(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884095
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】接合部材
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20160301BHJP
F16L 19/02 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L19/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-241580(P2012-241580)
(22)【出願日】2012年11月1日
(62)【分割の表示】特願2008-120689(P2008-120689)の分割
【原出願日】2008年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-68074(P2013-68074A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2012年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀江 進
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−278001(JP,A)
【文献】
実開昭58−119686(JP,U)
【文献】
特開2006−316816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12 − 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体12の接続構造11が設けられると共に端部の内側に係合部を備えた接合部材1と、
前記接合部材1に対して弾性変形によって嵌入可能とした前記係合部と係合する被係合部を端部の外側に備えた管体12と、
前記接合部材1と前記管体12のどちらか一方又は両方に備えられる抜け止め構造と、
から構成し、
前記接合部材1は管体12に対して回動可能なナットであって、管体12の接続構造11として雄ネジ部と螺合するネジ溝が設けられており、
前記係合部が、内側に向けて突出されたフランジ部2と、フランジ部2端部に設けられた断面視三角形状の傾斜突起9より構成されていることを特徴とする排水器の接続部に設けられる接合部材。
【請求項2】
前記管体12に他の管体を接続した際に、接合部材1のネジ溝が、管体12の先端位置にあることを特徴とする請求項1に記載の排水器の接続部に設けられる接合部材。
【請求項3】
前記接合部材1の素材をポリプロピレン樹脂で形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一つに記載の接合部材。
【請求項4】
前記係合部及び/若しくは被係合部が全周に亘り設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水装置の各部材の接続に使用される接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、排水装置に関する部材同士の接続には、接合部材として主に内部にネジ部を設けたナットが使用される。ナット内部のネジ部に対して相手側の部材に設けられたネジ部を螺合させることにより、部材同士を接続させることができる。このナットを用いた接続構造においては、ナットを一方の部材に何らかの形で固定/取り付けする必要のある場合が多い。例えば特開平7−71061号の
図7、
図8(本文中段落0015乃至段落0016)の実施例では、インナー(本文中では「連結管35」)と呼ばれるフランジ部(本文中では「固定片36」)を有したパーツを用いて取り付けを行う。具体的には、ナットをインナーと管体(本文中では「上半体11」)とで挟み込んだ状態にしつつ、管体の一端に接着剤を塗布して接着し、管体にインナーを取り付けている。
このようにすることで、相手側の部材(本文中では「排水管4」)のネジ部に、ナットに設けられたネジ部を締め付けたとき、「相手側の部材−相手側の部材のネジ部−ナット−管体」と接続が行われ、取り付けを行うことができる。
【特許文献1】特開平7−71061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにインナーと管体とを接着剤を利用して接着する方法を採用するためには、少なくともインナーと部材とが接着可能な素材であると共に、接着を行うための接着しろを用意する必要がある。
しかし、この接続構造が採用される排水装置の内部を流れる排水は、石鹸・洗剤・有機溶媒などの薬品成分が溶け込んでいる場合が多いため、排水装置にはポリプロピレン樹脂など、薬品の成分に対して溶けるなどの影響が出にくい、薬品への耐性(耐薬性)のある素材がよく利用される。通常の接着剤は即ち薬品で、塗布した素材の表面を溶融させることで接着するものであるため、前述のようなポリプロピレン樹脂など、排水装置に採用される耐薬性のある素材に対して、有効な接着剤が存在しないのが現状である。
また近年、キャビネットではキャビネット内の収納性を向上させるために、床下空間では床上の生活空間を広くする目的から、床下空間を狭くするために、それぞれ配置・配管される排水装置を小型化する傾向にある。このため、排水装置における接着剤を塗布するための接着しろについても、できる限り縮小・省略したい、という要望があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するため、接着剤を用いなくとも接合部材を排水装置に関する部材に簡単に取り付けられる構造とすることによって、排水装置に関する部材に接着剤を使用することが困難な耐薬性等のある素材を用いることができると共に、接着しろを設けず省略することができる接合部材に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、管体12の接続構造11が設けられると共に端部の内側に係合部を備えた接合部材1と、
前記接合部材1に対して弾性変形によって嵌入可能とした前記係合部と係合する被係合部を端部の外側に備えた管体12と、
前記接合部材1と前記管体12のどちらか一方又は両方に備えられる抜け止め構造と、
から構成し
、
前記接合部材1は管体12に対して回動可能なナットであって、管体12の接続構造11として雄ネジ部と螺合するネジ溝が設けられており、
前記係合部が、内側に向けて突出されたフランジ部2と、フランジ部2端部に設けられた断面視三角形状の傾斜突起9より構成されていることを特徴とする排水器の接続部に設けられる接合部材である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、
前記管体12に他の管体を接続した際に、接合部材1のネジ溝が、管体12の先端位置にあることを特徴とする請求項1に記載の排水器の接続部に設けられる接合部材である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記接合部材1の素材をポリプロピレン樹脂で形成したことを特徴とする請求項1
又は請求項2のいずれか一つに記載の接合部材である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記係合部及び/若しくは被係合部が全周に亘り設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項
3のいずれか1つに記載の接
合部材である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、請求項
4に記載の発明においては、接着剤を用いることなく接合部材1を管体12等の排水装置に取り付けられるため、通常接着剤を用いることができない耐薬性のある素材を接合部材1として用いることができる。
また、接着剤を用いないことによって接着しろの分面積を小さくすることができるため、小型化を図れるという効果を奏する。
【0010】
請求項
3に記載の発明においては、接合部材1をポリプロピレン樹脂で形成したことによって、耐薬性が向上する効果を奏する。
【実施例】
【0011】
本発明の第一実施例について
図1から
図4に基づいて説明する。本発明の第一実施例は、接合部材1と、接合部材1を固定させるための結合機構を有したリング部材3とからなる。接合部材1はポリプロピレン樹脂からなり、略円筒形状に形成され、接合部材1の一端の内周に内側方向にフランジ部2が設けられると共に、周方向360°を180°ずつ軸対称に2等分に分割される。また、接合部材1の内周には接続構造11としてのネジ溝が形成され、外周には縦方向に複数の回り止め突起4が設けられている。リング部材3は、その内周が接合部材1の外周と同径乃至若干大きく形成された略円筒形状とし、内周には接合部材1に設けられた回り止め突起4を受けるための凹み溝とした回り止め突起受け部5が設けられる。接合部材1が取り付けられる排水装置の一部である管体12は、略円筒形状であって、その一端の端部外周には外方向に向かってつば部10が構成されている。
【0012】
第一実施例における接合部材1を管体12に取付ける際は、接合部材1のフランジ部2が管体12におけるつば部10に係止されるような状態に、分割面を当接させる。次に、接合部材1を当接させたまま、リング部材3を、接合部材1の回り止め突起4とリング部材3の回り止め突起受け部5が一致するように、外周に嵌め込む。よって、接合部材1のフランジ部2と管体12のつば部10が抜け止め構造となると共に、リング部材3によって接合部材1が固定され、回り止め突起4によって接合部材1とリング部材3の共回り現象も防止された状態となり、
図4に図示したように接合部材1と管体12の取り付けが完了する。このように、全ての接続は係合又は嵌合で行われるため、接着剤を用いずに取り付けることができ、耐薬性のある素材を用いることができない等の問題が生じない。また、接着剤を使用する際には必要であった接着しろを省略することができる。
【0013】
この接合部材1が取り付けられた管体12に、別途管部材等を取り付ける際は、管部材の端部に設けられている雄ネジ部を接合部材1のネジ溝に螺合させることにより、接続が完了する。
【0014】
次に、本発明の第二実施例について
図5から
図8に基づいて説明する。本発明の第二実施例における接合部材1はポリプロピレン樹脂からなり、略円筒形状にして、その円周の一箇所を分割する切り欠き部を設ける。これによって、略C字状に開くように構成される。また、接合部材1の内周には接続構造11としてネジ溝が形成され、一端にはフランジ部2が設けられている。また、接合部材1の分割箇所の一方の端部がかぎ爪6状に形成され、他方の端部はかぎ爪6部分に引っかけるように設けられる枠体7と共に、かぎ爪6部分に枠体7を引っかけた状態で固定するレバー8部を備える。尚、接合部材1が取り付けられる排水装置の一部である管体12は略円筒形状であって、その端部外周には外方向に向かってつば部10が構成されている。
【0015】
接合部材1と管体12の取り付けは以下のようにして行われる。まず、接合部材1のフランジ部2が管体12のつば部10に係止されるような状態に接合部材1のC字状における開口を利用して管体12に嵌め込む。次に分割部分端部のかぎ爪6部分に枠体7を引っかけ、レバー8を引くことで分割部分の端部同士が当接した状態に固定される。これにより接合部材1のフランジ部2と管体12のつば部10が抜け止め構造となると共に、枠体7をかぎ爪6部分に係合させることで接合部材1の内周が小さくなり、
図7、
図8に図示したように接合部材1と管体12の取り付けが完了する。このように、全ての接続は係合または嵌合で行われるため、接着剤を用いずに取り付けることができ、耐薬性のある素材を用いることができない等の問題が生じない。また、接着剤を使用する際には必要であった接着しろを省略することができる。
【0016】
この接合部材1が取り付けられた管体12に、別途、管部材等を取り付ける際は、上記第一実施例と同様に取り付けることで、接続が完了する。
【0017】
次に、本発明の第三実施例について
図9から
図11に基づいて説明する。本発明の第三実施例における接合部材1はポリプロピレン樹脂からなり、略円筒形状にして内周に接続構造11としてのネジ溝が構成されると共に、接合部材1内周の一端に、その端部から反対方向に向かうほど中心軸方向に向かうような傾斜を設けて構成される、断面視三角形状の傾斜突起9が円周に沿って設けられる。接合部材1が取り付けられる管体12の端部外周には、接合部材1と咬み合う形で係合するように設けられる、その端部から反対方向に向かうほど外周方向に広がるような傾斜を設けて構成される断面視三角形状の傾斜突起9が円周に沿って設けられる。尚、管体12の傾斜突起9の外径が最大となる部分は、接合部材1の傾斜突起9における内径が最も小さい部分よりも大径であると共に、接合部材1の傾斜突起9における内径が最も大きい部分よりも小径に形成される。また、接合部材1端部の内周にはフランジ部2が形成されると共に、管体12端部の外周にはフランジ受け部として凹み溝が形成される。
【0018】
接合部材1と管体12との取り付けは以下のようにして行われる。まず、接合部材1を管体12に押し込むことで、接合部材1及び管体12の傾斜突起9における傾斜と樹脂の弾性を利用し、接合部材1の傾斜突起9が管体12の傾斜突起9を乗り越えて接合部材1に設けられた傾斜突起9と管体12の傾斜突起9が咬み合い、引き抜き不可能な状態となり、
図11に図示したように接合部材1と管体12の取り付けが完了する。従って、接着剤を用いずに取り付けることが出来るため、接合部材1の素材がポリプロピレン樹脂であっても問題なく接続できると共に、接着剤を使用する際には必要であった接着しろを省略することができる。
【0019】
この接合部材1が取り付けられた管体12に、別途、管部材を取り付ける際は、上記第一実施例、上記第二実施例と同様に取り付けることで接続が完了する。
【0020】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で自由に変更が可能である。例えば、第三実施例では接合部材1の内周と排水装置の一部である管体12の外周に傾斜突起9を設け、嵌入させる構成となっているが、
図12から
図14に図示したように接合部材1の外周と管体12の内周に傾斜突起9を設けるように組み替えることもできる。この場合は、接合部材1の傾斜突起9の外径が最大となる部分は、管部材の傾斜突起9における内径が最も小さい部分よりも大径であると共に、管部材の傾斜突起9における内径が最も大きい部分よりも小径に形成される。接合部材1と管体12との取り付けは第三実施例と同様にして行われ、接合部材1が取り付けられた管体12に別途、管部材を取り付ける際は、上記第一実施例、上記第二実施例と同様に取り付けることで接続が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第一実施例における接合部材を管体に取り付ける前の図
【
図2】本発明の第一実施例における結合機構を取り付ける前の図
【
図3】本発明の第一実施例における接合部材を管体に取り付けた図
【
図4】本発明の第一実施例における接合部材を管体に取り付けた状態の断面図
【
図5】本発明の第二実施例における接合部材を管体に取り付ける前の図
【
図6】本発明の第二実施例における接合部材を係合させる前の図
【
図7】本発明の第二実施例における接合部材を管体に取り付けた図
【
図8】本発明の第二実施例における接合部材を管体に取り付けた状態の断面図
【
図9】本発明の第三実施例における接合部材を管体に取り付ける前の断面図
【
図10】本発明の第三実施例における接合部材を管体に取り付けた状態の断面図
【
図11】本発明の第三実施例における接合部材を管体に取り付けた図
【
図12】本発明の他の実施例における接合部材を管体に取り付ける前の断面図
【
図13】本発明の他の実施例における接合部材を管体に取り付けた状態の断面図
【
図14】本発明の他の実施例における接合部材を管体に取り付けた図
【符号の説明】
【0022】
1 接合部材
2 フランジ部
3 リング部材
4 回り止め突起
5 回り止め突起受け部
6 かぎ爪
7 枠体
8 レバー
9 傾斜突起
10 つば部
11 接続構造
12 管体