(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883869
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】接続装置を具備したバッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20160301BHJP
H01M 2/20 20060101ALI20160301BHJP
H01M 2/34 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
H01M2/10 M
H01M2/10 S
H01M2/10 E
H01M2/20 A
H01M2/34 A
H01M2/34 B
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-526285(P2013-526285)
(86)(22)【出願日】2011年9月2日
(65)【公表番号】特表2013-536974(P2013-536974A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】CA2011000998
(87)【国際公開番号】WO2012027836
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】12/874,798
(32)【優先日】2010年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】309005766
【氏名又は名称】バシウム・カナダ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クロード・カリニャン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・レヴェロネ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ヴァレー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・カリニャン
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ポメロ
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−243849(JP,A)
【文献】
特開2009−110855(JP,A)
【文献】
特開平11−232977(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0008929(US,A1)
【文献】
特開2004−319515(JP,A)
【文献】
特開平11−353997(JP,A)
【文献】
特開2003−123734(JP,A)
【文献】
特開平06−310123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20 − 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両又はハイブリッド車両のためのバッテリパックであって、バッテリコネクタを介して直列に接続されている複数のバッテリを有している前記バッテリパックにおいて、
前記バッテリそれぞれが、正極及び負極を有しており、
前記バッテリコネクタそれぞれが、
2つの隣り合う前記バッテリのバッテリ電極に取り付けるための一組のバッテリ電極カバーであって、前記バッテリ電極カバーそれぞれが、電気絶縁材料から作られており、受容領域と前記バッテリ電極にアクセス可能とする開口部とを有している、一組の前記バッテリ電極カバーと、
2つの隣り合う前記バッテリ同士を電気的に接続するために前記バッテリ電極カバーの前記受容領域内に挿入されている、導電材料から作られている導電性要素と、インタラプタと、を有している脱着式安全装置であって、前記導電性要素の中央部分が、前記インタラプタを貫通しており、前記インタラプタが、火工弾薬と、前記電気車両又は前記ハイブリッド車両が衝突に巻き込まれた場合に、前記導電性要素の前記中央部分を切断することによって、前記バッテリ同士の直列接続を解除するように構成されている機械式カッターとを含んでいる、前記脱着式安全装置と、
前記導電性要素を2つの隣り合う前記バッテリの前記バッテリ電極に固定するための一組の固定具と、
を備えていることを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
前記インタラプタが、電気的に絶縁されている強化プラスチック材料から作られているハウジングを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記機械式カッターが、前記導電性要素の前記中央部分と位置合わせされている楔を含んでおり、
衝突が発生した場合に、前記楔が、前記導電性要素の前記中央部分を切り離す前記火工弾薬によって動作されることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項4】
衝突を感知した前記電気車両又は前記ハイブリッド車両の電子制御ユニット(ECU)から受信した電気信号によって動作される、前記火工弾薬を爆発させるための点火装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項5】
一組の前記固定具の前記固定具それぞれが、前記バッテリ電極カバーのうち一のバッテリ電極カバーの内側に位置決めされており、
前記固定具それぞれが、金属から作られたネジ部分と、非導電性材料から作られている電気的絶縁部分とを含んでおり、
前記固定具を前記バッテリ電極に固定するために、前記バッテリ電極カバーの前記開口部を通じて作業者が前記固定具の前記電気的絶縁部分にアクセスすることができることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項6】
前記バッテリ電極カバーそれぞれが、前記バッテリ電極に取り付けられるように構成されている第1の部分と、前記受容領域を形成するために前記第1の部分に組み付けられる第2の部分とを含んでおり、
前記第2の部分が、前記固定具にアクセスするための前記開口部を有していることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項7】
前記バッテリ電極カバーそれぞれが、電気的に絶縁されているプラスチック材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項8】
前記脱着式安全装置の前記導電性要素を2つの隣り合う前記バッテリの前記バッテリ電極に接続するための一組のフレキシブルコネクタを備えていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項9】
前記脱着式安全装置を前記バッテリパックに固定するためのスタビライザを備えていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項10】
バッテリパックを形成するために複数のバッテリを直列に接続するためのバッテリコネクタにおいて、
2つの隣り合う前記バッテリのバッテリ電極に取り付けるための一組のバッテリ電極カバーであって、前記バッテリ電極カバーそれぞれが、電気的絶縁材料から作られており、前記バッテリ電極にアクセスするための受容領域と開口部とを有している、一組の前記バッテリ電極カバーと、
2つの隣り合う前記バッテリ同士を電気的に接続するための前記バッテリ電極カバーの前記受容領域内に挿入されている、導電性材料から作られている導電性要素と、インタラプタと、を有している脱着式安全装置であって、前記導電性要素の中央部分が、前記インタラプタを貫通しており、前記インタラプタが、火工弾薬と、車両が衝突に巻き込まれた場合に、前記導電性要素の前記中央部分を切断することによって、前記バッテリ同士の直列接続を解除するように構成されている機械式カッターとを含んでいる、前記脱着式安全装置と、
接続要素を2つの隣り合う前記バッテリの前記バッテリ電極に固定するための一組の固定具であって、前記固定具それぞれが、一組の前記バッテリ電極カバーのうち一のバッテリ電極カバーの内側に位置決めされており、前記固定具それぞれが、金属から作られているネジ部分と、非導電性材料から作られている電気的絶縁部分とを含んでおり、前記バッテリ電極カバーの前記開口部を通じて作業者が前記固定具の前記電気的絶縁部分にアクセスすることができる、一組の前記固定具と、
を備えていることを特徴とするバッテリコネクタ。
【請求項11】
前記脱着式安全装置の前記導電性要素を2つの隣り合う前記バッテリの前記バッテリ電極に接続するための一組のフレキシブルコネクタを備えていることを特徴とする請求項10に記載のバッテリコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2010年9月2日に出願された米国特許出願第12/874798号明細書の優先権に基づくものである。当該明細書全体が、参照によって本出願に組み込まれている。本出願は、米国のために、2010年9月2日に出願された米国特許出願第12/874798号明細書の部分的な継続出願である。
【0002】
本発明は、電気車両又はハイブリッド車両のためのバッテリパックに関し、より具体的には、バッテリパックの高電圧バッテリを接続するための装置を具備するバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0003】
電気車両のためのバッテリパックは、バッテリの正極と負極とを接続している高番手のワイヤゲージを介して、一般に直列に接続されている多数の高電圧バッテリを含んでいる。電気車両のバッテリパック全体の電圧は、バッテリ同士がすべて接続された場合に、最大400ボルトに到達する。
【0004】
バッテリパックは、作業員が高番手のワイヤゲージでバッテリ同士をすべて直列に接続することによって、一般に手作業で組み立てられる。バッテリパック全体の電圧は、新しいバッテリが接続される毎に、それに伴って高められる。バッテリパック全体の電圧が高まるに従って、バッテリ同士を接続している作業員が感電する危険性も高まる。作業員が、自身が利用する工具と高番手のワイヤゲージの操作とを通じて、バッテリの電極と接触してしまうからである。バッテリの電極を接続する場合には、バッテリの電極を電源と直接接触させないように注意しなければならない。作業員は、このような直接接触された状態から急速に離脱することができない場合があり、この場合には、高電圧状態において高電流が作業員に流れ、これにより作業員が一時的に行動不能になる場合があるからである。従って、バッテリの電極と直接接触した場合に助けに入る準備をしている補助の作業員にバッテリパックの組立を監視させることが、当該技術分野において標準的な実務になっている。
【0005】
同様に、バッテリパックを利用する場合における、ましてや利用していないバッテリパックを利用する場合における有能な作業員は、自身が危険に気付いていない作業員であるかのように注意しなければならない。好ましくは、高電圧バッテリパックは、訓練していない労働者によってバッテリを利用されないように密封されている。
【0006】
さらに、電気車両の高電圧バッテリパックは、電気車両が事故に巻き込まれた場合に危険な状態となる場合がある。状況次第で、電気車両のバッテリパックが損傷若しくは露出されるか、又は電気車両の車両フレーム若しくは他の構成部品と短絡し、これにより、乗員及び救命救護員が感電する可能性が潜在的に存在する。
【0007】
従って、電気車両のためのバッテリパックの高電圧バッテリ同士を接続するための装置であって、バッテリパックの組立及び利用の際に、並びに、緊急事態時に感電するという潜在的な危険性を低減することができる装置についてのニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術が有する欠点のうち少なくとも幾つかの欠点を改善することである。
【0009】
また、本発明の目的は、高電圧バッテリ同士を接続するための接続装置を有しているバッテリパックであって、高電圧バッテリパックの組立及び利用の際に感電するという潜在的な危険性を低減又は解消するバッテリパックを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、緊急時に高電圧バッテリ同士の接続を解除するように構成されている、高電圧バッテリ同士を接続するための接続装置を有しているバッテリパックを提供することである。
【0011】
本発明の一の実施態様では、電気車両又はハイブリッド車両のためのバッテリパックであって、バッテリコネクタを介して直列に接続されている複数のバッテリを有しているバッテリパックにおいて、バッテリそれぞれが、正極及び負極を有しており、バッテリコネクタそれぞれが、2つの隣り合うバッテリのバッテリ電極に取り付けるための一組のバッテリ電極カバーであって、バッテリ電極カバーそれぞれが、電気絶縁材料から作られており、受容領域とバッテリ電極にアクセス可能とする開口部とを有している、一組のバッテリ電極カバーと、2つの隣り合うバッテリ同士を電気的に接続するためにバッテリ電極カバーの受容領域内に挿入されている、導電材料から作られている導電性要素と、インタラプタと、を有している脱着式安全装置であって、導電性要素の中央部分が、インタラプタを貫通しており、インタラプタが、火工弾薬と、電気車両又はハイブリッド車両が衝突に巻き込まれた場合に、導電性要素の中央部分を切断することによって、バッテリ同士の直列接続を解除するように構成されている機械式カッターとを含んでいる、脱着式安全装置と、導電性要素を2つの隣り合うバッテリのバッテリ電極に固定するための一組の固定具とを備えている。
【0012】
本発明の一の実施態様では、インタラプタが、電気的に絶縁されている強化プラスチック材料から作られているハウジングを含んでいる。
【0013】
本発明の他の実施態様では、機械式カッターが、導電性要素の中央部分と位置合わせされている楔を含んでおり、衝突が発生した場合に、楔が、導電性要素の中央部分を切り離す火工弾薬によって動作される。優位には、衝突を感知した電気車両又はハイブリッド車両の電子制御ユニット(ECU)から受信した電気信号によって動作される、火工弾薬を爆発させるための点火装置を備えている。
【0014】
本発明のさらなる実施形態では、一組の固定具の固定具それぞれが、バッテリ電極カバーのうち一のバッテリ電極カバーの内側に位置決めされており、固定具それぞれが、金属から作られたネジ部分と、非導電性材料から作られている電気的絶縁部分とを含んでおり、固定具の電気的絶縁部分が、固定具をバッテリ電極に固定するためのバッテリ電極カバーの開口部を通じてアクセス可能とされる。
【0015】
本発明のさらなる他の実施態様では、バッテリ電極カバーそれぞれが、バッテリ電極に取り付けられるように構成されている第1の部分と、受容領域を形成するために第1の部分に組み付けられる第2の部分とを含んでおり、第2の部分が、固定具にアクセスするための開口部を有している。
【0016】
本発明のさらなる実施態様では、バッテリパックを形成するために複数のバッテリを直列に接続するためのバッテリコネクタにおいて、2つの隣り合うバッテリのバッテリ電極に取り付けるための一組のバッテリ電極カバーであって、バッテリ電極それぞれが、電気的絶縁材料から作られており、バッテリ電極にアクセスするための受容領域と開口部とを有している、一組のバッテリ電極カバーと、2つの隣り合うバッテリ同士を電気的に接続するためのバッテリ電極カバーの受容領域内に挿入されている、導電性材料から作られている導電性要素と、インタラプタと、を有している脱着式安全装置であって、導電性要素の中央部分が、インタラプタを貫通しており、インタラプタが、火工弾薬と、車両が衝突に巻き込まれた場合に、導電性要素の中央部分を切断することによって、バッテリ同士の直列接続を解除するように構成されている機械式カッターとを含んでいる、脱着式安全装置と、接続要素を2つの隣り合うバッテリのバッテリ電極に固定するための一組の固定具であって、固定具それぞれが、一組のバッテリ電極カバーのうち一のバッテリ電極カバーの内側に位置決めされており、固定具それぞれが、金属から作られているネジ部分と、非導電性材料から作られている電気的絶縁部分とを含んでおり、固定具の電気的絶縁部分が、バッテリ電極カバーの開口部を通じてアクセス可能とされる、一組の固定具とを備えている。
【0017】
本発明の実施例それぞれは、少なくとも1つの上述の目的及び/又は実施態様を有しているが、これらのすべてを有している必要は無い。本発明の幾つかの実施例は、上述の目的を達成させることを試みた結果であり、これら目的及び/又は本明細書には特段記載されていない他の目的を満足する場合がある。
【0018】
本発明の追加的な及び/又は代替的な特徴、態様、及び利点は、以下の発明の詳細な説明、添付図面、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0019】
本発明を一層良好に理解するために、本発明の他の実施態様及びさらなる特徴と同様に、添付図面と関連して利用される以下の発明の詳細な説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一の実施例におけるバッテリコネクタを介して直列に接続された自動車用バッテリパックの一部分を前方下側から見た斜視図である。
【
図2】バッテリコネクタを具備した、
図1に表わすバッテリパックが分解された状態を前方下側から見た斜視図である。
【
図3】
図1に表わすバッテリパックの上面図である。
【
図4】
図1に表わすバッテリパックの正面図である。
【
図5】脱着式安全装置の内部構成部品の概略図である。
【
図6】本発明の他の実施例におけるバッテリコネクタを介して直列に接続された自動車用バッテリパックの一部分を前方下側から見た斜視図である。
【
図7】バッテリコネクタを具備した、
図6に表わすバッテリパックが分解された状態を前方下側から見た斜視図である。
【
図8】隣り合うバッテリのバッテリ電極に接続する前に事前に組み立てられた、
図7に表わすバッテリコネクタを前方下側から見た斜視図である。
【
図9】隣り合うバッテリのバッテリ電極に接続されている、
図8に表わす事前に組み立てられたバッテリコネクタを前方下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、バッテリコネクタ14を介して直列に接続されている複数のバッテリ12a,12b,12c・・・を含んでいる自動車両用バッテリパック10の一部分を表わす。
図1では、バッテリ12aの正極がバッテリ12bの負極に接続されており、バッテリ12bの正極がバッテリ12cの負極に接続されている。バッテリコネクタ14それぞれが、絶縁体であるプラスチック材料から作られているバッテリ電極カバー16と、脱着式安全装置18と、脱着式安全装置18の先端を隣り合うバッテリの正極及び負極に接続するように構成されている一組の固定具20とを含んでいる。
【0022】
図2は、様々な組み立て段階におけるバッテリコネクタ14と共に、自動車用バッテリパック10の一部分を表わす。
図2では、バッテリ12aの負極22のバッテリ電極カバー16が完全に分解されている。バッテリ電極カバー16は、負極22の突出部分に嵌め込まれるように構成されている開口部17を有している第1の部分16aを含んでいる。また、第1の部分16aは、バッテリ同士が接続された場合に脱着式安全装置18が受容される受容領域21を形成している、L字状の突起19を特徴としている。バッテリ電極カバー16は、ネジ25を介して第1の部分16aに固定されている第2の部分16bを含んでいる。組立時に、第1の部分16aと第2の部分16bとが、バッテリコネクタ14の受容領域21を形成する。第2の部分16bは、固定具20を受容するための開口部23を含んでいる。開口部23の直径は、固定具20の円状中央部分32の直径に対応している。固定具20は、金属から作られているネジ部分34と、非導電性金属から作られている電気的絶縁部分35と含んでいる。電気的絶縁部分35は、ヘッド部分31と円状中央部分32と突起ストッパ33とを含んでいる。上述のように、第2の部分16bの開口部23の直径は、円状中央部分32の直径に対応しており、これにより、バッテリ電極カバー16の第1の部分16a及び第2の部分16bが組み付けられた場合に、隆起ストッパ33によって固定具20がバッテリ電極カバー16の内側に捕捉される。固定具20の金属製ネジ部分34が電気的絶縁部分35によって絶縁されるので、作業員が固定具20をバッテリの電極22に締め付ける場合に感電する危険性が存在しない。さらに、固定具20のネジ部分34がバッテリ電極カバー16の内側に捕捉されるので、作業員が固定具20の金属製ネジ部分34に触れることが防止される。
【0023】
バッテリコネクタ14の実際の接続部品は、脱着式安全装置18である。脱着式安全装置18は、例えば銅のような導電性金属から作られている導電性要素41と、インタラプタ43とを含んでいる。導電性要素41の中央部分はインタラプタ43を貫通している。インタラプタ43は、車両が衝突に巻き込まれた場合に導電性要素41の中央部分を切断するように構成されている火工装置(pyrotechnic device)である。インタラプタ43は、作動時に導電性要素41の中央部分を切断することによって隣り合うバッテリの接続を解除する機械式カッターに衝撃荷重を発生させる、小さい火工弾薬(pyrotechnic charge)を含んでいる。
【0024】
図5に表わす実施例では、インタラプタ43は、衝突事故が発生した場合に導電性要素41の中央部分53を切り離す火工弾薬55によって作動される、導電性要素41の中央部分53と位置合わせされている楔を含んでいる。衝突を検出した車両の電子制御ユニット(ECU)から受信した電気信号が、火工弾薬55を爆発させるための点火装置57を動作させ、火工弾薬55が、瞬時に楔51を導電性要素41の中央部分54に対して押圧するプレッシャープレート59に衝撃を発生させるので、これにより、導電性要素41を切断し、高電圧バッテリパック10のすべてのバッテリ12a,12b,12c等同士の電気的接続を断絶することができる。
【0025】
衝突事故が発生した際に脱着式安全装置18が作動された場合には、脱着式安全装置18がバッテリ12a,12b,12c・・・についての回路保護として機能するので、発生し得る短絡を防止することができ、バッテリパック10全体と車両フレームとの短絡を防止することができる。このことは、小さい火工弾薬55を利用することによって実施される。直列に接続されているバッテリ12a,12b,12c・・・の接続を急速に且つ安全に解除することができ、これにより、バッテリそれぞれを他のバッテリから絶縁し、バッテリパック10の電圧を最小値に至るまで効果的に低減することができる。
【0026】
図2に表わすように、脱着式安全装置18の導電性要素41は、インタラプタ43を貫通している導電性金属から成る細長片から構成されており、先端37,38それぞれが、固定具20のネジ部分34を受容するための開口部39を含んでいる。導電性要素41の中央部分55(
図5参照)は、作業員の手と導電性要素41とが直接接触することを防止することによって、バッテリ12a,12b,12c・・・同士が安全に直列接続されるために、電気絶縁性の強化プラスチック材料から作られているインタラプタ43のハウジング44の内側に捕捉されている。インタラプタ43のすべての構成部品は、電気的に絶縁されているハウジング44内に配置されている。導電性要素41の先端37,38は電気的に絶縁されていないので、2つの隣り合うバッテリ12a,12b,12cを電気的に接続するために脱着式安全装置18がバッテリ電極カバー16の受容領域21内に据え付けられた場合に、導電性金属が正極又は負極22と直接接触可能とされる。
【0027】
バッテリ電極カバー16は組み立てられ、バッテリ電極22に据え付けられる手順は、以下の通りである。第1の部分16aと第2の部分16bとが、ネジ25とバッテリ電極カバー16の内側に捕捉された固定具20と共に組み付けられる。組立体全体が、第1の部分16aの開口部17を介してバッテリ電極22に位置決めされる。バッテリ電極カバー16が、バッテリ電極22に隣接しているネジ付突出部分27に螺合されているネジ26を介して、バッテリ12に固定される。バッテリ電極カバー16がバッテリ電極22に据え付けられると、脱着式安全装置18の導電性要素41の先端37,38が、隣り合うバッテリのバッテリ電極カバー16の受容領域21内に挿入され、これにより一のバッテリの正極22を隣り合うバッテリの負極22に接続することができる。
【0028】
図3では、バッテリ電極カバー16が、バッテリ12a,12bの電極22に据え付けられており、脱着式安全カバー18が、隣り合うバッテリのバッテリ電極カバー16の受容領域21内に挿入されており、これにより、バッテリ12a,12bを電気的に直列接続することができる。固定具20の電気的絶縁部分35は、バッテリ電極カバー16の開口部23を介してアクセス可能とされる。固定具20のネジ部分34が、導電性要素41の先端37,38それぞれの開口部39内に挿入され、バッテリ電極22内部にねじ込まれ締結されるので、これにより、脱着式安全装置18の導電性要素41の先端37,38をバッテリ電極22に押圧し、隣接するバッテリ同士を効果的に且つ確実に電気的接続することができる。
図3及び
図4に表わすように、脱着式安全装置18がバッテリ電極カバー16内に据え付けられると、隣り合うバッテリ同士の間に位置決めされたインタラプタ43のみが露出した状態を維持するので、作業員の手と導電性要素41の導電性金属とが直接接触することを防止することができる。
【0029】
従って、2つの隣り合うバッテリ同士の電気的接続は、バッテリパック10が発生し得る感電から安全を確保されるように、このような直接接触から電気的に絶縁されている。
【0030】
直列に接続された多数のバッテリ備えているバッテリパック10を組み立てる際に、バッテリパック10の全電圧は、新しいバッテリそれぞれを接続するに従って高くなる。バッテリパック10の全電圧が、新しいバッテリそれぞれをバッテリパック10に追加するに従って高くなるので、上述のバッテリ同士を接続する作業員が感電する危険性が、バッテリコネクタ14を利用することによって完全に解消されない場合であっても、著しく低減される。バッテリコネクタ14が、組立の各ステップにおいて作業員を高電圧バッテリから絶縁するからである。作業員は、バッテリパック10を利用することによって、バッテリパックの組立上の安全性及び確実性を確保すると共に、バッテリパック10の導電性要素との直接接触から完全に保護される。
【0031】
衝突事故が発生した場合に、バッテリ12a,12b,12c・・・同士を接続するために利用される脱着式安全装置18によって、高電圧バッテリパック10を形成しているバッテリ同士の接続が分断され、これによりバッテリパックの電圧が最小値に至るまで低減される。脱着式安全装置18の緊急接続解除能力は、事故が発生した場合にバッテリパック10の1つ以上のバッテリ12a,12b,12c・・・と車両自体との間における短絡に起因して発生する、感電の危険性を効果的に低減することができる。
【0032】
図6及び
図7に表わすように、脱着式安全装置18は、ある程度の可撓性を組立体に付与する一組のU字状の延長コネクタ75を介して、バッテリ12a,12bのバッテリ電極カバー16に接続されているので、一組のU字状の延長コネクタ75によってバッテリ12a,12bの相対運動が吸収され、これにより、このような相対運動に起因して発生し得る応力及び変形は故障の原因となる疲労を誘発するが、当該応力及び当該変形を脱着式安全装置18の導電性要素41において実質的に低減させることができる。
【0033】
脱着式安全装置18は、延長コネクタ75を収容するために、
図1〜
図4に表わす実施例に対して約180°回転され、これにより、脱着式安全装置18の導電性要素41が、バッテリ12a,12bのバッテリ電極カバー16の僅かに前方に位置決めされる一方、脱着式安全装置18の絶縁ハウジング44が、バッテリ12a,12bのバッテリ電極カバー16同士の間に位置決めされた状態を維持している。
【0034】
延長コネクタ75は、第1の端部に、延長コネクタ75の金属導電性部分と脱着式安全装置18の導電性要素41の金属導電性部分との接続部分を覆うように構成されている絶縁性プラスチックカバー76を備えているので、バッテリ同士が接続された場合であっても、延長コネクタ75の金属導電性部分及び導電性要素41の金属導電性部分のいずれも露出することはない。
【0035】
図6及び
図7に表わすように、絶縁性ヘッドを有している固定具78が、脱着式安全装置18の導電性要素41を延長コネクタ75に固定するために利用される。その意味で、絶縁性プラスチックカバー76は、作業員が脱着式安全装置18の導電性要素41を延長コネクタ75に固定するための開口部80を含んでいる。延長コネクタ75の第2の端部82が、隣り合うバッテリのバッテリ電極カバー16の受容領域21内に挿入され、バッテリ電極カバー16の内側に捕捉されている固定具20を介してバッテリ電極に固定されているので、これにより、上述のようにバッテリ12a,12b同士を電気的に直列接続することができる。
【0036】
図6に表わすように、延長コネクタ75の中央部分は、作業者が偶発的に直接接触することを防止するために絶縁性材料で覆われたまま露出された状態を維持している。二股式スタビライザ85は、脱着式安全装置18のネック88に取り付けられており、一組の固定具86を介してバッテリ12aに固定されている。二股式スタビライザ85によって、脱着式安全装置18が、隣り合うバッテリ12a,12bのバッテリ電極カバー16同士の間に適切に且つ確実に位置決めされ、二股式スタビライザ85は、発生し得る振動を部分的に吸収するので、脱着式安全装置18を所定位置に維持すると共に長期間に亘って脱落しないようにすることができる。
【0037】
図8では、脱着式安全装置18は、延長コネクタ75に接続されており、二股式スタビライザ85は、脱着式安全装置18のネック88に嵌め込まれているので、コネクタのプレ組立体を形成している。図示の如く、可撓性を有している延長コネクタ75は、隣り合うバッテリ12a,12bのバッテリ電極カバー16の受容領域21内への挿入を容易にするために湾曲される。
【0038】
図9では、コネクタのプレ組立体90の湾曲された延長コネクタ75の第2の端部82は、隣り合うバッテリのバッテリ電極カバー16の受容領域21内に挿入され、延長コネクタ75の第1の端部に配設された絶縁性プラスチックカバー76は、延長コネクタ75が湾曲されているので、バッテリ電極カバー16の固定具20と干渉しない。その後に、固定具20は、延長コネクタ75をバッテリ12a,12bの電極に固定するために締め付けられる。そして、固定具20の締付中に、固定具20は、バッテリ電極カバー16内部に突出する。固定具20がバッテリ電極カバー16の内側に位置し、延長コネクタ75の絶縁性プラスチックカバー76と干渉しなくなると、延長コネクタ75が下方に湾曲するので、脱着式安全装置18がバッテリ電極カバー16と固定具86を介してバッテリ12aに固定可能とされる二股式スタビライザ85との間に押し込まれ、これにより
図6に表わす組立体が完成する。
【0039】
上述のように、コネクタのプレ組立体90を利用することによって、コネクタのプレ組立体90が電気的に絶縁されているので、組立の際にバッテリ同士を接続する作業者の感電を完全に解消させることができないまでも、著しく減らすことができ、これにより、組立の各ステップにおいて高電圧バッテリから作業者を保護することができる。作業員は、バッテリパック10を利用することによって、バッテリパックの組立上の安全性及び確実性を確保すると共に、バッテリパック10の導電性要素との直接接触から完全に保護される。
【0040】
本発明の上述の実施例に対する変更及び改善は、当業者にとって自明である。上述の説明は、例示にすぎず、限定することを意図しない。従って、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されることを意図している。
【符号の説明】
【0041】
10 バッテリパック
12a バッテリ
12b バッテリ
12c バッテリ
14 バッテリコネクタ
16 バッテリ電極カバー
16a (バッテリ電極カバー16の)第1の部分
16b (バッテリ電極カバー16の)第2の部分
17 (第1の部分16aの)開口部
18 脱着式安全装置
19 突起
20 固定具
21 受容領域
22 (バッテリ12aの)バッテリ電極(正極、負極)
23 (第2の部分16bの)開口部
25 ネジ
31 (絶縁部分35の)ヘッド部分
32 (絶縁部分35の)円状中央部分
33 (絶縁部分35の)隆起ストッパ
34 (固定具20の)ネジ部分
35 (固定具20の)電気的絶縁部分
37 (導電性要素41の)先端
38 (導電性要素41の)先端
41 導電性要素
43 インタラプタ
44 (インタラプタ43の)ハウジング
51 楔
53 (導電性要素41の)中央部分
55 火工弾薬
57 点火装置
59 プレッシャープレート
75 延長コネクタ
76 絶縁性プラスチックカバー
78 固定具
80 開口部
82 (延長コネクタ75の)第2の端部
85 二股式スタビライザ
88 (脱着式安全装置18の)ネック
90 コネクタのプレ組立体