【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様によれば、本発明は、複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングする方法であって、(i)ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持する工程と、(ii)前記液体の予め決定された量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して前記基材内に注入させる工程と、(iii)前記基材内の注入された液体を密封しながら維持させる工程と、(iv)前記維持された液体を含む基材を反転させる工程と、(v)前記基材の反転した下端で前記基材のチャネルの開放端部に真空を加え、前記液体を前記基材のチャネルを介して吸収させる工程とを含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態において、工程(i)と工程(ii)との間に、前記基材の外部表面を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部と密封(すなわち、液体の移動を防ぐように密封)させる工程が追加される。
【0017】
他の実施形態において、前記工程(v)で前記液体を維持させる密封は、後の真空適用によってのみ除去される。
【0018】
他の実施形態において、前記基材は、ここで定義されたようなフィルタである。
【0019】
第2態様によれば、本発明は、複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングする装置において、(a)前記ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持させるための手段と、(b)前記基材内に前記液体の予め決定された(決められた)量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して注入させるための手段と、(c)前記基材内の前記注入された液体を密封可能に維持させるための手段と、(d)前記維持された液体を含む前記基材を反転させるための手段と、(e)前記基材の反転した下端で前記基材のチャネルの開放端部に真空を加え、前記液体を前記基材のチャネルを介して吸収させるための手段とを含む装置を提供する。
【0020】
前記基材は、前記保持手段内に手動で挿入されてもよいが、全体的に方法の自動化を高めるために、「ピックアンドプレース(pick−and−place)」ロボット装置を用いることが好ましい。
【0021】
一実施形態において、前記保持手段は、前記基材の少なくとも下端を収容するためのハウジングを含む。当業者であれば、全ての基材が通常の円形断面を有するのではなく、楕円形または「レーストラック(race−track)」、傾斜した楕円または他の非対称断面を有してもよいことが分かるはずである。基材の断面がいかなる形状であれ、当業者であれば、基材を収容するための適切な形状のハウジングを適切に選択することができる。
【0022】
前記保持手段は、前記基材を維持するための全ての適切な手段を含むことができるが、例えば、前記ハウジングの内部空間に拡張し、基材が前記ハウジングの開口内に挿入される時に変形するブラシの剛毛(stiff bristles)、または前記ハウジングの内壁に支持される弾性重合体材質の柔軟なフィン(fin)、または前記基材が前記ハウジング内に挿入された後、ハウジングの内壁表面からハウジングの内部空間に延び、前記基材の外部表面をつかむ実質的に共通の軸面に配置される3以上の等間隔の足(feet)がある。
【0023】
しかし、ある実施形態においては、前記保持手段は、前記基材の外部表面を結合するために、前記ハウジングの内部表面に配置される少なくとも1つの膨張可能なカラー(inflatable collar:インフレータブル カラー:膨張式環)を含む。前記膨張可能カラーは、US5,422,138、
図8−
図16および関連する説明に記載された形態(すなわち、カラーが前記基材の外部表面全体の軸方向長さと接触)であり得るが、本発明では、前記基材の下端で外部表面と接触する第1膨張可能カラーと、前記基材の下端の上(例えば、前記基材の下端と上端との間の中間程度または前記基材の半分上部内)で前記基材の外部表面と接触する第2膨張可能カラーとを含む構造が用いられることが好ましい。US5,422,138に開示されたシングルカラーは、側平面上でより大きい柔軟性を提供し、前記基材を要求される水準に強固に維持するためにより大きい圧力を必要とするのに対し、後の方法の工程(特に本発明の工程)の場合、基材がより強固に維持され、より高精度を提供できることを本発明の発明者らは見出し、これが、前記基材を固定するために少なくとも2つの膨張可能カラーがあることが望ましい理由である。
【0024】
全ての適切な液体注入手段が使用できるが、ある実施形態においては、シリンダ内で往復運動するピストンを含む。「シリンダ」という用語がピストンヘッドとシリンダボア(bore)の円形断面を含むものの、実施形態において、ピストンヘッドとシリンダボアの形状は、基材の断面に左右される(すなわち、基材の断面が楕円形であれば、ピストンヘッドとシリンダボアの断面も楕円形である)。これは、ピストンヘッドとシリンダボアの断面を基材に合わせることが、より均一な軸方向のウォッシュコート深さで基材のコーティングを促進できるからである。しかし、基材の断面をピストンヘッドとシリンダボアに合わせることは必須ではなく、これにより、異なる断面の基材をコーティングするために装置を変更する必要はない。
【0025】
一般的に、ピストンは、ピストンヘッドの表面がシリンダと共に隣接するか整列される第1位置と第2位置との間をシリンダ内で往復運動し、前記シリンダ、シリンダヘッドおよびピストンヘッドの内壁が変位容積(排気量容積)を定義(決定)する。
【0026】
一実施形態において、前記変位容積は、前記基材に注入される液体の容積と類似するか同一であり、前記ピストンは、前記液体が前記基材に注入された後、前記第1位置に復帰する。このような構造は、前記ピストンが第1位置で前記ピストンヘッドの表面が前記基材の下端を支持するかこれに隣接する実施形態において好ましい。前記基材が先に前記ハウジング内に挿入された時、前記基材は、前記膨張可能カラーのような前記保持手段が駆動される前に前記ピストンヘッドによって支持可能で、前記保持手段および/または基材内の注入された液体を密封可能に維持するための手段との、より確実な結合を提供することができる(後者の密封手段は後述する)。
【0027】
他の実施形態において、前記変位容積は、前記液体の多重ドース(dose:投用、添加量)を収容するのに十分である(すなわち、シングルドースを2以上の基材に注入するための十分な液体)。もちろん、このような構造において、前記シリンダが反転する場合に、実施形態で前記シリンダ内の液体を維持させることができる基材内の注入された液体を密封可能に維持するための手段を選択することが必要である。
【0028】
液体は、ピストンロッドとピストンヘッドの配管を介するか、またはシリンダハウジングの壁内のバルブ手段によってシリンダヘッド内の穴を介してシリンダ内に適切に供給可能であり、液体は、シリンダヘッド内の穴を介して前記基材内に注入される。全ての場合に、コーティング液体の無駄使いを防止するために、前記基材に注入される液体の予め決定された容積のみを前記変位容積で供給することが好ましい。一つの構造において、前記変位容積は、前記基材に注入される液体の容積と同一で、前記変位容積が前記液体で充填された時、デッドスペース(dead space)がほとんどないか全くなくなる。前記液体の全体容積が前記基材内に注入された時、前記シリンダボアは空けられ、前記ピストンヘッドは、後述する理由から基材の下端に隣接する。もちろん、上述したように、前記変位容積を2以上の液体注入工程のために十分な液体で充填することも可能であり、前記ピストンは、工程方式で前記シリンダ内で前進し、結果的に各工程に対する変位(および液体)容積を減少させることができる。
【0029】
前記基材内に注入された液体を密封可能に維持するための手段は、全ての適切な構造(例えば、キロチン(quillotine)、アイリス(iris)またはシャッターまたは一方向透過性を有する物質)であり得る。しかし、好ましい構造において、前記液体を密封可能に維持するための手段は、ピストンヘッドの表面自体であるが、その間で密封を向上させる物質(例えば、ソフトシリコーンフォームまたは合成ゴムのような弾性重合体物質)を含むことができる。したがって、液体の全体容積がシリンダから基材に加圧される(すなわち、ピストンが第1位置に復帰する)前記実施形態において、前記ピストンヘッドの表面は、前記基材の下端と接触し、前記基材に注入された液体を維持するために密封を形成する。
【0030】
一実施形態において、前記液体維持手段は、前記真空を適用する前に除去される。
【0031】
しかし、他の実施形態において、前記液体維持手段は、前記基材の下端との密封を前記真空手段が前記基材の反転した下端に真空を加えるまで維持される(すなわち、真空のスイッチオフに続いて静的真空が基材内に残る)。密封手段の特性により、液体は基材のセルの間で流れず、反転後、前記基材にわたって不均一な軸方向のコーティング深さにつながるか、基材の外部壁の下から液体が注入された基材の端部で漏洩し、真空が加えられ、基材のチャネルに沿って液体が移動する前に、液体損失と基材の外部「スキン(skin)」コーティングのコスメチック(cosmetic:表面的な)な外形が不十分に現れる。ピストンヘッドが密封を提供する実施形態において、真空が加えられるまで基材との密封固定を維持することは、次の基材のためのピストン表面洗浄の利点も提供する。
【0032】
他の実施形態において、ハウジング、ピストンおよびシリンダは、反転手段によって1つのユニットとして全て反転する。望ましくは、このような反転手段は、ロボット装置を含む。
【0033】
一実施形態において、前記装置は、前記基材の外部表面を前記基材の少なくとも下端で前記チャネルの開放端部と密封(すなわち、液体の流れを防ぐように密封)するための手段を含む。これは、前記ピストンボアの断面が基材の断面と異なる形状である実施形態(例えば、基材は楕円形で、ピストンボアは円形)で必要となり得る。これは、シリンダ周辺のデッドスペース領域内の全ての残留液体が反転過程で前記基材内に染み込むことを防ぐ。
【0034】
基材の外部表面を基材の下端で前記チャネルの開放端部と密封させるために、全ての適切な密封手段(例えば、前述した柔軟なフィン)が使用できるが、特定の実施形態において、前記密封手段は、膨張可能カラー(1つ以上の膨張可能カラーが用いられる)を含み、膨張可能カラーは、前記基材の下端と結合される。
【0035】
前記真空手段は、全ての適切な形態であり得るが、一実施形態では、広い端部が前記基材の反転した端を収容する漏斗を含む。
【0036】
前記真空手段と前記基材の反転した端部との間の密封は、前記漏斗の広い端部の内部表面で定義された空間内に延びる柔軟な材質のフィンによって達成可能であり、前記フィンは、前記基材が前記漏斗の広い幅の端部内に挿入された時に変形し、前記フィンは、前記基材の外部表面と結合する。しかし、ある実施形態では、前記漏斗の広い幅の端部の内部表面は、前記基材の外部表面を密封可能に固定するための膨張可能なカラーを含む。前記真空手段に形成された密封は、前記基材をつかむことができるため、第2保持手段として見なされる。
【0037】
前記(第1)保持手段は、真空の適用および後の真空工程の再適用時にコーティングされた基材から分離され得る。これは、少なくとも4つの理由がある。
(i)前記ピストンヘッドが注入された液体を密封可能に維持するための手段を含み、密封が真空適用およびスイッチオフに続いて維持(すなわち、静的真空が基材に残る)される実施形態において、基材は、前記ピストンヘッドと空圧的密封を形成することができる。前記真空手段上の前記(第2)保持手段は、前記基材が前記ピストンヘッドから引っ張られるようにする。
(ii)前記基材チャネルにおけるいかなる真空損失も防ぐ。
(iii)基材のエッジ(edge)損傷を防ぐか減少させることで、基材を保護する。
(iv)空気が前記ハウジングに接近できるようにし、液体が注入される前記基材の端部を介して前記基材に入るが、これは、ハウジングの壁に穴を形成することによってなされることも可能である。
【0038】
真空過程に続き、前記装置とコーティングされた基材は、上方位置に復帰することができ、次に、コーティングされた基材は、乾燥およびコーティングの選択的か焼のために除去され得る。
【0039】
本発明の方法および装置は、最新の「区域化された」基材の製造を可能にする。一番目の通過後にコーティングされた基材の乾燥および選択的か焼後、同一の基材が二番目の通過で一番目のコーティングが注入された箇所と反対の端部から異なる液体でコーティングできる。例えば、ドース重量と液体の固体含有量と加えられた真空の量が、必要なコーティングの軸方向深さを達成するために全て計算され最適化できる。二番目の通過で、基材モノリスを一番目の通過コーティングの反対側端部から異なる組成物でコーティングし、2つのコーティングの間で互いに出会って重なる所望量(例えば、5%)に到達することもできる。一番目または二番目のコーティングを超える多重コーティング(例えば、三番目の通過コーティング)は、望ましくは、乾燥と選択的か焼後に完了することもできる。
【0040】
この方式で、本発明は、WO2004/079167に開示されたようなフィルタ基材(すなわち、区域化されたフィルタ基材、第1触媒区域は、一酸化炭素、炭化水素および一酸化窒素を酸化させるための少なくとも1つの白金族金属(PGM)を含むディーゼル酸化触媒を含み、少なくとも1つの下流側の触媒区域が少なくとも1つのPGMを含み、第1触媒区域でのPGMの全体含有量が少なくとも1つの下流側の触媒区域でのPGMの全体含有量より大きい)の製造を可能にする。
【0041】
ある実施形態において、前記装置は、適切にプログラムされたコンピュータによって制御され、使用中に本発明にかかる一連の方法過程を行う。
【0042】
本発明の発明者らは、本発明にかかるハニカムモノリス基材のコーティング方法が、触媒(1つ以上の白金族金属を含む酸化触媒(最終コーティングされたフィルタは、一般的に煤(soot)触媒化フィルタ(CSF)として知られる)と、窒素酸化物をアンモニアのような窒素性還元剤と尿素のようなアンモニア前駆体で選択的に還元させる触媒)を含むウォールフローフィルタの製造に適用される時に特別な効果を提供することが分かった。本発明にかかる方法は、希薄NO
xトラップ、単にNO
xトラップとしても知られた、いわゆるNO
x吸収剤触媒(NAC)を含むフィルタを製造するために使用できると考えられる。
【0043】
本発明の方法は、ドース量(投与量、添加量)、ウォッシュコート固体含有量と真空強度および期間の適切な操作でフィルタチャネルの一部または全部がコーティング可能で、異なるチャネルのコーティング長さが入口と出口のチャネルに対して選択可能であり、本発明の方法は、区域でコーティングされたウォールフローフィルタ構造(例えば、入口チャネルの一番目の軸方向の20%は、入口チャネルの下流側に残るものよりも高濃度の白金族金属でコーティングされる)を製造するのに使用できる点で柔軟である。
【0044】
一般的に、所与の含有量に対して選択されたウォッシュコート固体含有量は、コーティングされる部分の空隙率と塗布されるコーティングの軸方向長さに左右され、必要な正確なウォッシュコート固体含有量は、一般的な試行錯誤によって決定可能である。しかし、一般的に、ウォッシュコート固体含有量は、約8〜40%の範囲である。一般的に、同一の軸方向長さの一部(より高い空隙率の部分)をコーティングするために、より低いウォッシュコート固体含有量が使用される。また、同一のウォッシュコート含有量で同一部分から異なる軸方向長さをコーティングするために、軸方向長さが短いほど、ウォッシュコート固体含有量も高くなる。一般的なコーディエライトまたはSiCウォールフローフィルタを標準ウォッシュコート含有量でウォッシュコートをコーティングするために、チャネルの全体長さをコーティングする場合、25%のウォッシュコート固体含有量を選択することができる。ウォールフローフィルタの相対的に短い区域をコーティング(例えば、触媒煤フィルタの短い入口区域を相対的に高い白金族金属のウォッシュコート含有量でコーティング)するために、より高いウォッシュコート固体含有量(例えば、30〜40%)が選択できる。同一のウォッシュコート含有量でより短い軸方向長さの一部をコーティングするためのウォッシュコート量は、より長い軸方向長さの一部に対するものよりも少ないはずである。
【0045】
加えられる真空は、一般的に−5kpa〜−50kpaの次数であり、約0.3秒〜約2秒の時間の間、ウォッシュコート固体含有量(真空時間が長いほど、ウォッシュコート固体含有量は低くなる)および部分の大きさ(部分が大きいほど、時間は長くなり、真空は高くなる)に左右される。しかし、一般的に、真空適用は、約1秒の次数であり得る。より大きい基材(例えば、重量(heavy−duty)ディーゼル車両に対して使用される)は、
−40〜50kpaのような高い真空適用が要求さ
れることになる。
【0046】
本発明の発明者らは、部分の反転後、少なくとも2つの工程で工程(v)で真空を加えることにより、優れたコーティングプロファイル(profile:外形、側面、統計)が達成できることが分かった。前記真空手段内の膨張可能カラーのようないかなる保持手段の適用なしに、相対的に低い真空圧力での一番目の短い、相対的に弱い真空適用(−5〜−10kpaの次数);保持手段の駆動で二番目のより長くてより強い真空が後に続く。前記短い真空適用は、ピストンの表面を洗浄し、二番目の、高い真空が液体ウォッシュコート成分を抜き取ってウォッシュコート固体を部分の表面上に固定させる前に、前記ウォッシュコートを前記チャネルの長さ方向に沿って移動するように許容する機能を果たす。一番目および二番目の真空適用の間の時間は、5−10秒(例えば、6−8秒)であり得る。重量ディーゼル車両部分では、三番目または後続の真空適用が必要となり得る。
【0047】
本発明の発明者らは、本発明の方法が、車両で窒素酸化物をアンモニアのような窒素性還元剤と尿素のようなアンモニア前駆体で選択的に還元するための触媒を含むウォールフローフィルタの製造に特に適用できることが分かった。このような選択的触媒還元(SCR)触媒は、V
2O
5/WO
3/TiO
2とFe/BeatゼオライトまたはCu/CHAのような遷移金属置換ゼオライトを含む。このような製品を製造する時、許容可能な背圧で触媒活性度を維持する競争要件を合わせることが難しい。高い背圧は、パワー出力と燃料の節約において否定的に作用する。車両(例えば、ユーロ5とユーロ6)から排出が許容される排気ガス基準(すなわち、汚染物質の量)が強化され続けることにより、触媒の効果を持続させる使用中のOBD(on−board diagnostic)確認のための法的要件を含ませたりもする。OBD要件は、触媒フィルタと特に関連するが、車両製造者は、一般的に効率的なエンジン性能を維持するために、車両の設計においてフィルタに付着した粒子性物質を定期的に除去するようにし、ここで、排気ガス温度は、燃料噴射エンジン制御部および/またはエンジンの下流側で排気ガスで噴射され、適切な触媒上で燃焼される燃料を用いて増加する。車両製造者は、全体(車両)の寿命耐久性に合った触媒製品を要求しているため、触媒フィルタの製造者は、初期にできるだけ多くの触媒を備えるフィルタを装着することにより、長い時間、触媒不活性化に対抗しようと努力している。しかし、前述したように、触媒含有量を増加させることは、フィルタの背圧の所望しない増加をもたらす。より高い空隙率のフィルタ基材を用いることにより、これに伴う問題の一部に対抗することが可能であるが、このような基板は、割れやすく、取り扱いがさらに難しい。許容されない背圧を避ける他の手段は、触媒コーティングの量を制限することである。しかし、SCR触媒の量を減少させることは、NO
x転換率と低温度のNO
x転換に非常に重要なNH
3貯蔵能力を低下させる。
【0048】
SCR触媒のウォッシュコートをウォールフローフィルタ基材に含有させる方法の開発において、本発明の発明者らは、WO2005/016497に開示されたような従来のコーティング技術(ウォールフローフィルタ基材が垂直に触媒スラリーの一部に含浸され、基材の上端がスラリーの表面上に位置する)を研究した。ウォッシュコートスラリーは、各チャネル壁の入口面と接触するが、各壁の出口面との接触は防止される。サンプルが約30秒間スラリーに残される。基材がスラリーから除去され、過剰なスラリーは、まず、チャネルから排出可能にした後、(スラリーの浸透方向とは反対に)圧縮空気を吹き込み、スラリーの浸透方向から真空を加えることにより、ウォールフロー基材から除去される。WO2005/016497は、このような技術により、触媒スラリーが基材の壁に染み込むが、過度の背圧が最終基材に形成される程度で空隙が詰まることはないと主張している。次に、コーティングされた基材は、一般的に約100℃で乾燥し、より高い温度(例えば、300〜450℃)でか焼される。このような工程は、ウォールフローフィルタの出口面をコーティングするために繰り返し可能である。
【0049】
最近、ウォールフローフィルタの製造者は、他の特徴のうち、粒子濾過を改善するために、その入口面が微細に分けられた耐火性粒子を含む表面メンブランでプリコーティングされた製品を提供し始めた。例えば、NGK Insulator Ltd.のEP2158956と、SAE(Society of Automotive Engineers)技術論文2008−01−0621(EP2158956の発明者による2008年4月14日〜17日、ミシガン、デトロイトで開催された2008年の世界学会)を参照すればよい。本発明の発明者らは、WO2005/016497の従来のコーティング技術を利用し、このような、いわゆる「メンブランフィルタ」をコーティングする時の特別な困難さを確認した。WO00/01463とWO2010062794も参照すればよい。
【0050】
特に、触媒スラリー内におけるフィルタの従来の(ディップ)コーティングは、メンブラン層のコーティング形成からなるが、本発明者らは、高い毛細管力によってコーティングスラリーがメンブラン層に引導されると認識する。メンブラン層はコーティングによって詰まり、最終フィルタは非常に高い背圧を有する。メンブランチャネルの入口と出口チャネルともを、例えば、遷移金属置換ゼオライト基盤のSCRコーティング剤でコーティングする従来のコーティング技術を利用することは、メンブラン構造をブロックさせるSCR触媒をもたらし、最終SCRコーティングされたフィルタは高い背圧を有する。
【0051】
本発明の発明者らは、メンブランの入口と出口チャネルともをコーティングする従来のディップコーティングを用いることによって発生した高い背圧は、出口チャネルのみをディップコーティングすることにより(すなわち、基材製造者がメンブラン表面をプリコーティングした入口フィルタチャネルは、SCR触媒でコーティングされない)、大きく減少できると判断した。しかし、このような接近を試みた時、発明者らは、(出口チャネルを介した)ディップコーティングは、メンブラン構造に配置されると決定した一部であるフィルタの後方でより高い触媒コーティングの割合を有するコーティング勾配(gradient)をもたらすことを見出したが、他方で、触媒は、プリコーティングされた表面メンブラン層からチャネル壁の反対面に塗布される。
【0052】
次に、発明者らは、適切なウォッシュコート固体含有量と相対的に速い真空適用を用いるメンブラン層でコーティングされた入口チャネルを備えるウォールフローフィルタ基材の出口チャネルのみをコーティングする、本発明にかかる方法を用いることにより、出口チャネルはより均一にコーティングできる(すなわち、入口メンブラン層で見つかるSCR触媒が出口チャネルに不十分にまたは実質的に全く塗布されない)ことを見出した。
【0053】
他の態様によれば、本発明は、
ウォールフローフィルタ基材モノリスの入口チャネルに、軸方向に沿って実質的に均一な触媒ウォッシュコートを有する、微細に分離された無機固体を含む表面メンブラン層がプリコーティングされたウォールフローフィルタ基材モノリスの出口チャネルをコーティングする方法
であって、
(i)ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持する工程と、
(ii)触媒ウォッシュコートの予め決定された量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して前記基材内に注入させる工程と、
(iii)前記基材内の注入された触媒ウォッシュコートを密封しながら維持させる工程と、
(iv)前記維持された触媒ウォッシュコートを含む基材を反転させる工程と、
(v)前記基材の反転した下端で前記基材の入口チャネルの開放端部に真空を加え、前記触媒ウォッシュコートを前記基材の出口チャネルに沿って吸引する工程
を含む方法を提供す
る。
【0054】
本発明の前記態様の利点は、(出口チャネルを介した)触媒ウォッシュコーティングがコーティング勾配を減少させ、同一の触媒基材モノリスに比べてより低い煤含有背圧、より高いNH
3貯蔵とより高いNO
x転換率(フレッシュ(fresh)および熱水的エージング)を提供する(還元剤としてアンモニアまたはアンモニア前駆体が使用される)ことを含み、前記触媒ウォッシュコートは、従来のディップコーティング技術(WO2005/016497に開示される)による出口チャネルに塗布される。本発明の発明者らは、前記改善されたコーティングの均一性がフィルタに全体に亘って優れた流れ分布(窒素性還元剤のような還元剤の注入と後のNH
3スリップの制御とNO
x転換率に関連する)に寄与できると考える。
【0055】
実施例1と
図8から明らかなように、フィルタの後方で触媒の量を減少させることは、「実在(real−world)」のエージング条件に対しても利点があり、このような領域は一般的により深刻な条件(高い温度および大きい粉塵への露出)に露出し、フィルタの前方部分より相対的により低い触媒性能をもたらすことがある。本発明にかかるコーティング方法(出口チャネルを介したディップコーティングの代わりに出口チャネルを介して)を用いることにより、フィルタの後方にコーティングされた触媒の割合が減少し、実性能に利益を与えることができる。
【0056】
従来のディップコーティング方法に対する本発明の方法の他の利点は、ハニカム基材モノリスによるウォッシュコートの1つ以上の成分の所要において多重成分の触媒ウォッシュコートからの成分の選択的吸着が従来のディップコーティング方法に比べて実質的に減少するか除去できることである。
【0057】
他の態様によれば、本発明は、触媒ウォールフローフィルタ基材モノリスを提供するが、前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの製造者は、その入口チャネルに微細に分離された耐火性固体を含む表面メンブラン層にプリコーティングし、前記出口チャネルは、軸方向に沿って実質的に均一な触媒ウォッシュコートのコーティングプロファイルを有し、触媒ウォールフローフィルタ基材は、本発明
の方法
を用いてウォールフローフィルタの出口チャネルを触媒ウォッシュコートでコーティングすることによって製造される。
【0059】
実施形態において、コーティングに先立ち、本発明の後者
の態様にかかる前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの空隙率は、40〜80%である。好ましい実施形態において、本発明で用いるためのフィルタの空隙率は、一般的に>40%または>50%および45〜75%(例えば、50〜65%または55〜60%)である。
【0060】
他の実施形態において、前記ウォールフローフィルタ基材モノリスのコーティングに先立ち、平均空隙の
大きさは、8〜45μm(例えば、8〜25μm、10〜20μmまたは10〜15μm)である。ある実施形態において、前記第1平均空隙の大きさは、>18μm(例えば、15〜45μm、20〜45μm、20〜30μmまたは25〜45μm)である。
【0061】
実施形態において、本発明の前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの前記出口チャネルに塗布された前記触媒ウォッシュコートは、NO
xトラップ、担持された白金族金属を含む触媒煤フィルタウォッシュコートまたはNH
3−SCR触媒(好ましくはNH
3−SCR触媒)である。
【0062】
好ましくは、前記NH
3−SCR触媒は、ゼオライト置換した遷移金属を含み、最も好ましくは、前記遷移金属は、銅、鉄、セリウムおよびそれら2以上の混合物からなる群より選択され、前記ゼオライトは、フェリエライト、CHA、BEAおよびMFI(ZSM−5)からなる群より選択される。特に好ましい組合せは、Cu/CHA、Fe/フェリエライト、Fe/またはFe−Ce/ZSM−5およびFeまたはFe−Ce/BEAである。