(31)【優先権主張番号】12/907,646
(32)【優先日】2010年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/748,229
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500122569
【氏名又は名称】アエスクラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】ティム コス
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム エイチ タイミスト
(72)【発明者】
【氏名】ロザン バーナー
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−517498(JP,A)
【文献】
特開2008−114042(JP,A)
【文献】
特開2007−195973(JP,A)
【文献】
特開2005−040616(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0173804(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0158551(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0004510(US,A1)
【文献】
米国特許第06398779(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前設定された傾斜比率で事前設定されたRF最終値まで増加する事前設定されたRF開始値を含むプロフィールを有する最初のパルスから開始される一連のパルスを含む縫合サイクルで、電気手術装置を通して対象組織でエネルギーを伝達するように構成されるRF発生器と、
RF設定点に対する第一インピーダンス閾値、累積時間に対する第二インピーダンス閾値及びエネルギー削減に対する第三インピーダンス閾値を含む三つの事前設定されたインピーダンス閾値のそれぞれと対象組織の被検出インピーダンス値とを比較するように構成される比較器と、を含み、
前記RF発生器は、さらに、前記被検出インピーダンス値と三つの前記インピーダンス閾値との比較に応じて縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するように構成され、
前記第二インピーダンス閾値は前記第一インピーダンス閾値より高く、前記第三インピーダンス閾値は前記第二インピーダンス閾値より高く、
前記第二インピーダンス閾値より高いインピーダンス値を示す組織の累積時間が事前設定された縫合サイクル持続期間の限度に到逹したとき、縫合サイクルを中断させるように構成され、
先行パルスの終了時点の前記被検出インピーダンス値が前記RF設定点に対する前記第一インピーダンス閾値より小さいとき、後続パルスが前記最初のパルスと同一のパルスプロフィールを有するように当該後続パルスに対するエネルギー伝達を制御するように構成され、
パルス途中の任意の時点の前記被検出インピーダンスが前記第三インピーダンス閾値を超える場合、前記RF発生器におけるエネルギー伝達を削減する制御を実行する電気手術システム。
【請求項2】
先行パルスの終了時点の前記被検出インピーダンス値が前記RF設定点に対する前記第一インピーダンス閾値を超えるとき、後続パルスが上昇型プロフィールを有するように当該後続パルスに対するエネルギー伝達を制御するようにさらに構成されている、請求項1に記載の電気手術システム。
【請求項3】
前記後続パルスの上昇型プロフィールは、パルスの開始時点に前記RF開始値から直接前記RF最終値まで階段式で増加するプロフィールを含む、請求項2に記載の電気手術システム。
【請求項4】
前記後続パルスの上昇型プロフィールは、先行パルスの前記RF開始値、前記RF最終値、及び前記RF開始値から前記RF最終値までの傾斜比率とそれぞれ比較して、増加された前記RF開始値、増加された前記RF最終値、及び増加された前記傾斜比率のうち何れか一つ以上を含む、請求項2に記載の電気手術システム。
【請求項5】
前記エネルギー伝達を削減する制御は、先行パルスの前記RF開始値、前記RF最終値、及び前記RF開始値から前記RF最終値までの傾斜比率とそれぞれ比較して、前記RF開始値の低減、前記RF最終値の低減、及び前記傾斜比率の低減のうち何れかを含む、請求項1に記載の電気手術システム。
【請求項6】
前記エネルギー伝達を削減する制御は、前記被検出インピーダンスが前記第三インピーダンス閾値を超える時点に伝達されるエネルギーの一部の量だけを低減させるように、伝達されるエネルギーの量を低減させることを含む、請求項1に記載の電気手術システム。
【請求項7】
事前設定された傾斜比率で事前設定されたRF最終値まで増加する事前設定されたRF開始値を含むプロフィールを有する最初のパルスから開始される一連のパルスを含む縫合サイクルで電気手術装置から対象組織にエネルギーを伝達するステップと、
RF設定点に対する第一インピーダンス閾値、累積時間に対する第二インピーダンス閾値及びエネルギー削減に対する第三インピーダンス閾値を含む三つの事前設定されたインピーダンス閾値のそれぞれと対象組織の被検出インピーダンス値とを比較するステップと、
前記被検出インピーダンス値と三つの前記インピーダンス閾値との間の比較に応じて縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するステップと、
を含み、
前記第二インピーダンス閾値は前記第一インピーダンス閾値より高く設定され、前記第三インピーダンス閾値は前記第二インピーダンス閾値より高く設定され、
前記被検出インピーダンス値と三つの前記インピーダンス閾値との間の比較に応じて縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するステップは、
前記第二インピーダンス閾値より高いインピーダンス値を示す組織の累積時間が事前設定された縫合サイクル持続期間の限度に到逹したとき、縫合サイクルを中断させるステップと、
先行パルスの終了時点の前記被検出インピーダンス値が前記第一インピーダンス閾値より小さいとき、後続パルスが前記最初のパルスと同一のパルスプロフィールを有するように当該後続パルスに対するエネルギーの伝達を制御するステップと、
パルス途中の任意の時点の前記被検出インピーダンスが前記第三インピーダンス閾値を超えるとき、エネルギー伝達を削減するステップを含む、人間以外の生物を対象とする電気手術方法。
【請求項8】
前記被検出インピーダンス値が前記第二インピーダンス閾値を超える間、進行中の縫合サイクル内の累積時間を記録するステップをさらに含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項9】
後続パルスに先行するパルス又は最終パルスであるそれぞれのパルスの間中、プロセッサに前記被検出インピーダンス値を伝送するステップをさらに含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項10】
先行パルスの終了時点の前記被検出インピーダンス値が前記RF設定点に対するインピーダンス閾値を超えるとき、後続パルスが上昇型プロフィールを有するように前記後続パルスに対するエネルギーの伝達を制御するステップをさらに含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項11】
前記後続パルスの上昇型プロフィールは、パルスの開始時点に前記RF開始値から直接前記RF最終値まで階段式で増加するプロフィールを含む、請求項10に記載の電気手術方法。
【請求項12】
前記後続パルスの上昇型プロフィールは、先行パルスの前記RF開始値、前記RF最終値、及び前記RF開始値から前記RF最終値までの傾斜比率とそれぞれ比較して、増加された前記RF開始値、増加された前記RF最終値、及び増加された前記傾斜比率のうち一つ以上を含む、請求項10に記載の電気手術方法。
【請求項13】
前記エネルギー伝達を削減するステップは、エネルギー伝達を即時に削減するステップを含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項14】
前記エネルギー伝達を削減するステップは、エネルギー伝達の削減に先立って、前記被検出インピーダンス値が前記第三インピーダンス閾値を超える事前設定された累積経過時間の間待機するステップを含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項15】
前記エネルギー伝達を削減するステップは、先行パルスの前記RF開始値、前記RF最終値、及び前記RF開始値から前記RF最終値までの傾斜比率とそれぞれ比較して、前記RF開始値を低減するステップ、前記RF最終値を低減するステップ、及び前記傾斜比率を低減するステップのうち一つ以上のステップを含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項16】
前記エネルギー伝達を削減するステップは、伝達するエネルギーの一部の量だけエネルギー伝達を減少させるステップを含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項17】
前記伝達するエネルギーの一部の量だけエネルギー伝達を減少させるステップは、前記被検出インピーダンスが前記第三インピーダンス閾値を超える分量に対応する分量だけエネルギー伝達を減少させるステップを含む、請求項16に記載の電気手術方法。
【請求項18】
前記伝達するエネルギーの量を一部の量だけエネルギー伝達を減少させるステップは、継続してリアルタイム方式でエネルギーの量を減少させるステップを含む、請求項16に記載の電気手術方法。
【請求項19】
前記パルスは、それぞれ0.5秒〜10秒の範囲の一定の持続期間を有する、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項20】
累積縫合終了点持続期間は0.1秒と5秒との間である、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項21】
前記RF開始値は25ワット〜150ワットの範囲である、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項22】
前記RF最終値は50ワット〜150ワットの範囲である、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項23】
前記第一インピーダンス閾値は5オーム〜250オームの範囲である、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項24】
前記第三インピーダンス閾値は100オーム〜900オームの範囲である、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項25】
前記第二インピーダンス閾値は100オーム〜750オームの範囲である、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項26】
前記エネルギーを伝達するステップは、伝達されるエネルギーのレベルをパルス中に前記RF開始値から前記RF最終値まで増加させるステップを含む、請求項7に記載の電気手術方法。
【請求項27】
それぞれ事前設定されたパルス持続期間を有するパルスからなり、パルス中に事前設定されたRF最終値まで増加する事前設定されたRF開始値を含む最初のパルスプロフィールを有する最初のパルスから開始する一連のパルスを含む縫合サイクルで、電気手術装置から対象組織にエネルギーを伝達するステップと、
後続パルスに先行するパルス又は最終パルスであるそれぞれのパルス中に組織のインピーダンス値を検出するステップと、
a.第1のパルス中に組織に示されるインピーダンス値とRF設定点に対する事前設定された第一インピーダンス閾値との比較により、先行パルスのプロフィールと関連した後続パルスのプロフィールが同一のプロフィール及びより高いエネルギープロフィールのうち任意のプロフィールを有するようにし、
b.被検出インピーダンス値がエネルギー削減に対する事前設定された第三インピーダンス閾値を超えるときは、エネルギーがパルス中に削減されるようにし、
c.前記被検出インピーダンスが累積時間に対する事前設定された第二インピーダンス閾値を超えた時間の累計値が事前設定された縫合サイクル持続期間の限度まで累積されたときは、エネルギーの伝達が中断されるようにして、
縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するステップと、
を含み、
前記第二インピーダンス閾値は前記第一インピーダンス閾値より高く設定され、前記第三インピーダンス閾値は前記第二インピーダンス閾値より高く設定されている、人間以外の生物を対象とする電気手術方法。
【請求項28】
前記被検出インピーダンスが前記第一インピーダンス閾値を超えるときは、後続パルスのエネルギープロフィールが先行パルスのエネルギープロフィールを超え、
前記被検出インピーダンスが前記第一インピーダンス閾値より小さいときは、後続パルスのエネルギープロフィールが先行パルスのエネルギープロフィールと同一である、請求項27に記載の電気手術方法。
【請求項29】
パルスのエネルギープロフィールは、前記RF開始値、前記RF最終値、及び前記RF開始値と前記RF最終値との間の移行期間を含む、請求項27に記載の電気手術方法。
【請求項30】
先行パルスに比べて、低下した後続パルスのパルスエネルギープロフィールは、低下した前記RF開始値、低下した前記RF最終値、及び前記RF開始値から前記RF最終値までの低下した転移比率のうち任意の値を含む、請求項27に記載の電気手術方法。
【請求項31】
先行パルスに比べて、増加した後続パルスのパルスエネルギープロフィールは、より高い前記RF開始値、より高い前記RF最終値、及び前記RF開始値から前記RF最終値までのより高い転移比率のうち任意の値を含む、請求項27に記載の電気手術方法。
【請求項32】
前記RF開始値から前記RF最終値までの転移は、傾斜式転移又は階段式転移のうち任意の転移を含む、請求項27に記載の電気手術方法。
【請求項33】
それぞれ事前設定された持続期間を有するパルスからなり、事前設定された傾斜比率で事前設定されたRF最終値まで増加する事前設定されたRF開始値を含むプロフィールを有する最初のパルスから開始する一連のパルスを含む縫合サイクルで、電気手術装置から対象組織にエネルギーを伝達するステップと、
後続パルスに先行するパルス又は最終パルスであるそれぞれのパルスの間中に、組織のインピーダンス値を検出するステップと、
RF設定点に対する第一インピーダンス閾値、累積時間に対する第二インピーダンス閾値及びエネルギー削減に対する第三インピーダンス閾値を含む三つの事前設定されたインピーダンス閾値のそれぞれと被検出インピーダンス値とを比較するステップと、
前記被検出インピーダンス値と三つの前記インピーダンス閾値との間の比較に応じて、前記第二インピーダンス閾値を超えるインピーダンス値が組織に示される累積時間が事前設定された縫合サイクル持続期間の限度に到逹するときに縫合サイクルが中断されるように、縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するステップと、
を含み、
前記縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するステップは、
先行パルスの終了時点の前記被検出インピーダンス値が前記第一インピーダンス閾値より小さいとき、後続パルスが前記最初のパルスと同一のパルスプロフィールを有するように当該後続パルスに対するエネルギーの伝達を制御するステップと、
パルス途中の任意の時点の前記被検出インピーダンスが前記第三インピーダンス閾値を超えるとき、エネルギー伝達を削減するステップと、
を含み、
前記第二インピーダンス閾値は前記第一インピーダンス閾値より高く設定され、前記第三インピーダンス閾値は前記第二インピーダンス閾値より高く設定されている、人間以外の生物を対象とする電気手術方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年3月26日に出願されたもので、発明の名称が「電気手術のためのインピーダンス媒介電力伝達{IMPEDANCE MEDIATED POWER DELIVERY FOR ELECTROSURGERY}」であるコス(Koss)などの米国特許出願第12/748,229号の部分継続出願である。
【0002】
本明細書に言及された全ての公開及び特許出願は、それぞれの公開又は特許出願が具体的及び個別的に援用されたことが明示された限度まで本出願に援用される。
【0003】
本開示は、電気手術技術のためのシステム及び方法に関する。より詳細には、本技術は、組織縫合用電気手術システム及び方法のための電力伝達のインピーダンス―媒介制御に関する。
【背景技術】
【0004】
両極電気手術器具は、組織を切開、除去又は凝固するために手術部位に高周波(RF)電流を印加する。これら電気手術効果の特定の用例は、血管や胃腸部位などの内腔構造又は組織のエッジを縫合することである。一般的な電気手術器具は、鉗子(forceps)の形態をとり、鉗子の両側ジョー(jaw)には電極が配置される。電気手術過程において、電極は、ジョーが目標部位に近づくときに互いに非常に近接するように配置されることによって、二つの電極間の電流通路が目標部位内の組織を通過するようになる。ジョーによって印加される機械的力と電流とが結合され、望ましい手術効果を創出する。
【0005】
ジョーによって印加される機械的圧力のレベルと電極間の間隙距離、そして、組織に印加される電気手術エネルギーの強度、頻度(frequency)及び持続期間を制御することによって、外科医は、治療目標に向かって組織を凝固、焼灼又は縫合することができる。電気手術エネルギーの伝達を制御する一般的な目的は、より詳細には、対象縫合部位内に所望の効果を得るために要求されるもので、それ以上でもそれ以下でもない正確な量のエネルギーを印加すると同時に、目標部位周辺の細胞に対する不利な影響を最小化することである。細胞が高周波エネルギーなどのエネルギーを吸収することによって、細胞の高周波エネルギーインピーダンスが増加する。このようなインピーダンスの増加は、概して組織が治療終了点状態に向かって「処理される」程度の測定値と見なされる。 本明細書に開示されたシステム及び方法の実施例は、対象組織のインピーダンスを、対象縫合部位に印加されるエネルギーレベルを適宜制御するためのフィードバック信号として使用することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供された電気手術システム及び方法の実施例は、それぞれのパルスが事前設定持続期間を有する一連のパルス形態の縫合サイクルで電気手術装置から対象組織にエネルギーを伝達するステップを含む。一連のパルスは、それぞれのパルスの間、事前設定されたRF最終値まで事前設定された傾斜比率(ramping rate)で増加する事前設定されたRFレベル開始値を含むプロフィールを有する最初のパルスから始まる。本方法は、被検出組織インピーダンス値をプロセッサ、より具体的には、プロセッサ内部のインピーダンス比較器要素にそれぞれのパルスの間中に伝送するステップを含むことができる。それぞれのパルスは、後続パルスに先行するパルスであるか、又は縫合サイクルの最終パルスである。本方法は、RF設定点に対するインピーダンス閾値、累積時間に対するインピーダンス閾値及びエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を含む3つの事前設定されたインピーダンス閾値のそれぞれと被検出インピーダンス値とを比較するステップをさらに含むことができる。本方法は、被検出インピーダンス値とインピーダンス閾値との間の比較に応じて、縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するステップをさらに含む。
【0007】
特定の実施例において、エネルギー伝達の制御は、組織がインピーダンス累積時間閾値より大きいインピーダンス値を示す累積時間が事前設定された縫合サイクル持続期間の限度に到逹すると縫合サイクルを中断させるステップを含む。電気手術方法の実施例は、被検出組織インピーダンス値が累積時間に対するインピーダンス閾値を超えている間進行中の縫合サイクル内の累積時間を記録するステップをさらに含むことができる。
【0008】
被検出インピーダンスデータとインピーダンス閾値との間の比較に基づいて、多様な電気手術結果を示すことができる。先行パルス終了時点の被検出インピーダンス値がRF設定点に対するインピーダンス閾値より小さいとき、本方法は、後続パルスが最初パルスと実質的に同一なパルスプロフィールを有するように後続パルスに対するエネルギー伝達を制御するステップをさらに含むことができる。先行パルス終了時点の被検出インピーダンス値がRF設定点に対するインピーダンス閾値を超えるとき、本方法は、後続パルプが上昇型プロフィールを有するように後続パルスに対するエネルギー伝達を制御するステップをさらに含むことができる。このような上昇型パルスプロフィールは、パルスの開始時点に直接RF最終値まで階段式で増加(stepping up)するプロフィールを含む。また、上昇型パルスプロフィールは、先行パルスを超える比率でRF開始値からRF最終値まで傾斜式で増加(ramping up)するプロフィールを含む。
【0009】
パルス中の任意の時点での被検出インピーダンスがエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超えるとき、本方法は、エネルギー伝達を削減するステップを含むことができる。このようなエネルギー削減は即時に発生することもあり、或いは、エネルギー伝達を削減する前に、被検出インピーダンスがエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超える事前設定された累積経過時間の間(例えば、最大約2秒程度)待機するステップを含むこともできる。
【0010】
また、エネルギー伝達の削減は、RF伝達レベル又は傾斜比率のうち任意のものを低下させるステップを含むことができる。伝達されるエネルギーの量を低下させるステップは、約1ボルトと約100ボルトとの間の量だけエネルギー伝達を減少させるステップを含むことができる。代案として、伝達されるエネルギーの量を低下させるステップは、伝達されるエネルギーの一部の比率だけエネルギー伝達を減少させるステップを含むことができる。より詳細には、伝達されるエネルギーの量を低下させるステップは、被検出インピーダンスがエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超える程度に比例してエネルギーの一部の比率だけエネルギー伝達を減少させるステップを含むことができる。
【0011】
パルス持続期間とパルスのRF値と関連して、電気手術方法の多様な実施例において、RFパルスは、一般的に約0.5秒〜約10秒の範囲であり得る一定の持続期間をそれぞれ有する。一連のパルスでのパルスの数は1〜30のパルスの範囲であり得る。電気手術方法の多様な実施例において、累積縫合終了点持続期間は約0.1秒と約5秒との間である。電気手術方法の多様な実施例において、RF開始値は約25ワット〜約150ワットの範囲で、RF最終値は約50ワット〜約150ワットの範囲である。
【0012】
上述したインピーダンス閾値と関連して、本方法の多様な実施例において、RF設定点に対するインピーダンス閾値は約5オーム〜約250オームの範囲で、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値は約100オーム〜約900オームの範囲で、累積時間に対するインピーダンス閾値は約100オーム〜約750オームの範囲である。
【0013】
パルスのRF開始値からRF最終値までの転移と関連して、電気手術方法の多様な実施例において、エネルギーの伝達は、伝達されるエネルギーのレベルをパルス中に事前設定されたRF開始値から事前設定されたRF最終値まで増加させるステップを含む。一部の実施例において、パルス中のエネルギーレベルの増加は、約1ワット/秒と約100ワット/秒との間の範囲の比率で傾斜式で増加させるステップを含む。一部の実施例において、パルス中のRFエネルギーレベルの増加は一つ以上のステップを経て傾斜式で増加させるステップを含む。一部の実施例において、パルス中のエネルギーレベルの増加は、一定の比率又は変動比率で傾斜式で増加させるステップを含む。追加的な実施例において、パルス中のエネルギーレベルの増加は、パルスの開始と同時に事前設定されたRF最終値まで直接的に階段式で増加させるステップを含む。
【0014】
他の様態において、電気手術方法の実施例は、それぞれのパルスが事前設定されたパルス持続期間を有する一連のパルスを含む縫合サイクルで電気手術装置から対象組織部位にエネルギーを伝達するステップを含む。一連のパルスは、パルス中に事前設定されたRF最終値まで増加する事前設定されたRFレベル開始値を含む最初のパルスプロフィールを有する最初のパルスから始まる。本方法の実施例は、後続パルスに先行するパルスであるか、又は最終パルスであるそれぞれのパルス中に被検出組織のインピーダンス値をプロセッサに伝送するステップをさらに含む。後者の方法の実施例は、下記のような縫合サイクルの間のエネルギー伝達を制御するステップをさらに含む。すなわち(A)最初又は先行パルス中に組織に示されるインピーダンス値とRF設定点に対する事前設定されたインピーダンス閾値との間の比較により、先行パルスと関連した後続パルスのプロフィールが同一のプロフィールや、より高いエネルギープロフィールのうち任意のプロフィールを有するようにし、(B)被検出インピーダンス値がエネルギー削減用の事前設定された閾値を超えるときは、エネルギーがパルス中に削減されるようにし、(C)被検出インピーダンスが累積時間用の事前設定されたインピーダンス閾値を超えた時間の累計値が事前設定された縫合サイクル持続期間の限度まで累積されたときはエネルギーの伝達が中断されるようにする。
【0015】
後者の電気手術方法の実施例と追加的に関連して、被検出インピーダンスがRF設定点に対する事前設定された閾値を超える場合は、後続パルスのエネルギープロフィールは先行パルスのエネルギープロフィールを超え、被検出インピーダンスがRF設定点に対する事前設定された閾値より小さい場合は、後続パルスのエネルギープロフィールが先行パルスのエネルギープロフィールと同一である。
【0016】
電気手術方法の実施例と関連して、パルスのエネルギープロフィールは、RF開始値、RF最終値及びRF開始値とRF最終値との間の移行期間(transition phase)を含む。本実施例において、先行パルスに比べて低下した後続パルスのパルスエネルギープロフィールは、低下したRF開始値、低下したRF最終値及び/又はRF開始値からRF最終値への低下した転移比率のうち任意の値を含むことができる。先行パルスに比べて高くなった後続パルスのパルスエネルギープロフィールは、より高いRF開始値、より高いRF最終値及び/又はRF開始値からRF最終値へのより高い転移比率のうち任意の値を含むことができる。そして、最後に、RF開始値からRF最終値への転移は、傾斜式転移及び/又は階段式転移のうち任意の転移を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】開示された技術の一実施例に係る電気手術のためのインピーダンス―媒介RF電力伝達用システムの概略的なブロック図である。
【
図2】電気手術縫合サイクル中のRFエネルギー伝達と関連したもので、被検出インピーダンス値の比較対象であるインピーダンス閾値及びその結果による反応の概略的な表現である。
【
図3】電気手術縫合過程中のRFエネルギー伝達を制御するためのフィードバックデータとして被検出インピーダンスを使用するために開示された方法の様態を示す流れ図である。
【
図4】電気手術縫合過程中のRFエネルギー伝達を制御するためのフィードバックデータとして被検出インピーダンスを使用するためのシステム及び方法の様態を示す流れ図である。
【
図5】本方法の一実施例に係る電気手術のための電力伝達増加率に対するインピーダンス―媒介制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】本方法の実施例に係る電気手術のための電力伝達間隔に対するインピーダンス―媒介制御の代案的な一例を示すタイムチャートである。
【
図7A】本方法の実施例に係る組織インピーダンスフィードバックによって制御されるRF電力伝達プロフィールを示すタイムチャートである。
【
図7B】本方法の実施例に係るエネルギー伝達中の組織インピーダンスプロフィールを示すタイムチャートである。
【
図8】RF回路経路内の低い組織存在量を表示するインピーダンスの急速な上昇が発生することによって変更される、エネルギー伝達の間の組織インピーダンスプロフィールを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で提供される電気手術組織縫合技術は、RFエネルギーに対する組織の反応力学を電気手術過程中のエネルギー伝達を制御するためのフィードバック情報として使用することに関する。外科的に最適な組織縫合は、適切なレベルのエネルギーが最適な比率で目標部位に伝達されるときに発生する。過度に多いエネルギー又は過度に速く伝達されるエネルギーは目標部位及び周辺部の組織を損傷させることがあり、過度に少ないエネルギーは高度の無欠性縫合を達成できない。他の考慮事項は、組織縫合部位による一定量のエネルギー吸収の効果が、共にそれぞれの縫合手術で作用する変数である組織類型の細部特性及びエネルギーを収容する全体の組織体積と相関関係にあるという点である。例えば、凝固、乾燥、高周波療法又はこれらの組み合わせを行うとき、組織がRFエネルギーによって衝撃を受けたり「処理される」間、電流に対する組織のインピーダンスが増加する。インピーダンスの変化は、一般的に組織の「相(phase)」又は「状態」の変化に起因する。
【0019】
エネルギー入力と組織状態の変化率の関係は、組織成分、組織密度、水気含量、電解質含量などの要因によって影響を受ける。このような見地から見ると、最適のRFエネルギー伝達比率は、インピーダンスの増加率に反映されるもので、組織の相変化を最適の比率で誘導する比率である。インピーダンスの最適変化率は、実験的、臨床的経験を通して実証的に知ることができる。これによって、本方法の実施例で提供されるように、電気手術過程中に検出された組織のインピーダンスの変化は、対象縫合部位に対するRFエネルギー伝達比率の統制においてフィードバックとして使用するのに有利なパラメーターである。本方法の理論的根拠は、その作用原理に対する理解を促進するために提供されるが、本方法に対して特許請求の範囲を限定することもある如何なる特徴も伴わない。組織が遅い速度で処理されているときは、これを認知し、これに対応して遅い速度で組織にエネルギーを伝達することが有利であると見なされる。そして、組織が速い速度で処理されているときは、これに対応して速い速度で組織にエネルギーを伝達することが有利であると見なされる。本システムは、このように目標部位が組織の処理過程中にエネルギーを吸収し得る速度より速くならずに目標部位にエネルギーを送れるようにバランスを保つ。したがって、組織は適切な終了点まで効率的に処理され、対象組織縫合部位を越えた過剰エネルギーの拡散が最小化される。
【0020】
以下で詳細に説明するように、インピーダンス閾値は、対象組織部位に伝達される一連のエネルギーパルスを含む縫合サイクルでRFエネルギーの伝達を制御するために使用することができる。被検出インピーダンスは、後続パルスのエネルギー伝達を制御する方式及びパルス中の任意の時点でエネルギー伝達サイクルを終了する方式により、パルス途中にリアルタイムで又は予測方式でエネルギー伝達を多様に制御するために使用することができる。
【0021】
図1は、開示された技術に係る電気手術のためのインピーダンス―媒介電力伝達用システムの概略的なブロック図である。本開示の説明、実例、及び図面が主に電気手術組織縫合方法に関するものではあるが、本技術の実施例は、本方法の実施例によって作動するように適合化又は構成されたシステム及びその構成要素の任意の部分集合を含む。
図1は、電気手術が電気手術装置12によって患者の対象組織10に行われる過程を示している。高周波(RF)発生器18のようなエネルギー供給源が制御回路16によって電気手術機器に連結される。一部の実施例において、制御回路は、任意の電流及び電圧出力を調節し、これを通してRF発生器の電力出力を調節できるように作動が可能である。また、制御回路は、RF発生器の出力をステップ的に上向き又は下向きに調節することもでき、選択された傾斜度(slope)によってパルス途中に傾斜式で増加させたり、傾斜式で減少させることもできる。
【0022】
本明細書で提供される作動方法の実施例のための方法及びシステムの実施例は、単一チャンネル及び複数チャンネルの電気手術システムの両方の作動に適している。多重―チャンネルシステムは、複数の電極又は電極対に連結される複数の出力部を備えたRF発生器を含む。本明細書に説明した方法の実施例を使用する多重チャンネルシステムにおいて、発生器は、電極を個別的及び独立的に決定することができ、電極発火は、個別電極の発火を強制的に繰り返したり、隣接電極発火の順序を強制しなくても発生し得る。すなわち、それぞれの電極の発火パラメーターは、該当の電極と単独で連係した設定及び/又はフィードバックに基づき得る。
【0023】
電気手術装置が組織に及ぼす効果は、電気手術機器と連動する一つ以上のセンサーによって組織治療部位でモニターすることができる。一つ以上のセンサーによって生成される信号はセンサー回路14に連結される。センサーは、温度、インピーダンス、RF電圧、RF電流、経過時間などの環境要因及び作動パラメーターをモニターすることができる。特定の実施例において、センサーのうち少なくとも一部は組織インピーダンス及びRF電力のパラメーターをモニターする。
【0024】
センサー回路14は、プロセッサ15に伝送される出力信号を発生させる。本明細書に説明した方法の様態に係るプログラムの制御下で作動するプロセッサは、制御回路に制御信号を送ることによってRF発生器の出力を調節できるように構成される。その結果、プロセッサは、センサーによる信号発生に反応して、組織に伝達されるRF電力をリアルタイムで調節することができる。プログラムは、メモリ17に格納することができ、センサーからの信号、タイミング及び本方法の様態に係るエネルギー伝達制御に活用され得る他の情報に対する反応方式を決定するパラメーターとプロセッサを作動させるための命令とを共に含む。
【0025】
組織がエネルギーの印加によって処理されることによって、組織のインピーダンス変化をもたらす組織の相又は状態変化が発生する。提供される技術の特別な特徴は、プロセッサが制御回路を作動させる方式と、これによってセンサー回路を通してインピーダンスセンサーのような一つ以上の類型のセンサーからプロセッサに供給される信号に反応してエネルギーが組織に供給される方式である。
【0026】
より詳細には、本方法の実施例は、被検出インピーダンスを電気手術パルスプロフィールの様態変更に使用し、プロフィールの成分は、最初RF開始値、RF最終値及びRF出発値からRF最終値に至るパルス過程中のRF伝達の階段式又は傾斜式増加を含む。本明細書に使用される用語として、エネルギー出力の「ランプ(ramp)」は、エネルギー伝達パルスの開始時点の出力レベルとエネルギー伝達パルスの終了時点で達成される出力レベルとの間の差を示す一方、「傾斜度(slope)」は、より具体的に、エネルギー出力がパルス中の時間経過によって変化する比率を示す。一部の実施例では、パルスの長さがそれぞれ異なり得るが、一般的に、エネルギーは、事前に選択又は事前に設定される一定の持続期間を有し得る一連のパルスで伝達される。
【0027】
電気手術システム及び方法の実施例は、RFエネルギーのパルスに露出するとき、対象組織が示す被検出インピーダンスをモニターし、一連のパルスを含む縫合サイクル中に、インピーダンスデータを多様な事前に設定されたインピーダンス閾値と比較する。システム及び方法の実施例は、進行中のパルスのプロフィールを多様に調節することによって、直ぐ次又は後続パルスのプロフィールを調節することによって、そして、縫合サイクルが終了する時点である累積縫合サイクル終了点持続期間に向かう時間を追跡することによって、このような比較に反応する。これら多様なシステム反応は、個別RFパルス及び全体の縫合サイクル中に伝達される電力の量を含み、縫合サイクル中に電気手術システムの遂行様態を制御するための方法を一括的に示す。
【0028】
これらインピーダンス閾値は、RF設定点に対するインピーダンス閾値、累積縫合サイクル持続期間タイミングに対するインピーダンス閾値、及びエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を含む。これら三つの閾値のそれぞれに対するインピーダンス値は重畳領域を含むが、本方法の一般的な実施例の閾値は、RF設定点に対するインピーダンス閾値が最も低い閾値になり、累積縫合サイクル持続期間に対するインピーダンス閾値が中間閾値になり、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値が最も高い閾値になるように順序が定められる。以下、これらインピーダンス閾値とエネルギー伝達の制御において、これらの役割を詳細に説明する。 表1、表2、
図2、
図3 及び
図4は、インピーダンスデータがプロセッサにフィードバックされ、対象縫合部位へのエネルギー伝達を制御するために使用される方式に特に注目し、概括的な本方法の多様な様態を示す。
【0029】
一様態において、インピーダンスベースの電力制御方法の実施例は、一連のパルスに属する個別パルスのプロフィールを制御する方式に関する。本方法の実施例によって伝達される高周波パルスは、事前に設定されたRF開始値と、一般的にRF開始値より高い事前に設定された設定RF最終値とを含むプロフィールを有する。パルスの過程中に、RFエネルギーは、一般的に事前に設定された比率で開始値から最終値まで増加する。一部のパルスの場合は、以下で説明する臨界インピーダンス値に対する反応に従って、パルスが開始値から最終値まで直ぐ階段式で増加し得る。パルスプロフィールのそれぞれのパラメーターは一般的に特定の組織縫合サイクルを対象にして事前に設定されるが、それぞれのパラメーターは所定値の範囲内で調節することができる。RF開始値は、約25ワットと約150ワットとの間の範囲であり得、一般的な値は一例として約50ワットである。RF最終値は、約50ワットと約150ワットとの間の範囲であり得、一般的な値は一例として約150ワットである。エネルギーがRF開始値からRF最終値まで増加し得る傾斜比率又は傾斜度は約1ワット/秒と約100ワット/秒との間の範囲であり得、一般的な値は一例として約50ワット/秒である。
【0030】
RF設定点に対するインピーダンス閾値は、一般的に三つのインピーダンス閾値のうち最も低い。この性能制御媒介閾値は、約5オームと約250オームとの間の範囲の事前設定値を有し、一般的な値は一例として約50オームである。本システムの一部の実施例は、パルス終了時点の組織インピーダンス(又は最大値)とこの閾値とを比較し、パルスの最終インピーダンスがRF設定点閾値未満であるか、それともRF設定点閾値を超えるかによって後続パルスのプロフィールを二つの経路のうち一つに向かわせるように構成される。(先行パルスの)最終―パルスインピーダンスがこの閾値に達しない場合、後続パルスは先行パルスと同一のプロフィールで作動する。
【0031】
(先行パルスの)最終―パルスインピーダンスがRF設定点に対するインピーダンス閾値を超える場合、後続パルスは、より高いエネルギーレベルのプロフィールで作動し得る。上昇型エネルギープロフィールは、電力によって倍加されるパルス持続期間の積分値を増加させる任意の方式を通して発生し得る。例えば、一実施例で、パルスは、RF開始値で開始され、RF最終値まで(減衰型ランプなく)直接的に増加し得る。他の実施例では、パルス中のエネルギー伝達の傾斜度が増加し得る。他の実施例では、RF開始値又はRF最終値が増加し得る。
【0032】
累積縫合時間持続期間に対するインピーダンス閾値は、一般的にRF設定点閾値より高い。一部の実施例において、この性能制御媒介閾値は約100オームと約750オームとの間の範囲の事前設定値を有し、一般的な値は一例として約250オームである。電気手術過程中に、本方法の様態に係る一連のパルスによってエネルギーが伝達されることによって、対象組織のインピーダンスは増加する。この増加は、一般的に特定の治療目的を充足させるのに適したレベルに至るRFエネルギーによる組織「処理」を反映するものと理解される。したがって、組織に示されるインピーダンスは、組織処理の標識と見なすことができ、最適レベルの処理は、最適持続期間の時間の間、最適レベルのRFエネルギーの吸収によって行われると見なすことができる。これによって、本システム及び方法は、これに到達するとき、RFエネルギー伝達の中断をもたらす累積時間持続期間に対するインピーダンス閾値での累積時間を記録することを指向することができる。エネルギー伝達の中断は、事前に設定された縫合時間持続期間が累積されるとき、RFパルス中に直ぐ発生し得る。本方法の実施例に係る累積縫合終了点持続期間は約0.1秒と約5秒との間の範囲であり得る。
【0033】
エネルギー削減に対するインピーダンス閾値は、一般的に三つのインピーダンス閾値のうち最も高い。一部の実施例で、この性能制御―媒介閾値は、約100オームと約900オームとの間の範囲の事前設定値を有し、一般的な値は一例として約700オームである。RFパルス中に判読される高いインピーダンスレベル(
図8参照)は、装置の鉗子間の電気手術空間に少量の組織が存在することによる結果と見なすことができる。結局、鉗子間のRFエネルギーの伝導を許容するものは組織である。組織が全く存在しない場合、回路内のインピーダンスは実質的な見地で無制限又は無限である。少量の組織が存在する場合、インピーダンスは無限ではないが、速い速度で非常に高くなり得る。例えば、組織又はその一部の量が鉗子間に存在する対象組織の一般的な寸法に比べて特に薄い場合は、少量の組織が存在し得る。また、鉗子のチップ間に組織が全く存在しない空間があり得る。電気手術システムは、エネルギー伝達レベルを削減することによって高いインピーダンスイベントに反応することができる。したがって、本システムの実施例は、高いインピーダンスレベルが組織に示される時間の量を記録するように構成されたタイマーを含み、事前設定された累積時間量の累積と同時に、本システムは、伝達されるエネルギーの量を削減することによって反応する。
【0034】
本方法の実施例に係るエネルギー削減は、伝達されるエネルギーパルスのプロフィールを減少させることによって発生する。このようなエネルギー削減は、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超えるとき、パルス中の任意の時点で即時に発生し得る。本方法の代案としての実施例で、エネルギー削減は、事前設定された遅延の経過後に発生し得る。他の実施例で、エネルギー削減は後続パルスで開始することができる。一定量のエネルギー削減は、エネルギー伝達レベルを削減したり、パルス中のエネルギー増加率を減少させることによって発生し得る。多くの方式のうち一つ以上は、エネルギー伝達レベルを下向きに調節することができる。例えば、エネルギー伝達は、絶対量のワット数又は電圧だけ低下し得る。代案として、エネルギー伝達のレベルは、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超える瞬間に伝達されるエネルギーレベルの一部の比率だけ低下し得る。他の変形例で、エネルギー伝達のレベルは、被検出インピーダンスとRFエネルギー削減に対するインピーダンス閾値との間の差に対応する分量だけ低下し得る。ただし、本方法の原理を理解する目的で言及され得る点は、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値の超過を含む異例的に速いインピーダンスの増加は、正常な量の組織でない少量の組織が伝達されるエネルギーを全部吸収し、その結果、望ましい速度より速く処理されていることを示す。
【0035】
図2は、電気手術過程中のエネルギー伝達を制御するために本方法の様態に使用される三つのインピーダンス閾値と、エネルギー伝達を制御するシステム構成要素に返送される被検出インピーダンスデータから帰結する結果の図式的な概要を提供する。インピーダンス閾値は、上昇するオーム値の軸に並んで、図面の左側に配列されている。インピーダンス閾値1はRF設定値に関するもので、インピーダンス閾値2は累積時間に関するもので、インピーダンス閾値3はエネルギー削減に関するものである。図面の右側には、これら閾値によって括弧で囲まれた範囲内に属するもので、パルス中に検出されるインピーダンス値によるエネルギー伝達結果が示されている。これらエネルギー伝達結果は、(インピーダンスの検出が行われる時点である)先行パルスの次に来るパルスと関連したり、パルス中のエネルギー伝達に対する即時のリアルタイム結果と関連する。
【0036】
図2を継続して参照すると、最低閾値で開始し、RF設定点に対するインピーダンス閾値に至る、図面右側の括弧区間201は、この閾値以下に属する被検出インピーダンス値(一般的に時間パルスの終了時点のインピーダンス)が後続パルスのエネルギー伝達プロフィールを同一に維持又は減少させることを示している。このような減少は、後でプロフィールが一定に維持される一回性イベントであり得るか、このような減少がそれぞれの後続パルスに継続することもある。上述したように、プロフィールは、RF設定点を下向きに調節したり、パルス中のRFエネルギーの増加の比率を減少させることによって減少し得る。
【0037】
図2を継続して参照すると、最低括弧区間201上の次の括弧区間202がRF設定点に対するインピーダンスからエネルギー削減に対するインピーダンス閾値まで上向きに延長される。図面の右側は、被検出インピーダンス(一般的に時間パルスの終了時点のインピーダンス)が本区間に属していた先行パルスの次に来るエネルギーパルスのプロフィールが上昇型プロフィールで伝達されることを言及している。このような増加は、以後のプロフィールが一定に維持される一回性イベントであり得るか、このような増加がそれぞれの後続パルスに継続することもある。上述したように、プロフィールは、RF設定点の上向きに調節したり、パルス中のRFエネルギーの増加比率を増加させることによって増加し得る。
【0038】
図2をさらに継続して参照すると、括弧区間203がエネルギー削減用閾値上に最大インピーダンスに向かって延長される。パルス途中の任意の時点に発生する被検出インピーダンスがこの括弧区間に属する場合は、エネルギーの伝達がパルスの進行中に削減される。一部の実施例では、エネルギーが即時に削減される一方、他の実施例では、エネルギーが数秒程度の遅延後に削減される。この遅延は、発生時、高いインピーダンスイベントがインピーダンスセンサーからの過渡(transient)信号や誤った信号に起因したものではなく、実際的でかつ持続的であることを確認するためのものである。
【0039】
図2を最後に参照すると、大括弧区間204は、累積時間に対するインピーダンス閾値の上部範囲にある被検出インピーダンス値を包括する。被検出インピーダンス値がこの閾値上に上昇するので、タイマーが開始され、インピーダンス値がこの閾値より高い間に継続して作動する。エネルギーが削減されるときに発生し得るように、インピーダンスがこの閾値未満に低下すると、タイマーは時間累積を中断する。インピーダンスが再び増加して閾値を超えると、タイマーは再び時間を累積する。縫合サイクルの事前設定された累積時間持続期間の累積と同時に、サイクルの間のエネルギー伝達は中断される。
【0040】
図3は、電気手術縫合過程中のRFエネルギーの伝達を制御するためのフィードバックデータとして被検出インピーダンス値を使用するための方法の要素を示す流れ図である。最初のステップ198で、エネルギーは、一連のパルスで対象組織部位に伝達され、このとき、それぞれのパルスは、被検出インピーダンスデータに反応して後続パルスで調節されたり、又は調節されないプロフィールを有する。第2のステップ199で、被検出インピーダンスデータがシステム内のインピーダンス閾値比較器に伝送される。第3のステップ200で、被検出インピーダンスデータが、(1)RF設定点に対するインピーダンス閾値、(2)事前設定された縫合サイクル持続期間の累積タイミングに対するインピーダンス閾値、及び(3)パルス中の任意の時点でのエネルギー削減に対するインピーダンス閾値と比較される。
【0041】
比較器内で進行されるこれら比較の結果(
図3)として、多くの結果のうちいずれか一つが生じ得る。被検出インピーダンスがインピーダンス閾値(1)未満である場合201、後続パルスのプロフィールは維持又は減少する。被検出インピーダンスがインピーダンス閾値(1)より大きい場合202、後続パルスのプロフィールは維持又は増加する。被検出インピーダンスがインピーダンス閾値(2)より大きい場合203、事前設定された縫合サイクル持続期間に向かって時間を累積する累積タイミング機能が開始される。このような時間が事前設定された縫合サイクル持続期間に到逹すると、エネルギー伝達は即時に中断される。被検出インピーダンスがインピーダンス閾値(3)より大きい場合204、エネルギー伝達は該当のパルス中に即時に削減されたり、又は、高いインピーダンスの発生を確認するための短い遅延後に削減される。
【0042】
図4は、電気手術縫合過程中のRFエネルギーの伝達を制御するためのフィードバックデータとして検出されたインピーダンス値を使用する方法及びシステムの様態を示す流れ図である。本方法の様態は、最初のプロフィール101、上昇型プロフィール102、及び下降型プロフィール103を含むRFパルスプロフィールライブラリー及び調節器100を用いる。最初のプロフィールは事前に設定され、RF開始値、RF最終値及びこれら間の転移(傾斜式又は階段式)のパラメーター値の全部が表1に示したようなそれぞれの範囲内で変わり得る。下降型及び上昇型プロフィールのパラメーターも、全体のプロフィールが最初パルスのプロフィール101のパラメーターよりそれぞれ低いか高いということを条件にして表1の範囲によって変わり得る。
【0043】
RFパルスの伝達に先立って、RFパルス選択器110は、プロフィールライブラリーのいずれのパルスプロフィール101、102又は103を組織150に伝達するかを選択する。パルス選択器110は、閾値比較器170からの入力に基づいて選択を行う(以下を参照)。RFパルス選択器110は、窮極的に対象組織部位150に進行されるRFエネルギーパルス140を伝達するRFエネルギー発生器120の設定点を駆動する出力を有する。エネルギーが伝達されることによって、エネルギーは、閾値比較器170からのデータに基づいてリアルタイムでエネルギー伝達を減衰させ得るRFエネルギー減衰器又は削減ブロック130形態の中間メカニズムを通過する。
【0044】
対象組織部位150は、電気手術鉗子145を経てシステムによって伝達されるRFエネルギー140の受容体であると同時に、システムに返送されてメモリに格納され、閾値比較器170に代表されるプロセッサによって処理されるインピーダンスデータ160の供給源である。閾値比較器は、対象組織からの被検出インピーダンスデータに対する絶え間ない監視を行い、これらデータを、
図2に概説し、かつ、本方法の実施例の概略的な要約で説明するような三つの特定のインピーダンス閾値と比較する。
【0045】
要約すると、これらインピーダンス閾値は、RF設定点171に対するインピーダンス閾値、パルス持続期間累積タイミング172に対するインピーダンス閾値、及びエネルギー削減173に対するインピーダンス閾値を含む。RF設定点閾値に対するインピーダンスデータの比較171結果は、概して入力されるデータに反応して後続パルスのために上昇プロフィール102や下降プロフィール103を割り当てるプロフィール選択器及び調節器110に進行されることを確認することができる。累積時間に対するインピーダンス閾値に対するインピーダンスデータの比較172結果は、RFエネルギー発生器/伝達器ブロック120に進行され、累積時間が事前設定持続期間より小さい場合は、ブロック120がRFエネルギーを発生させ得る。累積時間が事前設定縫合サイクル持続期間に到達するとき、ブロック120からの追加的なエネルギー伝達は中断される。インピーダンスデータとエネルギー削減173のインピーダンス閾値との間の比較結果は、RFエネルギー減衰器削減ブロック130に進行される。インピーダンスの比較173を通して得たデータが、インピーダンス値がエネルギー削減に対するインピーダンス閾値より小さいことを示す場合、エネルギー伝達は減衰なしに進行される。インピーダンス比較173を通して得たデータが、インピーダンス値がエネルギー削減に対するインピーダンス閾値より大きいことを示す場合、エネルギー伝達はリアルタイム減衰を経て進行される。
【0046】
一部の実施例で、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超える組織インピーダンスに反応して、エネルギーは、高いインピーダンスが示される間に伝達されるエネルギーの総量に比例する量だけ削減される。一部の実施例で、エネルギーが削減される分量は、被検出インピーダンスがエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超える比例量と関連し得る。例えば、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値が300オームで、被検出インピーダンスが(300オームの閾値より50%大きい)450オームであると、エネルギー伝達は50%だけ削減され得る。この比例的なエネルギー削減過程の一部の実施例では、被検出インピーダンスがエネルギー削減用閾値を超える程度を即時に追跡するエネルギー削減に反応して、削減が継続してリアルタイムで行われる。
【0047】
表1は、開示された方法の様態に係る電気手術組織縫合過程中の被検出組織インピーダンスと高周波エネルギーの伝達に連係する多様なパラメーターの値を要約したものである。(RF値及びインピーダンス閾値)範囲内で選択した特定の値がいずれかの特定の電気手術過程のために事前に設定されて固定されるが、この事前設定値は範囲内で調節可能である。
【0049】
表2は、先行パルス中の被検出組織インピーダンスによって制御される、先行パルスの次に来るRFパルスのプロフィール及び例示的な縫合サイクル中の被検出インピーダンス値に対する他のシステム反応を要約したものである。
【0051】
以下では、検出インピーダンスが電気手術組織縫合サイクル中にRFエネルギーの伝達を制御する方法の実施例が要約されている。
【0052】
1.事前に設定された最初RF開始値でパルスによる縫合サイクルを開始する。電力がRF最終値に到逹するまで、事前に設定された最初のRF傾斜比率でパルス中に電力を傾斜式で増加させる。事前設定されたパルス持続期間の持続期間の間、該当の電力レベルを継続して維持し、続いて、エネルギー伝達を中断してパルスを終了する。
【0053】
2.RF最初のパルスと全ての後続パルスにわたって被検出組織インピーダンスデータを持続的に入手する。一切の被検出インピーダンスデータは、プロセッサが接近するメモリに格納される。本方法の多様な様態で、パルス中の任意の時点で入手した被検出インピーダンスデータは、三つのインピーダンス閾値のうち一つ以上と比較される値として使用することができる。本方法の一部の様態では、パルス終了時点の被検出インピーダンスがインピーダンス閾値との比較に使用される特定値である。
【0054】
3.パルス中の全ての時点で入手した被検出インピーダンス値を(a)インピーダンスRF設定点閾値、(b)累積タイミング閾値に対するインピーダンス閾値、(c)インピーダンスエネルギー―削減閾値と持続的に比較する。この比較結果によって定められる次のオプション4A、4B、4C又は4Dに従って縫合サイクルを進行させる。
【0055】
4A.先行パルスの終了時点で、被検出パルス最終インピーダンス値がRF設定点に対するインピーダンス閾値より小さい場合は、後続パルス中に先行パルスと実質的に同一なパルスプロフィールでエネルギーを伝達する。縫合サイクルは、4Cと同様に、事前設定された縫合時間持続期間が達成されるまでこのような方式で進行される。
【0056】
4B.パルスの終了時点で、被検出パルス最終インピーダンス値がRF設定点に対するインピーダンス閾値より大きい場合は、先行パルスより高いパルスプロフィールで後続パルス中にエネルギーを伝達する。本方法の一部の実施例で、パルスプロフィールの増加は、最初のパルスに後続するパルスの間一度だけ発生する。本方法の一部の実施例で、パルスプロフィールは、(最初のパルスに一般的な傾斜式増加によるものでなく)RF開始値からRF最終値まで直ぐ階段式で上昇されることによって増加する。縫合サイクルは、4Cと同様に、事前設定された縫合時間持続期間が達成されるまでこのような方式で進行される。
【0057】
4C.任意のパルス中の任意の時点で、被検出インピーダンスが累積縫合時間に対するインピーダンス閾値を超える場合は、タイマーが開始され、事前設定された縫合時間持続期間の間作動する。被検出インピーダンスがこの閾値以下に低下する場合、累積タイマーは時間記録を中止する。事前設定された縫合時間持続期間の完了と同時に、エネルギーの伝達が中断され、その結果、縫合サイクルが終了する。
【0058】
4D.任意のパルス中の任意の時点で、組織インピーダンス値がエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超える場合、伝達されるエネルギーのレベルは削減される。一部の実施例で、エネルギーは即時に削減され、他の実施例で、エネルギーは事前設定されたエネルギー削減時間経路に沿って削減される。エネルギー削減に続いて、エネルギー削減に対するインピーダンス閾値を再び超えたり、4Cと同様に、事前設定された縫合持続期間時間が達成されることによって、エネルギー伝達が中断されるまで縫合サイクルが進行される。
【0059】
図5〜
図8は、本明細書に提供された電気手術組織縫合方法の様態に対する例と説明を提供する。
図5は、それぞれの持続期間が3秒と事前に設定される一連の四つのパルス40、42、44、46で発生するもので、インピーダンス―媒介電力伝達ランプの例を示すタイムチャートである。表1から分かるように、パルス間隔の長さは必ずしも3秒ではないとしても、約0.5秒〜約10秒の範囲で事前に設定することができる。本方法の実施例で、パルス(又はパルス間隔)の持続期間はいずれも同一である。本方法の代案的な実施例で、パルス持続期間又は間隔の長さは、事前に設定されたスケジュールによって、又は、縫合サイクル中に行われるインピーダンス閾値と被検出インピーダンス値との間の比較に反応してそれぞれ変化し得る。パルスの持続期間が縫合サイクル中に変化する場合、パルスは、サイクル中に長さが増加又は減少するように事前に設定し得るか、任意の事前設定パターンで増加又は減少し得る。パルスの長さが被検出インピーダンス値に反応して変化する場合は、長さが任意のパターンで増加又は減少し得る。
【0060】
図5に提供された例で、伝達されるエネルギーの総量は、後続パルスに行くほど減少している。第1のランプ間隔40の傾斜度は、最初の急な部分、緩やかな中間部分及び実質的に平らな三番目の部分を含む。パルスが終了すると、エネルギーが低減し、次のランプが開始される。本方法の実施例で、それぞれのランプの傾斜度は、先行パルス中の組織インピーダンスの変化率に反応してリアルタイムで調節される。第2のランプ42の傾斜度は第1のランプ40より緩やかな最初の部分を含み、第3のランプ44の傾斜度は、それに先行するランプ42の最初の部分より緩やかで、第4のランプ46の最初の傾斜度は遥かに緩やかである。それぞれのランプの下の面積はランプ中に組織に供給される総エネルギーを示す。したがって、この例で、印加されるエネルギーの量は後続パルスに行くほど減少する。システム及び方法の他の実施例で、傾斜式で増加するRF値とこれら間の傾斜度は、被検出インピーダンス値と関係なく変化し得る。それぞれのパルスで伝達されるエネルギーが漸次減少した後、エネルギー伝達が変動なく維持されるこのようなパターンは、被検出インピーダンスがRF設定点に対するインピーダンス閾値以下に低下する電気手術縫合サイクルにおいて一般的である。
【0061】
図6は、本方法の一様態によって作動する一連の三つのパルス50、52、54で発生するもので、インピーダンス―媒介エネルギー伝達ランプの例を示すタイムチャートである。
図5では、最初のエネルギーランプ50が組織に供給される。この場合、組織インピーダンスの判読及びインピーダンス閾値との比較に反応して、最初パルスに後続するパルスプロフィールの増加が提供される。一旦所望のインピーダンスに到逹すると、パルス52、54で組織に供給されるエネルギーは、所定時間間隔の間望ましいレベルで維持される。それぞれのパルスで伝達されるエネルギーが漸次増加した後、エネルギー伝達が変動なく維持されるこのようなパターンは、被検出インピーダンスがRF設定点に対するインピーダンス閾値を超える電気手術縫合サイクルにおいて一般的である。
【0062】
図7A及び
図7Bは、本方法の一様態によって提供されるような、一連の四回の3秒パルスで発生するもので、電気手術縫合過程の基礎をなすイベントの様態を示す同伴図である。
図7Aは、手術中に伝達されるRFエネルギーパルスのプロフィールを示す一方、
図7Bは、同時に発生する組織インピーダンスプロフィールに焦点を合わせている。それぞれのパルスの長さはRFパルス持続期間として表記されており、それぞれの縫合に許容されるパルスの最大数は最大RFパルス回数として表記されている。次のイベントは、本電気手術組織縫合過程の例中に発生する。
【0063】
1.組織縫合手術のための第1のRFパルスがRF設定点開始値として表記された電力レベルで開始される(
図7A)。
【0064】
2.RF電力レベルは、該当の電力レベルがRF設定点最終値として表記された上側のレベルに到逹するまでRF設定点開始値で出発し、事前設定されたRF傾斜比率で増加する。RF電力レベルは、3秒パルス時間の終了時点に到達するまでこの値に留まる(
図7A)。
【0065】
3.それぞれのパルスの終了時点で、被検出組織インピーダンス値が測定され、RFパルス最終インピーダンスとして記録され(
図7B)、続いて、電力レベルが0に設定される(
図7A)。
【0066】
4.第1のパルスに後続する全てのパルスに対して、次のような評価が行われる(
図7A及び
図7B)。
【0067】
a.RFパルス最終インピーダンスがRF設定点の閾値より小さいと、伝達されるRF電力は第1のパルスと同一の比率で傾斜式で増加する。
【0068】
b.RFパルス最終インピーダンスがRF設定点の閾値より大きいと、伝達されるRF電力はRF設定点最終値に直接的に階段式で増加する。
【0069】
図7Bは、エネルギー伝達の制御と電気手術過程の終了と関連した組織インピーダンスイベントの過程を示す。縫合サイクルは、組織インピーダンスが所定の累積時間に対するインピーダンス閾値に到逹するときに終了する。(故障又はエラー状況が検出されるときにも縫合サイクルが終了し得る)。累積縫合終了点持続期間値による縫合手術の終了は、次のように発生する。
【0070】
1.組織インピーダンスがRFモニタリングハードウェア回路からの信号を使用して決定される。
【0071】
2.算出された組織インピーダンスが累積時間に対するインピーダンス閾値(この例では250オーム)を超えるとき、累積終了点タイマーが開始される。算出された組織インピーダンスが累積時間に対するインピーダンス閾値以下に低下するとき(例えば、パルスが完了したとき)、終了点タイマーは停止される。したがって、タイマーは、組織インピーダンスが累積時間に対するインピーダンス閾値を超える時間の総計のみを記録する。
【0072】
3.縫合終了時間として表記された事前設定された時間量がタイマーに累積されるとき、RF伝達が中断され、システム使用者は縫合完了の通知を受けるようになり、システムは待機状態で配置される。
【0073】
図8は、少量の組織を電気手術鉗子のジョー間の対象部位内に収容するために変更される電気手術組織縫合過程の例を提供する。比較的少量の組織は、組織が特に薄いか(例えば、0.5mm以下の厚さ)、電極の部分がいずれの組織とも接触しないときに示すことができる。上述したように、組織の量が少ない状況は、一般的に高いインピーダンスレベルをもたらす。
図8に示したイベントは、一回の3秒パルス中に発生する。次のステップは、組織の存在量が低い場合に対して矯正されるように本方法の様態が調整される方式を説明する。
【0074】
1.組織インピーダンスがRFモニタリングハードウェア回路からの信号を使用して計測される。
【0075】
2.被検出組織インピーダンスがエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を超える場合、インピーダンス削減時間(この例では0.1秒)として表記された時間持続期間の間、RF伝達は、伝達されるRF電圧の減少分だけ低減される(表1参照)。エネルギー伝達削減は、被検出組織インピーダンスに対する即時の低下に反映される。組織インピーダンスがエネルギー削減に対するインピーダンス閾値を再び超える場合、RF電圧は再び低減される。
【0076】
3.被検出組織インピーダンスが累積時間に対するインピーダンス閾値(この例では250オーム)を超える場合、終了点タイマーが作動する。所定の時間、すなわち、終了タイマーによって記録される縫合終了点時間(本例では1.5秒)が完了すると同時に、電気手術過程又は縫合サイクルは終了する。
【0077】
他に明示されない限り、本明細書に使用された全ての技術用語は、電気手術技術分野の当業者が通常的に理解するものと同一の意味を有する。特定の方法、装置及び材料が本明細書に説明されているが、本明細書に説明されたものと類似又は均等な任意の方法と材料を本発明の実施に使用することができる。本発明の実施例が例示的にある程度は詳細に説明したが、このような例示は、説明の明瞭性を目的とするものに過ぎなく、制限的な意味で意図されたものではない。多様な用語が本発明の理解を促進するために使用されたが、これら多様な用語の意味は、普通の言語学的、文法的変形又は形態にまで拡張されることは当然である。また、専門用語が装置又は装備を称する場合、これら用語又は名称は当代の例として提供され、その結果、本発明がこのような文字上の範囲によって制限されないことは当然である。後で導入されるものとして、当代の用語の派生語又は当代の用語によって包括される階層的部分集合の表記として合理的に理解され得る専門用語は、現時代の専門用語で説明されたものと理解可能であろう。また、若干の理論的考慮事項が高周波エネルギーの吸収に反応する組織の力学、組織インピーダンスと連関する結果、及び電気手術システム及び方法の最適制御を指向するこれら力学の活用に対する理解を増進するために提起されたが、本発明の特許請求の範囲はこのような理論に拘束されない。さらに、本発明のいずれかの実施例の一つ以上の特徴部は、本発明の範囲を逸脱せずに、本発明のいずれかの他の実施例の一つ以上の特徴部と結合することができる。また、本発明が例示の目的で記載された実施例に限定されるものでなく、それぞれの要素が付与された均等例の全範囲を含み、特許出願に添付される特許請求の範囲の正当な解釈のみによって限定されることは当然であると言える。