特許第5883948号(P5883948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5883948ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883948
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
   C08J3/12 ACEY
【請求項の数】14
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2014-549879(P2014-549879)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2013081968
(87)【国際公開番号】WO2014084281
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-258644(P2012-258644)
(32)【優先日】2012年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-178034(P2013-178034)
(32)【優先日】2013年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】小西 一正
(72)【発明者】
【氏名】角永 憲資
(72)【発明者】
【氏名】藤野 眞一
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/034146(WO,A1)
【文献】 特開昭63−162048(JP,A)
【文献】 特開平11−292919(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/114058(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/149313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00〜 3/28
99/00
B29B 7/00〜11/14
13/00〜15/06
B29C31/00〜31/10
37/00〜37/04
71/00〜71/02
B01J 2/00〜 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
上記粉砕工程において用いられるロールミルに乾燥重合体を供給する際、当該ロールミルのロール軸方向に、乾燥重合体を分散させて供給し、
上記粉砕工程の雰囲気温度が30〜100℃であり、かつ、雰囲気の相対湿度が50%RH以下であり、ならびに
上記ロールミルにおいて、ロール軸方向にロールを3等分した際、上記乾燥重合体の供給量が最も多い部分が最も少ない部分の1.0〜10倍である、及び/又は上記乾燥重合体をフィード幅比80〜99%の範囲内で、上記ロールミルに供給することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
但し、上記フィード幅比は、下記式により規定される。
【数1】
【請求項2】
上記乾燥工程で得られる乾燥重合体を上記ロールミルで粉砕する前に分級する分級工程を含み、当該分級工程において用いられる篩の非通過物を分離し、当該分離された非通過物がロールミル以外の粉砕方法で粉砕される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記乾燥重合体の含水率が、上記ロールミルによる粉砕直前で3.0〜15重量%である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記乾燥重合体を、機械的分散手段により分散させる、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記粉砕工程において使用される装置が、上記乾燥重合体を上記ロールミルに供給するための配管を含み、
当該ロールミルのロール長が、当該配管の径の2〜100倍である、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記ロールミルがロール表面に、溝が縞模様状に並んだ凹凸パターンを有し、かつ、当該溝がロールの回転軸に対して1〜89°傾斜している、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記ロールミルの少なくとも一対のロールが、互いに逆方向に回転する低速ロールと高速ロールからなり、その周速比が1:1.05〜1:10である、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記低速ロールの周速が0.7〜15(m/s)である、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記ロールミルにおける最小のロールクリアランスが100〜1000μmであり、
上記粉砕工程で得られる粉砕物の重量平均粒子径(D50)が、ロールクリアランスの最小値に対して、0.5〜2.0倍となるように粉砕する、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記粉砕工程が減圧下及び/又は気流下で行われる、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が30日間以上である粉砕工程において、
ロールクリアランス変化幅が100μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が50%以下の条件で、上記乾燥重合体を粉砕する、請求項1〜10の何れか1項に記載の製造方法。
但し、上記ロールクリアランス変化幅及びロールクリアランス変化率は、下記式により規定される。
【数2】
【数3】
【請求項12】
上記粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が200日間以上である粉砕工程において、
ロールクリアランス変化幅が300μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が90%以下の条件で、上記乾燥重合体を粉砕する、請求項1〜10の何れか1項に記載
の製造方法。
但し、上記ロールクリアランス変化幅及びロールクリアランス変化率は、下記式により規定される。
【数4】
【数5】
【請求項13】
得られる吸水性樹脂の重量平均粒子径(D50)が200〜600μmである、請求項1〜12の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
得られる吸水性樹脂の吸水速度(FSR)が0.20(g/g/s)以上、かつ、生理食塩水流れ誘導性(SFC)が10(×10−7・cm・s・g−1)以上である、請求項1〜13の何れか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年11月27日に出願された日本特許出願第2012−258644号、及び2013年8月29日に出願された日本特許出願第2013−178034号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として本開示に引用される。
【0002】
本発明は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生用品の吸収体に用いられる吸水性樹脂の製造方法に関するものであり、優れた性能を有するポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を安価で製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
吸水性樹脂は、高度の吸水性を有する物質として近年開発され、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生用品等の吸収体や、農園芸用保水剤、工業用止水剤等として、主に使い捨て用途で多用されている。当該吸水性樹脂は多種多用な吸水性樹脂が存在し、その原料としても数多くの単量体や親水性高分子が存在している。中でも、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、その吸水性能の高さから工業的に最も多量に製造されている。
【0004】
かかる吸水性樹脂は、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程等を経て製造される(特許文献1〜3、非特許文献1)。主用途である紙オムツの高性能化に伴い、吸水性樹脂も多くの機能を求められている。具体的には、単なる吸水倍率の高さに限らず、ゲル強度、水可溶成分(特許文献4)、吸水速度、加圧下吸水倍率(特許文献5)、通液性、粒度分布、耐尿性、抗菌性、耐衝撃性、粉体流動性、消臭性、耐着色性、低粉塵等、多くの物性が吸水性樹脂に求められている。そのため、表面架橋技術、添加剤、製造工程の変更等、数多くの提案が、特許文献1〜23及び非特許文献1以外にもなされている。 近年、紙オムツ中での吸水性樹脂の使用量が増加(例えば、50重量%以上)するのに従い、通液性はより重要な因子と見られるようになっている。そして、SFC(Saline Flow Conductivity/特許文献6)やGBP(Gel Bed Permeability/特許文献7〜9)等の荷重下通液性や無荷重下通液性の改善方法や改良技術が多く提案されている。
【0005】
また、かかる上記物性において、通液性を含めた複数のパラメーターの組み合わせも多く提案され、耐衝撃性(FI)を規定する技術(特許文献10)、吸水速度(FSR/Vortex)等を規定する技術(特許文献11)、液体拡散性能(SFC)及び60分後の芯吸収量(DA60)の積を規定する技術(特許文献12)が知られている。
【0006】
更に、SFCやGBP等の通液性の向上方法として、重合前又は重合中に石膏を添加する技術(特許文献13)、スペーサーを添加する技術(特許文献14)、5〜17[モル/kg]のプロトン化可能な窒素原子を有する窒素含有ポリマーを使用する技術(特許文献15)、ポリアミン及び多価金属イオン又は多価陰イオンを使用する技術(特許文献16)、pH6未満の吸水性樹脂をポリアミンで被覆する技術(特許文献17)、ポリアンモニウムカーボネートを使用する技術(特許文献18)が知られている。この他、可溶分3重量%以上でポリアミンを使用する技術、吸い上げ指数(WI)やゲル強度を規定する技術(特許文献19〜21)が知られている。また、着色及び通液性を改善するために、重合時の重合禁止剤であるメトキシフェノールを制御した上で多価金属塩を使用する技術(特許文献22、23)も知られている。
【0007】
また、乾燥工程と粉砕工程の間の保持時間を制御する技術(特許文献24)、粉砕工程に着目した技術として粉砕物を再度粉砕工程に戻す割合を制御する技術(特許文献25)、分級工程に着目した技術として除電を行う技術(特許文献26)、タッピング材を用いる技術(特許文献27)、スクリーンメッシュの張力を制御する技術(特許文献28)も通液性の向上技術である。
【0008】
また、上記通液性は吸水性樹脂の粒子径が小さくなると低下する傾向にあり、例えば、粒子径150μm未満の粒子(微粉)含有量が増加するに従って、通液性が低下することが知られている(特許文献29)。そこで、粒子径の制御に関する技術がこれまでに数多く提案されている。
【0009】
例えば、逆相懸濁重合等の重合工程で粒子径を制御する技術(特許文献30、31)、含水ゲル状架橋重合体の細粒化工程(ゲル粉砕工程)で粒子径を制御する技術(特許文献32〜34)、分級工程で粒子径等を制御する技術(特許文献26〜28、35〜40)、表面架橋工程時に造粒(微粉同士、又は微粉と目的粒子を接着させて大きい粒子にすること)する技術(特許文献41、42)、表面架橋後の冷却工程で微粉を気流で除去する技術(特許文献43)が提案されている。
【0010】
また、粉砕工程に着目して、乾燥重合体を冷却してから粉砕する技術(特許文献44)、粉砕機を加熱や保温して粉砕する技術(特許文献45)、含水率の高い乾燥重合体を粉砕して粉砕物中の目的外粒子の割合を減らす技術(特許文献46(特にFig.1〜4))、3段ロールミルを用いる技術(特許文献47)、乾燥工程と粉砕工程の間の保持時間を制御する技術(特許文献48)、粉砕物を再度粉砕工程に戻す割合を制御する技術(特許文献25、49)が提案されている。また、ロールミルによる粉砕において、2つのロールの回転速度を非等速とする方法も知られている(非特許文献1(特にFig.3.8))。
【0011】
更に、粉砕に関する技術として、乾燥重合体中の未乾燥物を粉砕前に取り除く技術(特許文献50〜52)、ロールミルの上段と下段の間に磁気分離機を設置する技術(特許文献53)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0020199号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0110006号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0087983号明細書
【特許文献4】米国再発行特許発明第32649号明細書
【特許文献5】米国特許第5149335号明細書
【特許文献6】米国特許第5562646号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0256469号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0214946号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0096435号明細書
【特許文献10】米国特許第6414214号明細書
【特許文献11】米国特許第6849665号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2008/0125533号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2007/0293617号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2002/0128618号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/0245684号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2008/0221237号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2008/0202987号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2008/0114129号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2010/0063469号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2009/0204087号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2010/0010461号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2010/0041550号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2011/0042612号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2012/0016084号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2012/0220745号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2011/0166300号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2013/0066019号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2013/0123435号明細書
【特許文献29】米国特許第5669894号明細書
【特許文献30】米国特許第5244735号明細書
【特許文献31】米国特許第4973632号明細書
【特許文献32】米国特許第5250640号明細書
【特許文献33】米国特許第5275773号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2013/0026412号明細書
【特許文献35】米国特許第6164455号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2008/0202987号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2009/0261023号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2009/0194462号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2009/0266747号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2010/0101982号明細書
【特許文献41】欧州特許第0450922号明細書
【特許文献42】米国特許第6071976号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2004/0181031号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2001/0025093号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2001/0011123号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2003/0224163号明細書
【特許文献47】米国特許出願公開第2008/0194402号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第2012/0016084号明細書
【特許文献49】米国特許公開第2012/0220733号明細書
【特許文献50】米国特許第6291636号明細書
【特許文献51】米国特許第6641064号明細書
【特許文献52】米国特許出願公開第2008/0287631号明細書
【特許文献53】国際特許公開第2012/152647号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Modern Superabsorbent Polymer Technology 69〜117ページ
【発明の概要】
【0014】
上記特許文献1〜53、非特許文献1等、吸水性樹脂の物性向上のために、多くの表面架橋技術、添加剤、製造工程の変更が提案されている。
【0015】
しかし、表面架橋剤や添加剤(ポリアミンポリマー、無機微粒子、熱可塑性ポリマー)等、吸水性樹脂の原料の変更や追加は、原料の安全性の低下やコストアップだけでなく、他の物性の低下を引き起こすことがあった。また、新たな製造工程の追加は、高額な設備投資やそのエネルギーによるコストアップの要因となるのみならず、工業的には複雑な運転を必要とし、かえって生産性や物性の低下を引き起こすことがあった。更に所定量以上の連続生産を行うとスケールアップや長期間の運転に伴って物性の低下が見られ、運転条件の微調整(特に重合、表面架橋)では補い切れないものがあった。
【0016】
そこで本発明は、上記問題点を改善するために、原料の変更や高額な設備投資を必要とせずに、簡便な手法で、吸水性樹脂の物性(例えば通液性)を向上及び安定させる方法を提供することを目的とする。特に大スケールの吸水性樹脂の生産において有用な方法を提供することを目的とする。
【0017】
本発明者らは粉砕工程を検討したところ、吸水性樹脂の大量生産、特に1(t/hr)以上の連続生産において、ラボスケールとの粉砕の違い、更には得られる吸水性樹脂の物性の悪化が見られた。
【0018】
本発明者らは更に検討した結果、従来のロールミルを用いた粉砕では、ロールの一部での磨耗が過大であり、その箇所に粉砕負荷が集中していることが判明し、このことが原因となって、吸水性樹脂の生産性や物性低下を招いていたと考えられる。そこで、乾燥後の吸水性樹脂(乾燥重合体)をロールの軸方向に分散させて、ロールミルに供給することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0019】
即ち、本願の発明(第1の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミルに乾燥重合体を供給する際、当該ロールミルのロール軸方向に、乾燥重合体を分散させて供給する製造方法を提供する。
【0020】
また、本願の発明(第2の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が30日間以上である粉砕工程において、ロールクリアランス変化幅が100μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が50%以下の条件で、乾燥重合体を粉砕する、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。但し、上記ロールクリアランス変化幅及びロールクリアランス変化率は、下記式により規定される。
【0021】
【数1】
【0022】
【数2】
【0023】
また、本願の発明(第3の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が200日間以上である粉砕工程において、ロールクリアランス変化幅が300μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が90%以下の条件で、乾燥重合体を粉砕する、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。但し、上記ロールクリアランス変化幅及びロールクリアランス変化率は、下記式により規定される。
【0024】
【数3】
【0025】
【数4】
【0026】
また、本願の発明(第4の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記乾燥重合体の含水率が3.0〜15重量%であり、かつ、上記粉砕工程において用いられるロールミルの少なくとも一対のロールが、互いに逆方向に回転する低速ロールと高速ロールからなり、その周速比が1:1.05〜1:10である、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0027】
また、本願の発明(第5の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミルのロール表面に、縞模様状に並んだ凹凸パターンの溝を有し、当該溝がロールの回転軸に対して傾斜し、かつ、2つのロールの溝の傾斜方向が同じ向きである、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0028】
なお、本願の従属クレーム2〜16又は本願の好ましい実施形態は、上記第1の方法に限らず、第2〜5の方法の何れにも適用される。また、上記第1〜5の方法は、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、更に好ましくは4つ以上、特に好ましくは5つ全てが同時に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明に好適なロールミルの断面図である。
図2図2は、本発明に好適なロールミルの分散機構である、スクリュー型フィーダーを上から見た概略図である。
図3図3は、本発明に好適なロールミルの分散機構である、底部にスリット状の孔が開いた貯蔵容器(抜き出し用フィーダー付)を上から見た概略図である。
図4図4は、本発明に好適なロールミルの分散機構の一形態である、山型分散板をロール軸と平行に切ったときの断面図である。
図5図5は、本発明に好適な回転式分散機の回転部の一形態、及び乾燥重合体の動きを示した(矢印参照)概略図である。
図6図6は、本発明に好適な回転式分散機の回転部の別の一形態、及び乾燥重合体の動きを示した(矢印参照)概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の製造方法により、生産量のスケールアップ時、特に1ライン又は1粉砕機当たり、1(t/hr)を超えるような大スケールでの生産においても、通液性等の吸水性樹脂の物性が低下することがない。更に、長期間の製造においても、物性の変化が少なく、安定的な製造が可能になる。
【0031】
本発明に係る製造方法によって、粒度制御、特に粒度分布の制御が容易になり、通液性等の吸水性樹脂の物性が向上する。更に、安定的な稼働が可能になり、ロールミルの延命を図ることができる。
【0032】
以下、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味し、以下の物性を有するものをいう。即ち、「水膨潤性」として、ERT441.2−02(2002)で規定されるCRC(無加圧下吸水倍率)が5(g/g)以上、かつ、「水不溶性」として、ERT470.2−02(2002)で規定されるExt(水可溶分)が50重量%以下である高分子ゲル化剤を意味する。
【0034】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜、設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。
【0035】
本発明の吸水性樹脂は、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記物性(CRC、Ext)を満足する範囲内で、吸水性樹脂以外の成分として、添加剤等を含んだ吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本発明の吸水性樹脂は、最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲルや乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もあり、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。
【0036】
なお、吸水性樹脂の形状としては、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状等が挙げられるが、本発明では粒子状の吸水性樹脂が好ましい。
【0037】
(1−2)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、グラフト成分を任意に含み、繰り返し単位として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分として含む重合体を意味する。
【0038】
なお、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の含有量(使用量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは実質100モル%であることをいう。また、重合体としてのポリアクリル酸塩は、好ましくは一価の塩、より好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含む。
【0039】
(1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定/公知文献)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0040】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、不織布袋中の吸水性樹脂0.2gについて、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、30分間浸漬し自由膨潤させた後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)である。
【0041】
(b)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gについて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに対して、500rpmで16時間攪拌した後の溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
【0042】
(c)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)量(以下、「残存モノマー」と称する)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gについて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに対して、500rpmで1時間攪拌した後の溶解した残存モノマー量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した値(単位;ppm)である。
【0043】
(d)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Disributionの略称であり、篩分級により測定される粒度分布を意味する。なお、重量平均粒子径(D50)及び粒子径分布幅は、米国特許第7638570号明細書カラム27〜28に記載された「(3) Mass−Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定した。
【0044】
(e)「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂4.0gについて、105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;重量%)である。なお、本発明では、吸水性樹脂を1.0g、乾燥温度を180℃に変更して測定した。
【0045】
(f)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.9gについて、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm、0.3psi)の荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)である。なお、本発明では、荷重条件を4.83kPa(49g/cm、0.7psi)に変更して測定した。
【0046】
(g)その他、EDANAで規定される吸水性樹脂の物性
「pH」(ERT400.2−02):吸水性樹脂のpHを意味する。
【0047】
「Flow Rate」(ERT450.2−02):吸水性樹脂の流下速度を意味する。
【0048】
「Density」(ERT460.2−02):吸水性樹脂の嵩比重を意味する。
【0049】
「Respirable Particles」(ERT480.2−02):吸水性樹脂の呼吸域粉塵を意味する。
【0050】
「Dust」(ERT490.2−02):吸水性樹脂中に含まれる粉塵を意味する。
【0051】
(1−4)「通液性」
本発明における吸水性樹脂の「通液性」とは、荷重下又は無荷重下での膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流れ性のことを意味し、代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/生理食塩水流れ誘導性)や、GBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
【0052】
「SFC(生理食塩水流れ誘導性)」は、2.07kPa荷重下での吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、米国特許第5669894号(特許文献29)に開示されるSFC試験方法に準拠して測定される。
【0053】
「GBP(ゲル床透過性)」とは、荷重下又は自由膨潤での吸水性樹脂に対する0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、米国特許出願公開第2005/0027268号に開示されるGBP試験方法に準拠して測定される。
【0054】
(1−5)「吸水速度」
本発明における吸水性樹脂の「吸水速度」とは、当該吸水性樹脂が水性液を吸収する際の吸収速度のことを意味し、代表的な測定方法として、FSR(Free Swell Rate)や、Vortexがある。
【0055】
「FSR」は、Free Swell Rateの略称であり、吸水性樹脂1.0gが0.9重量%塩化ナトリウム水溶液20gを吸水する際の速度(単位;g/g/s)であり、「Vortex」は、吸水性樹脂2.0gが、攪拌中の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液50mlを吸水する際の速度(単位;秒)である。なお、具体的な測定方法については、後述の実施例において説明する。
【0056】
(1−6)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」であることを意味する。また、特に注釈のない限り、重量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「重量ppm」又は「質量ppm」を意味する。更に、「重量」と「質量」、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
【0057】
〔2〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法
(2−1)単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液(単量体水溶液)を調製する工程である。なお、単量体水溶液の代わりに、吸水物性を下げない程度に単量体のスラリーを用いてもよいが、便宜上、単量体水溶液として説明する。
【0058】
(アクリル酸)
本発明では公知のアクリル酸が使用でき、このようなアクリル酸には通常重合禁止剤や不純物等の微量成分が含まれている。重合禁止剤としてはフェノール類が好ましく、メトキシフェノール類がより好ましい。また、その単量体水溶液中の含有量は、重合性や吸水性樹脂の色調の観点から、好ましくは1〜200ppm、より好ましくは10〜160ppmである。不純物としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0161512号明細書が参照される。
【0059】
(併用される単量体)
本発明において、アクリル酸(塩)と共に他の単量体を併用することもできる。当該他の単量体としては、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が挙げられ、より具体的には、米国特許出願公開第2005/215734号の段落[0035]に記載された単量体(ただし、アクリル酸を除く)が挙げられる。なお、本発明の吸水性樹脂には、上記水溶性又は疎水性の不飽和単量体を共重合成分とするものも含まれる。
【0060】
(塩基性組成物)
本発明で得られる吸水性樹脂は、アクリル酸(塩)を架橋重合したポリアクリル酸(塩)である。当該ポリアクリル酸塩は、アクリル酸を塩基性組成物で中和(中和工程)した後に架橋重合する、または、アクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体を塩基性組成物で中和(後中和)することによって得られる。なお、本発明において「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を意味する。
【0061】
上記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられるが、より高物性の吸水性樹脂を得るためには、強アルカリ性物質、即ち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0062】
また、本発明において、極少量(例えば、アクリル酸に対して、0モル%を超えて5モル%以下)の多価金属の水酸化物や炭酸(水素)塩等のポリカチオンを含有する塩基性組成物で中和してもよいし、しなくてもよい。
【0063】
(中和工程)
本発明の中和工程として、単量体としてのアクリル酸に対する中和、又は、アクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(後中和工程)が含まれる。中和工程は前記中和の違いに関わらず連続式でもバッチ式でも適用することができるが、好ましくは連続式である。装置、塩基性組成物、温度条件、滞留時間等の中和条件については、米国特許出願公開第2011/0021725号や同第2008/0194863号に開示された内容が好ましく適用される。
【0064】
なお、本発明における中和率としては、単量体水溶液又は重合体中の酸基に対して、10〜90モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましく、50〜80モル%が更に好ましく、60〜75モル%が特に好ましい。上記中和率が10モル%未満の場合、無加圧下吸水倍率(CRC)が著しく低下することがあり、一方、中和率が90モル%を超える場合、加圧下吸水倍率(AAP)の高い吸水性樹脂が得られないことがあり好ましくない。未中和又は低中和のアクリル酸を用いて重合した後に中和を行う場合、更には最終製品の吸水性樹脂の中和率についても同様である。
【0065】
(内部架橋剤)
本発明で使用される内部架橋剤としては、アクリル酸と反応しうる置換基を2個以上もつ化合物であり、例えば米国特許第6241928号の第14カラムに記載の架橋剤が挙げられる。これらのうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、得られる吸水性樹脂の吸水特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物、更には後述の乾燥温度程度で熱分解性をもつ化合物、特に(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有する2個以上の重合性不飽和基(好ましくは、アリル基、(メタ)アクリレート基、特にアクリレート基)を有する架橋剤、例えば、(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有するジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレートを重合時に用いることが好ましい。アルキレングリコール構造単位としてはn数(繰り返し単位数)が1〜100、好ましくは6〜50のポリエチレングリコールが例示される。
【0066】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体に対して、0.005〜2モル%が好ましく、0.01〜1モル%がより好ましく、0.05〜0.5モル%が更に好ましい。内部架橋剤の使用量を上記範囲とすることで、所望する吸水特性が得られる。
【0067】
なお、本発明では重合前に内部架橋剤を添加して架橋する方法以外に、重合中や重合後に内部架橋剤を添加して架橋する方法や、ラジカル重合開始剤でラジカル架橋する方法、電子線等による放射線架橋する方法等を採用することもできるが、予め所定量の内部架橋剤を単量体に添加して重合を行い、重合と同時に架橋反応させる方法がより好ましい。
【0068】
(その他単量体に添加する物質)
本発明においては、単量体水溶液を調製する際に、上述した物質以外に下記の物質を添加してもよい。下記物質を添加する場合、具体的には、吸水性樹脂の諸物性を改善することを目的として、単量体水溶液中の単量体濃度を100重量%としたときに、水溶性樹脂又は吸水性樹脂を0重量%を超えて好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下を添加したり、各種の発泡剤(例えば、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等を0重量%を超えて好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下を添加したりすることもできる。これらの物質は単量体水溶液に添加する形態のみならず、重合途中に添加してもよい。
【0069】
なお、上記水溶性樹脂又は吸水性樹脂の使用は、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉−アクリル酸重合体、PVA−アクリル酸重合体等)を与えるが、これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明ではポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と総称する。
【0070】
(単量体成分の濃度)
本工程において、上述した各物質を混合することで単量体水溶液を調製する。その際、単量体水溶液中の単量体成分の濃度としては特に限定されないが、吸水性樹脂の物性の観点から10〜80重量%とすることが好ましく、20〜75重量%がより好ましく、30〜70重量%が更に好ましい。
【0071】
また、重合形態として水溶液重合又は逆相懸濁重合を採用する場合には、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもでき、その場合、使用される溶媒の種類は特に限定されるものではない。
【0072】
なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記式で求められる値であり、単量体水溶液にはグラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性溶媒は含めない。
【0073】
【数5】
【0074】
(2−2)重合工程
本工程は、上記単量体調製工程で得られたアクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0075】
(重合開始剤)
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤又はこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号の第5カラムに例示された重合開始剤のうち1種又は2種以上が用いられる。なお、取扱いのしやすさや、吸水性樹脂の物性面から、過酸化物又はアゾ化合物、更には過酸化物、特に過硫酸塩を用いることが好ましい。
【0076】
上記重合開始剤の使用量は、単量体に対して、0.001〜1モル%が好ましく、0.001〜0.5モル%がより好ましい。また、上記還元剤の使用量は、単量体に対して、0.0001〜0.02モル%が好ましい。
【0077】
また、上記重合開始剤の代わりに放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤を併用してもよい。
【0078】
(重合方法)
本発明で適用される重合方法は、特に限定されないが吸水特性や重合制御の容易性等の観点から、噴霧液滴重合、水溶液重合、逆相懸濁重合が好ましく、水溶液重合、逆相懸濁重合がより好ましく、水溶液重合が更に好ましい。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、連続ベルト重合でも連続ニーダー重合の何れでもよい。
【0079】
具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号、同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
【0080】
また、上記連続水溶液重合の好ましい一例として、高温開始重合や高濃度重合が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する重合方法をいい、「高濃度重合」とは、単量体水溶液中の単量体成分の濃度を好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは38重量%以上、特に好ましくは40重量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う重合方法をいう。これらの重合方法を併用することもできる。
【0081】
なお、上記の重合方法により、重合中に固形分濃度を上昇させてもよい。このような固形分濃度の上昇の指標として固形分上昇度は下記式により定義される。
【0082】
【数6】
【0083】
ただし、単量体水溶液の固形分濃度とは下記式で求められる値であり、重合系内の成分とは、単量体水溶液とグラフト成分、吸水性樹脂、その他固形物(例えば水不溶性微粒子等)であり、逆相懸濁重合における疎水性溶媒は含めない。
【0084】
【数7】
【0085】
好ましい固形分上昇度は1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。
【0086】
更に、これらの重合方法は空気雰囲気下でも実施できるが、色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。この場合、例えば、酸素濃度を1容積%以下に制御することが好ましい。また、単量体水溶液に気泡(特に上記不活性ガス等)を分散させて重合する発泡重合とすることもできる。なお、単量体又は単量体水溶液中の溶存酸素についても、不活性ガスで十分に置換(例えば、溶存酸素が1(mg/l)未満)しておくことが好ましい。
【0087】
(2−3)ゲル粉砕工程(ゲル解砕工程)
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルを例えば、ニーダー、ミートチョッパー、カッターミル等のゲル粉砕機でゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。なお、上記重合工程がニーダー重合の場合、重合工程とゲル粉砕工程が同時に実施されている。
【0088】
本発明のゲル粉砕工程では、特に限定されないが、米国特許出願公開第2013/0026412号に開示されたゲル粉砕方法が好ましく適用される。
【0089】
(2−4)乾燥工程
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。なお、当該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められ、80重量%以上が好ましく、85〜99重量%がより好ましく、90〜98重量%が更に好ましく、92〜97重量%が特に好ましい。
【0090】
本発明の乾燥工程では、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の乾燥方法の中から1種又は2種以上が適用される。上記の乾燥方法の中でも、効率の高さから、熱風乾燥が好ましく、特にベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥(連続通気ベルト式乾燥)が好ましい。熱風温度は、色調や乾燥効率の観点から100〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましく、150〜210℃が更に好ましい。なお、バンド乾燥を行う際に、その他の条件として例えば、米国特許出願公開第2008/0124749号、同第2012/0157644号、同第2012/0157648号、同第2012/0329953号等に記載の条件が参照される。
【0091】
上述した乾燥温度や乾燥時間を上記範囲とすることで、得られる吸水性樹脂の吸水倍率(CRC)や水可溶分(Ext)、色調を所望する範囲(下記〔3〕を参照)とすることができる。
【0092】
本発明において上記乾燥重合体は、粉砕工程での粉砕効率の観点から、乾燥後に冷却されることが好ましい。その際、冷却温度(冷却後の乾燥重合体の温度)としては、好ましくは乾燥温度未満、より好ましくは20〜120℃、更に好ましくは30〜100℃、特に好ましくは35〜90℃、最も好ましくは40〜80℃である。当該温度範囲で以下の粉砕工程に供される。
【0093】
(2−5)粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体について、粉砕(粉砕工程)及び所定範囲の粒度への調整(分級工程)を行うことにより、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。
【0094】
本発明に係る実施形態(第1の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミルに乾燥重合体を供給する際、当該ロールミルのロール軸方向に、乾燥重合体を分散させて供給する、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法である。
【0095】
(粉砕装置)
本発明の粉砕工程において使用される粉砕装置は、乾燥重合体をロールミルに供給するための配管又はコンベア、当該乾燥重合体をロールミルのロール軸方向に分散させる手段、及びロールミルから構成されており、これらはこの順に上下方向に配置されている。なお、当該「上下方向」は鉛直方向に限らず、斜め方向も含み得る概念である。
【0096】
本発明における上記ロールミルとは、回転ロール、好ましくは複数の回転ロール、より好ましくは2本一対の回転ロールを有する粉砕機を指し、ロール間での圧縮、せん断又は圧密によって、吸水性樹脂を粉砕する。当該回転ロールとしては、歯のない滑面のロールでも使用できるが、好ましくは歯(別称;溝)を有するロールが使用される。また、複数の回転ロールを使用する場合、同じ直径でも異なる直径でもよく、回転数や周速についても、同じでも異なっていてもよい。
【0097】
また、本発明では、上記ロールミルを必須に含むが、当該粉砕装置以外に、例えば、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー、回転軸に多数のピンを取り付けた解砕機等を必要に応じて併用することもできる。ここで「併用」とは、ロールミルとその他の粉砕機を直列に用いてもよいし、乾燥重合体を枝分けして、ロールミルとその他の粉砕機を並列に用いてもよいが、直列の場合、ロールミルをその他の粉砕機の後に用いるのが好ましく、並列の場合、ロールミルの処理量がその他の粉砕機の処理量より多いことが好ましい。
【0098】
更に、直列の場合、乾燥重合体の全量をその他の粉砕機で粉砕し、得られた粉砕物の全量をロールミルで粉砕する場合に限定されず、乾燥重合体の好ましくは主成分、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上(上限:100重量%)がロールミルで粉砕される。
【0099】
以下、本発明における粉砕装置の運転方法等について、説明する。なお、当該説明は、本発明の第1〜5の方法の何れに対しても好ましい(又は必須の)ロールミル粉砕方法である。
【0100】
(配管又はコンベア)
本発明において、上記乾燥工程で得られる乾燥重合体は、1つ又は複数の配管又はコンベアを用いて、ロールミルに供給される。当該供給は、一箇所でもよく、複数箇所でもよい。その際、生産コストの観点から、粉砕工程で使用される上記配管に対して動力装置の設置は行わず、したがって、乾燥重合体は重力によって当該配管内を移動(落下、特に自由落下)し、ロールミルに供給される形態とすることが好ましい。
【0101】
上記配管の断面の形状は特に限定されないが、デッドスペースが少ない円形状が好ましい。また、乾燥重合体の移動(落下、特に自由落下)に支障がない程度の配管径(角型配管の場合は内幅)があればよく、好ましくは50cm以下、より好ましくは50cm未満、更に好ましくは5〜40cmである。
【0102】
また、上記乾燥重合体をコンベアを用いてロールミルに供給する場合、当該コンベアは機械式コンベアを指し、具体的にはベルトコンベア、スクリューコンベア等が該当する。
【0103】
(分散手段(特に第1の方法))
本発明(第1の方法)では、粉砕工程で用いられるロールミルに乾燥重合体を供給する際、当該ロールミルのロール軸方向に乾燥重合体を分散させて供給することを必須とする。
【0104】
ここで、「ロール軸方向に乾燥重合体を分散させて供給する」とは、ロールの軸方向に並んだ複数箇所から乾燥重合体を供給、又は、上から見てロールの軸方向に幅広く、軸と垂直方向に狭く、乾燥重合体を供給することを意味する。なお、「分散」は周期的(分単位若しくは秒単位、又はそれ以下)に実施しても連続的に実施してもよいが、好ましくは連続的に実施する。
【0105】
従来の粉砕方法では、乾燥重合体を粉砕装置に供給する際、配管からロールに直接、一箇所に供給したり、回転ロールの中心部に直接、供給したりしていたので、回転ロール上での乾燥重合体の滞留によって、ロールの軸方向に自然に広がる程度であった。一方、本発明は、予め、ロール軸方向に乾燥重合体を分散させて供給することを特徴とする。
【0106】
本発明において、乾燥重合体をロールミルのロール軸方向に分散させる手段としては特に限定されないが、以下の手段を挙げることができる。
【0107】
本発明では、乾燥重合体を機械的分散手段により分散させることが好ましい。機械的な分散手段として、例えば、ロール軸と平行に設置された分散ロール(別称;ロール型分散機)、特にスクリュー型(スパイラル型)フィーダー(図2、5参照)やピン型の回転羽根を有するフィーダー(図6参照)、振動フィーダー又は首振りフィーダー(ロールミルの軸方向に沿って移動する“振り子式のコンベア又は配管”)等、振動や回転式の分散機(図2、5、6参照)が該当する。なお、首振りフィーダーを使用する場合、乾燥重合体の供給は周期的(分単位若しくは秒単位、又はそれ以下)に実施される。また、その周期については、ロールミルへの供給が均一となる範囲内で適宜決定され、好ましくは1分間以内、より好ましくは10秒間以内である。
【0108】
また、上記機械的な分散手段以外の分散手段として、複数箇所から供給する手段、例えば、枝別れした配管、分散板、特に複数の分散板が該当する。
【0109】
更に、貯蔵容器、特に下部がロールと同程度の幅を有するホッパーで、ロールミルの軸方向と平行なスリット又は複数の孔を有するホッパーが該当する(図3に記載の底部にスリット状の孔が開いた貯蔵容器(抜き出し用フィーダー付)参照)。なお、乾燥重合体を抜き出すときには、フィーダーを用いてもよい。また、ホッパーを設置する場合、ホッパー内の乾燥重合体にブリッジが形成されないように、ホッパーにノッカーを設置する、並びに/又は、ホッパー内の雰囲気温度及び/若しくは雰囲気相対湿度を後述する粉砕工程の雰囲気温度及び相対湿度の範囲とすることが好ましい。
【0110】
更に、別の分散手段として、気流で乾燥重合体を飛散させて分散させる手段等が該当する。
【0111】
これらの中でも、分散効率の観点から、ロール軸と平行に設置された回転式分散機(好ましくはロール型分散機、特に好ましくはスクリューフィーダー(図2、5参照))、ピン型の回転羽根を有するフィーダー(図6参照)、振動フィーダー若しくは首振りフィーダー、分散板、又は気流の分散手段が好ましく、機械的分散機として、動力を用いた分散手段、即ち、ロール軸と平行に設置された回転式分散機(スクリューフィーダー)、又は振動フィーダー若しくは首振りフィーダーがより好ましく、ロール軸と平行に設置された回転式分散機(特にスクリューフィーダー)が更に好ましい。
【0112】
上記回転式分散機(特にスクリューフィーダー)としては特に限定されないが、例えば、図2に代表されるように、乾燥重合体の供給配管1がロールミル5のロール軸方向の中央部に設置される場合、当該乾燥重合体をロールミル5のロール軸方向の両端方向に移動させる構造を有する。具体的には、回転式分散機の軸方向の中央部を境にして両端へ逆向きのねじりを有することが好ましい。また、当該回転式分散機の上部にはホッパー3を設置してもよい。または、図4に代表されるような、山型分散板を用いたロールミルの分散機構もまた好ましく使用される。具体的には、乾燥重合体の供給配管1を山型分散板8の中央部(図4に示されるように、山型分散板が複数存在する場合には、複数の分散板の中心)に設置して、当該乾燥重合体を供給配管1から供給することが好ましい。
【0113】
上述した分散手段(特に機械的な分散、更には回転式分散機による分散)を用いることで、乾燥重合体のロールミルに対する供給が均等となり、ロールの偏摩耗を防止することができるため、好ましい。
【0114】
なお、上記回転式分散機として、回転羽根型や、(溝を有する)回転ロール型分散機等が挙げられる。また、回転羽根の形状としてはスパイラル状、溝の形状としてはスパイラル状や横溝等が挙げられる。
【0115】
また、本発明において、ロール軸と平行に設置された回転式分散機は、ロールと同程度の長さ(好ましくは0.5倍以上、より好ましくは0.8倍以上、更に好ましくは0.9倍以上、特に好ましくは1.0倍)を有する。
【0116】
(ロールミルの構造)
本発明の粉砕工程で使用されるロールミルは特に限定されないが、ロール表面に凹凸パターンを有するものが好ましい。また、一対のロールは同一形状(凹凸パターン、直径)でも異形状でもよいが、好ましくは同一形状(対称関係を含む)のロールが使用される。
【0117】
(凹凸パターン及びその傾斜(特に第5の方法))
上記「凹凸パターン」とは、ロール表面上の凹凸を指し、具体的には、溝(「襞(ひだ)」と称する場合もある)が縞模様状に並んだもの、三角形や四角形の突起物を敷き詰めたもの、突起物が間隔を置いて設置され、その際三角形や四角形の頂点上に突起物を設置したもの等が挙げられる。中でも粉砕効率の観点から、本発明では溝が縞模様状に並んだものが好ましい。
【0118】
また、溝が縞模様状に並んだ凹凸パターンには、ロールの円周上(回転軸に対して直角方向)に延びる溝(縦溝構造、当該構造を有する装置をロールグラニュレーターと称する)を有するものや、ロールの軸方向に横断する溝(横溝構造)を有するものがあるが、一対のロールで縦溝のロールと横溝のロールを組み合わせたもの、溝がロールの回転軸に対して傾斜したものが挙げられる。中でも、粉砕効率の観点から、溝がロールの回転軸に対して傾斜したものが好ましく、具体的な傾斜角として、好ましくは1〜89°、より好ましくは1〜45°、更に好ましくは1〜30°、特に好ましくは2〜15°である。尚、当該傾斜角は、ロールの回転軸に対してプラス方向又はマイナス方向の何れでもよい。当該傾斜角とすることで、粉砕工程での微粉発生を抑制したり、通液性等の吸水性樹脂の物性を向上させることができる。これは、粉砕の際、鋏で切るようなせん断が働くため、粒径制御がし易くなるためと考えられる。また、2つのロールの溝の傾斜が同じ方向であることが好ましく、平行に配置されることがより好ましい。なお、「2つのロールの溝の傾斜が同じ方向」とは、ロール軸方向から俯瞰した際、2本一対のロール表面の溝が同じ方向にスパイラルを描く状態のことをいい、視点側のロール端から反対側のロール端に向かって、2本一対のロール表面の溝が共に時計回り又は反時計回りのスパイラルを描く溝を有していることを意味する。
【0119】
また、凹凸パターンの形状や間隔、高さは適宜決定することができ、特に限定されないが、間隔や高さは0.1〜10mmの範囲が好ましい。
【0120】
即ち、本願発明(第5の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミルのロール表面に、縞模様状に並んだ凹凸パターンの溝を有し、当該溝がロールの回転軸に対して傾斜し、かつ、2つのロールの溝の傾斜方向が同じ向きである、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0121】
なお、「溝のロールの回転軸に対する傾斜角」と、「2つのロールの溝の傾斜が同じ方向であること」が同時に満たされることが好ましい。また、一対のロールが逆方向に回転してもよく、第4の方法で規定される周速比で回転してもよい。更には、第1〜3の方法の何れか一つ以上を同時に適用することもできる。
【0122】
(溝構造の断面)
上述した溝は、必要に応じて、回転刃としての機能を発揮するよう、傾斜角を鋭利とすることが好ましい。なお、「傾斜角が鋭利」とは、溝の斜面が急であることを意味する。即ち、溝の斜面とロール表面(溝と溝との間の部分)とが成す角が小さいことをいう。この場合、溝の両端、又は片方のみの傾斜角を鋭利にしてもよい。また、一対のロールにおいて、回転方向が逆向きで非等速である場合、一方のロールの溝の斜面と、他方のロールの溝の斜面とで、乾燥重合体を挟み込むようにして粉砕する。また、上記溝の断面の形状が非対称である場合、鋭利角と非鋭利角との組み合わせとして、(1)鋭利角−鋭利角、(2)鋭利角−非鋭利角、(3)非鋭利角−非鋭利角の3通りある。中でも、本発明で規定する含水率を有する乾燥重合体の粉砕に対しては、上記(1)の一対のロール間の鋭利な角同士で乾燥重合体を挟み込むように粉砕する方法がより好ましい。
【0123】
(ロール長)
本発明で使用されるロールミルにおけるロールの長さ(ロール長)は、本発明の効果の観点(大スケールでより発揮される)から、好ましくは50cm以上、より好ましくは60cm以上、更に好ましくは70cm以上、特に好ましくは1m以上である。また、ロール長の上限としては特に限定されないが、好ましくは5m以下、より好ましくは3m以下である。
【0124】
なお、当該ロール長を長くすることで処理量が増加し、本発明の効果がより発揮される方向となるが、そのためには乾燥重合体をロールミルに供給する配管の配管径(角型配管の場合は内幅)又はコンベアの幅よりもロール長を長くすることが好ましい。以上の観点から、本発明ではロール長を、乾燥重合体をロールミルに供給する配管の配管径(角型配管の場合は内幅)又はコンベアの幅に対して、好ましくは2〜100倍、より好ましくは3〜50倍、更に好ましくは5〜20倍とする。すなわち、本発明では、粉砕工程において使用される装置が、上記乾燥重合体を上記ロールミルに供給するための配管を含み、当該ロールミルのロール長が、当該配管の径の2〜100倍であることが好ましい。
【0125】
(フィード幅比)
本発明における「フィード幅比」とは、下記式で規定される値を指し、ロール長に対する乾燥重合体の供給範囲幅を意味する。当該値が大きくなるほど、乾燥重合体がロールミルに対し、ロール軸方向に広範囲にわたって供給されていることとなり、偏磨耗等が小さいことを示す。
【0126】
【数8】
【0127】
本発明において、上記フィード幅比は好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜99%、最も好ましくは90〜99%である。フィード幅比は、上記分散手段で制御することができる。
【0128】
上記フィード幅比を上記範囲内とすることで、ロールミルに対し、ロール軸方向に広範囲にわたって乾燥重合体を供給することになるため、ロールミルの磨耗が均一であり、磨耗後であってもロールクリアランスの微調整で粉砕を継続することが可能となる。更にロールミルの交換頻度を削減することもできる。なお、ロールの末端まで乾燥重合体を供給するような場合は、乾燥重合体がロールの脇から粉砕されずに通過する可能性があるため、粉砕装置の内壁面とロールとの隙間を十分小さくするか、又は、フィード幅比を99%以下とすることが好ましい。また、得られる粉砕物の粒度分布の対数標準偏差(σζ)が小さく(シャープな粒度分布)、長期運転においても物性が安定する。
【0129】
(ロールミルのフィード分布)
本発明に係る製造方法によって、ロールミルに供給される乾燥重合体の供給位置の偏りを抑えることができる。その偏りの程度を示す指標として、ロールをロール軸方向に3等分し、乾燥重合体の供給量が最も多い部分と最も少ない部分との比率で評価することができる。当該比率は、好ましくは1.0〜10倍、より好ましくは1.0〜5倍、更に好ましくは1.0〜3倍、特に好ましくは1.0〜2倍、最も好ましくは1.0〜1.5倍である。当該比率が1.0に近づくほど、乾燥重合体の供給位置に対するムラが小さくなり、均等に供給されることとなる。その結果として、安定した粉砕が可能となり、所望する粉砕物の粒度分布が得られる。更に、ロールミルの磨耗が均一であり、磨耗後であってもロールクリアランスの微調整で粉砕を継続することが可能となる。更にロールミルの交換頻度を削減することもできる。
【0130】
従来の粉砕方法では、乾燥重合体を粉砕装置に供給する際、配管からロールに直接、一箇所に供給したり、回転ロールの中心部に直接、供給したりしていたので、周辺部への供給量が0又は極少量であった。そのため、本発明で規定するロールミルのフィード分布は無限大又は数千倍(〜数万倍)以上であった。
【0131】
(ロールミルの段数)
本発明の粉砕工程における粉砕装置は、通常、2つのロールを一対とするロールミルである。当該一対のロールミルのみを有する単段ロールミル、又は、複数の対を有する多段ロールミルとして、使用することができるが、吸水性樹脂の物性向上やロールミルの耐久性向上の観点から、多段ロールミルが好ましい。この場合、段数として、好ましくは2〜10段、より好ましくは2〜5段である。なお、多段とする場合、段数によっては複数系列に分岐させることもできる。
【0132】
なお、本発明(特に第1の方法)において、上記分散手段を多段のロールミルに設置する場合、上から1段目のロールミルの上部に必須に設置されるが、上から2段目以降の任意の箇所に設置してもよい。
【0133】
また、多段ロールミルの場合、各段のロールを平行に配置することで、上から1段目のロールミルで粉砕された乾燥重合体をそのまま直接下段(上から2段目以降)のロールミルに供給することができるため、下段のロールミルに対して、ロールの軸方向に分散させる操作を省くことができる。
【0134】
(ロールクリアランス)
本発明において、上記一対のロールミルのロール間の隙間(ロールクリアランス)は、目的とする粒度に合わせて適宜決定されるが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.15〜5mm、更に好ましくは0.2〜1.5mm、特に好ましくは0.3〜1.2mmである。なお、上記ロールミルを多段で使用する場合には、上段から下段にかけて順次狭まるように選択することが好ましい。
【0135】
また、1段ロールミルでのロールクリアランス、又は、多段ロールミルでの最小のロールクリアランスは、吸水性樹脂粉末の粒度に対して多大な影響を及ぼす条件であり、当該1段ロールミルでのロールクリアランス及び多段ロールミルでの最小のロールクリアランスを、「最小のロールクリアランス」と総称する。
【0136】
本発明において、最少のロールクリアランスとして、好ましくは100〜1000μm(0.1〜1mm)、より好ましくは150〜700μm(0.15〜0.7mm)、更に好ましくは200〜500μm(0.2〜0.5mm)である。上記最小のロールクリアランスが100μm未満の場合、ロールクリアランスの再調整が困難となり、ロールの寿命が短くなる虞がある。
【0137】
また、微粉発生の抑制、通液性等の物性向上、及びロールミルの寿命延命の観点から、粉砕物の重量平均粒子径(D50)に対するロールクリアランスの最小値の比(Gap/D50)が、好ましくは0.35〜2.2倍、より好ましくは0.4〜2.2倍、更に好ましくは0.5〜2.0倍、特に好ましくは0.8〜1.9倍となるように粉砕する。なお、ロールクリアランスの最小値と粉砕物の重量平均粒子径(D50)との関係は、ロールミルに供給される乾燥重合体の粒度(多段ロールミルを使用する場合は、一つ手前のロールで粉砕された粉砕物の粒度を指す)、ロールの周速比、ロール表面の凹凸パターン等に影響される。
【0138】
なお、ロールクリアランスの測定は、特に限定されないが、好ましくは光学的なセンサーや隙間ゲージ(JIS B 7524(2008))を用いる方法、より好ましくは隙間ゲージ(JIS B 7524(2008))を用いる方法が採用される。また、ロールミルを固定具で固定した状態でロールクリアランスを測定しても、ロール表面の凹凸によって、ロールの回転方向で実測値が変化することもある。その場合は適宜ロールを回転して測定し、その平均値を採用すればよい。
【0139】
また、ロールの偏摩耗によって、ロールクリアランス変化幅が測定箇所によって異なる場合、最大のロールクリアランス値を示す箇所での測定値をそのロールミルのロールクリアランスとする。調整の際には、当該最大のロールクリアランス値を示す箇所で調整を行うことができる。
【0140】
(ロールクリアランス変化幅、ロールクリアランス変化率(特に第2、3の方法))
本発明において上記第1の方法(分散方法)の達成手段の一例として、ロールクリアランス変化幅、ロールクリアランス変化率が下記の範囲内に制御される。
【0141】
本発明における「ロールクリアランス変化幅」とは、下記式で定義される値であり、一対のロール間でのクリアランスの最大幅と最小幅との差を指す。
【0142】
【数9】
【0143】
また、「ロールクリアランス変化率」とは、下記式で定義される値であり、一対のロール間でのクリアランスの最大幅と最小幅との差の、最大幅に対する割合を指す。
【0144】
【数10】
【0145】
本発明においては、上記ロールクリアランス変化幅は好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下、更により好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは20μm以下である(何れも下限値は0μm)。また、上記ロールクリアランス変化率(%)は好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、更により好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である(何れも下限値は0%)。すなわち、粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が30日間以上である粉砕工程において、ロールクリアランス変化幅が100μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が50%以下の条件で、上記乾燥重合体を粉砕することが好ましい。
【0146】
なお、運転開始時のロールミルは、通常、整備直後であり、上記範囲のロールクリアランス変化幅及び/又はロールクリアランス変化率を満たすことが好ましい。また、本発明では、後述の処理時間、特にロールミル1基当たり100(kg/hr)以上の処理量で、合計の処理時間(総粉砕時間)が好ましくは30日間(延べ720時間と同義)以上、より好ましくは92日間以上経過した時点(上限は200日未満)でのロールクリアランス変化幅及び/又はロールクリアランス変化率についても、上記範囲を満たすことが好ましい。なお、「処理時間が30日間」とは、延べ720時間の運転を意味し、一日又は一定期間の間に、停止時間がある場合には当該停止時間を除外する。従って、実際の稼働時間(hr)×24時間を一日間として換算する。
【0147】
一方、ロールミル1基当たり100(kg/hr)以上の処理量で、合計の処理時間(総粉砕時間)が好ましくは200日間以上、より好ましくは300日間以上の長期運転においては、ロールクリアランス変化幅及び/又はロールクリアランス変化率は下記範囲を満たすことが好ましい。
【0148】
即ち、上記長期運転(200日間以上)でのロールクリアランス変化幅は、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、更により好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下、最も好ましくは30μm以下である(何れも下限値は0μm)。また、上記長期運転でのロールクリアランス変化率は好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下、更により好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である(何れも下限値は0%)。すなわち、上記粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が200日間以上である粉砕工程において、ロールクリアランス変化幅が300μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が90%以下の条件で、上記乾燥重合体を粉砕することが好ましい。
【0149】
上記ロールクリアランス変化幅及び/又は(好ましくは及び)ロールクリアランス変化率を上記範囲とすることで、粉砕物の粒度調整が容易となる。
【0150】
なお、ロールクリアランス変化幅及びロールクリアランス変化率を一定値以下に制御する方法として、例えば、磨耗しにくい材質を選択したり、交換頻度を高めたり、単位時間当たりの処理量を減らしたりする手法が挙げられるが、本発明では、上記ロール軸方向に分散させて乾燥重合体を供給する方法が採用される。
【0151】
即ち、本願発明(第2の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が30日間以上である粉砕工程において、ロールクリアランス変化幅が100μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が50%以下の条件で、乾燥重合体を粉砕する、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。但し、上記ロールクリアランス変化幅及びロールクリアランス変化率は、上記式により規定される。
【0152】
また、本願発明(第3の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記粉砕工程において用いられるロールミル1基当たりの処理量が100(kg/hr)以上であり、かつ、総粉砕時間が200日間以上である粉砕工程において、ロールクリアランス変化幅が300μm以下、及び/又は、ロールクリアランス変化率が90%以下の条件で、乾燥重合体を粉砕する、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。但し、上記ロールクリアランス変化幅及びロールクリアランス変化率は、上記式により規定される。
【0153】
本願発明(第2、3の方法)は、第1の方法(分散機)を用いて好ましく達成される。なお、上記以外の達成手段として、乾燥重合体の供給箇所を運転毎又は磨耗する毎に変更(例えば、30日間毎にロールミルの中央部、右端部、左端部に乾燥重合体を供給することによって、ロールの磨耗を均一化)することが挙げられるものの、得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、第1の方法が好適である。
【0154】
(ロールクリアランスの調整)
本発明に係る製造方法(第1〜5の方法)によって、ロールの偏摩耗を低減することができ、その結果として、ロールの交換頻度の低減が図れる。なお、ロールの交換頻度としては、乾燥重合体の性状や粉砕条件にも影響されるため特に限定されないが、延べ運転時間が1年以上(延べ24時間×365日)であることが好ましい。
【0155】
また、本発明では、ロールは均等に擦り減っていくため、ロールを交換するまではロールクリアランスの調整によって、粉砕物の粒度を調整することができる。なお、長期間の運転(好ましくは連続運転)においても、経時的に粒度が変化することがあるため、粒度確認を行いつつロールクリアランスを調整すればよい。
【0156】
(ロールの交換頻度)
本発明におけるロールの交換頻度は、運転時間や乾燥重合体の性状、粉砕条件にも影響されるが、1年以上交換が必要とならないことが好ましい。上述したように、ロールクリアランスを適切に設定することで、ロールの偏摩耗の影響を受けずにロールクリアランスを再調整することができ、ロール交換までの期間、即ち、ロールの寿命を延ばすことができる。なお、使用後に凹凸パターンが擦り減ったロールは、再度、凹凸パターンを掘り直すことで再使用することができる。
【0157】
(ロールの回転数及び周速(特に第4の方法))
本発明の粉砕工程において使用される2つのロールを一対としたロールミルにおいて、一対のロールは、回転方向が内回りに逆向きで非等速とすることができる。なお、「内回り」とは2つのロールが上から下に向かって乾燥重合体を噛み込む回転形式をいう。
【0158】
当該ロールの回転数は、好ましくは10〜10000rpm、より好ましくは50〜5000rpm、更に好ましくは100〜2000rpmである。また、当該ロールの周速は、好ましくは0.5〜50(m/s)、より好ましくは0.7〜30(m/s)、更に好ましくは1〜20(m/s)である。
【0159】
また、一対のロールミルにおいて、2つのロールの周速(一対のロールの直径が等しい場合は回転数)は等速であっても非等速であってもよいが、本発明の達成の観点から、非等速であることが好ましい。
【0160】
この場合は、一対のロールが非等速となるよう、上記回転数及び周速を適宜設定すればよいが、特に低速ロールの周速として、好ましくは上記範囲、より好ましくは0.5〜20(m/s)、更に好ましくは0.7〜15(m/s)、特に好ましくは1〜10(m/s)である。
【0161】
低速ロールの回転数(周速)を大きくすると処理量が増加するものの、それに伴って高速ロールの回転数(周速)も大きくなる。そして、高速ロールの回転数が過度に大きくなると、微粉が増加する傾向にあり、好ましくない。
【0162】
以上の観点から、本発明において、低速ロールと高速ロールの周速比は好ましくは1:1.05〜1:10である。すなわち、ロールミルの少なくとも一対のロールが、互いに逆方向に回転する低速ロールと高速ロールからなり、その周速比が1:1.05〜1:10である。上記形態は、特に乾燥重合体の含水率が3.0〜15重量%である場合に、特に好ましく適用される。すなわち、乾燥重合体の含水率が3.0〜15重量%であり、かつ、上記粉砕工程において用いられるロールミルの少なくとも一対のロールが、互いに逆方向に回転する低速ロールと高速ロールからなり、その周速比が1:1.05〜1:10であることが好ましい。低速ロールと高速ロールの周速比は、より好ましくは1:1.1〜1:9、更に好ましくは1:1.5〜1:8、特に好ましくは1:2〜1:5である。
【0163】
ここで、ロールミル粉砕前の好ましい含水率は後述の範囲である。
【0164】
即ち、本願発明(第4の方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記乾燥重合体の含水率が3.0〜15重量%であり、かつ、上記粉砕工程において用いられるロールミルの少なくとも一対のロールが、互いに逆方向に回転する低速ロールと高速ロールからなり、その周速比が1:1.05〜1:10である、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0165】
(ロールの材質)
本発明で使用されるロールミルのロールは、長期運転における耐久性の観点から、遠心チルド鋳鉄であることが好ましく、更にその材質として、鉄(Fe)に炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)等を含有した合金であってもよい。
【0166】
(ロールミルの加熱)
本発明で使用されるロールミルは、付着防止の観点から、加熱(所定温度に制御)されていることが好ましい。当該加熱温度(ロールミルの壁面及びロール表面の温度)としては、好ましくは30〜100℃、より好ましくは35〜90℃、更に好ましくは40〜80℃である。なお、ロールミルを所定温度に制御する方法として、ロールミルを外部から加熱する方法、所定温度に加熱された乾燥重合体を連続供給することで乾燥重合体からの伝導伝熱及び摩擦熱や粉砕熱で加熱する方法等が挙げられるが、ロールミル装置(装置全体)又はロールミルのロール内部若しくは表面を保温又は加熱する方法が好ましい。この場合、加熱した液体(例えば温水)や気体をロール内部に導入するか、加熱及び/又は乾燥された気体をロールミルに吹き込むことが好ましい。当該気体は、窒素等の不活性ガスや空気が好ましい。
【0167】
(雰囲気温度、雰囲気の相対湿度)
本発明において使用されるロールミルを必須に含む粉砕装置は、通常、ケーシングで覆われている。そこで、ケーシング内の気体を粉砕工程の雰囲気と称し、後述のように制御されることが好ましい。
【0168】
本発明では、粉砕工程の安定化の観点から、粉砕工程の雰囲気温度を好ましくは30〜100℃、より好ましくは35〜90℃、更に好ましくは40〜80℃とする。なお、当該雰囲気温度は、上記ロールミルの加熱又は加熱気体を吹き込むことで調整されることが好ましい。当該加熱気体は、熱源を用いて直接加熱してもよいし、加熱された装置内を通過することで加熱される間接加熱であってもよい。ロールミルや気体の過度の加熱は、乾燥重合体を粉砕し難くなる場合があるため、好ましくない。
【0169】
また、粉砕工程の雰囲気の相対湿度は、好ましくは50%RH(relative humidity)以下、より好ましくは45%RH以下、更に好ましくは40%RH以下、特に好ましくは35%RH以下である。上記相対湿度の下限については特に限定されないが、コストパフォーマンスの観点から、好ましくは1%RH以上である。
【0170】
なお、上記雰囲気の相対湿度は気体を粉砕装置内に吹き込むことで調整されるが、当該気体の好ましい温度範囲及び相対湿度は、上記ロールミル内の雰囲気温度及び相対湿度の好ましい範囲と同様である。
【0171】
(雰囲気圧力)
本発明の粉砕工程での雰囲気圧力は、常圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、好ましくは減圧状態とする。この場合、微減圧でもよく、大気圧に対して好ましくは0.01〜30kPa、より好ましくは0.05〜10kPa低下させる。
【0172】
また、更に好ましい形態として、減圧下及び/又は気流下(ロールミルの入口から出口に向かって気相部が流動する条件下)で粉砕する形態が挙げられる。この場合、好ましい気流の条件は、上記粉砕装置内の雰囲気の記載の通りである。
【0173】
(処理量及び処理時間)
本発明に係る製造方法は、大スケールでの連続粉砕、特に乾燥重合体の処理量が100(kg/hr)以上でかつ24時間以上での連続粉砕に好ましく適用される。上記乾燥重合体の連続粉砕の処理量としては、好ましくは200(kg/hr)以上、より好ましくは500(kg/hr)以上、更に好ましくは1000(kg/hr)以上である。なお、処理量の上限としては、運転のしやすさから20(t/hr)程度である。
【0174】
また、連続粉砕の処理時間としては、好ましくは24時間以上、より好ましくは5日間以上、更に好ましくは10日間以上、特に好ましくは30日間以上である。また、連続粉砕又は断続粉砕による合計の処理時間(総粉砕時間)としては、好ましくは30日間以上、より好ましくは60日間以上、更に好ましくは90日間以上、特に好ましくは200日間以上、最も好ましくは1年間以上である。ロールの交換までの期間であれば上限は特に限定されないが、例えば5年であり、好ましくは4年である。
【0175】
本発明に係る製造方法を行うことで、ロールミルの偏磨耗を防止し、その結果として大スケールでの経時的な物性の低下を防止することができる。なお、連続粉砕を1系列又は複数系列とすることで、吸水性樹脂の生産量が1(t/hr)を超える大スケールでも本発明の効果を発揮する。
【0176】
(ロールミル粉砕前の乾燥重合体)
本発明において、乾燥工程で得られた乾燥重合体は、そのまま全量をロールミルで粉砕してもよいが、乾燥重合体の形状に応じて、ロールミルで粉砕する前に、別の工程、例えば、粗粉砕工程や粗解砕工程に供してもよく、更に分級工程に供してもよい。
【0177】
なお、上記「粗粉砕工程」とは一次粒子を粉砕する工程をいい、また、上記「粗解砕工程」とは凝集粒子を解す(ほぐす)工程をいう。したがって、バンド乾燥等で乾燥重合体が板状、又はブロック状等に凝集している場合、ロールミルでの粉砕を効率よく行うため、予め乾燥重合体を粗粉砕又は粗解砕しておくこともできる。
【0178】
更に、乾燥工程で得られた乾燥重合体は、ロールミルで粉砕する前に分級工程に供され、所定の目開きを有する篩の通過物・非通過物を予め分離しておくことが好ましい。この場合、篩の目開き(JIS Z8801−1(2000)で規定)として好ましくは1〜100mm、より好ましくは2〜80mm、更に好ましくは5〜50mmである。
【0179】
上記篩で分離された非通過物(例えば、目開きが10〜30mmの篩の非通過物)は、吸水性樹脂の製造工程から除去してもよいが、収率や生産性の観点から、ロールミル以外の粉砕方法で粉砕した後、必要に応じて再乾燥し、その後、ロールミルから排出される粉砕物と混合されることが好ましい。すなわち、乾燥工程で得られる乾燥重合体をロールミルで粉砕する前に分級する分級工程を含み、当該分級工程において用いられる篩の非通過物を分離し、当該分離された非通過物がロールミル以外の粉砕方法で粉砕されることが好ましい。なお、上記ロールミル以外の粉砕方法としては、ナイフミル、ハンマーミル、ピンミル、スクリューミル、振動ミル、ジャイレクトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、中でもピンミルが特に好ましい。一方、上記篩で分離された通過物(例えば、目開き10〜30mmの篩の通過物)は、ロールミルで粉砕すればよい。
【0180】
また、ロールミル粉砕前に、例えば、目開き850μm(JIS Z8801−1(2000)で規定)の篩を用いて乾燥重合体の分級を行う場合、当該篩の通過物(粒子径が850μm未満の乾燥重合体)を、ロールミル以外の粉砕方法での粉砕、造粒又は微粉回収に供することもできるが、好ましくはそのままの状態で吸水性樹脂粉末と混合され、吸水性樹脂として使用する。一方、当該篩の非通過物(粒子径が850μm以上の乾燥重合体)は、ロールミルで粉砕すればよい。
【0181】
即ち、例えば、上記目開き10〜30mmの篩の非通過物を分離することで、粗大粒子の粉砕によるロールミルでの過負荷が生じず、更にロールミルの停止や生産性の低下がないため、効率的にロールミル粉砕を行うことができる。また、例えば、上記目開き850μmの篩の通過物を分離することで、必要以上に粉砕されず、微粉の発生量が低減する。
【0182】
(乾燥重合体のロールミル粉砕前の性状)
本発明の乾燥重合体の含水率(実施例に記載の方法で規定)は、例えば、1〜20重量%、2〜15重量%、3〜10重量%である。また、本発明の乾燥重合体の含水率は、ロールミルによる粉砕直前で好ましくは3.0〜15重量%、より好ましくは3.5〜12重量%、更に好ましくは4.0〜9.0重量%である。なお、乾燥工程を経て得られる乾燥後の乾燥重合体全体の平均値と、上記粉砕前の分級によりロールミル粉砕される乾燥重合体とでは、含水率が異なる場合がある。また、本発明の乾燥重合体の粒度(実施例に記載の方法で規定)は、ロールミルによる粉砕前で重量平均粒子径(D50)が0.5〜50mm、より好ましくは0.7〜10mm、さらに好ましくは1.0〜5.0mmである。なお、乾燥重合体の性状は、ゲル粉砕工程や乾燥工程に大きく依存するため、その他の性状については適宜、後述のゲル粉砕工程や乾燥工程の記載が参照される。
【0183】
(分級工程)
本発明では、分級工程を、乾燥工程後又は粉砕工程後に行う。ここで、「乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程」および「分級工程を、乾燥工程後又は粉砕工程後に行う」とは、乾燥工程および粉砕工程の少なくとも一方の工程の後に分級工程を行うことを意味し、具体的には、(a)重合工程→乾燥工程→粉砕工程→分級工程を順次行う形態;(b)重合工程→乾燥工程→分級工程→粉砕工程を順次行う形態;および(c)重合工程→乾燥工程→分級工程→粉砕工程→分級工程を順次行う形態を包含する。好ましくは、(a)および(c)の形態が好ましい。
【0184】
本発明での分級方法としては、特に限定されないが、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))又はその相当品を用いた篩分級、気流分級等が挙げられるが、中でも篩分級が特に好ましい。また、上記特許文献26〜28、35〜40に開示される分級方法についても、適宜、適用される。
【0185】
なお、上記の分級方法は、ロールミル粉砕前の分級、又はロールミル粉砕後の分級の何れにも適用される。
【0186】
なお、本発明の吸水性樹脂の粒度調整は、当該粉砕工程や分級工程に限らず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)やその他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)においても、適宜実施される。
【0187】
(洗浄)
本発明において、上記ロールミルは、物性の安定化の観点から、定期的に洗浄されることが好ましく、乾式洗浄されることが特に好ましい。当該乾式洗浄としては、特に限定されないが、好ましくはブラッシング、バキューム等が挙げられる。
【0188】
また、篩分級についても定期的に洗浄されることが好ましく、水で洗浄(水洗)されることが特に好ましい。当該水洗は、特願2011−200221号の段落[0036]〜[0086]の記載に準じて実施される。当該記載は本発明の記載とされる。
【0189】
即ち、本発明では、篩を定期的に水洗することが好ましいが、その際、篩を分級装置から取り外し、水に浸漬、又は水を噴射することによる水洗が特に好ましい。つまり、水への浸漬、又はジェット水流で篩を洗浄することが好ましい。
【0190】
上記ジェット水流で洗浄する場合、超高圧(ゲージ圧500(kg/cm)以上)の加圧水流とすることもできるが、洗浄効率の観点から、好ましくはゲージ圧1〜400(kg/cm)、より好ましくはゲージ圧5〜200(kg/cm)の加圧水流とする。
【0191】
当該洗浄の周期としては、特に制限がなく、各製造装置に応じて、例えば、12時間毎、24時間毎、5日間毎、10日間毎、30日間毎、45日間毎、60日間毎、75日間毎、120日間毎、150日間毎等、適宜選択することができる。なお、洗浄の周期の上限としては、1年に1回行われる製造装置の大掛かりなメンテナンスが該当するが、吸水性樹脂の生産量や製品品番等によって、300日間毎、200日間毎等、適宜選択すればよい。
【0192】
(粉砕物の粒度)
本発明における粉砕物の粒度として、重量平均粒子径(D50)は200〜600μmが好ましく、200〜550μmがより好ましく、250〜500μmが更に好ましく、300〜500μmが特に好ましい。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、吸水性樹脂粉末全体の0〜30重量%が好ましく、0〜25重量%がより好ましく、0〜20重量%が更に好ましく、0〜15重量%が特に好ましく、粒子径850μm以上の粒子の割合は0〜8重量%が好ましく、0〜5重量%がより好ましく、0〜4重量%が更に好ましく、0〜3重量%が特に好ましい。更に、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は0.20〜0.62が好ましく、0.25〜0.60がより好ましく、0.27〜0.58が更に好ましい。なお、これらの粒度は、米国特許出願公開第2006/0204755号やEDANA ERT420.2−02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
【0193】
(吸水性樹脂粉末の粒度)
本発明における吸水性樹脂粉末の粒度として、重量平均粒子径(D50)は200〜600μmが好ましく、200〜550μmがより好ましく、250〜500μmが更に好ましく、350〜450μmが特に好ましい。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は0〜10重量%が好ましく、0〜5重量%がより好ましく、0〜1重量%が更に好ましく、粒子径850μm以上の粒子の割合は0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%が更に好ましい。更に、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は0.20〜0.50が好ましく、0.25〜0.40がより好ましく、0.27〜0.35が更に好ましい。なお、これらの粒度は、米国特許出願公開第2006/0204755号やEDANA ERT420.2−02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
【0194】
上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての吸水性樹脂についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理されることが好ましい。
【0195】
(本発明の製造方法(第1〜5の方法)に好ましい吸水性樹脂)
本発明は、粒度分布が重要な高通液性(特にSFC)の吸水性樹脂(好ましいSFCの範囲は後述(3−3))、及び粉砕工程で微粉が発生しやすい高吸水速度(特にFSR)の吸水性樹脂(好ましいFSRの範囲は後述(3−7))の製造に特に好適である。つまり、本発明の製造方法は、高通液性と高吸水速度を兼ね備えた吸水性樹脂の製造に好ましく適用される。したがって、本発明で好ましい吸水性樹脂粉末は、生理食塩水流れ誘導性(SFC)が10(×10−7・cm・s・g−1)以上、及び吸水速度(FSR)が0.20(g/g/s)以上、より好ましくは0.36(g/g/s)以上である。また、下記(3−3)及び(3−7)を満たすことが好ましい。
【0196】
(2−6)表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、吸水性樹脂粉末と表面架橋剤溶液とを混合して混合物を得る混合工程、当該混合物を加熱処理する加熱処理工程、必要により冷却する冷却工程から構成される。
【0197】
当該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
【0198】
(表面架橋剤)
本発明で使用され得る表面架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、種々の有機又は無機の表面架橋剤が挙げられ、これらの中でも吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応して共有結合を形成する有機表面架橋剤が好ましく挙げられる。より具体的には、米国特許第7183456号の第9、10カラムに記載の1つ又は2つ以上の表面架橋剤、及び必要により親水性有機溶媒を本発明に適用できる。トータルの表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対し0.01〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましい。また、表面架橋剤を添加する際水を使用することが好ましく、表面架橋剤は水溶液として添加されることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対し0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。必要により親水性有機溶媒を用いる場合の使用量は吸水性樹脂粉末100重量部に対し10重量部以内が好ましく、5重量部以内がより好ましい。以上の表面架橋剤(水溶液)に加え、後述の「再湿潤(別称;再加湿)工程」で用いる添加剤をそれぞれ5重量部以内の範囲で表面架橋剤(水溶液)と混合して、又は別途本工程中に添加してもよい。
【0199】
(混合工程)
本発明の表面架橋工程での表面架橋剤溶液の添加・混合方法は、特に限定されないが、表面架橋剤、溶媒としての水及び必要により親水性有機溶媒、又はこれらの混合物を予め用意した後、吸水性樹脂粉末に対して、噴霧又は滴下して添加・混合することが好ましく、噴霧して添加・混合することがより好ましい。
【0200】
また、表面架橋剤溶液と吸水性樹脂粉末との混合に用いられる混合装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が挙げられる。
【0201】
(加熱処理工程)
上述した表面架橋剤溶液を添加・混合された吸水性樹脂粉末は加熱処理され、その後、必要に応じて冷却処理される。加熱には公知の乾燥機が適用できるが、好ましくはパドルドライヤーである。加熱温度は80〜250℃が好ましく、100〜220℃がより好ましい。
【0202】
(2−7)再加湿工程
本工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、下記の多価金属塩化合物、ポリカチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加する工程である。
【0203】
上記の添加剤は、水溶液又はスラリー液で添加することが好ましく、したがって吸水性樹脂を再度水膨潤させることになるため、本工程を「再加湿工程」と称する。なお、当該添加剤は上述した表面架橋剤溶液と同時に添加・混合してもよい。好ましくは、後述の含水率(3−4)、特に含水率2〜9重量%に制御される。
【0204】
(多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー)
本発明において、得られる吸水性樹脂の吸水速度(Vortex)向上、通液性(SFC)向上や吸湿時の流動性等の観点から、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを添加することが好ましい。
【0205】
具体的には、国際公開第2011/040530号パンフレットの「〔6〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー」に記載の多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー、及びその使用量が本発明に適用される。
【0206】
(キレート剤)
本発明において、得られる吸水性樹脂の着色防止や劣化防止の観点から、キレート剤を更に添加することができる。
【0207】
上記キレート剤としては、例えば国際公開第2011/040530号パンフレットの「〔2〕キレート剤」に記載されたキレート剤、及びその使用量が本発明に適用できる。
【0208】
(無機還元剤)
本発明において、得られる吸水性樹脂の着色防止や劣化防止、残存モノマー低減の観点から、無機還元剤を更に添加することができる。
【0209】
上記無機還元剤としては、例えば国際公開第2011/040530号パンフレットの「〔3〕無機還元剤」に記載された無機還元剤、及びその使用量が本発明に適用できる。
【0210】
(α−ヒドロキシカルボン酸化合物)
本発明において、得られる吸水性樹脂の着色防止の観点から、α−ヒドロキシカルボン酸化合物を更に添加することができる。なお、「α−ヒドロキシカルボン酸化合物」とは、分子内にヒドロキシル基を有するカルボン酸又はその塩のことで、α位にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸である。
【0211】
上記α−ヒドロキシカルボン酸化合物としては、例えば国際公開第2011/040530号パンフレットの「〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物」に記載されたα−ヒドロキシカルボン酸化合物、及びその使用量が本発明に適用できる。
【0212】
(水不溶性粉末)
通液性やAnti−Caking性のために、水不溶性粉末、特に水不溶性無機粉末を使用してよい。代表的には、シリカ(SiO)、アルミナ、酸化チタン、粘土、カオリン等が挙げられる。
【0213】
(2−8)その他の添加剤の添加工程
上述した添加剤以外の添加剤を、吸水性樹脂に種々の機能を付与させるため、添加することができる。かような添加剤として具体的には、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、国際公開第2011/040530号パンフレットの「〔5〕水不溶性無機微粒子」に記載された水不溶性無機微粒子、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。なお、上記界面活性剤は、米国特許出願公開第2005/0209352号に開示された界面活性剤が好ましく適用される。
【0214】
また、これらの添加剤の使用量としては、その用途に応じて適宜決定され、特に限定されないが、好ましくは0〜3重量%、より好ましくは0〜1重量%である。
【0215】
(2−9)その他の工程
上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉の再利用工程等を必要に応じて設けることができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等の1種又は2種以上の工程を更に含んでもよい。ここで整粒工程とは、表面架橋工程以降の微粉除去工程や吸水性樹脂が凝集し、所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程を含む。また、微粉の再利用工程は微粉をそのまま、又は微粉造粒工程で大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程のいずれかの工程で添加する工程を含む。
【0216】
〔3〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の物性
本発明に係る吸水性樹脂は、当該吸水性樹脂を衛生用品、特に紙オムツに使用する場合には、下記の(3−1)〜(3−11)の少なくとも1つ以上、好ましくは加圧下吸水倍率(AAP)を含めた2つ以上、より好ましくは3つ以上の物性を、所望する範囲に制御することが望まれる。これらの物性が下記の範囲を満たさない場合、本発明の効果が十分に得られず、高濃度紙オムツで十分な性能を発揮しない虞がある。
【0217】
また、本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂は、その形状について特に限定されないが、粒子状が特に好ましい。本項では、好ましい態様である粒子状の吸水性樹脂についてその物性を説明する。なお、下記の物性は、特に断りのない限り、EDANA法に準拠して規定する。
【0218】
(3−1)無加圧下吸水倍率(CRC)
本発明の吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC)は、好ましくは5(g/g)以上、より好ましくは15(g/g)以上、更に好ましくは25(g/g)以上である。上限値は特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは70(g/g)以下、より好ましくは50(g/g)以下、更に好ましくは40(g/g)以下である。
【0219】
上記CRCが5(g/g)未満の場合、吸収量が少なく、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。また、上記CRCが70(g/g)を超える場合、尿や血液等の体液等を吸収する速度が低下するため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適さない。なお、CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等で制御することができる。
【0220】
(3−2)加圧下吸水倍率(AAP)
本発明の吸水性樹脂の加圧下吸水倍率(AAP)は、好ましくは20(g/g)以上、より好ましくは21(g/g)以上、更に好ましくは22(g/g)以上、特に好ましくは23(g/g)以上である。上限値は特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは30(g/g)以下である。
【0221】
上記AAPが20(g/g)未満の場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り量(「Re−Wet(リウェット)」と通常、称する)が多くなり、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。なお、AAPは、粒度や表面架橋剤等で制御することができる。
【0222】
(3−3)生理食塩水流れ誘導性(SFC)
本発明の吸水性樹脂の生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、好ましくは10(×10−7・s・cm・g−1)以上、より好ましくは50(×10−7・s・cm・g−1)以上、更に好ましくは60(×10−7・s・cm・g−1)以上、特に好ましくは70(×10−7・s・cm・g−1)以上、最も好ましくは80(×10−7・s・cm・g−1)以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは3000(×10−7・s・cm・g−1)以下、より好ましくは2000(×10−7・s・cm・g−1)以下である。
【0223】
上記SFCが10(×10−7・s・cm・g−1)未満の場合、尿や血液等の体液等の液透過性が低く、吸収体中の吸水性樹脂使用量が多いタイプの紙オムツ等への使用に適さない。また、上記SFCが3000(×10−7・s・cm・g−1)を超える場合、尿や血液等の体液等が十分に吸収されずに液漏れが発生する場合があり、紙オムツ等への使用に適さない。なお、SFCは、粒度や表面架橋剤、多価金属塩、カチオン性ポリマー等で制御することができる。
【0224】
(3−4)含水率
本発明の吸水性樹脂の含水率は、好ましくは0重量%を超えて15重量%以下、より好ましくは1〜13重量%、更に好ましくは2〜10重量%、特に好ましくは2〜9重量%である。当該含水率を上記範囲に制御することで、粉体特性(例えば、流動性、搬送性、耐ダメージ性等)に優れた吸水性樹脂を得ることができる。
【0225】
(3−5)残存モノマー
本発明の吸水性樹脂の残存モノマーは、安全性の観点から、好ましくは0〜500ppm、より好ましくは0〜400ppm、更に好ましくは0〜300ppmである。当該残存モノマーを上記範囲に制御することで、皮膚等への刺激が軽減される吸水性樹脂を得ることができる。
【0226】
(3−6)水可溶分(Ext)
本発明の吸水性樹脂の水可溶分(Ext)は、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。
【0227】
上記水可溶分が35重量%を超える場合、ゲル強度が弱く、液透過性の劣った吸水性樹脂となる虞がある。更に、Re−Wetが多くなるため、紙オムツ等への使用に適さない。なお、水可溶分は、内部架橋剤等で制御することができる。
【0228】
(3−7)吸水速度(FSR)
本発明の吸水性樹脂の吸水速度(FSR)は、好ましくは0.10(g/g/s)以上、より好ましくは0.15(g/g/s)以上、更に好ましくは0.20(g/g/s)以上、特に好ましくは0.25(g/g/s)以上、最も好ましくは0.36(g/g/s)以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは5.0(g/g/s)以下、より好ましくは4.0(g/g/s)以下である。
【0229】
上記FSRが0.10(g/g/s)未満の場合、尿や血液等の体液等が十分に吸収されず液漏れが発生することがあるため、紙オムツ等への使用に適さない。なお、FSRは発泡重合や粒度等で制御することができる。
【0230】
(3−8)粒度
本発明の吸水性樹脂の粒度(粒子径分布・重量平均粒子径(D50)及び粒子径分布の対数標準偏差(σζ))は、前記範囲の粒度と同様となるように制御される。
【0231】
(3−9)初期色調
本発明の吸水性樹脂の初期色調(ハンターLab表色系で規定)は、L値として好ましくは88以上、より好ましくは89以上、更に好ましくは90以上である。上限値は100であるが、少なくとも88を示せば初期色調による問題は発生しない。また、a値として好ましくは−3〜3、より好ましくは−2〜2、更に好ましくは−1〜1である。更に、b値としては好ましくは0〜12、より好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜9である。なお、上記L値は100に近づくほど白色度が増し、a値及びb値は0に近づくほど低着色で実質的に白色となる。
【0232】
(3−10)経時色調
本発明の吸水性樹脂の経時色調(ハンターLab表色系で規定)は、L値として好ましくは80以上、より好ましくは81以上、更に好ましくは82以上、特に好ましくは83以上である。上限値は100であるが、少なくとも80を示せば経時色調による問題は発生しない。また、a値として好ましくは−3〜3、より好ましくは−2〜2、更に好ましくは−1〜1である。更に、b値としては好ましくは0〜15、より好ましくは0〜12、更に好ましくは0〜10である。なお、上記L値は100に近づくほど白色度が増し、a値及びb値は0に近づくほど低着色で実質的に白色となる。
【0233】
(3−11)内部気泡率
本発明の吸水性樹脂の内部気泡率(実施例で規定)は、好ましくは1.0〜4.0%、より好ましくは1.2〜3.8%、更に好ましくは1.4〜3.6%である。上記内部気泡率が1.0%未満の場合、吸水速度(FSR)向上効果が小さくなるため、好ましくない。また、上記内部気泡率が4.0%を超える場合、耐ダメージ性の低下に伴って通液性(SFC)が低下するため、好ましくない。
【0234】
〔4〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の用途
本発明の吸水性樹脂の用途としては特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生用品の吸収体に使用され得る。特に、原料由来の臭気、着色等が問題となっていた高濃度紙オムツ(紙オムツ1枚あたりの吸水性樹脂の使用量が多いもの)の吸収体として使用することができる。更に、上記吸収体の上層部に使用される場合に、顕著な効果が期待できる。
【0235】
また、上記吸収体として、吸水性樹脂以外にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)として、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは40〜100重量%、更に好ましくは50〜100重量%、更により好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%、最も好ましくは75〜95重量%である。
【0236】
上記コア濃度を上記範囲とすることで、当該吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合、吸収性物品が清浄感のある白色状態を保つことができる。更に、尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配によって吸収量の向上が見込める。
【実施例】
【0237】
以下、実施例に従って本発明(第1〜5の方法)をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段の組み合わせも本発明の範囲に含まれるものとした。
【0238】
また、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載した諸物性は、以下に規定する物性の測定方法にしたがって求めた。なお、特に注釈のない限り、実施例で使用する電気機器は200V又は100Vの電源を使用し、本発明の吸水性樹脂の諸物性は、室温(20〜25℃)、相対湿度50%RHの条件下で測定した。また、本実施例において、「リットル」を「l」又は「L」と、「重量%」を「wt%」と、便宜上記すことがある。また、特記しない限りERT(EDANA法)により測定した。
【0239】
[吸水性樹脂の物性測定]
(a)粒度(粒子径分布・重量平均粒子径(D50)・粒子径分布の対数標準偏差(σζ))
本発明の吸水性樹脂のふるい粒度分布(PSD)、重量平均粒子径(D50)および粒子径分布幅は米国特許第7638570号明細書第27、28カラムに記載された「(3) Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定した。
【0240】
なお、乾燥重合体(未粉砕物)については、国際公開第2010/114058号パンフレットの「乾燥物の粒子径分布」を参照した。さらに、2段階以上で粉砕する場合等に得られる、粉砕途中の粒子の粒子径分布については米国特許出願公開第2006/204755号明細書または国際公開第2010/114058号パンフレットで記載された粒度測定用の篩を10段程度適宜組み合わせて測定した。
【0241】
(b)無加圧下吸水倍率(CRC)
本発明の吸水性樹脂について、EDANA法(ERT442.1−02)に準じて、CRC(無加圧下吸水倍率)を測定した。
【0242】
(c)加圧下吸水倍率(AAP)
本発明の吸水性樹脂について、EDANA法(ERT442.2−02)に準じて、AAP(加圧下吸水倍率)を測定した。なお、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更した。
【0243】
(d)生理食塩水流れ誘導性(SFC)
本発明の吸水性樹脂について、米国特許第5669894号明細書(特許文献29)の記載に準じて、SFC(生理食塩水流れ誘導性)を測定した。
【0244】
(e)含水率、固形分濃度
本発明の吸水性樹脂について、EDANA法(ERT430.2−02)に準じて、含水率を測定した。なお、試料量を1g、乾燥温度を180℃に変更した。
【0245】
また、乾燥重合体、特にロールミルによる粉砕直前の乾燥重合体の含水率を測定する際、前処理として、実験室レベルの粉砕機を使用して粉砕したもの、具体的には、ラボ粉砕機やパーソナルミル(柴田科学(株)製)を用いて、粒子径850μm以上の粒子が10重量%未満(特に重量平均粒子径(D50)が350〜450μm)となるまで粉砕したものを含水率の測定に供することもできる。
【0246】
また、固形分濃度は、「100−含水率」(重量%)で規定した。
【0247】
(f)吸収速度(FSR)
本発明の吸水性樹脂について、米国特許出願公開第2010/0184594号の記載に準じて、FSR(吸水速度)を測定した。
【0248】
(g)内部気泡率
本発明の吸水性樹脂について、米国特許出願公開第2012/0258851号の記載に準じて、内部気泡率を測定した。
【0249】
(h)ロールクリアランス
本発明において、ロールクリアランスは、JIS B 7524(2008)で規定される隙間ゲージを用いて、JISに準じて測定した。当該隙間ゲージは、10μm単位で測定できる隙間ゲージであって、リーフ幅;12.7mm、リーフ形状;A、リーフ長;100mm又は150mmであった。なお、当該リーフの“厚さ、幅、長さ、反りの許容差”や“材質、表面粗さ”、“測定温度”等については、JIS規格に準ずる。中でも、JIS 100A12、又は150A12等の隙間ゲージが好ましく使用されるが、上記以外に、A10、A13、A19、A25等、ロールクリアランスやロール径に応じて、JIS規格品又はその相当品を適宜選択して、測定することができる。
【0250】
[製造例1]
(重合工程)
先ず、単量体水溶液(1)として、中和率73モル%、単量体濃度43重量%のアクリル酸部分中和ナトリウム塩水溶液を作製した。その際、内部架橋剤として、0.09モル%(対単量体)のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)と、キレート剤として、100ppm(対単量体)のジエチレントリアミン5酢酸・4ナトリウムとを当該単量体水溶液(1)に添加した。
【0251】
次に、上記単量体水溶液(1)を、送液ポンプを用いて連続的に重合装置に供給(送液)した。その際、送液配管の途中から窒素ガスを連続的に吹き込み、単量体水溶液(1)中の溶存酸素の濃度を0.5ppm(0.5mg/l)以下とした。続いて、単量体水溶液(1)を95℃に昇温した後、重合開始剤として、過硫酸ナトリウムを連続的に混合(ラインミキシング)した。なお、過硫酸ナトリウムの添加量は、単量体1モルに対して0.12g(0.05モル%)であった。
【0252】
上記重合装置に供給された液は、平面スチールベルト上で沸騰を伴いながら重合した。重合時間は約3分間であった。当該操作によって、シート状の含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)(1)を得た。なお、上記重合装置は、両端に堰を有する平面スチールベルト重合装置であり、平面スチールベルトはポリテトラフルオロエチレン(PFA)で被覆されていた。
【0253】
(ゲル粉砕工程)
次に、上記シート状の含水ゲル(1)(表面温度約80℃)を、上記平面スチールベルトの進行方向に対して垂直方向に等間隔に切断した後、孔径22mmのミートチョッパーに連続的に供給して、細分化(ゲル粉砕)した。その際、含水ゲル(1)100重量部に対して、80℃の温水を7重量部添加した。当該操作によって、重量平均粒子径(D50)が1.1mm、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)が1.7、固形分が49重量%である粒子状含水ゲル(1)を得た。
【0254】
(乾燥工程)
続いて、上記粒子状含水ゲル(1)を、連続通気ベルト式乾燥機の多孔板上にトラバースフィーダーを用いて連続的に積載した後、170℃の熱風を38分間通気させて乾燥した。
【0255】
当該連続通気ベルト式乾燥機は、同じ大きさの乾燥室を7室有する構造であり、熱風を、第1室では風速1.6(m/s)で上向きに、第2〜6室は風速1.0(m/s)で下向きに通気するように制御した。また、乾燥機末尾の第7室においては、60℃の温風を通気させることで乾燥重合体を強制冷却し、その温度を100℃以下とした。なお、上記熱風の露点は71℃であった。
【0256】
上記操作によって、乾燥重合体は乾燥機出口において緩く凝集しブロック状となっていたが、回転軸に多数のピンを取り付けた解砕機を用いて解すこと(粗解砕)で、流動性のある乾燥重合体(1)として得られた。
【0257】
当該乾燥重合体(1)の重量平均粒子径(D50)は2.6mm、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は0.80、固形分は95重量%であった。
【0258】
(貯蔵工程)
上記乾燥重合体(1)を、バケットコンベアを用いて輸送し、ホッパーに投入した。当該ホッパーや輸送配管は蒸気トレスで加温されており、ホッパー内の乾燥重合体(1)の温度は約60℃であった。当該ホッパーにおいて、平均15分間程度、滞留させた。
【0259】
[比較例1]
(粉砕工程)
製造例1で得られた乾燥重合体(1)をホッパー底部から定量フィーダーを用いて、600(kg/hr)で抜き出した。その後、管径10cmのステンレスパイプ中を落下させて、乾燥重合体(1)をロールミル中央部に投入して粉砕した。
【0260】
上記ロールミルの仕様及び運転条件として、仕様は、ロール長:60cm、ロール径:30cm、ロール材質:遠心チルド鋳鉄、ロールミル内壁面:SUS304バフ仕上げ、ロール表面:ロールの回転軸と3°の角度をなす溝を有し、当該溝の傾斜は一対のロールで同じ向きであり、運転条件は、ロール回転数:220rpm及び500rpm(一対のロールが非等速、周速比1:2.27)、ロールクリアランス:0.4mm、ロールミル温度:約60℃、ロールミル内の雰囲気温度:約60℃、ロールミル内の雰囲気露点:約11℃(相対湿度7%RH)、乾燥重合体(1)の温度:60℃、ロールミル内部及び周辺配管の減圧度:0.1kPaとした。なお、粉砕物の重量平均粒子径に対するロールクリアランスの最小値(Gap/D50)は、0.8(=0.4/0.48)である。
【0261】
なお、上記ロールミルは整備直後であったため、ロールクリアランス変化幅は実質0μm(10μm未満)であり、ロールクリアランス変化率も実質0%であった。
【0262】
上記ロールミルに投入される乾燥重合体(1)について、ロール長を3等分した各部分における乾燥重合体(1)の流量(供給量)を測定した。その結果、中央部で100重量%あった。即ち、乾燥重合体(1)の全量が、ロールミル中央部に投入されたことになる。なお、フィード幅比は30%であった。
【0263】
上記操作によって、比較粉砕物(a1)を得た。得られた比較粉砕物(a1)をサンプリングし、粒度を測定した。結果を表1に示す。
【0264】
(分級工程)
続いて、比較粉砕物(a1)全量を、分級装置(1)(目開きが上から順に850μm/150μmの金属篩で構成される分級装置/MINOX製;篩直径600mm)に連続的に供給して分級した。
【0265】
当該操作により、目開き850μmの篩と目開き150μmの篩との間に存在する粒子を比較吸水性樹脂粉末(1)、目開き150μmの篩を通過した粒子を比較吸水性樹脂微粉(1)として取得した。得られた比較吸水性樹脂粉末(1)の粒子径分布を測定したところ、150μm未満の粒子が1.3重量%含有していた。
【0266】
(表面架橋工程)
次に、比較吸水性樹脂粉末(1)100重量部に対して、エチレンカーボネート0.5重量部、工業用純水3重量部からなる比較表面架橋剤溶液(1)を作成した後、高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)中で噴霧添加した。その後、パドルドライヤーに移送し、198℃(熱媒温度)で35分間の熱処理を行った。
【0267】
上記熱処理後、パドル型冷却機を用いて、表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(1)の温度が60℃となるまで、強制的に冷却を行った。
【0268】
(再加湿工程)
上記冷却の際、表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(1)100重量部に対して、硫酸アルミニウム0.3重量部、水1重量部及びプロピレングリコール0.03重量部からなる処理剤を添加した。
【0269】
(整粒工程)
続いて、目開き850μmのJIS標準篩を備えた分級装置(2)で上記表面処理後の比較吸水性樹脂粉末(1)を分級し、その全量が通過するまでフラッシュミルで粉砕した。以上の操作により、粒子径が850μm未満の比較吸水性樹脂(p1)を得た。比較吸水性樹脂(p1)の物性を表1に示す。
【0270】
[実施例1]
比較例1において、図1及び図2に示すスクリュー型フィーダーの回転式分散機をロールミルの入口(直上)に用いた以外は、比較例1と同様の操作を行って、粉砕物(A1)及び吸水性樹脂(P1)を得た。得られた粉砕物(A1)の粒度及び吸水性樹脂(P1)の物性を表1に示した。
【0271】
なお、当該スクリューフィーダー型分散機は羽根を回転させることで、乾燥重合体(1)をロールミルの中央部から両端方向に移動させることができる。
【0272】
上記ロールミルに投入される乾燥重合体(1)について、ロール長を3等分した各部分における乾燥重合体(1)の流量(供給量)を測定した。その結果、中央部が40重量%、両端部がそれぞれ30重量%であった。即ち、乾燥重合体(1)が、ほぼロールミル全体に投入されたことになる。なお、当該スクリューフィーダー型分散機の長さはロール長の90%であり、フィード幅比は95%であった。ロール軸方向にロールを3等分した際、乾燥重合体の供給量が最も多い部分は最も少ない部分の1.3倍であった。
【0273】
[実施例2]
比較例1において、図3に示すスリット型分散機をロールミルの入口(直上)に用い、スリット全体が乾燥重合体(1)に覆われる程度にホッパー内の貯蔵量を増加させた後に粉砕を開始した以外は、比較例1と同様の操作を行って、粉砕物(A2)及び吸水性樹脂(P2)を得た。得られた粉砕物(A2)の粒度及び吸水性樹脂(P2)の物性を表1に示した。
【0274】
なお、当該スリット型分散機は、ロール長とほぼ同じ長さのスリット、スリットから乾燥重合体を抜き出すためのロール状フィーダー、ノッカーが設置されたホッパーとから構成されている。
【0275】
上記ロールミルに投入される乾燥重合体(1)について、ロール長を3等分した各部分における乾燥重合体(1)の流量(供給量)を測定した。その結果、中央部及び両端部は共にほぼ同量であった。即ち、乾燥重合体(1)が、ほぼロールミル全体に渡って均等に投入されたことになるため、ロール軸方向にロールを3等分した際、乾燥重合体の供給量が最も多い部分は最も少ない部分の1.0倍であった。なお、当該スリット型分散機から乾燥重合体(1)がほぼロール長の幅で落下するため、フィード幅比としては、ほぼ100%となる。また、運転期間中にホッパー内でブリッジが時々見られたが、ノッカーによりブリッジは解消した。
【0276】
[実施例3]
比較例1において、3つの山型分散板(角度60°)をロールミルの入口(直上)に設置した以外は、比較例1と同様の操作を行って、粉砕物(A3)及び吸水性樹脂(P3)を得た。得られた粉砕物(A3)の粒度及び吸水性樹脂(P3)の物性を表1に示した。
【0277】
なお、当該山型分散板は落下中の乾燥重合体(1)を山の左右2方向に分ける働きを有する。実施例3においては、上から1段目に山型分散板を1つ、2段目に2つ設置した。したがって、上記ロールミルに投入される乾燥重合体(1)について、ロール長を3等分した各部分における乾燥重合体(1)の流量(供給量)を測定したところ、中央部が50重量%であり、両端部がそれぞれ25重量%であった。すなわち、ロール軸方向にロールを3等分した際、乾燥重合体の供給量が最も多い部分は最も少ない部分の2倍であった。なお、フィード幅比は90%であった。
【0278】
[比較例2]
比較例1において、ステンレスパイプの管径を20cmとした以外は、比較例1と同様の操作を行って、比較粉砕物(a2)及び比較吸水性樹脂(p2)を得た。得られた比較粉砕物(a2)の粒度及び比較吸水性樹脂(p2)の物性を表1に示した。
【0279】
上記ロールミルに投入される乾燥重合体(1)について、ロール長を3等分した各部分における乾燥重合体(1)の流量(供給量)を測定した。その結果、中央部で94重量%であり、両端部がそれぞれ3重量%であった。すなわち、ロール軸方向にロールを3等分した際、乾燥重合体の供給量が最も多い部分は最も少ない部分の31倍であった。なお、フィード幅比は50%であった。
【0280】
[実施例4]
実施例1において、下記(微粉再利用工程)を追加した以外は、実施例1と同様の操作を行って、粉砕物(A4)及び吸水性樹脂(P4)を得た。得られた粉砕物(A4)の粒度及び吸水性樹脂(P4)の物性を表1に示した。
【0281】
(微粉再利用工程)
分級工程で得られた吸水性樹脂微粉(4)100重量部に対して、工業用純水120重量部を表面架橋工程とは異なる高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)中で噴霧添加し、微粉造粒を行った。当該操作で得られた吸水性樹脂微粉(4)由来の造粒ゲルを、前述のゲル粉砕工程で得られる粒子状含水ゲル(1)に添加した後は、前述と同様の乾燥操作等を行った。
【0282】
[比較例3]
比較例1において、上記(微粉再利用工程)を追加した以外は、比較例1と同様の操作を行って、比較粉砕物(a3)及び比較吸水性樹脂(p3)を得た。得られた比較粉砕物(a3)の粒度及び吸水性樹脂(p3)の物性を表1に示した。
【0283】
[実施例5]
実施例4において、ロールミル(1段目)の下部に、1段目のロールミルと平行となるように、ロールミル2基を上下に直結(上から2段目のロールミル、3段目のロールミルと称する)し、仕様を以下の条件に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、粉砕物(A5)及び吸水性樹脂(P5)を得た。得られた粉砕物(A5)の粒度及び吸水性樹脂(P5)の物性を表1に示した。
【0284】
なお、1段目のロールミルと2段目のロールミルとの間、2段目のロールミルと3段目のロールミルとの間には分散機を設置していないが、1段目のロールミル粉砕物及び2段目のロールミル粉砕物は、それぞれロール幅で排出されるため、そのままの幅でそれぞれ2段目のロールミル及び3段目のロールミルに供給された。
【0285】
また、ロールミルの仕様の変更点として、1段目のロールミルは、ロールクリアランス:0.7mmであり、2段目のロールミルは、ロールクリアランス:0.4mmであり、3段目のロールミルは、ロールクリアランス:0.2mmであった。
【0286】
[比較例4]
実施例5において、回転式(スクリュー型フィーダー)分散機を使用しなかった以外は、実施例5と同様の操作を行って、比較粉砕物(a4)及び比較吸水性樹脂(p4)を得た。得られた比較粉砕物(a4)の粒度及び吸水性樹脂(p4)の物性を表1に示した。
【0287】
[実施例6]
実施例5において、下記(粉砕前分級工程)を追加した以外は、実施例5と同様の操作を行って、粉砕物(A6)及び吸水性樹脂(P6)を得た。得られた粉砕物(A6)の粒度及び吸水性樹脂(P6)の物性を表1に示した。
【0288】
(粉砕前分級工程)
前述の乾燥工程において、乾燥機出口において緩く凝集しブロック状となっていた乾燥重合体を、回転軸に多数のピンが取り付けられた解砕機を用いて解した。その後、目開きが10mm、850μm、150μmの篩を有する分級装置(0)に供給して、連続的に分級した。
【0289】
当該分級操作によって得られる各成分は以下のように取り扱った。即ち、粒子径が10mm以上の粗大粒子はピンミル(ホソカワミクロン社製)で粉砕し、再度、分級装置(0)に供給した。また、粒子径が850μm以上10mm未満の粒子は前述した(貯蔵工程)に、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子は前述した(貯蔵工程)、(粉砕工程)、(分級工程)を経ずに直接(表面架橋工程)に、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂微粉は(微粉再利用工程)に、それぞれ移送した。
【0290】
【表1】
【0291】
なお、表1には記載していないが、上記実施例1〜6、比較例1〜4のそれぞれで得られる粉砕物について、その含水率は5重量%であり、乾燥重合体(1)と同じであった。
【0292】
(まとめ)
実施例1〜3と比較例1〜2との対比から、乾燥重合体をロールミルに投入する際に分散機を使用すること(第1の方法)によって、粉砕工程で発生する微粉(粒子径150μm未満の粒子)の割合が低減し、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)が改善し、更に得られる吸水性樹脂の通液性(SFC)が向上することが分かる。
【0293】
実施例4と比較例3との対比から、歩留まり向上を目的とする微粉再利用工程を設置した場合、得られる吸水性樹脂の物性差がより顕著となることが分かる。
【0294】
実施例4及び実施例5との対比から、ロールミル段数を増加することによって、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)をほぼ一定に保った状態で、重量平均粒子径(D50)を小さくできる(476→341μm)ことが分かる。
【0295】
実施例4及び実施例6との対比から、粉砕工程前に分級工程を設置することで、粗大な乾燥重合体や、所望の粒子径を有する乾燥重合体を予め分離することにより、微粉量の低減が図れることが分かる。
【0296】
[実施例7]
上記実施例5において、単量体水溶液を米国特許出願公開第2012/258851号の実施例2に準じて作製し、気泡を含有させた発泡重合を行った以外は、実施例5と同様の操作を行って、吸水性樹脂(P7)を得た。
【0297】
得られた吸水性樹脂(P7)は多孔質で高吸水速度であり、その物性は、CRC:27.1(g/g)、AAP:22.8(g/g)、SFC:109(×10−7・s・cm・g−1)、FSR:0.36(g/g/s)、内部気泡率:3.6%であった。また、粉砕後の微粉量(分級によって除去され、リサイクルされた微粉量)は生産量に対して16重量%であった。
【0298】
[比較例5]
実施例7において、粉砕工程で分散機を使用しなかった以外は、実施例7と同様の操作を行って、比較吸水性樹脂(p4)を得た。得られた吸水性樹脂(p4)の物性は、CRC:26.6(g/g)、AAP:22.5(g/g)、SFC:96(×10−7・s・cm・g−1)、FSR:0.38(g/g/s)、内部気泡率:3.4%であった。また、粉砕後の微粉量(分級によって除去され、リサイクルされた微粉量)は生産量に対して20重量%であった。
【0299】
(まとめ)
実施例7及び比較例5では、多孔質の吸水性樹脂を製造したが、分散機の使用の有無によって、微粉量及び物性の差異がより顕著となることが分かる。なお、比較例1〜5では微粉量が多く、分級工程での目詰まりが発生し易い状態であった。
【0300】
[実施例8]
実施例5の条件で、92日間連続して稼働し、吸水性樹脂(P8)を得た。粉砕工程で使用した3段目のロールミルについて、ロールクリアランス変化率は5%、ロールクリアランス変化幅は10μmであったが、吸水性樹脂(P8)の物性は安定していた。
【0301】
[比較例6]
比較例4の条件で、92日間連続して稼働し、比較吸水性樹脂(p6)を得た。粉砕工程で使用した3段目のロールミルについて、ロールクリアランス変化率は38%、ロールクリアランス変化幅は120μmに拡大していた。更に、吸水性樹脂(p6)の物性(重量平均粒子径、SFC、FSR)が徐々に変化していく傾向が確認された。
【0302】
[実施例9]
実施例5の条件で、150日間連続して稼働した後、連続運転により拡大した3段目のロールミルのロールクリアランスを調整した。当該調整は、最大クリアランスを示した部分を稼働当初のクリアランス(0.2mm)に戻すことで実施した。その後、更に150日間連続して稼働し、吸水性樹脂(P9)を得た。
【0303】
粉砕工程で使用した3段目のロールミルについて、述べ300日間での最大ロールクリアランスは214μm、ロールクリアランス変化幅は30μmなので、ロールクリアランス変化率は14%(=30/214×100)となったが、吸水性樹脂(P9)の物性は安定していた。
【0304】
その後、上記と同様の3段目ロールクリアランス調整を行うことで、更に連続稼働することができた。
【0305】
[比較例7]
比較例4の条件で、150日間連続して稼働した後、3段目のロールミルのロールクリアランスを調整した。当該調整は、最大クリアランスを示した部分を稼働当初のクリアランス(0.2mm)に戻すことで実施した。その後、更に150日間連続して稼働し、比較吸水性樹脂(p7)を得た。
【0306】
粉砕工程で使用した3段目のロールミルについて、述べ300日間での最大ロールクリアランスは370μm、ロールクリアランス変化幅は340μmに拡大していた。そのため、ロールクリアランス変化率は92%(=340/370×100)となっていた。また、比較吸水性樹脂(p7)の物性(重量平均粒子径、SFC、FSR)が徐々に変化していく傾向が確認された。
【0307】
更に、当該3段目のロールミルの一端が接触するため、ロールクリアランスを再調整することができなかった。
【0308】
(まとめ)
実施例8〜9及び比較例6〜7の対比から、分散機を使用しなければ、ロールミルの中央部に乾燥重合体が集合し、そのため長時間の稼働でロールの中央部が擦り減り、その結果として物性が低下することが分かる。
【0309】
一方、分散機を使用(第1の方法)すれば、ロールの擦り減りが均等となり、ロールの交換頻度が低下するだけでなく、長期運転(特に92日間の連続運転(実施例8)や、300日間の長期運転(実施例9))において吸水性樹脂の物性が安定化する。特に、長期間の運転においては、ロールクリアランス変化幅が大きくなり過ぎることによる再調整不可という問題を回避することができる。
【0310】
なお、実施例8及び9は、本願の第1の方法に加え、本願の第2の方法(実施例8)、第3の方法(実施例9)の実施例となっている。
【0311】
[製造例2]
(粉砕前分級工程)
上記製造例1の乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)について、目開きが10mm、850μm及び150μmのJIS標準篩を有する分級装置(0)に供給して、連続的に分級した。
【0312】
当該分級操作によって得られる各成分は以下のように取り扱った。即ち、粒子径が10mm以上の粗大粒子はピンミル(ホソカワミクロン社製)で粉砕し、再度、分級装置(0)に供給した。また、粒子径が850μm以上10mm未満の粒子は後述の(貯蔵工程)に、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子は後述の(貯蔵工程)、(粉砕工程)、(分級工程)を経ずに直接(表面架橋工程)に、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂微粉は(微粉再利用工程)に、それぞれ移送した。
【0313】
(貯蔵工程)
上記粉砕前分級工程で得られた、粒子径が850μm以上10mm未満の粒子(乾燥重合体(2)と称する;D50 2.8mm)は、バケットコンベアを用いて輸送し、ホッパーに投入した。当該ホッパーや輸送配管は蒸気トレスで加温されており、ホッパー内の乾燥重合体(2)の温度は約60℃であった。当該ホッパーにおいて、平均15分間、滞留させた。
【0314】
[実施例10]
(粉砕工程)
製造例2で得られた乾燥重合体(2)をホッパー底部から定量フィーダーを用いて、600(kg/hr)で抜き出した。その後、当該乾燥重合体(2)は、2段ロールミルに投入して粉砕した。なお、当該2段ロールミルは、その最上段のロールミルの入口(真上)に図1及び図2に示す回転式分散機として、スクリュー型フィーダー分散機が設置されており、当該分散機によって、乾燥重合体(2)は分散されて2段ロールミルに投入された。当該操作によって、粉砕物(G10)を得た。
【0315】
なお、上記2段ロールミルの仕様及び運転条件は、以下の通りとした。
【0316】
即ち、仕様としては、ロール長:60cm、ロール径:30cm、ロール材質:遠心チルド鋳鉄、ロールミル内壁面:SUS304バフ仕上げ、ロール表面:ロールの回転軸と3°の角度をなす溝を有し、また、運転条件としては、ロール回転数:400rpm及び600rpm(一対のロールが非等速であり、ロールサイズが同じであるため、周速比は1:1.5となる。1段目、2段目とも同じ。)、ロールクリアランス:700μm(1段目)、200μm(2段目)、ロールミル温度:約60℃、ロールミル内の雰囲気温度:約60℃、ロールミル内の雰囲気露点:約11℃(相対湿度7%RH)、乾燥重合体(2)の温度:60℃、ロールミル内部及び周辺配管の減圧度:0.1kPa、であった。
【0317】
(分級工程)
続いて、上記粉砕工程で得られた粉砕物(G10)全量について、分級装置(1)(目開きが上から順に850μm/150μmの金属篩で構成される分級装置/MINOX製;篩直径600mm)を用いて連続的に分級した。
【0318】
当該分級操作により、目開き850μmの篩と目開き150μmの篩との間に存在する粒子を吸水性樹脂粉末(B10)として、目開き150μmの篩を通過した粒子を吸水性樹脂微粉(F10)として、それぞれ取得した。
【0319】
(微粉再利用工程)
上記分級工程で得られた吸水性樹脂微粉(F10)100重量部に対して、工業用純水120重量部を下記表面架橋工程とは異なる高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)を用いて噴霧添加し、微粉の造粒を行った。当該造粒操作で得られた吸水性樹脂微粉(F10)由来の造粒ゲルは、上述した粒子状含水ゲル(1)に添加して回収した。
【0320】
(表面架橋工程)
上記分級工程で得られた吸水性樹脂粉末(B10)100重量部に対して、エチレンカーボネート0.5重量部及び工業用純水3重量部からなる表面架橋剤溶液を作成した後、高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)を用いて噴霧添加した。その後、パドルドライヤーに移送し、198℃(熱媒温度)で30〜40分間熱処理を行った。なお、吸水性樹脂(P10)の吸水倍率(CRC)が27g/gになるように、熱処理時間の微調整を繰り返した。
【0321】
上記熱処理後、パドル型冷却機を用いて、表面架橋された吸水性樹脂(S10)の温度が60℃となるまで、強制的に冷却した。
【0322】
(再加湿工程)
上記冷却の際、表面架橋された吸水性樹脂(S10)100重量部に対して、硫酸アルミニウム0.3重量部、水1重量部及びプロピレングリコール0.03重量部からなる処理剤を添加した。
【0323】
(整粒工程)
続いて、目開き850μmのJIS標準篩を備えた分級装置(2)で上記再加湿工程後の吸水性樹脂を分級し、その全量が通過するまでフラッシュミルで粉砕した。以上の操作により、粒子径が850μm未満の吸水性樹脂(P10)を得た。
【0324】
上記の一連の連続生産を1日以上継続することで、各工程での吸水性樹脂の物性を安定させた。安定稼働後の、粉砕物(G10)の物性を表2に、吸水性樹脂(P10)の物性を表3にそれぞれ示した。
【0325】
更に上記一連の連続生産を1年以上、断続的に継続することで、ロールが偏磨耗したものの、ロールクリアランスの調整で対応可能であり、ロールの交換は不要であった。
【0326】
[実施例11、12]
ロールミルの運転条件を表2の記載通りに変更した以外は、実施例10と同様の操作を行って、粉砕物(G11、G12)及び吸水性樹脂(P11、P12)を得た。安定稼働後の、粉砕物(G11、G12)の物性を表2に、吸水性樹脂(P11、P12)の物性を表3にそれぞれ示した。
【0327】
[実施例13〜15、参考例1]
ロールミルの運転条件を表2の記載通りに変更した以外は、実施例10と同様の操作を行って、粉砕物(G13〜15)及び吸水性樹脂(P13〜15)を得た。なお、参考例1においては、ロール上に乾燥重合体が堆積する傾向にあり、安定稼働する前に停止した。安定稼働後の、粉砕物(G13〜15)の物性を表2に、吸水性樹脂(P13〜15)の物性を表3にそれぞれ示した。
【0328】
なお、実施例14において、ロールミルの振動は若干大きいものの、一連の連続生産を断続的に継続することはできた。約6ヶ月経過した時点で、ロールの偏摩耗により、ロールの最小クリアランスを示す部分で稼働時の振動でロール同士が接触し、ロールクリアランスを狭くする再調整が不可となり、ロールの交換を余儀なくされた。
【0329】
なお、上記参考例1及び実施例14は、本願の第4の方法に対しては比較例となる。即ち、当該第4の方法が規定するように、乾燥重合体の含水率が3.0〜15重量%であり、かつ、粉砕工程において用いられるロールミルの少なくとも一対のロールが、互いに逆方向に回転する低速ロールと高速ロールからなり、その周速比が1:1.05〜1:10が好ましいことが分かる。
【0330】
[製造例3]
上記製造例1において、粒子状含水ゲル(1)の乾燥機への供給量を製造例1の1/2に変更して得られた乾燥重合体(重合平均粒子径(D50);2.4mm、粒子径分布の対数標準偏差(σζ);0.85、含水率;2.0重量%)について、製造例2と同様の操作を行って、乾燥重合体(3)を得た。
【0331】
[実施例16]
実施例11において、製造例3で得られた乾燥重合体(3)に変更した以外は、実施例11と同様の操作を行って、粉砕物(G16)及び吸水性樹脂(P16)を得た。安定稼働後の、粉砕物(G16)の物性を表2に、吸水性樹脂(P16)の物性を表3にそれぞれ示した。
【0332】
【表2】
【0333】
【表3】
【0334】
(まとめ)
低速ロールの回転数と、それに付随して周速比が異なる実施例13(周速比1:1)、実施例10(周速比1:1.5)、及び、実施例11(周速比1:2.5)を比較すると、粉砕物の重量平均粒子径(D50)は、粉砕物(G11)<粉砕物(G10)<粉砕物(G13)となった。その結果、吸水性樹脂(P13)の吸水速度(FSR)は非常に劣ったものとなった。
【0335】
実施例13からロールクリアランスを狭めた実施例14と実施例10を比較すると、粉砕物の重量平均粒子径D50はほぼ同じであるが、含まれる微粉の割合が粉砕物(G14)より粉砕物(G10)の方が少ないことが分かる。粉砕物中の微粉が減少したことにより、微粉を造粒するコストやその乾燥コストが低減でき、得られる吸水性樹脂(P10)の吸水性能(特に通液性)が吸水性樹脂(P14)に比べ好ましいものとなった。さらに実施例14ではロールクリアランスを狭めた結果、わずかな偏摩耗でもロールクリアランスの再調整が困難になり、ロールの寿命が実施例10〜12に比べ短かった。
【0336】
実施例12(周速比1:5)の粉砕物(G12)は実施例10(周速比1:1.5)の粉砕物(G10)と同量の微粉量で、より細かく粉砕できており、吸水性樹脂(G12)の吸水速度(FSR)を向上させることができた。
【0337】
参考例1(周速比1:15)は、前述の条件では粉砕できた乾燥重合体を処理できなくなっていた。
【0338】
参考例1から周速比を同じにして高速ロールと低速ロールの速度を上げた実施例15は粉砕能力が上がっていたが、粉砕物(G15)は、重量平均粒子径D50がやや小さい実施例11の粉砕物(G11)に比べて、微粉量が増加しており、吸水性樹脂(P15)の通液性(SFC)も吸水性樹脂(P11)に比べて劣っていた。
【0339】
実施例11と乾燥重合体の含水率を2重量%に低下させた実施例16を比較すると、粉砕物(G16)は、実施例11の粉砕物(G11)に比べて、微粉量が増加しており、吸水性樹脂(P16)の通液性(SFC)も吸水性樹脂(P11)に比べて劣っていた。
【0340】
[比較例8]
比較例1において、ロールの回転軸と3°の角度をなす溝を、ロールの回転軸と0°の角度をなす溝に変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、比較粉砕物(a8)及び比較吸水性樹脂(p8)を得た。得られた比較粉砕物(a8)をサンプリングし、粒度を測定した。結果を表4に示す。
【0341】
[比較例9]
比較例1において、ロールの回転軸と3°の角度をなす溝を、ロールの回転軸と90°の角度をなす溝に変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、比較粉砕物(a9)及び比較吸水性樹脂(p9)を得た。得られた比較粉砕物(a9)をサンプリングし、粒度を測定した。結果を表4に示す。なお、乾燥重合体(1)のロールミルへの噛み込みが悪く、乾燥重合体(1)の一部がロールミル上に残存したため、取り除く操作が必要になった。
【0342】
[実施例17]実施例1において、ロールの回転軸と3°の角度をなす溝を、ロールの回転軸と0°の角度をなす溝に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、粉砕物(A17)及び吸水性樹脂(P17)を得た。得られた粉砕物(A17)をサンプリングし、粒度を測定した。結果を表4に示す。
【0343】
[実施例18]
実施例1において、ロールの回転軸と3°の角度をなす溝を、ロールの回転軸と90°の角度をなす溝に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、粉砕物(A18)及び吸水性樹脂(P18)を得た。得られた粉砕物(A18)をサンプリングし、粒度を測定した。結果を表4に示す。なお、乾燥重合体(1)のロールミルへの噛み込みが悪く、乾燥重合体(1)の一部がロールミル上に残存したため、取り除く操作が必要になった。
【0344】
【表4】
【0345】
(まとめ)
比較例1と比較例8、9、及び実施例1と実施例17、18との対比から、ロールの溝の傾斜角が、粉砕物の粒子径に影響することが分かる。具体的には、ロールの回転軸との傾斜角が0°のときは、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂微粉の発生が多くなり、当該傾斜角が90°のときは、乾燥重合体のロールミルへの噛み込み(巻き込まれ易さ)が悪く、重量平均粒子径(D50)が大きい値となった。粉砕物の重量平均粒子径(D50)を、例えば、520μmから実施例1の480μm程度にまで狭めるには、ロールクリアランスを更に狭くする必要がある。以上の知見から、本願第5の方法が好ましいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0346】
本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂の生産、特に大量生産に適用することができる。また、本発明によって得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、紙オムツ等の衛生用品の吸収体用途に適している。
【符号の説明】
【0347】
1 乾燥重合体の供給配管、
2 スクリューフィーダー、
2’ スリット型分散機、
3 ホッパー、
4 乾燥重合体、
5 ロールミルのロール、
6 粉砕物、
7 案内板
8 山型の分散版、
9 スクリュー型フィーダーの回転部、
10 ピン型の回転羽根を有するフィーダー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6