【文献】
Journal of Immunological Methods,1989年,Vol.117,No.1,p91−97
【文献】
Journal of Physical Chemistry. A,2007年,Vol.111,No.3,p429−440
【文献】
Journal of Physical Chemistry. A,2004年,Vol.108,No.20,p4378−4384
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポルフィリン類のフォトブリーチングを防止すること、ポルフィリン類のフォトブリーチング防止剤を用いて優れた光線力学的診断剤及び光線力学的診断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ポルフィリン類について、ポルフィリン類に光を照射すると、発生した活性酸素種により自己酸化され、分解される点に着目し、還元剤を用いると、ポルフィリン類の分解が阻害され、フォトブリーチングを防止する可能性があるという仮説を立てた。本発明者らは、驚くことに、没食子酸類には、PpIXのフォトブリーチングを防止する優れた効果があることを見出した。これに対し、PPD、DABCO、アスコルビン酸やトコフェロール等の還元剤では、全くまたはほとんど効果がなかった。さらに、本発明者らは、ポルフィリン類の前駆物質としてALA類を用いた場合においても、没食子酸類を用いることにより、PpIXのフォトブリーチングを防止する効果が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、同時又は異時に投与するためのポルフィリン類の前駆物質と没食子酸類とを含有する光線力学的診断剤に関する。
【0012】
本発明の光線力学的診断剤は、前記没食子酸類が没食子酸アルキルエステルまたはその塩である
ものであってもよい。
【0013】
本発明の光線力学的診断剤は、前記没食子酸類が、下記式(I)で示される化合物
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、及び、炭素数7〜15のアラルキル基からなる群から選択され、R
2、R
3、R
4はそれぞれ、水酸基を表す。)
又はその塩である
ものであってもよい。
【0014】
本発明の光線力学的診断剤は、前記式(I)において
R
1が、メチル基、プロピル基、ブチル基、及び、オクチル基からなる群から選択される
ものであってもよい。
【0015】
本発明の光線力学的診断剤は、前記ポルフィリン類の前駆物質が、ALA類である
ものであってもよい。
【0016】
本発明の光線力学的診断剤は、前記ALA類が下記式(II)で示される化合物
【化2】
(式中、R
1は、水素原子又はアシル基を表し、R
2は、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
又はその塩である
ものであってもよい。
【0017】
本発明の光線力学的診断剤は、前記式(II)において、
R
1が、水素原子、炭素数1〜8のアルカノイル基、及び、炭素数7〜14のアロイル基からなる群から選択され、
R
2が、水素原子、直鎖又は分岐状の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、及び、炭素数7〜15のアラルキル基からなる群から選択される
ものであってもよい。
【0018】
本発明の光線力学的診断剤は、前記式(II)において、
R
1が、水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、及び、ブチリル基からなる群から選択され、
R
2が、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及び、ペンチル基からなる群から選択される
ものであってもよい。
【0019】
本発明の光線力学的診断剤は、前記式(II)において、
R
1が水素原子であり、
R
2が、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及び、ペンチル基からなる群から選択される
ものであってもよい。
【0020】
本発明の光線力学的診断剤は、前記式(II)において、
R
1が水素原子であり、
R
2が水素原子である
ものであってもよい。
【0021】
本発明の別の態様において、本発明は、下記式(I)で示される化合物
【化3】
(式中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、及び、炭素数7〜15のアラルキル基からなる群から選択され、R
2、R
3、R
4はそれぞれ、水酸基を表す。)
又はその塩を有効成分とする、ポルフィリン類のフォトブリーチング防止剤に関する。
【0022】
本発明のフォトブリーチング防止剤は、
前記ポルフィリン類が、プロトポルフィリンIX、ウロポルフィリンI、ウロポルフィリンIII、コプロポルフィリンI、コプロポルフィリンIII、ヘプタカルボキシルポルフィリンI、ヘプタカルボキシルポルフィリンIII、ヘキサカルボキシルポルフィリンI、ヘキサカルボキシルポルフィリンIII、ペンタカルボキシルポルフィリンI、ペンタカルボキシルポルフィリンIII、イソコプロポルフィリン、ハルデロポルフィリン、イソハルデロポルフィリン、メソポルフィリンIX、デューテロポルフィリンIX、及び、ペンプトポルフィリンからなる群から選択される
ものであってもよい。
【0023】
本発明のフォトブリーチング防止剤は、
前記ポルフィリン類が、プロトポルフィリンIX(PpIX)である
ものであってもよい。
【0024】
本発明の別の態様において、本発明は、ポルフィリン類蓄積部位の検出方法であって、以下のステップ、
あらかじめポルフィリン類の前駆物質及び没食子酸類を同時又は異時に投与された対象に対し、ポルフィリン類の励起光を照射するステップ、
ポルフィリン類の蛍光を検出するステップ
を含む検出方法に関する。
【0025】
本発明の別の態様において、本発明は、光線力学的診断方法であって、以下のステップ、
対象に対して、ポルフィリン類の前駆物質及び没食子酸類を同時又は異時に投与するステップ、
対象に対して、ポルフィリン類の励起光を照射するステップ、
ポルフィリン類の蛍光を検出するステップ、
検出されたポルフィリン類の蛍光に基づき、ポルフィリン類蓄積部位を判定し、病変部の範囲を判断するステップ
を含む診断方法に関する。
【0026】
本発明の光線力学的診断方法は、
前記病変部が腫瘍である
ものであってもよい。
【0027】
本発明の光線力学的診断方法は、
前記対象が、非ヒト動物である
ものであってもよい。
【0028】
本発明の光線力学的診断方法は、
前記ポルフィリン類の前駆物質が、ALA類である
ものであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、ポルフィリン類のフォトブリーチング防止剤を提供する。本発明のフォトブリーチング防止剤を使用することにより、ポルフィリン類、またはその原料となるALA類を投与した場合のフォトブリーチングを防止し、光線力学的診断において検出するための蛍光強度をより長時間、より強度に維持することができる。
【0030】
また、ALAは、動植物細胞内に存在する化合物であり、それ自体は光増感作用を有さず、過剰に細胞内に投与されると、病変部に選択的に取り込まれ、細胞内のヘムの生合成経路内で光増感作用を有するポルフィリン系化合物、特にプロトポルフィリンIXを生成し、細胞内に蓄積される性質を有する。
【0031】
本発明において、ALA類とフォトブリーチング防止剤とを組み合わせて用いることにより、ポルフィリン類を光増感剤として使用するよりも副作用を少なくし、かつ、従来よりも光線力学的診断における蛍光強度をより長時間、より強度に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のポルフィリン類のフォトブリーチング防止剤としては、没食子酸類を含有し、ポルフィリン類のフォトブリーチング防止効果を有するものであれば特に制限されない。本発明の光線力学的診断剤において、没食子酸類は、ポルフィリン類の前駆物質の投与後に投与することも、同時、または、投与前に投与することもできる。
【0034】
本発明において、没食子酸類とは、没食子酸若しくはその誘導体またはその塩をいう。没食子酸(gallic acid)は、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸ともいい、五倍子、没食子、ハマメリス、茶葉、オークの樹皮など多くの植物に含まれる。没食子酸誘導体としては、カルボキシル基がエステル化された化合物等が挙げられる。没食子酸エステルとしては、アルキルエステルの他、シクロアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステル等であってもよい。
【0035】
本発明の一態様においては、没食子酸類として、没食子酸アルキルエステルが挙げられる。
【0036】
本発明において、没食子酸誘導体は、下記式(I)で表わされる化合物
【化4】
(式中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、及び、炭素数7〜15のアラルキル基からなる群から選択される基を表し、R
2、R
3、R
4はそれぞれ、水酸基を表す。)
であってもよい。
【0037】
前記式(I)のR
1におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1〜10のアルキル基を挙げることができる。
【0038】
前記式(I)のR
1におけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、1−シクロヘキセニル基等の飽和、又は一部不飽和結合が存在してもよい、炭素数3〜8のシクロアルキル基を挙げることができる。
【0039】
前記式(I)のR
1におけるアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基等の炭素数6〜14のアリール基を挙げることができる。
【0040】
前記式(I)のR
1におけるアラルキル基としては、アリール部分は上記アリール基と同じ例示ができ、アルキル部分は上記アルキル基と同じ例示ができ、具体的には、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル基等の炭素数7〜15のアラルキル基を挙げることができる。
【0041】
本発明の一態様において、没食子酸誘導体として、前記式(I)において、
R
1が、炭素数1〜10のアルキル基であり、
R
2、R
3、R
4が水酸基である
化合物が好ましい。
【0042】
本発明の一態様において、没食子酸誘導体として、前記式(I)において、
R
1が、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及び、デシル基からなる群から選択され、
R
2、R
3、R
4が水酸基である
化合物が好ましい。
【0043】
本発明の一態様において、没食子酸誘導体として、前記式(I)において、
R
1が、水素原子、メチル基、プロピル基、ブチル基、及び、オクチル基からなる群から選択され、
R
2,R
3,R
4が水酸基である
化合物が好ましい。
【0044】
本発明の一態様において、没食子酸誘導体として、ポルフィリン類の励起光波長である380〜420nm付近の吸光度が大きくないものが好ましい。
【0045】
没食子酸類のうち、没食子酸又はその誘導体の塩としては、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されない。
【0046】
以上の没食子酸類のうち、好ましいものは、没食子酸メチルエステル、没食子酸プロピルエステル、没食子酸ブチルエステル、没食子酸オクチルエステル等のアルキルエステル類である。とりわけ、没食子酸メチルエステル、没食子酸プロピルエステル、没食子酸オクチルエステル等を特に好適なものとして例示することができる。
【0047】
上記没食子酸類は、商業的に入手可能である他、化学合成、植物からの抽出など公知の方法によって製造することができる。また、上記没食子酸類は、無水物の他、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、また没食子酸類を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0048】
ポルフィリン類とは、ポルフィリンの基本骨格を有する化合物をいう。ポルフィリン類としては、ポルフィリン系光増感剤として一般に使用される物質等が挙げられる。また、ポルフィリン類としては、ALA類から代謝により生成されるポルフィリン類等も挙げられる。ポルフィリン類は、一般に、400〜500nm付近の吸収帯と、500〜700nm付近の吸収帯を有する。例えば、PpIXは、波長405nmの励起光を受けると、波長635nmにピークを有する赤色蛍光を発する。
【0049】
本発明に使用できるポルフィリン類としては、プロトポルフィリンIX、ウロポルフィリンI、ウロポルフィリンIII、コプロポルフィリンI、コプロポルフィリンIII、ヘプタカルボキシルポルフィリンI、ヘプタカルボキシルポルフィリンIII、ヘキサカルボキシルポルフィリンI、ヘキサカルボキシルポルフィリンIII、ペンタカルボキシルポルフィリンI、ペンタカルボキシルポルフィリンIII、イソコプロポルフィリン、ハルデロポルフィリン、イソハルデロポルフィリン、メソポルフィリンIX、デューテロポルフィリンIX、及び、ペンプトポルフィリンからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0050】
ポルフィリン類が腫瘍細胞に取り込まれ、蓄積されるメカニズムについて、詳細は明らかではない。本発明の一態様において、蛍光を発し、かつ、腫瘍細胞に蓄積される性質のあるポルフィリン類が好ましい。
【0051】
ポルフィリン類は、商業的に入手可能である他、周知の方法により製造することができる。
【0052】
本発明において、ポルフィリン類の前駆物質とは、生体内で代謝されてポルフィリン類を生成する物質をいう。ポルフィリン類の前駆物質としては、ALA類等が挙げられる。
【0053】
本発明の一態様において、ポルフィリン類の前駆物質として、ALA類が好ましい。本明細書において、ALA類とは、ALA若しくはその誘導体又はそれらの塩をいう。
【0054】
本発明において、ALAは、5−アミノレブリン酸を意味する。ALAは、δ−アミノレブリン酸ともいい、アミノ酸の1種である。ALAは、生体内の内在物質であり、ヘムの前駆体として知られている。ALAはヘム系化合物の共通前駆体であるが、がん細胞においては、ALAを投与してもヘムが生成されず、ヘム系化合物の前駆体であるプロトポルフィリンIX(PpIX)が蓄積することが知られている。蓄積したPpIXに光を照射すると蛍光を発するために光線力学的診断が可能となる。
【0055】
本発明において、ALA類は、下記式(II)で示される化合物
【化5】
(式中、R
1は、水素原子又はアシル基を表し、R
2は、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)
又はその塩
であってもよい。
【0056】
本発明において、ALA類は、前記式(II)において、
R
1が、水素原子、炭素数1〜8のアルカノイル基、及び、炭素数7〜14のアロイル基からなる群から選択され、
R
2が、水素原子、直鎖又は分岐状の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、及び、炭素数7〜15のアラルキル基からなる群から選択される
化合物であってもよい。
【0057】
前記式(II)のR
1におけるアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ベンジルカルボニル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1〜8のアルカノイル基や、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル基等の炭素数7〜14のアロイル基を挙げることができる。
【0058】
前記式(II)のR
2におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。
【0059】
前記式(II)のR
2におけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、1−シクロヘキセニル基等の飽和、又は一部不飽和結合が存在してもよい、炭素数3〜8のシクロアルキル基を挙げることができる。
【0060】
前記式(II)のR
2におけるアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基等の炭素数6〜14のアリール基を挙げることができる。
【0061】
前記式(II)のR
2におけるアラルキル基としては、アリール部分は上記アリール基と同じ例示ができ、アルキル部分は上記アルキル基と同じ例示ができ、具体的には、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル基等の炭素数7〜15のアラルキル基を挙げることができる。
【0062】
本発明において、ALA類は、前記式(II)において、
R
1が、水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、及び、ブチリル基からなる群から選択され、
R
2が、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及び、ペンチル基からなる群から選択される
化合物であってもよい。
【0063】
本発明において、ALA類は、前記式(II)において、
R
1が水素原子であり、
R
2が、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及び、ペンチル基からなる群から選択される
化合物であってもよい。
【0064】
本発明において、ALA類は、前記式(II)において、
R
1が水素原子であり、
R
2が水素原子である
化合物であってもよい。
【0065】
好ましいALA誘導体としては、上記R
1とR
2の組合せが、(ホルミルとメチル)、(アセチルとメチル)、(プロピオニルとメチル)、(ブチリルとメチル)、(ホルミルとエチル)、(アセチルとエチル)、(プロピオニルとエチル)、(ブチリルとエチル)の各組合せである化合物が挙げられる。
【0066】
ALA類のうち、ALA又はその誘導体の塩としては、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等を挙げることができる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の各無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の各有機酸付加塩を例示することができる。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム塩等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩を例示することができる。アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩等を例示することができる。有機アミン塩としては、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、トルイジン塩等の各塩を例示することができる。なお、これらの塩は使用時において溶液としても用いることができる。
【0067】
以上のALA類のうち、もっとも望ましいものは、ALA、及び、ALAメチルエステル、ALAエチルエステル、ALAプロピルエステル、ALAブチルエステル、ALAペンチルエステル等の各種エステル類、並びに、これらの塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩である。とりわけ、ALA塩酸塩、ALAリン酸塩を特に好適なものとして例示することができる。
【0068】
上記ALA類は、例えば、化学合成、微生物による生産、酵素による生産など公知の方法によって製造することができる。また、上記ALA類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またALA類を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0069】
本発明において、フォトブリーチングとは、光増感剤の蛍光の減少が起こることをいう。フォトブリーチングの防止とは、蛍光物質を励起後、一定時間内に生じる蛍光強度の減少の程度を小さくすることをいい、完全に蛍光強度の減少を生じさせないもののみならず、蛍光強度の減少を抑制するものを含む。したがって、フォトブリーチング防止剤とは、フォトブリーチング抑制剤とも呼ぶことができる。
【0070】
光線力学的診断(Photodynamic diagnosis:以下「PDD」ともいう)とは、ポルフィリン類等の光増感剤が腫瘍等に取り込まれて蓄積する性質を利用して、光増感剤またはその前駆物質を対象に投与し、励起光を照射することにより、光増感剤の発する蛍光を検出して、腫瘍等の病変部の部位・範囲を診断する方法である。例えば、PpIXは、波長405nmの励起光を受けると、波長635nmにピークを持つ赤色蛍光を発することから、光線力学的診断による腫瘍の診断に用いることができることが知られており、脳腫瘍や膀胱がんの診断などでの用途が期待されている。
【0071】
光線力学的診断においては、光増感剤の励起光及び蛍光の波長は、各ポルフィリン類の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定結果等に基づき、各化合物に適する波長を適宜選択することができる。
例えば、PpIXの励起光照射手段から照射する光としては、PpIXを励起させることで、PpIX特有の赤色蛍光が観察できる波長の光が好ましく、いわゆるソーレー帯に属するPpIXの吸収ピークに属する紫外光に近い紫色の波長であって、具体的には380nm〜420nm、好ましくは400〜410nm、特に好ましくは403〜407nm、中でも405nmの波長を有する励起光を挙げることができる。その他のポルフィリン類についても測定して適宜決定することが可能である。
【0072】
光線力学的診断を行う手段としては、ポルフィリン類の励起光照射手段と、励起状態のポルフィリン類特有の蛍光検出手段、あるいは、これらが一体化された手段を例示することができる。
【0073】
上記励起光を照射する光源としては、公知のものを使用することができ、例えば紫色LED、好ましくはフラッシュライト型紫色LEDや、半導体レーザー等のレーザー光を挙げることができるが、装置がコンパクトになり、コスト面や可搬性において有利である紫色LED、中でもフラッシュライト型紫色LEDや、紫色半導体ダイオードを好適に例示することができる。
【0074】
上記蛍光を検出する手段としては、肉眼による検出手段やCCDカメラによる検出手段に限らず、膣拡大鏡(コルポスコープ)等の機器を用いた検出手段を挙げることができる。
【0075】
励起光照射手段と赤色蛍光検出手段とが一体化された光線力学的診断の手段としては、光源・計測用細径光ファイバーを挙げることができ、励起光の光源としては、被検体の生体組織の微小に点在する腫瘍についてもポルフィリン類の検出を行うことを可能とするために放射照度が強く、精確な自動識別を可能とするために照射面積が狭い半導体レーザー光源が好ましく、励起光を導光して一端から外部へ出射する励起光導光部を有することが好ましく、励起光導光部としては、具体的には細径光ファイバーを挙げることができる。光源に用いられる素子としては、InGaN等の半導体混晶を用いることができ、InGaNの配合比を変えることで、紫色光を発振することができる。具体的には直径5.6mm程度のコンパクトなレーザーダイオードを好適に例示することができる。レーザーダイオードから4レーザーアウトプットのポートと、スペクトル測定用のポートはビルトイン高感度スペクトロスコープで連結されたデスクトップPCほどのサイズである装置を例示することができる。また、前記励起光によって励起されたPpIXが発する蛍光を受光する受光工程においては計測用細径光ファイバーが用いられ、該計測用細径光ファイバーは前記光源用細径光ファイバーと一体化され、受光した蛍光を検出器に導光しポルフィリン類蓄積部位の判定を行う。
【0076】
本発明において、光線力学的診断の対象となる病変部位として、腫瘍部位、前がん病変等が挙げられる。本発明の一態様において、診断の対象としての病変部は腫瘍であることが好ましい。
【0077】
本発明の一態様において、光線力学的診断の対象となる腫瘍は、悪性又は非悪性腫瘍である。悪性腫瘍は、浸潤性に増殖し、転移するなど悪性を示す。悪性腫瘍の中でも多くを占めるのが上皮細胞に由来する癌であり、その他に肉腫、リンパ腫又は白血病を含む。非悪性腫瘍は、悪性腫瘍以外の疾患、例えば良性疾患などを示し、必ずしも治療が容易ということを意味しない。
腫瘍の組織としては特に限定されないが、脳、鼻道、鼻腔、気管、気管支、口腔、咽頭、食道、胃、乳房、結腸直腸、肺、卵巣、中枢神経系、肝臓、膀胱、尿道、尿管、膵臓、頚管、腹腔、肛門管、子宮頚等が挙げられる。
【0078】
本発明の光線力学的診断剤の投与経路としては、舌下投与も含む経口投与、あるいは吸入投与、点滴を含む静脈内投与、発布剤等による経皮投与、座薬、又は経鼻胃管、経鼻腸管、胃ろうチューブ若しくは腸ろうチューブを用いる強制的経腸栄養法による投与等の非経口投与などを挙げることができるが経口投与が一般的である。本発明において、ポルフィリン類前駆物質と没食子酸類とは、異なる投与経路とすることができる。
【0079】
本発明のフォトブリーチング防止剤は、前記投与経路の他、膀胱内などの病変部位に直接投与することもできる。本発明の一態様において、ポルフィリン類前駆物質を経口投与し、フォトブリーチング剤を病変部位に直接投与することが好ましい。
【0080】
本発明の光線力学的診断剤の剤型としては、上記経路投与に応じて適宜決定することができるが、注射剤、点滴剤、錠剤、カプセル剤、細粒剤、散在、液剤、シロップ等に溶解した水剤、パップ剤、座薬剤等を挙げることができる。本発明において、ポルフィリン類前駆物質と没食子酸類とは、異なる剤型とすることができる。
【0081】
本発明の光線力学的診断剤を調製するために、必要に応じて、薬理学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤、溶剤、ゲル化剤、栄養剤等を添加することができ、具体的には、水、生理食塩水、動物性脂肪及び油、植物油、乳糖、デンプン、ゼラチン、結晶性セルロース、ガム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリンを例示することができる。なお、本発明の光線力学的診断剤を水溶液として調製する場合には、ALA類の分解を防ぐため、水溶液がアルカリ性とならないように留意する必要があり、アルカリ性となってしまう場合は、酸素を除去することによって分解を防ぐこともできる。
【0082】
本発明の光線力学的診断剤の量・頻度・期間としては、特に限定されない。光線力学的診断剤を利用しようとする対象の年齢、体重、症状等により適宜最適化することができる。
【0083】
本発明の一態様において、好ましい投与量の例としては、ポルフィリン類前駆物質(例えば、ALA類)については、例えば、ALA・モル換算で、体重1kg当たり、0.0006mmol〜6mmol、好ましくは0.006mmol〜0.6mmol、より好ましくは0.06mmol〜0.3mmolを挙げることができる。
【0084】
本発明の一態様において、好ましい投与量の例としては、没食子酸類については、例えば、没食子酸プロピル・モル換算で、体重1kg当たり、0.00006mmol〜600mmol、好ましくは0.0006mmol〜60mmol、より好ましくは0.006mmol〜30mmolを挙げることができる。好ましい投与量は、投与経路に応じて適宜決定することができる。例えば、投与経路に応じ、例えば膀胱内直接投与の場合には、没食子酸類の膀胱内の最終濃度が0.01〜20%、好ましくは0.1%〜10%、より好ましくは0.5%〜10%になるように投与することもできる。
【0085】
その他のポルフィリン類前駆物質、没食子酸類、ALA類を用いる場合にも、モル換算をすることにより、好ましい投与量を計算することができる。もっとも、上記、好ましい投与量の範囲は、例示であって、限定するものではない。
【0086】
本発明の一態様において、ポルフィリン類前駆物質(例えば、ALA類)と没食子酸類との投与量との割合は、没食子酸類によるフォトブリーチング効果の程度を考慮して、当業者が適宜最適化することができる。
【0087】
本発明の一態様において、好ましいポルフィリン類前駆物質(例えば、ALA類)と没食子酸類との投与量との割合について、没食子酸類の投与量を、ALA類の投与量に対してモル比で、0.01〜10000倍量、好ましくは0.1〜1000倍量、より好ましくは、1〜1000倍量を挙げることができる。もっとも、上記投与量割合の範囲は、例示であって、限定するものではない。
【0088】
ポルフィリン類の前駆物質と没食子酸類を含有する光線力学的診断剤において、ポルフィリン類の前駆物質と没食子酸類とを組成物としても、それぞれ単独でも投与することできる。それぞれ単独で投与される場合には、没食子酸類は、ポルフィリン類前駆物質の投与前、投与と同時、または投与後に投与することができる。同時という場合については、厳密に、同時でなくとも両者間で相当の間隔をおかずに行われるものであってもよい。
【0089】
ポルフィリン類前駆物質(例えばALA類)と没食子酸類とを組み合わせたことを特徴とする光線力学的診断剤の投与と診断の時間的間隔については、ポルフィリン類前駆物質(例えばALA類)を投与してから30分〜8時間、好ましくは1時間から6時間、より好ましくは2時間から5時間、さらに好ましくは3.5時間〜4.5時間後に光線力学的診断を実施することが病変部組織と正常組織とのポルフィリン類濃度の差が大きくなるため好ましい。
【0090】
没食子酸類の投与については、ポルフィリン類前駆物質(例えばALA類)の投与前、ポルフィリン類前駆物質(例えばALA類)の投与と同時、ポルフィリン類前駆物質(例えばALA類)の投与後のいずれでもよい。また、ポルフィリン類前駆物質(例えばALA類)と没食子酸類とは異なる投与経路であってもよい。本発明の一態様において、ポルフィリン類前駆物質を経口投与し、没食子酸を病変部位に直接投与することが好ましい。
【0091】
本発明の光線力学的診断剤は、他の既存の光線力学的診断剤及び/又は他のフォトブリーチング防止剤と組み合わせて使用することもできる。既存の光線力学的診断剤の例としては、フォトフリン(商標)、レザフィリン(商標)、インドシアニングリーンなどが挙げられる。他のフォトブリーチング防止剤としては、本発明において見出された没食子酸類の他、他のフォトブリーチング防止剤とを組み合わせうる。併用により、相加的な、場合によっては相乗的な効果が期待できる。
【0092】
本発明におけるポルフィリン類蓄積部位の検出方法としては、例えば、以下のステップ、
あらかじめポルフィリン類の前駆物質及び没食子酸類を同時又は異時に投与された対象に対し、ポルフィリン類の励起光を照射するステップ、
ポルフィリン類の蛍光を検出するステップ
を含む
方法により行うことができる。
ここで、前記対象は、典型的にはヒトであるが、愛玩動物、実験動物、家畜など非ヒト動物である場合も含む。
ここで、ポルフィリン類蓄積部位としては、主に腫瘍または前がん病変などが挙げられる。前記ポルフィリン類の前駆物質の典型的な例は、前記ALA類である。
【0093】
本発明における光線力学的診断方法としては、例えば以下の(1)〜(4)のステップを含む方法により行うことができる。
(1)対象に対して、ポルフィリン類の前駆物質及び没食子酸類を同時に又は異時に投与するステップ、
(2)対象に対して、ポルフィリン類の励起光を照射するステップ、
(3)ポルフィリン類の蛍光を検出するステップ、
(4)検出されたポルフィリン類の蛍光に基づき、ポルフィリン類蓄積部位を判定し、病変部の範囲を判断するステップ。
ここで、前記対象は、典型的にはヒトであるが、愛玩動物、実験動物、家畜など非ヒト動物である場合も含む。
また、前記病変部は典型的には腫瘍である。前記ポルフィリン類の前駆物質の典型的な例は、前記ALA類である。
【0094】
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
【0095】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0096】
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
【実施例】
【0097】
<実施例1>
細胞に対し、ALA類、および、没食子酸類またはその他の還元剤を取り込ませた場合の、ALA類から代謝生成されるPpIXのフォトブリーチング防止効果の測定
【0098】
MKN45細胞を35mmディッシュに0.5×10
6cellとなるようにまき、35mmディッシュ上の培養液は2mLとした。0.2M ALA塩酸塩(5−アミノレブリン酸塩酸塩)溶液を35mmディッシュの培養液2mLに10μL添加し、培養液中のALAの最終濃度を1mMとした。この35mmディッシュを5%CO
2インキュベーターにおいて37℃で24時間培養した。その後、細胞を1mlのPBSで洗浄し、氷上において、以下の各還元剤溶液(50%グリセロールPBS溶液に溶解したもの)を1mL添加し、セルスクレイパーを用いてすぐに細胞をはがし、ピペッティングにより細胞を懸濁した。この各細胞懸濁液の励起光400nmにおける635nmの蛍光強度を測定した。蛍光強度は、励起光照射0秒後から10秒毎に180秒後まで測定した。なお、実施例1に限らず、蛍光強度測定は、励起光照射0秒後以降も励起光を照射しながら行った。
【0099】
各還元剤としては、以下のものを、以下の最終濃度で用いた。パラフェニレンジアミン(Paraphenylendiamine、以下「PPD」と略す):0.5%
没食子酸プロピル(n−Propyl gallate、以下、「NPG」と略す):2%
1−4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタン(1−4−diazabicyclo[2.2.2]−octane、以下「DABCO」と略す):5%
Prolong Gold(商標):有効成分のアジ化ナトリウムとして約1%
なお、Prolong Gold(Invitrogen社製のAnti−fade剤)は、アジ化ナトリウムを約1%含有する溶液として販売されていたため、50%グリセロール/PBSを用いずに、市販の溶液のまま添加して検討を行った。
【0100】
実施例1の結果を
図1に示す。種々の還元剤の中で、没食子酸プロピルを用いた場合には、励起光照射から180秒経過後においても、コントロールの励起光照射0秒後の蛍光強度に対して2分の1程度の蛍光強度を維持していたことから、優れたフォトブリーチング防止効果が認められた。一方、DABCOを用いた場合には、フォトブリーチングの防止効果は不十分であることが認められた。また、PPDを用いた場合には、励起光照射0秒後の蛍光強度自体が大幅に低下してしまい、NPGのように蛍光強度が高い状態を維持することはできなかった。また、Anti−fading剤として市販されているProlong Goldを用いた場合には、コントロールよりも蛍光強度が低下し、フォトブリーチングの防止効果は認められなかった。
【0101】
<実施例2>
細胞に対し、ALA類、および、その他の還元剤を取り込ませた場合の、ALA類から代謝生成されるPpIXのフォトブリーチング防止効果の測定
【0102】
その他の還元剤について、PpIXのフォトブリーチング抑制効果について測定した。還元剤としては、以下のものを用いて、以下の方法により、各還元剤溶液を調製し、調製した各溶液をフォトブリーチング測定用のサンプル溶媒として使用した。
【0103】
アスコルビン酸添加溶液(溶媒:milli Q、添加溶液濃度:100mM)5μLをPBS 1mLに添加し、最終濃度を500μMとするアスコルビン酸溶液を調製した。
トコフェロール添加溶液(溶媒:DMSO、添加溶液濃度:100mM)5μLをPBS 1mLに添加し、最終濃度を500μMとするトコフェロール溶液を調製した。
ルテイン添加溶液(溶媒:DMSO、添加溶液濃度:2mM)5μLをPBS 1mLに添加し、最終濃度を10μMとするルテイン溶液を調製した。
【0104】
MKN45細胞を35mmディッシュに0.5×10
6cellとなるようにまき、35mmディッシュ上の培養液は2mLとした。0.2M ALA塩酸塩(5−アミノレブリン酸塩酸塩)溶液を35mmディッシュの培養液2mLに10μL添加し、培養液中のALAの最終濃度を1mMとした。この35mmディッシュを5%CO
2インキュベーターにおいて37℃で24時間培養した。その後、細胞を1mlのPBSで洗浄した後、上記で調製した各還元剤溶液を1mL添加し、セルスクレイパーを用いてすぐに細胞をはがし、ピペッティングにより細胞を懸濁した。この各細胞懸濁液の励起光400nmにおける635nmの蛍光強度を測定した。蛍光強度は、励起光照射0秒後から10秒毎に180秒後まで測定した。なお、蛍光強度測定は、励起光照射0秒後以降も励起光を照射しながら行った。
【0105】
実施例2の結果を
図2に示す。アスコルビン酸、トコフェロール、ルテインのいずれの存在下においても、コントロールと同様にPpIXの蛍光強度が速やかに低下することが認められた。したがって、これらの還元剤もPpIXのフォトブリーチングを防止する効果はないものと認められた。
【0106】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で、1%n−プロピル没食子酸(NPG)溶液を1mL添加して励起光の強度を0.1mA、0.2mA、0.3mA、0.4mAと変更して同様に蛍光強度を測定した。
【0107】
実施例3の結果を
図3に示す。図中、「vehicle」の記載は、1%n−プロピル没食子酸(NPG)溶液の代わりにコントロールとして、50%グリセロールPBS溶液を1mL添加した場合の蛍光強度を示す。
これらの測定結果から算出した半減期を表1に示す。
【表1】
強度の励起光を照射した方が、PpIXの分解が進み、早い時期に蛍光が大きく減少する傾向にある。励起光の強度を0.4mAとした場合に、NPGの添加により、半減期は、25秒から75秒へと3倍も長くなったことが認められた。
実施例3の結果について、蛍光顕微鏡による撮影画像を
図4に示す。NPG1%を添加した場合の方が、長期間蛍光を維持したことが認められた。
【0108】
<実施例4>
溶液中における各没食子酸アルキルによるポルフィリン類のフォトブリーチング防止効果の測定
【0109】
没食子酸類によるポルフィリン類のフォトブリーチング防止効果について、以下の手順で測定した。没食子酸類としては、没食子酸メチル(MeG; Methyl Gallate、wako社製、カタログNo.134−09812)、没食子酸ブチル(BuG;Butyl Gallate、wako社製、カタログNo.322−67472)、没食子酸n−プロピル(PrG; N−propyl Gallate、wako社製、カタログNo.162−06832)、没食子酸オクチル(OcG; Octyl Gallate、wako社製、カタログNo.322−56482)を用いた。ここで用いた没食子酸類は、いずれも直鎖状アルキルを有する化合物である。
【0110】
(1)各没食子酸アルキルの50mM溶液を調製するため、15mLチューブに各没食子酸アルキルを0.3mmol入れ、50%グリセロールPBS溶液(グリセロールとPBSを1:1の割合で混合したもの、以下、「Gly+PBS」または「Gly+PBS溶液」と表記することもある)またはDMSOを6mL入れ溶解させた。
なお、没食子酸オクチルは、Gly+PBS溶液に溶解しなかったため、各没食子酸アルキルのDMSO溶液も調製した。没食子酸ブチルは、Gly+PBS溶液、DMSOに溶解したが、溶液はそれぞれ黄色に着色した溶液となった。
【0111】
(2)(1)で調製した各没食子酸アルキル溶液1000μLを用いて350nm〜750nmにおける吸光スペクトルの測定を行った。
上記4種の各没食子酸アルキル溶液のうち、没食子酸ブチルのみが、400nm付近に吸光度をもつことが判明した。蛍光物質であるプロトポルフィリンIX(PpIX)は400nm付近に鋭い吸光度を持ち、400nm付近の光を励起光として用いるため、没食子酸ブチルを用いた場合には、PpIXの励起を妨げる可能性があると考えられた。
【0112】
(3)2mLバイアルに没食子酸アルキル 990μLを分注した後に、100μMのPpIXを10μL添加した(PpIXの最終濃度1μM)。
【0113】
(4)(3)で調製した各没食子酸アルキル+PpIX溶液を、簡易蛍光測定装置を用いて、蛍光スペクトルの測定を行った。光源としてLEDを用い、励起光の波長は402nmを用い、出力電流は0.4mAに設定し、測定間隔は、10秒毎、180秒までとして測定した。
【0114】
実施例4について、没食子酸類の溶媒として、Gly+PBS溶液を用いた場合の測定結果を
図5〜
図8に示す。各図について以下に説明する。なお、
図5〜13について、縦軸は、相対強度(Relative Intensity)と記載しているが、これは、ブランクとして、ファイバー接続部を塞ぎ、光が入らないようにして測定した時の蛍光強度に対する相対値として示したものである。
【0115】
コントロールとして、没食子酸類を含まないGly+PBS溶液中におけるPpIXの蛍光スペクトルを
図5に示す。PpIXは、627nm付近をピークとする強い蛍光が測定された。励起光照射0秒後の蛍光強度に対し、わずか30秒後には5分の1程度に、60秒後には10分の1程度に蛍光強度が減少した。
【0116】
各没食子酸類の効果について、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、または、没食子酸ブチルを含むGly+PBS溶液中におけるPpIXの蛍光スペクトルを、それぞれ、
図6、7、8に示す。励起光照射0秒後の蛍光強度に対し、30秒後、及び60秒後においても、PpIXの蛍光強度があまり低下せず、PpIXのフォトブリーチングを抑制できた。
【0117】
実施例4について、没食子酸類の溶媒として、DMSO溶液を用いた場合の測定結果を
図9〜
図13に示す。各図について以下に説明する。
【0118】
コントロールとして、没食子酸類を含まないDMSO溶液中におけるPpIXの蛍光スペクトルを
図9に示す。PpIXは、632nm付近をピークとする強い蛍光が測定された。DMSOを没食子酸類の溶媒に用いた場合にも、Gly+PBS溶液を溶媒に用いたときと同様に、励起光照射0秒後の蛍光強度に対し、わずか30秒後には5分の1程度に、60秒後には10分の1程度に蛍光強度が減少した。
【0119】
各没食子酸類の効果について、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、または、没食子酸オクチルを含むDMSO溶液中におけるPpIXの蛍光スペクトルを、それぞれ、
図10、11、12、13に示す。いずれの没食子酸アルキルを用いた場合にも、励起光照射0秒後のPpIXの蛍光強度に対し、30秒後、及び60秒後においても、PpIXの蛍光強度があまり低下せず、PpIXのフォトブリーチングを抑制できた。なお、没食子酸ブチル存在下において、500〜550nm付近に蛍光が検出されているのは、没食子酸ブチルに由来するものと考えられる。
【0120】
上記実施例4の結果について、各没食子酸アルキルの存在下及び非存在下におけるPpIXの蛍光強度の10秒毎の変移がわかるように、励起光照射後0秒後から180秒後まで10秒毎の蛍光強度(全て励起光出力0.4mA)をプロットしたものを
図14,15に示す。各図について以下に説明する。
【0121】
没食子酸類の溶媒として、Gly+PBS溶液を用いた場合の蛍光波長627nmの蛍光強度変移を
図15に示した。また、没食子酸類の溶媒として、DMSO溶液を用いた場合の蛍光波長632nmの蛍光強度変移を
図16に示した。没食子酸アルキル非存在下(コントロール)では、励起光照射60秒後にはすでに蛍光強度が10分の1以下に低下し、顕著なフォトブリーチングが生じているのに対し、各没食子酸アルキル存在下においては、励起光照射60秒後、120秒後、180秒後においても蛍光強度があまり低下しなかった。したがって、各没食子酸アルキルには、PpIXのフォトブリーチングを抑制する効果があるものと認められた。
【0122】
上記の、没食子酸類の溶媒としてGly+PBS溶液、DMSO溶液を用いた場合についての
図14、
図15のそれぞれのプロットに関し、PpIXの蛍光強度変移を、照射直後(0秒後)の蛍光強度を1になるように、蛍光強度の相対値を算出し、算出された相対強度を縦軸としてプロットしたものをそれぞれ、
図16、
図17に示す。この蛍光強度の相対値の変移を擬一次反応として扱い、半減期を求め、それぞれ、表2、表3に示した。
【表2】
【表3】
各溶液におけるPpIXの蛍光強度の半減期は、いずれの没食子酸アルキルの存在下においても、20倍程度に増大されることが分かった。
【0123】
以上より、本発明者らは、驚くべきことに、没食子酸類には、PpIXのフォトブリーチングに対する優れた防止効果があることを見出した。これに対し、PPDやDABCOの他、還元剤として知られているアスコルビン酸やα−トコフェロール等では、同様の効果はなかった。また、ALA類を取り込ませた細胞系においても、没食子酸類によるPpIXのフォトブリーチング防止効果が認められたことから、ALA類を用いた光線力学的診断においても、没食子酸類は優れたフォトブリーチング防止剤となることが示された。