(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体用の流路が内部に形成された本体筒部、前記本体筒部からその軸心方向一方へ同軸的に突設された外筒部、及び、前記外筒部の径方向内方に配置されるとともに、突出端が前記外筒部の突出端よりも前記本体筒部側に位置するように前記本体筒部から前記外筒部と同方向へ同軸的に突設された内筒部を有し、軸心方向一方に開口する溝部が前記本体筒部と前記外筒部と前記内筒部とにより囲まれて形成されている継手本体と、
前記外筒部の径方向内側に嵌脱可能に嵌合される筒状の嵌合部、前記嵌合部から軸心方向一方へ突設されて、チューブの長手方向一端部に圧入される筒状の連結部、及び、前記嵌合部から軸心方向他方へ同軸的に突設されて、前記溝部にその開口部から差し込まれる筒状の差込部を有し、前記チューブと連結された状態で前記継手本体に対して接続又は脱離可能に構成されたスリーブと、
前記スリーブを介して前記チューブを前記継手本体に締結可能な締結具とを備えた樹脂製管継手であって、
前記継手本体及び前記スリーブが、フッ素樹脂を用いて製造されており、
前記差込部が、前記溝部の径方向幅よりも大きい径方向幅を有し、前記嵌合部が前記外筒部の径方向内側に嵌合される際に前記溝部に圧入されるように構成され、
前記差込部が前記溝部に圧入されることによって、前記差込部の内周面と前記内筒部の外周面との間をシールするシール部が形成され、
前記差込部と前記溝部とに関し、前記溝部への前記差込部の挿入率をXとし、溝部の径方向幅に対する前記差込部の径方向幅の倍率をYとした場合に、以下の式(1)及び式(2)で規定される範囲内の挿入率と倍率とを有する、
(1)Y=−0.218X+1.218、
(2)Y=−0.67X+1.67、
ことを特徴とする樹脂製管継手。
軸心方向に面する第1当接面を有し、前記差込部の径方向内方に配置されるとともに、突出端が前記差込部の突出端よりも前記嵌合部側に位置するように前記嵌合部から前記差込部と同方向へ突設された筒状の規制部が、前記スリーブに設けられ、
前記第1当接面に当接可能な第2当接面が、前記継手本体の内筒部に設けられ、
前記溝部への前記差込部の圧入完了後、前記第1当接面と前記第2当接面とが圧接するように前記内筒部が前記差込部と前記規制部との間に挟まれて、前記第1当接面と前記第2当接面との間をシールするシール部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製管継手。
前記差込部の突出端部は、その内径が前記嵌合側から前記突出端側に向かうほど大きくなるように先細状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂製管継手。
【背景技術】
【0002】
半導体製造、医療・医薬品製造、食品加工及び化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる流体(例えば、高純度液、超純水又は薬液)用チューブに対して用いられる樹脂製管継手として、例えば、特許文献1に記載の樹脂製管継手が知られている。
【0003】
この種の樹脂製管継手は、継手本体と、インナリング(スリーブ)と、押輪(締結具)とを備えている。前記締結具は、ユニオンナット等からなり、前記樹脂製管継手に結合するチューブを前記スリーブを介して前記継手本体に締結可能なように構成されている。
【0004】
前記継手本体は、本体筒部と、外筒部と、内筒部とを有している。前記外筒部は、前記本体筒部からその軸心方向一方へ同軸的に突設されている。前記内筒部は、前記外筒部の径方向内方に配置されるとともに、突出端が前記外筒部の突出端よりも前記本体筒部側に位置するように前記本体筒部から前記外筒部と同方向へ同軸的に突設されている。
【0005】
前記継手本体においては、軸心方向一方に開口する溝部が、前記本体筒部と前記外筒部と前記内筒部とにより囲まれて形成されている。
【0006】
前記スリーブは、筒状の嵌合部と、筒状の連結部と、筒状の差込部と、筒状の規制部とを有している。前記嵌合部は、前記外筒部の径方向内側に嵌脱可能に嵌合されるように構成されている。前記連結部は、前記嵌合部から軸心方向一方へ突設されて、前記チューブの長手方向一端部に圧入されるように構成されている。
【0007】
前記差込部は、前記嵌合部から軸心方向他方へ同軸的に突設されて、前記継手本体の溝部にその開口部から差し込まれるように構成されている。前記規制部は、前記差込部の径方向内方に配置されるとともに、突出端が前記差込部の突出端よりも前記嵌合部側に位置するように前記嵌合部から前記差込部と同方向へ突設されている。
【0008】
そして、前記樹脂製管継手においては、前記スリーブに前記チューブを連結させたうえで、前記規制部により前記内筒部の変形移動を規制しながら前記差込部を前記溝部に圧入することにより前記スリーブを前記継手本体に接続し、その後に前記締結具を用いて前記チューブを前記継手本体に締結することで、前記樹脂製管継手に前記チューブを結合することができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のような樹脂製管継手にチューブを結合させる場合、スリーブと継手本体との接続に関しては、前記スリーブと前記継手本体との間にシール性を確保するために、前記継手本体の溝部の溝幅(径方向幅)に対して前記スリーブの差込部の肉厚(径方向幅)を大きな値に設定するなどして、前記差込部を前記溝部に強く圧入するようにしていた。
【0011】
このことに関し、前述のとおり強く圧入して前記樹脂製管継手と前記チューブとを結合し、その状態で何年も経過させた後、メンテナンス又は設備のレイアウト変更などで前記チューブを前記樹脂製管継手から取り外そうと前記チューブを前記継手本体から離間する方向へ引っ張った場合、前記差込部が前記溝部から抜け出さずに前記スリーブが前記継手本体に残されたままの状態となって、前記チューブのみが前記継手本体から脱離しやすくなるという知見を得た。
【0012】
前記継手本体に対する前記チューブのみの脱離が発生すると、取り外した前記チューブを再び樹脂製管継手に結合する際、前記継手本体に接続されたままの状態である前記スリーブをいったんペンチ等で引き抜かなければならず、これにより当該スリーブを傷つけるおそれがあるばかりか、こうして分離した前記スリーブと前記チューブとを再結合すると両者間の密着度合いが弱まり、これら両者間のシール性が低下するおそれもある。よって、前記樹脂製管継手に前記チューブを再結合することが事実上不可能となる。
【0013】
そのため、前記樹脂製管継手は、メンテナンス又は設備のレイアウト変更などのために結合中の前記チューブを取り外された場合、前記スリーブが前記チューブと分離して前記継手本体に残存することに起因してその取り外された前記チューブを再結合することができなくなるおそれがあるものと言える。
【0014】
また、前記樹脂製管継手への前記チューブの再結合を容易に実施することができる場合であっても、前記樹脂製管継手の長期間の使用により最初の結合から年月が経過して前記樹脂製管継手の経時変化が進んでいると考えられ、前記スリーブと前記継手本体との間に十分なシール性が得られないおそれがある。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、結合中のチューブが取り外された後、前記チューブを再び確実に且つ容易に結合することができるとともに、前記チューブの最初の結合時であれ再結合時であれ継手本体とスリーブとの間のシール性を良好に保つことができる樹脂製管継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、
流体用の流路が内部に形成された本体筒部、前記本体筒部からその軸心方向一方へ同軸的に突設された外筒部、及び、前記外筒部の径方向内方に配置されるとともに、突出端が前記外筒部の突出端よりも前記本体筒部側に位置するように前記本体筒部から前記外筒部と同方向へ同軸的に突設された内筒部を有し、軸心方向一方に開口する溝部が前記本体筒部と前記外筒部と前記内筒部とにより囲まれて形成されている継手本体と、
前記外筒部の径方向内側に嵌脱可能に嵌合される筒状の嵌合部、前記嵌合部から軸心方向一方へ突設されて、チューブの長手方向一端部に圧入される筒状の連結部、及び、前記嵌合部から軸心方向他方へ同軸的に突設されて、前記溝部にその開口部から差し込まれる筒状の差込部を有し、前記チューブと連結された状態で前記継手本体に対して接続又は脱離可能に構成されたスリーブと、
前記スリーブを介して前記チューブを前記継手本体に締結可能な締結具とを備えた樹脂製管継手であって、
前記継手本体及び前記スリーブが、フッ素樹脂を用いて製造されており、
前記差込部が、前記溝部の径方向幅よりも大きい径方向幅を有し、前記嵌合部が前記外筒部の径方向内側に嵌合される際に前記溝部に圧入されるように構成され、
前記差込部が前記溝部に圧入されることによって、前記差込部の内周面と前記内筒部の外周面との間をシールするシール部が形成され、
前記差込部と前記溝部とに関し、前記溝部への前記差込部の挿入率をXとし、溝部の径方向幅に対する前記差込部の径方向幅の倍率をYとした場合に、以下の式(1)及び式(2)で規定される範囲内の挿入率と倍率とを有する、
(1)Y=−0.218X+1.218、
(2)Y=−0.67X+1.67、
ものである。
【0017】
この構成によれば、前記樹脂製管継手に前記チューブを結合(再結合)させたとき、互いに接続された前記継手本体と前記スリーブとの間に適度な面圧がかかる前記シール部を形成し、このシール部により径方向にシール力を作用させて、前記継手本体と前記スリーブとの間に優れたシール性を確保することができる。
【0018】
そのうえ、前記スリーブを前記継手本体から確実に脱離させて、前記チューブを前記スリーブと連結したままの状態で前記樹脂製管継手から取り外すことが可能となる。前記チューブと連結したままの状態の前記スリーブを前記継手本体に容易に再接続して、前記チューブを前記樹脂製管継手に再結合させることが可能となる。
【0019】
したがって、メンテナンス又は設備のレイアウト変更などに際し、前記樹脂製管継手から取り外した前記チューブの再結合を確実に且つ容易に行うことができる。さらに、前記樹脂製管継手と前記チューブとが初めて結合されたときであれ再結合されたときであれ、前記継手本体と前記スリーブとの間に形成される前記シール部のシール性を良好に保つことができる。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の樹脂製管継手において、
軸心方向に面する第1当接面を有し、前記差込部の径方向内方に配置されるとともに、突出端が前記差込部の突出端よりも前記嵌合部側に位置するように前記嵌合部から前記差込部と同方向へ突設された筒状の規制部が、前記スリーブに設けられ、
前記第1当接面に当接可能な第2当接面が、前記継手本体の内筒部に設けられ、
前記溝部への前記差込部の圧入完了後、前記第1当接面と前記第2当接面とが圧接するように前記内筒部が前記差込部と前記規制部との間に挟まれて、前記第1当接面と前記第2当接面との間をシールするシール部が形成されるものである。
【0021】
この構成によれば、前記樹脂製管継手に前記チューブを結合させたとき、互いに接続された前記継手本体と前記スリーブとの間に、前記差込部と前記内筒部との間で径方向にシール力を作用させる前記シール部に加え、軸心方向にシール力を作用させる追加の前記シール部を形成することが可能となる。したがって、前記継手本体と前記スリーブとの間に優れたシール性を安定的に実現することができる。
【0022】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の樹脂製管継手において、
前記締結具が、前記チューブにその長手方向に移動可能に外嵌される筒状の押圧部と、前記継手本体の外筒部に径方向外方から螺合し得る筒状の外輪部とを有し、
前記スリーブの連結部に、この連結部が前記チューブに圧入されたときに前記チューブの一部を拡径させるように径方向外方へ膨出させる膨出部が設けられ、
前記外輪部が前記外筒部に螺合することによって、前記差込部が前記溝部に圧入されるように、前記押圧部が前記膨出部を前記本体筒部に向かって押圧する構成とされているものである。
【0023】
この構成によれば、前記締結具を用いて前記継手本体に前記チューブを締結するために前記外筒部に対して前記外輪部を螺合したとき、前記スリーブを圧入した前記チューブの長手方向一端部を前記押圧部により前記膨出部に向かって押圧し、前記チューブを前記膨出部に圧接させた状態に保持することが可能となる。したがって、前記樹脂製管継手に結合された前記チューブの抜け止めを図ることができる。
【0024】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂製管継手において、
前記差込部の突出端部は、その内径が前記嵌合側から前記突出端側に向かうほど大きくなるように先細状に形成されているものである。
【0025】
この構成によれば、前記スリーブを前記継手本体に接続するために前記溝部への前記差込部の圧入を開始するとき、前記差込部を前記突出端部から前記溝部に差し込みやすくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、結合中のチューブが取り外された後、前記チューブを再び確実に且つ容易に結合することができるとともに、前記チューブの最初の結合時であれ再結合時であれ継手本体とスリーブとの間のシール性を良好に保つことができる樹脂製管継手を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1に、本発明の一実施形態に係る樹脂製管継手1の断面図を示す。
図2に、
図1の一部拡大図を示す。
図3に、前記樹脂製管継手1における継手本体3とスリーブ4との接続を解除した状態を示す。なお、
図1においては、前記樹脂製管継手1に樹脂製のチューブ2を結合した状態を示している。
【0030】
前記樹脂製管継手1は、前記チューブ2と別のチューブとを接続するために樹脂製の管継手に適用されたり、前記チューブ2を流体機器(例えば弁やポンプ)に接続するために流体機器のチューブ接続位置に設置されたりするものであり、前記継手本体3と、前記スリーブ4と、締結具5とを備えている。
【0031】
前記継手本体3は、本体筒部11と、外筒部12と、内筒部13とを備えている。前記継手本体3は、フッ素樹脂、本実施形態においてはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いて製造されている。
【0032】
前記本体筒部11は、液体等の流体を流通させるための流路14を当該本体筒部11の内部に有している。本実施形態において、前記本体筒部11は、円筒状に形成されている。そして、前記流路14が、前記本体筒部11の内部にその軸心方向に延びるように設けられている。
【0033】
前記外筒部12は、前記本体筒部11の軸心方向一端からその軸心方向一方へ同軸的に突設されている。本実施形態において、前記外筒部12は、円筒状に形成されている。前記外筒部12の外周面には、雄ねじ15が前記外筒部12の軸心方向に沿って設けられている。
【0034】
前記内筒部13は、前記外筒部12の径方向内方に配置されている。前記内筒部13は、その突出端16が前記外筒部12の突出端17よりも前記本体筒部11側に位置するように、前記本体筒部11の軸心方向一端から前記外筒部12と同方向へ同軸的に突設されている。
【0035】
本実施形態において、前記内筒部13は、前記本体筒部11の内径と略同一寸法の内径を有し且つ前記外筒部12の内径よりも小さい外径を有する円筒状に形成されている。そして、流路18が、前記内筒部13の内部にその軸心方向に延びるように設けられて、前記流路14と接続されている。
【0036】
また、前記継手本体3においては、前記本体筒部11と前記外筒部12と前記内筒部13とにより囲まれる溝部20が設けられている。本実施形態において、前記溝部20は、径方向に関して、前記内筒部13と、これと対向する前記外筒部12の軸心方向他方側(根元側)との間に挟まれるように配置されている。
【0037】
そして、前記溝部20は、開口部21を前記内筒部13の突出端16近傍に有し且つ断面凹湾曲状に形成された閉塞部22を前記本体筒部11の軸心方向一端側に有するように、前記内筒部13の外周面の全周にわたって延びる環状に形成されている。
【0038】
前記溝部20の溝幅D2は、深さL2よりも小さく設定されている。前記溝部20の溝幅D2とは、前記外筒部12の内周面と前記内筒部13の外周面との間の径方向幅である(
図3参照)。前記溝部20の深さL2とは、前記溝部20の開口部21から前記閉塞部22(詳しくは、前記溝幅D2が変化し始める変化開始部23)までの軸心方向幅である(
図2参照)。
【0039】
前記スリーブ4は、嵌合部25と、連結部26と、差込部27とを備えている。前記スリーブ4は、前記連結部26により前記チューブ2と連結された状態で前記継手本体3に対して接続又は脱離可能に構成されている。前記スリーブ4は、フッ素樹脂、本実施形態においてはPFAを用いて製造されている。
【0040】
前記嵌合部25は、筒状のものであり、前記継手本体3の外筒部12の径方向内側に嵌脱可能に嵌合されるように構成されている。本実施形態において、前記嵌合部25は、前記外筒部12の内径と略同一寸法の外径を有し且つ前記継手本体3の内筒部13及び前記チューブ2の内径と略同一寸法の内径を有する円筒状に形成されている。
【0041】
前記連結部26は、筒状のものであり、前記嵌合部25から軸心方向一方へ突設されて、前記チューブ2の長手方向一端部に圧入され得るように構成されている。本実施形態において、前記連結部26は、前記嵌合部25の内径及び前記チューブ2の内径と略同一寸法の内径を有する円筒状に形成されている。
【0042】
前記連結部26は、前記嵌合部25の外径よりも小さく且つ前記チューブ2の内径よりも大きい外径を有している。そして、前記連結部26は、前記チューブ2の長手方向一端部に圧入された状態で、このチューブ2の長手方向一端部を介して前記外筒部12の径方向内側に嵌脱可能に嵌合され得るように構成されている。
【0043】
前記差込部27は、筒状のものであり、前記嵌合部25から軸心方向他方へ同軸的に突設されて、前記溝部20にその前記開口部21から差し込まれ得るように構成されている。本実施形態において、前記差込部27は、前記嵌合部25の外径と略同一寸法の外径を有し且つ前記嵌合部25の内径よりも大きい内径を有する円筒状に形成されている。
【0044】
前記差込部27は、前記外筒部12の内径と略同一寸法の外径を有し且つ前記内筒部13の外径よりも小さい内径を有している。すなわち、前記差込部27は、前記溝部20の溝幅D2よりも大きい肉厚(径方向幅)D1を有している(
図3参照)。そして、前記差込部27は、前記内筒部13の外周側を押して圧縮変形させながら前記溝部20に圧入され得るようになっている。
【0045】
前記差込部27は、前記溝部20への圧入時に前記溝部20の深さL2よりも短くなる圧入長さL1を有している。ここで、前記差込部27の圧入長さL1とは、前記溝部20への前記差込部27の圧入が完了した状態における、前記差込部27の内周面のうち前記内筒部13の外周面と接する部分の軸心方向幅である(
図2参照)。
【0046】
前記締結具5は、前記スリーブ4を介して前記チューブ2を前記継手本体3に締結可能に構成されている。前記締結具5としては、本実施形態においては、ユニオンナットが用いられている。なお、前記締結具5の詳細については後述する。
【0047】
このような構成により、次のような結合作業を行うことで前記樹脂製管継手1に前記チューブ2を結合することができる。すなわち、前記結合作業においては、まず、前記連結部26を前記チューブ2の長手方向一端部に圧入することによって、前記スリーブ4を前記チューブ2と連結させる。
【0048】
そして、前記差込部27を前記溝部20に圧入することによって、前記チューブ2と連結済みの前記スリーブ4を、前記チューブ2の流路32が前記流路14・18に連通するように前記継手本体3に接続させる。最後に、前記締結具5を用いて前記チューブ2を前記継手本体3に締結する。
【0049】
そして、前述のように前記樹脂製管継手1に前記チューブ2が結合される場合に、前記差込部27が前記溝部20に圧入されることによって、
図1、
図2に示すように、前記差込部27の内周面と前記内筒部13の外周面との間をシールする第1シール部31を形成することができるようになっている。
【0050】
また、本実施形態においては、前記差込部27と前記溝部20とに関し、前記溝部20への前記差込部27の挿入率L1/L2をXとし、前記溝部20の径方向幅D2に対する前記差込部の径方向幅D1の倍率をYとした場合、以下の式(1)及び式(2)で規定される範囲(
図4における範囲37)内の挿入率と倍率を有するように、前記差込部27及び前記溝部20の形状が設定されている。
(1)Y=−0.218X+1.218
(2)Y=−0.67X+1.67
【0051】
ここで、前述の挿入率L1/L2は、前記溝部20の深さL2に対する、前記溝部20への圧入完了時における前記差込部27の圧入長さL1の割合であり、好ましくは20%超、より好ましくは30%以上とされる。
【0052】
以上の構成により、前記樹脂製管継手1に前記チューブ2を結合(再結合)させたとき、互いに接続された前記継手本体3と前記スリーブ4との間に適度な面圧がかかる前記第1シール部31を形成し、この第1シール部31により径方向にシール力を作用させて、前記継手本体3と前記スリーブ4との間に優れたシール性を確保することができる。
【0053】
そのうえ、前記スリーブ4を前記継手本体3から確実に脱離させて、前記チューブ2を前記チューブ2と連結したままの状態で前記樹脂製管継手1から取り外すことが可能となる。前記チューブ2と連結したままの状態の前記スリーブ4を前記継手本体3に容易に再接続して、前記チューブ2を前記樹脂製管継手1に再結合させることが可能となる。
【0054】
したがって、メンテナンス又は設備のレイアウト変更などに際し、前記樹脂製管継手1から取り外した前記チューブ2の再結合を確実に且つ容易に行うことができる。さらに、前記樹脂製管継手1と前記チューブ2とが初めて結合されたときであれ再結合されたときであれ、前記継手本体3と前記スリーブ4との間に形成される前記第1シール部31のシール性を良好に保つことができる。
【0055】
なお、前記溝部20及び前記差込部27に関する挿入率と倍率とについては、実験例1〜実験例5及び実験例6〜実験例10の実験結果から知見を得た。
【0056】
実験例1では複数の第1樹脂製管継手を、実験例2では複数の第2樹脂製管継手を、実験例3では複数の第3樹脂製管継手を、実験例4では複数の第4樹脂製管継手を、実験例5では複数の第5樹脂製管継手を準備した。これらの樹脂製管継手は、いずれもPFA製の継手本体及びスリーブを備えるものである。
【0057】
各実験例において、複数の樹脂製管継手は、それぞれ前述の実施形態に係る前記樹脂製管継手1と実質的に同一の構成を有するものとしたうえで、溝部の径方向幅D2に対する差込部の径方向幅D1の倍率を異なるものを選択して使用した。
【0058】
また、実験例1〜実験例5においては、溝部に対する差込部の挿入率を実験例毎に異なるものとした。その挿入率は、実験の都合上、実験例1では90%とし、実験例2では80%とし、実験例3では60%とし、実験例4では40%とし、実験例5では30%とした。
【0059】
そのうえで、実験例1〜実験例5の各々の樹脂製管継手(試験体)について、漏れ試験を行った。なお、この漏れ試験は、使用する前記樹脂性管継手において、
図2で言えば、後述する第2シール部43が機能しないように内筒部13と差込部27との当接部分に、流路18側と空間36との間で流体を自在に流通させ得る溝部を追加したうえで実施した。
【0060】
前記漏れ試験は、各試験体において、継手本体とスリーブとが最初に接続されたときに第1シール部で流体の漏洩が発生するか否か(最初の接続時の漏洩発生の有無)、及び、前記継手本体と前記スリーブとが再接続されたときに前記第1シール部で流体の漏洩が発生するか否か(再接続時の漏洩発生の有無)を確認するためのものである。
【0061】
前記漏れ試験においては、着色された浸透液を、各試験体の流路(継手本体及びスリーブ内の流路)に封入し、封入した浸透液に1.4MPaの窒素ガスを加え、前記継手本体と前記スリーブとの間(前記溝部)を通じた前記流路から前記第1シール部への浸透液の浸透具合(浸透液の一部が前記第1シール部を超えるように移動するか否か)を目視により確認した。
【0062】
なお、前記継手本体と前記スリーブとの再接続(即ち、チューブの脱着)は一般的に最初の接続時から年月が経過した後に行われるものであるので、前記試験体における再接続時の漏洩の発生の有無は、最初の接続時に利用した前記継手本体及び前記スリーブに対して加熱(150℃、1時間)と冷却(温度25℃、6時間)とを交互に10回繰り返すことにより前記継手本体及び前記スリーブに内部応力等による復元特性の変化(クリープ変形)を生じさせたうえで確認した。
【0063】
実験例6では複数の第6樹脂製管継手を、実験例7では複数の第7樹脂製管継手を、実験例8では複数の第8樹脂製管継手を、実験例9では複数の第9樹脂製管継手を、実験例10では複数の第10樹脂製管継手を準備した。これらの樹脂製管継手は、いずれもPTFE製の継手本体及びPFA製のスリーブを備えるものである。
【0064】
各実験例において、複数の樹脂製管継手は、それぞれ前述の実施形態に係る前記樹脂製管継手1と実質的に同一の構成を有するものとしたうえで、溝部の径方向幅D2に対する差込部の径方向幅D1の倍率を異なるものを選択して使用した。
【0065】
また、実験例6〜実験例10においては、溝部に対する差込部の挿入率を実験例毎に異なるものとした。その挿入率は、実験の都合上、実験例6では90%とし、実験例7では80%とし、実験例8では60%とし、実験例9では40%とし、実験例10では30%とした。
【0066】
そのうえで、実験例6〜実験例10の各々の樹脂製管継手(試験体)について、実験例1〜実験例5と同様の漏れ試験を行った。
【0067】
さらに、実験例1〜実験例10の各々の樹脂製管継手(試験体)について、繰り返し結合性能確認試験を行った。
【0068】
前記繰り返し結合性能確認試験は、実験例1〜10の各々の試験体から結合中のチューブを取り外した後、その試験体に前記チューブを確実に且つ容易に再結合することができるか否か、具体的には、前記チューブの取外時にスリーブが溝部から抜けずに継手本体に残存してしまうおそれがあるか否か(スリーブ残存のおそれの有無)を確認するためのものである。
【0069】
図5〜
図14に、それぞれ、実験例1〜実験例10についての漏れ試験及び繰り返し結合性能確認試験の実験結果を示す。
図5〜
図14の倍率を挿入率に対してプロットすることで、倍率と挿入率との関係を示す相関関係図を得た。前記相関関係図から、実験例1〜実験例5と実験例6〜実験例10とで共通して、最初の接続時の漏洩発生及び再接続時の漏洩発生がなく、また、前記スリーブ残存のおそれがないものは、前記(1)式を下限ラインとし且つ前記(2)式を上限ラインとする
図4の範囲37内の挿入率と倍率であることがわかった。
【0070】
また、本実施形態においては、
図1、
図2、
図3に示すように、前記スリーブ4は、規制部38を有している。
【0071】
前記規制部38は、筒状のものであり、前記差込部27の径方向内方に配置されている。前記規制部38は、その突出端29が前記差込部27の突出端30よりも前記嵌合部25側に位置するように前記嵌合部25から前記差込部27と同方向へ突設されている。
【0072】
前記規制部38は、前記差込部27が前記継手本体3の溝部20に前記開口部21から前記閉塞部22側に向かって圧入されたとき、前記内筒部13の径方向内方に位置して、前記差込部27により押される前記内筒部13の径方向内方(前記流路18側)への変形移動を規制するように構成されている。
【0073】
そして、前記規制部38が前述の前記内筒部13の変形移動を規制する状態で前記差込部27が前記溝部20に圧入されることによって、前述のとおり、前記差込部27の内周面と前記内筒部13の外周面との間をシールする前記第1シール部31が形成されるようになっている。
【0074】
本実施形態において、前記規制部38は、前記嵌合部25の内径と略同一寸法の内径を有する円筒状に形成されている。前記規制部38は、これに対向する前記差込部27の軸心方向一方側(根元側)との間に前記内筒部13の突出端16側を挟むことができるように、前記差込部27の内径よりも小さい外径を有している。
【0075】
こうして、前記規制部38は、前記差込部27が前記溝部20に圧入される際、前記差込部27により押されることで外周側を圧縮変形させつつ前記本体筒部11に対して前記突出端16側から径方向内方へ変形移動しようとする前記内筒部13をその突出端16側で支えて、前記内筒部13の径方向内方への変形移動を阻止することができるようになっている。
【0076】
また、前記スリーブ4の規制部38に、軸心方向に面する第1当接面41が設けられている。詳しくは、前記規制部38は、その外径が軸心方向一側(根元側)から他方側(前記突出端29側)に向かって次第に縮小する先細状に形成されている。前記第1当接面41は、テーパ面として、前記規制部38の径方向外側に配置されている。前記第1当接面41は、前記規制部28の外周面に形成されている。
【0077】
前記継手本体3の内筒部13に、前記第1当接面41に当接可能な第2当接面42が設けられている。詳しくは、前記内筒部13の突出端16側が、その内径が軸心方向他側(根元側)から一方側(前記突出端16側)に向かって次第に縮径する先細状に形成されている。前記第2当接面42は、テーパ面として、前記内筒部13の突出端16側で径方向内側に配置されている。前記第2当接面42は、前記内筒部13の突出端16側の内周面に形成されている。
【0078】
そして、
図1、
図2に示すように、前記差込部27が前記溝部20に圧入された後、前記第1当接面41と前記第2当接面42とが圧接するように前記内筒部13が前記差込部27と前記規制部38との間に挟まれて、前記第1当接面41と前記第2当接面42との間をシールする前記第2シール部43が形成されるように構成されている。
【0079】
このような構成により、前記樹脂製管継手1に前記チューブ2を結合させたとき、互いに接続された前記継手本体3と前記スリーブ4との間に、径方向にシール力を作用させる前記第1シール部31に加え、軸心方向にシール力を作用させる前記第2シール部43を形成することが可能となる。したがって、前記継手本体3と前記スリーブ4との間に優れたシール性を安定的に実現することができる。
【0080】
また、
図1に示すように、本実施形態においては、前記締結具5は、押圧部46と、外輪部47とを備えている。前記締結具は、具体的には、前述のとおりユニオンナットであり、PFAを用いて製造されている。
【0081】
前記押圧部46は、筒状のものであり、前記チューブ2にその長手方向に移動可能に外嵌されるように構成されている。本実施形態において、前記押圧部46は、前記チューブ2の外径と略同一寸法となる又は若干大きい内径を有する円筒状に形成されている。
【0082】
前記外輪部47は、前記継手本体3の外筒部12に径方向外方から螺合し得るように構成されている。本実施形態において、前記外輪部47は、前記押圧部46の内径よりも大きい内径を有する円筒状に形成されている。前記外輪部47は、前記押圧部46の径方向外側寄りの部分から軸心方向他方へ同軸的に突設されている。
【0083】
前記外輪部47は、前記外筒部12を包囲し得るように、前記外筒部12の外径と略同一寸法の内径を有している。前記外輪部47の内周面には、前記外筒部12の雄ねじ15に対応する雌ねじ48が、前記外輪部47の軸心方向に沿って設けられている。こうして、前記外輪部47が、前記外筒部12と螺合可能とされている。
【0084】
また、本実施形態においては、前記スリーブ4の連結部26に、膨出部50が設けられている。前記膨出部50は、前記連結部26が前記チューブ2の長手方向一端部に圧入されたときに前記チューブ2の長手方向一端部の一部を拡径させるように径方向外方へ膨出させ得る形状とされている。
【0085】
そして、前記締結具5の外輪部47が前記外筒部12に螺合することによって、前記スリーブ4の差込部27が前記継手本体3の溝部20に圧入されるように、前記締結具5の押圧部46が前記スリーブ4の膨出部50を前記本体筒部11に向かって押圧する構成とされている。
【0086】
詳しくは、前記膨出部50は、断面凸湾曲状に形成されている。前記膨出部50は、前記連結部26の軸心方向一方側寄りに配置され、前記連結部26の外周面の全周にわたって延設されている。そして、前記膨出部50は、前記チューブ2への前記連結部26の圧入時、前記チューブ2の長手方向一端部に拡径領域を形成するように構成されている。
【0087】
前記チューブ2の拡径領域には、前記押圧部46の径方向内側で軸方向他側に位置する角部52と当接可能な第3当接面53が形成される。前記第3当接面53は、前記チューブ2の拡径領域うち前記連結部26の長手方向一方側に配置され、前記チューブ2の外径が長手方向他方側から一方側に向かって次第に縮径するテーパ状に形成される。
【0088】
このような構成により、前記継手本体3に前記チューブ2を締結するために前記外筒部12に対して前記締結具5の外輪部47を螺合したとき、前記スリーブ4を圧入した前記チューブ2の第3当接面53を前記締結具5の押圧部46(前記角部52)により前記膨出部50に向かって押圧し、前記チューブ2を前記膨出部50に圧接させた状態に保持することが可能となる。したがって、前記樹脂製管継手1に結合された前記チューブ2の抜け止めを図ることができる。
【0089】
また、本実施形態においては、
図1に示すように、前記チューブ2の前記拡径領域に、前記第3当接面53に加え、第4当接面54が形成される。前記第4当接面54は、前記チューブ2の拡径領域うち前記連結部26の長手方向他方側に配置され、前記チューブ2の外径が長手方向一方側から他方側に向かって次第に縮小するテーパ状に形成される。
【0090】
前記継手本体3の外筒部12には、前記第4当接面54と当接可能な第5当接面55が設けられている。前記第5当接面55は、前記外筒部12の突出端17近傍で径方向内側に配置されている。前記第5当接面55は、前記外筒部12の内径が軸心方向他方側(根元側)から一方側(前記突出端17側)に向かって次第に拡径するテーパ状に形成されている。
【0091】
このような構成により、前記継手本体3に前記チューブ2を締結するために前記外筒部12に対して前記外輪部47を螺合したとき、前記連結部26を圧入した前記チューブ2の第4当接面54を前記押圧部46により前記スリーブ4を介して前記第5当接面55に向かって押圧し、前記チューブ2と前記外筒部12との間に第3シール部56を形成することが可能となる。したがって、前記チューブ2と前記継手本体3との間に優れたシール性を確保することができる。
【0092】
また、本実施形態においては、
図2、
図3に示すように、前記差込部27の突出端部58は、その内径が前記嵌合部25側(根元側)から前記突出端30側に向かうほど大きくなるように先細状に形成されている。ここでは、前記差込部27の突出端部58の径方向内側に面取り加工が施されて、テーパ状の面取部59が設けられている。
【0093】
このような構成により、前記スリーブ4を前記継手本体3に接続するために前記溝部20への前記差込部27の圧入を開始するとき、前記差込部27を前記突出端部58から前記溝部20に差し込みやすくなる。
【課題】結合中のチューブが取り外された後、前記チューブを再び確実に且つ容易に結合することができるとともに、前記チューブの最初の結合時であれ再結合時であれ継手本体とスリーブとの間のシール性を良好に保つことができる樹脂製管継手を提供する。
【解決手段】継手本体3及びスリーブ4が、フッ素樹脂を用いて製造される。前記スリーブの差込部27が前記継手本体の溝部20に圧入されることによって、前記差込部の内周面と前記内筒部の外周面との間をシールするシール部31が形成される。そして、前記差込部と前記溝部とに関し、前記溝部への前記差込部の挿入率をXとし、溝部の径方向幅に対する前記差込部の径方向幅の倍率をYとした場合に、以下の式(1)及び式(2)で規定される範囲内の挿入率と倍率とを有する樹脂製管継手とされる。