(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記制御部は、調整モードにおいて、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わる上記アンテナ共振回路の第2共振点での共振周波数と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がプラスからマイナスに変わる上記アンテナ共振回路の第1共振点での共振周波数を検出して記憶手段に記憶し、R/Wモード時に上記アンテナ共振回路の共振周波数を上記第1共振点での共振周波数に制御し、CARDモード時に上記アンテナ共振回路の共振周波数を上記第2共振点での共振周波数に制御することを特徴とする請求項2記載の非接触通信デバイス。
上記制御部は、上記アンテナ共振回路のアンテナによる共振周波数シフトを見越したオフセット量を加えた共振周波数に上記アンテナ共振回路の共振周波数を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非接触通信デバイス。
相手方と電磁結合して通信を行うためのアンテナの共振周波数が制御可能なアンテナ共振回路に接続されるアンテナ駆動部を備え、上記アンテナ駆動部は、アンテナ共振回路に供給する高周波信号の発振周波数が制御可能な発振部と、上記発振部により得られる高周波信号を上記アンテナ共振回路に供給する出力部と、上記発振部の発振周波数及び上記アンテナ共振回路のアンテナ共振周波数を制御する制御部と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相を検出する位相検出部とを備える非接触通信デバイスにおけるアンテナ共振周波数制御方法であって、
上記制御部により、動作モードに応じて上記発振部の発振周波数を制御するとともに、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相に基づいて、上記アンテナ共振回路の共振周波数を制御することを特徴とするアンテナ共振周波数制御方法。
調整モードにおいて、上記アンテナ共振回路の共振周波数を上昇させるように制御を行って、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わる上記アンテナ共振回路の第2共振点での共振周波数と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がプラスからマイナスに変わる上記アンテナ共振回路の第1共振点での共振周波数を検出して記憶手段に記憶し、
R/Wモード時に上記アンテナ共振回路を上記第1共振点での共振周波数に制御し、
ICカードモード時に上記アンテナ共振回路を上記第2共振点での共振周波数に制御することを特徴とする請求項5記載のアンテナ共振周波数制御方法。
調整モードにおいて、上記発振部の発振周波数を制御し、1回の周波数走査で、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わる上記アンテナ共振回路の第2共振点での共振周波数と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がプラスからマイナスに変わる上記アンテナ共振回路の第1共振点での共振周波数を検出して上記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項6記載のアンテナ共振周波数制御方法。
【背景技術】
【0002】
例えば交通乗車券や電子マネー等の非接触IC(Integrated Circuit)カードを利用した非接触通信システムでは、システム専用のリーダ/ライタ(以下、R/Wと記す)装置の送信アンテナ(共振回路)から送出された送信信号を、非接触ICカード内に設けられた受信アンテナで電磁誘導作用により受信する。
【0003】
また、従来、上述した非接触ICカードと同様の機能(以下、ICカード機能という)及びR/W装置と同様の機能(以下、R/W機能という)の両方を備えた例えば移動通信端末等の携帯通信装置や近距離無線通信(NFC:near field communication)システムが開発されている。
【0004】
上述した非接触通信システムにおけるICカードや、ICカード機能及びR/W機能の両方を備えた携帯通信装置においては、温度、湿度、周辺機器等の周囲の環境等、様々な要因でICカード機能(受信アンテナ)の共振周波数が変化する。具体的には、例えば次のような要因(1)〜(5)等で共振周波数が変化する。
(1)各機能部の構成部品の製造上のばらつきの影響
(2)出荷後の構成部品の経時変化や部品交換の影響
(3)例えば、温度、湿度等の周囲環境の変化による特性劣化
(4)携帯通信装置に取り付けられる例えばシール等の装飾物の影響
(5)外部のR/W装置の影響
【0005】
受信アンテナの共振周波数がずれてしまうと、安定して情報を送受信することが困難となる。
【0006】
そこで、従来より、上述の如き様々な要因により生ずる受信アンテナの共振周波数のずれに対処するための技術開発が望まれている。
【0007】
なお、上記要因(1)に対しては、装置の出荷工程において共振回路を構成するキャパシタンス(コンデンサ)やインダクタンス(コイル)を調整することにより対処可能である。しかしながら、この場合、装置毎にキャパシタンスやインダクタンスを調整しなければならないという問題が生じる。また、上記要因(1)に対しては、特性ばらつきの少ない部品を用いることにより対処することも可能である。しかしながら、この場合には、部品が高価になりコストが高くなるという問題がある。なお、上記要因(4)及び(5)は、電磁結合により非接触通信を行う携帯通信装置に特有の問題であり、出荷工程において対処することは困難である。
【0008】
また、ICカード機能及びR/W機能の両方を備えた携帯通信装置に限らず、R/W装置においても、例えば、上記要因(1)〜(3)により、送信アンテナの共振周波数が変化する。それゆえ、R/W装置においても、共振周波数のずれを容易に調整可能にする技術の開発が望まれている。
【0009】
本件発明者等は、受信共振周波数を調整するための調整信号が携帯通信装置内の受信部に送信された際に、調整信号の送信状態に関する情報を含むパラメータを検出し、検出されたパラメータに基づいて、受信共振周波数の調整を行うことにより、受信アンテナ及び/又は送信アンテナの共振周波数のずれを容易に調整可能にして、安定した通信特性を得るようにしたICカード機能及びR/W機能の両方を備える携帯通信装置、R/W装置、及び、それらの装置の共振周波数調整方法を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、本件発明者等が先に提案している特許文献1に開示されている共振周波数調整方法では、携帯通信装置に搭載されているLSIのR/W機能を利用し、13.56MHzの信号を調整信号として出力させ、アンテナ電圧と電流の位相差が0になるように共振回路の可変容量を制御するので、アンテナ電流位相検出用に信号線をアンテナから引き出す必要がある。そのため、アンテナ端子及びLSI端子をそれぞれ1つ増設しなければならないばかりでなく、アンテナ電流位相の検出用に外付け抵抗を設ける必要があり、コストアップの要因となる。また、電気特性的にも共振回路から検出用信号線を引き出すことで、共振の先鋭度(Q:Quality factor)が下がったり、不要輻射などのノイズが増えてしまうという問題点がある。
【0012】
さらに、上記共振周波数調整方法では、R/W機能での調整となっているので、ICカード機能での調整が別途必要となる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実状に鑑み、アンテナ電流位相検出用に信号線をアンテナから引き出すことなく、アンテナ端子及びLSI端子の増設や外付け抵抗によるコストアップや共振のQの低下や、不要輻射などのノイズの増加等の問題点がなく、しかも、NFCシステムなどにおけるR/W機能の動作モード(以下、R/Wモードという)とICカード機能の動作モード(以下、ICカードモードという)における各共振周波数に対応することができる非接触通信デバイス及びそのアンテナ共振周波数制御方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本件発明者は、電磁誘導作用により外部機器と非接触で通信を行う機能を備える非接触通信デバイスについて鋭意研究した結果、アンテナ共振回路に接続されるアンテナ駆動部の出力インピーダンスが実数になるようにマッチング回路は設計され、アンテナ共振回路はアンテナコイルにコンデンサが直並列接続された直並列共振回路であって、複数の共振点を持ち、インピーダンスが低くなるC成分からL成分への遷移点(第1共振点
での共振周波数)がR/Wモードで用いられ、また、インピーダンスが高くなるL成分からC成分への遷移点(第2共振点
での共振周波数)をICカードモードで用いられ、R/Wモードでのアンテナ電流最大周波数は共振回路のQが高い場合は第1共振点
での共振周波数と強い相関があり、アンテナ共振回路の共振周波数をアンテナ駆動部のインピーダンスまたは出力電流の位相として検出できることを見いだした。
【0016】
本発明では、アンテナ共振回路の共振周波数をアンテナ駆動部のインピーダンスまたは出力電流の位相の検出結果に基づいて制御する。
【0017】
すなわち、本発明は、非接触通信デバイスであって、相手方と電磁結合して通信を行うためのアンテナの共振周波数が制御可能なアンテナ共振回路と、上記アンテナ共振回路に接続されるアンテナ駆動部とを備え、上記アンテナ駆動部は、発振周波数が制御可能な発振部と、上記発振部により得られる高周波信号を上記アンテナ共振回路に供給する出力部と、上記発振部の発振周波数及び上記アンテナ共振回路のアンテナ共振周波数を制御する制御部と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相を検出する位相検出部とを備え、上記制御部により、動作モードに応じて上記発振部の発振周波数を制御するとともに、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相に基づいて、上記アンテナ共振回路の共振周波数を制御することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る非接触通信デバイスでは、上記アンテナ共振回路はアンテナコイルにコンデンサが直並列接続された直並列共振回路であって、上記制御部は、上記アンテナ共振回路の共振周波数を制御することにより、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わる点を第2
共振点での共振周波数とし、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がプラスからマイナスに変わる点を第1
共振点での共振周波数とするものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る非接触通信デバイスでは、上記制御部は、調整モードにおいて、上記発振部の発振周波数を制御し、R/Wモード時に上記アンテナ共振回路を上記第
1共振点での共振周波数に制御し、ICカードモード時に上記アンテナ共振回路を上記第
2共振点での共振周波数に制御するものとすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る非接触通信デバイスにおいて、上記制御部は、上記アンテナ共振回路のアンテナによる共振周波数シフトを見越したオフセット量を加えた共振周波数に上記アンテナ共振回路の共振周波数を制御するものとすることができる。
【0021】
また、本発明は、相手方と電磁結合して通信を行うためのアンテナの共振周波数が制御可能なアンテナ共振回路に接続されるアンテナ駆動部を備え、上記アンテナ駆動部は、アンテナ共振回路に供給する高周波信号の発振周波数が制御可能な発振部と、上記発振部により得られる高周波信号を上記アンテナ共振回路に供給する出力部と、上記発振部の発振周波数及び上記アンテナ共振回路のアンテナ共振周波数を制御する制御部と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相を検出する位相検出部とを備える非接触通信デバイスにおけるアンテナ共振周波数制御方法であって、上記制御部により、動作モードに応じて上記発振部の発振周波数を制御するとともに、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相に基づいて、上記アンテナ共振回路の共振周波数を制御することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るアンテナ共振周波数制御方法では、調整モードにおいて、上記発振部の発振周波数を制御し、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わる上記アンテナ共振回路の第2
共振点での共振周波数と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がプラスからマイナスに変わる上記アンテナ共振回路の第1
共振点での共振周波数を検出して記憶手段に記憶し、R/Wモード時に上記アンテナ共振回路を上記第
1共振点での共振周波数に制御し、ICカードモード時に上記アンテナ共振回路を上記第
2共振点での共振周波数に制御するものとすることができる。
【0023】
また、本発明に係るアンテナ共振周波数制御方法では、調整モードにおいて、上記発振部の発振周波数を制御し、1回の
共振周波数走査で、上記位相検出部により検出される上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わる上記アンテナ共振回路の第2
共振点での共振周波数と、上記出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がプラスからマイナスに変わる上記アンテナ共振回路の第1
共振点での共振周波数を検出して上記記憶手段に記憶するものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、アンテナ駆動部の制御部により、動作モードに応じて発振部の発振周波数を制御するとともに、位相検出部により検出される出力部の出力インピーダンスまたは出力電流の位相に基づいて、アンテナ共振回路の共振周波数を制御するので、アンテナ電流位相検出用に信号線をアンテナから引き出すことなく、アンテナ端子及びLSI端子の増設や外付け抵抗によるコストアップや共振のQの低下や、不要輻射などのノイズの増加等の問題点がない。しかも、NFCシステムなどにおけるR/WモードとICカードモードにおける各共振周波数に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0027】
本発明は、近距離無線通信(NFC:near field communication)システムなどに対応するR/W機能とICカード機能の両方を有する非接触通信デバイス100に適用され、例えば
図1の回路図に示すように、相手方と電磁結合して通信を行うためのアンテナの共振周波数が制御可能な差動駆動型のアンテナ共振回路10と、上記アンテナ共振回路10に接続されるアンテナ駆動部20とを備える非接触通信デバイス100により、本発明に係るアンテナ共振周波数制御方法が実施される。
【0028】
この非接触通信デバイス100におけるアンテナ共振回路10は、アンテナコイルL1にコンデンサC1〜C5、VC1が直並列接続された直並列共振回路11と、コイルL2、L3とコンデンサC6,C7からなるEMCフィルタ12とを備え、可変共振コンデンサVC1に印加する制御電圧を変化させることにより、アンテナ共振周波数を変化させることができるようになっている。上記可変共振コンデンサVC1には、印加される制御電圧が増大すると、容量が減少する可変容量コンデンサが用いられており、その一方の制御端はバイアス抵抗R1を介して設置され、他方の制御端がバイアス抵抗R2を介して制御端子に接続されている。
【0029】
また、この非接触通信デバイス100におけるアンテナ駆動部20は、発振周波数が制御可能な発振部21と、上記発振部21により得られる高周波信号を上記アンテナ共振回路10に供給する出力部22と、上記発振部21の発振周波数及び上記アンテナ共振回路10のアンテナ共振周波数を制御する制御部23と、上記出力部22の出力インピーダンスまたは出力電流の位相を検出する位相検出部24と、上記制御部23に接続されたデジタルアナログ変換部25及び記憶部26を備える。
【0030】
上記発振部21は、上記制御部23から供給される周波数制御信号により発振周波数が例えば12〜17MHzの広範囲に亘って制御可能な周波数可変発振器からなる。
【0031】
また、上記出力部22は、上記発振部21から供給される高周波信号を、正相の高周波信号と逆相の高周波信号として出力する一対の差動増幅器22A,22Bからなる。
【0032】
また、上記位相検出部24は、上記出力部22の差動増幅器22Aの入力端と出力端に接続されており、上記差動増幅器22Aに入力される高周波信号の電圧V1と該差動増幅器22Aから出力される正相の高周波信号の電圧V2との差分と上記差動増幅器22A自体のインピーダンスから、上記差動増幅器22Aの出力インピーダンスまたは出力電流の位相を検出し、その検出結果を上記制御部23に供給する。
【0033】
また、上記制御部23は、当該非接触通信デバイス100のR/W機能とICカード機能を制御するもので、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、動作モードに応じて上記発振部21の発振周波数を制御する周波数制御信号を出力するとともに、上記位相検出部24により検出される上記出力部22の出力インピーダンスまたは出力電流の位相に基づいて、上記アンテナ共振回路10の共振周波数を制御する制御電圧信号を出力する。
【0034】
そして、上記制御部23に接続されたデジタルアナログ変換部25は、上記制御部23から出力されるデジタル制御電圧信号をアナログ制御電圧信号Vcontに変換して、上記アンテナ共振回路10の制御端子を介して上記可変共振コンデンサVC1に印加するようになっている。
【0035】
ここで、NFCシステムなどの非接触通信において使用される基本的なマッチング回路としては、
図2の(a)に示す1チャンネルでアンテナL1を駆動するシングル駆動型の回路構成と(b)に示す2チャンネルでアンテナL1を駆動する差動駆動型の回路構成があり、どちらも基本動作は同じである。Tx1端子とTx2端子がアンテナ駆動部の駆動端子にされる。
【0036】
図1に示したアンテナ共振回路10の構成要素に対応する構成要素は、
図2中に同一符号を付して示してある。
【0037】
上記非接触通信デバイス100におけるアンテナ共振回路10は、2チャンネルでアンテナL1を駆動する差動駆動型の回路構成となっている。
【0038】
そして、上記アンテナ共振回路10は、13.56MHzの信号を効率よく送受信できるようにアンテナコイルL1にコンデンサC1〜C5、VC1が直並列接続された直並列共振回路11を備えている。
【0039】
R/Wモードでは、上記制御部23は、上記発振部21を13.56MHzで発振させ、上記出力部22から13.56MHzの正相の高周波信号と逆相の高周波信号がTx1端子とTx2端子に出力する制御を行う。
【0040】
ICカードモードでは、上記制御部23は、上記アンテナ共振回路10のアンテナL1に誘起される受信信号を図示しない受信回路で検出し、負荷変調により応答する制御を行う。
【0041】
図2の(b)に示した差動駆動型の回路構成の基本的なマッチング回路におけるTx1,Tx2端子からみたインピーダンス特性の計算結果を
図3に示す。
【0042】
図3において、実線がインピーダンスZを示し、点線が位相θを示しており、θ=0になる点が共振点である。
【0043】
周波数が低いときにはアンテナコイルL1に直列のコンデンサC4,C5の容量Csが支配的でインピーダンスZは減少し位相θはマイナスを示しているが、周波数が高くなる従ってアンテナコイルL1のインダクタンスの効果が大きくなり、インピーダンスZが大きくなり、位相θがプラスに転じる。この第1共振点
での共振周波数は、抵抗が小さくなるためアンテナコイルL1に大きな電流を流すことができるので、R/Wモードとして使用される。
【0044】
図4にアンテナ電流最大値とインピーダンスZ(θ)=0とアンテナ電流(θ)=0を比較して示すように、アンテナ電流最大値は、インピーダンスZ(θ)=0、アンテナ電流(θ)=0と近い値を示すが、少しずれている。すなわち、共振アンテナは、ノイズ除去用のEMCフィルタや直列コンデンサC4,C5を含んだ回路となるので、コンデンサC1,C3のアンテナコイルL1で構成される並列共振回路のアンテナ電流(θ)=0やインピーダンスZ(θ)=0とは必ずしも一致しない。ただし、インピーダンスZ(θ)は、EMCフィルターや直列共振コンデンサなどの周辺回路部を含めて検出しているので、アンテナ電流(θ)=0よりもアンテナ電流最大値に近い値となっている。
【0045】
インピーダンスZ(θ)は、Tx1,Tx2端子の端子電圧Vと電流Iを測定することにより、Z=V/Iにて計算することができ、端子電圧Vが一定とすれば、インピーダンスZの位相θは、電流Iの位相θと一致するので、Tx端子の電流位相を検出することで共振点を検出することもできる。
【0046】
Tx端子のインピーダンスZ(θ)=0、電流I(θ)=0とアンテナ電流最大値の周波数を比較した結果を
図5の(a),(b)に示す。
図5の(a)は、アンテナ共振回路のQが30以上の高い場合の特性を示し、
図5の(b)は、アンテナ共振回路のQが15の低い場合の特性を示している。
図5の(a),(b)に示すように、アンテナ共振回路のQが30以上の高い場合は、インピーダンスZ(θ)=0、電流I(θ)=0とアンテナ電流最大値の周波数はよく一致しているが、アンテナ共振回路のQが15の低い場合はアンテナ電流との差が大きい。
【0047】
また、ICカードモードにおける共振周波数をピックアップコイルにより検出する場合のシミュレーション結果を
図6に示す。
図6における縦軸はインピーダンスである。ICカードモードでは、少ない電流で大きな電圧を誘起するために並列共振を利用してインピーダンスを高くしており、インピーダンス最大値を共振周波数としている。このICカードモードにおける共振周波数は、
図3における第2共振点
での共振周波数と一致しており、インピーダンスZ(θ)がプラスからマイナスへの遷移点である点で第1共振点での共振周波数とは違っている。
【0048】
上記第1共振点
での共振周波数と第2共振点
での共振周波数は、インピーダンスZの位相θの変化の仕方で判別することができる。
【0049】
上記非接触通信デバイス100において、上記制御部23は、R/Wモードの調整モードの実行時に、上記発振部21の発振周波数を13.56MHzに設定し、上記デジタルアナログ変換部25から上記アンテナ共振回路10の制御端子を介して上記可変共振コンデンサVC1に印加するアナログ制御電圧信号Vcontを、上記位相検出部24で0位相が検出されるまで大きくしていき、0位相が検出されたときの印加電圧を第1共振点
での共振周波数の制御電圧として記憶部26に記憶する。
【0050】
なお、上記位相検出部24における0位相の検出は、位相検波で行うことができるが、位相がプラスからマイナスなった点を検出することにより、検出回路を簡略化することができる。
【0051】
また、上記非接触通信デバイス100において、上記制御部23は、ICカードモードの調整モードの実行時には、上記発振部21の発振周波数を16.0MHzに設定し、上記デジタルアナログ変換部25から上記アンテナ共振回路10の制御端子を介して上記可変共振コンデンサVC1に印加するアナログ制御電圧信号Vcontを、上記位相検出部24で0位相が検出されるまで大きくしていき、上記出力部22の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わる点が検出されたときの印加電圧を第2共振点
での共振周波数の制御電圧として記憶部26に記憶する。
【0052】
上記制御部23は、調整モードにおいて、上記発振部21の発振周波数を制御し、上記アンテナ共振回路10における上記第1共振点での共振周波数と第2共振点での共振周波数を検出して、各制御電圧を記憶部26に記憶し、R/Wモード時に上記アンテナ共振回路10を上記第1
共振点での共振周波数に制御し、ICカードモード時に上記アンテナ共振回路10を上記第2
共振点での共振周波数に制御することができる。
【0053】
上記非接触通信デバイス100では、制御部23により、動作モードに応じて発振部21の発振周波数を制御するとともに、位相検出部24により検出される出力部22の出力インピーダンスの位相または出力電流に基づいて、アンテナ共振回路10の共振周波数を制御するので、
図2の(a)、(b)に示した基本的なマッチング回路におけるアンテナ電流位相検出用端子Imoniやモニタ抵抗R1を必要としない。
【0054】
ここで、上記制御部23は、R/Wモードの調整モードを実行する際に、アンテナ電流最大値とインピーダンスZ(θ)=0とのずれを考慮して設定周波数にオフセットを持たせるようにすることができる。このオフセット量は、アンテナ特性に依存するので、機器メーカが設定して記憶部26に記憶することができる。
【0055】
次に、上記非接触通信デバイス100におけるR/Wモードの調整モード(Self tuningモード1)での処理の具体的な手順を
図7のフローチャートに示す。
【0056】
上記非接触通信デバイス100の制御部23は、Self tuningモード1に移行すると、最初に、記憶部26に記憶されている調整共振周波数とオフセットの値を読み出して発振部21にセットする(ステップS1,S2)。この例では、ステップS1においてR/Wモードの調整共振周波数として13.56MHzを発振部21にセットし、ステップS2において、共振アンテナに起因するオフセット量として0.1MHzを発振部21にセットする。
【0057】
これにより、発振部21は、13.56MHzにオフセット量0.1MHzを加えた13.66MHzで発振する。
【0058】
次に、制御部23は、上記デジタルアナログ変換部25から上記アンテナ共振回路10の制御端子を介して上記可変共振コンデンサVC1に印加するアナログ制御電圧信号Vcontを0Vから1ステップ毎に単位電圧ずつ増加させ(ステップS3)、上記位相検出部24で検出された位相がプラスからマイナスに変化したか否かを判定する(ステップS4)。
【0059】
上記制御部23は、上記ステップS4における判定結果が「No」、すなわち、上記位相検出部24で検出された位相がプラスからマイナスに変化していない場合には、上記ステップS3に戻って上記アナログ制御電圧信号Vcontを0Vから1ステップ毎に単位電圧ずつ増加させ、上記アンテナ共振回路10の共振周波数は順次高くしていく制御を、繰り返し行う。
【0060】
そして、上記制御部23は、上記ステップS4における判定結果が「Yes」、すなわち、上記位相検出部24で検出された位相がプラスからマイナスに変化するまで、上記ステップS3とステップS4の処理を繰り返し行い、上記ステップS4における判定結果が「Yes」、すなわち、上記位相検出部24で検出された位相が
プラスから
マイナスに変化した時点で、上記デジタルアナログ変換部25から出力する上記アナログ制御電圧信号Vcontを0Vから1ステップ毎に単位電圧ずつ増加させたステップ数を最適調整値として記憶部26に記憶して(ステップS5)、Self tuningモード1による第1共振点
での共振周波数の検出処理を終了する。
【0061】
上記記憶部26に記憶した上記ステップ数は、上記位相検出部24で検出された位相がプラスからマイナスへの変化点、すなわち、上記アンテナ共振回路10の第1共振点
での共振周波数に対応する上記可変共振コンデンサVC1の印加電圧の最適調整値になっている。
【0062】
また、上記非接触通信デバイス100におけるICカードモードの調整モード(Self tuningモード2)での処理の具体的な手順を
図8のフローチャートに示す。
【0063】
上記非接触通信デバイス100の制御部23は、Self tuningモード2に移行すると、最初に、記憶部26に記憶されている調整共振周波数とオフセットの値を読み出して発振部21にセットする(ステップS11,S12)。この例では、ステップS11においてICカードモードの調整共振周波数として16.0MHzを発振部21にセットし、ステップS2において、共振アンテナに起因するオフセット量として0MHzを発振部21にセットする。
【0064】
これにより、発振部21は、16.0MHzで発振する。
【0065】
次に、制御部23は、上記デジタルアナログ変換部25から上記アンテナ共振回路10の制御端子を介して上記可変共振コンデンサVC1に印加するアナログ制御電圧信号Vcontを0Vから1ステップ毎に単位電圧ずつ増加させ(ステップS13)、上記位相検出部24で検出された位相がマイナスからプラスに変化したか否かを判定する(ステップS14)。
【0066】
上記制御部23は、上記ステップS14における判定結果が「No」、すなわち、上記位相検出部24で検出された位相がマイナスからプラスに変化していない場合には、上記ステップS3に戻って上記アナログ制御電圧信号Vcontを第1の調整値から1ステップ毎に単位電圧ずつ増加させ、上記アンテナ共振回路10の共振周波数は順次高くしていく制御を、繰り返し行う。
【0067】
そして、上記制御部23は、上記ステップS4における判定結果が「Yes」、すなわち、上記位相検出部24で検出された位相が
マイナスから
プラスに変化するまで、上記ステップS13とステップS14の処理を繰り返し行い、上記ステップS14における判定結果が「Yes」、すなわち、上記位相検出部24で検出された位相がマイナスからプラスに変化した時点で、上記デジタルアナログ変換部25から出力する上記アナログ制御電圧信号Vcontを第1の調整値から1ステップ毎に単位電圧ずつ増加させたステップ数を最適調整値として記憶部26に記憶して(ステップS15)、Self tuningモード2による第2共振点
での共振周波数の検出処理を終了する。
上記記憶部26に記憶した上記ステップ数は、上記位相検出部24で検出された位相がマイナスからプラスへの変化点、すなわち、上記アンテナ共振回路10の第2共振点
での共振周波数に対応する上記可変共振コンデンサVC1の印加電圧の最適調整値になっている。
【0068】
Self tuningモード2による第2共振点
での共振周波数の検出処理フローでは、ステップS14において、Self tuningモード1による第1共振点での共振周波数の検出処理フローにおけるステップS4のように0Vからではなく、上記アナログ制御電圧信号Vcontを第1の調整値から1ステップ毎に単位電圧ずつ増加させるので、上記第1の調整値を最適値とすることにより調整時間を短縮することができる。
【0069】
ここで、Self tuningモード2による第2共振点での共振周波数の検出処理フローは、ステップS14において、上記位相検出部24で検出された位相がマイナスからプラスになる変化点を検出する処理を行う点以外は、Self tuningモード1による第1共振点での共振周波数の検出処理フローと同じになっている。
【0070】
このように、近距離無線通信(NFC:near field communication)システムなどに対応するR/W機能とICカード機能の両方を有する非接触通信デバイス100において、R/Wモードの調整モード(Self tuningモード1)での第
1共振点
での共振周波数の検出処理とICカードモードの調整モード(Self tuningモード2)での第
2共振点
での共振周波数の検出処理を同じ手法で行うことでき、通信用LSIで容易にSelf tuningを実現できる。
【0071】
また、R/Wモードの調整モード(Self tuningモード1)で第1共振点
での共振周波数の検出処理を行い、ICカードモードの調整モード(Self tuningモード2)で第2共振点
での共振周波数の検出処理を行うものとして説明したが、上記非接触通信デバイス100では、R/Wモードの調整モードにおいて、制御部23により、発振部21の発振周波数を制御し、1回の
共振周波数走査で、位相検出部24により検出される出力部22の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がマイナスからプラスに変わるアンテナ共振回路10の第2
共振点での共振周波数と、上記出力部22の出力インピーダンスまたは出力電流の位相がプラスからマイナスに変わる上記アンテナ共振回路10の第1
共振点での共振周波数を検出して記憶部26に記憶することもできる。
【0072】
以上説明したように、上記非接触通信デバイス100では、制御部23により、動作モードに応じて発振部21の発振周波数を制御するとともに、位相検出部24により検出される出力部22の出力インピーダンスまたは出力電流の位相に基づいて、アンテナ共振回路10の共振周波数を制御するので、アンテナ電流位相検出用に信号線をアンテナから引き出すことなく、アンテナ端子及びLSI端子の増設や外付け抵抗によるコストアップや共振のQの低下や、不要輻射などのノイズの増加等の問題点がない。しかも、NFCシステムなどにおけるR/WモードとICカードモードにおける各共振周波数に対応することができる。