(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883988
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】シート傾斜調整機構、車両シート及び当該車両シートの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/12 20060101AFI20160301BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
B60N2/12
B60N2/16
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-507466(P2015-507466)
(86)(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公表番号】特表2015-514633(P2015-514633A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2013057863
(87)【国際公開番号】WO2013160147
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】102012008100.6
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012014381.8
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511007886
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ コンポーネンツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、 サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】キンザー、 アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】キルヒ、 エックハルト
(72)【発明者】
【氏名】ミュールバーガー、 ヨアヒム
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−114840(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第102005023936(DE,A1)
【文献】
特開2007−314079(JP,A)
【文献】
独国特許発明第102005022645(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/12
B60N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の車両シート(1)用の調整ユニット(1’)であって、
前記調整ユニット(1’)は前記車両シート(1)のバックレスト(3)の傾斜調整機構を有し、
前記傾斜調整機構は、前記車両(1)の進行方向(100)に直交する短手方向(101)まわりに回転可能に取り付けられた第1揺動子(50)を含み、
前記調整ユニット(1’)はさらに、前記車両シート(1)のシート部品(2)の長さ及び高さの調整機構を有し、
前記長さ及び高さの調整機構は、前記短手方向(101)まわりに回転可能に取り付けられた第2揺動子(31)を含む調整ユニット(1’)。
【請求項2】
前記第1揺動子(50)の第1端が回転ヒンジの態様で前記車両シート(1)の前記バックレスト(3)に作用する一方、前記第1揺動子(50)の第2端が車体備え付けの保持クランプ(51)に締結される請求項1に記載の調整ユニット(1’)。
【請求項3】
前記調整ユニット(1’)は、前記バックレスト(3)の傾斜が前記第1揺動子(50)の配向角度の変化によって調整される態様に設計される請求項1又は2に記載の調整ユニット(1’)。
【請求項4】
前記第1揺動子(50)の前記第1端が調整継手(52)を介して回転ヒンジの態様で前記バックレスト(3)に接続され、
前記調整継手(52)はモーター駆動の駆動器を含む請求項2記載の調整ユニット(1’)。
【請求項5】
前記第1揺動子(50)の前記第2端は回転ヒンジの態様で前記保持クランプ(51)のスロット付きガイド(53)に接続され、及び、前記スロット付きガイド(53)の案内スロットに沿って長手方向に変位可能となるように取り付けられ、
前記案内スロットは一側が開放された長孔を含む請求項2に記載の調整ユニット(1’)。
【請求項6】
前記バックレスト(3)はバックレスト主要部品(33)及びバックレスト上側部品(34)を含み、
前記バックレスト主要部品(33)と前記バックレスト上側部品(34)とは、前記バックレストの曲率を調整するべく共通第2枢動軸(35)を介した回転継手の態様で互いに接続される請求項1から5のいずれか一項に記載の調整ユニット(1’)。
【請求項7】
前記バックレスト主要部品(33)と前記バックレスト上側部品(34)とは、追加調整継手(36)により、前記追加調整継手(36)の調整が前記バックレスト主要部品(33)と前記バックレスト上側部品(34)とが前記共通第2枢動軸(35)まわりになす角度を変化させる態様で、前記共通第2枢動軸(35)の領域において互いに結合される請求項6に記載の調整ユニット(1’)。
【請求項8】
前記追加調整継手(36)はモーター駆動の調整器を含む請求項7に記載の調整ユニット(1’)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の調整ユニット(1’)を有する車両シート(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の車両シート(1)を取り付ける方法であって、
第1方法ステップにおいてバックレスト(3)が前方にシフトされた構成で車両シート(1)が与えられ、
第2方法ステップにおいて車両シート(1)が基礎構造物上に少なくとも一時的に配列及び/又は締結され、
第3方法ステップにおいて前記バックレスト(3)が、前記第1揺動子(50)の、車体備え付けの保持クランプ(51)に締結される第2端に配置されたボルト(55)が、一側が開放されたスロット付きガイド(53)の中に係合する態様で枢動の動き(8)によって後方に枢動される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シート用のシート傾斜調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両乗員に対して最大限に可能な快適性を与えるべく、車両シートのバックレストを、その配向が調整可能に設計することが、先行技術により一般に知られている。慣例的に、かかるシート傾斜調整機構は、車両シートのバックレスト及びシート部品間に配列されて当該シート部品に対する当該バックレストの調整を許容する調整継手を含む。
【0003】
しかしながら、一つの欠点は、一定の取り付け状況においては利用可能な構造空間の欠如ゆえに、シート部品及びバックレスト間に調整継手を配列することができないことにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005023936(A1)号明細書
【特許文献2】独国特許第102005022645(B3)号明細書
【特許文献3】特開2007−314079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、シート部品及びバックレスト間に配列される調整継手が不要なシート傾斜調整機構を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、車両シート用のシート傾斜調整機構であって、車両の進行方向に直交する短手方向まわりに回転可能に取り付けられた第1揺動子を含むシート傾斜調整機構によって解決される。第1揺動子の第1端が好ましくは、回転ヒンジの態様で車両シートのバックレストに作用する一方、第1揺動子の第2端が好ましくは、車体備え付けの保持クランプに締結される。第1揺動子の配向角度の変化によって車両シートのバックレストの傾斜が調整される。第1揺動子の第1端は、好ましくは調整継手を介して、回転ヒンジの態様でバックレストに接続される。調整継手は、波打ち機構又は掛かり爪式調整器を含むことが好ましい。調整継手は特に、モーター駆動の駆動器によって駆動される。第1揺動子の第2端は特に、回転ヒンジの態様で保持クランプのスロット付きガイドに接続され、及び特に、当該スロット付きガイドの案内スロットに沿って長手方向に変位可能となるように取り付けられる。案内スロットは特に、車両シートの迅速な取り付けを許容するべく一側が開放された長孔を含む。
【0007】
本発明のさらなる主題は、本発明に係るシート長さ調整機構を有する車両シートである。
【0008】
本発明のさらなる主題は、車両シートを取り付ける方法である。第1ステップにおいてまず、バックレストが前方にシフトされた構成で車両シートが与えられ、引き続いての第2ステップで車両シートは基礎構造物上に少なくとも一時的に配列又は締結される。引き続いての第3ステップにおいて、バックレストは、枢動の動きの範囲内において後方に枢動され、ひいては第1揺動子の第2端に配置されたボルトが、一側が開放されたスロット付きガイドの中に係合する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、車両シートのバックレストは、バックレスト主要部品及びバックレスト上側部品を含む。バックレスト主要部品とバックレスト上側部品とは、共通枢動軸を介した回転継手の態様で互いに接続される。バックレスト主要部品とバックレスト上側部品とが、特に追加調整ユニットにより、追加調整ユニットの調整がバックレスト主要部品とバックレスト上側部品とが第2枢動軸まわりになす角度を変化させる態様で、第2枢動軸の領域において互いに結合される。追加調整ユニットは特に、モーター駆動波打ち機構又は掛かり爪式調整器を含む。したがって追加調整ユニットは特に、バックレストの曲率調整の一部をなす。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、ヘッドレストがバックレスト上側部品の上側端に配列される。ここで、ヘッドレストの2つの保持ロッドが、バックレストの案内軸受筒の中に締結される。ヘッドレストは特に、垂直方向に調整可能な態様で案内軸受筒の中に取り付けられる。
【0011】
図面により及び当該図面を参照しての好ましい実施形態の説明により、本発明のさらなる詳細、特徴及び利点が明らかとなる。ここで図面は、本発明の典型的な実施形態の単なる例示であって、本発明の本質的な概念を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
様々な図面において、同じ部品は、常に同じ参照番号が付されているため、一般には各例において一回参照され又は一回言及される。
【0013】
【
図1A】自動車用の車両シート1の模式的斜視図を例示する。
【
図1B】自動車用の車両シート1の模式的斜視図を例示する。
【
図2A】本発明に係る車両シート1の側面図を例示する。
【
図2B】本発明に係る車両シート1の側面図を例示する。
【
図2C】本発明に係る車両シート1の側面図を例示する。
【
図2D】本発明に係る車両シート1の側面図を例示する。
【
図2E】本発明に係る車両シート1の側面図を例示する。
【
図3】車両基体7に締結された保持クランプ51の模式的な詳細図を例示する。
【
図4】車両シート1を車両に取り付ける方法を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1A及び1Bは、自動車用の車両シート1の模式的斜視図を例示する。特に、ここでは自動車の車両後部の車両シート1が対象となる。車両シート1はシート部品2及びバックレスト3を含む。
【0015】
車両シート1はさらに、バックレスト傾斜調整機構を含む。バックレスト傾斜調整機構は第1揺動子50を含む。第1揺動子50の第1端が回転ヒンジの態様でバックレスト3に接続され、かつ、第1揺動子50の第2端が回転ヒンジの態様で車体備え付けの保持クランプ51に接続される。第1揺動子50の第1端は、調整ユニット52を介して、特に波打ち機構又は掛かり爪式調整器を介して、回転軸54まわりの回転ヒンジの態様でバックレスト3に接続される。ここで調整ユニット52は、バックレスト3と第1揺動子50とがなす角度の変化を許容する。その結果、バックレスト3の傾斜が変化する。第1揺動子50の第2端は、保持クランプ51のスロット付きガイド53に締結されるのが好ましい。調整ユニット52は、駆動器を有する結果、バックレスト傾斜のモーター支援調整が可能とされることが好ましい。
【0016】
車両シート1のバックレスト3は、バックレスト主要部品33及びバックレスト上側部品34を含むのが好ましい。バックレスト主要部品33とバックレスト上側部品34とは、共通第2枢動軸35を介した回転ヒンジの態様で互いに接続される。第2枢動軸35は短手方向101と平行に延びる。バックレスト主要部品33とバックレスト上側部品34とは、特に追加調整ユニット36により、追加調整ユニット36の調整がバックレスト主要部品33とバックレスト上側部品34とが第2枢動軸35まわりになす角度を変化させる態様で、第2枢動軸35の領域において互いに結合される。追加調整ユニット36は特に、モーター駆動波打ち機構又はモーター駆動掛かり爪式調整器を含む。追加調整ユニット36は特に、バックレストの曲率調整の一部をなす。ヘッドレスト4が、車両シート1の、特にバックレスト上側部品34の上側端に接続される。この目的のため、ヘッドレスト4の2つの保持ロッド5が、バックレスト3の案内軸受筒6の中に締結されるのが好ましい。ヘッドレスト4は特に、案内軸受筒6の中に高さ調整可能な態様で設けられるので、案内軸受筒6は特に、ヘッドレスト高さ調整器の一部をなす。
【0017】
シート部品2は、車両乗員のためのシート表面を画定し、かつ、前部品20及び主要部品21を含む。主要部品21は、回転ヒンジの態様で第
4揺動子31に取り付けられる。前部品20の下側側部がスロット付きガイド23を有する。スロット付きガイド23の中に第3揺動子24の第1端が、進行方向100に直交する短手方向101に沿って延びる短手軸まわりの回転ヒンジの態様で取り付けられる。その第1端は、スロット付きガイド23に進行方向100において長手方向に変位可能に取り付けられる。第3揺動子24の第2端は、車両フロアに締結された保持器25に回転ヒンジの態様で接続される。さらに、第3揺動子24には、シャフト26の第1端が回転可能に接続される。
【0018】
車両シート1の主要部品21は、車両シート1の車体備え付け基礎構造物40に第4揺動子31を介して締結される。第4揺動子31の第1端が主要部品21に回転可能に接続される一方、第4揺動子31の第2端は基礎構造物40に回転可能に締結される。第4揺動子31は好ましくは、例えばシリンダ・ピストンガイド又はシャフト駆動器を介して第4揺動子31の長さを調整する長さ調整ユニットを含む。したがって、第4揺動子31の長さの変化が、シート部品2の進行方向100の動きをもたらすので、第4揺動子31は、車両シート1用のシート長さ調整機構の一部をなす。さらに、基礎構造物40に対する第4揺動子31の角度は好ましくは駆動器37を介して可変なので、第4揺動子31の角度変化を介してシート部品2の高さを変えることができる。したがって、第4揺動子31はまた、車両シート1用の高さ調整機構の一部をなすのが好ましい。
【0019】
基礎構造物40に対する第3揺動子24の位置は、追加駆動器32を介して変えることができる。この態様によって前部品20の傾斜を変えることができる。さらには、シート部品2のシート表面の傾斜も変化する。したがって、駆動器32及びシャフト26は、車両シート1用のシート表面傾斜調整機構の一部をなす。
【0020】
図2Aから2Eは、本発明に係る車両シート1の側面図を例示する。車両シート1は異なる位置に配列されている。
図2Aは車両シート1の開始位置を例示する。
図2Bでは、バックレスト3が、バックレスト傾斜調整機構によって、開始位置に対して前方に枢動した位置までシフトされる。
図2Cでは、バックレスト3が、バックレスト傾斜調整機構によって、開始位置に対して後方に枢動した位置までシフトされる。
図2Dでは、シート部品2が、シート長さ調整機構によって、開始位置に対して前方にシフトした位置までシフトされる。その結果、同時に、開始位置に対するバックレスト主要部品33の傾斜角度も変化している。バックレスト主要部品33は平坦配向にある。バックレスト上側部品34は開始位置のままなので、シート部品2を前方にシフトさせることによって、バックレストの曲率又はバックレスト3の外形もまた変化する。
図2Eでは、バックレスト上側部品34は、バックレストの曲率が調整されることによる、開始位置に対する後方枢動位置にある。その結果、開始位置から既知のバックレストの曲率又はバックレスト3の外形が回復される。さらに、バックレスト上側部品34の角度位置の変化により、ヘッドレスト4の配向もそれに対応して変化する。
【0021】
図3は、車両基体7に締結された保持クランプ51の模式的な詳細図を例示する。この図では、一側が開放されかつ第
1揺動子50の第2端が中で動くスロット付きガイド53をはっきりと見ることができる。
【0022】
図4は、車両シート1を車両に取り付ける方法を例示する。第1ステップにおいてまず、バックレスト3が前方にシフトされた構成で車両シート1が与えられ、引き続いての第2ステップで車両シート1は基礎構造物40上に締結される。引き続いての第3ステップにおいて、バックレスト3は、枢動の動き8の範囲内において後方に枢動され、ひいては第1揺動子50の第2端に配置されたボルト55が、一側が開放されたスロット付きガイド53の中に係合する。引き続いて車両シート1が固定される。
【符号の説明】
【0023】
1 車両シート
2 シート部品
3 バックレスト
4 ヘッドレスト
5 保持ロッド
6 案内軸受筒
7 車両基体
8 枢動の動き
20 前部品
21 主要部品
23 スロット付きガイド
24 第3揺動子
25 保持器
26 シャフト
31 第4揺動子
32 駆動器
33 バックレスト主要部品
34 バックレスト上側部品
35 第2枢動軸
36 追加調整ユニット
40 基礎構造物
50 第1揺動子
51 保持クランプ
52 調整ユニット
53 追加スロット付きガイド
54 回転軸
55 ボルト
100 進行方向
101 短手方向