特許第5884107号(P5884107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884107
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】内接歯車式オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20160301BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   F04C2/10 341E
   F04C15/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-15062(P2011-15062)
(22)【出願日】2011年1月27日
(65)【公開番号】特開2012-154269(P2012-154269A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】福元 浩二
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−115773(JP,A)
【文献】 特開2003−172269(JP,A)
【文献】 実開昭63−182(JP,U)
【文献】 実開平4−37881(JP,U)
【文献】 特開2008−38789(JP,A)
【文献】 特開2003−161269(JP,A)
【文献】 特開平9−324765(JP,A)
【文献】 実開平6−18684(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー側吸入ポート及びボデー側吐出ポートを備えたポンプボデーと、
カバー側吸入ポート及びカバー側吐出ポートを備えたポンプカバーと、
前記ポンプボデー及びポンプカバーの組み合わせにより形成され、前記ボデー側吸入ポート、ボデー側吐出ポート、カバー側吸入ポート、及びカバー側吐出ポートと連通したギア室と、
前記ギア室内に収容された内歯形状のドリブンギアと、
前記ギア室内に収容され、前記ドリブンギアに対して噛合した外歯形状のドライブギアとを備えており、
前記ボデー側吸入ポート、ボデー側吐出ポート、カバー側吸入ポート、及びカバー側吐出ポートは、それぞれ大小2つの円弧状に湾曲した面によって形成され、

前記カバー側吐出ポートの外縁方向全域において、前記カバー側吐出ポートの開口面積がボデー側吐出ポートの開口面積よりも小さく、前記ボデー側吸入ポートとカバー側吸入ポートとの開口面積が相違することを特徴とする内接歯車式オイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される内接歯車式オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンで回転駆動される変速装置に作動油や潤滑油を供給するためのオイルポンプとして、下記特許文献1に開示されているような内接歯車式オイルポンプが提供されている。下記特許文献1の内接歯車式オイルポンプにおいては、ポンプボデーに吐出ポートが設けられている。また、この内接歯車式オイルポンプにおいては、前述した吐出ポートと同一形状であって、開口面積が同一のバランス溝がポンプカバーに設けられている。
【0003】
また、内接歯車式オイルポンプにおいては、ポンプボデーあるいはポンプカバーとポンプギアとが強接触することによりギアのサイド面において焼き付きが発生する可能性がある。そこで、従来技術の内接歯車式オイルポンプにおいては、吐出ポートあるいは吸入ポートにオイルを逃がすための溝を設けることにより、前述したギアの焼けを解消したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3801536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように吐出ポートあるいは吸入ポートにオイルを逃がすための溝を設けた場合には、積極的にオイルをリークさせることになるため、ポンプの吐出性能が低下することになり、ひいてはポンプを小型化するための弊害になるという問題がある。従って、車両の低燃費化及び高性能化を達成するためには、上述した従来技術の方法とは異なる方法によりギアの焼き付きを回避する必要がある。
【0006】
かかる知見に基づき、本発明は、吐出性能の低下を招くことなくギアのサイド面における焼き付きを回避可能な構造の内接歯車式オイルポンプの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の内接歯車式オイルポンプは、ボデー側吸入ポート及びボデー側吐出ポートを備えたポンプボデーと、カバー側吸入ポート及びカバー側吐出ポートを備えたポンプカバーと、前記ポンプボデー及びポンプカバーの組み合わせにより形成され、前記ボデー側吸入ポート、ボデー側吐出ポート、カバー側吸入ポート、及びカバー側吐出ポートと連通したギア室と、前記ギア室内に収容された内歯形状のドリブンギアと、前記ギア室内に収容され、前記ドリブンギアに対して噛合した外歯形状のドライブギアとを備えている。本発明の内接歯車式オイルポンプは、前記ボデー側吸入ポート、ボデー側吐出ポート、カバー側吸入ポート、及びカバー側吐出ポートは、それぞれ大小2つの円弧状に湾曲した面によって形成され、カバー側吐出ポートの外縁方向全域において、カバー側吐出ポートの開口面積がボデー側吐出ポートの開口面積よりも小さく、ボデー側吸入ポートとカバー側吸入ポートとの開口面積が相違することを特徴としている。
【0008】
かかる構成によれば、ドリブンギア及びドライブギアに対しポンプボデー側から作用する圧力と、ポンプカバー側から作用する圧力との不均衡を是正することが可能となる。すなわち、ポンプボデー側から作用する圧力と、ポンプカバー側から作用する圧力とのバランスに応じてボデー側吸入ポート及びボデー側吐出ポートの開口面積と、カバー側吸入ポート及びカバー側吐出ポートの開口面積とを調整することにより、ドリブンギア及びドライブギアに対して作用する圧力を均衡させることが可能となる。
【0009】
具体的には、各ポートを大小2つの円弧状に湾曲した面(以下、それぞれを「外側区画面」、「内側区画面」とも称す)によって区画されたものとする場合には、外側区画面及び内側区画面のいずれか一方又は双方をなす円弧の径を拡大あるいは縮小することにより、各ポートの開口面積を調整することが可能である。このようにして各ポートの開口面積を調整することにより、ドリブンギア及びドライブギアのサイド面における焼き付きを回避することが可能となる。
【0010】
また、本発明の内接歯車式オイルポンプにおいては、上述した従来技術において説明したもののようにオイルを逃がすための溝を設ける必要がないため、ギアの焼き付き回避のために吐出性能が低下することがない。これにより、内接歯車式オイルポンプを大型化することなく所定の吐出性能を発揮することが可能となる。従って、本発明の内接歯車式オイルポンプを車両に搭載することにより、低燃費化及び高性能化を達成することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吐出性能の低下を招くことなくギアのサイド面における焼き付きを回避可能な構造の内接歯車式オイルポンプを提供でき、ひいてはポンプの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る内接歯車式オイルポンプを示す断面図である。
図2】(a)はポンプボデーを接合面側から見た状態を示す平面図、(b)はポンプカバーを接合面側から見た状態を示す平面図である。
図3図1に示す内接歯車式オイルポンプの構造を模式的に示した平面図である。
図4】ボデー側吸入ポート及びボデー側吐出ポートの開口領域と、カバー側吸入ポート及びカバー側吐出ポートの開口領域とを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、本発明の一実施形態に係る内接歯車式オイルポンプ10(以下、単に「オイルポンプ10」とも称す)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。オイルポンプ10は、車両においてエンジンで回転駆動される変速装置に作動油や潤滑油を供給するために用いられるポンプである。図1に示すように、オイルポンプ10は、ポンプボデー22及びポンプカバー24から構成されるポンプケース20内に形成されるギア室26に、ドリブンギア52及びドライブギア54からなるギアセット50を収容させた構造とされている。
【0014】
図1に示すように、ポンプケース20は、ポンプボデー22及びポンプカバー24の接合面22a,24aを突き合わせた状態とし、ボルト等によって一体化することにより形成される。図1及び図2(a)に示すように、ポンプケース20を構成するポンプボデー22の接合面22a側には、ギア室26を形成するボデー側凹部28が形成されている。ボデー側凹部28は、円形の平面形状を有し、接合面22aに向けて開口している。また、ポンプボデー22には、ボデー側吸入ポート30及びボデー側吐出ポート32が形成されている。ボデー側吸入ポート30はギア室26内にオイルを吸入するためのポートであり、ボデー側吐出ポート32はギア室26からオイルを吐出するためのポートである。
【0015】
図2(a)に示すように、ボデー側吸入ポート30及びボデー側吐出ポート32は、それぞれボデー側凹部28の底面28aにおいて円弧状に開口している。具体的には、ボデー側吸入ポート30は、ボデー側凹部28の外周に沿って円弧状に湾曲した外側区画面30aと、これよりも径方向内側の位置において円弧状に湾曲した内側区画面30bとの間に形成されている。ボデー側吸入ポート30は、ボデー側凹部28の周方向一部の領域、具体的にはボデー側凹部28の半周以下の領域に亘って形成されている。図2(a)に示す状態においては、ボデー側吸入ポート30は、ボデー側凹部28の右半分の領域に形成されている。ボデー側吸入ポート30は、吸入されるオイルが流れる吸入通路40(図3参照)に連通している。
【0016】
また、ボデー側吐出ポート32は、ボデー側吸入ポート30と同様に、ボデー側凹部28の外周に沿って円弧状に湾曲した外側区画面32aと、これよりも径方向内側の位置において円弧状に湾曲した内側区画面32bとの間に形成されている。ボデー側吐出ポート32は、ボデー側凹部28の周方向一部の領域、具体的にはボデー側凹部28の半周以下の領域に亘って形成されている。また、ボデー側吐出ポート32は、ボデー側凹部28内においてボデー側吸入ポート30とは反対側の領域に形成されている。図2(a)に示す状態においては、ボデー側吐出ポート32は、ボデー側凹部28の左半分の領域に形成されている。ボデー側吐出ポート32は、オイルを吐出するために設けられた吐出通路42(図3参照)に連通している。
【0017】
また、ポンプカバー24の接合面24aは、上述したポンプボデー22に形成されたボデー側凹部28に対応する位置にカバー側閉塞部34を有する。カバー側閉塞部34は、上述したボデー側凹部28の開口領域を閉塞し、ギア室26を形成する部分である。ポンプカバー24には、カバー側吸入ポート36及びカバー側吐出ポート38が形成されている。カバー側吸入ポート36はギア室26内にオイルを吸入するためのポートであり、カバー側吐出ポート38はギア室26からオイルを吐出するためのポートである。
【0018】
図2(b)に示すように、カバー側吸入ポート36及びカバー側吐出ポート38は、上述したボデー側吸入ポート30及びボデー側吐出ポート32と同様に、それぞれカバー側閉塞部34内において円弧状に開口している。カバー側吸入ポート36及びカバー側吐出ポート38は、それぞれボデー側吸入ポート30及びボデー側吐出ポート32に対応する位置に設けられている。
【0019】
具体的に説明すると、図1に示すように上下にポンプケース20及びポンプボデー22を重ね合わせてポンプケース20の組み立て状態において、ポンプボデー22に形成されたボデー側吸入ポート30に相当する領域をポンプボデー22側に投影すると、図4に示すようにボデー側吸入ポート30に相当する領域とカバー側吸入ポート36に相当する領域とが重なり合う。同様にしてボデー側吐出ポート32に相当する領域をポンプボデー22側に投影すると、ボデー側吐出ポート32に相当する領域とカバー側吐出ポート38に相当する領域とが重なり合う。
【0020】
図2(b)に示すように、カバー側吸入ポート36は、カバー側閉塞部34の外周に沿って円弧状に湾曲した外側区画面36aと、これよりも径方向内側の位置において円弧状に湾曲した内側区画面36bとの間に形成されている。カバー側吸入ポート36は、カバー側閉塞部34の周方向一部の領域、具体的にはカバー側閉塞部34の半周以下の領域に亘って形成されている。図2(b)に示す状態においては、カバー側吸入ポート36は、カバー側閉塞部34の左半分の領域に形成されている。カバー側吸入ポート36は、上述したボデー側吸入ポート30と同様に、吸入通路40(図3参照)に連通している。
【0021】
また、カバー側吐出ポート38は、カバー側閉塞部34の外周に沿って円弧状に湾曲した外側区画面38aと、これよりも径方向内側の位置において円弧状に湾曲した内側区画面38bとの間に形成されている。カバー側吐出ポート38は、カバー側閉塞部34の周方向一部の領域、具体的にはカバー側閉塞部34の半周以下の領域に亘って形成されている。また、カバー側吐出ポート38は、カバー側閉塞部34内においてカバー側吸入ポート36とは反対側の領域に形成されている。図2(b)に示す状態においては、カバー側吐出ポート38は、カバー側閉塞部34の右半分の領域に形成されている。カバー側吐出ポート38は、上述したボデー側吐出ポート32とは異なり、吐出通路42に対して閉塞されている。
【0022】
図4に示すように、カバー側吐出ポート38は、ボデー側吐出ポート32よりも開口面積が小さくなるように形成されている。具体的には、ボデー側吐出ポート32を構成する外側区画面32aは、カバー側吐出ポート38を構成する外側区画面38aよりもギア室26の径方向中央側に位置している。これにより、カバー側吐出ポート38をなす凹溝の幅(カバー側吐出ポート幅)が、ボデー側吐出ポート32をなす凹溝の幅(ボデー側吐出ポート幅)よりも小さくなっている。これにより、ボデー側吐出ポート32の開口領域、及びカバー側吐出ポート38の開口領域を重ね合わせて比較すると、カバー側吐出ポート38は、図4においてハッチングを付した面積分だけボデー側吐出ポート32よりも開口面積が小さくなっている。
【0023】
図3に示すように、上述したギア室26内には、ギアセット50が収容されている。ギアセット50は、内歯形状のドリブンギア52、及び外歯形状のドライブギア54を組み合わせたものである。ドリブンギア52及びドライブギア54は、それぞれ同一の厚みを有する。ドリブンギア52及びドライブギア54は、側面がギア室26をなすボデー側凹部28及びカバー側閉塞部34の底面28a,34aに沿うように(略平行となるように)収容されている。ドリブンギア52及びドライブギア54の側面と底面28a,34aとの間には、ごく僅かな隙間が形成されている。これにより、ドリブンギア52及びドライブギア54は、ギア室26内において摺動回転可能とされている。
【0024】
ドリブンギア52及びドライブギア54は、それぞれ歯52a,54aを有している。歯52a,54aの形状はいかなるものであってもよいが、本実施形態では双方ともトロコイド型の形状とされている。ドリブンギア52は、ポンプケース20に挿通された駆動シャフト12に対して固定されている。駆動シャフト12は、車両に搭載されたエンジンから伝達された動力を用いて回転可能な軸体によって構成されている。従って、ドリブンギア52は、エンジンの作動に伴って回転可能とされている。
【0025】
ドリブンギア52の歯52aは、ドライブギア54の歯54aの数よりも1つ多く形成されている。ドリブンギア52及びドライブギア54は、互いに噛合している。これにより、ドリブンギア52の歯52aとドライブギア54の歯54aとの間に作動室56が形成されている。各作動室56は、ドリブンギア52及びドライブギア54が回動と共に周方向に移動しながら容積が増減する。具体的には、ドリブンギア52及びドライブギア54の歯52a,54aが接触している位置を基準として両ギア52,54の回転方向に向けて180度に亘る範囲(吸入領域)においては、作動室56の容積が次第に増大する。また、歯52a,54aが接触している位置を基準として両ギア52,54の回転方向とは逆方向に向けて180度に亘る範囲(吐出領域)においては、作動室56の容積が次第に減少する。
【0026】
上述したボデー側吸入ポート30、ボデー側吐出ポート32、カバー側吸入ポート36、及びカバー側吐出ポート38は、いずれも歯52a,54a及び両者の間に形成される作動室56に臨む位置に存在している。ボデー側吸入ポート30、及びカバー側吸入ポート36は、上述した吸入領域に配置されている。これにより、吸入通路40からボデー側吸入ポート30及びカバー側吸入ポート36に供給されたオイルを作動室56に供給することができる。また、ボデー側吐出ポート32、及びカバー側吐出ポート38は、上述した吐出領域に配置されている。これにより、作動室56から排出されたオイルをボデー側吐出ポート32、及びカバー側吐出ポート38に向けて供給し、吐出通路42を介して圧送することができる。
【0027】
ここで、本実施形態のオイルポンプ10においては、カバー側吐出ポート38が吐出通路42に対して閉塞されていること等の理由から、作動時にギア室26内において圧力勾配の発生が懸念される。具体的には、ボデー側吐出ポート32及びカバー側吐出ポート38の開口面積が同一である場合には、カバー側吐出ポート38が設けられた部位の圧力がボデー側吐出ポート32が設けられた部位の圧力よりも高くなる。このような圧力勾配が形成されると、ギアセット50をなすドリブンギア52及びドライブギア54がポンプボデー22側に押しつけられる。このような押しつけ力が作用した状態においてオイルポンプ10を作動させると、ドリブンギア52及びドライブギア54においてポンプボデー22側の側面に焼き付きが生じることが懸念される。
【0028】
しかしながら、本実施形態のオイルポンプ10においては、上述したようにカバー側吐出ポート38の開口面積がボデー側吐出ポート32の開口面積よりも小さい。また、ボデー側吐出ポート32及びカバー側吐出ポート38の開口面積は、ドリブンギア52及びドライブギア54に対してポンプケース20側から作用する圧力、及びポンプボデー22側から作用する圧力の均衡が取れるように調整されている。従って、オイルポンプ10においては、ドリブンギア52及びドライブギア54の焼き付きが発生しない。
【0029】
また、本実施形態のオイルポンプ10においては、従来技術において説明したもののようにギア室26内に導入されたオイルを逃がすための溝を設けることなくドリブンギア52及びドライブギア54の焼き付きを回避することが可能である。従って、オイルポンプ10においては、ギア室26内に導入されたオイルの略全体を作動室56に供給することが可能であり、焼き付き回避に伴う吐出性能の低下が発生しない。
【0030】
上述したように、オイルポンプ10は、ドリブンギア52及びドライブギア54の焼き付きを防止しつつ、吐出性能の低下を回避することが可能な構成であるため、大型化することなく所定の吐出性能を発揮することが可能である。従って、オイルポンプ10を搭載することにより、車両の低燃費化及び高性能化に資することが可能となる。
【0031】
本実施形態においては、ボデー側吐出ポート32及びカバー側吐出ポート38の開口面積を同一とした場合にカバー側吐出ポート38が設けられた部位の圧力がボデー側吐出ポート32が設けられた部位の圧力よりも高くなる傾向にある特性を有することを考慮し、カバー側吐出ポート38の開口面積をボデー側吐出ポート32の開口面積よりも小さくした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、カバー側吐出ポート38が設けられた部位の圧力がボデー側吐出ポート32が設けられた部位の圧力よりも低くなる傾向にある特性を有する場合には、カバー側吐出ポート38の開口面積をボデー側吐出ポート32の開口面積よりも大きくすることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態においては、ギア室26の吸入領域においてドリブンギア52及びドライブギア54の両側面に作用する圧力均衡が取れているとの知見から、ボデー側吸入ポート30及びカバー側吸入ポート36の開口面積を同一とした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、吸入領域においてドリブンギア52及びドライブギア54の両側面に作用する圧力が不均衡である場合には、均衡が取れるようにボデー側吸入ポート30及びカバー側吸入ポート36の開口面積を調整することにより前述したような圧力の不均衡を解消することが可能となる。
【0033】
ここで、ドリブンギア52及びドライブギア54が回転すると、径方向外側の方が回転速度が高くなり、焼き付きが発生しやすい傾向にあるものと想定される。かかる事象を考慮し、本実施形態においては、カバー側吐出ポート38の外縁をなす外側区画面38aを、ボデー側吐出ポート32の外縁をなす外側区画面32aよりも径方向内側にずらすことによりカバー側吐出ポート38の開口面積をボデー側吐出ポート32の開口面積よりも小さくなるように調整している。これにより、ドリブンギア52及びドライブギア54の焼き付きを確実に防止することができる。なお、ギア室26のと吸入領域においてドリブンギア52及びドライブギア54の側面に作用する圧力均衡を取るべく、ボデー側吸入ポート30及びカバー側吸入ポート36の開口面積を調整する場合についても、同様の知見から外側区画面30a,38aを径方向にずらすことにより面積調整をすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の内接歯車式オイルポンプは、車載用のオイルポンプとして好適に利用することが可能であり、ドリブンギア及びドライブギアの両側面に作用する圧力が不均衡になるおそれがある場合に特に有効に使用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 内接歯車式オイルポンプ
20 ポンプケース
22 ポンプボデー
24 ポンプカバー
26 ギア室
30 ボデー側吸入ポート
32 ボデー側吐出ポート
36 カバー側吸入ポート
38 カバー側吐出ポート
40 吸入通路
42 吐出通路
52 ドリブンギア
54 ドライブギア
図1
図2
図3
図4