特許第5883961号(P5883961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883961
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】脈波センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
   A61B5/02 310B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-33820(P2015-33820)
(22)【出願日】2015年2月24日
(62)【分割の表示】特願2010-214022(P2010-214022)の分割
【原出願日】2010年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-134177(P2015-134177A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】照元 幸次
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 大介
(72)【発明者】
【氏名】小口 和博
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−079676(JP,A)
【文献】 特開2006−288663(JP,A)
【文献】 特開2007−130033(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0103267(US,A1)
【文献】 特開2001−070264(JP,A)
【文献】 米国特許第06608562(US,B1)
【文献】 特開2001−252250(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0298677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指の中手指節間関節と近位指節間関節との間に位置する装着箇所に装着されて脈波を測定するための指輪構造を有する脈波センサであって、
脈波信号の測定を行う第1ユニットと、
前記第1ユニットにて測定した前記脈波信号を外部に無線で送信する無線通信回路と、前記無線通信回路よりも前記指側に形成されて前記第1ユニットへの電力供給を行うバッテリと、を備えた第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間を電気的に接続するケーブルと、
前記第1ユニット、前記第2ユニット、及び、前記ケーブルを収納する指輪型筐体と、
を有し、
前記第2ユニットは第1基板を備え、
前記第1基板の前記指側に前記バッテリが形成され、
前記第1基板の前記指側とは反対側に前記無線通信回路が形成されることを特徴とする脈波センサ。
【請求項2】
指の中手指節間関節と近位指節間関節との間に位置する装着箇所に装着されて脈波を測定するための指輪構造を有する脈波センサであって、
脈波信号の測定を行う第1ユニットと、
前記第1ユニットにて測定した前記脈波信号を外部に無線で送信する無線通信回路と、前記無線通信回路よりも前記指側に形成されて前記第1ユニットへの電力供給を行うバッテリと、を備えた第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間を電気的に接続するケーブルと、
前記第1ユニット、前記第2ユニット、及び、前記ケーブルを収納する指輪型筐体と、
を有し、
前記第1ユニットの表面と前記第2ユニットの表面とは、前記指輪型筐体が前記装着箇所に装着されたときに前記指を介して対向し且つ平行に設けられており、
前記指輪型筐体は、周方向の一部が開放された開口部を有することを特徴とする脈波センサ。
【請求項3】
前記指輪型筐体は、可撓性素材で形成されていることを特徴とする請求項に記載の脈波センサ。
【請求項4】
前記第1ユニットは、前記指輪型筐体が前記装着箇所に装着されたときに指の腹側となるよう前記指輪型筐体に収納されており、
前記第2ユニットは、前記指輪型筐体が前記装着箇所に装着されたときに指の甲側となるよう前記指輪型筐体に収納されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脈波センサ。
【請求項5】
前記第1ユニットは、指に光を照射して生体内を透過した光の強度を検出する光センサを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脈波センサ。
【請求項6】
前記指輪型筐体は、防水構造とされていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の脈波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来構成の脈波センサは、図11で示したように、被験者の指先で脈波の測定を行う構造(例えば指袋型)とされていた。また、従来の脈波センサは、測定データをメインCPU[Central Processing Unit]にリアルタイムで送信し、メインCPU側で測定データの解析や格納を行う構成とされていた。また、従来の脈波センサは、メインCPUとの接続を有線で行う構成とされていた。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−212016号公報
【特許文献2】国際公開第2002/062222号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被験者の指先で脈波の測定を行う従来構造では、脈波の測定中に脈波センサが指先から脱落しないように、被験者の行動を制約する必要があった。そのため、従来の脈波センサでは、短期間(数分〜数時間)の脈波測定を行うことはできても、長期間(数日〜数ヶ月)に亘る継続的な脈波測定を行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、本願の発明者らによって見い出された上記の問題点に鑑み、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能な脈波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、指の第3関節で脈波を測定するための構造を有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1の構成から成る脈波センサは、指の第3関節に装着されて脈波を測定するための指輪構造を有する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第2の構成から成る脈波センサは、脈波の測定を行う第1ユニットと、前記第1ユニットへの電力供給を行う第2ユニットと、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間を電気的に接続するケーブルと、前記第1ユニット、前記第2ユニット、及び、前記ケーブルを収納する指輪型筐体と、を有する構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第3の構成から成る脈波センサにおいて、前記第1ユニットは、前記指輪型筐体が指の第3関節に装着されたときに指の腹側となるよう前記指輪型筐体に収納されており、前記第2ユニットは、前記指輪型筐体が指の第3関節に装着されたときに指の甲側となるよう前記指輪型筐体に収納されている構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第4の構成から成る脈波センサにおいて、前記第1ユニットは、指の第3関節に光を照射して、生体内を透過した光の強度を検出する光センサを含む構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第5の構成から成る脈波センサにおいて、前記第1ユニットは、前記光センサの発光/受光面上に設けられた測定窓を含む構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第6の構成から成る脈波センサにおいて、前記第1ユニットは、前記光センサの出力信号を増幅する増幅回路を含む構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第7の構成から成る脈波センサにおいて、前記第1ユニットは、前記増幅回路の出力信号に基づいて脈波に関する情報を取得する演算回路を含む構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第8の構成から成る脈波センサにおいて、前記第1ユニットは、表面に前記光センサが実装される基板を含む構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第9の構成から成る脈波センサにおいて、前記増幅回路と前記演算回路は、前記基板の裏面に実装される構成(第10の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第3〜第10いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットは、バッテリを含む構成(第11の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記第11の構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットは、前記バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換する電源回路を含む構成(第12の構成)にするとよい。
【0019】
また、上記第11または第12の構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットは、前記バッテリの充電制御を行う充電回路を含む構成(第13の構成)にするとよい。
【0020】
また、上記第13の構成から成る脈波センサにおいて、前記充電回路は、接触方式で外部からの電力供給を受ける構成(第14の構成)にするとよい。
【0021】
また、上記第13の構成から成る脈波センサにおいて、前記充電回路は、非接触方式で外部からの電力供給を受ける構成(第15の構成)にするとよい。
【0022】
また、上記第3〜第15いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットは、前記第1ユニットで得られた測定データを格納するメモリを含む構成(第16の構成)にするとよい。
【0023】
また、上記第3〜第16いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットは、前記第1ユニットで得られた測定データを無線で送信する無線通信回路を含む構成(第17の構成)にするとよい。
【0024】
また、上記第3〜第17いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットは、コネクタを介して縦に積み重ねられた複数の基板を含む構成(第18の構成)にするとよい。
【0025】
また、上記第3〜第18いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記指輪型筐体は、防水構造とされている構成(第19の構成)にするとよい。
【0026】
また、上記第3〜第19いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記指輪型筐体は、周方向の一部が開放された開口部を有する構成(第20の構成)にするとよい。
【0027】
また、上記第20の構成から成る脈波センサにおいて、前記指輪型筐体は、可撓性素材で形成されている構成(第21の構成)にするとよい。
【0028】
また、上記第4の構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットの厚みは、前記第1ユニットの厚みよりも大きい構成(第22の構成)にするとよい。
【0029】
また、上記第22の構成から成る脈波センサにおいて、前記第2ユニットの厚みは、前記第1ユニットの厚みの2倍よりも大きい構成(第23の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る脈波センサであれば、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】脈波測定の原理を説明するための模式図
図2】生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図
図3】本発明に係る脈波センサの一構成例を模式的に示す断面図
図4】本発明に係る脈波センサの一変形例を模式的に示す断面図
図5】脈波センサ1が指の第3関節に装着されている様子を示す第1の透視図
図6】脈波センサ1が指の第3関節に装着されている様子を示す第2の透視図
図7】脈波センサ1が指の第3関節に装着されている様子を示す第3の透視図
図8】第1ユニット10の一構成例を模式的に示す断面図
図9】第2ユニット20の一構成例を模式的に示す断面図
図10】第2ユニット20の一変形例を模式的に示す断面図
図11】脈波センサの第1従来例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
<脈波測定の原理>
図1は、脈波測定の原理を説明するための模式図であり、図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。
【0033】
容積脈波法による脈波測定では、例えば、図1に示すように、測定窓に押し当てられた生体の一部(図1では指の第3関節(本明細書では、中手指節間関節と近位指節間関節との間に位置する装着箇所(基節骨に対応する部分)のことを「第3関節」と称する))に向けて発光部(LED[Light Emitting Diode]など)から光が照射され、体内を透過して体外に出てくる光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、図2に示すように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用して、末梢動脈の吸光度変化を測定することにより、容積脈波を測定することができる。
【0034】
<脈波から分かること>
なお、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被験者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被験者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被験者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被験者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被験者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
【0035】
<脈波センサの概略構成>
図3は、本発明に係る脈波センサの一構成例を模式的に示す断面図である。本構成例の脈波センサ1は、指2の第3関節で脈波を測定するための構造、より具体的には、指2の第3関節に装着されて脈波を測定するための指輪構造を有する。なお、構成要素に着目すると、本構成例の脈波センサ1は、第1ユニット10と、第2ユニット20と、ケーブル30と、指輪型筐体40と、を有する。
【0036】
第1ユニット10は、主として脈波の測定を行うユニットであり、指輪型筐体40が指2の第3関節に装着されたときに指2の腹側(手の平側)となるように、指輪型筐体40に収納されている。このように、皮膚の直下に骨があって脈波センサ1のフィット感に乏しい指2の甲側(手の甲側)よりも、肉厚で脈波センサ1のフィット感に優れた指2の腹側(手の平側)に第1ユニット10を配置することにより、脈波の測定を安定して行うことができるので、脈波の測定精度を高めることが可能となる。また、本願の発明者らは、第3関節での脈波測定について、指先での脈波測定に比べればやや感度は低いものの、十分に脈波の測定が可能であることを実際に実験で確認済みである。なお、第1ユニット10の内部構成や動作については、後ほど詳細に説明する。
【0037】
第2ユニット20は、主として第1ユニット10への電力供給を行うユニットであり、指輪型筐体40が指2の第3関節に装着されたときに指2の甲側(手の甲側)となるように、指輪型筐体40に収納されている。このように、第1ユニット10にとってノイズ源となり得る第2ユニット20を第1ユニット10からできるだけ離して配置することにより、脈波の測定精度を高めることが可能となる。なお、第2ユニット20の内部構成や動作については、後ほど詳細に説明する。
【0038】
ケーブル30は、第1ユニット10と第2ユニット20との間を電気的に接続するように、指輪型筐体40に収納されている。なお、ケーブル30としては、一般的な被覆電線のほか、FPC[Flexible Printed Circuits]などを好適に用いることができる。
【0039】
指輪型筐体40は、第1ユニット10、第2ユニット20、及び、ケーブル30を収納しており、脈波の測定時には指2の第3関節に装着される。
【0040】
上記したように、指輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者が意図的に脈波センサ1を指2から外さない限り、脈波の測定中に脈波センサ1が指2から脱落してしまうおそれは殆どないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。
【0041】
また、指輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者に対して脈波センサ1を装着していることをあまり意識させずに済むので、長期間(数日〜数ヶ月)に亘る継続的な脈波測定を行う場合であっても、被験者に過度のストレスを与えずに済む。
【0042】
特に、指輪型筐体40に宝石などをあしらえば、脈波センサ1を装飾品として装着することができるので、脈波センサ1の装着に対する抵抗感をさらに払拭することが可能となり、延いては、新規ユーザ層の開拓に寄与することが可能となる。
【0043】
なお、第2ユニット20の厚みは、第1ユニット10の厚みよりも大きく構成すればよく、より好ましくは、第2ユニット20の厚みを第1ユニット10の厚みの2倍よりも大きく構成することが望ましい。より具体的に述べると、第1ユニット10の厚みを1〜5mm程度とし、第2ユニット20の厚みを4〜20mm程度とすればよい。
【0044】
なお、第1ユニット10の厚みには、後述する基板11、光センサ12、増幅回路14や演算回路15などのほか、測定窓13を形成する透光部材の厚み(0.7mm程度)や第1ユニット10を被覆している指輪型筐体40の厚みが含まれている。
【0045】
また、第2ユニット20の厚みの内訳については、後述するバッテリ24の厚み(2〜5mm)、第1基板21や電源回路22などの厚み(1〜3mm(コネクタ2mm))、第2基板27や無線通信回路28の厚み(3〜6mm(コネクタ2mm))のほか、第2ユニット20を被覆している指輪型筐体40の厚みが含まれている。
【0046】
このように、指2の腹側となる第1ユニット10を薄く、指2の甲側となる第2ユニット20を厚く設計することにより、脈波センサ1の指2への装着感を高めることができる上、脈波センサ1を一般的な指輪のように見せて、外観上の違和感をなくすことも可能となる。また、指2への装着を鑑みた場合、指2の腹側となる第1ユニット10は、あまり厚くすることができないが、指2の甲側となる第2ユニット20は、第1ユニット20よりも厚く設計することができるので、回路実装の自由度を高めることが可能となる。
【0047】
また、第1ユニット10に比べて第2ユニット20を十分に厚く設計することにより、脈波センサ1が指2の周りを回転しにくくなるので、第1ユニット10を確実に指2の腹側(脈波測定に適した側)とすることができ、延いては、脈波の測定精度を高めることが可能となる。また、第1ユニット10の厚みと第2ユニット20の厚みが一見して異なれば、脈波センサ1を逆向き(すなわち、第1ユニット10が指2の甲側となり、第2ユニット20が指2の腹側となる状態)に誤装着される心配も低減することができる。
【0048】
また、図3では、指輪型筐体40を完全な環状とした構成を例示したが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、図4のように、指輪型筐体40は、周方向の一部が開放された開口部41を有する構成としてもよい。このような構成とすることにより、脈波センサ1の装着可能サイズ(指輪の号数に相当)にある程度の自由度を持たせることが可能となる。特に、指輪型筐体40に開口部41を設けた上で、さらに、指輪型筐体40を可撓性素材(シリコンゴムなど)で形成すれば、脈波センサ1の装着可能サイズにかなり大きな自由度を持たせることが可能となる。
【0049】
また、指輪型筐体40は、防水構造としておくことが望ましい。このような構成とすることにより、水(雨)や汗などに濡れても故障せずに脈波を測定することが可能となる。また、脈波センサ1を多人数で共用する場合(例えばスポーツジムでの貸し出し用として使用する場合)には、指輪型筐体40を丸ごと水洗いすることにより、脈波センサ1を清潔に保つことが可能となる。
【0050】
図5図7は、それぞれ、脈波センサ1が指の第3関節に装着されている様子を示す第透視図である。なお、図5は指2を手の甲側から透視した様子、図6は指2を手の平側から透視した様子、図7は指2を側面から透視した様子を示している。これらの図面に示したように、被験者に脈波センサ1の装着を意識させない(違和感を与えない)ためには、第1ユニット10と第2ユニット20を指2の第3関節からはみ出さない程度の大きさに収めることが望ましい。
【0051】
<第1ユニット>
図8は、第1ユニット10の一構成例を模式的に示す断面図である。本構成例の第1ユニット10は、基板11と、光センサ12と、測定窓13と、増幅回路14と、演算回路15と、を含む。
【0052】
基板11には、その表面に光センサ12が直接実装されており、その裏面に増幅回路14と演算回路15が直接実装されている。また、基板11には、第2ユニット20との電気的接続を確立するためのケーブル30も接続されている。なお、基板11の表面と裏面との間には、スルーホールやビアを介して電気的な接続が確立されている。このように、光センサ12、増幅回路14、及び、演算回路15をいずれも基板11に直接実装する構成であれば、第1ユニット10を薄型化することができるので、脈波センサ1の装着感を高めることが可能となる。また、基板11の表面に光センサ12のみを直接実装する構成であれば、光センサ12をできるだけ指2に近接させることができるので、脈波の測定精度を高めることが可能となる。
【0053】
光センサ12は、発光部から指2の第3関節に光を照射して、生体内を透過した光の強度を受光部で検出することにより、脈波データを取得する。なお、本構成例の光センサ12は、発光部と受光部が指2を挟んで互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部と受光部が指2に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、図1の実線矢印を参照)とされている。
【0054】
測定窓13は、光センサ12の発光/受光面上に設けられた透光部材(ガラス板やアクリル板など)であり、光センサ12は、この測定窓13を介して脈波の測定(指2への光照射、及び、指2から戻ってくる反射光の検出)を行う。なお、測定窓13の厚さについては、光センサ12の焦点深度を鑑みて適切に設計することが望ましい。
【0055】
増幅回路14は、光センサ12の出力信号(受光部の検出信号)を増幅して演算回路15に出力する。このように、光センサ12の直近に増幅回路14を設けた構成であれば、ノイズが重畳する前に光センサ12の出力信号を増幅することができるので、信号のS/N[Signal/Noise Ratio]を高めることが可能となり、延いては、脈波の測定精度を高めることが可能となる。
【0056】
演算回路15は、脈波センサ1全体の動作を統括的に制御するほか、増幅回路14の出力信号に各種の信号処理を施すことにより、脈波に関する種々の情報(脈波の揺らぎ、心拍数、心拍変動、及び、加速度脈波など)を取得する。なお、演算回路15としては、CPU[Central Processing Unit]などを好適に用いることができる。このように、光センサ12及び増幅回路14の直近に演算回路15を設けた構成であれば、ノイズが重畳する前に増幅回路14の出力信号を処理することができるので、脈波の解析精度を高めることが可能となる。
【0057】
<第2ユニット>
図9は、第2ユニット20の一構成例を模式的に示す断面図である。本構成例の第2ユニット20は、第1基板21と、電源回路22と、メモリ23と、バッテリ24と、充電回路25と、コネクタ26と、第2基板27と、無線通信回路28と、を含む。
【0058】
第1基板21には、その表面に電源回路22とメモリ23が直接実装されており、その裏面にバッテリ24と充電回路25が直接実装されている。また、第1基板21には、第1ユニット10との電気的接続を確立するためのケーブル30も接続されている。なお、第1基板21の表面と裏面との間には、スルーホールやビアを介して電気的な接続が確立されている。このように、第1基板21の両面を有効に活用することにより、第1基板21の面積を縮小することができるので、第2ユニット20を指2の第3関節からはみ出さない程度の大きさに収めることが可能となり、延いては、被験者に脈波センサ1の装着を意識させずに済む。
【0059】
電源回路22は、バッテリ24からの入力電圧を所望の出力電圧に変換して、脈波センサ1の各部に供給する。このように、第1ユニット10にとってノイズ源となり得る電源回路22を第1ユニット10からできるだけ離して配置することにより、脈波の測定精度を高めることが可能となる。
【0060】
メモリ23は、第1ユニット10で得られた測定データ(増幅回路14から出力される生データであってもよいし、演算回路15で種々の処理が施された後の処理済みデータであってもよい)を揮発的ないしは不揮発的に格納する。なお、メモリ23としては、揮発性のRAM[Random Access Memory]や不揮発性のフラッシュメモリなどを好適に用いることができる。このような測定データの格納手段を有する構成であれば、所定期間毎にメモリ23の蓄積データを一括外部送信することができるので、無線通信回路28を間欠的に待機状態とすることが可能となり、延いては、脈波センサ1のバッテリ駆動時間を延ばすことが可能となる。
【0061】
バッテリ24は、脈波センサ1の駆動に必要な電力供給源であり、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどを好適に用いることができる。このように、バッテリ駆動方式の脈波センサ1であれば、脈波の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。なお、本構成例では、平坦性の高いバッテリ24が指2の直上に配置されているので、脈波センサ1を指2に装着した際の親和性を高めることが可能となり、延いては、被験者に脈波センサ1の装着を意識させずに済む。
【0062】
充電回路25は、外部からの電力供給を受けてバッテリ24の充電制御を行う。なお、外部からの電力供給方式としては、USB[Universal Serial Bus]ケーブルなどを用いる接触方式であってもよいし、或いは、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触方式であってもよい。このようなバッテリ24の充電手段を有する構成であれば、電池交換作業が不要となるので、脈波センサ1の利便性を高めることができる。
【0063】
コネクタ26は、第1基板21と第2基板22とを縦に積み重ねるための導電部材である。第2基板27には、その表面に無線通信回路28が直接実装されており、その裏面にコネクタ26が接続されている。なお、第2基板27の表面と裏面との間には、スルーホールやビアを介して電気的な接続が確立されている。このように、複数基板の積層構造を採用することにより、1枚の基板に全ての回路要素を実装した構成に比べて、第1基板21の面積と第2基板22の面積をそれぞれ縮小することができるので、第2ユニット20を指2の第3関節からはみ出さない程度の大きさに収めることが可能となり、延いては、被験者に脈波センサ1の装着を意識させずに済む。なお、指2の甲側となる第2ユニット20は、指2の腹側となる第1ユニット10よりも厚く設計することができるので、複数基板の積層構造を何ら問題なく採用することが可能である。
【0064】
無線通信回路28は、第1ユニット10で得られた測定データ(増幅回路14から出力される生データ、演算回路15から出力される処理済みデータ、及び、メモリ23から出力される格納データのいずれであってもよい)を外部のパーソナルコンピュータや携帯電話機に無線で送信する。無線通信回路28は、電源回路22と同様、第1ユニット10にとってノイズ源となり得るため、第1ユニット10からできるだけ離して配置することが望ましい。なお、無線通信回路28としては、例えばBluetooth(登録商標)モジュールICを好適に用いることができる。このような無線通信回路28を有する構成であれば、外部機器に測定データを送信する際に、有線での接続を必要としないので、例えば、被験者の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。
【0065】
なお、指輪型筐体40を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、充電回路25への電力供給方式として非接触方式を採用し、さらに、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。
【0066】
また、上記構成例では、バッテリ24を指2の直上に配置する構成を例に挙げたが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、図10のように、第1基板21を指2の直上に配置するとともに、バッテリ24を無線通信回路28の上方に貼付する構成としても構わない。その際、第1基板21には、その表面に電源回路22、メモリ23、及び、充電回路25が直接実装される一方、その裏面に何ら回路要素が実装されない状態(平坦な状態)とすることが望ましい。このような構成とすることにより、図9の構成例と同様、脈波センサ1を指2に装着した際の親和性を高めることが可能となり、延いては、被験者に脈波センサ1の装着を意識させずに済む。
【0067】
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、脈波センサの利便性を高めるための技術として利用することが可能であり、ヘルスケアサポート機器、ゲーム機器、音楽機器、ペットコミュニケーションツール、車両の運転手の居眠り防止機器など、様々な分野への応用が可能であると考えられる。
【符号の説明】
【0069】
1 脈波センサ
10 第1ユニット
11 基板
12 光センサ
13 測定窓(透光部材)
14 増幅回路
15 演算回路(CPU)
20 第2ユニット
21 第1基板
22 電源回路(DC/DCコンバータ)
23 メモリ
24 バッテリ
25 充電回路
26 コネクタ
27 第2基板
28 無線通信回路
30 ケーブル
40 指輪型筐体
41 開口部
図1
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