(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883854
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】モジュール型セントラル・インストルメント
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-514621(P2013-514621)
(86)(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公表番号】特表2013-528526(P2013-528526A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2011058659
(87)【国際公開番号】WO2011157525
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年5月22日
(31)【優先権主張番号】102010030017.9
(32)【優先日】2010年6月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391009671
【氏名又は名称】バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】フリードリッヒ ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】シャームベック ベルンハルト
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−125764(JP,A)
【文献】
国際公開第98/038059(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00900686(EP,A2)
【文献】
特開2005−091032(JP,A)
【文献】
特開2007−155613(JP,A)
【文献】
特開平10−207408(JP,A)
【文献】
特開2010−078321(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第04325721(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両関連情報が表示される丸型のディスプレイを有している、自動車両のコックピットにおけるのセントラル・インストルメントにして、
前記ディスプレイ(2)がその周縁部(2’)に明るさを自由にプログラミング可能な複数の発光手段(3)を有しており、自動車両の運転期の間に前記各発光手段(3)のオンオフ制御が可変式に行われて、時間とともに変化する光の像(3,4)が発生され、その際に、前記光の像により、自動車両および/または自動車両の各種コンポーネントの状態および/または機能に関するメッセージが提供されるセントラル・インストルメントにおいて、
前記各発光手段により形成される光の像が、仮想の垂直な対称線を形成するディスプレイの経線に関して左右対称であること、及び、
前記光の像の時間変化が、発光手段のリズミカルなオンオフ制御によってもたらされること、
を特徴とする、セントラル・インストルメント。
【請求項2】
前記各発光手段(3)が異なる色を有することを特徴とする、請求項1に記載のセントラル・インストルメント。
【請求項3】
同一色の発光手段がいずれも、それ自体として少なくとも概ね閉じたリングを形成していることを特徴とする、請求項1または2に記載のセントラル・インストルメント。
【請求項4】
前記周縁部に周縁部環状体が着脱自在に配置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセントラル・インストルメント。
【請求項5】
前記周縁部環状体が、発光体の一部を覆い隠すことを特徴とする、請求項4に記載のセントラル・インストルメント。
【請求項6】
前記周縁部環状体に目盛りが担持されることを特徴とする、請求項4または5に記載のセントラル・インストルメント。
【請求項7】
前記各発光手段のプログラミングを前記周縁部環状体の構成方式に応じて調整可能であること、および、
少なくとも一つの個別インジケータを構成するために、前記各発光手段をオンオフ制御可能であること、を特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載のセントラル・インストルメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両(自動車、オート三輪、オートバイ等)のコックピットにおける、複数の車両関連情報が表示される、丸型の、好適には円形のディスプレイを有している、モジュール型セントラル・インストルメントに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなセントラル・インストルメントは、特許文献1から知られている。
これは好適にも、走行情報やインフォテイメント情報用の高価値グラフィックス表示機能を受け持つグラフィックス・モジュールとして構成されている。ディスプレイは、フルグラフィックス液晶ディスプレイであると好適である。このディスプレイにより、走行機能やインフォテイメン機能の表示に際して高度のフレキシビリティが与えられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102006047055号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ディスプレイに表示される情報のメッセージとしての価値を高めた、冒頭に記した種類のセントラル・インストルメントを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の各特徴を具備したセントラル・インストルメントにより解決される。
単独で、または互いに組み合わせて採用することができる有利な構成形態および展開構成例は、従属クレームの対象となっている。
【0006】
本発明にしたがったセントラル・インストルメントは、円形もしくは楕円形の周縁部に沿って配置される複数の発光手段が、可変式となっているその色彩構成を利用して、ディスプレイに再現される情報をその注目度別に強調することを特色としている。ディスプレイに例えばアナログメータを使用して車速データが表示され、その瞬間値が、例えば路肩に設置された道路標識を手掛かりに画像認識システムにより検出される現在の制限速度を上回る場合は、周縁部の発光手段の色が赤一色に染まるようにするとよい。車両が制限速度内で推移している場合は、周縁部が緑一色に染まるようになっている。
【0007】
この発光手段は、LED、ELフィルム、有機LED、またはレーザであればよいが、しかしディスプレイの周縁領域そのものを、本発明に対応して色が変化するように構成してもかまわない。この場合は発生される光が直接放射されるか、または例えば光ファイバを使用して間接的に放射されるようにするとよい。
【0008】
同一色の発光手段がいずれも、それ自体として少なくとも概ね閉じた一つの円を形成している場合は、発光手段のこのリング状の構造により、様々な特殊な光の像を生み出すことができる。例えば隣接して配置される複数の発光手段を利用して、見かけ上、時計回り方向または反時計回り方向に光がディスプレイの周囲を巡るように流れるようにすることで、周回する光のウェイブを生み出すことができる。いずれの移動方向とも、光のウェイブがこれから移動する先に位置しているそれぞれの発光手段のスイッチがオンにされ、それと同時に通り過ぎようとしている光のウェイブの最後尾に位置しているそれぞれの発光手段のスイッチがオフにされる。同じ周回方向に流れる複数の光のウェイブや、逆方向に流れる二つの光のウェイブを形成することもできる。それにより、例えば走行開始時にいつでも走行可能な待機状態にあることを報せたり、特殊な危険状況について注意を喚起したりすることが可能となる。それにより、場合によってはディスプレイに表示される、エンジンなどの車載コンポーネントや冷却水の限界温度、または洗浄水、燃料などの油脂類の残量、もしくは駆動エネルギの貯蔵量に関する情報にさらに追加して、これらの特殊な状況についても光の像により車両の利用者の注意を喚起する目的で、これらの発光手段を採用する可能性がもたらされることになる。
【0009】
発光手段により形成される光の像が、ディスプレイの経線に関して左右対称である場合は、光の像により表されるそれぞれの量に関して極めて印象的な情報表示がもたらされることになる。この経線は、上から下に向かって延びる、対称線を形成する仮想線である。光の像がこの線に対して左右対称である場合は、それぞれの発光手段のリズミカルなオンオフ制御により一種の脈動効果を生じることになるが、これは、それ自体としては問題なく、車両が果たすことができる機能や、制限を受けている機能などの、車両に関する機能を表す象徴的な表現として解釈したり、あるいは例えば恣意的に作動された方向表示として解釈したりすることができる。
【0010】
周縁部環状体は、これを着脱自在とすることで交換できるようにするとよい。それにより車両の運用寿命の間に表示機能を変更することができる。それにより、ディスプレイに表示される情報に関するプログラミングの変更と抱き合わせて、例えば車速表示に代え、またはそれにさらに追加して、駆動ユニットの回転数を表示することが可能となる。これは、周縁部環状体に、ディスプレイに諸機能を表示するために用いられる一つまたは複数の目盛りを担持させた場合、およびまたは周縁部に配置された発光手段がこの周辺部環状体により部分的に覆い隠されるようにした場合は、極めて低コストで実現されることになる。
【0011】
さらにそれに加えて周縁部環状体は、特殊な表面効果を実現するためにも使用することができる。表面効果の例としては、艶消し表面、高光沢研磨仕上げ表面、多色表面、有色表面、または鏡面仕上げ表面、またはブラックパネル付き表面やガラスコーティング表面を挙げられる。
【0012】
図1および2に二通りの実施例が示されている。これらの図を利用して、本発明を詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明にしたがったセントラル・インストルメントの第1実施例を示す図である。
【
図2】本発明にしたがったセントラル・インストルメントの第2実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1の実施例においては、車両が停止状態にあるときに、いつでも走行可能な待機状態にあること、および/またはセキュリティシステムのスイッチが「オン」であることが表示されるようになっている。そのためにセントラル・インストルメント1の内部には、ディスプレイ2をオフにした状態で、周縁部2’の上側の領域に並べて配置されている赤色LED3のスイッチが交互にオンにされることによって、点灯される円弧の中心角が10°(
図1a)から40°(
図1b)へ、そこから再び10°(
図1c)へと入れ替わるようになっている。
図1a、1bおよび1cに示される光の像の交替は、60Hzの周期で行われる。
図1cの光の像から
図1aの光の像へと変わるときには、全てのLEDがオフとなる約1秒間の休止期が挟まれる。その結果もたらされる全体としての光の像は、心臓の鼓動を模したものとなっており、車両が制限付きアクティブ状態にあることをそれにより表示している。
【0015】
この機能表示においては、車両の状態が心臓の鼓動を模したシンボルで表示されるようになっている。そこでは決定的な役割を果たすパラメータを、エンジンの温度とするとよい。スタート・ストップ・モードの間も、これと同じことがいえる。このときには、車載エネルギ供給網の使用に供されるエネルギを走行の間よりも低減して、エネルギが節減されるようにしている。この状態も同様に、ゆっくりと落ち着いた脈拍により視覚化して表示される。走行前にエンジンが一般に冷間状態にあり、かつ車両が60Hzの一様な「鼓動」により表示されるいつでも使用可能な状態にある間には、まもなく走り終える頃には尽き果てることになるであろうエネルギ残量が、同じLED3の光量を落とした上に周期を30Hzに延長して表示されるようにするとよい。
【0016】
走行終了時にエンジンが暖機状態にあり、かつ再び徐々に冷えつつある場合は、エネルギ残量になおも完全に余裕がある間に、この状態が、周期を例えば90Hzに短縮して、点灯する円弧の中心角を60°に広げることで、言うなれば早く脈打つエネルギに満ちた「鼓動」を表示した後、この鼓動がエンジンの冷却の進展に伴い次第に上述のゆっくりと落ち着いた状態に移行していくような光の像によって、表示されるようにするとよい。
【0017】
最後に車両利用者は、
図2の実施例においては、特に経済的に走行しようという本人の意志に関して、アシストを受けられるようになっている。そこではディスプレイ2の周囲に沿って点灯する光の円弧4が徐々に拡大4’して、ついには完全な円4”を描くようになっている。その模様は
図2a、2bおよび2cに示されている。この円は、例えば複数の緑色LEDにより形成されている。円弧が円環状に拡大する速度は、エコノミー運転の度合いにより左右される。その時々の運転条件に対応した最小燃料消費量を、このエコノミー運転の度合いを表す尺度とした場合、実際の消費量がこの理想値に近付くほど、光の像が完全に点灯した円形に拡大する速度が速くなるようにするとよい。ほかにも消費量が異常に高い場合は、この光の像が再び円形から元の円弧に戻るようにするとよい。またディスプレイに、さらにもう一つの記号を、例えば何らかのステム記号(不図示)を追加することによって、この光の円が完全なものとなったことが表示されるようにするとよい。その場合、光の円4は再び最初から開始されることになる。運転者は走行終了時には、表示される星の数により自分の運転効率に関する情報を受け取るようになっている。それにより運転者は、表示される光の像を利用して、車両の走行可能状態の質(
図1)または運転者の運転方式の効率(
図2)に関する貴重な助言を得ることになる。
【0018】
本発明には図示されないさらにもう一つの構成形態がある。そこでは周縁部2’にマーキングが施された円形のカバーが備えられるようになっている。それにより一種の目盛りが実現されるようにして、例えば
図2に示される実施例のための、進捗率を示すプログレスバーを達成することができる。車両利用者は、完全な円の何%に既に達しているかについて、情報を受け取ることになる。
【符号の説明】
【0019】
1 セントラル・インストルメント
2 ディスプレイ
2’ 周縁部
3 発光手段
4 光の像