特許第5883849号(P5883849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5883849陰イオン交換樹脂を用いる二価カチオン結合タンパク質の精製方法
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  • 特許5883849-陰イオン交換樹脂を用いる二価カチオン結合タンパク質の精製方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883849
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】陰イオン交換樹脂を用いる二価カチオン結合タンパク質の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20160301BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20160301BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20160301BHJP
   C07K 14/755 20060101ALN20160301BHJP
【FI】
   C07K1/18
   !C07K14/47
   !C07K14/745
   !C07K14/755
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-506675(P2013-506675)
(86)(22)【出願日】2011年4月29日
(65)【公表番号】特表2013-525411(P2013-525411A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011056832
(87)【国際公開番号】WO2011135071
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年2月28日
(31)【優先権主張番号】61/329,487
(32)【優先日】2010年4月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare SA
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥール・ミッテラー
(72)【発明者】
【氏名】マインハルト・ハッスラッハー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・フィードラー
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0207879(US,A1)
【文献】 特表2009−538884(JP,A)
【文献】 特表2009−538885(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/073235(WO,A1)
【文献】 特開平02−200180(JP,A)
【文献】 特表平11−506603(JP,A)
【文献】 特開昭60−051113(JP,A)
【文献】 特開平10−150980(JP,A)
【文献】 特表2008−525381(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/026020(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0106779(US,A1)
【文献】 ACS Symposium Series, 1998, Vol.698, Chapter 8, pp.93-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む二価カチオン結合タンパク質の精製方法:
(a)二価カチオン非存在下でローディング緩衝液中の二価カチオン結合タンパク質を陰イオン交換樹脂物質にロードし該ロードした陰イオン交換樹脂物質を二価カチオン非存在下で洗浄緩衝液で洗浄し、
(b)該二価カチオン結合タンパク質を少なくとも1の二価カチオンを含む溶離剤で溶出し、該二価カチオン結合タンパク質を含む溶出液を形成する;
ここで工程(b)の溶離剤のpH、工程(a)の洗浄緩衝液のpHより少なくとも0.5pH単位高いpHを有し、該洗浄緩衝液中の塩の濃度は≦200mMであり、二価カチオン非存在下で少なくとも1のさらなる洗浄工程を行う
【請求項2】
工程(a)の洗浄緩衝液が、工程(b)の溶離剤の伝導度と同じかまたはそれより低い伝導度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)中の少なくとも1の二価カチオンがCa2+、Be2+、Ba2+、Mg2+、Mn2+、Sr2+、Zn2+、Co2+、Ni2+、およびCu2+、またはその組み合わせからなる群から選ばれる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該陰イオン交換樹脂物質が、ジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルアミノエタン(DMAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、第4アミノアルキル、第4アミノエタン(QAE)、および第4アンモニウム(Q)からなる群から選ばれる正荷電基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該陰イオン交換樹脂物質が、アミノヘキシル、ベンズアミジン、リジン、およびアルギニンからなる群から選ばれる第一アミンをリガンドとして保持する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該二価カチオン結合タンパク質がカルシウム結合タンパク質である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該二価カチオン結合タンパク質がビタミンK依存性タンパク質である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該二価カチオン結合タンパク質が、第IX因子、第VII因子、およびアネキシンVからなる群から選ばれる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法を実施するための手段を含むキットであって、該キットは、二価カチオン結合タンパク質を緩衝液中の陰イオン交換樹脂物質から溶出するのに適した少なくとも1の二価カチオンを含む溶離剤を含み、該緩衝液が洗浄緩衝液であり、該溶離剤が該洗浄緩衝液のpHより少なくとも0.5単位高いpHを有するものであり、該洗浄緩衝液中の塩の濃度が≦200mMである、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰イオン交換樹脂物質を用いる高純度の二価カチオン結合タンパク質の精製方法、該方法によって得ることができる二価カチオン結合タンパク質、および該方法を実施するための手段を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの哺乳動物タンパク質が、例えば該タンパク質をコードするDNAで細胞をトランスフェクトし、該タンパク質を発現させるのに好都合な条件下で該組み換え細胞を増殖させることにより、宿主細胞中で製造される。該細胞によって細胞培養液中に分泌されるか、または細胞中に存在するタンパク質は、クロマトグラフィー技術、例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどを用いて培養液および他の成分から分離することができる。さらに医薬として適用するためには純度が特に重要である。しかしながら、同時に、目的タンパク質を完全に精製した後に該タンパク質の生物活性が保存されていなければならない。
【0003】
二価カチオンにより陰イオン交換樹脂からカルシウム結合タンパク質を溶出させる概念は、ほぼ30年前に最初に報告された。ウシ第VII因子は、ウシ血漿からうまく単離されたが、ヒト第VII因子の精製は依然問題があり、生成される物質は純度が不十分であるか、またはタンパク質を検出できずに活性であると特徴づけられるほどに少量しか得られなかった。当該分野の研究者は、タンパク質を二価カチオン、すなわちクエン酸バリウムに吸着させ、次いで該タンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィーで分離することにより充分な量(収率約30%)のヒト第VII因子をヒト血漿から単離することに成功した。さらに、通常のイオン交換樹脂、例えば陰イオン交換樹脂により、二価カチオン、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、バリウムイオン(Ba2+)、およびストロンチウムイオン(Sr2+)を含む遊離剤を用いて種々の比活性を有するビタミンK依存性タンパク質を生成する細胞培養の培地からビタミンK依存性タンパク質を回収し、精製する方法が利用可能であった。
【0004】
さらに、第IX因子(FIX)を含む溶液を陰イオン交換樹脂に適用し、該陰イオン交換樹脂をFIXを該樹脂から溶出するのに必要であるより低い伝導度を有する溶液で洗浄し、次いでFIXを該陰イオン交換樹脂から二価カチオンを含む第一溶離剤を用いて溶出して第一溶出液を形成する工程を含む、溶液中の第IX因子(FIX)を精製する方法が利用可能であった。次に、該第一溶出液をヘパリンまたはヘパリン様樹脂に適用し、第2溶出液を形成し、該第二溶出液をヒドロキシアパタイトに適用して第三溶出液を形成する(なお、洗浄工程では高伝導度洗浄剤を用いる)。
【0005】
第IX因子(FIX)は、ペプチダーゼファミリーS1に属する、凝固系のビタミンK依存性セリンプロテアーゼである。FIXは、第XIa因子または第VIIa因子によって活性化されるまで不活性である。その活性化には、カルシウム、膜リン脂質、および第VIII因子が必要である。FIXの欠損は、劣性遺伝性出血性疾患のB型血友病を引き起こすが、これは、翻訳後修飾、すなわち、リン酸化および硫酸化FIXの投与によりうまく治療することができる。
【0006】
さらに、第VII因子(FVII)は、組織因子(TF)とともに凝固プロセスを開始する、凝固カスケードに重要な役割を果たすビタミンK依存性セリンプロテアーゼである。血管が損傷すると、TFは血液および循環FVIIに暴露する。TFと結合するとすぐにFVIIはFVIIa(トロンビンによる)、第Xa因子、第IXa因子、第XIIa因子、およびFVIIa-TF複合体(その基質はFXおよびFIXである)に活性化される。さらに、アネキシンVは、カルシウム依存性にホスファチジルセリンと結合して膜結合2次元結晶格子を形成する能力を有するアネキシングループの細胞タンパク質である。アネキシンVは、血液凝固、アポトーシス、食作用、および結晶膜由来微粒子の形成に役割を果たしうる。
【0007】
すなわち、本発明の根本的課題は、高純度の二価カチオン結合タンパク質の改良された精製方法を提供することである。上記技術的課題に対する解決法は、特許請求の範囲で特徴づけられた態様により達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要約)
本発明は、以下の工程を含む二価カチオン結合タンパク質の精製方法に関する:
(a)陰イオン交換樹脂物質に二価カチオン非存在下でローディング緩衝液中の二価カチオン結合タンパク質をロードし、所望により、二価カチオン非存在下でロードした陰イオン交換樹脂物質を洗浄緩衝液で洗浄し、
(b)該二価カチオン結合タンパク質を少なくとも1の二価カチオンを含む溶離剤で溶出し、該二価カチオン結合タンパク質を含む溶出液を形成する、
ここで、工程(b)の溶離剤は、工程(a)の洗浄緩衝液、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液のpHより高いpHを有する。
【0009】
さらに、本発明は、上記方法により得ることができる精製された二価カチオン結合タンパク質、および上記方法を実施するための手段を含むキットに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の詳細な説明)
ある局面において、本発明は、以下の工程を含む二価カチオン結合タンパク質の精製方法に関する:
(a)陰イオン交換樹脂物質に二価カチオン非存在下でローディング緩衝液中の二価カチオン結合タンパク質をロードし、所望により、二価カチオン非存在下でロードした陰イオン交換樹脂物質を洗浄緩衝液で洗浄し、
(b)該二価カチオン結合タンパク質を少なくとも1の二価カチオンを含む溶離剤で溶出し、該二価カチオン結合タンパク質を含む溶出液を形成する;
ここで、工程(b)の溶離剤は、工程(a)の洗浄緩衝液、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液のpHより高いpHを有する。
【0011】
本明細書で用いている用語「二価カチオン非存在下で」は、緩衝剤中の遊離二価カチオンおよびあらゆるタンパク質結合二価カチオンが存在しないことを意味するが、キレート剤、例えばEDTAと複合体になった二価カチオンは存在してもよい。
【0012】
陰イオン交換樹脂物質への二価カチオン非存在下でローディング緩衝液中の二価カチオン結合タンパク質のローディングは、当該分野で知られたあらゆる方法で行うことができる。特に、二価カチオン結合タンパク質を陰イオン交換樹脂物質にローディングするのに適した条件は当業者によく知られている。該生成物の結合を可能にするローディング緩衝液の伝導度に関する具体的条件は、タンパク質および用いる陰イオン交換樹脂物質の具体的特性(例えば、リガンド密度、リガンド提示など)に依存する。二価カチオンは、通常酸性度が高い(すなわち、負に荷電した)領域でタンパク質と結合する。負の荷電は、二価カチオンが結合するとマスクされる。しかしながら、二価カチオン非存在下で二価カチオン結合タンパク質を陰イオン交換物質にロードすることにより、例えばキレート剤、例えばEDTAにより結合した二価カチオンを除去することにより、タンパク質は、その表面に陰イオン交換リガンドとの強い結合を可能にする高度に負に荷電したパッチを有する。陰イオン交換樹脂物質にタンパク質をロードするための条件では、通常さらにpHと対イオン(例えばCl-)の濃度のバランスが必要である。該対イオンの化学も溶出挙動に影響を与え、例えば、Cl-は1つの負荷電を有し、中性pHでホスフェートは2つの負荷電を有する。後者は、伝導度が低くてもCl-に比べてより高い溶出力を有しうる。
【0013】
本発明に用いる溶液および緩衝液の塩濃度は、典型的には20〜200mM、好ましくは100〜150mMの範囲である。
【0014】
さらに、本発明の方法の工程(a)において二価カチオン結合タンパク質を陰イオン交換物質にロードするための、二価カチオン結合タンパク質が陰イオン交換物質と結合する条件をもたらす適切なローディング緩衝液は、当該分野でよく知られている。例えば、該ローディング緩衝液は、pHが≦pH7.4、好ましくは≦pH7.0、より好ましくは≦pH6.5、最も好ましくは≦pH6.0であり得る。該ローディング緩衝液は、二価カチオン結合タンパク質の陰イオン交換樹脂物質との結合に適したあらゆる塩濃度を含むことができ、これは当業者により容易に決定することができる。好ましい態様において、該ローディング緩衝液は、キレート剤、例えばEDTA、好ましくは2mM EDTAを含みうる。本発明の方法において該陰イオン交換樹脂物質に適用することができる二価カチオン結合タンパク質を含むローディング緩衝液は、例えば20mM Tris(トリス)、150mM NaCl、および2mM EDTAを含みうる。
【0015】
本発明の方法は、所望により二価カチオン非存在下で該ロードした陰イオン交換樹脂物質を洗浄緩衝液で洗浄する工程を含む。この洗浄工程は、当該分野で知られたあらゆる方法で行うことができる。二価カチオン結合タンパク質を実質的に溶出させずに陰イオン交換物質から不純物を洗浄除去するのに適した洗浄緩衝液は、当該分野でよく知られている。例えば、該洗浄緩衝液は、pH≦pH7.4、好ましくは≦pH7.0、より好ましくは≦pH6.5、および最も好ましくは≦pH6.0でありうる。該洗浄緩衝液は、当業者が容易に決定することができる、相当量の二価カチオン結合タンパク質を溶出させずに陰イオン交換樹脂物質を洗浄するのに適したあらゆる塩濃度を含みうる。例えば、該洗浄緩衝液は、適切な緩衝剤、例えば、TrisまたはMES、好ましくは20mM Trisまたは20mM MESなどを含みうる。さらに、該洗浄緩衝液は、キレート剤、例えばEDTA、好ましくは2mM EDTAなどを含みうる。さらに、該洗浄緩衝液は、洗浄緩衝液の伝導度を調節するための適切な塩、例えばNaClなどを含むことができ、該塩は、≦200mM、好ましくは100mM〜200mM、より好ましくは150mM〜200mM、より好ましくは170mM〜190mM、および最も好ましくは175mM〜185mMの濃度で存在しうる。本発明の別の好ましい態様において、該洗浄緩衝液は、100〜200mM NaClを含む。該塩濃度の絶対値は、精製すべき二価カチオン結合タンパク質に依存し、当業者の知識の範囲内においてどの二価カチオン結合タンパク質が最適純度を得るために低または高塩濃度を必要とするかが決定される。
【0016】
さらに、本発明の方法は、さらに工程(a)後および工程(b)前の少なくとも1のさらなる洗浄工程を含むことができ、該さらなる洗浄緩衝液の伝導度は溶離剤の伝導度と等しいかまたは低い。このさらなる洗浄工程は、二価カチオン非存在下で行われる。ある態様において、該さらなる洗浄緩衝液のpHは7.4である。該さらなる洗浄緩衝液は、当業者に知られたあらゆる適切な塩濃度を含みうる。さらに、該さらなる洗浄緩衝液は、緩衝剤、例えば、典型的濃度5〜50mMのTris、好ましくは20mM Tris、HEPES、Tris/アセテート、ヒスチジン、Gly-Gly、MOPS、またはトリシンを含むことができ、また、溶出緩衝液より低伝導度をもたらす濃度の対イオン、例えばCl-を含むことができる。本発明の好ましい態様において、該さらなる洗浄緩衝液は、溶離剤より低い塩濃度を有する。別の好ましい態様において、該さらなる洗浄緩衝液は、キレート剤、例えばEDTA、好ましくは2mM EDTAなどを含みうる。
【0017】
該二価カチオン結合タンパク質を少なくとも1の二価カチオンを含む溶離剤で溶出し、該二価カチオン結合タンパク質を含む溶出液を形成することは、当該分野で知られたあらゆる方法により行うことができる。しかしながら、本発明によれば、工程(b)の溶離剤は、工程(a)の洗浄緩衝液、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液のpHより高いpHを有する。好ましくは、該溶離剤は、pH≧7.4、より好ましくは≧8.0を有し、工程(a)の洗浄緩衝液、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液は、pH≦7.4、より好ましくは≦7.0、より好ましくは≦6.5、最も好ましくは≦6.0を有する。ただし、工程(b)の溶離剤のpHは、工程(a)の洗浄緩衝液、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液のpHより高いpHを有する。好ましい態様において、工程(b)の溶離剤のpHは、工程(a)の洗浄緩衝液のpH、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液のpHより少なくとも0.5pH単位、好ましくは1.0pH単位、より好ましくは少なくとも1.5pH単位、最も好ましくは少なくとも2.0pH単位高いpHを有する。
【0018】
本明細書で用いている溶離剤は、当業者が容易に決定することができる相当量の不純物を溶出させずに陰イオン交換樹脂物質から二価カチオン結合タンパク質を溶出させるのに適したあらゆる塩濃度を含みうる。例えば、該溶離剤は、典型的には5〜50mMの範囲の濃度の適切な緩衝剤、例えばTris、好ましくは20mM Tris、HEPES、Tris/アセテート、ヒスチジン、Gly-Gly、MOPS、またはトリシンなどを含むことができる。該溶離剤は、洗浄緩衝液の伝導度を調節するための適切な塩、例えばNaClなども含むことができ、該塩は、≧150mM、より好ましくは≧180mM、および最も好ましくは≧195mMの濃度で存在しうる。本発明の好ましい態様において、本発明の方法に用いるすべての緩衝液の伝導度はほぼ同じである。別の好ましい態様において、工程(a)の洗浄緩衝液、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液が、工程(b)の溶離剤の伝導度と同じかまたはそれより低い伝導度を有する。
【0019】
本発明では該溶離剤は、さらに少なくとも1の二価カチオンを含む。好ましい態様において、該溶離剤は、Ca2+、Be2+、Ba2+、Mg2+、Mn2+、Sr2+、Zn2+、Co2+、Ni2+、およびCu2+、またはそれらの混合物からなる群から選ばれる二価カチオンを含む。該カチオンは、該溶離剤中に好ましくは1mM〜20mMの濃度、より好ましくは2mMの濃度で存在する。該カチオンは、アニオンとの適切な塩の形で該溶離剤中に存在する。適切なアニオンは、当業者に知られており、例えばサルフェート、ホスフェート、カルボネート、およびボレートベースのアニオン、またはそれらの混合物を含む。該二価カチオンを含む塩は、1mM〜20mM、好ましくは2mMの濃度で該溶離剤中に存在しうる。好ましい態様において、該塩はCaCl2である。特に好ましい態様において、該溶離剤は2mM CaCl2を含む。さらに好ましい態様において、該溶離剤は2mM Ca2+を含み、工程(a)の洗浄緩衝液、または洗浄工程を行わない場合は工程(a)のローディング緩衝液のpHより少なくとも0.5pH単位、好ましくは少なくとも1.0pH単位、より好ましくは少なくとも1.5pH単位、最も好ましくは少なくとも2.0pH単位高いpHを有する。
【0020】
本明細書で用いている用語「陰イオン交換樹脂物質」には特に制限はない。本発明によれば、該樹脂は、当該分野で知られている陰イオン交換クロマトグラフィーに適した以下のあらゆる物質が含まれる:例えば、アガロースベースのクロマトグラフィー物質、例えばセファロース(Fast FlowまたはCaptoなど)、ポリマー合成物質、例えばポリメタクリレート(Toyopearlなど)、ポリスチレン/ジビニルベンゼン(例えばPoros、Source)、またはセルロース(例えばCellufine)。本発明の具体的実施例において、該陰イオン交換樹脂物質は、その多糖鎖が架橋して三次元ネットワークを形成する修飾アガロースをベースにしたセファロースである。好ましい態様において、該陰イオン交換樹脂物質には、限定されるものではないが、リガンドとして第一アミンを有する樹脂、例えばアミノヘキシルセファロース、ベンズアミジンセファロース、リジンセファロース、またはアルギニンセファロースが含まれる。別の好ましい態様において、該陰イオン交換樹脂物質には、限定されるものではないが、中性pHで正荷電部分を有する樹脂、例えばアルキルアミノエタン、例えばジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルアミノエタン(DMAE)、またはトリメチルアミノエチル(TMAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、第4アミノアルキル、第4アミノエタン(QAE)、第4アンモニウム(Q)などが含まれる。特に好ましい態様において、該陰イオン交換樹脂物質は、Q-Sepharose Fast Flow(Q-Sepharose FF)である。
【0021】
本発明において該二価カチオン結合タンパク質は、あらゆる二価カチオン結合タンパク質、例えばカルシウム結合タンパク質および/またはビタミンK依存性タンパク質でありうる。好ましい態様において、該二価カチオン結合タンパク質は、第IX因子(FIX)、第VII因子(FVII)、およびアネキシンVからなる群から選ばれる。
【0022】
該二価カチオン結合タンパク質、例えば血漿由来タンパク質、遺伝子導入で製造したタンパク質、または組み換えにより製造したタンパク質などは、CHO細胞を用いるなどの当業者に知られた方法を用いて得ることができる。細胞培養からタンパク質を抽出するための分泌的および非分泌的方法は当業者によく知られている。これには、(i)遺伝子操作、例えばRNAの逆転写および/またはDNAの増幅による組み換えDNAの生成、(ii)トランスフェクション、例えばエレクトロポーレーションまたはマイクロインジェクションによる組み換えDNAの原核細胞または真核細胞への導入、(iii)該形質転換細胞の例えば連続またはバッチ培養、(iv)二価カチオン結合タンパク質の発現(例えば構成的または誘導的)、および(v)粗二価カチオン結合タンパク質を得るための、例えば培養液からのまたは形質転換細胞を回収することによる該タンパク質の単離などの当該分野で知られたあらゆる方法が含まれる。さらに、二価カチオン結合タンパク質をコードする組み換えDNA、例えばプラスミドは、組み換えDNAでうまくトランスフェクトされた細胞を選択するための選択可能なマーカーをコードするDNA配列も含むことができる。
【0023】
該タンパク質は、不純物を減らすために、例えばゲル電気泳動、クロマトグラフィー、ゲル濾過、遠心分離、濾過、沈殿、結晶化、または当該分野で知られた他のあらゆる方法により予備精製することができる。本明細書で用いている用語「不純物」は、二価カチオン結合タンパク質の製造に由来するあらゆる不純物を含み、例えば、宿主細胞タンパク質不純物、核酸不純物、ポリペプチド不純物、緩衝剤および塩不純物、細胞培養液由来の不純物、生成物関連不純物、例えばダイマーまたは断片、およびそれらの混合物が含まれうる。
【0024】
好ましい態様において、本発明の方法によって精製された二価カチオン結合タンパク質の純度は、宿主細胞タンパク質不純物に関して、総タンパク質の少なくとも95%w/w、より好ましくは少なくとも98%w/w、より好ましくは 少なくとも99%w/w、および最も好ましくは少なくとも99.5%w/w二価カチオン結合タンパク質である。したがって、好ましい態様において、精製二価カチオン結合タンパク質中の不純物の含有量は、5%w/w以下、より好ましくは2%w/w以下、より好ましくは1%w/w以下、および最も好ましくは0.5%w/w以下である。不純物のパーセンテージ値は、生成物すなわち精製二価カチオン結合タンパク質中のw/wを表し、例えばHPLCまたはELISAにより測定することができる。
【0025】
さらに、本発明組成物の別の局面において、本発明の方法によって得ることができる精製二価カチオン結合タンパク質、および本発明の方法を実施する手段を含むキットを提供する。特に、本発明は、緩衝液中の陰イオン交換樹脂物質から二価カチオン結合タンパク質を溶出するのに適した少なくとも1の二価カチオンを含む溶離剤(ここで、該溶離剤のpHは該緩衝液のpHより高い)を含むキットに関する。例えば、該キットは、本発明にしたがって陰イオン交換樹脂物質を用いて二価カチオン結合タンパク質を精製するのに適したローディング緩衝液および/または溶離剤および/または洗浄緩衝液および/またはさらなる洗浄緩衝液を含むことができる。好ましい態様において、該ローディング緩衝液、該洗浄緩衝液および/または該溶離剤は上記定義の通りである。さらに、本発明のキットは適切な陰イオン交換樹脂物質を含むことができる。
【0026】
本発明は、さらに、二価カチオン結合タンパク質を精製するための、上記の本発明の方法および/または上記の本発明のキットの使用に関する。
【0027】
本発明は、陰イオン交換樹脂物質を用いる二価カチオン結合タンパク質の効率的精製方法であって、高い生成物収率を得ると共に該タンパク質の処理関連不純物を大きく減少させることを可能にする方法を提供する。
【0028】
特に、本発明の方法は、以下の原理に基づく。一般的には、タンパク質の陰イオン交換樹脂物質との結合は低伝導度および高pH値で増加する。反対に、タンパク質の陰イオン交換樹脂物質との結合は高伝導度および低pH値で低下する。本発明の方法において、該二価カチオン結合タンパク質は、好ましくは二価カチオン結合タンパク質の構造的完全性や活性を損なわずに二価カチオン結合タンパク質の陰イオン交換樹脂物質との結合を可能にする低pHでロードおよび/または洗浄する。そのような条件で、多くのタンパク質不純物、特に二価カチオン結合タンパク質より高い等電点(pI)を有するものは陰イオン交換樹脂物質と結合せず、不純物と陰イオン交換樹脂物質との結合は大きく減少する。溶出緩衝液のpHの増加は二価カチオン結合タンパク質を含むすべてのタンパク質と陰イオン交換樹脂物質のより強い結合をもたらすので、これらの条件下では陰イオン交換樹脂物質と結合するタンパク質不純物、すなわち、低pIのタンパク質不純物は、二価カチオン結合タンパク質と同時に溶出されないだろう。本発明の方法によれば、二価カチオン結合タンパク質のみが、溶出緩衝液中に存在する二価カチオンによりそのような溶出条件下で特異的に溶出される。この文脈において、増加したpH値での陰イオン交換樹脂物質からの溶出は、上記のようにタンパク質は一般的により高いpH値で陰イオン交換樹脂物質と強く結合するので非常に特殊であることに注目すべきである。上記条件下で二価カチオン結合タンパク質を少なくとも1の二価カチオンを含む溶離剤で特異的に溶出することにより、本発明の方法は、驚くべきことに好都合に、陰イオン交換クロマトグラフィーにより一精製工程で高純度の二価カチオン結合タンパク質生成物を達成する。
【0029】
特に、本発明は、本発明の方法の工程(a)のローディング工程および/または洗浄工程と二価カチオン結合タンパク質の溶出工程の間のpHを増加させることにより精製される該タンパク質の表面荷電を好都合に修飾する。溶出工程におけるpHの増加は、不純物を該陰イオン交換樹脂物質に吸着させたままで、高pHで二価カチオンで精製すべき該タンパク質を特異的に溶出させる。特に、タンパク質は高pH値で陰イオン交換樹脂物質とより強く結合するため、高pHは、通常、陰イオン交換樹脂物質から溶出を行うには好ましくない条件である。しかしながら、本発明によれば、上記条件は二価カチオン結合タンパク質の高純度と高収率をもたらす。本発明の方法は、例えば陰イオン交換樹脂物質に中性pHで該タンパク質溶液をロードし、低下したpHで洗浄工程を行い、二価カチオンの存在下で増加したpHで生成物を溶出することにより処理関連ポリペプチド不純物の顕著な減少をもたらすことができる。低pH洗浄の代わりに、該試料は低pHですでにロードされ、次いで二価カチオン存在下で増加したpHで溶出することができる。
【0030】
記載した本発明の方法および生成物の種々の修飾および変化は、本発明の範囲と精神を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明を具体的な好ましい態様について説明したが、そのような態様に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】アネキシンVをQ-Sepharose Fast Flowで精製した後に得られた分画のSDS-PAGE。SDS-PAGE分析は、還元条件下、12%ゲルで行った。ロード、カラム、フロースルー、洗浄、および溶出分画A2〜A8をゲル電気泳動法で分析し、分離したポリペプチドを銀染色(総タンパク質染色)または抗アネキシン特異抗体を用いるWesternブロッティングにより可視化した。アネキシンVは、約36kDaの短鎖ポリペプチドであり、異なる3タイプの結合部位で二価カチオン分子を10個まで結合することができる。アネキシンVバンドの位置を矢印で示す。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は当業者のための手引きとして提供する。該実施例は、単に本発明の態様を理解し、実施するのに有用な具体的方法論を提供するものであり、本発明を制限するものと解釈すべきではない。
実施例1
rFIXのQ-Sepharose FFによる精製
【0033】
Q-Sepharose Fast Flow樹脂を2カラム容量(CV)の2M NaClで活性化し、4CVの平衡緩衝液(20mM Tris、2mM EDTA、pH7.4、伝導度約2mS/cm)で平衡化した。次に、3mM EDTAを添加した遺伝子操作CHO細胞系から得られた濾過細胞培養上清を含むFIXを、線流速約150cm/h、伝導度約13〜15mS/cmでカラムにロードした。次に、該カラムを2CVの平衡緩衝液で洗浄し、次いで5CVの洗浄緩衝液(20mM MES、2mM EDTA、175mM NaCl、pH6.0)で2回目の洗浄を行ってpH6.0で陰イオン交換樹脂物質に結合しない大部分のタンパク質不純物を除去した。溶出前に、カラムの伝導度を再度2CVの平衡緩衝液で洗浄して下げた。結合したFIXを5CVの溶離剤(20mM Tris、2mM CaCl2、180mM NaCl、pH8.0)で溶出した。表1の結果は、この手順を適用することにより純度98%の二価カチオン結合タンパク質生成物が、陰イオン交換クロマトグラフィーによる一精製工程で細胞培養上清マトリックスから得ることができた。
表1:rFIXのQ-Sepharose FFによる精製
【0034】
【表1】
実施例2
FVIIのQ-Sepharose FFによる精製
【0035】
Q-Sepharose Fast Flow樹脂を2カラム容量(CV)の2M NaClで活性化し、4CVの平衡緩衝液(20mM Tris、2mM EDTA、pH7.5、伝導度約2 mS/cm)で平衡化した。次に、9mM EDTAを添加した遺伝子操作CHO細胞系から得られた濾過細胞培養上清を含むFVIIを、線流速約46cm/h、伝導度約16mS/cmでカラムにロードした。次に、該カラムを4CVの平衡緩衝液で洗浄し、次いで5CVの洗浄緩衝液(20mM MES、2mM EDTA、170mM NaCl、pH6.0)で2回目の洗浄を行ってpH6.0で陰イオン交換樹脂物質に結合しない大部分のタンパク質不純物を除去した。溶出前に、カラムの伝導度を再度2CVの平衡緩衝液で洗浄して下げた。結合したFIXを5CVの溶離剤(20mM Tris、2mM CaCl2、180mM NaCl、pH8.0)で溶出した。表2の結果は、この手順を適用することにより純度97%の二価カチオン結合タンパク質生成物が、陰イオン交換クロマトグラフィーによる一精製工程で細胞培養上清マトリックスから得ることができた。
表2:rFIIXのQ-Sepharose FFによる精製
【0036】
【表2】
実施例3
ヒトアネキシンVのQ-Sepharose FFによる精製
【0037】
Q-Sepharose Fast Flow樹脂を4カラム容量(CV)の2M NaClで活性化し、15CVの平衡緩衝液(20mM Tris、2mM EDTA、pH7.5、伝導度約2mS/cm)で平衡化した。次に、ヒト胎盤から精製したアネキシンVタンパク質調製物にCHO細胞系から得たタンパク質ストック溶液を混合し、アネキシンの純度が20%以下のタンパク質ロードを得た。アネキシン含有タンパク質混合物に1mM EDTAを添加し、線流速約23cm/h、伝導度約4mS/cmでカラムにロードした。次に、該カラムを10CVの平衡緩衝液で洗浄し、次いで10CVの洗浄緩衝液(20mM MES、2mM EDTA、155mM NaCl、pH6.0)で2回目の洗浄を行ってpH6.0で陰イオン交換樹脂物質に結合しない大部分のタンパク質不純物を除去した。溶出前に、カラムの伝導度を再度10CVの平衡緩衝液で洗浄して下げた。結合したアネキシンを30CVの溶離剤(20mM Tris、2mM CaCl2、150mM NaCl、pH8.0)で溶出した。溶出緩衝液は洗浄緩衝液と同じ伝導度であった。得られた分画を還元条件下、12%ゲルを用いるSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。総タンパク質(銀染色)およびアネキシンV(抗アネキシンWesternブロット)について染色した、分離したポリペプチドを含むゲルを図1に示す。結果は、カラムにロードしたタンパク質混合物(ロード分画)に比べて溶出分画A2〜A4にアネキシンVが高純度で含まれることを示す。データは、陰イオン交換クロマトグラフィーによる一精製工程後に溶出分画に二価カチオン結合タンパク質が高純度で含まれうることを示す。
実施例4
【0038】
Q-Sepharose Fast Flowを用いる宿主細胞タンパク質(HCP)からFIXを精製するための種々の条件を試験した。特に、以下の条件を手順に含めた。
ラン1:ロード 中性pH、洗浄 低pH6.5、溶出 高pH7.9、伝導度 洗浄および溶出緩衝液と同じ。
ラン2:ロード 中性pH、洗浄 低pH6.0、溶出 高pH8.0、洗浄緩衝液の伝導度 溶出緩衝液より低い。
ラン2.1:ラン2と同様に洗浄の塩濃度を増加させた。
【0039】
すべての実験において、低伝導度の緩衝液で溶出する直前に2回目の洗浄を行った。すべての実験において、溶出緩衝液の伝導度はローディング緩衝液より高い。結果を表3に示す。
表3
【0040】
【表3】
実施例5
rFIXのQ-Sepharose FFによる比較精製
【0041】
本発明の方法の有益な効果を証明するために、2つの比較クロマトグラフィーランを行った。特に、浄化CHO細胞培養上清由来のrFIXをQ-Sepharose FFで以下のごとく精製した。ラン1は、本発明の方法に従って行った。すなわち、工程(b)の溶離剤のpHは工程(a)の洗浄緩衝液のpHより高いpHであった。ラン2も同様に行ったが、工程(a)のローディング/洗浄と工程(b)の溶出の間にはいかなるpHの違いもなかった。各緩衝液条件を表4に示す。
表4:2回のクロマトグラフィーrFIX精製ランの緩衝液条件
【0042】
【表4】
【0043】
得られた分画を、rFIX活性収率、rFIX抗原収率、CHO宿主細胞タンパク質(CHO HCP)の減少係数、およびrFIX比活性について分析した。CHO HCPの減少係数を溶出液中にみいだされたCHO HCPに対するロードした総CHO HCOの比として計算した。各データを表5に示す。
表5:2回のクロマトグラフィーrFIX精製ランの結果
【0044】
【表5】
【0045】
これらの結果は、本発明の方法、特にロード/洗浄と溶出間のpH変化は、夾雑宿主細胞タンパク質の減少と精製タンパク質の比活性を有意に改善することができることを示す。
図1